反体制勢力の動き 軍によるダルアー市包囲に伴う人道状況の悪化を受け、脚本家、作家、ジャーナリストらシリア人約700人が「ダルアーの我らの子供たちのために」と題した声明に署名し、フェイスブックに掲載した。 同声明は「生きる上で必要な食糧物資の不足をもたらし、いかなる悪党や混乱の企てにも与していない罪もない子供に悪影響を与えているダルアー市およびその周辺村に対する食品の封鎖を5日間停止するようシリア政府に」求める一方、「シリア保健省ないしは赤新月社の監視下での食糧・医療物資、離乳食など食糧品の搬入」を呼びかけた。 同声明は、シリアの女性作家・活動家のリーマー・ファルハーンの主導のもとにとりまとめられ、女性作家のヤム・マシュハディー、女優のヤーラー・サブリー、女性脚本家のラシャー・シュルバジー、女優のカーリス・バッシャール、小説家のハーリド・ハリード、女性小説家のサマル・ヤズバクが署名している。 ** シリアの複数の人権団体がシリア当局に対して、アラブ社会主義連合民主党書記長のハサン・イスマーイール・アブドゥルアズィーム弁護士の釈放を求めた。 同弁護士は、戒厳令が解除されたにもかかわらず、逮捕状無しに逮捕されたという。 ** シリア・ムスリム同胞団のズハイル・サーリム報道官は声明を出し、最近の同胞団の声明でデモ参加を呼びかけていなかったとの一部報道に対して、「一部のメディアによる解釈は不正確だ。声明はすべてのシリア国民に愛国的運動を行うよう呼びかけている」と述べ、反体制運動の再開を明言した。 UPI(5月1日付)が報じた。 国内の暴力 ダルアー県では、AFP(5月1日付)などによると、軍がダルアー市の包囲を継続、市内で逮捕摘発活動を行った。 同通信社がダルアー市民の話として伝えたところによると、戦車の増援部隊がダルアー市に到着、これに対して、住民は抵抗を続け、夕方には窓から「アッラーは偉大なり」と連呼した。 一方、SANA(5月1日付)は、軍消息筋の話として、軍・治安部隊がダルアー市での「武装テロ集団」掃討を続け、10人を殺害し、499人を逮捕、武器弾薬を押収したと報じた。 ** ダマスカス郊外県では、複数の活動家らによると、軍がドゥーマー市への包囲を強化、「200人の逮捕者リストを手に包囲を強めた」。 またシリア人権監視団によると、アルバイン市、ダーライヤー市、ハラスター市で、100人以上が逮捕された。 ** ハサカ県では、シリア人権監視団によると、カーミシュリー市で多数の市民が逮捕された。 また、複数のクルド消息筋が明らかにしたところによると、シリア当局は同市で民主化を求めるデモを唱導したクルド人2人を逮捕したという。 ** 政治犯擁護センター会長のハリール・マアトゥーク弁護士は、作家で研究者のウマル・クーシュ氏が当局に逮捕されたと発表した。 シリア政府の動き 内務省は声明を出し、「法律が定めるところに従い、国民の生活を守り、あらゆる手段で祖国の敵が奪おうとしている治安、安定そして国民統合を強化すべく、(本省は)国民を欺き、武器携帯、治安妨害、誤ったイニシアチブを与えるような声明発信など、法律によって罰せられるべき行為を実行する者、ないしは参加する者たちに、自らの身柄と武器を関係当局に5月15日までに引き渡し、破壊分子、テロリスト、武器保管場所について通報するよう、国民に求める」と呼びかけた。 レバノンの動き 『ナハール』(5月1日付)は、シリア人325世帯1,500人が国内の暴力激化を避けて、北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方を経由してレバノンに避難している、と報じた。 諸外国の動き デヴィッド・キャメロン英首相はBBC(5月1日付)、「この体制がこれほどまでに多くの国民を殺すとは恥ずべきことで、受け入れられない」と述べた。 しかしNATOが空爆を行っているリビアとは状況は「異なっている」との見方を示し、軍事介入に慎重な姿勢を示した。 ** トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、シリアへの外国の干渉を拒否すると述べるとともに、シリアで続いている民衆蜂起が国内で解決されるべきとの考え方を明らかにした。『ハヤート』(5月2日付)が報じた。 ** AFP(5月1日付)によると、UNDPはシリア国内情勢悪化を受け、2012年から2017年までのシリアへの支援活動を中止すると発表した。 AFP, May 1, 2011、Akhbar al-Sharq, May 1, 2011, May 2, 2011、al-Hayat, May 2, 2011, May 3, 2011 、Kull-na Shuraka’, May 1, 2011、al-Nahar, May 1, 2011、Naharnet, May 1, 2011、Reuters, May 1, 2011、SANA, May 1, 2011、UPI, May 1, 2011などを参照。 (C)青山弘之 All rights reserved.