アラブ連盟シリア問題閣僚委員会でジュネーブ2会議への参加について協議される、そのなかでカタールとサウジアラビアは「アサド政権退陣を求めてきたアラブ諸国、諸外国の立場が退行している」ことを非難(2013年5月23日)

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国内の暴力

アレッポ県では、クッルナー・シュラカー(5月23日付)によると、シャームの民のヌスラ戦線がアレッポ市のアルメニア慈善団体代表のハコプ・ミカイリヤン氏を誘拐した。

ミカイリヤン氏はバスでベイルートに向かう途中、誘拐されたという。

一方、SANA(5月23日付)によると、バーブ市・マンビジュ市間、アレッポ中央刑務所周辺、フライターン市、ムスリミーヤ村、マンスーラ村、アレッポ市ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(5月23日付)によると、ハサカ市のバアス党ハサカ支部のナースィル・アブドゥルアズィーズ書記長が乗った車に仕掛けられた爆弾が爆発し、運転手が死亡、1人が負傷した。

アブドゥルアズィーズ書記長は無事だった。

一方、SANA(5月23日付)によると、シャッダーディー市で、住民が武装テロ集団の退去を求めるデモ行進を行った。

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ダマスカス郊外県では、SANA(5月23日付)によると、ザマーニーヤ村、カースィミーヤ町で軍が反体制武装集団の掃討を完了し、両村の治安を回復した。

またザマルカー氏、アルバイン市、アッブ農場、ハラスター市、ジャルバー市、バハーリーヤ市、アイン・タルマー渓谷、サキー農場、ダーライヤー市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(5月23日付)によると、ジャウバル区、バルザ区およびその周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線、ハールーン・ラシード旅団メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(5月23日付)によると、クサイル市で、軍が反体制武装集団のアジトに対する作戦を継続し、複数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

またダブア市、ラスタン市、ガントゥー市、タルビーサ市、バイト・ハッジュー市、タッル・ガール市、キースィーン市、アーミリーヤ市、アクラブ町、ヒムス市ワアル地区、バーブ・フード地区、ハーリディーヤ地区、ワルシャ地区、ハミーディーヤ地区、カラービース地区、ジャウラ・シヤーフ地区などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(5月23日付)によると、アブー・ズフール航空基地周辺の村々で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

反体制勢力の動き

ロンドンで活動する反体制組織のシリア人権監視団は、2012年秋以降にシリア国内で死亡したヒズブッラーの戦闘員が104人に達すると発表した。

同監視団によると、うち46人がヒムス県クサイル市で、20人が同市周辺地域で、38人がそれ以外のヒムス市各地およびダマスカス郊外県のサイイダ・ザイナブ町で死亡したのだという。

これに対して、ヒズブッラーのイブラーヒーム・ムーサウィー報道官は、AFP(5月23日付)に対して、「この手の数字は否定する」と述べた。

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シリア革命反体制勢力国民連立がイスタンブールで総合委員会会合を開催し、ジュネーブ2会議への参加の是非、移行期政府のガッサーン・ヒートゥー首班の進退、新規メンバーの加入などについて審議した。

反体制ニュースサイトのクッルナー・シュラカー(5月23日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立が会合で、25人の新規参加を認める「政治的料理」を行ったと報じた。

同報道によると、この新規加入これにより、連立メンバーは88人となった。うち25人がイスラーム主義者で、63人がリベラル派、無所属だという。

なお新規加入以前の連立メンバー63人のうち、イスラーム主義者は25人、リベラル派・無所属は38人だったという(63人の氏名、所属についてはhttp://www.ac.auone-net.jp/~alsham/2012_11/11.htmlを参照のこと)。

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未来のシリア潮流は声明を出し、マドリードで5月20~21日に開催されていたシリア国民協議会合が、アサド政権による国土「占領」を是認したと批判、会合からの脱退を宣言した。

シリア政府の動き

アサド大統領は、チュニジアのサワービト党のシュクリー・ブン・スライマーン・ハルマースィー党首を団長とするチュニジアの政党・政治組織の代表団とダマスカスで会談し、シリア、チュニジア両国情勢などについて意見を交換した。

SANA, May 23, 2013

SANA(5月23日付)によると、アサド大統領は「テロおよび、域内および国際的にテロを支援する者と対決しつつ、危機の政治的解決をめざすシリアの断固たる姿勢」を強調した。

レバノンの動き

NNA(5月23日付)によると、北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方をパトロール中のレバノン国境警備隊の車輌に対して、シリア軍が発砲した。

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北部県トリポリ市のバーブ・タッバーナ地区、ジャバル・ムフスィン地区で続く武装した市民どうしの衝突で、少なくとも9人が死亡した。

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ムスタクバル潮流のサアド・ハリーリー元首相は声明を出し、北部県トリポリ市での衝突激化を「陰謀」を評し、「クサイルに対するヒズブッラーとシリア政府の戦争を隠蔽することを狙っている」と批判した。

諸外国の動き

カイロでアラブ連盟シリア問題閣僚委員会(カタールが議長国)が開かれ、ジュネーブ2会議への参加について協議した。

出席したのは、カタール(議長)、アルジェリア、スーダン、エジプト、オマーン、イラク、バーレーン、UAE、クウェートの外務大臣、ナビール・アル-アラビー事務総長、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表。

複数の消息筋によると、カタールとサウジアラビアは、アサド政権退陣を求めてきたアラブ諸国、諸外国の立場が退行していることを非難した。

これに対して、ブラーヒーミー共同特別代表、アラビー事務総長が紛争の政治的解決を強調、これにアルジェリア、イラクが同調、ジュネーブ2会議へのアラブ諸国出席に支持を表明した。

閣僚委員会は、6月5日に、ジュネーブ2会議への対応を協議するためのアラブ連盟緊急外相会議を開催することを決め閉会した。

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国連のハーリド・ミスリー駐シリア広報官は、ダマスカスで活動する国連各機関の代表からなる使節団がタルトゥース市(タルトゥース県)を訪問し、人道支援のための新事務所を同市に開設したと発表した。

ミスリー報道官によると、事務所はスワイダー市、アレッポ市にも近く開設予定。

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ドイツ紙『シュピーゲル』(5月23日付)は、ドイツ連邦情報局(BND)のゲルハルト・シンドラー長官が安全保障問題を担当する高官らとの会談で、シリア軍がかつてないほど強力な状態にあり、反体制武装集団に対する作戦を成功させ、多くの地域の支配を回復する能力を有していると見方を示したと報じた。

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トルコのハヤティ・ヤズジ通商税関大臣は、ハタイ県レイハンル市近郊の対シリア国境地帯に全長2.5キロの壁を建設し、シリア領内からの違法な人の流れを阻止すると発表した。

壁はコンクリート製で、監視カメラが設置されるという。

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『ハヤート』(5月24日付)などによると、トルコのハッカー集団レッド・ハックが、「シャームの民のヌスラ戦線のもと、ラッカ市が車爆弾製造工場と化し、爆弾がしかけられた車がダマスカスやトルコに運ばれている」としたトルコ軍諜報局の秘密文書を入手、公開した。

トルコ政府はこの秘密文書の存在を否定している。

AFP, May 23, 2013、al-Hayat, May 24, 2013、Kull-na Shuraka’, May 23, 2013、Kurdonline, May 23, 2013、Naharnet, May 23, 2013、NNA, May 23, 2013、Reuters, May 23, 2013、SANA, May 23, 2013、Der Spiegel, May 23, 2013、UPI, May 23, 2013などをもとに作成。

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