イスラエル軍のアヴィハイ・アドライ(Avichay Adraee)報道官は、シリア軍によるイスラエル軍戦闘機撃墜に関して、「複数の戦闘機がシリア領内におけるイランの複数の標的とシリアの防空システムに対して大規模な爆撃を行った」と発表した。 爆撃は「12の標的に対して行われ、うち3回はシリアの防空ミサイル発射台、4回はシリアにおけるイランの勢力伸長の一環とみなし得るイランの標的に対して行われた」という。 アドライ報道官はまた「イスラエルが今日行った作戦は、イスラエルの主権を侵害しようとしたイランに対抗する自衛のための作戦である。我々の任務は、我々が選択した地点で無人航空機を撃墜することだった。我々はこれに成功し、無人航空機は現在、我々の手中にある…。イランの航空機が離陸したタドムル(市)の施設を攻撃している際に、シリア軍部隊が(イスラエル軍の)複数の戦闘機に対して地対空重火器を発砲し、イスラエル軍機1機がイスラエル領空で損害を受けた」と述べた。 報道官はさらに「シリア軍はイスラエル軍航空機部隊に対して約20発のミサイルを発射し、そのうちの4発の残骸が地上に落下した…。これに対する報復として、イスラエル軍戦闘機は空対地ミサイルシステムで爆撃を行ったほか、イランの標的4カ所を攻撃した」と述べた。 そのうえで、イスラエル軍の爆撃の戦果は不明だとしつつ「しかし、おそらくイランは我々が(爆撃した)拠点を選んだことに驚いているだろう。なぜなら、イランは、イスラエルがこの拠点について知っているなどとは思っていなかったからだ…。シリア人とイラン人は火遊びをしている。シリア人は、イランがシリア領内でイスラエルに対して行動する余地を与えている」と警告した。 ** 一方、イスラエル軍のジョナサン・コンリカス報道官(中佐)はツイッターのアカウント(https://twitter.com/LTCJonathan)を通じて、作戦の経緯を時系列的に示したインフォグラフィアを公開した。 それによると、①4時25分にイスラエル軍は攻撃ヘリコプターでイランの無人航空機を撃破、②5時34分にイスラエル軍は戦闘機でシリア領内のイランの標的を爆撃、③6時00分に、イスラエル軍戦闘機1機がイスラエル領空で地対空ミサイルを被弾、パイロットは脱出、④8時45分にイスラエル軍戦闘機がシリア領内のシリア軍防空システムとイランの標的に対して大規模な爆撃を実施、⑤8時55分にシリア軍の地対空ミサイルがイスラエル軍戦闘機に対して発射されたことを受け、イスラエル北部で警報発令、という経緯で事件は推移したという。 Here’s a quick summary of today’s events, from the #Iranian UAV to our large-scale strike against the #Syrian air-defense. The IDF will stand guard against any further attacks. pic.twitter.com/ntoHRiv1Z6 — Jonathan Conricus (@LTCJonathan) 2018年2月10日 ** これに関して、ドゥラル・シャーミーヤ(2月10日付)によると、イスラエル軍戦闘機は、イランの無人航空機がヒムス県のタイフール航空基地(T4)を離陸してイスラエルに向かったことへの報復として、同基地を爆撃、同基地内の管制塔やイラン・イスラーム革命防衛隊の拠点を破壊したという。 ** シリア人権監視団によると、爆撃はヒムス県東部のタイフール航空基地一帯、ダマスカス郊外県北西部のディーマース市一帯、南部のダルアー県との県境に対して行われ、親政権外国人民兵の戦闘員6人が死亡した。 ** イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、アヴィグドール・リーベルマン国防大臣、イスラエル軍のガディ・エイゼンコット参謀総長らと緊急の安全保障会議を開き、イスラエル北部での事態悪化を回避するため、ロシアに早急に介入するよう要請することを決定し、その旨文書っで伝えた。 会議では、ロシアに対し、シリア領内でのイランの影響力拡大へのイスラエル側の警戒感を示す一方、さらなる緊張であなく「今は事件を幕引きする」ことに関心がある旨、ロシアに伝えた。 『ハヤート』(2月11日付)が伝えた。 AFP, February 10, 2018、ANHA, February 10, 2018、AP, February 10, 2018、al-Durar al-Shamiya, February 10, 2018、al-Hayat, February 11, 2018、Reuters, February 10, 2018、SANA, February 10, 2018、UPI, February 10, 2018などをもとに作成。 (C)青山弘之 All rights reserved.