2015年11月11日(水)から20日(金)までのシリアをめぐる主な動きは以下の通り。
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Contents
1.米国主導の有志連合はロシアとの空爆連携合意後、YPG主体のシリア民主軍のダーイシュ掃討戦を航空支援
ロシア軍とのシリア領内での空爆連携をめぐる合意を受け、米軍がシリア領内での空爆を再活発化、ハサカ県フール町一帯でダーイシュ(イスラーム国)に対する掃討戦を展開する西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊(YPG)主導のシリア民主軍を航空支援した。
この航空支援は、イラク領内でのスィンジャール奪還作戦と並行して行われ、イラク・クルディスタン地域のペシュメルガなどによるスィンジャール町制圧と時を同じくして、シリア民主軍もフール町一帯の制圧に成功した。
米軍はまた、「ジハード・ジョン」を狙った空爆をラッカ市内で実施したと発表する一方、ダイル・ザウル県タナク油田に対して降下作戦を実施した。
また、「穏健な反体制派」と目されるアサーラ・ワ・タンミヤ戦線が、ダイル・ザウル県の武装集団とともに「新シリア軍」を結成し、ヒムス県タドムル市南部のタンフ国境通行所(イラク国境)方面に進攻すると、有志連合はこれを航空支援した。
一方、米国、トルコ両国は、今年半ばに設置合意したアレッポ県北部での「安全地帯」でのダーイシュ掃討を見据えて、対トルコ国境地帯での作戦強化を準備した。
しかし、アレッポ県北部での両国によるダーイシュ掃討戦に先立って、トルコ軍はラッカ県のタッル・アブヤド市一帯、アレッポ県のアイン・アラブ市一帯などで、YPGの拠点への砲撃を実施、タッル・アブヤド市での戦闘では初めて市街地を攻撃した。
(主な関連記事)
■米主導の有志連合は、シリア民主軍が展開するハサカ県フール町一帯で8回の空爆を実施(2015年11月11日)
■カーライル米空軍大将「ロシア軍と1日2回、ホットラインを通じて交信を行っている」(2015年11月11日)
■米国防総省はラッカ市内でダーイシュ(イスラーム国)のメンバー「ジハード・ジョン」を狙った空爆を実施したと発表(2015年11月12日)
■米主導の有志連合はシリア領内で8回の空爆を実施(2015年11月12日)
■米主導の有志連合はシリア領内で7回の空爆を実施(2015年11月13日)
■米主導の有志連合はシリア領内で6回の空爆を実施(2015年11月14日)
■デンマーク外相は、有志連合での活動再開とシリア領内への空爆範囲拡大を主唱(2015年11月15日)
■米主導の有志連合はシリア領内で10回の空爆を実施(2015年11月15日)
■有志連合と思われる戦闘機がアレッポ市各所のダーイシュ(イスラーム国)拠点を空爆(2015年11月15日)
■有志連合がダイル・ザウル県のタナク油田に対して降下作戦を実施(2015年11月16日)
■米主導の有志連合はシリア領内で8回の空爆を実施(2015年11月16日)
■米主導の有志連合はシリア領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点を13回にわたり空爆(2015年11月17日)
■米ブラック上院議員はシリア軍の反転攻勢に祝意を表明、「シリアに傀儡政権を押しつけようとする諸外国の侵略戦争は違法」と強調(2015年11月17日)
■ケリー米国務長官はシリア北部国境でのトルコ軍との合同作戦を実施すると述べる(2015年11月17日)
■米主導の有志連合はシリア領内で8回の空爆を実施(2015年11月18日)
■トルコ軍はアレッポ県、ラッカ県の国境地帯でダーイシュ(イスラーム国)ではなく、西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊の拠点を攻撃(2015年11月18日)
