アレッポ市で軍事情報局施設と治安維持部隊施設を標的とした自爆テロが発生するなか、シリア国民評議会はドーハで大会を開催し「シリアの友連絡グループ」への対応などを審議(2012年2月10日)

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国内の暴力

SANA(2月10日付)など内外のメディアによると、アレッポ県アレッポ市で軍事情報局施設と治安維持部隊施設を標的とした自爆テロ(車爆弾)が発生し、民間人と軍人少なくとも28人が死亡し、235人が負傷した。

SANA, February 10, 2012

SANA, February 10, 2012

SANA, February 10, 2012

負傷者のうち15人は子供だという。

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自爆テロを受け、シリア外務省は国連事務総長、同安保理議長、イスラーム諸国会議機構事務局長、アラブ連盟事務局長、国連人権理事会宛てに書簡を送付、そのなかで同テロを「アラブ、西側諸国が支援する」テロリストによって行われたと非難した。

また安保理に対して、「テロ撲滅の責任を果たすべく、これまでの決議を実行するよう」求めるとともに、「テロ集団に資金や武器を供与する者に、これらの犯罪者、テロリストを国際法に従って引き渡す」よう求めた。

バアス党民族指導部も声明を出し、自爆テロが国内で「殺戮、憎悪、犯罪を唱導する者たちが破綻したことの証」だと非難した。

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事件発生を受け、自由シリア軍の軍事評議会メンバーを名のるアーリフ・ハンムード大佐がBBC(2月10日付)に対して、両施設が車爆弾で爆破されたのではなく、自由シリア軍の攻撃によって破壊されたと宣言、またこの攻撃に施設内の兵士らの協力があったと述べた。

しかし自由シリア軍報道官のマーヒル・ヌアイミー少佐はAFP(2月10日付)に対して、「殺人政府はヒムスで我々の子供たちを殺している。アレッポでの爆発は、自らが犯す罪から視線をそらすことが目的だ」と犯行を否定した。

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一方、シリア国民評議会のナージー・タイヤーラ氏も「事件発生からたった5分で爆発が車爆弾によるとシリア政府がどのように知ることができたのか」と疑問を投げかけ、「遺体はすでに用意されていた」とアサド政権の自作自演を断じた。

またシリア革命調整連合、シリア革命総合委員会などの反体制勢力もこぞってアサド政権による自作自演だと断じた。

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『ハヤート』(2月11日付)によると、各地で金曜礼拝後に反体制デモが散発的に発生し、治安部隊の発砲によって、13人が死亡した。

ダマスカス県・ダマスカス郊外県地元調整委員会報道官を自称するムハンマド・シャーミーを名のる人物によると、反体制デモはダマスカス県マイダーン地区、カーブーン区、マッザ区、バルザ区、カダム区で発生したというが、真偽、規模などは定かでない。

SNN, February 10, 2012

SNN, February 10, 2012

またシリア人権監視団によると、ヒムス市ワアル地区、ダルアー県ダーイル町、ラタキア県ラタキア市サンクトゥーリー地区などでもデモが発生し、治安部隊が強制排除を試みたという。

これに先だって、反体制活動家はインターネットなどを通じて「ロシアは我々の子供たちを殺している金曜日」と銘打って、反体制デモを呼びかけていた。

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ヒムス県ヒムス市、ダマスカス郊外県ザバダーニー市、イドリブ県各地では、軍・治安部隊による反体制勢力の掃討作戦が続き、シリア人権監視団によると、ヒムス市で39人が、また全国で合わせて61人が殺害されたという。

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しかし、SANA(2月10日付)は、国内の暴力が武装テロ集団の犯行と報じた。

同通信社によると、ヒムス県では、武装テロ集団がヒムス市のバーブ・アムル地区の家屋多数を爆破した。またワアル地区で武装テロ集団が爆弾を投げ、1人が死亡した。

ダルアー県では、ダーイル町で武装テロ集団の襲撃を受けた治安維持部隊がテロ集団メンバー2人を殺害した。またブスル・ハリール市では武装テロ集団の襲撃で子供1人が殺害された。

ダイル・ザウル県では、ブーカマール市で武装テロ集団がしかけた爆弾が爆発し、警官1人が死亡、複数が負傷した。またダイル・ザウル市でも数カ所で爆弾が爆発した。

ハマー県では、ハマー市サーブニーヤ地区で武装テロ集団がしかけた爆弾が爆発した。

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『クッルナー・シュラカー』(2月12日付)は、複数の目撃者の話として、ダマスカス郊外県ドゥーマー市で、共和国護衛隊と第4師団の間で交戦があったと報じた。真偽は定かでない。

アサド政権の動き

ファイサル・ミクダード外務次官は、シリア・アラブ・テレビ(2月10日付)で、「一部の国はいわゆる「シリアの友グループ」を設立しようとしているが、それはシリア敵対国機構を設立し、シリアへの攻撃や陰謀を準備するためのものである」と述べた。

そのうえでシリア国民に対して「このような構想を恐れることはない。なぜならシリアはこの手の(帝国主義的)陰謀に対して、国民の犠牲、強力な軍、確固たる制度、祖国防衛のための市民の結束をもって常に対処してきたからだ」と付言した。

