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アナン特使の停戦案受諾にもかかわらず、反体制武装集団と軍・治安部隊は各地で散発的に交戦する一方、当局の警告を無視した無許可の反体制デモが金曜礼拝後に発生、複数の市民が死亡した。
また政府、反体制勢力は双方の停戦違反を非難した。
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『ハヤート』(4月14日付)によると、ヒムス市カラービース地区などで軍・治安部隊と離反兵が交戦、停戦違反は30件以上に上った。
またシリア人権監視団や地元調整諸委員会によると、イドリブ県ヒルバト・ジャウズ村など対トルコ国境地帯では軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦した。
他方、シリア・ポリティクス(4月13日付)は、ダマスカス郊外県サイイダ・ザイナブ町で、シーア派イマーム(ハウザ)のサイイド・ナースィル・アラウィー氏が「何者か」に暗殺された、と報じた。
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反体制の地元調整諸委員会によると、ダマスカス郊外県ドゥーマー市郊外(地元調整諸委員会によると数千人が参加)、ザバダーニー市、イドリブ市、ダルアー市などで全国434カ所で反体制デモが発生し、数万人が参加、治安部隊の介入で11人が殺害された。
またロンドンを拠点とする反体制のシリア人権監視団によると、治安維持部隊が厳戒態勢を敷くなか、ダルアー県、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、ヒムス県、ハマー県、アレッポ県、ダイル・ザウル県、イドリブ県、クルド人が居住する地方で、数万人規模のデモが発生、治安部隊の介入で5人(ハマー市で2人、イドリブ県サルキーン市で1人、ダルアー県ナワー市で1人、ダマスカス郊外県ダーライヤーで1人)が殺害された。
『ハヤート』(4月12日付)がシリア人活動家の一人の話として報じたところによると、「デモ参加者は、発砲を受けないと感じて街頭に出ることができた」という。
一方、ダマスカス県は、治安維持部隊が厳戒態勢を敷くなか、ジャウバル区、バルザ区、カフルスーサ区、マイダーン地区で小規模なデモが発生したに過ぎなかったが、このうち、ジャウバル区では、複数の活動家によると、デモ参加者が治安維持部隊に投石した。
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複数の反体制活動家は、アサド政権が実弾発砲や軍車輌の都市部への駐留を継続していると指摘し、アナン特使の停戦案に違反していると非難した。
一方、SANA(4月13日付)は、武装テロ集団による停戦案違反を大々的に報じた。
同通信社によると、武装テロ集団は、ハマー市でムーサー・ターミル・ユースフ少佐を暗殺、アレッポ市スッカリー地区で治安維持部隊隊員1人を殺害された。
またイドリブ県ハーリム地区にあるタルアーダ村、サルマダー市などの幹線道路に武装テロ集団が展開、またサラーキブ地方東部ではアレッポ・ダマスカス街道の寸断を試みた、という。
さらに各地でのデモでの被害に関しては、「ハマー市での小規模なデモの参加者の一人が発砲し、別の参加者を即死させ、また武装テロ集団がダイナマイトを治安パトロール隊に投げつけた」、「イドリブ県サルキーン市で発生したデモに武装テロ集団が発砲し、市民1人を殺害した」と報じた。
このほか、イドリブ県ヒルバト・ジャウズ村近くで、関係当局が武装テロ集団のトルコ領内からの潜入を阻止した、と報じた。
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反体制勢力はフェイスブックなどで「すべてのシリア人のための革命の金曜日」と銘打って反体制デモの実施を煽動していた。
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『読売新聞』(4月15日付朝刊)は金曜日の反体制デモに関して、「数千人から一万人程度しか参加しなかった」と報じた。
これまでメインストリーム・メディアは同程度の規模のデモに関して「数千人から一万人も参加した」と報じていた。
「シリア平和的変革青年連立」を名のる集団が4月14日付で「殺戮を止めろ。我々はすべてのシリア人のための祖国を建設したい」と題した声明を発表し、すべての当事者による暴力、武器使用、弾圧的手段での問題解決をシリア社会の総意として拒否すると訴えた。
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自由青年機構、自由シリアの二つの組織は、シリア独立記念日の4月17日に、ダマスカスの中心でアサド政権打倒を求める平和的デモを実施すると宣言、参加を呼びかけた。
だが具体的な実施場所、時間は指定しない。
SANA(4月13日付)は、「テロリスト」のアフマド・マアルール容疑者とガッサーン・マアルール容疑者が、サーリヤ・ハッスーン氏(共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師の長男)暗殺(2011年10月)を自供したと報じた。
トルコ政府は、領内のシリア人避難民キャンプに対するシリア軍の発砲への抗議を国連に対して申し立て、シリアでの「民間人に対する暴力を停止させるための即時行動」を呼びかけた。
これに対して、シリア政府はワリード・ムアッリム外務大臣署名の文書を国連に提出、トルコが武装テロ集団の支援など「シリアに対する敵対行為を犯している」と非難、国際社会に対して、「トルコの敵対行為を停止させるための適切な措置を講じる」ことを求めた。
レジェップ・タイイップ・エルドアン首相がサウジアラビアを訪問し、アブドゥラー国王と歓談、シリア情勢および周辺諸国へのシリア人避難民の問題などに関して集中的に意見を交換した。
アフメト・ダウトオール外務大臣は、イスタンブールでの記者会見で、トルコがシリア人雛民に対する国際救援物資の受け取りを開始したと述べた。
トルコのアナトリア通信(4月13日付)は、トルコの3,269企業が2011年にシリアに約10億ドル相当のトルコ産品を輸出、2012年1~2月は538企業が輸出したと報じた。
一方、644企業が2011年にシリア産品を、2012年1~2月に108企業が輸入した。
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フランスのニコラ・サルコジ大統領は、バラク・オバマ米大統領と電話会談を行い、シリアへの国連監視団派遣の必要を確認したとしたうえで、「私はバッシャール・アサドが誠実だと思わない…。残念ながらこの停戦を信用してない」と述べた。
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国連安保理では、各国の合意のもと米国がシリアへの国際監視団派遣に関する決議案を提出した。
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AFP(4月13日付)は米高官の話として、米国が反体制勢力に医療物資、通信機器などの支援を行っている、と語った。
同高官によると、武器はいまだ供与していない、という。
Akhbar al-Sharq, April 13, 2012、al-Hayat, April 14, 2012、Kull-na Shurakā’, April 13, 2012、SANA, April 13, 2012、Syria-Politic.com,
April 13, 2012、UPI, April 14, 2012、読売新聞2012年4月15日などをもとに作成。
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ナハールネット(11月21日付…
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