民主的変革諸勢力国民調整委員会がジュネーブ2会議での統一代表団結成に向けた会合の開催を発表、シリアが課されている経済制裁にもかかわらずイラク産の原油を秘密裏に輸入してきたことが明らかに(2013年12月24日)

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反体制勢力の動き

AKI(12月24日付)は、離反兵筋の話として、シリア軍によるアレッポ市北部への樽爆弾などによる攻撃は、クワイリス航空基地に向かう街道を制圧し、同飛行場に保管されている化学兵器を搬出することを目的とし、「国際社会の実質的な同意」を得ている、と報じた。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会は声明を出し、「単一の使節団、単一のプログラム、単一の声」と銘打ったイニシアチブを立ち上げ、ジュネーブ2会議での統一代表団結成に向けた会合をカイロで開催すると発表、シリア革命反体制勢力国民連立、シリア・クルド最高会議に参加を呼びかけた。

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『ハヤート』(12月25日付)は、反対筋の話として、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長が、国連安保理議長とアラブ連盟事務局長に宛てて書簡を送り、軍によるアレッポ県への攻撃激化について「ジュネーブ2会議の期日を決定したことへの報復」と断じ、「反体制勢力は追い込まれている」と伝えたと報じた。

しかし同消息筋によると、ジャルバー議長はアラブ諸国や諸外国の高官との電話会談で、「現地で戦闘が激化を続ければ、(大会開催)日程は、100%これまで通りとはいかないが…、ジュネーブ2会議への参加を固辞すべき」との「アドバイス」を受けたという。

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シリア革命反体制勢力国民連立暫定政府のアスアド・ムスタファー国防大臣は、滞在中のカタールの首都ドーハで『ハヤート』(12月25日付)に「我々は犯罪者の体制と戦っている。この体制は殺戮、犯罪を支援する同盟者の支援を受け、ロシアの政治的支援のもと…資金、武器、兵士を受け取っている」と述べたうえで、アラブ諸国に対して暫定政府と暫定政府国防省にあらゆる支援を行うよう求めた。

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シャームの民のヌスラ戦線を中心とする反体制武装集団36組織が共同声明を出し、同戦線始動のもとにカラムーン統一作戦司令室を設置し、「閉ざされることのないアッラーの門の戦い2」を開始すると発表した。

カラムーン統一作戦指令部に参加した武装集団は以下の通り:

1. ヤブルード部門:ヌスラ戦線、シャーム・イスラーム自由人運動、ハック旅団、クサイル旅団、ダマスカスの鷲旅団、ナシュミー連合、ダマスカスの盾旅団、征服の鷹旅団、アンサール大隊、ファールーク独立大隊、シャーム解放旅団、ヒムス・ムクニウ・ファールーク大隊、ワーディー大隊、殉教者アブー・フダー大隊、スンナの獅子大隊、アフル・アスル大隊。
2. マアルーラー部門:ヌスラ戦線、シャーム解放旅団、外国人旅団、カラムーン解放戦線、ウムリーヤ大隊、イスラーム・シャーム自由人運動、ファジュル・タウヒード旅団、ダマスカスの鷲旅団、ファールーク独立大隊、イスラーム軍スンナの騎士大隊。
3. ランクース部門:ヌスラ戦線、カーディスィーヤ旅団、リジャールッラー旅団、ワ・アイッドゥー旅団、外国人旅団、ファジュル・タウヒード旅団、殉教者アブドゥッラッザーク・アブドゥルマーリク旅団、イスラーム軍スンナの騎士大隊。

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シリア人権監視団は、12月15日以降、シリア軍のアレッポ県に対する「樽爆弾」の攻撃による犠牲者数が、子供105人、女性33人、戦闘員30人以上を含めて364人に達したと発表した。

シリア政府の動き

SANA(12月24日付)は、外務在外居住者省高官の話として、「武装テロ集団」を支援している「周知の国々」が漏洩した「情報」をもとに、反体制武装集団が21日にシリア中部とダマスカス郊外県の化学兵器関連施設2カ所を攻撃したと報じた。

同高官によると「12月21日、武装テロ集団(反体制武装集団)がシリア中部の化学兵器関連施設1カ所に対して大規模な攻撃を行った…が、関係当局が応戦、撃退した」。

また「アル=カーイダとつながりがあるシャームの民のヌスラ戦線などからなる複数の集団が、ダマスカス郊外県にある施設を攻撃、大量の爆発物を積んだ装甲車で突入しようとしたが、施設を警備する部隊が応戦、この装甲車が侵入する前に爆破」したが、これにより4人が戦死、28人が負傷した、という。

同高官は「同施設への攻撃の試みは続いている」としつつも、攻撃を受けた2カ所の施設がどこにあるのかについては言及しなかった。

同高官はさらに、シリアの反体制勢力を支援する複数の国が、海上での廃棄のために搬出されることが決定している化学兵器が保管された施設に関する情報を武装集団に「漏洩」したと非難した。

そのうえで「重要なのは、国連や化学兵器禁止機関との協力のもと、これらの化学物質をシリア国外に搬出するために行われている努力をテロ集団がどのように知ったかだ」としたうえで、「武装集団と連絡を取り合い、これらの施設にある危険物質やその搬出に関する情報を伝えている一部の国々の危険や役割無責任」を批判した。

