アサド大統領がオーストラリア連帯使節団と会談し「急進的タクフィール主義」の拡大に関して警鐘を鳴らすなか、シリア革命反体制勢力国民連立のトゥウマ暫定内閣首班がカタールを訪問(2013年12月23日)

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反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立はイスタンブールで政治委員会会合を開き、1月の総合委員会会合で、ジュネーブ2会議への参加を最終決定することを決定した。

Elaph(12月23日付)が伝えた。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、アフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長が英仏外相と電話会談し、「アサド政権が砲撃(爆撃)を続け、シリア国民を粛清しようとするなら、連立はジュネーブ2会議には行かないだろう」と伝えたことを明らかにするとともに、「諸外国がシリア政府に圧力をかけて、恐るべき大量破壊を停止させなかったら、ジュネーブ2会議でどのようにシリア政府を政治的解決に向かわせ、ジュネーブ合意を遵守させることができるのか」と発表した。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・トゥウマ暫定内閣首班はカタールを訪問し、タミーム・ビン・ハマド首長と会談した。

会談後、トゥウマ首班で『ハヤート』(12月24日付)に「樽爆弾による爆撃が続くなか、事態は悲惨だ」と述べ、国際社会に介入を求めた。

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アレッポ県バーブ市のシャームの民のヌスラ戦線は声明を出し、同市内でのタウヒード旅団の総合治安局の活動を「行き過ぎ」と批判、戦線の傘下にあるバーブ市シャリーア委員会以外の警察権・司法権を認めないと発表した。

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イスラーム・シャームの暁運動、スンナの騎士連合は共同声明を出し、アレッポ市ジャミーリーヤ地区、アズィーズィーヤ地区、スライマーニーヤ地区の軍拠点に攻撃すると発表、同地区の住民に避難を勧告した。

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クッルナー・シュラカー(12月23日付)は、ラッカ県地元評議会議長が、バアス党員の評議会参加を禁じる決定を発令したと報じた。

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シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表は、アレッポ県でのシリア軍の攻勢に関して、12月15日から22日までの過去8日間で子供87人を含む300人以上が死亡したと発表した。

シリア政府の動き

アサド大統領はシリアを訪問中のオーストラリア連帯使節団と会談した。

SANA, December 23, 2013

アサド大統領は会談で、「シリアが現在直面している急進的タクフィール主義は、国境も祖国も無いテロであるがゆえ、シリアで起きていることは、世界全体に影響を及ぼしかねない」と述べた。

これに対して、使節団は、シリアで起きていることの真相を伝えるべく努力するとの意思を伝えた。

同使節団は、ティム・アンダーソン教授らオーストラリアの研究者らから構成されており、20日にはマフムード・ズウビー情報大臣、21日はワーイル・ハルキー首相、22日にはムハンマド・ジハード・ラッハーム人民議会議長と会談していた。

SANA(12月23日付)が伝えた。

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ウムラーン・ズウビー情報大臣は、ジュネーブ2会議に参加予定の日本に対し「反体制武装勢力への武器供与を停止するよう、サウジアラビア、ヨルダン、トルコに働き掛けることを期待する」と述べた。


ズウビー情報大臣はまた「サウジアラビアは彼らへの武器供与、教練、テロリスト支援を止めるべきだ。日本がそのために役割を果たすことができれば、大きな成果になるだろう」と述べたという。

イランの参加に関しては「イランは地域における大国だ。影響力がある。参加すべきだ…。テロの「守護者」であるサウジアラビアがなぜ参加するのかという質問がなされるべきだ…。国際社会がテロを止めるためにサウジアラビアと対話したいのであれば、(サウジアラビアの参加)はためになるだろう」と述べた。

アサド大統領の退任の是非に関しては「次の任期も彼が大統領になるだろう…。我々は反体制勢力の夢想を議論することはない…。私は彼に大統領選挙に出馬して欲しい」と答えた。

首都ダマスカスで共同通信のインタビューに答えた。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市マルジャ地区、スッカリー地区に軍が樽爆弾を投下し、子供6人、女性4人を含む21人が死亡した。

また『ハヤート』(12月24日付)によると、キンディー大学病院を制圧した反体制武装集団が、アレッポ中央刑務所制圧に向けて攻勢を強めた。

一方、SANA(12月23日付)によると、アレッポ中央刑務所周辺、シャイフ・ナッジャール市(工業団地地区)、マーリア市、マーイル町、ザルズール村、ブアイディーン村、バーブ市西部、マンスーラ村、ヒーラーン村、アレッポ市カースティールー地区、アルバイド村、ハーン・アサル村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、マサーキン・ハナーヌー地区、ハイダリーヤ地区、ジャンドゥール地区、カルム・ジャズマーティー地区、ブスターン・カスル地区、シャイフ・サイード地区、バニー・ザイド地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、地元調整諸委員会によると、マジュダル・キーヒヤー村に軍が樽爆弾を投下した。

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イドリブ県では、地元調整諸委員会によると、マアッラト・ヌウマーン市に軍が爆撃を行った。

一方、SANA(12月23日付)によると、マアッラト・ヌウマーン市、ダイル・ウスマーン村、ハッルーズ村、タイイバート村、クーリーン村、カフルナジュド村、アイン・マールティーン村、アルバイーン山周辺、サルジャ村、カフルナブル市、ビンニシュ市、アイン・シート村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、地元調整諸委員会によると、ジャースィム市、ダルアー市南部に軍が爆撃を行った。

