ダマスカス県内のマルジャ広場で連続自爆テロが発生し市民14人が死亡、ハサカ県では民主統一党と反体制武装集団が休戦協定を締結、人民防衛隊を付近一帯の「正統な軍」とみなすことなどを求める(2013年6月11日)

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国内の暴力

ダマスカス県では、SANA(6月11日付)によると、市内中心に位置するマルジャ広場で自爆テロが2件連続で発生し、市民14人が死亡、31人が負傷した。

SANA, June 11, 2013

シリア人権監視団によると、爆発は警察署近くで発生した。

一方、シリア人権監視団によると、カーブーン区、バルザ区を軍が砲撃し、バルザ区では軍と反体制武装集団が交戦した。

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ハサカ県では、『ハヤート』(6月12日付)によると、タッル・タムル町で民主統一党と反体制武装集団が休戦協定を締結、民主統一党人民防衛隊を同町一帯の「正統な軍」とみなすこと、同地域に展開する武装勢力から「部族的な装いを除去すること」などを合意した。

休戦に向けた協議は、タッル・タムル町に近いバーブ・ハイル村で行われ、クルド人の代表、ブーハムダーン部族、サーダ部族、シャッラービーン部族、バッカーラ部族といったアラブ系部族の代表、アッシリア教徒代表が出席した。

またラアス・アイン市の市民平和評議会、民主社会運動も同席した。

シリア人権監視団によると、停戦協定は7項目からなり、民主統一党人民防衛隊を同市一帯の「正統な軍」とみなすこと、同地域に展開する武装勢力から「部族的な装いを除去すること」、タッル・タムル町の地元評議会を復興することなどが合意された。

一方、シャッダーディー市、タッル・ハミース市、タッル・ブラーク町、ヤアルビーヤ町を軍が空爆した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ハトラ村で反体制武装集団と「体制を支持するシーア派の戦闘員」(未確認情報)が激しく交戦し、数十人が死傷した。

また軍がダイル・ザウル市の工業地区、ムワッザフィーン地区を空爆、反体制武装集団と交戦した。

同監視団によると、アサド政権は「過去数年間でシーア派に改宗した市民数百人に武器を配布した」のだという。

一方、SANA(6月11日付)によると、ダイル・ザウル市工業地区、ハトラ村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、軍がラッカ市のルマイラ地区、第17師団本部周辺を空爆したのに対して、反体制武装集団も手製のロケット弾でタブカ航空基地を砲撃した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アフリーン市郊外のカフルジャンナ村で民主統一党人民防衛隊と反体制武装集団が交戦した。

また反体制武装集団が、ヌッブル市近くで軍のヘリコプターを地対空ミサイル(イグラ)で撃墜したとされる映像がインターネット上に公開された。

対する軍はマンナグ航空基地周辺、ハナースィル市などを空爆した。

一方、アレッポ市では、サラーフッディーン地区、サーフール地区、アシュラフィーヤ地区、バニー・ザイド地区で、軍と反体制武装集団が交戦した。

他方、SANA(6月11日付)によると、アレッポ中央刑務所周辺、マンナグ航空基地周辺、マアーッラト・アルティーク村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、ブスターン・カスル地区、ブスターン・バーシャー地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

これに対して、反体制武装集団は、アレッポ市スィルヤーン・ジュダイダ地区に迫撃砲3発を打ち込み、女性、子供を含む3人を負傷させた。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サルミーン市、ビンニシュ市、ハーミディーヤ航空基地周辺、バーブ・ハワー国境検問所などに、軍が砲撃を加え、反体制武装集団と交戦した。

一方、SANA(6月11日付)によると、反体制武装集団がイドリブ市周辺にある軍の拠点複数カ所を襲撃したが、軍がこれを撃退した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、ラビーア町、サルマー町などを軍が砲撃した。

一方、SANA(6月11日付)によると、ラビーア町、バイト・アワーン村で、軍がシャームの民のヌスラ戦線の拠点を攻撃・破壊、複数の戦闘員を殺傷した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区および同市周辺に対して軍が砲撃を加え、同市ワーディー・サーイフ地区で反体制武装集団と交戦した。

またカルアト・ヒスン市では、軍と反体制武装集団が交戦し、レバノンの北部県トリポリ市出身の戦闘員(サラフィー主義者)が死亡した。

一方、SANA(6月11日付)によると、ヒムス市ワーディー・サーイフ地区で軍が反体制武装集団の掃討を完了し、同地区の治安を回復した。

また軍は、ヒムス市バーブ・フード地区、ハーリディーヤ地区、カラービース地区、キースィーン市、ガントゥー市、ラスタン市、アクラブ町、タッル・ザハブ町、タルビーサ市郊外、ダール・カビーラ村、マスウーディーヤ村、サーリヒーヤ市、ズィーバ市、タドムル市で、反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ウカイリバート町、ハマーディー・ウマル村、ラターミナ町、ザカー市、カフルズィーター市周辺、フワイジャ市などを、軍が砲撃し、反体制武装集団と交戦した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ムウダミーヤト・シャーム市、ハラスター市、バイト・サフム市、ダーライヤー市、アルトゥーズ町、ハーン・シャイフ・キャンプ、ヤブルード市、マルジュ・スルターン村一帯、カタナー市、ズィヤービーヤ町を軍が砲撃し、反体制武装集団と交戦した。

