諸外国の動き:オバマ大統領演説への反応(2014年9月11日)

国連のステファン・デュジャリック報道官(潘基文事務総長付報道官)は、10日のバラク・オバマ米大統領の演説に関して、「ダーイシュ(イスラーム国)への強迫は…国際社会の支援のもとでなされねばならないし、そうすることで歓迎される…。オバマ大統領がシリアでの(紛争の)政治的解決を順守することを歓迎する…。ダーイシュは政治的がなされないことで生じた」と述べた。

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ロシア外務省報道官は、10日のバラク・オバマ米大統領の演説に関して、「米大統領は合法的な政府の同意なく、シリアでダーイシュ(イスラーム国)の拠点を攻撃するかもしれないと述べた。国連安保理の決定を欠いたこうしたイニシアチブは、国際法に対する敵対行為であり、明白な違反だ」と発表した。

AFP(9月10日付)が伝えた。

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中国外交部報道官は、10日のバラク・オバマ米大統領の演説に関して、シリアへの空爆に反対の意思を示した。

同報道官は「中国はあらゆるテロに反対し、国際社会がそれを撲滅し、国内の治安と安定を維持しようとする関係国の努力を支援しなければならないということに同意する。しかし同時に国際法、主権、独立、領土保全が尊重されなければならない」と述べた。

AFP(9月10日付)が伝えた。

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イラン外務省のマルズィーヤ・アフハム報道官は、10日のバラク・オバマ米大統領の演説に関して、「曖昧さに包まれている。テロを完全に根絶しようとする誠実さ、そして真剣さに疑問を感じる」と述べた。

アフハム報道官はまた「(米国を中心とする有志)同盟への参加国の一部が、イラクとシリアでテロリストに資金を支援している」と付言し、イランが有志同盟に参加することは不可能だとの見解を示した。

『ハヤート』(9月12日付)が伝えた。

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フィリップ・ハモンド英国防大臣は訪問先のベルリンで、10日のバラク・オバマ米大統領の演説に関して、「明らかにしておきたい。英国はシリアでの空爆には参加しないだろう」と述べた。

しかし、英首相報道官は、「空軍に関して、首相はいかなるものも排除しない」と述べ、シリア空爆への参加の有無について明言を避けた。

ロイター通信(9月11日付)などが伝えた。

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ジョン・ケリー米国務長官はサウジアラビアのジェッダを訪問し、アラブ湾岸諸国、トルコ、ヨルダン、エジプトなど11カ国の外相級会合に出席した。

会合後、サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は、ケリー米国防大臣と共同会見を開き、ダーイシュ(イスラーム国)への対応について話し合われたとしたうえで、会合参加国が、10日のバラク・オバマ米大統領の演説への支持を表明したことを明らかにした。

またファイサル外務大臣は、ダーイシュ撲滅に向け、関係国が責任を分担する必要を強調するとともに、「ダーイシュはイラク・シリア国境を廃し、イラクで空爆が激化すれば、シリア領を避難所とする」と警鐘を鳴らした。

一方、シリアの反体制武装集団への支援策をめぐってサウジアラビアとトルコの調整が難航しているとの一部情報を否定、トルコ領内のシリアの反体制武装集団の訓練基地に関して質問がなされると、ファイサル外務大臣は「周辺諸国に反体制派の訓練基地(複数)がある」と答えた。

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バラク・オバマ米大統領は、国民向けの演説に先立って、サウジアラビアのアブドゥッラー国王と電話で会談し、シリアの反体制勢力の支援策などについて意見を交わした。

『読売新聞』(9月11日夕刊)によると、電話会談では、シリアの反体制勢力への軍事支援に対する米議会の承認が得られた場合、サウジアラビア国内で教練を行うことなどが話し合われたという。

サウジアラビア国内で教練がなされる勢力が、米国が支援を模索してきた「穏健な反体制勢力」(自由シリア軍参謀委員会、ハズム運動など)かどうかは不明。

サウジアラビアは、アル=カーイダのメンバーが指導してきたシャームの民のヌスラ戦線などからなるイスラーム戦線を支援しているとされる。

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Fox TV(9月11日付)は、10日のバラク・オバマ米大統領の演説に関して、米国防総省高官の話として、米軍によるシリア空爆は「30日以内に開始されるだろう」と報じた。

『ワシントン・ポスト』(9月11日付)は、10日のバラク・オバマ米大統領の演説に関して、米軍によるシリア空爆が、米航空母艦、トルコ、カタール、クウェートの米軍基地を拠点として行われるだろうと伝えた。

AFP, September 11, 2014、AP, September 11, 2014、ARA News, September 11, 2014、Champress, September 11, 2014、Fox TV, September 11, 2014、al-Hayat, September 12, 2014、Kull-na Shuraka’, September 11, 2014、al-Mada Press, September 11, 2014、Naharnet, September 11, 2014、NNA, September 11, 2014、Reuters, September 11, 2014、SANA, September 11, 2014、UPI, September 11, 2014、The Washington Post, September 11, 2014、『読売新聞』2014年9月11日夕刊などをもとに作成。

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