アサド大統領が中国のテレビ局のインタビューに応じる「トランプ政権はダーイシュとの戦いを優先させるというレトリックを具体化していない」(2017年3月11日)

アサド大統領は、中国の民間衛星テレビ局「鳳凰衛視」(フェニックス・テレビ)のインタビューに応じた。

大統領が鳳凰衛視のインタビューに応じるのは、2015年11月に続いて2度目。

インタビューは英語で行われ、SANAがYoutube(https://youtu.be/BLkqnUDlEGo?t=6)を通じてその映像を公開、HPを通じて英語全文(http://sana.sy/en/?p=101799)、アラビア語全訳(http://www.sana.sy/?p=520408)を公開した。

インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

SANA, March 11, 2017

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「交渉を実らせたいのなら、「誰と席に着くか」を問う必要がある。つまり、善意のある良い人たちがいるとして、誰か彼らを代表するかが問題となる…。様々なグループがいて、愛国的だと言う人たちがいるが、彼らは誰も代表していない、自分たち自身を代表しているだけだ。テロリストを代表としている者たちもいて、テーブルについているし、サウジアラビア、トルコ、フランス、英国、そしておそらくは米国のアジェンダを代表する者たちもいる。つまり、それ(和平協議)は一元的な会合でないのだ…。にもかかわらず、我々は会合に向かった。なぜなら、我々はいかなる対話も問題解決に向けた良いステップだと考えているからだ。テロリストであろうが、外国に与していようが、彼らは心変わり、真のシリア人に戻ってくれるかもしれない」。

「(ジュネーブ会議は、スタファン・)デミストゥラ氏(シリア問題担当国連特別代表)が、シリアに圧力をかけるために交渉を利用しようとする国の影響下で作り出したしくみで、解決策を導くためのものではなかった…。私が誰かと交渉するとしても、誰と交渉するのか? 誰が誰を代表しているのか。それが問題だ…。今回はジュネーブでの交渉そのものはなかったが…、これが理由の一つだ…。ジュネーブで我々が議論したのは、議題、見出しだけだった」。

「(交渉が)遅れれば、損害、破壊、殺戮、流血がシリアで起こるだろう。だから、我々は解決策に至りたいと考えている。しかしどのように至るのか? 二つの平行した路線が必要となる。第1にテロリストと戦うこと…、第2に対話を行うことだ。この対話には多くの側面がある。シリアの将来に関わる政治的な側面がその一つだ。どのような政治体制を必要とするか…? これについては、どのような体制でも構わず…、シリア人が望む者を国民投票で決することになる。また、テロリストに与し、テロ行為を行ってきた人々をどのように正常な状態に戻すかという側面もある…。もし真の政治的解決について話すのであれば…、唯一の解決策は政府とさまざまな武装組織の和解で、その多くが既に政府側につき、政府とともに戦っている」。

「どの国でも構わないが、外国に希望を託す場合、それは愛国的ではない…。彼ら(最高交渉委員会)は、外国の政府ではなく、シリア国民の支持に依拠すべきだ」。

「(米国のドナルド・)トランプ政権と大統領自身は、選挙期間中もその後も、ダーイシュ(イスラーム国)を打ち負かすことにプライオリティを置くというレトリックを主にとっている。私は当初から、こうした方針こそが、シリアやイラクで起こっている事態に対して、成功裏に進められるべきアプローチだと言ってきた。しかし、このレトリックに関してまだ何も具体的なものを目にしていない…。テロに地域レベルで対処することなどできない。取り組みは包括的であるべきで、部分的、一時的であってはならない。空からでは(空爆では)対処できず、地上の部隊と協力すべきだ…。ダーイシュについて話すことは、テロ全般について話すことを意味しないことを考慮して欲しい。ダーイシュとヌスラ(シャーム解放機構)は別物だし、シリアには多くのグループがいる。彼らはダーイシュでもなければ、アル=カーイダでもない。これらはワッハーブ主義過激思想というバックグランドを共有している」。

「(トランプ政権との協力は)理論としては可能だが、実際には不可能だ。なぜなら、シリアと米国の間には公式レベルでつながりがないからだ。ダーイシュに対する米国の空爆は…シリア軍、シリア政府との協力・協議がないまま行われれば、違法だ」。

「間接的には、(米国との間に)多くのチャンネルがあるが、私的なチャンネルに賭けるべきではない。両国関係は公式のものであるべきだ」。

「その会合(トルコのアンタキアでの米国・ロシア・トルコ三カ国参謀長会談)をダーイシュ(との戦い)と結びつけようとするのなら、それは客観的とは言えない。なぜなら、すくなくともこのうちの一カ国、すなわちトルコは今もダーイシュを支援しているからだ。(レジェップ・タイイップ・)エルドアン(大統領)はイデオロギー的にダーイシュやヌスラと結びついており、共鳴している…。もう一つの当事者である米国は、少なくとも(バラク・)オバマ政権期は、ダーイシュがシリアの石油をトルコに密輸するのを見逃してきた…。米国はダーイシュに対して自らを取り繕う以外の何もしてこなかった…。この問題に関して唯一真剣に取り組んできた当事者はロシアだけだ…。どのようにしてこれらの国が協力し合えるのか。ロシアは米国とトルコがロシア人やシリア人とともにテロと戦いことを希望しているのだと思う。また、我々は米国については、新政権が発足したので若干期待していている。しかし、トルコは何も変わっていない。ダーイシュは北部に唯一の供給路を維持しており、それはトルコを経由している」。

