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シリア政府は国連監視団(UNSMIS, UN Supervision Mission in Syria)の派遣に関する議定書を国連と調印した。
議定書はシリアのファイサル・ミクダード外務次官と国連のグハ・アブヒジト平和維持活動部門軍事副顧問が署名した。
議定書では、監視団のシリア領空での活動などに関する詳細の是非は保留されたままとなっている。
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SANA(4月19日付)は、ダマスカス県中心にある大統領橋(ジスル・ライース・ハーフィズ・アサド)で青年ボランティア組織が、「私はシリア人、シリア・アラブ軍のみが我々を守る」と書かれた全長150メートル、幅1.5メートルの横断幕への署名を求めた、と報じた。
政権に協力的な野党(かつての反体制勢力)である解放変革人民戦線はダマスカスで記者会見を行い、5月7日投票予定の第10期人民議会選挙に参加すると発表した。
同戦線は、人民意思党(旧シリア共産主義者統一国民委員会)とシリア民族社会党インティファーダ派からなる政治同盟。
人民意思党は政党法に基づき公認申請を行っている。
シリア民族社会党インティファーダ派はマハーイリー派が連立与党の進歩国民戦線に加盟しているため、シリア国民民主連合を構成するバアス党やシリア共産党の「反主流派」とともに事実上の公認政党とみなすこともできる。
記者会見で、シリア人民意思党のカドリー・ジャミール党首は、「公正さと透明性が保障されていることを確認したため」選挙に参加すると述べ、全国で46人の立候補者を擁立したと述べた。
一方、同じく国内で活動している反体制勢力の民主的変革諸勢力国民調整委員会に関して、同委員会が反体制勢力について言及する際に戦線の存在を意図的に無視していると批判した。
ジャミール党首は反体制勢力のなかで唯一、シリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会のメンバーを務めていた。
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シリア民主フォーラムなど国内外で活動する反体制活動家がヨルダンの死海東岸で「シリア新憲法に関する国民合意に向けた市民権および民主的市民国家」大会を開催し、「死海宣言」を発表、アナン特使の停戦イニシアチブへの指示を表明するとともに、アラブ連盟に反体制勢力統合の仲介努力を行うよう呼びかけた。
大会に出席したのはさまざまな潮流に属す活動家約60人。
代表者を送った主な反体制組織は、シリア国民評議会、民主的諸勢力国民調整委員会、ダマスカス民主変革宣言、シリア国家建設潮流、民主フォーラム、シリア・ムスリム同胞団、クルドの春再生諸委員会、アッシリア民主機構、シリア民主世俗諸勢力連立、国民民主ブロック、シリア国民潮流、クルド民主統一党(イェキーティー)など。
18日と19日の2日にわたって、七つの分科会に分かれて行われた大会では、「シリアに相応しい政体」などについて議論された。
参加者は、大衆的・平和的性格を有した革命への支援を確認し、「一部過激勢力」による武装闘争を拒否する姿勢を確認したうえで、革命達成後の国家像に関して、平和的な政権交代と多元主義を前提とすることでコンセンサスに達した。
他方、「宗教と国家の関係」に関しては、世俗性と政教分離の必要を力説する左派と、イスラーム教を国教と規定することが重要だとするイスラーム主義者が対立した。
さらにクルド問題に関しては、「クルド的解決」ではなく「民主的解決」の必要が確認されたが、クルド人の自決権や連邦制に関してはシリアの国民統合を阻害するとの意見が出された。
またクルド人活動家が「シリア・アラブ共和国」という国名から「アラブ」を削除するよう提案したが、多くの参加者から「マイノリティによるマジョリティ支配」といった反対意見が相次いだ。
大会後に採択された「死海宣言」の骨子は以下の通り。
1. 国民および国内の革命運動家による闘争を支持。 外国の支援、軍事介入の拒否。
2. 闘争の平和的性格、社会的性格の維持。宗派主義的、地域主義的戦闘の拒否。
3. 一反体制勢力・個人による体制との個別の対話・関係正常化拒否。
http://all4syria.info/web/archives/62146
同宣言には以下の活動家が署名した。
ミシェル・キールー、ワリード・ブンニー、ファーイズ・サーラ、サミール・イータ、ムラード・ダルウィーシュ、ムハンマド・ジュムア、ラジャブ・ナースィル、マンスール・アタースィー、マフムード・マルイー、バシール・サイード、ハビーブ・イーサー、アブドゥッラー・ラーイー、ムハンマド・ナジャーティー、ハーズィム・ナハール、マイス・フライディー、フサーム・ニールー、シュクリー・マハーミード。
なお大会はクドゥス政治研究センターが主催、米国のNDIが後援、米仏トルコの外交官らも出席した。
イドリブ県では、SANA(4月19日付)によると、サルミーン市・ビンニシュ市間で武装テロ集団によって誘拐された警官らの遺体複数が発見された。
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ダイル・ザウル県では、ロンドンの反体制組織、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市での軍・治安部隊による逮捕摘発活動で1人が死亡、3人が負傷、同活動開始直後に軍・治安部隊と離反兵が交戦した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市が軍・治安部隊の砲撃を受けた。
また地元調整諸委員会によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区、クスール地区、ジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区が軍・治安部隊の砲撃を受けた。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊と離反兵がサッド街道、ムハイヤム周辺で交戦した。
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自由シリア軍最高軍事評議会のアフマド・シャイフ准将が声明を出し、「シリア国民の友好国による軍事同盟を国連安保理の枠外で結成」し、アサド政権に軍事的打撃を与えるよう呼びかけた。
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反体制組織のシリア作家連盟はカイロで評議会を行ったと発表した。
