ハサカ県では、シリア人権監視団によると、シリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるカーミシュリー市南17キロの地点に位置し、シリア政府の支配下にあるムルーク・サラーイ村で、米軍ヘリコプター複数機が10月5日深夜から6日未明にかけて空挺作戦を実施し、ダーイシュ(イスラーム国)のメンバーの男性1人を殺害し、イラク人男性1人、シリア軍の軍事治安局を支援する民兵の司令官1人、殺害されたこの男性の家族を含む2家族を拘束した。
同監視団が複数の地元筋の情報をもとに明らかにしたところによると、殺害されたダーイシュのメンバーは、投降を拒否して殺害された。
シリア政府の支配地で空挺作戦を実施するのはこれが初めて。
作戦実施中、米軍兵士は、拡声器を通じて住民らに対して自宅に留まり、電気を消すよう呼びかけたという。
また、イナブ・バラディー(10月6日付)が複数の目撃者らの話として伝えたところによると、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が5日深夜にシリア政府支配地に潜入し、ムルーク・サラーイ村を包囲し、村内の民家を強襲し、この民家の護衛にあたっていたグループと交戦した。
その後、米主導の有志連合のヘリコプターが飛来し、空挺作戦を開始、「アブー・ハイダル」を名乗る人物を殺害し、シリア民主軍と交戦していたグループのその他のメンバーを拘束した。
ムルーク・サラーイ村には、かつて国防隊と軍事情報局を支援する民兵の本部が置かれており、殺害されたアブー・ハイダルを名乗る人物は「イランの民兵」とつながりがあったという。
一方、シャームFM(10月6日付)は、殺害されたのが、この地域で遊牧を行う羊飼いで、村には一時的に滞在していただけだったと伝えた。
また、米軍ヘリコプターからの機銃掃射で住民2人が負傷したと付言した。
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米中央軍(CENTCOM)は声明(第20221006-03号)を出し、米軍ヘリコプター1機が、ハサカ県カーミシュリー市近郊を強襲し、ダーイシュ(イスラーム国)メンバーのラッカーン・ワヒード・シャンマリー容疑者を殺害し、仲間数名を拘束したと発表した。
声明によると、シャンマリー容疑者は、武器の密輸や戦闘員の派遣に関与し、ダーイシュの作戦を支援していた人物。
作戦による米軍の死傷者、民間人の死傷者はなく、米軍装備の被害もなかったという。
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これに対して、RIAノーヴォスチ通信(10月6日付)は、現地の軍事筋の話として、ムルーク・サラーイ村を強襲した米軍とシリア軍が交戦、シリア軍の兵士複数が負傷したと伝えた。
同軍事筋は「米国はダーイシュのメンバーを排除するために強襲したと主張しているが、最終的には一般の羊飼いを殺害し、シリア軍の兵士数人を拉致した」と述べた。
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ハサカ県の部族長名士評議会は声明を出し、米国とトルコによる占領を拒否、ラアス・アイン市一帯およびタッル・タムル町一帯に対するトルコ軍の連日の攻撃、住民拉致を目的として米軍による空挺作戦を非難した。
SANA(10月6日付)が伝えた。
AFP, October 6, 2022、ANHA, October 6, 2022、al-Durar al-Shamiya, October 6, 2022、‘Inab Baladi, October 6, 2022、Reuters, October 6, 2022、RIA Novosti, October 6, 2022、SANA, October 6, 2022、Sham FM, October 6, 2022、SOHR, October 6, 2022などをもとに作成。
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