アサド大統領と会談したアナン特使が「シリア政府のUNSMISへの積極的な強調の意思」を高く評価するも、米国、英国、フランス、ドイツを含む8か国はハウラでの虐殺に抗議しシリア大使らの国外追放を決定(2012年5月29日)

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アナン特使および国連の動き

アサド大統領はダマスカス訪問中のアナン特使と会談し、SANA(5月29日付)によると、アナン特使の6項目停戦案の実施状況などに関して意見を交わした。

SANA, May 29, 2012

アサド大統領は会談で、「武装テロ集団が最近各地でテロ活動をエスカレートさせ、殺戮、誘拐、さらには略奪、破壊行為を行っている」と指摘した。

また「武装テロ集団に資金、武器、潜伏の支援を行う国々はこの停戦案を遵守し、テロ停止に寄与するというこれらの国々の政治的意思があることを示すべき」だと指摘し、「停戦案の成功はテロリスト、テロ支援者の活動と武器密輸を停止させることにかかっている」と強調した。

一方、SANA(5月29日付)によると、アナン特使は、シリア政府の自身およびUNSMISへの積極的な強調の意思を高く評価した、という。

会談には、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣、ジハード・マクディスィー外務在外居住者省報道官が同席した。

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アナン特使はアサド大統領との会談後に記者会見を開き、シリア情勢が「引き返せない地点」に来たと述べ、シリア政府に暴力の「即時停止」を求めた。

また「シリア政府と政府を支持するすべての民兵はすべての軍事作戦を停止し、最大限の自制を示すことができるということだ」と述べるとともに、反体制勢力に対しても暴力停止を呼びかけた。

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会談に関して、アナン特使の報道官アフマド・ファウズィー氏は声明を出し、「ハウラでの最近の事件を含むシリアでの暴力への国際社会の懸念を伝えた」と発表した。

SANA, May 29, 2012

またアナン特使が「率直な表現で、自身の見解を伝え、暴力停止と逮捕者釈放といった大胆な措置なくして6項目停戦案は成功し得ないと伝えた」と付言した。

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アナン特使はダマスカスで各地の部族代表者8人と会談した。

部族代表者はハサカ県のアドワーン部族のシャイフ、ジャウハル・フルウ氏らで、アナン特使に対して、反体制勢力の暴力を停止させるよう求めた。

アサド政権の動き

アーディル・サファル内閣が閣議を開き、ハウラでの虐殺を非難した。

ハウラでの虐殺に関して

米国、英国、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、スペイン、イタリアの8カ国は、ハウラでの虐殺に抗議するため、シリア大使らを国外追放処分とした。

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フランスのフランソワ・オランド大統領は記者会見で、ラーミヤー・バャックール駐仏シリア大使(兼UNESCOシリア代表)に対して72時間以内にフランスから退去するよう伝えた、と発表した。

また7月初めに「シリアの友連絡グループ」会合をパリで開催すると発表した。

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ビクトリア・ヌーランド米国務省報道官は、ズハイル・ジャッブール駐米シリア常駐代表に対して72時間以内に米国から退去するよう伝えた、と発表した。

また同報道官は、すべての国に対して、アサド政権の行為を非難するために同様の措置をとるよう呼びかけるとともに、ハウラの「住民は政府軍によって処刑された」と断じ、シリア政府に虐殺の責任があると非難した。

なお、シリア側は2011年末、イマード・ムスタファー大使を「中国に大使として異動」させて以降、米国に大使を置いていなかった。

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英国外務省もガッサーン・ディッラ常駐代表を含む3人の外交官に対して英国を退去するよう伝えた。

サーミー・ハイミー駐英シリア大使は2012年3月、英国が駐シリア大使を帰国させるのに対抗するかたちでシリアに帰国していた。

これにより、英国にシリアの外交官は不在となる。

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スペイン外務省は、フサームッディーン・アラー駐西大使ら外交官4人を追放すると発表した。

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ドイツ外務省は、ラドワーン・ルトフィー駐独大使に対して国外に退去するよう伝えた。

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イタリア外務省は、ハサン・ハドゥール駐伊大使に対して国外に退去するよう伝えた。

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オーストラリア外務省は、ジャウダト・アリー駐豪シリア常駐代表を含む外交官2人を追放すると発表した。

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カナダ外務省は、常駐代表を含むシリア人外交官全員(常駐代表および外交官1人)とその家族に対して、5日以内に退去するよう伝えた。

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ベルギー外務省はシリア大使およびシリアの外交官2人に対して「ベルギーにおいて望ましくない人物」だと伝えた。だが国外退去は求めなかった。

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国連人権高等弁務官報道官はジュネーブで記者会見を開き、ハウラでの虐殺に関して、「108人の死者のうち少なくとも20人は迫撃砲、戦車の発砲で死亡したと考える」と述べた。

