NHK総合の「おはよう日本」(5月31日付)は、シリア人傭兵(「国際義勇兵」)がウクライナでの戦闘で死亡した伝えた。
死亡したのは、アブドゥッラフマーン・アフマドを名乗る男性。
ウクライナ東部ハルキウ州に対するロシア軍の爆撃で死亡したことを、NHK特派員が彼の上官だという男性から電話で伝えられた。
アフマド氏の遺体はその後シリアに移送され、同地で埋葬された。
アフマド氏の父は弁護士で、将来を嘱望されていたが、4年前にシリア領内に対するロシア軍の爆撃で母親ら家族を殺害され、反体制派の戦闘員になった。
ロシアの侵攻を受けるウクライナに共鳴し、同地入りし、ウクライナ軍とともにロシア軍との戦闘に参加していた。
**
ニュースは、トルコのイスタンブール支局の佐野圭崇記者がウクライナでロシア軍と戦うシリアの反体制派戦闘員に行ったインタビューをもとに制作された5月17日のNHK Worldのリポート(https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/videos/20220517210511912/)の内容を踏襲したもの。
5月17日のリポートでは、佐野記者のインタビューに応じた1人スハイル・ハンムード氏(スハイル・アブー・トウ(TOW))が、ウクライナ行きを決心した理由について、「カネが傭兵になったことの動機の一つだ…。トルコにいる妻と子供にカネを送って、自分たちで生活できるようにするためだ」と述べていた。
32歳のハンムード氏は、シリアでの戦闘に参加することで月20米ドルの報酬を得ていたが、生計を立てることができず、ウクライナで「傭兵」になる道を選んだという。
ハンムード氏はまた、「ウクライナに行くと、月2000米ドルを得られる…。妻にカネを送ることができる」などと述べた。
取材に応じたトルコの難民キャンプに身を寄せている妻も佐野記者のインタビューに対して、ハンムード氏の決断にショックを隠し切れない様子で、彼の身に何か起きたら、身寄りのいないトルコで生活ができなくなり、どうしていいか分からないなどと述べた。
ハンムード氏は3月末にシリアを発ち、4月半ば、妻はウクライナにいる彼からメッセージを受け取ったが、それ以降連絡が取れていないという。
一方、リポートは、傭兵の1人アブドゥッラフマーン・アフマド氏は、ウクライナで教練を行い、部下に対して「あそこにロシア兵がいると思って狙え…。我々がすべきは、多くのロシア兵を殺すことだ」と指導する様子を紹介した。
28歳のアフマド氏は、300人の部下とともにウクライナのために戦っているという。
アサド政権を支援するロシア軍が行った爆撃で5年前に母と弟を亡くした彼は、インタビューで「カネや信仰が動機ではない…。母と弟の仇をとりたい…。殺されてもいい」と答えている。
アフマド氏によると、ウクライナには自分が経験したのと似た状況があり、「ウクライナもシリアと同じように侵略を受けた…。私はウクライナの人々とともにある…。私はロシアを追い出すまで戦う」との決意を述べた。
彼の所在がシリアで最後に確認されたのは3月末。
その後、5月初め、NHKに対して、アフマド氏についての情報を得た。彼が所属する武装組織のリーダーは、彼はウクライナで死んだことを明かした。
司令官は「これは死んだ兵士のビデオだ…。私はこの若い男性がアブドゥッラフマーンだと分かった」と述べた。
彼が所属する武装組織のリーダーによると、彼はハルキウの前線でロシア軍の攻撃によって10人の兵士とともに殺害された。
アフマド氏の遺体はトルコを経由してシリアに移され、埋葬されたという。
アフマド氏ら傭兵は、トルコから貨物機でウクライナに移送されたという。
武装組織のリーダーによると、3,000人の傭兵がウクライナ入りし、「仲介者」を通じてウクライナ軍の指揮下に入っているという。
なお、対するアサド政権側は、40,000人がウクライナ行きを希望して登録を済ませており、ロシアは前線での戦闘に参加するシリア人には月7,000米ドル、それ以外の任務に就いた場合は月3,000米ドルを支給することを約束しているという。
シリアからウクライナに行っているのは「義勇兵」ではなく、カネで雇われている「傭兵」だが、トルコのウクライナ大使館は、シリアからの「義勇兵」はいないとNHKの取材に答えている。
また、中継地となっているトルコはシリアの反体制派に資金援助、教練を行っているが、トルコ外務省の報道官もシリアの反体制派がウクライナに入ったことについては否定している。
NHK, May 17, 2022、May 31, 2022をもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.
ロシア当事者和解調整センターの…
ロシア当事者和解調整センターの…
イエメンのアンサール・アッラー…