アレッポ県内の警察学校をめぐって軍と反体制武装集団の間で激しい戦闘が繰り広げられるなか、アサド大統領が英日刊紙によるインタビューに応え英国含む西側諸国のダブル・スタンダードを厳しく批判(2013年3月3日)

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アサド大統領のインタビュー

アサド大統領は英日刊紙『サンデー・タイムズ』(3月3日付)のインタビューに応じた。

アサド大統領の主な発言は以下の通り。

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『サンデー・タイムズ』の記事はhttp://www.thesundaytimes.co.uk/sto/news/world_news/Middle_East/article1224162.eceを参照。

SANA, March 3, 2013

全文はhttp://www.voltairenet.org/article177726.htmlに掲載。

またインタビュー映像はhttps://www.youtube.com/watch?v=wtmb_fkyJHMを参照。

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「第1に、私が計画(危機解決政治プログラム)を発表したとき、それが対話に関心のあるすべての人に向けられていると述べた。なぜなら対話を信じていない者と、対話に基づて計画を立てることなどできないからだ…。第2に、この公開対話は、排他的な集団どうしではなく、すべてのシリア人の間でなされるべきである…」。

「(危機解決政治プログラムを)政府と一部の反体制勢力との対話と見る者もいる…。しかしそれはもっと包括的なものだ…。シリアの将来は、一部の指導者だけでなく、すべての国民の希望をもとに決せられるものだ」。

「対話のもう一つの側面は、武器を蜂起した民兵に門戸を開いている点であり、我々はこれを促すためにさまざまな恩赦を認めてきた。これはこうした集団との対話を行う唯一の方法だ…。一部の者は武器を蜂起し、通常の生活を送っている」。

「彼ら(西側諸国)は、一様でないにもかかわらず、すべての組織を一つのカゴに入れようとする。あたかも政府に反対するすべてが反体制勢力であるかのようにだ…。(しかし)政治組織もあれば武装テロリストもいる。我々は反体制勢力と対話はできるが、テロリストとはできない。我々はテロと戦っている」。

「私は、シリア国外のいわゆるシリア人組織が何なのかをコメントするつもりはない。こうした組織は自立していない…」。

「現実離れしている。英国の最近の調査では、比較的多くの英国民が「シリアに関与しない」こと望んでおり、英国政府がシリアの反乱軍に軍事供与を送るべきではないと考えている。にもかかわらず、英国政府はEUにシリアへの武器禁輸措置を解除するよう迫り続け、武装集団に重火器を供与しようとしている」。

「英国は、シリアの穏健な集団に軍事支援を行いたいと考えている。シリアにそうした穏健な集団などいないことを充分に知っているにもかかわらずである。我々は今、アル=カーイダ、ないしはその分派であるヌスラ戦線、さらには過激なイデオロギーを持つ集団と戦っている…。偽善どころではない!表現の自由を語りながら、欧州の衛星放送でシリアのテレビ・チャンネルを禁止するというのは、偽善の域を超えている。あなたがたは、テロ行為でシリアで誰かが殺されているのに涙を流しておいて、ダマスカスで先週起きた爆弾テロを非難する国連安保理声明を拒否している…。偽善だ!」。

「いわゆる自由シリア軍は、西側が読者に信じ込ませようとしているような組織ではない。数百の小さな集団で…、組織の体をなしておらず、指導部、指揮系統もない。さまざまな理由で活動するギャング集団だ。自由シリア軍は単なる見出しで、こうした組織を正当化するための傘に過ぎない」。

「むろん、紛争当初、自発的な運動がなかったわけではない。シリアで変革をめざす人々はいたし、そのことを私は何度も認めてきた。だから私は対話が紛争解決のためだけでなく、シリアの未来のためのものだと言っているのだ。なぜなら、変革を望む多くの集団が今やテロリストに反対しているからである」。

「この計画(危機解決政治プログラム)のもっとも主要な条項とは対話で、この対話によってすべての期限、計画の手順や詳細が定められる。私の計画の第1条は暴力停止だ。もし暴力を停止できなければ、国民投票や選挙などに関する条項を実現できるのか?」

