ロイター通信は、3月に沿岸部で発生したアラウィー派住民らによる殺害、暴行、略奪事件についての特別記事を配信した。 記事の概要は以下の通り。 前政権支持者による反乱が発生した直後の3日間にわたり、40ヵ所あまりでアラウィー派に対する虐殺が行われ、殺害、略奪、焼き討ちが相次ぎ、総計で約1,500人のアラウィー派が殺害され、数十人が行方不明になった。 襲撃を実行した部隊の指揮系統は、アフマド・シャルア移行期政権に関係する人物に直結していた。 ロイター通信は、虐殺に関与した少なくとも12の部隊を特定した。 うち半数は過去に人権侵害(殺人、誘拐、性的暴行など)で欧米諸国などの制裁対象となっている。 関与が確認されたのは、シャーム解放機構(2025年1月に正式に解散)に所属していた第400部隊、ウスマーン旅団、「トルコが支援する自由シリア軍」として知られてきたシリア国民軍に所属するスルタン・スライマーン・シャー旅団、ハムザ師団など。 スルタン・スライマーン・シャー旅団、ハムザ師団はこの虐殺に関与したとしてEUが最近になって制裁対象に追加している。 シャルア移行期はロイター通信の質問や調査内容の詳細な要旨に一切回答しなかった。 アラウィー派住民らの証言によれば、彼らの家屋は略奪され、落書きされ、破壊され、村人らが殺害された。 なかには、虐殺事件のなかには、心臓をえぐり取られたケースなどが報告されている。 なお、ロイター通信によれば、虐殺は現在も断続的に続いている。 ** ロイター通信は、別の記事で、3日間にわたって少なくとも40地点でアラウィー派に対する報復殺害、略奪、焼き討ちが行われ、1,479人が死亡、数十人が行方不明となったとしたうえで、関与が確認された主な5つの部隊による被害を明らかにした。 シャーム解放機構系部隊 ●関与した部隊:第400部隊、ウスマーン旅団、旧総合治安機構(現内務省総合治安局) ●活動:少なくとも10ヵ所で活動し、約900人を殺害 ●備考:第400部隊は前政権崩壊後に沿岸部に配備されたとされ、元海軍士官学校を本拠地とし、国防省上層部の指揮下にあるという。 トルコが支援する民兵 ●関与した部隊:スルタン・スライマーン・シャー旅団(アムシャート旅団)とハムザ師団 ●活動:少なくとも8ヵ所で活動、約700人を殺害 スンナ派武装勢力 ●関与部隊:イスラーム軍、自由人軍、イッザ軍 ●活動:少なくとも4ヵ所で活動、約350人を殺害 外国人戦闘員 ●関与勢力:トルキスタン・イスラーム党、ウズベク人、チェチェン人、その他アラブ人戦闘員 ●活動: 少なくとも6ヵ所で活動、約500人を殺害 武装したスンナ派民間人 ●活動:アルザ村(ハマー県)とバニヤース市(タルトゥース県)で合わせて約300人を殺害 ** (C)青山弘之 All rights reserved.