イドリブ県の緊張緩和地帯(第1ゾーン)は、ロシア・トルコが3月5日の首脳会談で停戦に合意してから239日目を迎えた。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が、M4高速道路沿線に位置し、「決戦」作戦司令室の支配下にあるアリーハー市の住宅街、ザーウィヤ山地方のバーラ村、カンスフラ村、カフル・ウワイド村、バイニーン村、ファッティーラ村を砲撃し、複数の住民が負傷した。
「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。
これに対して、「決戦」作戦司令室は、シリア政府の支配下にあるミラージャ村、ハザーリーン村を砲撃、バイニーン村の森林地帯でシリア軍と交戦し、兵士2人を殺害した。
また、シリア軍の砲撃を受けて、シャーム解放機構によって自治を依託されているシリア救国内閣傘下の教育局は、アリーハー市とバーラ村の学校を休校とした。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるタカード村、カフル・アンマ村を砲撃した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シリア政府の支配下にあるダルアー市の治安厳戒地区内で、シリア軍第4師団の兵士1人が何者かの発砲を受けて死亡した。
また県北部のサイダー町では、ロシアの支援を受けるシリア軍第5軍団の兵士と、軍事情報局のメンバーが口論をきっかけに双方の家族どうしが撃ち合いとなり、双方に死傷者が出た。
一方、サフワ村では、「イランの犬は倒れる、密告者がお前たちのところにやって来る、バッシャールは出て行け、バアス党は裏切り者」と書かれた落書きが発見された。
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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を34件(イドリブ県17件、ラタキア県12件、アレッポ県1件、ハマー県4件)確認したと発表した。
シリア政府によると、停戦違反は31件。
一方、トルコ側の監視チームは、停戦違反を2件確認したと発表した(ただし、ロシア側はこれらの違反を確認していない)。
AFP, October 30, 2020、ANHA, October 30, 2020、al-Durar al-Shamiya, October 30, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, October 30, 2020、Reuters, October 30, 2020、SANA, October 30, 2020、SOHR, October 30, 2020などをもとに作成。
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