「私は先ほど、多くの集団に指導部がないと述べた。しかし、真の指導部が彼らに武器や装備を供与する国、すなわち、トルコ、カタール、サウジアラビアであることを我々は知っている。もし部外者がプロセスを真に支援したいのなら、これらの国がテロリストに支援を行うのを停止するよう圧力をかけるべきだ」。

「彼ら(反体制勢力を支援する国々)は、いわゆる「在外反体制組織」が対話に参加することを妨げている…。なぜなら、彼らはこの対話が私の退任をもたらすのではなく、実はシリアをより強力にすることを知っているからだ…。対話は、シリア、テロ、シリアの将来をめぐるものであって、地位や人物をめぐるものではない。対話について語ること、そして対話によって大統領がどうなるかを語ることで人々の関心をそらすべきではない。私自身もそうしたことはしてこなかった」。

「もし誰かが、シリアを「本当に」助けたいと考え、我々の国の暴力を停止させたいのなら、彼にできることは一つだけだ。トルコに行って、エルドアンと席をともにし、彼にシリアへのテロリストの潜入を止め、装備を送るのを止め、テロリストに兵站支援を行うのを止めるよう告げることだ。サウジアラビアとカタールに行き、シリアのテロリストに資金援助をするのを止めるよう告げることだ」。

「(ジョン・ケリー米国務長官にメッセージはあるかとの問いに対して)シリア国民だけが大統領が、とどまるのか去るのかを話題にできる」。

「この政府(英国政府)との問題は、その浅はかで未熟なレトリックが、弱い者いじめと覇権主義の伝統を目立たせるだけだということだ…。問題を軍事化させようとしている英国に、何らかの役割を演じることをどうして期待できるのか?…もし役割を演じたいのであれば、こうした態度を改めねばならない。より分別のある責任をともなった行動をとらねばならない。それまでは、放火魔が消防士になることを我々は期待しない」。

「これらの数字(犠牲者数、避難民数)をどのように検証したのか?…我々は人道的介入への道を切り開くため、過去において死者数、人的被害に関する数値が操作されてきたことを知っている」。

「(一部の犠牲者は軍事攻撃によって今も殺害されているとの記者の発言を受けて)我々はまず、具体的な名前をあげずに数字について語ることはできない。殺された人には名前がある。次に、なぜ彼らは死んだのか?どこでどのように殺されたのか?誰が殺したのか?武装ギャングか、テロ集団か、犯罪者か、誘拐者か、軍か、誰なのか(答えてください)?」

「(市民の被害がこうしたすべての集団によるとの記者の発言に対して)しかしあなたは現下の状況の責任を一人の人間が負っていると含意しているかのようだ」。

「シリアでのアル=カーイダの役割は世界の他の場所と同じだ。殺人、首斬り、拷問、そして子供たちを学校に行かせないこと。なぜならアル=カーイダのイデオロギーは無知が存在する場所で栄えるからだ」。

「シリアについて心配するのであれば、それは「マイノリティ」の問題ではない。こうした考え方は浅はかだ。なぜならシリアは、宗教、宗派、エスニック集団、イデオロギーのるつぼであり、それらが混ざり合うことで均質的な社会となっているからだ…。我々は、大多数をなす穏健なシリア人のことを心配すべきだ。なぜならもし我々が(アル=カーイダの)過激主義と戦わなければ、彼らはマイノリティとなり、その存在をやめてしまうかもしれないからだ…。(アル=カーイダは)殺戮以上にイデオロギーで(シリアを)脅かしている」。

「シリアの化学兵器に関するメディアでの報道や高官のレトリックはすべて憶測に過ぎない…。世界が心配すべきは化学物質がテロリストの手にわたることだ」。

「兵器に関するロシアの姿勢はきわめて明確だ。彼らは国際法に沿って自衛のための兵器をシリアに供与している。ヒズブッラー、イラン、ロシアは、テロと戦うシリアを支援している。ロシアはきわめて建設的で、イランは支援してくれている。ヒズブッラーの役割はシリアでなくレバノンの防衛だ。我々は強力な軍と警察組織を持つ2,300万人からなる国だ。我々の国を守るために外国の戦闘員など必要としていない。我々は問わねばならないのは、それ以外の国の役割だ。カタール、トルコ、サウジアラビア、フランス、英国、米国。これらの国はシリアのテロを直接、間接、軍事的、そして非軍事的に支援している」。

