ロシア合同連携センターとシリア国外難民帰還調整委員会の合同会合が、ダマスカス県のコンベンション・センター(ウマウィーイーン宮殿)とロシアの首都モスクワにある国防司令センターをビデオ会議システムで繋いで開催された。
SANA(12月23日付)によると、合同会合は、一部諸外国が難民の帰国を妨害するなかで、その帰還を促す環境を整備することが目的。
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シリア国外難民帰還調整委員会の委員長を務めるフサイン・マフルーフ地方行政環境大臣が基調演説を行い、これまでに帰還した難民の総数が260万人に達し、シリア軍によって解放された郡の数は404に達し、うち94郡においては75~100%の住民が、133郡においては25~75%の住民が、それ以外の郡では25%以下の住民がそれぞれ帰還したことを明らかにした。
また、政府は帰還民のためにダマスカス郊外県ハルジャラ村、アドラー市ウンマーリーヤ地区、ヒムス県ハスヤー町の一時居住センターに1,600の住居を建設するとともに、62,475世帯に対して補償を行い、3万棟以上の住居を修復、2021年の1年間で60の医療センター、44の政府関連施設、29の診察ステーション、93のパン製造所、270の変電所を建設したと述べた。
産業復興に関しては、545の工業施設を建設を完了、238の工業施設の建設に着手し、すでに操業を始めた122の施設では帰還難民など6,315人の雇用が確保されていると明らした。
人道支援に関しては、反体制派の支配下にあるイドリブ県を含む国内あらゆる場所に支援の移送を行ったことを強調した。
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続いて、ファイサル・ミクダード外務在外居住者大臣が演説を行い、西側諸国が難民の帰還を望んでおらず、あらゆる手段を駆使して帰還を妨害していると非難した。
ミクダード外務在外居住者は欧米諸国、そしてトルコがシリア国内のテロ組織を支援しているとしたうえで、欧米諸国は一方的な制裁を継続することで、トルコはハサカ県における水道供給を幾度となく停止させることで、国民を苦しめ、そのことが難民の帰還を阻害していると指弾した。
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一方、合同会合に出席するためにシリアを訪れているロシアのジェナディ・ジドコ国防副大臣はコンベンション・センターで演説を行い、シリアの経済状況は諸外国の占領や新型コロナウイルスによって深刻な状態にあり、欧米諸国が一方的制裁を続けることで難民の帰還が阻害されていると指摘した。
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また、ロシア合同連携センターの議長を務めるミハイル・ミズィンツェフ上級大将は国防司令センターで演説を行い、国際社会が難民帰還を促すために支援を増加させる必要があると述べた。
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このほかにも、ラーニヤー・ハーッジ・アリー外務在外省国際機関大会局長、ロシア大統領府の子供の権利のための弁務官を務めるマリア・ルヴォヴァ=ベロヴァ氏も演説を行った。
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ロシア合同連携センターとシリア国外難民帰還調整委員会は合同会合後に共同声明を出し、2021年の難民の帰還に向けた取り組みの成果を発表した。
声明によると、シリア政府の主導のもとに「テロリスト」から解放された地域でのインフラ、農業、道路、電力、水道、住宅、学校、病院の復旧・復興が続けられ、2018年9月以降、難民2,338,141人が帰宅を実現した。
ロシアが2021年にシリアに提供した人道支援物資は、発電設備、医療機器、医薬品、食糧物資、教材、衣服など7,751トンに達し、シリア各地に183回にわたって物資の配給を行った。
こうした取り組みが行われるなか、米国と西欧諸国は一方的な制裁と違法な部隊駐留を継続し、社会、経済、人道状況に悪影響を与えた。
また、こうした諸外国の行為は、米国が違法に占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)のルクバーン・キャンプの劣悪な状況に示されている通り、人道支援の範囲を拡大するうえで必要な政治的条件に反している。
米国占領下の地域に位置するハサカ県フール・キャンプでは2021年だけで、84件の殺人事件、23件の殺人未遂事件が発生しており、そのことは米国が事態を掌握し、安定を実現できないことを示している。
欧米諸国による人道支援の政治利用によって、緊張緩和地帯(イドリブ県)への支援を阻害しており、政府支配地域から反体制派支配地に境界経由(クロスライン)で提供された支援物資は、いまだに現地で配給がなされておらず、こうした状況はイドリブ県のバーブ・ハワー国境通行所を通じた越境(クロスボーダー)人道支援を2022年1月10日まで認めるとした国連安保理決議第2585号の規定にも反している。
こうした人道支援の政治利用を阻止するとともに、国際社会はシリアへの制裁を解除し、さらなる人道支援を行い、シリアの危機の政治解決を促すことが求められている。
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SANA(12月23日付)が伝えた。
AFP, December 23, 2021、ANHA, December 23, 2021、al-Durar al-Shamiya, December 23, 2021、Reuters, December 23, 2021、SANA, December 23, 2021、SOHR, December 23, 2021などをもとに作成。
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