ロシア軍はトルコの支援を受ける国民解放戦線拠点を爆撃し戦闘員15人を殺害(2019年7月2日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯では、シリア・ロシア軍が攻撃を激化させてから62日目となる7月2日、シリア・ロシア軍は爆撃を継続、シリア軍とシャーム解放機構などからなる反体制武装集団が交戦した。

シリア人権監視団によると、4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より37人(民間人7人、シリア軍兵士15人、反体制武装集団戦闘員19人)増えて2,122人となった。

うち、543人が民間人(女性105人、子供134人を含む)、722人がシリア軍兵士、857人が反体制武装集団戦闘員。

シリア軍戦闘機による爆撃回数は75回を記録、ヘリコプターが「樽爆弾」18発を投下、ロシア軍も15回の爆撃を行った。

またシリア・ロシア両軍の地上部隊による砲撃は200発におよんだ。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でカフルサジュナ村、マアッラト・ヌウマーン市、マアッラト・ハルマ村、シャイフ・ムスタファー村、ファッティーラ村、フバイト村、ハーン・シャイフーン市、サルジャ村、ダイル・サンバル村、アルバイーン山、ラカーヤー村、マダーヤー村、マアッラト・マーティル町、マガーラ村、ジャバーラー村、タッルアース村、バイニーン村、アリーハー市とマストゥーマ村を結ぶ街道に対して爆撃を実施した。

カフルサジュナ村に対する爆撃では白リン弾が、アリーハー市とマストゥーマ村を結ぶ街道ではクラスター弾が使用された。

さらに、ヘリコプターがハーン・シャイフーン市に「樽爆弾」を投下した。

ロシア軍もマダーヤー村にある国民解放戦線の拠点を爆撃し、戦闘員少なくとも15人が死亡したほか、マアッラト・ハルマ村、ハーン・シャイフーン市を爆撃した。

一方、シャーム解放機構に近いイバー・ネット(7月2日付)は、シャーム解放機構がカッサービーヤ村一帯に潜入しようとしたロシア軍特殊部隊を撃破したと伝えた。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でラターミナ町に対して爆撃を実施するとともに、地上部隊が県北部および北西部の戦闘地帯を砲撃した。

ロシア軍もカフルズィーター市、フワイジャ村を爆撃した。

一方、SANA(7月2日付)によると、シリア軍がフワイジャ村、ラターミナ町、ダクマーク村、ムーリク市一帯にあるシャーム解放機構の拠点を砲撃、タッル・ワースィト村、ズィヤーラ町方面に潜入を試みるシャーム解放機構を撃退した。

他方、新興のアル=カーイダ系組織フッラース・ディーン機構、アンサール・ディーン戦線、アンサール・タウヒード、アンサール・イスラーム集団からなる「信者を煽れ」作戦司令室は、ガーブ平原にあるマシャーリーウ地区でシリア軍部隊を攻撃し、兵士7人を殺傷、武器弾薬を捕獲したと発表した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍ヘリコプターがカッバーナ村一帯に「樽爆弾」を投下、地上部隊が同地を砲撃した。

一方、国民解放戦線は、トルコマン山に近いアブー・アスアド丘にあるシリア軍拠点に対して特殊作戦を行い、将兵多数を殺害したと発表した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を9件(ラタキア県)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を4件(ハマー県)確認した。

AFP, July 2, 2019、ANHA, July 2, 2019、AP, July 2, 2019、al-Durar al-Shamiya, July 2, 2019、al-Hayat, July 3, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, July 2, 2019、Reuters, July 2, 2019、SANA, July 2, 2019、SOHR, July 2, 2019、UPI, July 2, 2019などをもとに作成。

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