一方、SANA(6月11日付)によると、ジャイルード市郊外、アルバイン市、ザバダーニー市、ヤブルード市、ダイル・カーヌーン村で、軍が反体制武装集団と交戦し、タウヒード旅団、シャームの民のヌスラ戦線、ドゥーマー殉教者旅団メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、カフルシャムス町、インヒル市、ヌアイマ村、ウンム・ワラド村を軍が砲撃し、反体制武装集団と交戦した。

シリア政府の動き(シリア国内の動き)

ワーイル・ハルキー内閣が定例閣議で、ダマスカス県マルジャ広場での連続自爆テロを非難した。

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連立与党のアラブ社会主義連合民主党、野党のシリア民主党、シリア国民青年党、クルド国民変革運動などが相次いで声明を出し、ダマスカス県マルジャ広場での連続自爆テロを非難した。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(6月11日付)によると、クルド民族主義諸政党が実効支配するラアス・アイン市で、反体制武装集団(自由シリア軍)が包囲を続けるアフリーン市(アレッポ県)との連帯を訴えるデモが発生した。

デモはシリア・クルド民主統一党(イェキーティー)の呼びかけで行われ、西クルディスタン人民議会(民主統一党)、シリア・クルド国民評議会の代表・支持者らが参加した。

ラアス・アイン市で平和的デモが行われるのは、反体制武装集団(自由シリア軍)が同市に侵攻した2012年11月以降初めてだという。

反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立は、11日にイスタンブールで(再開を)予定されていた総合委員会の延期を発表した。

会合では、新議長選出、ガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班の進退が審議される予定だった。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、「自由シリア軍は…国の南北東西において前進し、侵略者(ヒズブッラー戦闘員)に対して勝利を続けている」と発表した。

しかし、この「勝利宣言」を裏付ける軍事的成果は報じられていない。

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シリア国民評議会は声明を出し、ヒズブッラー、イランの「占領」への抵抗をシリア国民に対して呼びかけた。

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自由シリア軍のクナイトラ・ゴラン革命軍事評議会(マジャーズ・アブドゥルイラーフ准将)を名のる組織が声明を出し、ロシアに対してUNDOFへの部隊派遣を口実に、シリア領内に軍を派遣しないよう警告を発した。

レバノンの動き

NNA(6月11日付)によると、ベカーア県ヘルメル郡バイト・ジャアファル村の山間部で、ヒズブッラーの支持者がアルサール市のアリー・アフマド・フジャイリー氏を要撃・殺害した。

これを受け、アルサール市内に武装したサラフィー主義者たちが集まり、フジャイリー氏殺害に抗議した。

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NNA(6月11日付)によると、ベカーア県場ヘルメル郡ドゥーラ地方にシリア領から発射された迫撃砲弾複数発が着弾し、市民数名が負傷した。

諸外国の動き

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はRT(6月11日付)のインタビューに応じ、「国家(シリア)は真摯な変革の準備ができていた。この時点で(シリアの)指導部はそのことを認知し、変革を行わねばならなかった…。モスクワはアサド政権を守っていない」と述べた。

しかし現下のシリアの混乱に関しては、「なぜこうしたことが起きているのか?一部の人が支持し、民主主義と名付けられたりもする方法だけで(中東)地域を形作ることができ、それによって平和と秩序が広まる、と外国の人々が想像しているからだ。しかし実際はまったくそうではなかった」と西側諸国の介入を暗に批判した。

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ロシア外務省は声明を出し、ダマスカス県マルジャ広場での連続自爆テロを非難するとともに、犠牲者に哀悼の意を示した。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣が、サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣、バンダル・ビン・スルターン総合情報庁長官とパリで会談し、シリア情勢について協議した。

フランス外務省報道官によると、会談ではヒムス県クサイル市陥落後のシリア国内の軍事情勢やジュネーブ2会議への影響などについて意見を交換した。

同報道官は、クサイル市陥落に関して、「紛争の一方の当時者が弱体化することはジュネーブ2の開催に資さない。なぜなら、交渉は一方の当時者が優位で、もう一方が弱ければ不可能だからだ。ゆえに、反体制武装集団を強化するために行動することが必要であり、この点をサウジアラビア、米国、トルコなどと議論し、共通の姿勢に至りたい」と述べた。

また、シリア危機にヒズブッラーとイランが関与を深めていることが、地域、とりわけレバノンの安定に悪影響を及ぼす点で意見が一致したという。

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UNDOF主力部隊のオーストリア部隊がゴラン高原からの撤退を開始した。

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イギリスの極右政党、イギリス国民党のニック・グリフィン党首は、ツイッター(6月11日付)でダマスカスに入ったことを明らかにし、「真実を究明する」としたうえでアサド政権を支持することを示唆した。

AF(6月11日付)が報じた。

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国連難民高等弁務官事務所の報道官は、ドイツ政府とシリア人避難民数万人の受け入れの可否について協議を行っていることを明らかにした。

同報道官によると、ドイツ以外にも欧州の複数の国と避難民受け入れの協議を行っているという。

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岸田文雄外務大臣は、記者会見で、「安倍政権が内戦の続くシリアの反体制派に直接届く人道支援活動を始める方針を決めた」と述べた。

AFP, June 11, 2013、AP, June 11, 2013、al-Hayat, June 12, 2013、Kull-na Shuraka’, June 11, 2013, June 12, 2013、Kurdonline,
June 11, 2013、Naharnet, June 11, 2013、NNA, June 11, 2013、Reuters, June
11, 2013、SANA, June 11, 2013、UPI, June 11, 2013などをもとに作成。

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