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ワリード・ムアッリム外務大臣はダマスカスで記者会見を開き、アラブ連盟外相会議での対シリア経済制裁発動に関する決議を「扉を閉ざした」、シリアに対する「経済戦争」だと非難した。
ムアッリム外務大臣は11月初めのドーハでの(アラブ連盟のワーキングペーパーに関する)アラブ連盟外相委員会とシリア政府使節団の合意の「文言と精神を遵守」するよう連盟に「再検討」を求め、ドーハでの合意に基づいて問題への対処を行うよう求めた。またシリアの加盟停止を定めたその後の決議を非難し、「一部の連盟加盟国が国際問題化しようとしている」と述べた。
また、カイロの連盟本部でのシリア政府と反対勢力との対話を求めるアラブ連盟の提案を、「アラブ連盟側の立場は明白で、カイロでの対話、挙国一致内閣、移行期間を求めているが、これは拒否される…。すべての人々が参加する対話が行われれば、挙国一致内閣に関する合意もなされるが、それは対話の後だ」と述べ、却下した。
アラブ連盟外相会議での対シリア経済制裁発動決議、とりわけシリア中央銀行との取引停止に関しては、「経済的な側面からの宣戦布告で、前例のない措置」だと非難する一方、予防措置として、アラブ諸国におけるシリアの預金の95%を引き落とした」と述べた。
一方、ムアッリム外務大臣はアサド政権主導下の改革に関して、12月12日予定の統一地方選挙やシリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会の活動を上げて、「前進」していると述べるとともに、国民対話会議に関しては「国民対話は政府と反体制勢力の間で行われるものではない。政府、反体制勢力のいずれにも与していない国民が数百万人とおり、彼らには正当な要求がある」と述べた。
また国外の反体制勢力の国民対話への参加を「保障」する準備があると付言した。
また「(シリア・アラブ共和国)憲法(草案準備)委員会報道官は今日、新憲法の基本規定のなかに複数政党制が盛り込まれており、政党間を差別する余地はなく、世界の国々のほとんどの憲法と同様、新憲法には第8条はない」と述べ、「バアス党は社会と国家を指導する指導党である」との現憲法の前衛党規定が削除されることを明らかにした。
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SANA(11月28日付)は、シリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会が新憲法草案(第1稿)作成のための会合を開催したと報じた。
委員会のサーム・ダッラ報道官によると、草案の大部分は完成し、残りの部分は今週末までに完成させる、という。
ダッラ報道官によると、新憲法の基本規定には、主権在民、三権分立、司法の独立、基本的人権の保障、すべての政党間の平等を原則とする政治的多元主義、地方分権などが盛り込まれているという。
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ダマスカス県の複数の広場、アレッポ県アレッポ市のサイフ・ダウラ広場、ハサカ県ハサカ市、ダイル・ザウル県ダイル・ザウル市、スワイダー県スワイダー市、ヒムス県ヒムス市郊外、タルトゥース県タルトゥース市などシリア各地で、アサド政権の改革支持、外国の干渉拒否を訴える百万人集会が開催された。
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ムハンマド・ニダール・シャッアール経済大臣はAFP(11月28日付)に対して、アラブ連盟による対シリア経済制裁の影響を厳密にすることは困難だが、シリア経済に深刻な影響を及ぼすだろう」と述べた。
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シリア商業会議所が声明を出し、アラブ連盟の対シリア経済制裁がシリア国民全体に大きな被害をもたらすだろうと警鐘を発した。
シリア国民評議会の使節団(ブルハーン・ガルユーン事務局長ら)と自由シリア軍の指導部(リヤード・アスアド大佐ら)が会談した。
会談では両組織の連絡強化、協調体制構築について審議され、共同委員会を設置し、現地での活動、救援、情報、政務などで連携することで合意した。
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シリア国内で反体制活動を行う国民民主変革諸勢力国民調整委員会の報道官はAKI(11月28日付)に対して、ムアッリム外務大臣の記者会見は、アラブ連盟の要求を拒否した理由をシリア国民に満足させることに「失敗している」と非難した。
国民民主変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム総合調整役は声明を出し、シリア国民への影響を回避しようとするアラブ連盟の対シリア経済制裁発動の試みを評価するとともに、連盟に対してアサド政権をさらに孤立させるべく行動を継続するよう求めた。
またアブドゥルアズィーム総合調整役はアーラム・チャンネル(11月28日付)に対して、アラブ連盟の経済制裁はシリア国民ではなくアサド政権に影響を与えると断じたうえで、アラブ連盟主導による「アラブ的解決」こそがシリアの危機打開をもたらすとの見方を示した。
アブドゥルアズィーム総合調整役はまた外国の軍事介入を改めて拒否するとともに、アサド政権に対して暴力と殺戮の停止、逮捕者釈放、平和的デモの認可を求め、体制転換と愛国的民主国家の建設を主唱した。
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シリア変革大会(アンタキア)は声明を出し、アラブ連盟の対シリア経済制裁に関して「アラブ連盟の進路における歴史的転換点」、「アラブの行動への新たな概念の構築」と高く評価した。
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『クッルナー・シュラカー』(11月28日付)は、シリア学生国民連合がダマスカス県内の大学生に対して、アサド政権を支持するデモへの参加を強要している、と報じた。