当選したのは、サーディク・ジャラール・アズム、ジョルジュ・サブラー、フサイン・アウダート、アブドゥッラッザーク・イード、ムハンマド・シャフルール、ファーイズ・サーラ、アクラム・ブンニーなど内外の有識者たち。
国連安保理はUNSMIS派遣に関する非公式会合を開き、潘基文事務総長が進捗状況報告を行った。
報告のなかで、潘事務総長が安保理に示した提言によると、UNSMISは、「300人の(非武装の)軍人から構成され、最初の任期は3ヵ月…、1週間で約10地点に展開し…」、監視員とともに政治、人権、民事、公報、治安などの専門家も合わせて展開させる、という。
またシリア政府に関しては、シリア政府にUNSMISの無制限の移動の保障、シリア国内での自由な通信、監視員の安全の保障を求めた。
加えて、潘事務総長は、「暴力のレベルが著しく下がった」と評価する一方、UNSMIS構成員の国籍を指定しようとしているシリア政府の姿勢に対し「前提条件」を認めないとの姿勢を示し、市街地からの重火器撤収など政権側の停戦義務が「完全履行されていない」、「兵士の移動、重火器の使用停止、住宅地からの兵士の撤退に関わる誓約を完全に履行する責任がある」とアサド政権に迫った。
一方、UNSMISのシリア領空での活動に関して、「シリアのバッシャール・ジャアファリー国連大使が領空での移動手段を確保することに合意した」ことを明らかにし、「シリア政府がこれを遵守しない場合、国連が航空能力を確保する準備を行う」と付言した。
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スーザン・ライス米国連大使は、「ヒムス市などでの砲撃停止」と「軍の兵舎への撤退」を改めて求めるとともに、シリア政府による発砲停止、都市部からの撤退とUNSMIS派遣の関係に関して「シリア政府が監視団派遣の条件を満たす責任がある…。安保理は明日にでも監視団派遣を許可できるが、もし自由な移動ができなければ、派遣は実現しないだろう」と述べた。
ロシアのヴィタリー・チュルキン国連大使は、UNSMISのシリア領空での活動に関して、「安保理決議第2024号に合致しているが、シリアの主権が尊重されるべき」と述べ、シリア政府による航空手段の提供を支持した。
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シリアの友連絡グループ外相会合は声明を出し、「アナン特使の任務が成功しなかった場合、国連安保理と国際社会は別の選択肢を検討するだろう」との意思を示した。
会合には、シリア国内の政治的不安定を助長している西側諸国、湾岸アラブ諸国15カ国の外務大臣が出席した。
ロシアと中国は、会合直前に出席を辞退する旨発表した。
とりわけ、ロシアは外務省報道官がUPI(4月19日付)に対して、「会合の目的は…反体制勢力とダマスカスの対立を深めようとしている…。パリの会議は一方的で偏った性格を持っている。なぜならシリア政府の代表は招聘されていない」と述べた。
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サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は、フランスのアラン・ジュペ外務大臣、カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣との会談後の共同記者会見で、「このような犯罪を犯す者(シリア政府)に無実の人々を殺害する可能性が残され、無実の人々に自衛が認められていないのはおかしい」と述べ、国連監視団をめぐる活動を暗に非難した。
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ヒラリー・クリントン米国務長官は、会合でトルコがNATO憲章第7章に基づき、シリア軍によるトルコ領内のシリア人避難民キャンプへの銃撃に対処することを決定し、近くNATOで対応について協議することを明らかにした。
一方、レオン・パネッタ米国防長官は米議会の公聴会で、アサド大統領退任以外に危機の実質的解決はない」としつつ「シリア軍の大部分が(政権を)支持し続け…、反体制勢力が分裂していることが…体制を弱体化させるうえでの課題となっている」ことを認めた。
パネッタ国防長官は、「シリア国民を保護するために必要な選択肢やオプション」を国防総省が検討しており、「(オバマ)大統領が要請すれば、介入を行う防衛力を有している」と述べ、「シリア国民の保護」を口実にシリアに軍事介入し得ることを示唆したが、「単独行動」の意思はないと付言し、その可能性を事実上否定した。
また「クリントン国務長官は、国際社会のパートナーとともに、アナン特使の和平案が失敗した場合、シリアに平和維持軍を派遣できるか検討している」と付言した。
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フランスのニコラ・サルコジ大統領はシリアの友連絡グループ外相会合に先だって、シリアへの人道支援のため「人道回廊」を設置すべきだと述べた。
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イスラエルのエフド・バラク国防大臣はCNN(4月19日付)で、「アサド政権の転覆はイランにとって大きな打撃になる…。それにより、レバノンのヒズブッラー、ガザのハマースとイスラーム聖戦は劇的に弱体化するだろう」と述べた。
クウェートの『アンバー』(4月19日付)は、レバノンに避難したシリア人避難民の代理人弁護士が国際刑事裁判所にアサド大統領の「殺人、戦争犯罪、ジェノサイド、人道に対する罪」で起訴する起訴状を提出した、と報じた。
AFP, April 19, 2012、Akhbar al-Sharq, April 19, 2012、al-Anbaʼ, April 19, 2012、CNN, April 19, 2012、al-Hayat, April 20, 2012, April 23, 2012、Kull-na Shuraka’, April 19, 2012, April 22, 2012、al-Mustaqbal, April 18, 2012、Naharnet.com, April 19, 2012, April 20, 2012、Reuters,
April 19, 2012、SANA, April 19, 2012などをもとに作成。
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イドリブ県では、テレグラムの「…
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