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ウェブサイト「シリア革命殉教者」(http://syrianshuhada.com/)は、11月1日現在の犠牲者数を発表した。それによると死者総数は、4,135人(男性3,948人、女性187人)で各県の犠牲者数は以下の通り:
ダマスカス県143人、ダマスカス郊外県328人、クナイトラ県29人、ダルアー県748人、スワイダー県4人、ヒムス県1,386人、ハマー県459人、タルトゥース県52人、ラタキア県187人、イドリブ県536人、アレッポ県38人、ラッカ県4人、ダイル・ザウル県231人、ハサカ県14人。
また9月、10月の2ヵ月間だけで1,000人以上が殺害されたという。
http://syrianshuhada.com/default.asp?a=st
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市立大学アラブ国際大学(ダルアー県)で、学生が3月以来初となる反体制抗議デモを行い、体制を支持する学生と衝突した。反体制デモを行った学生は校内の池の水を赤色に染めて抗議行動を行っていた。
また同じくシリア最大の市立大学カラムーン大学(ダマスカス郊外県)でも、学生による反体制抗議デモが実施された。デモでは弾圧の犠牲となった「殉教者」への黙祷が捧げられ、その後、アサド政権との対話拒否や体制打倒が訴えられた。デモには約2,000人の学生が集まった。
デモ発生を受け、サリーム・ダアブール学長が学生との会合を提案したが、学生側が拒否、その後、体制を支持する学生がカウンター・デモを組織して対峙した。
これらの市立大学は、アサド政権の肝入りで2000年代半ばに設立された。
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ヒムス県では、複数の反体制活動家によると、フーラ村で、治安部隊が学生のデモを排除するために空砲を発射した。
ヒムス市では、民間人1人が親体制派民兵(シャッビーハ)の車から放たれた銃弾に撃たれ死亡した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市で、治安部隊の発砲により、市民1人が殺害された。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、治安部隊が複数の都市・村で大規模な逮捕・追跡作戦を行った。
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地元調整諸委員会によると、軍・治安部隊と離反兵が各地で戦闘を行い、ヒムス県で4人、ダマスカス郊外県で3人、ダイル・ザウル県で1人、イドリブ県で3人が死亡した。
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フランスのパリなどで暮らすシリア人反体制活動家61人が「アラブ民族潮流声明」を発表した。
同声明で活動家らは、自らの運動をアラブ民族主義運動と位置づけたうえで、アサド政権を「独裁体制」と断じてその正統性を否定するとともに、シリアでのアラブの春への支持を表明した。
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シリア国民評議会は、シリア情勢を審議するためのアラブ連盟緊急外相会談に合わせて声明を出し、①連盟におけるシリアのメンバーシップ凍結、②民間人の国際的保護の拡充、③シリア国民の代表としてのシリア国民評議会の承認を求めた。
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シリア・クルド国民行動憲章、シリア・クルド・ムスタクバル潮流、シリア・改革運動が共同声明を出した。
声明は10月末にハサカ県カーミシュリー市で開催されたシリア・クルド国民大会に関して、「クルド人の正当な代表」といった表現を用いたことを非難、同大会が参加した9党(10党)の意見しか代表してないと断じた。<
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『クッルナー・シュラカー』(11月1日付)は、ダマスカス第三法廷がバースィル・マーニウ弁護士の保釈を決定したと報じた。保釈金は3,000シリア・ポンド。
マーニウ弁護士は2011年7月4日に逮捕され、9月10日にマーヒル・アサド大佐暗殺が計画されているとの偽の情報を発信したとの容疑で軍事裁判所に起訴されていた。
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『ロサンジェルス・タイムズ』(11月1日付)は、トルコに避難している自由シリア軍司令官のアフマド・アスアド大佐への取材を行い、同大佐の発言を掲載した。
それによると、アスアド大佐は、「我々は新たなシリアにおける将来の軍である」としたうえで、アサド政権とその軍を複数カ所で攻撃していると述べた。
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-syria-turkey-defectors-20111102,0,6082244.story
ダイル・ザウル県ダイル・ザウル市の中心部で、アサド政権の改革支持、外国の干渉拒否を訴える大規模集会が行われ、数十万人が参加した。
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バッシャール・アサド大統領はレバノンのタラール・アルスラーン国民議会議員(レバノン民主党党首)とドゥルーズ派のシャイフ・アクル、ナスルッディーン・グライブ師、マルワーン・ハイルッディーン国務大臣と会談した。
会談でアルスラーン議員は、一部のレバノンおよび地域の勢力がシリアを弱体化させようとする外国勢力の野望を反映した言動を行っていると述べた。
ナハールネット(11月1日付)によると、これに対してアサド大統領は「シリアは危機を克服し、これまで以上に強力になった…。我々はこれを機に、シリアがアラブ大衆文明の手本となっており、いかなる者の教訓やロードマップも必要とはしていないとの念を強めた」と答えた。
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シリア・アラブ憲法草案準備国民委員会は10月31日に引き続き、旧首相府で会合を開いた。
サーム・ダッラ報道官は記者会見で「新憲法が依拠する基本原則をめぐっていかなる審議も禁じられていない」と述べた。