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『クッルナー・シュラカー』(2月10日付)は、ラーミー・マフルーフ氏が政党発足を検討していると報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会はカタールの首都ドーハで大会を開催した。

大会は12日までの予定で、反体制運動の活動方針、アラブ連盟監視団の派遣問題、西側諸国や一部アラブ諸国が発足を目指している「シリアの友連絡グループ」への対応などについて審議するとともに、任期切れとなるブルハーン・ガルユーン事務局長の後任を選出する予定。

評議会幹部らによると、中国が大会の招致を申し出ていたが、評議会はこれを辞退し、カタールでの開催を決定したという。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は訪問中のカタールで世界イスラーム教ウラマー連盟(ユースフ・カラダーウィー代表)が主催する「シリア救済フェスティバル」に出席し、「我々は安保理で拒否権が行使されて以来、シリア政府とロシアが対話を強いるために準備した真の陰謀に直面している」と述べ、アサド政権との対話をあくまでも拒否する姿勢を示した。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、アラブ連盟が審議を予定している監視団の再派遣が「少なくとも現状において真摯とは言えない呼びかけ」と指摘、監視団ではなく、人道・医療機関の派遣が必要であるとの姿勢を示すとともに、国際社会に対して、アサド政権との断交を呼びかけた。

レバノンの動き

ナハールネット(2月10日付)によると、レバノン国軍の戦車、兵員輸送車輌多数が北部県アッカール郡フナイダル村、クナイサ村に展開し、武器密輸の監視にあたった。

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ムスタクバル潮流を指導するサアド・ハリーリー前首相は事務所を通じて声明を出し、アラブ諸国に対して、シリア国民評議会をシリア国民の「正当な代表」として承認するよう呼びかけた。

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AFP(2月10日付)によると、北部県トリポリ市郊外のアビー・サムラにある武器庫近くでシリア人3人が暖を取るために熾していた焚き火の火が引火し爆発、3人が犠牲となった。

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AFP(2月10日付)によると、北部県トリポリ市バーブ・タッバーナ地区、ジャバル・ムフスィン地区でアサド政権反対派住民と支持者住民が衝突し、5人が負傷した。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、「リビア・シナリオのシリアへの適用は…国際社会の安定を損ね、国連憲章が定める諸原則を揺るがす」と述べた。

またセルゲイ・リャプコフ外務次官は、反体制勢力も流血が続く状態の責任を負っていると述べるとともに、「シリアの反体制勢力を煽動する西側諸国…、武器を供与する国々も、反体制勢力とともに事態悪化に寄与している」と批判した。

SANA(2月10日付)によると、ロシア外務省は自爆テロへの非難を表明し、暴力の即時停止のための政府と反体制勢力による無条件の対話を呼びかけた。

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SANA(2月10日付)は、イランのアリー・サーレヒー外務大臣が共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師と会談し、「シリアへの圧力はレジスタンスを支持するその姿勢に起因する」と述べ、多方面で現下の危機解消に向けて、シリアを支持するとの意思を表明したと報じた。

イラン国営通信(2月10日付)は、イラン資源省の信頼できる消息筋から得た情報として、誘拐されていたイラン人技術者7人(ヒムス市ジャンダル発電所に勤務)がヒムス市近郊で釈放された、と報じた。7人は、「シリア・シーア派拡大反対運動」を名のる組織に誘拐されていた。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は訪問先の米国で記者会見を開き、「国際社会が動かないなかで、連日殺されているシリア人を傍観することはできない」と述べ、「もし国連が動かないのであれば、我々は国際的なフォーラムを作りたい」と述べ、シリアの友連絡グループ構想に対して前向きな姿勢を示した。

アナトリア通信(2月10日付)は、トルコ司法当局が、ハタイ県のキャンプに避難していた自由将校運動(自由将校旅団)リーダーのフサイン・ハルムーシュ大佐とムスタファー・カースィム氏がシリア当局に引き渡された経緯に関する調査を開始したと報じた。

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サウジアラビアのアブドゥッラー国王は、第27回ジャンダリーヤ祭の来賓に対する祝辞で、「事態は吉報ではなかった。なぜなら国連に対する世界全体の信用が揺らいだことは疑いないからだ」と述べ、国連安保理への対シリア安保理決議の否決を批判した。

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イタリア外相は、米国とイタリアが、シリアへの新たな使節団派遣をめざすアラブ連盟の努力を支持することで合意したと述べた。

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パレスチナ人作家・詩人約100人が共同声明を出し、シリア国民との連帯を表明するとともに、アサド政権がパレスチナ問題を政局として利用することを拒否する姿勢を示した。

AFP, February 10, 2012、Akhbar al-Sharq, February 10, 2012、al-Hayat, February 11, 2012、Kull-na Shuraka’, February 10, 2012, February 12, 2012、Naharnet.com, February 10, 2012、NNA, February 10, 2012、Reuters, February 10, 2012、SANA, February 10, 2012、SNN, February 10, 2012などをもとに作成。

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