一方、SANA(12月23日付)によると、ダルアー市各所、ナーフタ町で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(12月23日付)によると、ドゥーマー市、ハラスター市、ダーライヤー市、リーハーン農場、アルバイン市、アルクーブ農場で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャーム自由人運動や外国人の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(12月23日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またカッサーア地区とアブー・ルンマーナ地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾市、市民7人が負傷した。

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ヒムス県では、SANA(12月23日付)によると、キースィーン村、ラスタン市、アブー・ハワーディード村、ヒムス市バーブ・フード地区、クスール地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(12月23日付)によると、アクラブ町で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(12月23日付)によると、ハサカ市内で送電設備の修理を行っていた電力機構社員が反体制武装集団に襲われ、1人が死亡、3人が負傷した。

レバノンの動き

シリア革命総合委員会広報局は声明を出し、ベカーア県ベカーア郡ナフラ村での自由シリア軍、シャームの民のヌスラ戦線との戦闘(22日)で、ヒズブッラーのディルガーム・ファーリス前線司令官が死亡した、と主張した。

諸外国の動き

UPI(12月23日付)は、ヨルダンのジハード主義潮流がシリア国内で活動する外国人(アラブ人)戦闘員の犠牲者に関する統計結果を発表したと報じた。

それによると、2011年3月以降、シリア国内で死亡したアル=カーイダ系の武装集団戦闘員の数は9,936人で、内訳はチュニジア人1,902人、リビア人1,807人、イラク人1,432人、レバノン人828人、エジプト人821人、サウジアラビア人714人、イエメン人571人、モロッコ人412人、アルジェリア人274人、ヨルダン人202人、クウェート人71人、ソマリア人42人、バーレーン人21人、オマーン人19人、UAE人9人、カタール人8人、スーダン人3人、モーリタニア人1人、シリア国内外のキャンプに居住していたパレスチナ人約800人だという。

またチェチェン人、アルバニア人などの死者は約30人にのぼるという。

これらの戦闘員のほとんどは、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)のメンバーだったという。

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チェチェン人武装集団「イスラーム・カリフ軍」アミールを名乗るサイフッラー・シーシャーニー氏はインターネットを通じてビデオ声明を出し、自爆攻撃によりアレッポ県キンディー大学病院を制圧したとしたうえで、イスラーム戦線、シャームの民のヌスラ戦線などに同病院を明け渡したことを明らかにした。

シーシャーニー氏はまたロシアのチェチェン共和国のラムザン・カディロフ大統領(首長)に宛てて「カディロフがここに兵士を派遣すると言うのなら、我々は、「送るがいい。我々は待っている」と言おう」と述べた。

『ハヤート』(12月24日付)が伝えた。

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AFP(12月23日付)によると、ヨルダンの国家治安裁判所は、シャームの民のヌスラ戦線メンバーとしてシリアでの戦闘に参加したヨルダン人サラフィー主義者に禁錮5年の有罪判決を下した。

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ジム・カーター元米大統領とロバート・パスター氏が『ワシントン・ポスト』(12月23日付)に寄稿(http://www.washingtonpost.com/opinions/time-to-be-bold-and-make-peace-in-syria/2013/12/22/af84a626-69a6-11e3-a0b9-249bbb34602c_story.html)し、ジュネーブ2会議での和解交渉がよりどころとすべき三つの基本原則を提言した。

三つの基本原則とは以下の通り:

1. 自決:シリア国民は国の将来の政府を自由選挙によって決めるべきである。この選挙は国際社会やNGOの監視のもとに行われ、自由で公正な選挙の結果は受け入れられるべきである。
2. 尊重:勝者は、すべての宗派・マイノリティ集団の権利を保障するべきである。
3. 平和維持軍:上記2点が達成されるべく、国際社会は確固たる平和維持軍を保証しなければならない。

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『ハヤート』(12月23日付)は、テレサ・メイ英内務大臣が、シリア国内で反体制武装活動に参加している二重国籍者20人から英国籍を剥奪したと報じた。

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ウィリアム・ヘイグ英外務大臣は、アレッポ県各所に対するシリア軍の樽爆弾投下を批判し、国連議長声明を通じた非難を呼びかけた。

UPI(12月23日付)が伝えた。

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AFP(12月23日付)によると、イスラエル軍は声明を出し、ゴラン高原の占領地にシリア領内から発射された迫撃砲弾1発が着弾したと発表した。死傷者はでなかったという。

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エジプトのナビール・ファフミー外務大臣は、ジュネーブ2会議に関して、「シリアのすべての当事者が真摯に交渉プロセスに入り、政治的解決に至る」よう呼びかけた。

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イラキー・ニュース(12月23日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国の武装集団がサラーフッディーン県ティクリート市にあるサラーフッディーン衛星チャンネルとイラーキーヤ衛星チャンネルの事務所を襲撃、職員数名を連れ去った。

AFP, December 23, 2013、Elaph.com, December 23, 2013、al-Hayat, December 24, 2013、Iraqinews.com, December 24, 2013、Kull-na Shuraka’, December 23, 2013、Naharnet, December 23, 2013、Reuters, December 23, 2013、Rihab News, December 23, 2013、SANA, December 23, 2013、UPI, December 23, 2013、The Washington Post, December 23, 2013、共同通信、2013年12月24日などをもとに作成。

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