また「改正や再検討ができない憲法など存在しないが、そのことはすべての条項を再検討するという意味ではない」としつつ、バアス党を「国家と社会を指導する党」と規定する憲法第8条に関しては、「第8条が最近もっとも議論されるようになったのは当然だ…。政治的多元主義への移行や政党法の制定に関して多くの議論がなされており、多元的な政治体制に向かうのなら、第8条は存続し得ない、ないしは再検討されるべきとするのは自明の理だ…。しかしこのことは第8条に限られる話ではなく、他の条項にもかかわってくる」と述べた。
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経済対話会合は3日間の予定を終え、農業、工業、行政改革、住宅、衛生、観光、資源、財政、生活保護などに関する提言をまとめて閉幕した。
提言では、農業部門への投資拡大、国境地域などでの水資源の確保、公共セクターの近代化、マンパワーの強化、貿易促進を目的とした通商政策の構築、市立大学への学生受入の拡充、農村地域における生活状況の改善、汚職撲滅などが盛り込まれた。
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ナジャーフ・アッタール副大統領は、トルコの女性議員・党幹部約40人からなる使節団と会談し、シリア・トルコ関係に関して意見を交換した。
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ファイサル・ミクダード外務次官はRT(11月2日付)のインタビューに応え、「一部の外国政府機関、国際機関は信用を失った。なぜなら事実を一方的にしか捉えず、真実を見ていないからである…。こうした組織は、シリアが軍・治安部隊兵士1,150人を失ったということにさえ言及しない」と述べた。
また「レバノン、トルコ、ヨルダン、サウジアラビアの非公的な勢力がシリアのテロリストを支援している」と述べた。
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バアス党地域指導部は統一地方選挙への積極参加を呼びかける声明を出した。
SANA(11月1日付)は速報で、「シリアとアラブ連盟外相委員会(外相使節団)が、シリア情勢に関するワーキングペーパーに最終合意し、明日(11月2日)、カイロのアラブ連盟本部でその内容を公式に発表する」と報じた。
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アルジェリア通信(11月1日付)は、アラブ連盟外相使節団に参加したアルジェリアのムラード・マドリスィー外務大臣が、「ドーハでもシリアとの会合で達した合意をカイロで確認することを望む」と述べたと報じ、シリアの使節団と連盟の間で何らかの合意がなされたことを示唆した。
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しかしカタールの複数の消息筋は、ドーハでアラブ連盟外相委員会(外相使節団)と会談したシリアの使節団が「ドーハ滞在中に連盟のワーキングペーパーへの回答を行わなかった」ことを明らかにした。
また複数のアラブ消息筋は、アサド政権が使節団の帰国後に正式な立場を通知することを期待していたと述べた。
『ハヤート』(11月2日付)によると、ワーキングペーパーには、アサド政権と反体制勢力のカイロ(連盟本部)での対話会合が提案されているが、アサド政権はシリア国内での対話会合をめざしている。
またドーハでの会談で審議された「政治犯」問題に関して、シリアの使節団は「政治」という言葉を削除し「逮捕者」とするよう求めたという。
一方、外国の干渉拒否に関しては、シリア側と連盟側で合意に達したという。
アラブの複数の消息筋は、本件が連盟とシリア政府との間で「最終段階」に入っており、11月2日に大衆的な立場が確定したうえで、シリア政府には「民主的変革と真の改革を求めるシリア国民の合法的な要求を尊重する」以外に選択肢はないと述べた。
アラブ連盟緊急外相会議は11月2日、カイロで開催が予定されており、外交筋によると、連盟はシリア政府の正式な回答を待っているという。
IRNA(11月1日付)は、イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣がシリアでの権力の真空は予期できない影響をもたらすだろうとしたうえで、アラブ連盟に「幸福な終わり」に向けて必要なあらゆることを行うべきだと述べた、と報じた。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、アブドゥッラーUAE外務大臣と共同記者会見で、シリアとリビアの情勢に関する質問に対して、「このようなことが繰り返されるのを我々は許さない」と述べ、シリアへの軍事介入に改めて反対の意思を表明した。
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、アンカラでAKPの国会議員を前に「父(ハーフィズ・アサド前大統領)の時代を特徴づけていた構造がシリアで再び現れ、ハマー、ヒムス、ダルアーで人々に残忍な行為が行われている」と述べ、アサド政権による反体制運動弾圧を批判した。
そのうえで「我々がこのような行為に沈黙することは許されない。必要な態度を取らねばならず、それを行うだろう」と述べ、制裁発動の意思を改めて示した。
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欧州議会は10月31日付で、エジプトとシリアのキリスト教徒の状況に関する報告書を発行した。
同報告書によると、シリアのキリスト教徒の人口は、サッダーム・フサイン政権崩壊後に多数のキリスト教徒がイラクから流入してきたにもかかわらず、「シリアからキリスト教徒が避難している」ため、8~10%減少したという。
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スティーブ・チャボット米下院議員は声明を出し、レバノン国内でのシリア人反体制活動家の誘拐やシリア軍によるレバノン領内での弾圧活動を非難した。
AFP, November 1, 2011、Akhbar al-Sharq, November 1, 2011, November 2, 2011、al-Hayat, November 2, 2011, November 3, 2011、Kull-na Shuraka’, November 1, 2011, November 2, 2011、Los Angels Times, November 1, 2011、Naharnet, November 1, 2011, November 2, 2011、Reuters, November 2, 2011、SANA, November 1, 2011などをもとに作成。
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ロシア当事者和解調整センターの…