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シリアの複数の都市で金曜礼拝後に数千人規模のデモが発生し、少なくとも数十人が死傷した。複数の活動家、人権活動家らによると、軍・治安部隊の発砲により、少なくとも36人が殺害された(地元調整諸委員会によると死者数は27人、シリア革命調整連合によると32人)。
犠牲者のほとんどは、ハマー県郊外、イドリブ県ザーウィヤ山での掃討作戦によるもの。またヒムス県、ダマスカス郊外県でも死者が出て、そのなかには12歳の少年もいた。
デモに先立ってフェイスブックの「シリア革命2011」が抗議行動開始(3月15日)6ヵ月に合わせて「体制打倒まで突き進む金曜日」と銘打ってデモを呼びかけていたが、15日(木曜日)の「誓約更新」呼びかけが失敗に終わっていたことを踏まえると、毎週金曜日に発生するデモが、インターネットなどを通じて革命を唱導する活動家によって必ずしも指導・統制されていない実態が垣間見えた。
また国内外の反体制活動家をシリアの反体制抗議運動の代表と位置づけようとする安易な姿勢(とりわけシリア国民評議会の発足に歓迎の意思を示す西側諸国の姿勢)が、デモの原動力である人々の意思に応えられるのかとの疑問を改めて提起することとなった。
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ダマスカス郊外県では、複数の活動家、人権活動家らによると、軍・治安部隊が多数展開した。
インターネットでは、ダーライヤー市、ドゥーマー市、ハラスター市、ランクース市など、ダマスカス郊外県主要都市での数千人規模のデモの映像がアップ・配信された。
シリア人権監視団によると、ドゥーマー市では1人が殺害された。ダーライヤー市ではファーリス・モスクに軍・治安部隊が突入し、デモを排除した。キスワ市では、「バッシャールよ、屠殺屋」というプラカードやバアス革命以前の国旗が掲げられた。
SANA(9月17日付)は、ダマスカス郊外県ドゥーマー市で武装テロ集団が軍・治安維持部隊を要撃、1人が殉死、16人が負傷した、と報じた。
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ダマスカス県では、マイダーン地区、カフルスーサ区、カダム区、バルザ区、サーリヒーヤ区などで数百人規模のデモが発生した。
またシリア人権監視団によると、治安部隊は、ナフル・イーシャ地区で1人を殺害した。
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ハマー県では、軍・治安部隊がハルファーヤー市に突入し、離反兵の捜索を行い、6人を殺害、11人が負傷した。
またシリア人権監視団によると、ハッターブ町での軍・治安部隊の捜索活動で1人が殺害された。
ハマー市では、治安部隊がサアド・ブン・アビー・ワッカース・モスクをデモ発生に先立って包囲し、また上空には戦闘機が旋回した。
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イドリブ県では、ザーウィヤ山のサルジャ村、カフル・ウワイド村での軍・治安部隊の捜索活動で3人が殺害された。
またシリア人権監視団によると、ザーウィヤ山で女性の遺体8体が発見された。マアッラト・ニウマーン市には早朝、多数の戦車、兵員輸送車が到着し、デモ発生に備えた。
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ヒムス県では、軍・治安部隊がヒムス市に集まった数千人のデモ参加者に発砲し、2人を殺害した。またシリア人権監視団によると、女性の遺体2体が発見された。
『ザマーン・ワスル』(9月16日付)は、複数の消息筋の話として、軍・武装部隊がヒムス市内の公園などに身元不明の犠牲者を埋葬する墓地を建設していると報じた。
『クッルナー・シュラカー』(9月16日付)ヒムス市住民がインターネットなどを通じて、軍・治安部隊が展開している限り、子供たちを学校に通わせないと宣言した、と報じた。
『ザマーン・ワスル』(9月16日付)は、住民の話として、新学期開始に備え、ヒムス市内の複数の住居を民間人の衣服を着た軍…治安部隊の兵士が占拠している、と報じた。
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ダイル・ザウル県では、ダイル・ザウル市ジュバイラ地区のラウダ・モスクで発生したデモを強制排除するため、軍・治安部隊が発砲した。
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ダルアー県では、ダルアー市および郊外の村々でデモが発生した。しかしSANA(9月16日)は、武装テロ集団の攻撃で警官1人が殉職、4人が負傷した、と報じた。
SANA(9月17日付)は、ダルアー県ブスル・ハリール市で、治安維持部隊が武装テロ集団の攻撃を受け、4人が負傷した、と報じた。
