シリア・ムスリム同胞団がジュネーブ2会議への参加条件として「アサド政権による退陣受諾」を挙げるなか、休戦合意が成立していたムウダミーヤト・シャーム市で軍と反体制武装集団が戦闘を再開(2013年12月26日)

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反体制勢力の動き

クッルナー・シュラカー(12月26日付)は、複数の住民からの情報として、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が自らの支配地域で、クリスマスイブのサンタクロースの「訪問」を条件付きで認めたと報じた。

ダーイシュが課した条件とは以下の通り:

1. サンタクロース(バーバー・ノエル)の名をシャイフ・ナーイル・アンサーリーと改称する。
2. 黒い正装(アフガン風、ないしはパキスタン風の服装)で訪問する。
3. 口髭は短く、あご髭は腕の中程まで伸ばす。
4. 男の子への贈り物は数珠、女の子への贈り物はニカーブをかぶった人形とする。
5. 火災を防ぐため、煙突からでなく正面玄関から訪問する。
6. そりはラクダで引く。

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シリア・ムスリム同胞団のムハンマド・リヤード・シャカファ最高監督者はアジア通信(12月26日付)のインタビューに応じ、ジュネーブ2会議に関して「我々の参加条件は、政権による殺戮・破壊行為の停止、革命家全員の釈放、平和的運動の抑圧停止、アサドによる退陣受諾だ」と述べた。

またイスラーム戦線に関して、「我々は常に戦列の統一を支持している。(イスラーム)戦線の結成については、その憲章の文言の一部に対する態度を留保はしているが、歓迎している」と述べた。

さらにシャームの民のヌスラ戦線については、「アブー・ムハンマド・ジャウラーニー氏の発言から、イラク・シャーム・イスラーム国からの分裂後、彼らの思想が発展を遂げていることが分かる。我々は、誰が国民を統治し、誰が憲法を定めるかといった点で、彼らと意見を異にしている。なぜなら我々は投票箱ですべてを決めようとしているからだ」と述べた。

一方、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)については「いわゆるイラク・シャーム・イスラーム国との間で連絡をとり合ってはいない。彼らのシリアへの干渉は不当だと考えている」と批判した。

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シリア革命反体制勢力国民連立は、ロシアの石油採掘会社ソユーズネフチェガス社と石油鉱物資源省の地中海領海での石油ガス探査に関する合意を「シリア国民を殺すためのロシア製の武器と国の財産を交換する行為だ…。ロシア政府は、国際テロ最大の源泉であるアサド政権を支援することで、血のパートナーとなっている」と非難した。

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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長は声明を出し、「反体制勢力が不可能な条件を提示している」と批判するアリー・ハイダル国民和解問題担当国家大臣に反論、「ジュネーブ2会議開催における不可能な条件とはアサドが政治的役割を担い続けることだ」と述べた。

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アラブ民主潮流とシリア国民民主ブロックが共同声明を出し、ジュネーブ2会議に先だって、カイロでの反体制勢力による全体会合の開催を呼びかけ、民主的変革諸勢力国民調整委員会、シリア国民変革潮流に同調した。

シリア政府の動き

ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣は、インドのサンディーブ・クマル外務大臣補佐官代行とダマスカスで会談した。

会談で、ムアッリム外務在外居住者大臣は、「テロとの戦いがジュネーブ2会議における最優先事項となるだろう」と述べた。

SANA(12月26日付)が伝えた。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、休戦合意が成立していたムウダミーヤト・シャーム市で、軍と反体制武装集団が合意に違反し、交戦した。

合意違反に関して、アフマドを名乗る活動家はAFP(12月26日付)に、「我々が休戦を守っていたのに、政府軍が理由無く、重火器を発砲した」と主張した。

また同監視団によると、アドラー市郊外で、軍、国防隊、ヒズブッラー民兵が、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)などと交戦した。

さらに、軍はハーン・シャイフ・キャンプのマンシーヤ墓地に「樽爆弾」を投下し、1人が死亡、子供4人を含む複数が負傷した。またハーン・シャイフ・キャンプ・マンシーヤ市間の回廊、ムウダミーヤト・シャーム市北部、ダマスカス県・クナイトラ県高速道路で軍と反体制武装集団が交戦したという。

このほか、ドゥーマー市、バービッラー市および同市郊外、ザバダーニー市、リーマー農場、クワイル・ザイド村、ムカイラビーヤ・ザーキヤ街道で、軍が地対地ミサイルなどで砲撃・爆撃を行い、死傷者が出た。

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アレッポ県では、クッルナー・シュラカー(12月26日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線などが未明に、アレッポ市カッラーサ地区にあるシャダー自由テレビ局のオフィスを襲撃し、機材などを破壊・強奪、7人を拉致した。この襲撃で職員複数が負傷した。

またシリア人権監視団、シリア革命総合委員会によると、フライターン市、ダーラト・イッザ市、アナダーン市、ナッカーリーン村、アレッポ市マサーキン・ハナーヌー地区などに、軍が「樽爆弾」などで攻撃を加え、死傷者が出た。

さらにアレッポ市ナッカーリーン地区では、軍、国防隊、ヒズブッラー民兵が、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線などと交戦し、軍が同地区の複数カ所を制圧した。

その後、クッルナー・シュラカー(12月27日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、アレッポ市マサーキン・ハナーヌー地区で、シャフバー・プレス通信の事務所を襲撃し、ミーラード・シハービー特派員・局長を拉致した。

シャフバー・プレス通信は、タウヒード旅団に近い通信社とされる。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、サルマー町、ムライジュ地方で、軍、国防隊が、反体制武装集団と交戦した。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(12月26日付)によると、カーミシュリー市でクルド青年運動の幹部2人が総合情報部のパトロール部隊に逮捕された。

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ダルアー県では、ジャースィム市で活動するムラービトィーン旅団が、同市を包囲するシリア軍への補給物資のなかに国連世界食糧計画の支援物資が保有されていると発表、その映像(http://www.youtube.com/watch?v=psHqKM9b2UM&feature=player_embedded)を公開した。

諸外国の動き

イラキー・ニュース(12月26日付)は、イラクのニナワ県タッルアファル南部で、イラク軍・治安部隊がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)のキャンプを攻撃、破壊したと報じた。

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イラキー・ニュース(12月26日付)は、イラクのサラーフッディーン県ティクリート市東部で、イラク治安部隊が特殊作戦を敢行し、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)のアミールの一人アフマド・バドリー氏を殺害したと報じた。

AFP, December 26, 2013、AP, December 26, 2013、ASIA, December 26, 2013、Champress, December 26, 2013、Iraqinews.com, December 26, 2013、al-Hayat, December 27, 2013、Kull-na Shuraka’, December 26, 2013, December 27, 2013、Naharnet, December 26, 2013、NNA, December 26, 2013、Reuters, December 26, 2013、Rihab News, December 26, 2013、SANA, December 26, 2013、UPI, December 26, 2013などをもとに作成。

 

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