■トルコのシニルリオール外務大臣は国境地帯でのダーイシュ(イスラーム国)掃討に向けた米国と合同作戦を近く実施することを認める(2015年11月18日)
■「新シリア軍」がタドムル市南部の対イラク国境地帯で有志連合とともにダーイシュ(イスラーム国)拠点に対する降下作戦を実施か?(2015年11月18日)
■米主導の有志連合はシリア領内で空爆を実施せず(2015年11月19日)
■トルコは国境地帯でのロシアの空爆に抗議する一方、タッル・アブヤド市(ラッカ県)の市街地を初めて砲撃(2015年11月20日)
■米主導の有志連合はアレッポ県北部の「安全地帯」を中心に20回の空爆を実施(2015年11月20日)
2.パリ同時テロ事件への報復としてフランス軍がラッカ市一帯のダーイシュ(イスラーム国)拠点を空爆、ロシアと連携合意
13日にパリで発生した同時テロ事件を、ダーイシュ(イスラーム国)の犯行と断じたフランスのフランソワ・オランド政権は、15、16、17日の3日間にわたってラッカ市一帯のダーイシュ拠点への空爆を敢行した。
また、シリア領内でダーイシュを含む国際テロ組織およびその同盟者への空爆を続けているロシア軍と、ダーイシュ空爆で連携することを合意した。
フランスは、欧州へのシリアなどからの難民・移民の流入への関心が高まった9月に、シリアへの空爆を開始し、9、10月の2ヶ月間で3回の空爆を行っていた。
(主な関連記事)
■イスラーム軍はパリでの同時多発テロに関して「各国諜報機関が過激なテロリストを操って実行した」と断じる(2015年11月14日)
■シリアのジハード主義武装集団と「穏健な反体制派」48組織がパリでの同時多発テロ事件の犠牲者に対して哀悼の意(2015年11月14日)
■アサド大統領はパリでの同時多発テロの犠牲者に弔意を示すとともに、フランス政府に「テロとの戦いに真剣に取り組み、国民のために行動せよ」と忠告(2015年11月14日)
■フランス軍がパリ同時テロ事件の報復としてダーイシュ(イスラーム国)の中心都市ラッカ市およびその周辺一帯を空爆(2015年11月15日)
■G20参加国のシリア情勢をめぐる主な言動(5):フランスのファビウス外相「シリアへの地上部隊の派遣には反対」(2015年11月16日)
■G20参加国のシリア情勢をめぐる主な言動(2):ロシアのプーチン大統領「アサド大統領退陣要求はパリをテロ攻撃から守ったか?」(2015年11月16日)
■フランス軍は前日に引き続き、ダーイシュ(イスラーム国)の拠点ラッカ市を空爆(2015年11月17日)
■ダーイシュ(ダーイシュ)はフランス軍、ロシア軍、シリア軍の空爆で住民20人が死亡したと発表:シリア人権監視団もフランス軍の空爆で住民6人が死亡したと発表(2015年11月18日)
■フランス軍は15、16日に引き続き、ラッカ市のダーイシュ(イスラーム国)拠点を空爆(2015年11月18日)
■シリア人権監視団は、フランス軍のラッカ市空爆でダーイシュ(イスラーム国)メンバー33人が死亡したと発表するも、民間人犠牲者については言及せず(2015年11月18日)
3.シナイ半島でのロシア旅客機墜落事件をテロと断じたロシアは、シリア領内でダーイシュ(イスラーム国)に対する過去最大規模の空爆を実施
パリでの同時テロ事件を受けてダーイシュ(イスラーム国)に対する「テロとの戦い」の機運が国際社会、とりわけ西側において高まるなか、ロシアのヴラジミール・プーチン大統領は、10月末にエジプトのシナイ半島上空で発生したロシア旅客機墜落事件をテロと断じ、シリア領内での空爆を激化させた。
9月30日以降、ロシアの空爆は1日平均で30~50回の出撃回数だったが、17日以降は1日120回以上の空爆を実施、また20日の出撃回数は522回に達するとともに、カスピ海沖のフリゲート艦からの2回目となる巡航ミサイル攻撃、長距離爆撃機の出撃、艦対地ミサイルによる攻撃など、過去最大規模の攻撃を実施した。
(主な関連記事)
■ロシア軍戦闘機は過去2日間で107回出撃、ダーイシュ(イスラーム国)の拠点など289カ所を破壊(2015年11月13日)
