『シャルク・アウサト』(3月22日付)は、シリアでの「ジハード主義者」との戦いに参加した経験があるフランス人青年が、前線に戻り、「ウクライナ人の自由を守るために彼らを支援」する用意があり、今度はウクライナの首都キエフでロシア軍と戦おうとしている、と伝えた。
同紙によると、この青年は5日前(3月17日)にキエフに到着し、近く配属されるであろう場所を知らされるのを待っている。
青年は、ロシア軍が包囲しようとしているキエフの周辺地域のどこかに配属されるだろうと述べているという。
痩せ型で中背のこの若者は、フランス北西部のノルマンディー地方出身で、年齢は28歳。ピエールを名乗っているが、詳細な素性について明かしていない。
シリアで過去数年間に得た技術を、ロシア軍に対して活かすことができる「もっとも役に立てる」場所、つまりは前線に送られることを望んでいる。
「12.7ミリ重機関銃、14.5ミリ重機関銃、カラシニコフ銃、ロケットランチャーを撃つことができる」という。
AFPの取材に応じるかたちで、キエフ市内の公園に軍服姿で現れたピエールは、ウクライナに来るに至った経緯について、ロシアがウクライナでの特別軍事作戦を開始した2月24日、彼は自宅にある建築事務所でいつもの通り仕事をしていたが、攻撃の映像を見た時に「奮い立ち」、その日も「怒り」が収まらなかったと振り返った。
ピエールは「この日、次のように自問した。よし、出国しよう。ソファで座ったままで、起こっていることを見続けることなどできない」とこの時のことを振り返っている。
彼はその後、10日間にわたって列車や車を乗りづいて、ヴォロジーミル・ゼレンスキー大統領がロシアの侵攻に対する「国際義勇軍」の参集を呼び掛けていたウクライナに到着した。
ウクライナ政府の発表によると「国際義勇軍」は2万人近くに達しているというが、真偽は定かではない。
ウクライナ兵はピエールに対して、ジョージア外国人軍団に所属するよう指示した。
この部隊は、2014年のクリミア危機・ウクライナ東部紛争に際して、ジョージアの元兵士がウクライナを支援するために結成した軍事組織だという。
ピエールは、戦争が長期化することを覚悟しており、ロシアの「暴君」の脅威に晒されながらも、「自らの自由を守るために戦っている」ウクライナ人と関わり、連帯するために、「必要に応じては戦争が終わるまで」留まるつもりだという。
ピエールは、2014年から2020年までシリアで別の「暴君たち」と戦っていたと証言している。
ダーイシュ(イスラーム国)の「ジハード主義者」だ。
シリア北部のアレッポ県マンビジュ市一帯、ラッカ県、同国東部のダイル・ザウル県での戦闘に参加し、生き残ったという。
シリアに滞在した4年は、三つの時期を経験したという。
第1は、クルド民族主義勢力が米主導の有志連合の航空支援を受けて2017年に制圧したダーイシュ(イスラーム国)の首都ことラッカ市などでの戦闘で、度々死と向い合せになったという。
ラッカ市放棄に先立って、ダーイシュが市内全体に敷設した地雷や爆発物を撤去作業に参加、目の前で4人の仲間が爆死するなど過酷な経験をしたという。
ウクライナに到着したピエールは、シリアの時と同じように、イタリア人、ドイツ人、ノルウェー人、スペイン人など欧州全域、さらにはインドから集まった「義勇兵」と知り合ったという。
ウクライナ国内筋によると、ジョージア外国人軍団は現在、数十人から数百人の外国人「義勇兵」が所属しており、フランス人も少なくとも3人が参加している。
ピエールは、ウクライナ人の勇気と団結を称賛し、「すべての民間人が戦う用意をしている」とと述べている。
ウクライナについては、ロシアと米国の「サッカーの試合のボール」のようだとしたうえで、次のように述べている。
情勢が悪化した時、ウクライナ人は結局は自分たちが悲惨な状態に陥っていることに気づいた。誰も彼らを助けてくれなかった。付け焼刃で武器を供与されただけだった。
フランスは、偽善的な国の一員だ。これらの国は怒りを露わにしているが、クルディスタン、イエメン、ミャンマーの時と同じように、ウクライナで虐殺を発生させてしまっている。
ピエールは幼い頃、フランス軍に入隊することに興味があったが、「若干の愚かなこと」をして、それをあきらめたと明かした。
「愚かなこと」が何かは明らかにしなかったが、シリアでの長期滞在がフランス当局によって疑いの目で見られていることが、入隊の機会を奪っていることを承知しているという。
だが、彼は次のように自己弁護を行っている。
「フランス軍から遠ざけてくれた人に感謝している。偽善者の政治によって弄ばれるよりも、独りでクルディスタンやウクライナに行く方がましだ。
AFP, March 22, 2022、ANHA, March 22, 2022、al-Durar al-Shamiya, March 22, 2022、Reuters, March 22, 2022、SANA, March 22, 2022、al-Sharq al-Awsat, March 22, 2022、SOHR, March 22, 2022などをもとに作成。
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