米『ワシントン・ポスト』紙(4月8日付)は、ダーイシュ(イスラーム国)のアブー・イブラーヒーム・クラシー指導者が過去に米情報当局の情報部員だったとする記事「テロリストのリーダーになる前、ISISの指導者は、イラクで米国に情報提供する囚人だったと記録が示す」(ジョビー・ウォリック)を掲載した。
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記事によると、ウェストポイント大学に設置され、国防総省が運営するテロ対策センター(CTC)は最近になって、クラシー指導者がイラク国内の米国の拘留キャンプに収監されていたときの尋問の様子などを記録した53極秘文書を一部編集して公開した。
本名はアミール・ムハンマド・サイード・アブドゥッラフマーン・マウラーで、報告書のなかでは「M060108-01」という呼称番号で呼ばれている。
複数の報告書のなかで、クラシーは、米国人看守に「協力的」で、異常なほどおしゃべりな模範囚として描かれいる。
また、彼が所属するイラク・イスラーム国内のライバルについての情報を提供するときなど、役に立とうとしているようだったという。
2008年のある報告書によると、本名、「囚人は面談する度に協力的になっているようである」と記している。また別の報告書には、「囚人はISIの仲間について多くの情報を提供している」と書かれている。
例えば、クラシーは、ある面談で、拘束時に押収された自身の黒い手帳の電話帳に記載されているダーイシュ幹部19人の電話番号を取り調べ官に指し示し、彼らの一部がどのくらいのカネを稼いでいるかを暴露したという。
米軍への協力は、最重要テロ容疑者の似顔絵作成、かつての仲間が好んで食事をするレストランやカフェの特定にも及んだ。
また、反体制グループのメディア部門の極秘本部をどのように突き止めるか、玄関のドアの色、オフィスに人がいる時間などについて正確な情報を提供した。
組織のナンバー・ツーと目されるモロッコ生まれのスウェーデン人、アブー・クスーラについて訊かれた際も、彼が身を寄せている集合住宅の地図を描き、その世話人の名前を教えたという。
情報提供から数週間後、米軍はイラクのモスル市でアブー・クスーラを急襲、殺害することに成功した。
報告書によると、クラシーはとくに米国が組織の宣伝部門だけでなく、米軍によるイラク占領中に中東・北アフリカから集まり、組織に参加した非イラク人を追跡するのを手助けした。
報告書は「彼は自分を守るために多くのことをした。彼はISISの外国人に対して長らく(そして尋問中も)敵意を抱いていた」と記録している。
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クラシー指導者は、2007年末から2008年初め頃にイラク国内で米軍によって捉えられ、拘留キャンプで数十回にわたって取り調べを受けた。
当時の年齢は31才で、イラク・イスラーム国の中堅幹部だった。
釈放された正確な日付は不明だが、尋問記録は2008年7月に作成されたものが最後となっている。
その頃までに、複数の報告書によると、彼は協力的でなくなり、自分の立場を心配するようになり、提供した情報に対する報酬を期待するようになっていたという。
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ダーイシュは、2019年10月、アブー・バクル・バグダーディー指導者が米軍によって暗殺された直後にクラシーを新指導者に任命した。
記事によると、当初この人物が誰であるかは明らかではなかったが、その後米国は彼がマウラーであると特定した。
AFP, April 8, 2021、ANHA, April 8, 2021、al-Durar al-Shamiya, April 8, 2021、Reuters, April 8, 2021、SANA, April 8, 2021、SOHR, April 8, 2021、The Washington Post, April 8, 2021などをもとに作成。
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