ダマスカス県を含む各地で大規模な反体制デモが発生するなか、シリア国民評議会が「政治的解決」をめざすアナン国連・アラブ連盟合同特使の姿勢を非難(2012年3月9日)

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国内の暴力

反体制活動家によると、イドリブ県ザーウィヤ山などに対する軍・治安部隊の掃討作戦が継続された。

また各地で金曜礼拝後に散発的な反体制デモが発生した。

死者数は約90人に達した、という。

SNN, March 9, 2012

SNN, March 9, 2012

インターネットなどでは、反体制活動家らが「クルド人蜂起への忠誠の金曜日」と銘打って反体制デモを呼びかけ、シリア人権監視団は、ダルアー県、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、ヒムス県、ハマー県、アレッポ県、ラタキア県、ダイル・ザウル県、ハサカ県で数万人がデモに参加したと発表するなど、プロパガンダ活動を行った。

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イドリブ県では、反体制活動家によると、アイン・ラールーズ市での軍。治安部隊の掃討作戦で少なくとも2家族20人を含む32人(うち民間人13人)が殺害された。

このほか、シャーグーリート村、ジャッジュ村、フマイマート村、サフン村に軍・治安部隊が突入した。

また、反体制活動家によると、金曜礼拝後に反体制デモが発生し、2人が殺害された、という。

一方、SANA(3月9日付)によると、治安維持部隊がナージヤ村で武装テロ集団と殺害、テロリスト1人を殺害、多数を逮捕した。

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アレッポ県では、アレッポ調整連合報道官のムハンマド・ハラビーを名のる活動家によると、アレッポ市で過去最大規模のデモが発生したと発表した(真偽は定かでない)。

反体制活動家によると、アレッポ市および郊外の各地で金曜礼拝後に反体制デモが発生し、ジャラーブルス市で1人が殺害されたという。

また『クッルナー・シュラカー』(3月9日付)は、シリア学生総連合消息筋の話として、シャッビーハがアレッポ大学内でのデモを強制排除し、多数の学生を逮捕したと報じた。

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ダマスカス県およびダマスカス郊外県では、反体制活動家によると、マッザ区、カフルスーサ区、マイダーン地区、ジャウバル区、バルザ区、アサーリー地区、ザバダーニー市、ダーライヤー市、タッル市で金曜礼拝後に反体制デモが発生した、という。

このうちカフルスーサ区では治安部隊の発砲によって市民1人が殺害されたという。

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ヒムス県では、反体制活動家によると、ヒムス市のクスール地区、ハーリディーヤ地区などで金曜礼拝後に反体制デモが発生し、数千人が参加した、という。

シリア人権監視団によると、ヒムス市各地で治安部隊が発砲し、市民2人が殺害された。またムヒーン市で1人、クサイル市で1人、タルビーサ市で1人が殺害されたという。

AFP(3月9日付)は、軍・治安部隊がヒムス県の対レバノン国境で、レバノン領内(北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方)に越境しようとした若者男女2人に発砲し、負傷させたと報じた。

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ハマー県では、反体制活動家によると、金曜礼拝後に反体制デモが発生し、トゥライムサ市で少なくとも3人が殺害されたという。

また軍・治安部隊は離反兵掃討のためにカストゥーン村、ハミーディーヤ村に突入した。

一方、SANA(3月9日付)によると、タイバト・イマーム市で武装テロ集団メンバー多数が当局に投降した。

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ダルアー県では、反体制活動家によると、金曜礼拝後に反体制デモが発生し、ムサイフラ町で1人、ハーッラ市で1人が殺害された、という。

アサド政権の動き

SANA, March 9, 2012

SANA, March 9, 2012

SANA(3月9日付)は、ダマスカス県サブウ・バフラート広場で、外国の干渉拒否とテロ撲滅支持を訴える大規模集会が開かれ、多数の市民が参加したと報じた。

SANA(3月9日付)は、集会に参加する幼い子供の写真を掲載するなどして、反体制勢力と同様の低俗なプロパガンダ活動を行った。

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SANA(3月9日付)は、情報省が、諸外国の特派員の一部が依然として違法にシリアに密入国を続け、テロリストに同行取材、虚偽の報道を行っていると発表し、法律違反者に対しては厳正に対処するとともに、当局の許可のもとに適正な取材が行われていることを望むとの意思を示した、と報じた。

反体制勢力の動き

アナトリア通信は、複数のシリア軍士官ら234人が離反し、トルコ領内に逃れてきたと報じた。

ただし組織的な部隊単位の離反ではなく、脱走・逃走の域を脱しないものと思われる。

トルコ高官によると、トルコ領内に逃走してきたのは、准将4人、大佐2人など士官10人と、ダマスカス、ヒムス、ラタキアで離反した兵士の合わせて234人で、数日前からトルコ領内に逃れていた、という。

