ロシア軍がイドリブ県のザーウィヤ山地方やハマー県のガーブ平原を激しく爆撃(2020年6月8日)

英国を拠点に活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、ロシア・トルコ首脳会談で合意された停戦が発効(3月5日深夜)してから95日目となる6月8日、ロシア軍戦闘機が、イドリブ県のザーウィヤ山地方やハマー県のガーブ平原に対して爆撃を実施した。

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ハマー県では、ドゥラル・シャーミーヤ(6月8日付)やシリア人権監視団によると、新興のアル=カーイダ系組織のフッラース・ディーン機構が主導する「信者を煽れ」作戦司令室が、ファターティラ村、マナーラ村(別名タンジャラ村)に配置されているシリア軍の拠点複数カ所を襲撃、シリア軍兵士多数を殺害、士官1人を捕捉、激しい戦闘の末に両村を制圧した。

これを受けて、ロシア軍戦闘機が、両村やザクーム村などガーブ平原一帯とイドリブ県ザーウィヤ山地方のファッティーラ村、カンスフラ村、カフル・ウワイド村、マウザラ村、スフーフン村、クーフキーン村、アイン・ラールーズ村などに対して爆撃を実施した。

爆撃は30回以上におよび、住民1人が死亡、多数が負傷した。

爆撃と並行して、シリア軍もファターティラ村、マナーラ村、イドリブ県のルワイハ村、バイニーン村近郊の森林地帯を砲撃した。

戦闘の末、シリア軍は拠点を奪還、「信者を煽れ」作戦司令室の戦闘員22人(シリア人司令官1人を含む)を殲滅した。

SANA(6月8日付)は、ガーブ平原のシリア軍拠点に対して、「テロ集団」が爆弾を積んだ自動車で自爆攻撃を試みたが、シリア軍がこれを迎撃、「テロ集団」を殲滅したと伝えた。

シリア人権監視団によると、戦闘では、シリア軍兵士も19人が死亡した。


一方、イバー・ネット(6月8日付)によると、「信者を煽れ」作戦司令室の侵攻に先立って、シャーム解放機構が装甲車や兵員輸送車など20輌からなる増援部隊をザーウィヤ山地方に派遣、シリア人権監視団によると、シリア軍も部隊を集結させていた。

他方、シリア人権監視団によると、トルコ軍は、兵站物資を積んだ車輌15輌をカフル・ルースィーン村に違法に設置されている国境通行所からシリア領内に新たに進入させた。

なお、サウジアラビアの衛星テレビ局アラビーヤ・チャンネル(6月8日付)は、この戦闘に関して、戦闘でシリア軍と「過激派」合わせて41人が死亡したと伝えた。

アラビーヤ・チャンネルが反体制派を「過激派」と呼ぶのは異例で、ドゥラル・シャーミーヤ(6月
8日付)は、SNS上ではシリア人活動家らが怒りの声があげていると伝えた。

ドゥラル・シャーミーヤは「信者を煽れ」作戦司令室を「革命諸派」と評している。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を5件(イドリブ県3件、ラタキア県0件、アレッポ県2件、ハマー県0件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を1件(イドリブ県1件、ラタキア県0件、アレッポ県0件、ハマー県0件)確認した。

AFP, June 8, 2020、ANHA, June 8, 2020、AP, June 8, 2020、al-Durar al-Shamiya, June 8, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, June 8, 2020、Reuters, June 8, 2020、SANA, June 8, 2020、Shabaka Iba’ al-Ikhbariya, June 8, 2020、SOHR, June 8, 2020、UPI, June 8, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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