シリア人権監視団によると、ドゥルーズ派信徒によるとされる預言者ムハンマドを侮辱する録音データが拡散されたことを受けて、ダマスカス郊外県のジャルマーナー市で、ドゥルーズ派への憎悪や敵意を煽るような動きが強まり、28日深夜から29日未明にかけて、武装グループと地元住民(ドゥルーズ派)を軽火器や中火器で激しい撃ち合いとなった。
事態に対処するため、アフマド・シャルア移行期政権の国防省部隊(新シリア軍)の大規模部隊がジャルマーナー市一帯に集結し、戦闘を収束させようとして一部街区を砲撃した。
また、内務省総合治安局の部隊が、違反行為の阻止と外出禁止令を発出するためにジャルマーナー市一帯に展開した。
戦闘を受けて、住民がドゥルーズ派の学生らがジャルマーナー市から避難した。
一連の戦闘で、住民7人、武装グループのメンバー(移行期政権予備部隊の兵士)7人が死亡、住民15人を含む複数人が負傷した。
なお、音声データの拡散を受けて、アレッポ大学とヒムス大学の大学寮などでもドゥルーズ派への憎悪や敵意を煽るような動きが見られた。
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SANAによると、内務省は報道声明を出し、預言者ムハンマドを侮辱した録音データが拡散された件について、重大な関心を持っているとしたうえで、関係当局が、録音データの声の主を特定するための調査を行っていると発表した。
内務省はまた、声明のなかで、預言者の地位を擁護した市民や宗教関係者に謝意を示すとともに、公共の秩序を守り、治安の紊乱、個人の命や財産を脅かさないよう強調した。
内務省はさらに、この件を受けて、ジャルマーナー市一帯で、同市内外の武装グループどうしが断続的に交戦、これにより同地に展開していた内務省総合治安局の隊員を含む複数の死傷者が出たと発表した。
また、これに対して、総合治安局の複数の部隊が国防省部隊の支援を受けて、戦闘を収束させ、住民を守り、社会平和を維持するために同地に展開し、同様の事件が再発するのを阻止するために封鎖措置が講じられるとともに、法律違反者の追跡が行われたと付言した。
一方、宗教関係省は、この件について声明を出し、本件を引き続き注視するとともに、宗教的・国家的アイデンティティの根幹をなす聖地や宗教的象徴の保護に深い関心を寄せていると発表した。
SANAによると、法務省は声明を出し、この事件について、預言者ムハンマド(彼に平安あれ)への侮辱行為に対して決して寛容な姿勢を取らないと表明した。
また、宗派対立を煽る者たちを裁くために、正当な手段として司法制度に訴えることの重要性を強調した。
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