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ウェブサイト「シリアの殉教者」は、過去6ヵ月間の犠牲者数に関して、少なくとも3,272人が殺害され、数千人が負傷、逮捕、避難したとの数字を発表。
死者3,272人のうち、子供は198人、女性は143人にのぼった。県別では、ヒムス県が915人、ダルアー県が677人、イドリブ県が423人。また2011年6月10日の「部族たちの金曜日」の1日の死者が209人、4月29日の「怒りの金曜日」が163人、4月22人の「偉大なる金曜日」が153人、4月1日の「反抗の金曜日」が74人であった。
北部県アッカール郡の国境地帯にあるカナイサ村、フナイディル村付近で、シリア領内からの発砲により、住民1人が負傷。レバノン国軍は声明を出し、シリア軍が越境者を追跡してレバノン領内に入り、発砲したと発表。
リビアを訪問したトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、首都トリポリで群衆を前に「あなたたちは国民の意思に反する体制は存続し得ないことを世界に示した。このことはシリアで国民を弾圧する者たちが理解せねばならないことだ」と述べた。
首相はバッシャール・アサド大統領のことを名指しにはしなかったが、「この手の指導者は、今や自らの時代が終わったと理解せねばならない。専制支配者の体制の時代が終わったからだ…。シリアで国民を弾圧する者は存続し得ないだろう。なぜなら弾圧と繁栄は両立しないからだ」と述べた。
一方、『ヒュッリーイェト』(9月16日付)は、エルドアン首相がチュニジアの記者団を前にして、イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領に「イランとの緊張関係があるかどうかを話すことはできない。しかし、シリアに関して、私は彼らに、イランの支援によってアサド政権が横暴になっていると警告した…。アフマディーネジャード大統領とは電話でこの問題を取り上げた」と述べたと報じた。
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米国務省のマーク・トナー副報道官は16日(現地時間で15日)、イスタンブールでのシリア革命評議会に関して、反体制勢力の「努力を歓迎する」と述べた。
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フランス外務省のベルナール・ヴァレロ報道官は「反体制派統合に向けたすべてのイニシアチブと、シリアのすべての国民を尊重する民主的シリア建設への門戸開放は、前向きなイニシアチブだ」と述べ、シリア革命評議会発足を高く評価。
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イギリス外務省報道官も『グローバル・アラブ・ネットワーク』(9月16日付)に対して、「シリア国民評議会発足宣言は、シリアの反対政府勢力統合と隊列強化へのさらなる重要なステップである」と評価。
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EU消息筋も、EUがシリア国民評議会発足を「前向き」な動きと見ていると述べる。
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国際赤新月社連盟は、シリア国内で救急医療チームや救急車両が発砲を受けていることへの非難の意を表明した。
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UNDPが発表した報告書によると、9月7日現在、レバノン北部で難民申請したシリア人避難民は3580人に上った。うち9月1日から7日にかけて600人以上が申請した。申請したシリア人の多くは、ヒムス県のヒート市、タッルカラフ市出身者。
AFP, September 16, 2011、Akhbar al-Sharq, September 15, 2011, September 16, 2011、Global Arab Network, September 16, 2011、al-Hayat, September 17, 2011、Kull-na Shuraka’, September 16, 2011、Naharnet, September
18, 2011、NNA, September 16, 2011、Reuters, September 16, 2011、SANA, September
16, 2011, September 17, 2011、Zaman al-Wasl, September 16, 2011などをもとに作成。
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ロシア当事者和解調整センターの…