「(亡命の意思があるかとの記者の問いに関して)それは大統領とは関係のない問いだ。愛国的な個人、愛国的な市民が国を去ろうと決心するとは思わない…。私は他の愛国的シリア人と同じだ」。

「(義兄のアースィフ・シャウカト副参謀長暗殺に関して)義理の兄について言及したが、これは家族の問題ではない。上級士官が暗殺されれば、国家に関わる問題となる。こうした犯罪は、テロと戦うことをより決心させる」。

国内の暴力

ダマスカス県では、ムワーサー地区とマッザ区に隣接する自由貿易区に迫撃砲2発が、またウマウィーイーン広場近くの軍武装部隊参謀本部に迫撃砲1発が着弾した、とシリア人権監視団が発表した。

これに対して、SANA(3月3日付)は、税関公社施設と自由貿易区公社倉庫に迫撃砲2発が着弾し、近くに駐車されていた車などに被害が出た(のみ)と報じた。

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ダマスカス郊外県では、SANA(3月3日付)によると、ハラスター市、バストラ市郊外、アッブ農場郊外、ザバダーニー市、リーマー市郊外、アドラー市郊外などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラッカ県では、SANA(3月3日付)によると、ラッカ市への潜入を試みた反体制武装集団を軍が対峙した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区、旧市街などに軍が砲撃を行った。

一方、SANA(3月3日付)によると、ヒムス市ジャウバル区、スルターニーヤ地区、カフル・アーヤー村、アービル村、ラスタン市、東ブワイダ市、ガントゥー市、ラービア市、ハイダリーヤ村、ブルジュ・カーイー村、タッル・ザハブ町、サアン村、ザアフラーナ村、タドムル市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ハーン・アサル村の警察学校をめぐる軍と反体制武装集団の攻防戦で、軍兵士、戦闘員が少なくとも120人死亡した。

同監視団によると、反体制武装集団は警察学校をほぼ完全に制圧し、軍はアレッポ市西部最大の拠点を失ったのだという。

これに対して、AFP(3月3日付)は、軍消息筋の話として、反体制武装集団戦闘員300人がこの攻防戦で死亡した、と報じた。

一方、SANA(3月3日付)によると、ダイル・ジャマール村、マンスーラ村、カフルダーイル村、バービース村、ハーン・アサル村、カフルナーハー村、ナッカーリーン村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、シャイフ・サイード地区、マサーキン・ハナーヌー地区、旧市街、バニー・ザイド地区などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(3月3日付)によると、ダイル・ザウル市各所で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(3月3日付)によると、ムハルダ市郊外のタッル・マラフ市で、検問所を襲撃しようとしたシャームの民のヌスラ戦線メンバーら戦闘員を軍が撃退、殲滅した。

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イドリブ県では、SANA(3月3日付)によると、タッル・サラムー市、ビンニシュ市、ナイラブ村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ゴラン高原に近いジャムラ村の機甲連隊の拠点を反体制武装集団が襲撃・占拠し、連隊司令官の少佐を「処刑」した。

またゴラン国境に近いマアリヤ村の検問所も、反体制武装集団が襲撃・制圧し、軍の大尉を「処刑」し、同村に対する砲撃で、市民6人が死亡したという。

一方、SANA(3月3日付)によると、ジャムラ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラームの曙旅団メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、トルクメン山(ラビーア町一帯)各所で、軍と反体制武装集団が交戦し、15人の戦闘員が死亡した。

これに関して、AFP(3月3日付)は、軍消息筋の話として、「シリア・イスラーム解放戦線」を名のる武装集団が活動していた軍がバイト・アワーン村をはじめとする8村を制圧した、と報じた。

