ダマスカス県で戦闘を続ける反体制武装集団が統合し「首都征服戦線」を結成するなか、軍がヒズブッラー戦闘員の支援を受けつつヒムス市ハーリディーヤ地区の約60%を奪還(2013年7月27日)

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シリア政府の動き

シリアの外務在外居住者省と国連は共同声明を出し、化学兵器使用に関する国連調査団のアキ・セルストロム団長とアンゲラ・ケイン軍縮問題担当上級代表が24、25日にシリアを訪問、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣と会談し、「活動継続に関して合意した」と発表した。

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シリア外務在外居住者省は、国連安保理議長、事務総長、人権高等弁務官に宛てて書簡を送り、アレッポ県ハーン・アサル村で26日に「アンサール・ヒラーファ旅団」を名のるテロ集団が民間人・軍人合わせて数十人を虐殺したと報告した。

同書簡ではまた「ハーン・アサル村で起きたことは、一部の国が武装テロ集団に軍事、物資、兵站支援に関与していることを暴露するもの」と非難した。

SANA(7月27日付)が報じた。

反体制勢力の動き

クッルナー・シュラカー(7月27日付)は、ダマスカス県ジャウバル区で戦闘を続ける反体制武装集団が統合し、「首都征服戦線」を結成したと報じた。

Kull-na Shuraka’, July 27, 2013

首都征服戦線に参加した武装集団は以下の通り:

ハールーン・ラシード旅団
ファールーク・ウマル旅団
サイフ・ムスタファー旅団
アフル・アサル大隊
アッラーの獅子大隊
シャバーフ・フダー大隊
アブドゥッラー・ブン・サラーム大隊
フスターター・ムスリミーン旅団
ズー・ヌーライン大隊
マジド・ハビーブ大隊
イバード・ハック旅団
アブー・ズー・ギファーリー旅団
スフーフ・ハック旅団
イーサー・ブン・マリヤム大隊
ムジャーヒディーン・フィー・サビール・アッラー大隊
ムハージリーン・ワ・アンサール軍
スルターン・ムハンマド・ファーティフ大隊
ディルウ・シャーム大隊
ジャウバル殉教者大隊
サイイドナー・ムハンマド・サッラー・アッラー・アライヒ・ワ・サッラム大隊
ファールーク・シャーム大隊
フルサーン・タウヒード大隊
マジド・ヒラーファ大隊

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ザマーン・ワスル(7月27日付)は、シリア・ムスリム同胞団のズハイル・サーリム報道官が同胞団を脱会したと発表した。

同報道によると「一兵卒」としてアラブ・シャルク調査研究センターでの職に専念するというのが脱会の理由だという。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、アフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長とジョン・ケリー米国務長官の25日の会談で、議長が2通の書簡を手渡したことを明らかにした。

同声明によると、第1の書簡は、シリアでの政治的転換を促すよう国際社会に直接働きかけることを求めるもので、第2の書簡は、アサド政権に政治的解決を受け入れさせるため、「自衛のための手段」をシリア国民(反体制勢力)に供与することを求めたものだという。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長はニューヨークで記者会見を開き「戦況は1ヶ月で変化するだろう」と述べた。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、国連安保理にアサド政権が「直接責任を負っている大虐殺」を非難するよう呼びかけた。

同声明によると、アサド政権は7月半ばだけで以下の集団虐殺を行ったという。

1. アリーハー市、2013年7月21日、22人を殺害。
2. バイダー町、2013年7月21日、13人を殺害。
3. イドリブ市、2013年7月19、21日、15人を殺害。
4. ダマスカス県ヤルムーク区、2013年7月21日、22人を殺害。
5. ヒムス市、2013年7月21日、22人を殺害。
6. ダマスカス県カーブーン区、2013年7月半ば、4人を殺害。
7. ヒムス県ザーラ村、2013年7月半ば、7人を殺害。

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒズブッラー戦闘員の支援を受けた軍がヒムス市ハーリディーヤ地区の約60%を奪還した。

戦闘では、戦闘員2人を含む市民4人が死亡したという。

シリア革命総合委員会などによると、ハーリディーヤ地区突入とともに、軍はハーリディーヤ地区に激しい砲撃を加えたという。

またシリア人権監視団によると、反体制武装集団が、ヒムス市上空を偵察中の軍の航空機を墜落させる一方、ワアル地区では、軍の砲撃により女性1人が死亡した。

一方、SANA(7月27日付)によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区、クスール地区、バーブ・フード地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ハーリド・ブン・ワリード・モスク周辺一帯を奪還した。