また「それ以外のほとんどが…別の二つの事件で処刑された」と付言、目撃者らや活動家らが「シャッビーハ」による犯行だと疑っていることを指摘した。

人権高等弁務官事務所のこの調査が誰によって行われたかとの記者団の問いに関しては、安全上の理由で明かせないと応えた。

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BBC(5月29日付)は、ハウラでの虐殺に関して、シャッビーハが家々に進入し、住民を殺害していったとの活動家や住民の証言を放映しつつ、「現段階でこうした話が事実かどうかは調査できない」と付言した。

国内の暴力

ロンドンを拠点とする反体制組織のシリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長はAFP(5月29日付)に対して、「最近数日間の大敗でシリア軍は疲弊している…。シリア政府は軍の不満を回避するため正確な(被害に関する)数字を示していない」と述べた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル地方東ブワイダ村で、軍の迫撃により市民3人が死亡した。

またヒムス市サフサーファ地区で市民4人が射殺された、という。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、市民1人が射殺された。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市で市民2人が射殺された。

またトゥワイニー村では、軍の発砲により青年1人が殺害されたという。

一方、サラミーヤ市ではハウラでの虐殺に抗議する反体制デモが発生した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アイン・タルマー村で軍の発砲により市民1人が死亡した。

またカタナー市で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、死人1人が死亡、数十人が逮捕、複数の民家が破壊された。

一方、バイト・サフム市ではハウラでの虐殺に抗議する反体制デモが発生した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アターリブ市が軍・治安部隊の砲撃にさらされ、市内では軍・治安部隊と離反兵が交戦した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ラッカ市の刑事保安局ビル近くで、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、前者の中尉と軍曹が殺害された。

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ダマスカス県では、SANA(5月29日付)によると、ルクンッディーン区にあるテロリストの自宅で爆弾が爆発し、テロリストとその兄弟の2人が死亡した。

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ダルアー県では、『クッルナー・シュラカー』(5月31日付)によると、ダルアー・スワイダー街道で乗り合いバスがハイジャック、13人が誘拐された。

誘拐された13人のうちほとんどがスワイダー県出身のドゥルーズ派の警官だった。

これに関して、反体制活動家のヌールッディーン・ヒラーキー弁護士が、親アサド政権のレバノン人政治家の「ウィアーム・ワッハーブ氏(ドゥルーズ)の悪党がスワイダーで住民や通行人を誘拐した」と発表した。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会は声明を出し、西側諸国によるシリア外交官追放への歓迎の意を示すとともに、ダマスカスの住民に対してハウラでの虐殺に抗議するためのゼネストを行うよう呼びかけた。

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国内で反体制活動を行うシリア民主フォーラムは声明を出し、ハウラでの虐殺を非難、ダマスカス県民、とりわけビジネスマンや事業家に対して29日に、犠牲者追悼と虐殺反対の意思を示すためのゼネストを行うよう呼びかけた。

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アラウィー派の反体制活動家100人以上がハウラでの虐殺に反対する声明を「シリア国民およびアラウィー派宗徒」の名で発表した。

レバノンの動き

AFP(5月29日付)はレバノン治安筋の話として、未明にシリア軍がベカーア県バアルベック郡アルサール市郊外の対シリア国境でシリア軍の発砲を受け、レバノン人1人が死亡したと報じた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はアナン特使と電話会談した。

ロシア外務省によると、ラブロフ外務大臣は、シリアのすべての当事者が暴力を停止すべきだとの立場を伝えた。

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フランスのオランド大統領はフランスのチャンネル2(5月29日付)に対して、「安保理での審議」が前提条件になるとしつつもシリアへの軍事介入の可能性を排除しないと述べた。

一方、ローラン・ファビウス外務大臣は『ルモンド』(5月29日付)に対して、「アサド大統領は国民を殺害した。権力の座から去らねばならない」と述べた。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、AKPの定例会合で、「忍耐にも限度がある。アッラーの意思のもと、安保理にも忍耐の限度があるべきだと思う」と述べた。

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イスラエルのシモン・ペレス大統領はハウラでの虐殺に関して、アサド大統領は「殺人犯」になったと述べた。

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ローマ法皇ベネディクト16世の報道官は声明を出し、ハウラでの虐殺への遺憾の意と犠牲者への哀悼の意を示した。

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ヒューマン・ライツ・ウォッチはハウラでの虐殺に関して、シリア政府に圧力をかけ、国際調査団の受入を認めさせるようアナン特使に呼びかけた。

AFP, May 29, 2012、Akhbar al-Sharq, May 29, 2012、al-Hayat, May 29, 2012, May 30, 2012、Kull-na Shuraka’, May 29, 2012, May 31, 2012、Naharnet.com, May 29, 2012、Reuters, May 29, 2012、SANA, May 29, 2012、Yuqal.net, May 29, 2012などをもとに作成。

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