■ロシアはシナイ半島でのロシア旅客機墜落事件をテロと断定、シリア領内のダーイシュ(イスラーム国)などの国際テロ組織に戦闘爆撃機を投入し、127回にわたる空爆を実施(2015年11月17日)
■ロシア軍が前日に引き続き、巡航ミサイル、爆撃機を投入しシリア領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点に対して127回の攻撃を実施(2015年11月18日)
■アル=カーイダ系組織のヌスラ戦線はイドリブ県でロシア軍の偵察機2機を撃墜したと主張(2015年11月18日)
■ロシア軍はシリア領内で126回の空爆を実施する一方、フランス空軍と連携に向け協議(2015年11月19日)
■シリア人権監視団「ロシア軍の空爆で民家人403人、ダーイシュ(イスラーム国)戦闘員381人を含む1,331人が死亡」(2015年11月20日)
■ロシア軍が過去最大規模の空爆を実施:522回の出撃により826カ所を空爆、巡航ミサイルによる2度目の攻撃を敢行、艦対地ミサイル、戦闘爆撃機を投入(2015年11月20日)
4.ウィーン3会議で米、ロシア、サウジアラビア、トルコ、イランといった国々がシリア紛争の停戦プロセスと政治プロセスの具体案を合意
14日にオーストリアの首都ウィーンで開催されたウィーン3会議では、前日のパリでの同時テロ事件を受けるかたちで、ダーイシュ(イスラーム国)をはじめとするテロ組織への「テロとの戦い」に向け、米国、ロシアをはじめとする参加諸国が結束、10月30日のウィーン2会議で採択された声明の内容をさらに具体化した共同声明を採択した。
共同声明の内容は以下の通り:
1. 2012年6月のジュネーブ合意に沿った停戦と政治プロセスの実現。
2. 国連の仲介のもとで、シリア政府と反体制派による移行プロセスが開始され次第、ISSGはシリア国内での停戦に向けて支援、行動を行う。
3. 国連安保理常任理事国は、国連による停戦監視活動の実施とジュネーブ合意に基づく政治的移行プロセスの支援を定めた決議採択への支援を誓約する。
4. ISSGは、自らが支援、ないしは影響力を行使する当事者を停戦させるために可能な措置を講じることを誓約する。
5. 停戦は、ダーイシュ(イスラーム国)、シャームの民のヌスラ戦線、そして参加国がテロリストとみなす組織に対する攻撃・自衛活動には適応されない。
6.シリア政府と反体制派の代表による交渉を、国連の仲介のもと2016年1月1日を目処に開催する。
7. ISSGは、6ヶ月以内(2016年5月)を目処に、シリア国内での停戦と、「信頼できる包括的・非宗派主義的な政府を樹立し、新憲法制定の工程を確定」するためのシリア人による移行プロセス開始を実現するための支援を行う。そのうえで、新憲法の規定に従った自由で公正な選挙を、18ヶ月以内(2017年5月)を目処に実施する。この選挙は国連の監視下で行われ、犯民を含むすべてのシリア人が参加しなければならない。
8. ヨルダンは、テロリストと認定される集団、個人に関する共通の理解を醸成するための支援を行う。
9. ISSGは、停戦や政治プロセス開始に向けた準備の進捗を確認するため、1ヶ月以内に会合を開く。
(なお、この共同声明が持つ意味については、拙稿「パリ同時多発テロの衝撃の中、ウィーン・プロセス参加国はシリア紛争停戦と政治プロセス開始に向け一歩前進」Yahoo! Japan個人、2015年11月15日を参照されたい)。
この共同声明に対し、反体制派の意見は割れ、国内で活動する民主的変革諸勢力国民調整委員会は全面支持を表明する一方、欧米諸国、サウジアラビア、カタール、トルコが支援してきたシリア革命反体制勢力国民連立は否定的な態度を示した。は賛否両論
一方、シリア政府は、アサド大統領がイタリアおよびフランスのメディアの単独インタビューに応じ、そのなかで、大統領の進退や移行プロセスの期間を外国が一方的に設定する権限はないと批判した。
