シリアでの人権侵害を調査するため国連人権理事会調査委員会はロシアの爆撃に関して「我々は誰が爆撃を行っているのかを特定するため、シリアや軍関連情報に近づく能力を有しない」と主張(2016年2月22日)

シリアでの人権侵害を調査するための国連人権理事会調査委員会のパウロ・セルジオ・ピネイロ委員長(ブラジル)は、国連人権委員会に11回目となる最新の報告書(http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/CoISyria/A-HRC-31-68.pdf)を提出した。

同報告書においてピネロイ委員長は「シリアでの外国の軍事的介入が圧倒的、しかも一貫して激化し、民間人やさまざまなコミュニティに壊滅的な結果をもたらしているのを目にしている。空爆の激化によって、民間人にとって安全な場所はほとんどなくなっている。彼らはこれまで以上に暴力に曝されるようになっている」と懸念を表明した。

そのうえで、シリア政府による民間人、民間施設への攻撃、とりわけ最近のシリア北部(アレッポ県)での攻撃によって「数百人が殺害され、病院、学校、都市インフラが破壊された」としたうえで、政府軍、反体制武装勢力、シャームの民のヌスラ戦線やダーイシュ(イスラーム国)といったテロ組織など、すべての紛争当事者が「無差別攻撃」を行っていると非難した。

調査委員会は、国際刑事裁判所への提訴を改めて提言するとともに、包括的な和平プロセスを推し進めることを呼びかけた。

なお、調査委員会は記者会見で「シリア軍がアレッポ県、イドリブ県で実施した空爆による犠牲に関する文書と情報」を持っていると述べる一方、ロシア軍による空爆については「我々は誰が空爆を行っているのかを特定するため、シリアや軍関連情報に近づく能力を有しない」としつつも、「しかし、空爆が民間人を標的としていることは確かであり、それを実施できるのはシリア軍とその同盟者であって、反体制派ではない」と主張した。

『ハヤート』(2月24日付)が伝えた。

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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は、シリアでの人権侵害を調査するための国連人権理事会調査委員会が総会に提出した報告書に関して、「シリア政府に対するバイアスがかかっており、信用できない」と一蹴した。

これに対して、サウジアラビアのアブドゥッラー・ムアッリミー国連大使は、ジャアファリー国連代表の発言を受けるかたちで「(シリア国内での殺戮などの)犯罪の第1の責任は、シリア政府、そしてそれと同盟する外国人民兵、一部の国の正規軍になる」と反論した。

そのうえで、シリア国内での反正を国際刑事裁判所に提訴することを支持すると表明した。

トルコもサウジアラビアに同調し、国際刑事裁判所への提訴を支持した。

一方、ロシアのヴラジミール・ザガイノフ国連副大使は「委員会はシリアの危機に取り組みにあたりバランスをとらねばならず、出所不明の情報に依拠すべきではない」と述べた。

またイランは「誰がシリア人を統治するかは、シリア人のみが決める問題」としたうえで、「近視眼的な政策を実施することで人権を侵害する行為を慎むべきだ」と欧米諸国、サウジアラビア、トルコの姿勢を暗に批判した。

AFP, February 23, 2016、AP, February 23, 2016、ARA News, February 23, 2016、Champress, February 23, 2016、al-Hayat, February 24, 2016、Iraqi News, February 23, 2016、Kull-na Shuraka’, February 23, 2016、al-Mada Press, February 23, 2016、Naharnet, February 23, 2016、NNA, February 23, 2016、Reuters, February 23, 2016、SANA, February 23, 2016、UPI, February 23, 2016などをもとに作成。

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