国内の暴力

ダマスカス県では、SANA(12月24日付)によると、ザバダーニー地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾市、市民4人が死亡、約20人が負傷した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市スッカリー地区に対して、軍が「樽爆弾」を投下し、女性1人、子供3人を夫君無15人が死亡した。

また軍はアウラム・クブラー町、アアザーズ市、アターリブ市などに対しても砲撃・爆撃を行った。

一方、SANA(12月24日付)によると、カシーシュ航空基地周辺、ラスム・アッブード村周辺、ジュッブ・ガブシャ村、シャイフ・ナッジャール市(工業団地地区)、アレッポ中央刑務所周辺、アルバイド村、クワイリス村、アアザーズ市、カフルハムラ村、アナダーン市、アーナ村、ザルズール村、ハンダラート・キャンプ、ヒーラーン村、カフルナーハー村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、マルジャ地区、スッカリー地区、サーリヒーン地区、フライビル地区、イスカーン・アスカリー地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(12月24日付)によると、ドゥーマー市、ヤルダー市、ザバダーニー市、ナブク市、サキー農場、フーシュ・アラブ村、カルナト・ナジュマ村、カルナト・ウンム・シャバービーク村、ザフラト・グバイリー村、ラース・ルース村、ジャブアディーン町北東部で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(12月24日付)によると、サラーキブ市周辺、サルミーン市、ラーマ市、イフスィム町、アリーハー市、マアッラトミスリーン市、タフタナーズ市、ドゥワイル・アクラード村(ハマー県)に面する県境一帯で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(12月24日付)によると、ブルジュ・カーイー村、ラスタン市、タルビーサ市、ナフダイン山、ヒムス市バーブ・フード地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(12月24日付)によると、ダルアー市各所で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

諸外国の動き

ロイター通信(12月24日付)は、欧米諸国、湾岸アラブ諸国を中心とするアラブ連盟による対シリア経済制裁にもかかわらず、シリア政府が過去9ヶ月間にわたって、イラク産の原油をエジプト経由で秘密裏に輸入してきたことが、複数の通商関連文書から明らかになったと報じた(http://www.reuters.com/article/2013/12/23/us-syria-oil-idUSBRE9BM0RI20131223)。

これらの文書によると、これまでにイラン国営タンカー社(NITC)の貨物船4隻(Camellia、Daisy、Lantana、Clove)が少なくとも4回にわたって、エジプト・アレキサンドリア県にあるシディクリル港を経由して、イラク産の原油数百万バレルをシリア(Sytrol)に輸出したという。

このうちの少なくとも2回は、ベイルートに本社があるレバノンの海外石油貿易社(OPT)が関与、Sytrolに2億5,000万ドル請求し、また1回は、カイロに本社があるエジプトのトリ・オーシャン・エネルギー社が関与していたという。

これに関して、NITC、シディクリル港を管理するアラブ石油パイプライン社(SUMED)はコメントを控えており、OPT、トリ・オーシャン・エネルギー社は関与を否定しているという。

なおシリアは2013年2月から10月にかけて、約1,700万バレルの石油をイランから直接、ないしはエジプト経由で輸入しているという。

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ロイター通信(12月24日付)は、イスラエル高官の話として、イスラエルが同盟国とともに、シリアでの戦闘に参加している西側諸国出身のジハード主義戦闘員のイスラエルへの攻撃や、西側諸国への帰国を阻止するため、その動きを追跡している、と報じた。

同高官によると、シリア国内で反体制武装活動をする外国人戦闘員1万人のうち約20%が西側諸国出身者で、その数は増加している、という。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はRT(12月24日付)で「ロシアのパートナーである西側諸国は、アサド政権の崩壊がシリア危機の正常化の方途とはならず、過激派による権力掌握をもたらしかねないということを理解するようになった」と述べた。

ラブロフ外務大臣はまた「アサドがもはやシリアを代表していないとの一部の西側指導者のこれまでの発言は、時期尚早だった。アサド大統領はシリア国民の広範な層を依然として代表している…。国際社会によるテロとの戦いが、ジュネーブ2会議の関心の中心に据えられねばならない。誰かがそれに反対しないこと、反体制勢力が米露のイニシアチブに対して受け入れられないような新たな条件をつきつけないことを望んでいる」と述べた。

さらに「イランの参加については最終的な決定はなされてない。イランが有害で、昨年のジュネーブ合意に署名していないと彼らは言う。しかし我々は、サウジアラビアとイランの参加が必要だと考えている。この二カ国はシリア情勢に影響力を行使するだろうから、対話に参加するのが望ましい」と付言した。

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米ホワイトハウスのジェイ・カーニー報道官は、シリア軍が樽爆弾やスカッド・ミサイルを「無差別」に使用していると非難し、シリア政府に人道を尊重し、民間人を保護するよう呼びかけた。

AFP(12月24日付)が伝えた。

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イラキー・ニュース(12月24日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がキルクーク県で、イラク政府関連施設(警察、病院、銀行など)を襲撃すると予告したビラを配布した。

AFP, December 24, 2013、AKI, December 24, 2013、al-Hayat, December 25, 2013、Iraqinews.com, December 24, 2013、Kull-na Shuraka’, December 24, 2013、Naharnet, December 24, 2013、Reuters, December 24, 2013、Rihab News, December 24, 2013、RT, December 24, 2013、SANA, December 24, 2013、UPI, December 24, 2013などをもとに作成。

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