ウィーン3会議で共同声明を採択した各国は、ウィーン2会議で、シリア政府との交渉にあたる反体制派の統一代表団のメンバー候補者リストを開示していたロシアに続き、米国、アラブ諸国が候補者の対案を提示し、人選を進めていった。
(主な関連記事)
■民主的変革諸勢力国民調整委員会と変革解放戦線がロシア外務省高官と会談し、政治的解決に向けた反体制派の糾合などで合意(2015年11月11日)
■ウィーン3会議に先立つ準備会合をロシアが欠席、イランが途中退席:反体制派の統一代表の人選、合法的反体制派とテロ組織の峻別をめぐって各国が対立(2015年11月12日)
■14日再開予定の「ウィーン3会議」に向け、シリア国民ではなく関係当時諸国がシリア反体制派の代表者の人選を進める(2015年11月12日)
■米、ロシア、トルコ、サウジアラビア、イランなどの外相はウィーン3会議で、シリア紛争における停戦プロセスと移行プロセスに関して合意:アサド大統領の進退には触れず、18カ月を目処とする移行プロセスを支援、ダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線を停戦プロセスから除外し、その根絶をめざす(2015年11月14日)
■シリアの反体制派は14日のウィーン3会議での合意をめぐり賛否両論(2015年11月15日)
■シリアのハイダル国民和解担当国務大臣は「シリア政府の友人であれ、敵であれ、シリア国内の和平実現計画に期限を設けることは許されない」と述べ、14日のウィーン3会議での合意を批判(2015年11月15日)
■ケリー米国務長官はシリア革命連合代表と、ロシア外務副大臣は変革解放人民戦線代表とそれぞれ会談(2015年11月16日)
■G20参加国のシリア情勢をめぐる主な言動(3):トルコのエルドアン大統領「シリアの未来にアサドの居場所はない」(2015年11月16日)
■G20参加国のシリア情勢をめぐる主な言動(1):オバマ米大統領「アサドの将来については依然として合意はなさていない」(2015年11月16日)
■アラブ連盟のアラビー事務総長「シリアの資格停止処分解除を受け入れない加盟国がある」(2015年11月16日)
■米国はウィーン3会議(14日)で戦略を持たずにロシアの解決案に迎合(2015年11月16日)
■スペインのガルシア=マルガージョ外務大臣「ダーイシュ(イスラーム国)のテロの脅威に立ち向かうには、アサド大統領と合意するのがもっとも害が少ない」(2015年11月18日)
■キャメロン英首相「シリア領内での空爆に参加するには安保理決議を採択するのが望ましい」(2015年11月18日)
■シリアのアサド大統領がパリ同時テロ事件後初となるインタビューで欧米諸国の「テロ支援」を批判(2015年11月18日)
■サウジアラビアが12月にシリアの反体制派の代表による拡大会合を主催(2015年11月19日)
■トルコのエルドアン大統領「次期大統領選挙でアサドの居場所はない」(2015年11月19日)
■オバマ米大統領「アサドが権力の座にとどまった状態でシリアの内戦が終わらせることはできない」(2015年11月19日)
■米、アラブ諸国がシリア政府との交渉にあたる反体制派の統一代表団の候補者リストを提示(2015年11月19日)
■アサド大統領が仏雑誌『ヴァルール・アクチュエル』のインタビューに応じ、フランス政府に二重基準に陥った米国に追随しないよう進言(2015年11月19日)
■シリア軍の「樽爆弾」使用を非難し、ダーイシュ(イスラーム国)、イラン・イスラーム革命防衛隊、ヒズブッラーなどすべての外国人武装集団のシリアからの退去を求めるサウジアラビア提案の決議案が国連総会第三委員会で採択、シリア、ロシア、イラン、中国などは反対、レバノン、イラクなどは棄権(2015年11月20日)
■国連は「国際シリア支援グループ」(ISSG)の定義に沿って、ダーイシュ、ヌスラ戦線、そして「そのほかのテロ組織・個人」によるテロ阻止に向けてあらゆる措置をとることを訴える安保理決議第2249号を採択(2015年11月20日)
