リヤドでの反体制派の合同会合で基本方針を確認:アサド大統領の進退、テロ組織の定義は曖昧に(2015年12月9日)

サウジアラビアの首都リヤドで8日に開会したシリアの反体制派の合同会合は、2日の審議を行い、閉幕声明の文言やシリア政府との交渉にあたる統一代表団の構成などについて意見を交わし、『ハヤート』(12月10日付)によると、2日目の会合では、7項目からなる反体制派の基本方針が確認された。

この基本方針とは、①シリアの領土および国民の統合維持、②民主的文民国家の樹立、③国家による武器保有および使用の独占、④「国家テロ」を含むあらゆる形態のテロの拒否、⑤すべての外国人戦闘員の拒否と撤退要求、⑥民主主義、人権、トランスパレンシー、アカウンタビリティ、法治、国家機関の維持、軍・治安機関の再編、の7項目。

なお基本方針の確認に先だって、反体制武装集団の代表(参加者は15人から18人に増加)は8日に、5項目からなる基本方針案を示していたが、確認された基本方針は、アサド政権の退陣や外国人戦闘員の組織名の言及を避けるなど曖昧な内容となっている。

その内容は、①アサド大統領および政権幹部全員の退任と裁判の実施、②軍・諜報機関といった抑圧装置の解体、③愛国的で汚職とは無縁の軍・治安機関の新設、軍・治安機関以外の国家機関の維持、④イラン・イスラーム革命防衛隊、ヒズブッラー、アブー・ファドル・アッバース旅団、ダーイシュ(イスラーム国)に代表される外国の宗派的テロ勢力のシリアからの撤退、⑤シリアの国土、国民の統合と独立、主権、国民意識の維持、政治的・宗派主義的な分割の拒否。

基本方針確認後、参加者は、紛争の政治解決に向けた反体制派の統一ヴィジョン、シリア政府の対話の原則・しくみ・期間などについての審議に移り、以下の点を確認した。

①ジュネーブ合意(2012年6月)、国連安保理決議第2118号における移行期統治機関に関する文言の遵守。

②ジュネーブ2会議(2014年2月)でのシリア政府との交渉内容を踏まえたかたちでの交渉再開。

③シリア領内での戦闘停止。

しかし、②については民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表が「ジュネーブ2会議は何も達成していない」と反論、また③についてはイスラーム軍のムハンマド・ビールクダール氏が「シリア政府を信頼できない」と疑義を呈した。

さらに2日目の会合では、国連の役割、閉幕声明の文言、シリア政府との交渉にあたる統一代表団の構成についての審議も行われた。

統一代表団の構成については、シリア革命反体制勢力国民連立がメンバー数を15人とし、これを、治安や停戦問題を担当するグループ、政治プロセスと移行プロセスを担当するグループ、代表団への政治支援・諮問を担当するグループの三つに分けるべきだと主張した。

これに対して、民主的変革諸勢力国民調整委員会はメンバー数を20人とし、「合同会合に参加していない武装集団の代表を含めるべき」と主張し、民主統一党が主導する西クルディスタン移行期民政局の参加組織も統一代表団に加えるべきだと暗に主張した。

al-Hayat, December 10, 2015

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2日目の会合に先立って、会合にオブザーバー参加している「シリアの友連絡グループ」(ロンドン11)と呼ばれてきた米国、英国、トルコ、UAEの各国代表がシリア情勢への対応について協議した。

『ハヤート』(12月10日付)によると、各国代表協議では、米国とトルコの対立が改めて浮き彫りとなった。

すなわち、米国は、アサド大統領の進退を停戦プロセスや和解プロセスの前提条件とせず、シリア政府と反体制派との間で予定されている交渉の場で決する方針に傾斜する一方、トルコは、移行期を開始する前にあらかじめアサド大統領の役割を限定するよう改めて主張したという。

なお、米国の姿勢は、ロシア、イラン、ドイツの方針に準じており、トルコの姿勢は、英国、フランスなどの支持を受けているという。

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『ハヤート』(12月10日付)は、12月半ばに開催が予定されているウィーン4会議で協議が予定されている反体制派の「テロ組織」と「合法的な反反体制派」への峻別に関して、西側高官筋の話として、ロシア政府がヨルダンに対し、「自由シリア軍」を名乗る武装集団を含む22組織を「テロ組織」として認定する案を提示した、と伝えた。

同消息筋によると、これに対して、トルコは、PKK(クルディスタン労働者党)とつながりのある民主統一党が主導する西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊を「テロ組織」に指定することを主張、アラブ諸国は、イラン・イスラーム革命防衛隊、ヒズブッラーなど、イラン人、イラク人、レバノン人の民兵18組織を「テロ組織」に認定するよう求めているという。

AFP, December 9, 2015、AP, December 9, 2015、ARA News, December 9, 2015、Champress, December 9, 2015、al-Hayat, December 10, 2015、Iraqi News, December 9, 2015、Kull-na Shuraka’, December 9, 2015、al-Mada Press, December 9, 2015、Naharnet, December 9, 2015、NNA, December 9, 2015、Reuters, December 9, 2015、SANA, December 9, 2015、UPI, December 9, 2015などをもとに作成。

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