アサド大統領はロシアのドミトリー・ロゴージン副首相を団長とするロシア政府および経済界使節団との解団後、記者団の質問を受け、「テロとの戦い」はシリア国内でテロリストを一人残らず殲滅するまでは終わらない」としつつ、「ダーイシュ(イスラーム国)の主要拠点を根絶するという重要なステップを踏んだ」と強調した。
映像はSANA(https://youtu.be/QXpzbiDQhdg)で公開された。
アサド大統領が公の場で発言するのは、シリア軍がダイル・ザウル県でのダーイシュ掃討作戦の終了を宣言し、イラクのハイダル・アバーディー首相、ロシアのヴラジミール・プーチン大統領、ドナルド・トランプ米大統領、そして西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍がダーイシュに対する「勝利宣言」を行って以降初めて。
アサド大統領の主な発言は以下の通り:
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「シリア・ロシア関係は60年以上に及ぶが、この関係は常に政治的側面に力点を置いてきた。我々が身を置く現状、すなわち戦争のなか、力点は政治、そして軍事的な側面に置かれるようになっている。言い換えると、過去数十年において経済的な関係があるべき地位を与えられてこなかった…。今回の(使節団の)訪問は、既存のプロジェクトを推し進めるだけでなく…、これまで優先課題としてこなかった新たな分野を切り拓く機会となる…。我々が今、復興期に入ろうとしている」。
「我々は今、ジュネーブ会議、アスタナ会議、そしてソチの会議(シリア諸国民大会)という三つの大会を前にしている。しかし、ジュネーブ会議と、我々がロシアの友人とともに開催しようとしているソチの会議には根本的違いがある。それは参加者、参加組織の質に関わっている。ジュネーブ会議で我々が交渉している参加者は、周知の通り、シリア国民を代表していないし、場合によっては自分たち自身も代弁していない。一般化はしたくないが、これが問題の一つだ…」。
「もう一つの側面は、ソチの会議では、我々は憲法に関係がある明確な課題を設定しているということだ。それは憲法(制定)後の選挙などとも関係している。国連の役割、そしてこの大会に関係する多くの課題も話題に上っている。もちろん、この大会ではあらゆることを議論する。制限などない…。だから、両会議の違いは、ことが済んでみないと明言できない。だが、どんな会議でも3年で何も実現できなかったジュネーブ会議より良いとは思っている」。
「ソチでの大会では、シリア憲法が議論される。現行憲法が適切なのか、修正が必要なのか、シリアは新憲法を必要としているのか、といった点だ…。憲法が修正されれば、当然、憲法に基づいた選挙が行われる…。そして(選挙が行われる場合)国際社会の監視、より厳密に言うと、国連の役割が問題となる…。シリアは国連発足時からの加盟国であり、国連がこうした選挙で役割を果たす場合、いかなる役割であれ、国連憲章…、そしてシリアの主権、自決権に基づかねばならない…。我々は国連がいかなる役割を果たそうとも懸念はしない。我々は、シリアの主権にかかわる条件のもとで国連が役割を果たすかぎり歓迎するし、主権を度外視したいかなることも拒否する」。
「シリアが一つの社会集団から成り立っているというのは不適切だ。人種であれ、宗教であれ、何であれ、一つの社会集団として描くのは…非論理的だ。多様性というものがある。人々は様々な人種からなっている…。シリアの多様な社会集団に目を向ければ、シリアの良いところと悪いところ、愛国的なところ、愛国心が薄いところも見えてくる。さらに、場合によっては反逆者も見えてくる…。だから、「クルド人」と呼ばれているもの(西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍)について言及するとしても、彼らはクルド人だけではなく、シリア東部で暮らすさまざまな社会集団からなっている…。そして、こうした呼称と関係なく、外国のために活動するすべての者、とりわけ今日米政権のために活動する者――これは私でなく彼らが行っていることで、彼らは自分たちが米航空機と連携し、その傘下で活動していると発表している…――、自分の国に外国の指揮下で活動し、自国の軍や自国民に反抗しているすべての者は、裏切り者だ…。どのように呼ばれるかはともかく、これが米国のために活動するそのグループ(シリア民主軍)への我々の評価だ」。
「戦争が終わったというのは非現実的だ。我々はまだ戦争の渦中にある。我々はこの戦争において極めて重要なステップ、プロセスを通過したと言うことはできる…。完全に根絶したとは必ずしも言えないが…、シリアのダーイシュ(イスラーム国)の主要な拠点を根絶した。これは重要なプロセスであり、大きな勝利だ。だが、世界をダーイシュだけに注目させようとする狙いには注意しなければならない。なぜならヌスラ戦線などのテロから目を反らすことになるからだ。ヌスラ戦線は西側の支援を受け、いまだ存在している。ダーイシュについてだけ話すことはテロについて話すことを意味しない。なぜなら、ダーイシュはテロの一部だが、テロそのものではないからだ。ダーイシュ、ヌスラ、そしてそれ以外のさまざまな名前のテロ組織が存在し続ける限り、我々は戦争の渦中にあるということだ。シリアにおける「テロとの戦い」はテロリストが残らず根絶されるまでは終わらない」。
「(ジュネーブ8会議がシリア政府側の対応で進展しなかったとのフランスのエマニュエル・マクロン大統領の発言に関して)フランスであれ、それ以外の西側諸国であれ、こうした発言は、これらのグループ(反体制派)がシリアや祖国ではなく、自分たちのために活動していることを示している。もちろん、我々には、これらのグループにジュネーブ会議の責任があるなどと責めることはできない。理由は簡単だ。彼らは米ドルで発言するグループに過ぎないからだ…。フランスが当初からシリアのテロ支援の頭目で、当初からシリア人の血のなかに身を沈めてきたことは周知の通りだ。こうした姿勢は根本から変わってはいない…。テロを支援している者に平和を語る資格などない」。
AFP, December 18, 2017、ANHA, December 18, 2017、AP, December 18, 2017、ARA News, December 18, 2017、Champress, December 18, 2017、al-Durar al-Shamiya, December 18, 2017、al-Hayat, December 18, 2017、al-Mada Press, December 18, 2017、Naharnet, December 18, 2017、NNA, December 18, 2017、Reuters, December 18, 2017、SANA, December 18, 2017、UPI, December 18, 2017などをもとに作成。
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