「(米軍のマンビジュ市駐留を)我々は歓迎しない。我々の招待、我々との協議、そして我々の許可のなく、シリアに派兵されたいかなる外国の軍隊も侵略者だ…。彼らが役に立つとは思わない…。彼らはダーイシュと戦うというのか? 米国はほとんどすべての戦争に負けてきた。イラクで負け、撤退を余儀なくされた。ソマリアでも、ヴェトナムでも、アフガニスタンでもだ…。米国はゴタゴタを作り出すだけだ。米国は問題を作り出し、破壊するのが大の得意だが、解決策を作るのは至極下手だ」。

「中国は、(国連安保理での対シリア制裁決議案に)拒否権を発動することで、何よりもまず国連憲章を擁護したのだ。なぜなら、国連はそもそも世界の安定を回復するために創設されたからだ。これに対して、西側諸国、とりわけ安保理常任理事国(三カ国)にとって、国連は(外国の)体制や政府を転換するためのツール、ないしは手段に過ぎない…。第2に、中国は、ロシアと協力して、国連内にある種のバランスを作り出すことで、世界の安定を回復させた。第3に、国連憲章を利用して自分たちの国益を伸張しようとしている国は、1990年代に中国に介入しようとした国と同じだ。これらの国は、人権などといった見出しを利用した…。中国は自国の国益、シリアの国益、そして世界の利益を擁護してきた」。

「中国はすべての部門で例外なく、シリアの復興に貢献できる。なぜなら、我々はあらゆる部門で損害を受けているからだ…。しかし、こうした包括的な復興が始まる前から、中国は今も、工業プロジェクトをはじめとする多くのプロジェクトに関与してくれている」。

「中国からトルコを経由して(シリアに)やって来る(新疆)ウィグル自治区のテロリストに関して、中国の諜報機関と協力している。残念ながら我々が現在管理できていないのは、対トルコ国境だけだ…。ウィグルからのテロリストは主にトルコから入ってきている。なぜか…? トルコ政府の支援を受けているからだ」。

「(Netflixのドキュメンタリー「ホワイト・ヘルメット」が米アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞したことに関して)何よりもまず、我々はヌスラがオスカーを受賞したことを祝福しなければならない! アル=カーイダがオスカーを受賞することは西側にとっても前例がないからだ。信じられない。しかし、このことは、オスカーであれ、ノーベル賞であれ、この手の賞が政治化した賞だということを示している…。ホワイト・ヘルメットの話は非常に単純だ。ヌスラ戦線の醜い顔を人道的な顔に変えるための美容整形だ。それ(ホワイト・ヘルメットの美談)は、シリア軍がアレッポ市を解放しようとするのを妨害するためのストーリーだった」。

「我々は今、ラッカ(市)に接近している…。我が軍は、ラッカ市に近いユーフラテス川(西岸)に到達した。ラッカは現在、ダーイシュにとっての一大拠点だ。だから、我々にとって最優先事項になるだろう。しかし、そのことは他の都市が優先事項でないという意味ではない」。

「家族内での義務をうまく果たせなければ、国レベルのより大きく、そして包括的な義務をうまく果たすことなどできない。仕事が多すぎで自分の義務を果たせないというような言い訳はできない。それが義務というものだ…。これらの義務をうまくこなさねばならない」。

「(家族のために国を去ろうと考えたことはあるか、との問いに対して)まったくない。過去6年、とりわけもっとも困難だった2012年と2013年にも、そんなことは考えたことはなかった」。

「(次男のカリーム・アサド(2004年生まれ)が中国語を勉強していることに関して)彼は中国語の基礎を学んだ。2年前だったと思う。残念ながら、彼に中国語を教えていた女性と男性は、大使館職員だったのでシリアを去ってしまった…。だから彼の中国語は上達していないままだ…。もちろん(彼には中国語を続けて欲しい)。なぜなら中国は大国だからだ」。

「私たちはそんなこと(カリームに中国語の勉強を強要するということ)を考えたこともなかった…。彼自身が率先して、中国語を勉強したいと言ってきた。今まで、私は彼にその理由を聞いたことはない。なぜなら、彼には自由でいて欲しいからだ。だが、彼も大きくなったので、なぜか聞いてみることにする」。

AFP, March 11, 2017、AP, March 11, 2017、ARA News, March 11, 2017、Champress, March 11, 2017、al-Hayat, March 12, 2017、Iraqi News, March 11, 2017、Kull-na Shuraka’, March 11, 2017、al-Mada Press, March 11, 2017、Naharnet, March 11, 2017、NNA, March 11, 2017、Reuters, March 11, 2017、SANA, March 11, 2017、UPI, March 11, 2017などをもとに作成。

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