シャーム解放機構がラタキア県トルコマン山地方などで外国人武装組織を粛清:チェチェン人らからなるジュヌード・シャームは同地を退去、トルコ人らからなるジュンドッラーは抵抗を続ける(2021年10月25日)

シリア人権監視団、バラディー・ニュース(10月25日付)、クドス・アラビー(10月25日付)などによると、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が、ラタキア県北東部のトルコマン山地方とイドリブ県のジスル・シュグール市一帯で、治安維持活動を実施し、同地で活動を続けるムスリム・アブー・ワリード・シーシャーニー氏率いるチェチェン人、レバノン人主体のジュヌード・シャーム、アブー・ファーティマ・トゥルキー氏が率いるトルコ人、アゼルバイジャン人主体のジュンドッラー、東欧出身者からなる複数のグループと交戦した。

シャーム解放機構は10月24日にトルクマン山地方とジスル・シュグール市一帯に24日に重火器と中機関銃で武装した部隊を5回に分けて派遣していた。

この戦闘で、シャーム解放機構は、ジュヌード・シャーム、ジュンドッラー、東欧出身者からなるグループのメンバー少なくとも7人を殺害し、ジュンドッラーのメンバー6人を捕捉し、ヤマディーヤ村近郊とザイトゥーナ村近郊にあるジュンドッラーの拠点複数カ所を制圧し、拠点を失ったジュンドッラーはトルコマン山地方の丘陵地帯に設置していた拠点複数カ所から撤退した。

一方、シャーム解放機構側も戦闘でメンバー4人が死亡し、15人を捕捉された。

 

 

 

 

事態を受けて、中国新疆ウィグル自治区出身者からなるトルキスタン・イスラーム党が、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構と、ジュヌード・シャーム、マフルッディーンを名乗る人物が率いるグループを仲介し、ジュヌード・シャームとマフルッディーン・グループのトルコマン山地方からの退去、シャーム解放機構が指名手配していた両組織メンバーの身柄引き渡し、捕虜交換が合意された。

アラビー21(10月26日付)によると、ジュヌード・シャームに加えて、ウズベキスタン人グループも退去に応じた。

ただし、ジュンドッラーは、東ヨーロッパ出身者らによる複数のグループとともにシャーム解放機構への抵抗を続けており、ジュンドッラーは声明で、シャーム解放機構の批判を否定し、その攻撃がトルコマン山地方をロシア軍に引き渡すためのものだと批判した。

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シャーム解放機構の幹部の1人アブー・マーリヤー・カフターニー氏が『クドス・アラビー』(10月25日付)に明らかにしたところによると、ジュンドッラーは、「アル=カーイダ、フッラース・ディーン機構、ダーイシュ(イスラーム国)の残党、狂信者とハワーリジュ派のセルからなるグループで、トルコマン山に軍事キャンプを設置し、イドリブ県で我々やトルコ軍の安全を脅かす作戦を組織していた」という。

カフターニー氏によると、事態に対処するために、シャーム解放機構はジュヌード・シャームのシーシャーニー氏に、チェチェン人やトルキスタン人の仲介者を派遣し、ジュンドッラーを無力化するよう求めたが、シーシャーニー氏はこれを拒否し、ジュンドッラーに与したために、ジュヌード・シャームとも戦闘状態になったという。

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シャーム解放機構広報局は報道声明を出し、ジュヌード・シャーム、ジュンドッラーとの戦闘について以下の通り主張した。

「アブー・ファーティマ・グループ」として知られる犯罪集団(ジュンドッラーのこと)との間で今日発生した緊張を受けて、我々はこう明言する。僕たちを冒涜し、その血や財産を奪った治安事案に関与した指名手配者らをかくまうこれらのグループとの緊張関係。これらのグループによる犯罪のなかには各戦線での戦闘員への裏切りも含まれる。トルコマン山で起きていることにそれ以外のグループは一切関係がない。

今日、本事案において中立的な姿勢をとるアブドゥルマーリク・シーシャーニー氏も出席した、仲介者とこのグループとの会合が行われたが、会場を出た同氏を、このグループは裏切り、銃弾で撃ち、同氏は病院に搬送された。これらのグループを逮捕し、法廷に送るための取り組みは現在も行われている。

ムスリム・シーシャーニーと彼のグループ(ジュヌード・シャームのこと)については、仲介者らの同席のもとで、彼ら(ジュンドッラー)と距離を置き、指名手配者を司法に引き渡す合意がなされた。

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ジュヌード・シャームとマフルッディーン・グループの退去と指名手配者の身柄引き渡しは、トルキスタン・イスラーム党の監視下で行われた。

反体制活動家のアフマド・アバーズィードはツイッターのアカウント(https://twitter.com/abazeid89/)を通じて、シーシャーニー氏とメンバー約70人は25日夜にかけて、車やオートバイに分乗し、トルコマン山地方を去る様子を撮影した映像を公開した。

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トルキスタン・イスラーム党、ウズベキスタン人を主体とするタウヒード・ワ・ジハード集団、チェチェン人を主体とするムハージリーン・ワ・アンサール軍、モロッコ人を主体とするシャーム・イスラームなど11の組織、9人のシャイフが共同声明を出し、シャーム解放機構によるジュンドッラー、ジュヌード・シャームへの粛清に支持を表明した。

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アラビー21(10月26日付)によると、ジュヌード・シャームのメンバーらの行き先は不明。

一方、『ワタン』(11月1日付)がイドリブ県とラタキア県で活動する「トルコの民兵」に近い複数の反体制筋の話として伝えたところによると、トルコはトルキスタン・イスラーム党を仲介し、ジュヌード・シャームとジュンドッラーの戦闘員数百人をトルコマン山地方からアフガニスタンに強制退去させるための調整を行っていると伝えた。

同筋によると、シャーム解放機構とこれらの組織の交渉は、アフガニスタンへの移送することが取り決められており、トルキスタン・イスラーム党はターリバーン指導部と連絡をとり、ターリバーン側がトルキスタン・イスラーム党の求めに応じたという。

 

AFP, October 25, 2021、ANHA, October 25, 2021、Arabi 21, October 26, 2021、Baladi-News, October 25, 2021、al-Durar al-Shamiya, October 25, 2021、al-Quds al-‘Arabi, October 25, 2021、Reuters, October 25, 2021、SANA, October 25, 2021、SOHR, October 25, 2021、al-Watan, November 1, 2021などをもとに作成。

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