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レバノン特別法廷はR・ハリーリー元首相暗殺事件に関してヒズブッラー・メンバー1人に有罪判決を下すも、ヒズブッラーとシリアの関与を否定(2020年8月18日)

2004年から2008年にかけてのラフィーク・ハリーリー元首相を含むレバノンの要人ら22人が死亡、226人が負傷した一連の事件を審理するためにオランダのハーグに設置されているレバノン特別法廷(デヴィッド・レ裁判長)は、容疑者4人に対する最終審理を行った。

被告はいずれのヒズブッラーのメンバーで、審理は4人の出廷を見ないまま、約1年間にわたって続けられてきた。

裁判官らは、4人の被告のうち、サリーム・アイヤーシュ被告(56歳)のみに対して、「合理的疑いの余地はない」として、ラフィーク・ハリーリー元首相殺害を含む5つの事件の共謀者の1人と断定し、有罪との判決を下した。

アサド・サブラー被告(43歳)、フサイン・ウナイスィー被告(46歳)、ハサン・ハビーブ・マルイー被告(54歳)については、証拠不十分で無罪判決を下した。

なお、レバノン特別法廷は、4人に加えて、ヒズブッラーのムスタファー・バドルッディーン司令官(1961年生まれ)も主犯格として起訴されていたが、2016年5月にダマスカス国際空港近くで反体制武装集団の攻を受けて死亡している。

一方、ヒズブッラーの組織としての関与に関しては、「犯行が政治的動機で行われた」可能性が高いとしつつ、ラフィーク・ハリーリー元首相が殺害される数ヶ月前までハサン・ナスルッラー書記長と良い関係にあったなどとしたうえで、ヒズブッラー指導部の関与を裏付ける証拠はないとの判断を下した。

また、事件発生当初、嫌疑をかけられ、欧米諸国のバッシングに晒されていたシリアについても、関与を裏付ける証拠はなかったと改めて結論づけた。

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最終審理を傍聴するためにハーグを訪れていたサアド・ハリーリー前首相は、結審後に法廷前で記者団らに対して、ヒズブッラーの関与を確信しつつも、判決を受け入れるとの談話を発表した。

サアド・ハリーリー元首相は以下のように述べた。

法廷は判決を下した。故ラフィーク・ハリーリー元首相の家族の名において、そしてまた殉教者と犠牲者の遺族をい代表して、我々は判決を受け入れる…。今日、すべてが真実を明らかにした。

判決は、殺人者たちに政治犯罪の時代が終わったというメッセージを送った。

しかし、今日犠牲を払うべき政党はヒズブッラーだ…。(殺害に)関与しているネットワークがそのメンバーであることは明らかだ。

我々は刑が執行されるまでは安心しない。

レバノン国民は今後も、自分たちの国が殺人者の避難場所になることを受け入れない。

我々は周知の存在だ。我々は顔を隠さず、実名で言いたい。皆に言おう。誰も、私たちが犠牲を強いられることを期待しないで欲しい。我々はもっとも尊いものを犠牲にしてきた。我々はレバノンを諦めない。

AFP, August 18, 2020、ANHA, August 18, 2020、AP, August 18, 2020、al-Durar al-Shamiya, August 18, 2020、Reuters, August 18, 2020、SANA, August 18, 2020、SOHR, August 18, 2020、UPI, August 18, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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