『ニューヨーク・タイムズ』(12月12日付)は「極秘部隊のISIS(ダーイシュ(イスラーム国))に対する爆撃で民間人の死者が増加」(デイブ・フィリップス記者、エリック・シュミット記者、マーク・マッゼッティ記者)と題したリポートを掲載した。
リポートは複数の現役および退役した軍・諜報機関関係者の情報をもとに書かれたもの。
それによると、「タロン・アンヴィル」と呼ばれる極秘部隊が2014年から2019年までの期間、ダーイシュの車列、爆弾を装備した車輌、司令拠点、戦闘機部隊に対して24時間体制(三交代制)で爆撃を実施していた。
しかし、この部隊は、非戦闘員を保護するための規則を無視し、収穫作業に従事する農夫、街にいる子供、戦闘を逃れた家族、建物内に避難している村人など紛争に関与していない人々を殺害したという。
タロン・アンヴィルは、20人にも満たない人々によって複数のモニターが設置された場所不明の部屋から司令を受ける小規模な部隊だったが、ダーイシュに対して11万2000回の爆撃・ミサイル攻撃を実施し、その規模ゆえに軍の規則に対して緩い解釈がなされた。
2016年から2018年にかけて数百回におよぶタロン・アンヴィルの作戦にかかわった空軍情報部の元士官は「彼らは冷酷なまでに効率的で良い仕事をした…。だが、多くの過った爆撃を行った」と証言した。
ダーイシュに対する米軍の爆撃は最高指揮官の監督のもと、民間人の犠牲を極力回避するために正確を期して実施されていたが、4人の現役および退役した士官の話によると、タロン・アンヴィルの場合、命令は最高指揮官ではなく、米軍デルタフォースの下位の指揮官によって下されていたという。
タロン・アンヴィルの爆撃をめぐっては、パイロットらが事実確認がとれていない人口密集地域内の標的を狙うことを拒否したり、CIAの高官が爆撃の仕方に抗議することもあったという。
また、空軍内の諜報チームがタロン・アンヴィルと「レッドライン」と呼ばれる電話回線を用いて議論を行ったことや、タロン・アンヴィルの一部隊員が爆撃参加を拒否したこともあったという。
空軍の作戦司令室は、タロン・アンヴィルの爆撃で幾度となく民間人が巻き添えとなって死亡していたことを確認していた。
例えば、2017年3月に実施された爆撃では、50人が避難していたビルに対して500ポンド爆弾が使用されたが、指揮官らは、こうした事案を調査することに消極的だったという。
なお、『ニューヨーク・タイムズ』(11月13日付)にリークした、2019年3月18日のダイル・ザウル県バーグーズ村に対して米軍が行った爆撃(女性や子供を含む70人以上が死亡)も、このタロン・アンヴィルによって実施されたもの。
シリアでの爆撃は、「タスクフォース9」と呼ばれる特殊作戦部隊が実施しており、タロン・アンヴィルは公式には実在しないことになっている。
「タスクフォース9」の任務は多岐に及び、そのなかには、グリーンベレー部隊による人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の教練、ダーイシュのアブー・バクル・バグダーディー暗殺などデルタフォースによる地上作戦も含まれていた。
だが、爆撃については、そのほとんどにタロン・アンヴィルが関与していた。
その司令室は当初イラクのアルビールに設置されていたが、その後、イラク国境に近いシリア領内に設置された「グリーン・ヴィレッジ」と呼ばれる複合型居住施設に移設された。
司令室内では、隊員らはファーストネームで呼び合い、ラフな格好で、RQ-1プレデターやMQ-9 リーパーといった無人航空機(ドローン)を操り、AGM-114ヘルファイア空対地ミサイルやレーザー誘導爆弾で爆撃を行っていたという。
The New York Times, December 12, 2021をもとに作成。
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