5.シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)との戦闘でアレッポ県ハーディル村、アイタ村制圧、ヒムス県ハドス村など奪還
ロシア軍、米主導の有志連合、そしてフランス軍がダーイシュ(イスラーム国)への空爆を激化させるのと並行して、シリア軍もダーイシュ(イスラーム国)掃討に向けた作戦を継続し、アレッポ県ハーディル村、アイタ村制圧、ヒムス県ハドス村などを奪還した。
(主な関連記事)
■シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)の拠点都市バーブ市などアレッポ県各所を空爆(2015年11月11日)
■シリア軍がアル=カーイダ系組織のヌスラ戦線などとの戦闘の末、アレッポ市南部の戦略的要衝ハーディル村を制圧する一方、ヌスラ戦線はアレッポ県北部のヤズィード教徒の村を砲撃(2015年11月12日)
■アル=カーイダ系組織のヌスラ戦線に所属するバイヤーダ殉教者大隊がシリア軍との戦闘から逃亡し、ダーイシュ(イスラーム国)に合流(2015年11月13日)
■シリア軍はハーディル村制圧に続いて、アイタ村などからヌスラ戦線を放逐する一方、ジュンド・アクサー機構などはハマー県のスーラーン市を進攻(2015年11月13日)
■ダーイシュ(イスラーム国)の中心都市ラッカ市が戦闘機(所属不明)の空爆を受ける(2015年11月14日)
■シリア軍、ロシア軍がアレッポ県でダーイシュ(イスラーム国)への攻撃を続ける(2015年11月16日)
■シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)との戦闘の末、ヒムス県東部のハドス村を完全制圧(2015年11月17日)
■シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)との戦闘の末、ヒムス県東部のダフル・ドゥッカーン丘を制圧(2015年11月18日)
■シリア軍がアレッポ県東部、ヒムス県東部などでダーイシュ(イスラーム国)との戦闘を続ける(2015年11月19日)
■シリア軍がダイル・ザウル航空基地一帯、ヒムス県マヒーン町一帯でダーイシュ(イスラーム国)と交戦(2015年11月20日)
6.シリア軍がラタキア県、ダルアー県などでアル=カーイダ系のヌスラ戦線や「穏健な反体制派」と戦闘を続けるなか、ロシアがシリア政府とイスラーム軍の停戦を仲介
シリア軍が、ダルアー県シャイフ・マスキーン進攻し、アル=カーイダ系のシャームの民のヌスラ戦線との戦闘を激化させる一方、ラタキア県のダグマシュリーヤ村、ダイル・ハンナー村、ザーヒヤ山、ズワイカート丘などを制圧した。
またロシア軍、シリア軍がダマスカス郊外県東グータ地方に対して激しい空爆、攻撃を続けるなか、同地を拠点とするイスラーム軍が、ロシアの仲介のもとにシリア政府との停戦に向けた協議に応じた。
しかし、停戦交渉は、イスラーム軍が拉致しているアラウィー派民間人の釈放、人道支援物資の搬入方法などをめぐって難航し、ロシア軍、シリア軍は攻撃を激化させた。
一方、アレッポ県北部のアフリーン市一帯では、アル=カーイダ系のシャーム自由人イスラーム運動とヌスラ戦線が、西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊による戦闘員拘束に反発し、アフリーン市に通じる街道を封鎖するとともに、クルド人住民多数を拉致した。
(主な関連記事)
■アレッポ市南部などでシリア軍がアル=カーイダ系のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などとの戦闘を続ける(2015年11月11日)
■シリア軍はダルアー県シャイフ・マスキーン市に進攻(2015年11月14日)
