レバノンのジャディード・チャンネルのカメラマンがシリア・レバノン国境付近でシリア軍で射殺される、一方ムアッリム外務大臣がモスクワに到着(2012年4月9日)

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国境地帯での暴力

レバノンのジャディード・チャンネルのテレビ・カメラマンのアリー・シャアバーン氏(30歳)がレバノン領内の対シリア国境地帯でシリア軍に射殺された。

Naharnet.com, April 10, 2012

『ハヤート』(4月10日付)など主要メディアによると、シャアバーン氏は同僚の特派員1人とカメラマン1人と北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方シャヒーラ市内にあるガレージに局の車を止め、そこから国境地帯の撮影を行っていた。

すると、シリア領内から1台の車(シリア軍車輌)が接近し、シャアバーン氏らはシリア軍と挨拶を交わし、ジャディード記者だと身分を明かしたのち、撮影を続けたが、しばらくしてシリア軍がシャアバーン氏らに発砲した、という。

この発砲で負傷したシャアバーン氏はクバイヤート市のサラーム病院に搬送されたが、死亡した。

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トルコ領内(キリス県の対シリア国境地帯)で、シリアから避難しようとした人々に対してシリア領内から発砲があり、複数のシリア人とトルコ人が負傷した。

トルコの外交筋が明らかにしたところによると、シリア軍の発砲は9日早朝にシリア領内から到着した避難民に対して行われ7人が負傷、またその後避難民キャンプに対しても発砲があった、という。

アナトリア通信(4月9日付)は、キリス市当局の話として、シリア人2人が死亡、15人以上が負傷したと報じた。また上記外交筋によると、トルコ人通訳1人も負傷したという。

キリス県には、ハタイ県(シリア領アレキサンドレッタ地方)とともに、シリア人避難民が設置されており、避難民の収容先になるとともに、離反兵が往来しているとされる。

Kull-na Shuraka’, April 9, 2012、

国内の暴力

ハマー県では、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長がAFP(4月9日付)に明らかにしたところによると、ラターミナ町で、軍・治安部隊の砲撃により、18歳以下の子供15人と女性8人を含む35人が殺害された。

彼らのほとんどは砲撃により倒壊した家屋の下敷きになったという。

またハマー革命評議会報道局メンバーのアブー・ガーズィー・ハマウィーを名のる活動家によると、ヒムス市内各所で、治安部隊による逮捕・摘発が行われた。

ハマウィー氏によると、カフルズィーター市周辺でも軍・治安部隊が増強されたという。

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アレッポ県では、アレッポ調整連合報道官のムハンマド・ハラビーを名のる活動家がAFP(4月9日付)に語ったところによると、アレッポ県スッカリー地区での夜間デモに治安部隊が発砲、その後「自由シリア軍」と戦闘状態に入った。

シリア人権監視団によると、この戦闘で警部1人、警官1人が殺害された。

ハラビー氏によると、タッル・リフアト市でも、軍・治安部隊による発砲、逮捕・摘発活動が行われ、シリア人権監視団は、数十人が死傷したと発表した。

トルコ国境のアアザーズ市では、軍・治安部隊と離反兵が交戦し、兵士6人と離反兵8人が死亡した。

一方、SANA(4月9日付)によると、スッカリー地区で「デモ参加者を保護する任務に当たっていた治安維持部隊」が発砲を受け、警部1人、警官9人、市民1人が殺害された。

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ヒムス県では、SNN(4月9日付)によると、軍・治安部隊が1ヵ月前に制圧していたとされるラスタン市に対して、軍・治安部隊が再び包囲、砲撃を加えた。

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ダマスカス県では、ダマスカス革命評議会のディーブ・ディマシュキーを名乗る活動家によると、カフルスーサ区で治安部隊やシャッビーハが多数展開し、活動家数十人を摘発した。

『クッルナー・シュラカー』(4月9日付)は、ダマスカス県中心部の人民議会議事堂前で「殺戮を止めろ」と書かれた赤い布を掲げ抗議行動を行った女性リーマー・ダーリーさんと、その友人サーファーナー・バクラさんが逮捕された、と報じた。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=rHL1lBEKXew#!

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Kull-na Shuraka’, April 9, 2012、

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、カウカブ村で、バスに仕掛けられた爆弾が爆発し、軍・治安部隊兵士4人が死亡した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がムーハサン市に突入、またブー・ウマル村では軍・治安部隊と離反兵が交戦した。

またダイル・ザウル市では、早朝に銃声や爆発音が聞こえた。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、サイダー町で市民1人が殺害され、ヒルバト・ガザーラ町では活動家16人が逮捕された。

アサド政権の動き

ワリード・ムアッリム外務大臣がモスクワに到着した。

『ハヤート』(4月10日付)は複数の外交筋の話として、予定されているセルゲイ・ラブロフ外務大臣らロシア首脳との会談では、アナン特使の6項目和平案に基づく軍・治安部隊の戦闘停止、都市部からの撤退などが議論される模様だと報じた。

またロシアのゲンナジイ・ガティロフ外務次官は、「ロシアがシリアでの停戦を監視する国連監視団に代表を派遣する可能性を排除していない…。我々はこの可能性を検討しているが、明らかなことは言えない」と述べた。

4月8日の段階では、ロシアは国連監視団の派遣に関して、「事態はきわめて困難且つ微妙であり、国連監視団設置に関していまだ原則的な決議が採択されていない」と消極的な姿勢を示していた。

反体制勢力の動き

シリア救援最高委員会は、シリア国外に避難した避難民の数が15万4,000人に達したと発表した。

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シリア記者連盟は声明を出し、軍によるレバノン人カメラマン殺害(4月9日付)を非難した。

レバノンの動き

ジャディード・チャンネルのカメラマン殺害に関して、ミシェル・スライマーン大統領は発砲を非難、また首魁イブ・カルトバーウィー法務大臣、レバノン・シリア最高会議のナスリー・フーリー議長、ミシェル・フーリー在ダマスカス・レバノン大使に対して、事件の調査、真相究明、そして適切な法的措置をとるよう支持するとともに、シリア側に対しても事件の調査、責任者の特定、事件再発防止を求めた。

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ナジーブ・ミーカーティー首相もまた、シリア側に事件の調査と関係者の処罰を求めると述べた。

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一方、ムスタクバル潮流のサアド・ハリーリー前首相は、「数ヶ月にわたってレバノン領内へのシリア軍の断続的な敵対行為と侵犯に目をつぶってきた」内閣に責任があると非難した。

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また、レバノン軍団のサミール・ジャアジャア代表は、事件の真相究明と、シリア・レバノン国境画定の必要を訴えた。

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これに対して、レバノン・カターイブ党最高党首のアミーン・ジュマイイル元大統領は、シリア・レバノン国境画定の必要を訴える一方、「レバノンはシリア情勢と関わるべきでない」と述べ、シリア情勢への関与が国内の政治対立を激化させることに警鐘を鳴らした。

諸外国の動き

国連の潘基文事務総長は、シリア軍によるレバノンとトルコ領内への発砲を強く非難するとともに、アナン特使の停戦案に沿った即時の停戦をアサド政権に対して求めた。

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ヒューマン・ライツ・ウォッチは過去数週間で、軍・治安部隊がヒムス県、イドリブ県などで100人以上を裁判にかけずに処刑したと発表した。

AFP, April 9, 2012、Akhbar al-Sharq, April 9, 2012, April 10, 2012、al-Hayat, April 10, 2012、Kull-na Shuraka’, April 9, 2012、Naharnet.com, April 9,
2012、Reuters, April 9, 2012、SANA, April 9, 2012などをもとに作成。

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