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ハサカ県では、クルディーヤ・ニュース(3月3日付)によると、タッル・ハミース市に軍が空爆し、自由シリア軍の戦闘員6人が死亡した。

これを受け、複数の消息筋によると、民主統一党人民防衛隊がタッル・マアルーフ町への部隊を強化した。

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『サンデー・タイムズ』(3月3日付)は、シリア国内での戦闘に参加している英国人戦闘員1人が軍との戦闘で死亡したと報じた。

同報道によると、死亡したのはイブラーヒーム・マズワージー。シリアでテロ活動を行う、サラフィー主義戦闘員に参加し、シリアで2週間前に死亡したという。

なお同報道によると、シリアでの戦闘に参加している英国人サラフィー主義戦闘員の数は80人に及ぶという。

国内の動き

『ワタン』(3月3日付)は、シリアの穀物公社のアブー・ザイド・カーティビー代表の話として、イランからシリアへ毎日500~800トンの穀物が供与されていると報じた。

反体制勢力の動き

レバノンのジャディード・チャンネル(3月3日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長がトルコからシリアに密入国し、アレッポ県マンビジュ市、ジャラーブルス市などに数時間滞在したと報じ、その映像を公開した。

http://www.youtube.com/watch?v=gNxGUtvyAII

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アブー・ファドル・アッバース旅団を名のる武装集団は、ロイター通信(3月3日付)に対して、イラクとレバノンのシーア派戦闘員がアサド政権を支援するかたちで戦闘に参加していると断じた。

同旅団は、ダマスカス郊外県サイイダ・ザイナブ町周辺で、「スンナ派を保護するため」に戦闘を行っているのだという。

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自由シリア軍国内合同司令部中央広報局のファフド・ミスリー(在レバノン)は声明を出し、重武装したヒズブッラーの戦闘員数千人がベカーア県(バアルベック、ヘルメル郡)からヒムス県クサイル、ハマー県ガーブ地方に対して「軍事侵攻」を準備していると主張した。

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シリア国民評議会は声明を出し、ハサカ県ヤアルビーヤ市での軍と反体制武装集団の戦闘にイラク軍が参加するとともに、シリア軍のイラク領からの砲撃を認めたと断じ、ヌーリー・マーリキー内閣を強く非難するとともに、アラブ連盟と国連に対してイラクの主権侵害を非難するよう求めた。

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AFP(3月3日付)は、トルコのガズィアンテップ市で、在外反体制活動家が、アレッポ県内の反体制勢力の解放区の自治を担当するための地元評議会メンバー29人を選出したと報じた。

地元評議会は、シリア国内の自治組織だと考えることが多いが、今回の選挙では、シリア国外に逃れた各地地域の活動家約240人が立候補した。

選挙結果は3月4日に正式に発表されるという。

諸外国の動き

イラクのニネベ県報道官は『ハヤート』(3月3日付)に対して、ハサカ県ヤアルビーヤ市に面するラビーア町の国境検問所を国境地帯での戦闘激化を受けて閉鎖した、と述べた。

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英国のアリスター・バート中東問題担当大臣は『ハヤート』(3月4日付)に対して、「非常に激しい暴力行為が行われている現状において、シリアにさらなる武器供与を行うことは(紛争解決に)資さない。しかし我々は広範な措置を講じることで、アサドに、こうした姿勢(弾圧)に決して依存することなどできないということが伝わるだろう」と述べた。

また「アサド大統領にできる最善策は、国連が提示した解決策を即時受諾することだ」と付言した。

AFP, March 3, 2013、Akhbar al-Sharq, March 3, 2013、al-Hayat, March 3, 2013, March 4, 2013、Kull-na Shuraka’, March 3, 2013、al-Kurdiya
News, March 3, 2013、Naharnet, March 3, 2013、Reuters, March 3, 2013、SANA,
March 3, 2013、The Sunday Times, March 3, 2013、Youtube, March 3, 2013、al-Watan, March 3, 2013などをもとに作成。

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