■シリア軍およびロシア軍機と思われる戦闘機がイドリブ県各所を空爆し、多数が死傷(2015年11月15日)
■アル=カーイダ系組織のヌスラ戦線のシャーム自由人イスラーム運動が西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊が実効支配するアフリーン市に至るすべての街道を封鎖、民間人40人を拉致(2015年11月16日)
■アル=カーイダ系組織のヌスラ戦線はレバノン人人質解放の条件としてダマスカス郊外県の2カ村の割譲と女性囚人5人の釈放を要求(2015年11月16日)
■シリア軍がラタキア県のダグマシュリーヤ村、ダイル・ハンナー村方面に進軍し、同地一帯を制圧(2015年11月16日)
■マーヒル・アサド准将がイラン・イスラーム革命防衛隊のスレイマーン司令官に、国防隊を解体したいというアサド大統領の意向を伝える(2015年11月17日)
■アレッポ県、イドリブ県、ダマスカス郊外県でシリア軍とヌスラ戦線ら反体制派との戦闘続く(2015年11月17日)
■シリア軍がラタキア県北部のラシュワーン丘を制圧(2015年11月18日)
■ダマスカス郊外県東グータ地方で活動するイスラーム軍がロシアとの間で停戦交渉(2015年11月18日)
■シリア軍がラタキア県北部での支配地域を拡大するとともに、ダルアー県シャイフ・マスキーン市などでの攻撃を激化(2015年11月19日)
■ロシアの仲介によるシリア政府とイスラーム軍の停戦交渉が決裂(2015年11月19日)
■シリア軍がトルコ国境のザーヒヤ山、ズワイカート丘(ラタキア県)を制圧(2015年11月20日)
■シリア軍報道官「過去5日間でのシリア軍機の出撃回数は114回、テロリストの拠点447カ所を破壊」(2015年11月20日)
7.YPG主体のシリア民主軍がハサカ県フール町一帯を制圧する一方、アレッポ県、イドリブ県の「穏健な反体制派」がシリア民主軍に合流
米主導の有志連合の航空支援を受ける西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊(YPG)主導のシリア民主軍がハサカ県フール町一帯でダーイシュ(イスラーム国)の放逐に成功し、同地を制圧するなか、アレッポ県、イドリブ県で活動するYPGや「穏健な反体制派」がシリア民主軍の成立を発表した。
アレッポ県、イドリブ県でのシリア民主軍には、米国がトルコ領内で軍事教練し、シリア北部のダーイシュとの戦闘に投入していた「第30師団」の名が含まれていた。
だが、第30師団は「シリア国民が承認しないいかなる組織にも属さない」と発表し、参加を拒否した。
なお第30師団は、一次隊がアル=カーイダ系のシャームの民のヌスラ戦線との戦いでほぼ壊滅、二次隊はダーイシュとの戦闘地域への移動の安全を確保するとの理由で、ヌスラ戦線に武器・装備を引き渡した。
(主な関連記事)
■イラクのスィンジャール地方での戦闘激化と連動するかたちで、YPG主体のシリア民主軍がハサカ県フール町一帯でダーイシュ(イスラーム国)に対し攻勢(2015年11月12日)
■西クルディスタン移行期民政局を主導するシリアの民主統一党はイラク・クルディスタン民主党がイラク・スィンジャール地方解放を自らの成果にしようとしていると批判したうえで、ヤズィード教徒に自治政府の樹立を呼びかける(2015年11月13日)
■YPG主体のシリア民主軍がダーイシュ(イスラーム国)との戦闘の末にハサカ県フール町の奪還に成功する一方、シリア軍はダーイシュの拠点都市バーブ市などを空爆(2015年11月13日)
■YPG主体のシリア民主軍のもと、米支援の「穏健な反体制派」の糾合が進む:アレッポ県、イドリブ県で活動する「穏健な反体制派」がシリア民主軍への合流を宣言(2015年11月16日)
■米軍の教練を受けた第30師団は、YPG主体のシリア民主軍への参加を否定(2015年11月17日)
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