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シリア当局は、国内で30年にわたってマール・ムーサー修道院(ヒムス県ナバク地方)で布教活動を行ってきたイエズス会のイタリア人聖職者(パウロ・ダログリオ、Paolo Dall’Oglio)氏を11月21日付で国外追放処分とした。
同氏がシリア国内での弾圧を非難したことが理由だという。
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シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長は、同監視団がマール・ヤアクーブ修道院(ダマスカス郊外県)のアグネス・マリヤム・サリーブ修道長から反体制運動弾圧の死傷者の情報を得ていたとの一部情報を否定した。
ヒムス県では、SANA(11月28日付)によると、ヒムス市ワルシャ地区で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、3人を殺害、武器を押収した。
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イドリブ県では、SANA(11月28日付)によると、カフルナブル市で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、2人を逮捕した。またイドリブ県北部で鉄道の線路にしかけられた爆弾2発が爆発したが、被害は限定的だったという。
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なお過去数ヶ月にわたり、反体制運動に対するシリア政府の弾圧の被害を発表してきたシリア人権監視団は、先週末から、「民間人の殉教者の数が27人に上った」(11月26日付)、「民間人の殉教者の数が32人に上った」(11月28日付)と犠牲者を積算して発表するようになっており、ジャズィーラなどアサド政権に対して敵対姿勢をとる一部のメディアを除いて、その数字を引用していない。
『ミッリイェト』(11月28日付)は、イランのIRNAの報道を引用し、フランス軍部隊がトルコとレバノンでシリアの反体制勢力(自由シリア軍)の軍事教練を行っていると報じた。
同報道によると、フランス、英国、そしてトルコの当局はシリアで活動する反体制武装組織への武器供与を行うことで合意に達しているという。
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国連の独立人権調査委員会は報告書を発表し、シリア政府が国内で軍・治安部隊などを通じて人道に対する罪を犯していると認定し、民間人補語のための「早急な措置の実施」と、「すべての当事者への武器支給の停止」と提言した。
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EU諸国政府はブリュッセルで、シリア政府に対する追加の金融制裁を科すことで合意した。
12月1日以降に正式に発表される追加制裁では、EU諸国によるシリア政府発行の国債の取引禁止、EU域内でのシリアの銀行の支店開設禁止ないしはシリアの銀行によるEU内での投資禁止、石油・ガス関連設備の輸出禁止などが盛り込まれるという。
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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、France Info(11月28日付)に対して、「シリアの体制に残されている日は限られている」と述べた。
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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、改めて、シリアにアラブ監視団派遣に関する議定書に署名するようシリア政府に求めた。
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ロシア軍は、ロシア海軍は航空母艦などを含む艦隊を地中海に派遣し、タルトゥース港などに寄港する予定だと発表した。
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イラクのイラーキーヤ・ブロック(イヤード・アッラーウィー元首相代表)は、シリア政府に対して「内政問題への外国の介入を回避するため…アラブ連盟の決議を迅速に実行する」よう呼びかけた。
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レバノンの北部県トリポリ市にあるバーブ・タッバーナ地区(スンナ派地区)で、住民数十人がムアッリム外務大臣が記者会見で公開した写真を「同地区住民への中傷」だと非難し、抗議の座り込みを行った。
座り込みに参加した住民によると、シリア国外、とりわけレバノンから若者が流入しシリアで武装活動を行っていることの証拠としてムアッリム外務大臣が示した写真は、が2008年以降にフェイスブックで公開されている写真で、バーブ・タッバーナ地区とジャバル・ムフスィン地区(アラウィー派地区)との間の戦闘の写真だという。
AFP, November 28, 2011、Akhbar al-Sharq, November 28, 2011, November 29, 2011、AKI, November 28, 2011、DP-News, November 29, 2011、al-Hayat, November 29, 2011, December 2, 2011、Kull-na Shuraka’, November 27, 2011, November 28, 2011、Naharnet.com, November 28, 2011、Reuters, November 28, 2011、SANA, November 28, 2011、http://www.syriahr.com/などをもとに作成。
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