またラスタン湖などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

このほか、ヒムス市ハーリディーヤ地区で取材中のアーラム・チャンネルの記者が狙撃され、負傷した。

さらに、ヒムス石油精製所、ヒムス市アクラマ地区などが反体制武装集団の砲撃を受け、市民2人が負傷した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団がアレッポ市東部の防衛工場機構・ハナースィル市間の街道で、軍を要撃し、兵士7人を殺害した。またバーブ市では砲撃によって、女性1人が死亡した。

SANA, July 27, 2013

アレッポ市では、マア-ディー地区、ブスターン・カスル地区に対して軍が砲撃・空爆を行い、子供6人を含む12人が死亡した。

さらに、バーブ・ナイラブ地区などに対して、軍は地対地ミサイルで攻撃を加え、子供13人を含む17人が死亡した。

軍の砲撃はブスターン・カスル地区などにも及んだ。

一方、SANA(7月27日付)は、報道筋の話として、ハーン・アサル村などアレッポ市郊外で武装テロ集団(アンサール・ヒラーファ旅団)が殺戮した市民(民間人、軍人)の数が123人にのぼると報じた。

また、SANA(7月27日付)によると、ダーラト・イッザ市、バーブ・ナッカーリーン街道、アナダーン市・フライターン市街道、アレッポ中央刑務所、マンスーラ村、フライターン市、カフルナーヤー市で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

アレッポ市では、ラーシディーン地区、サラーフッディーン地区、アーミリーヤ地区、分スターン・カスル地区、シャイフ・マクスード地区、旧市街、ハーリディーヤ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、マアバダ(カルキールキー)市近郊の民主統一党人民防衛隊の拠点を、軍のヘリコプターが空爆し、複数の戦闘員が死傷した。

軍はまた、県内に潜伏するシャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国の拠点も空爆した。

SANA, July 27, 2013

これに対して、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国は、マアバド市とヤアルビーヤ(タッル・クージャル)町間のジュナイディーヤ村を攻撃した。

一方、カフターニーヤ(ディルベ・スピーイェ)市南部郊外のマズルーマ・カッス村では、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国が民主統一党人民防衛隊の検問所を襲撃し、前者の戦闘員5人と後者の戦闘員2人が死亡した。

シリア人権監視団によると、戦闘は、ターヤー村、ジールカー村にも及んだという。

このほか、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国はラアス・アイン市への砲撃を続けた。

またカーミシュリー市のカドルー・ベク地区で、民主統一党アサーイシュを狙った爆弾テロが発生した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、アッバースィーヤ地区の旅客バス・ターミナル近くの電力機構を反体制武装集団が襲撃、制圧した。

またジャウバル区、バルザ区で、軍と反体制武装集団が交戦、軍が砲撃・空爆を行った。

さらにヤルムーク区では、PFLP-GCの戦闘員が主導するパレスチナ人の人民諸委員会が反体制武装集団と交戦した。

一方、SANA(7月27日付)によると、バルザ区、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

SANA, July 27, 2013

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、インヒル市東部が軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(7月27日付)によると、フラーク市、ヌアイマ村、アクラバー村、ハーッラ市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(7月27日付)によると、ドゥーマー市郊外、ハラスター市、ザマーニーヤ農場、ルハイバ市、ズィヤービーヤ町、フジャイラ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(7月27日付)によると、マアッラトミスリーン市、サラーキブ市、マガーラ村、マアッラト・ヌウマーン市、カフルルーマー村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(7月27日付)によると、ダイル・ザウル市ハウィーカ地区、ジャウラ地区、マリーイーヤ村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

SANA, July 27, 2013

諸外国の動き

ハマースのアフマド・ユースフは、AFP(7月27日付)に対して「今月、ハマースの幹部2人が、イラン高官と重要な会合を開いた。ヒズブッラー幹部も同席したこの会合では、ハマースとイランの戦略的パートナー関係が協議された」と述べた。

ユースフによると「シリア情勢への姿勢など、意見を異にする問題に関して、互いの姿勢を理解し合い…、すべての問題で協力調整する」意思を示したという。

AFP, July 27, 2013、al-Hayat, July 28, 2013、Kull-na Shuraka’, July 27, 2013、Kurdonline, July 27, 2013、Naharnet,
July 27, 2013、Reuters, July 27, 2013、SANA, July 27, 2013、UPI, July 27,
2013、Zaman al-Wasl, July 27, 2013などをもとに作成。

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