スイスのジュネーブで活動するNGOの欧州地中海人権モニターは、米主導の有志連合の支援を受ける人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が、シリア東部で市民の処刑など、数々の人権侵害を行っているとする報告書を発表した。 「宙に浮いた犯罪:シリア民主軍は有志連合の傘下でシリア人に対する恐るべき罪を犯している」(Crimes in limbo: SDF commits horrific crimes against Syrians under the cover of the international coalition)と題された報告書のなかで、同組織は、シリア民主軍が「アラブ人、クルド人、シリア正教徒などすべてのシリア人からなる」組織だと謳っているにもかかわらず、実際にはクルド人が70%を占めているとしたうえで、ラッカ市、ダイル・ザウル市といった都市で苦難に苛まれてきた数千人のシリア人は、ダーイシュが殲滅され、シリア民主軍がシリア東部の自治を担うようになってからむしろ倍増したと指摘した。 具体的には、シリア民主軍は18歳未満の児童を含む市民を徴兵し、戦闘に参加させているほか、市民に対する拷問、殺害を繰り返していると非難した。 欧州地中海人権モニターは、こうした犯罪は、米国が主導する有志連合の支援、連携のもとに現在も行われ続けていると指弾、国連に介入するよう呼びかけている。 また、シリア民主軍は、ダーイシュに従っていたとして市民多数を処刑しているという。 ** なお、27日には、シリア民主軍の隊員がアレッポ県東部で女性1人と若者2人に殴る蹴るなどの暴行を加えている映像がSNSにアップされ、活動家らによって拡散されていた。 AFP, July 30, 2019、ANHA, July 30, 2019、AP, July 30, 2019、al-Durar al-Shamiya, July 30, 2019、Reuters, July 30, 2019、SANA, July 30, 2019、SOHR, July 30, 2019、UPI, July 30, 2019などをもとに作成。 (C)青山弘之 All rights reserved.