サウジアラビアの首都リヤド市内のホテルで、サウジアラビア外務省主催によるシリアの反体制派の合同会合が開会となった。
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会合の主な参加者は以下の通り:
1. シリア革命反体制勢力国民連立(40人)、
ハーリド・ハウジャ代表ら政治委員会メンバー、アフマド・ウワイヤーン・ジャルバー元代表ほか
元メンバー:アフマド・ムアーッズ・ハティーブ、アディーブ・シーシャクリー、ナジーブ・ガドバーン
2. 民主的変革諸勢力国民調整委員会(12人)
ハサン・アブドゥルアズィーム代表ほか
3. 無所属・個人資格での参加(武装集団)
自由シリア軍を名乗る武装集団の代表:トルコ国境地帯で活動する組織のメンバー7人、ヨルダン国境地帯で活動する組織のメンバー5人
アル=カーイダ系組織:シャーム自由人イスラーム運動
非アル=カーイダ系のジハード主義武装集団:イスラーム軍(ザフラーン・アッルーシュ司令官)
4. 無所属・個人資格での参加(反体制組織など)
イスラーム最高評議会(ウサーマ・リファーイー)
カイロ宣言グループ(第2回カイロ大会で「シリア国民憲章」採択を主導したジャマール・スライマーン、ハーリド・マハーミード)
シリア国家建設潮流(ルワイユ・ユサイン、ムナー・ガーニム)
また参加しなかった(招聘されなかった)主な組織、活動家は以下の通り
ハイサム・マンナーア(「カフム」代表)
変革解放人民戦線(カドリー・ジャミール)
民主的呼びかけフォーラム(サミール・イータ)
西クルディスタン移行期民政局所属組織(民主統一党など)
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『ハヤート』(12月9日付、イブラーヒーム・ハミーディー記者)によると、会合での主な争点と出席者の基本姿勢は以下の通り:
1. アサド大統領の進退
シリア革命反体制勢力国民連立:これまで紛争解決の「前提条件」としてきたが、「政治プロセスにおいて彼の居場所はない」と若干態度を軟化させ、移行期間中の退陣を迫る。
民主的変革諸勢力国民調整委員会、カイロ宣言グループ:「現政権のシステムおよびその長(大統領)はシリアの未来に居場所はない」との姿勢をとり、移行期間におけるアサド政権の存続を是認。
なお、これに関して、シリア革命反体制勢力国民連立、イスラーム最高評議会、トルコ国境近くで活動する反体制武装集団(40組織)の代表らは、7日にトルコのイスタンブールで「政治プロセスにおいてアサドは去るべき」との点を確認したという。
2. 移行期統治機関の権限
シリア革命反体制勢力国民連立:大統領権限を含む行政権を完全に委任され、軍、治安機関を監視する権限を有するべきだと主張。
民主的変革諸勢力国民調整委員会、カイロ宣言グループ:「全権を有する移行期統治機関」を求めると述べ、その詳細については言及せず。
3. 軍、治安機関の再編
シリア革命反体制勢力国民連立:移行期統治機関のもとに軍、治安機関を解体し、そのうえで、両組織の組織を抜本改編し、「革命諸勢力」をこれらに統合することを主張。
民主的変革諸勢力国民調整委員会、カイロ宣言グループ、シリア国家建設潮流:軍、治安機関の組織を維持しつつ、その改革をめざす(ウィーン合意に準じている)。
4. 憲法(世俗性の是非)
シリア革命反体制勢力国民連立、民主的変革諸勢力国民調整委員会、カイロ宣言グループは、世俗国家の維持をめざす。
イスラーム最高評議会、アル=カーイダ系・非アル=カーイダ系の武装集団は、憲法において宗教的権威を認めることをめざす。
5. 外国の介入
シリア革命反体制勢力国民連立:ロシア、イランの介入を「敵対行為」、「占領」とみなす
民主的変革諸勢力国民調整委員会:外国の干渉を拒否するが、ロシアの軍事介入には寛容
6. 戦闘停止、テロ
シリア革命反体制勢力国民連立:移行プロセスの開始を停戦の事実上の前提条件とする
民主的変革諸勢力国民調整委員会、シリア国家建設潮流:戦闘停止を優先事項に位置づける。
なお、いずれもダーイシュ(イスラーム国)の支配地域を停戦プロセスから除外し、「テロとの戦い」を主唱。
7. シリア政府との交渉を担う反体制派の代表団
シリア革命反体制勢力国民連立:代表団における主導的役割を要求。
民主的変革諸勢力国民調整委員会などそれ以外の組織・個人:シリアの反体制派の権威とし位置づけ、欧米諸国によって「シリア国民の唯一の正統な代表」と位置づけられているシリア革命反体制勢力国民連立によって代えることをめざす。
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民主統一党が主導する西クルディスタン移行期民政局は声明を出し、リヤドでの会合が「シリア国民を真に代表していない」、「そこでの成果はシリア国民の意思、希望を代表することはないだろう」と批判した。
また、民主統一党以外でも、クルド民族主義政党など8組織が7日に共同声明を出し、サウジアラビアの首都リヤドでの反体制派の合同会合に招聘されていないことに抗議する文書をサウジアラビア外務省に送付したと発表した。
共同声明を出したのは、シリア・クルド民主党(パールティ-)、シリア・クルド進歩民主党、シリア・クルド民主左派党、クルド・シリア民主合意党、シリア・クルド民主統一党(イェキーティー)、シリア改革運動、クルディスターン・アーザーディー党、シリア・クルド作家連盟。
一方、リヤード・アスアド大佐も7日、「自由シリア軍創設者」の名で声明を出し、米国、ロシア、イランといった大国の圧力が増していると非難し、「シリア革命」の継続を改めて主唱した。
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アル=カーイダ系組織のシャーム自由人イスラーム運動は声明を出し、ロシア・イランの占領のシリアからの浄化に反するいかなる決定も拒否すると表明した。
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これに対して、シリア国民協会(8日)、シリア・ヤズィード協会(6日)といった組織は声明で会合への支持を表明した。
AFP, December 8, 2015、AP, December 8, 2015、ARA News, December 8, 2015、Champress, December 8, 2015、al-Hayat, December 9, 2015、Iraqi News, December 8, 2015、Kull-na Shuraka’, December 8, 2015、December 9, 2015、al-Mada Press, December 8, 2015、Naharnet, December 8, 2015、NNA, December 8, 2015、Reuters, December 8, 2015、SANA, December 8, 2015、UPI, December 8, 2015などをもとに作成。
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