シリア国民評議会議長がアラブ連盟事務総長の発言を非難、また合意文書案のリークをめぐり同評議会と国民調整委員会の間の不和が深刻化(2012年1月2日)

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アラブ連盟監視団

アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は記者会見を開き、シリアでの監視団の活動に関して、「監視団訪問中、シリアの諸都市から軍は撤退した」、「とりわけヒムス市において国民への食糧支援、遺体の収容に成功した」としつつ、「依然として発砲や狙撃がなされている」としつつも、「誰が誰に発砲しているのかを言うのは困難だ」と述べた。

またアサド政権が3,484人の逮捕者を釈放したことを確認する一方で、連盟が反体制勢力に対して、逮捕者の名簿提出を求めており、その一部が1月2日に提出されたと述べた。

そのうえで、監視団の任務遂行を評価するための外相会合を来週にも開催すると述べた。

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アラブ連盟のアフマド・ベンフッリー事務副長は、アラブ合同軍のシリアへの派兵の可能性を否定した。

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「アフバール・シャルク」(1月2日付)は、アラブ連盟の諮問機関であるアラブ議会のアリー・サーリム・ディクバースィー議長が連盟内でシリア問題に関する審議を強く求めてきたために、シリアの体制から脅迫を受けたと暴露したと報じた。

アサド政権の動き

SANA(1月2日付)によると、ダイル・ザウル県ダイル・ザウル市、ヒムス県カッブー村でアサド政権の改革を支持する大規模集会が開催され、それぞれ数千人の市民が参加した。

SANA, January 2, 2012

SANA, January 2, 2012

SANA, January 2, 2012

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アナトリア通信(1月2日付)は、ガジアンテプ市のシリア領事館が1月2日付で閉館となったと報じた。領事館は12月26日に領事業務の停止を宣言していた。

国内での暴力の応酬

SANA(1月2日付)は、ジャーナリストのシュクリー・アブー・ブルグル氏がダマスカス郊外県ダーライヤー市の自宅で武装テロ集団に撃たれて死亡したと報じた。

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イドリブ県では、SANA(1月2日付)によると、イドリブ市でハーリド・ムスタファー警部が武装テロ集団に襲撃され死亡した。

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ヒムス県では、SANA(1月2日付)によると、クサイル市の衛生センターを武装テロ集団が襲撃、破壊した。

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ダルアー県では、SANA(1月2日付)によると、ダルアー市で武装テロ集団がしかけた爆弾が爆発し、1人が負傷した。

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一方、シリア革命総合委員会によると、ダマスカス郊外県のドゥーマー市、イドリブ県ザーウィヤ山で離反兵と軍の交戦が続いたという。

またシリア革命総合委員会および調整諸委員会によると、イドリブ県、ヒムス県、ダマスカス郊外県で合わせて20人が軍・治安部隊の発砲で殺害されたという。

さらにシリア人権監視団によると、離反兵がイドリブ県内の軍の検問所二カ所を制圧し、兵士数十人を捕縛した。

またこれとは別の検問所では離反兵と軍の戦闘で軍側に複数の死傷者が出たという。

反体制勢力の動き

ヌーリー・ジャッラーフ(詩人)、サーディク・ジャラール・アズム(思想家)、タイイブ・ティーズィーニー(社会学者)、ブルハーン・ガルユーン(シリア国民評議会事務局長)、アリー・カナアーン(作家)ら内外のシリア人有識者約110人がシリア作家連盟の発足を宣言し、現体制下の文学・思想関連の団体から離反するよう呼びかけるとともに、「国民の革命支援における活発かつ公然たる役割を担い、シリアの将来のために真の役割を演じる」と宣言した。

http://www.syrianswa.com

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国民民主変革諸勢力国民調整委員会の在外事務局のハイサム・マンナーア代表は『ハヤート』(1月3日付)に対して、「シリア政府が国民に対して行っている軍事的・治安的解決を停止させねばならないなら、アラブ合同軍はシリアに進駐するべき」との立場を示した。

一方、シリア国民評議会との合意文書(案)を「リークした」との評議会メンバーらによる非難に対して、「開会文書のリークにいかなる意味があるのか。秘密文書でもないのに」と反論した。

そのうえで「外国の軍事介入などの問題は17日前に、国民評議会の極右から穏健右派の面々によって合意されていた」と付言した。

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シリア国民評議会のワリード・ブンニー氏は『ラアユ』(1月2日付)に対して、国民民主変革諸勢力国民調整委員会の合意文書は「草稿に過ぎず、最終版ではない」と述べた。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長はSAWAラジオ(1月2日付)で「都市から軍が撤退した」とのアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長の発言に関して、「ナビール・アラビーが言ったことは現実をまったく表していない」と非難した。

レバノンの動き

サアド・ハリーリー前首相はツイッターで、アラブ連盟監視団の視察活動が行われるなかでアサド政権が弾圧を続けることを「信じられない」とつぶやき、「監視団はアサド体制が望むようなかたちでなく、真実を語る時が来た」と述べた。

諸外国の動き

イスラエルのエフド・バラク国防大臣は、クネセトで「アサド家がシリアの権力の座にいられるのは数週間しかなかろう」と述べた。

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エジプトのサフワト・ヒガーズィー師はアサド政権支持者の一部が「イスラームを逸脱している」と述べた。

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ヨルダン・ムスリム同胞団は、イラン政府がアサド政権による弾圧を支援しているとの理由で、テヘランでの開催を呼びかけている「イスラーム諸派間対話大会への参加をボイコットするとの声明を出した。

AFP, January 2, 2012、Akhbar al-Sharq, January 2, 2012, January 3, 2012、Alarabia.net, January 2, 2012、Damas Post, January 2, 2012、al-Hayat, January 3, 2012、Kull-na Shuraka’, January 2, 2012、al-Ra’y, January 2, 2012、Reuters, January 2, 2012、Twitter、Naharnet.com, January 2, 2012、SANA, January 2, 2012などをもとに作成。

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