Categories: 諸外国の動き

2014年1月29日のシリア情勢:諸外国の動き

アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表はジュネーブの国連本部で、シリア政府代表団とシリア革命反体制勢力国民連立代表団の会合(直接会談)を開催した。

前日に引き続き、シリア政府代表団はバッシャール・ジャアファリー国連代表大使によって、連立代表団はハーディー・バフラ氏によって率いられた。

シリア革命反体制勢力国民連立のジュネーブ報道チームによると、ブラーヒーミー共同特別代表は、移行期統治機関をめぐる議題をとりまとめたペーパーを提出した。

このペーパーには、①移行期統治機関の規模、構成、設置方法、②権限、③意思決定方法、④軍、治安機関、文民機関との関係、④メンバー選出方法といった議題が列記されているという。

またElaph(1月29日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立のルワイユ・サーフィー報道官の話として、連立がジュネーブ2大会に参加しているシリア政府代表団に、移行期統治機関樹立、民主主義、政治的多元性実現に向けた詳細行程表を文書で回付したと報じた。

『ハヤート』(1月30日付)によると、この行程表は「自由への道」と題され、「現行憲法に代わる憲法の準備、移行期統治機関の樹立、治安機関の再編、民主的諸機関の設置」などを骨子としているという。

一方、SANA(1月29日付)によると、政府代表団は会合で、政府が移行期統治機関設置に向けた審議を拒否していると非難するシリア革命反体制勢力国民連立に対して、シリア政府がジュネーブ合意のいくつかの項目に態度を留保しているが、同合意に同意していると反論した。

また政府代表団は、連立が移行期統治機関設置に関わる状況以外に目を通していないようだと批判、シリア人のみが自らの将来を決する権利を有していることを改めて強調した、という。

**

アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表は、記者会見でジュネーブ2会議でのシリア政府とシリア革命反体制勢力国民連立の直接交渉を31日(金曜日)でいったん打ち切ることを発表したうえで、「正直言うと、私は具体的な何かが達成されるとは期待していない…。氷河はゆっくりとしか溶けてははいないが、溶けている…。両当事者はとどまり、会合を継続する用意があると思うが、両者の亀裂は非常に大きい…。彼らは一度も…席を共にしたことはなかったからだ。魔法の杖があるなどと期待してはいけない…。一歩でも踏み出せれば、それは良いことだ」と述べた。

また「金曜日(31日)、我々は会合再開の日程に合意するだろう。おそらく来週になると思う」と付言した。

さらに「米国とロシアと接触している。両国が両当事者に影響力を行使することを願っている…。両国がその影響力をよりよく行使して欲しいと思っている」と述べた。

**

シリア革命反体制勢力国民連立のルワイユ・サーフィー報道官は、記者団に「今日は前向きな進展があった。なぜなら初めて移行期政府について話をしたからである…。政府は移行期統治機関について話すことを避け、テロの問題に集中したいと考えている」と述べたうえで、「政府はしかし、最低限の議論にとどめようとはしているが、この問題について検討する用意はあるようだ」と述べた。

**

ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官は記者団に関して、「テロについて話すことができ、対話は前向きだった…。私たちと彼らの唯一の違いは…、私たちがジュネーブ合意を第1項目から順番に議論したいと考えているのに対して、彼らは…移行期政府についての項目に跳躍しようとしていることです。彼らは政府に入ることだけに関心があって、恐るべきテロを止めることには関心がないのです」と述べた。

そのうえで連立が「自らが権力につくにはどうしたらいいかということ以外の問題を議論しようとしない…。これこそが連立の背後にいる勢力が望んでいることです」と批判した。

またブラーヒーミー共同特別代表に対して、「ジュネーブ合意を優先順位に沿って審議しなければならない」ことを伝え、「ジュネーブ合意の優先事項は、政治プロセスを開始する雰囲気を醸成するための暴力とテロの停止」だと強調した。

**

『ハヤート』(1月30日付)は、複数の西側消息筋の話として、欧米諸国がロシアやアサド政権に圧力をかけ、ヒムス市旧市街への人道支援物資配給を受け入れさせるよう求めている、と報じた。

同報道によると、これに関して米高官は、アサド政権が、人道支援物資配給を許可する見返りとして、同地の反体制勢力に去と武装解除を求めているとしつつ、「受け入れられないオファーだ。包囲されている地区の住民が人道支援物資を得るために政権の支配に屈服を強いられることなどあり得ない」と述べたという。

**

ジェームズ・クラッパー国家情報長官は、米上院情報委員会に出席し、アサド政権が限定的ではあるが、生物兵器を生産する能力を現在持つに至っている可能性があると証言した。

クラッパー長官は「我々は、シリアの生物兵器プログラムが…研究開発段階を越えて、限定的に生産が可能になったと思われる」と証言した。

米政府高官がシリアの生物兵器開発の危機について言及するのはこれが初めてだという。

AP(1月29日付)が伝えた。

**

AFP(1月29日付)は、化学兵器禁止機関に近い複数の消息筋の話として、2013年12月末までに搬出される予定だった危険度の高い化学物質(700トン)のうち実際に搬出されたのは5%にも達していない、と報じた。

**

トルコ軍参謀本部は声明を出し、キリス市東部でトルコ軍がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)のピックアップ・トラックとバスに対して発砲、破壊したと発表した。

UPI(1月29日付)が伝えた。

AFP, January 29, 2014、AP, January 29, 2014、Champress, January 29, 2014、Elaph, January 29, 2014、al-Hayat, January 30, 2014、Iraqinews.com, January 29, 2014、Kull-na Shuraka’, January 29, 2014、Naharnet, January 29, 2014、NNA, January 29, 2014、Reuters, January 29, 2014、Rihab News, January 30, 2014、SANA, January 29, 2014、UPI, January 29, 2014などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

SyriaArabSpring

Recent Posts