シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯第1ゾーンでは、シリア軍側が72時間の一時停戦に入ったと発表したことを受け、シリア・ロシア軍の爆撃は止み、シリア軍と反体制武装集団の戦闘も、ハマー県北部とラタキア県北部の一部を除いて小康状態となった。
シリア人権監視団によると、シリア軍ヘリコプターによる「樽爆弾」、戦闘機による爆撃、ロシア軍による爆撃はいずれも確認されなかった。
だが、イドリブ県南部、ハマー県北部では、国民解放戦線やイッザ軍が停戦拒否の姿勢を示したこともあり、シャーム解放機構、トルキスタン・イスラーム党を含む反体制武装集団と、シリア軍、親政権民兵による砲撃戦、戦闘が続いた。
これにより、4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より7人(民間人7人、兵士・戦闘員0人)増えて481人となった。
うち、163人は民間人(女性37人、子供32人を含む)、308人がシリア軍兵士および反体制武装集団戦闘員。
**
ハマー県では、シリア人権監視団によると、カルカート村灌木地帯でシリア軍、親政権民兵と反体制武装集団が激しく交戦、シリア軍がアルバイーン村、マイダーン・ガザール村を砲撃、反体制武装集団もシリア軍の拠点に砲撃で応戦した。
シリア軍はこのほか、サルマーニーヤ村を砲撃した。
イバー・ネット(5月18日付)によると、シャーム解放機構がカルカート村灌木地帯でシリア士官1人を含むシリア軍兵士を殺害したと伝えた。
また、トルコの支援を受ける国民解放戦線がフワイズ村でシリア軍の装甲車をコルネット・ミサイル、TOW対戦車ミサイルを撃破、その映像を公開した。
一方、SANA(5月18日付)によると、シリア軍がシャフシャブー山に面するガーブ平原に配置されている拠点への攻撃を試みようとしたシャーム解放機構を撃退し、複数の戦闘員を殺傷した。
また、ハウワーシュ村、フワイジャ村一帯で活動する反体制武装集団がフワイズ村の拠点を砲撃したことに対し、シリア軍も砲撃で応戦した。
**
イドリブ県では、シリア人権監視団によると、フバイト村に対するロシア軍戦闘機の爆撃で負傷していた住民1人が死亡した。
一方、NHA(5月18日付)は、シリア人権監視団の発表とは裏腹に、ハマー県北部に移動しようとしていた反体制武装集団の車列を、ロシア軍戦闘機がカフルナブル市、マアッラト・ヌウマーン市、ハーン・シャイフーン市一帯で爆撃したと伝えた。
ANHAによると、ロシア軍戦闘機はまた、シャーム解放機構の拠点に対しても爆撃を行ったという。
また、ドゥラル・シャーミーヤ(5月18日付)によると、シリア軍は未明にマアッラト・ヌウマーン市、カフルルーマー村、カフルヤディーン村を砲撃し、マアッラト・ヌウマーン市では女性2人と女児1人を含む4人が、カフルルーマー村では2人が死亡した。
**
ラタキア県では、シリア人権監視団によると、ジャブラ市近郊で、シリア駐留ロシア軍の司令部があるフマイミーム航空基地に対する無人航空機(ドローン)の爆撃や砲撃と思われる大きな爆発音が聞こえた。
これに関して、SANA(5月18日付)は、反体制武装集団がジャブラ市近郊のシャラーシール村とフワイズ村を砲撃し、住民1人が死亡、複数が負傷したと伝えた。
シリア人権監視団によると、反体制武装集団が撃った砲弾は15発以上。
**
アレッポ県では、ANHA(5月18日付)によると、反体制武装集団が未明にアレッポ市の第3000住宅計画地区を砲撃、シリア軍が応戦した。
また、トルコの支援を受ける反体制武装集団の戦闘員数百人を乗せた車列が、アフリーン市南のガザーウィーヤ村の通行所を経由して、シャーム解放機構が軍事・治安権限を握る反体制派支配地域(緊張緩和地帯第1ゾーン)に入り、ハマー県北部、イドリブ県南部の前線に向かった。
ANHA(5月19日付)によると、イドリブ県に入ったのは、アブー・ハサンを名のる司令官が率いるバドル殉教者軍のメンバー110人。
**
ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を10件(ラタキア県)確認したと発表した。
トルコ側の監視チームは停戦違反を16件(イドリブ県5件、アレッポ県1件、ハマー県10件)確認した。
AFP, May 18, 2019、ANHA, May 18, 2019、May 19, 2019、AP, May 18, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 18, 2019、al-Hayat, May 19, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, May 18, 2019、Reuters, May 18, 2019、SANA, May 18, 2019、Shabaka Iba’ al-Ikhbariya, May 18, 2019、SOHR, May 18, 2019、UPI, May 18, 2019などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.
ナハールネット(11月21日付…
イドリブ県では、テレグラムの「…