この離反に関して、自由シリア軍報道官のハーリド・ハンムード軍曹は、離反した上級士官と「顧問協議会」を結成し、自由シリア軍の作戦を立案していきたいとの意向を示した。

一方、シリア最高軍事評議会報道官のファフド・ミスリー氏は、離反した約230人が依然としてトルコ当局の管理下にあるため、氏名などは公開できないと発表した。

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『クッルナー・シュラカー』(3月9日付)は、シリア・クルド国民評議会幹部の一部が李華新前駐シリア大使と会談したことをめぐり評議会内で対立が発生したと報じた。

同報道によると、会談に参加できなかった面々は、会談を無効とみなすとともに、会談に参加したメンバーが評議会を代表していないと主張している、という。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は「政治的解決」をめざすコフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使の姿勢を非難した。

ガルユーン事務局長は声明で、「毎日虐殺に曝されているシリア人を失望させ、希望を与えない内容」と述べた。

一方、シリア国民評議会の救済局は、シリア各地での「野戦病院」設営のために、100万ドルの援助金を配分する、と発表した。

資金の配分は、救済局が国内に設置したとされる医療委員会(ハッサーン・バタル医師が委員長)を通じて行われる。

医療委員会は、エジプト医師組合、モロッコ医師連盟の支援のもと、すでに国内の4カ所に野戦病院を設営している、という。

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ロイター通信(3月9日付)によると、シリア革命総合委員会メンバーのハーディー・アブドゥッラーを名のる活動家は、アナン特使の発言に関して、「アサドに弾圧の猶予を与えるだけだ」と非難し、政権との対話を拒否するとの姿勢を改めて示した。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長はアラビーア(3月9日付)に出演し、「複数のアラブ諸国および外国から資金援助の寄付を受けることを始めた」と述べた。

レバノンの動き

進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は、『ナハール』(3月9日付)に、アラン・ジュペ外務大臣との会談に関して、同大臣がアサド大統領が「改革者だという神話を信じなかった西欧人」の一人と賞賛する一方、レバノン当局に対して、レバノン国内にいるシリア人反体制活動家を引き渡すべきでない、との見解を示した、と報じた。

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『サフィール』(3月9日付)は、レバノン当局がベカーア県で逮捕しシリア人武装集団の身柄引き渡しをシリア当局が正式に要請した、と報じた。

しかし、レバノン当局は8日までに逮捕者全員を釈放してしまっている。

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NNA(3月9日付)は、9人がシリアへの武器密輸容疑で起訴されたと報じた。

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NNA(3月9日付)は、アドナーン・マンスール外務大臣がワリード・ムアッリム外務大臣と会談し、シリア情勢に関して意見を交わしたと報じた。

会談で、マンスール外務大臣は、シリア情勢の正常化に向けた前向きな条件が整いつつあると述べ、アラブ連盟外相会合やセルゲイ・ラブロフ外務大臣のエジプト訪問への期待を表明する一方、ムアッリム外務大臣は、アナン特使のシリア訪問を歓迎するとの意思を伝えた。

諸外国の動き

国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、アンカラでの記者会見で、アサド政権が、被害の大きい一部地域への人道支援受け入れを認めたもの、「さらなる時間(的猶予)を求めた」と発表した。

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『ハヤート』(3月10日付)は、コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使が現在、アサド政権との「チャンネル確保」をめざしており、同チャンネルを通じて、アサド大統領に退任を認めさせたうえで、対話を深化させようとしている、と報じた。

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国連安保理では米国が提出した対シリア決議案をめぐる大使級会合が続けられた。

『ハヤート』(3月10日付)は、複数の外交筋の話として、ロシアが反体制武装集団の撤退がない限り、政府軍の市街地からの撤退を認めることはできないとの姿勢を示した、と報じた。

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UNESCO理事会は、シリアでの人権侵害を非難する決議を採択した。

同決議は、サウジアラビアとUAEが提出し、35国の賛成、8カ国が反対し、15カ国が棄権した。

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中国外交部報道官は、サウジアラビア、エジプトに特使を3月半ばに派遣し、シリア情勢に関する中国の姿勢を説明する、と発表した。

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エジプトのムハンマド・アムル外務大臣はヒラリー・クリントン米国務長官と電話会談し、アラブ連盟外相会議の行程表実施が重要であることを確認する一方、軍事的解決の回避、反体制勢力の糾合の必要などを強調した。

AFP, March 9, 2012、Akhbar al-Sharq, March 9, 2012、Alarabia.net, March 9, 2012、al-Hayat, March 10, 2012、Kull-na Shuraka’, March 9, 2012、al-Nahar, March 9, 2012、Naharnet.com, March 9, 2012、NNA, March 9, 2012、Reuters, March 9, 2012、al-Safir, March 9, 2012、SANA, March 9, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

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