ダマスカス郊外県でイフバーリーヤ放送局が武装集団に襲撃され民間人を含む複数名が死亡、アナン特使が6月30日にジュネーブで「シリア作業グループ」会合を開催すると発表(2012年6月27日)

イフバーリーヤ・チャンネル襲撃

ダマスカス郊外県では、イフバーリーヤ・チャンネル(テレビ局)の消息筋によると、ドゥルーシャー市にある同チャンネル施設を午前4時半頃、武装集団が襲撃し、記者3人と守衛4人を殺害し、施設を爆破、機材などを盗んだ。

SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012

被害者のなかには手を縛られ殺された者もいた。

またこの襲撃で9人が負傷し、7人が誘拐された。

ウムラーン・ズウビー情報大臣は現場を視察し、記者団を前に事件を「報道の自由と報道倫理に対する虐殺行為」と非難した。

SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012

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SANA(6月27日付)は、シリアの報道関係者らがダマスカス県内のラジオ・テレビ機構前でイフバーリーヤ・チャンネルに対する「テロ」に抗議する座り込みを行った。

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SANA(6月27日付)は、人民議会がイフバーリーヤ・チャンネルに対する「テロ」を非難する決議を採択した、と報じた。

また進歩国民戦線加盟政党やジャーナリスト連合なども相次いで非難声明を出した。

国内でのその他の暴力

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、マヤーディーン市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、軍・治安部隊の兵士少なくとも10人が殺害された。

また軍・治安部隊の兵士15人が離反した、という。

一方、SANA(6月27日付)によると、ダイル・ザウル市内で治安維持部隊と武装テロ集団の交戦が続き、テロリスト多数が殺害された。

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ダマスカス郊外では、SANA(6月27日付)によると、ドゥーマー市で治安維持部隊が道路封鎖を試みた武装テロ集団と交戦し、ムハンマド・ワリード・イドリース、ウマル・ダルウィーシュらテロリスト3人を殺害した。

一方、シリア革命総合委員会によると、ダイル・アサーフィール市に対して、軍・治安部隊が砲撃を加えた。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がハーン・スブル村に対して砲撃を加えた。同市では26日からの反体制武装集団と軍・治安部隊が交戦している、という。

SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012
SANA, June 27, 2012

一方、SANA(6月27日付)によると、アイン・ハムラー村で街道を封鎖しようとした武装テロ集団と治安維持部隊が交戦し、テロリスト4人を殺害した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団が県北東部のマンナグ航空基地を襲撃した。

これに対して、軍・治安部隊がマンナグ村に進軍し、逮捕・摘発活動を行った、という。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区に対する砲撃を継続した。

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ダルアー県では、シリア革命総合委員会によると、ダルアー市で続けられているゼネストによりライフラインが逼迫している、という。

国内のその他の動き

『クッルナー・シュラカー』(6月27日付)は、シリア当局がビジネスマンのフィラース・トゥラース氏と、俳優のジャマール・スライマーン氏を反体制運動に資金援助しているとの容疑で指名手配したと報じた。

フィラース・トゥラース氏はムスタファー・トゥラース元国防長官の長男で、トゥラース家はヒムス県ラスタン市出身。

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『クッルナー・シュラカー』(6月27日付)は、シリア共産党ウィサール・ファルハ・バクダーシュ派のアンマール・バクダーシュ書記長が、カドリー・ジャミール議員(変革解放人民戦線、人民意思党)の入閣に不快感を示している、と報じた。

Kull-na Shurakāʼ, June 27, 2012
Kull-na Shurakaʼ, June 27, 2012

カドリー・ジャミール議員は、シリア共産党ウィサール・ファルハ・バクダーシュ派のもとメンバーで、2000年代初めに離党し、シリア共産主義者国民統一委員会(通称シリア共産党カースィユーン派)を結成、その後、シリア民族社会党インティファーダ派などとともに変革解放人民戦線を結成し、5月の人民議会選挙で5議席を獲得、入閣していた。

なおシリア共産党バクダーシュ派とともにユースフ・ファイサル派が与党連合の進歩国民戦線に加盟している。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会の連絡事務所筋は、評議会が5月からトルコとヨルダンの避難民キャンプにいる自由シリア軍の士官や義勇兵への給与振り込みを開始した、と述べ、振込がなされていないとのリヤード・アスアド大佐司令官の発言を否定した。

また国内で戦う離反兵や戦闘員に関しても、近く給与支払いが開始されると述べた。

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シリア国民評議会は、シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー女史が反体制活動家とともに銃を握って映っている写真に関して、カドマーニー氏の写真ではない、と否定した。

Kull-na Shurakāʼ, June 27, 2012
Kull-na Shurakaʼ, June 27, 2012

写真はトルコのウェブサイトに掲載されたとして「シリア・ポリティク」(6月14日付)が公開していた。

http://www.syria-politic.com/ar/Default.aspx?subject=754#.T-njP_XDdmo

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ドイツなどで活動する反体制組織、シリア近代民主党は、イフバーリーヤ・チャンネルに対する「テロ」に関して、「シリア政府に従うメディア、とりわけイフバーリーヤとドゥンヤー・チャンネルは…「テロと専制の特権を与えられた機関」であり…、革命にとって合法的標的だ」と述べ、反体制武装集団による襲撃を是認した。

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シリア革命総合委員会報道官のハーニー・アブドゥッラーなる活動家は、AKI(6月27日付)に対して、赤十字国際委員会とシリア赤新月社によるヒムス市内の負傷者および住民の搬出作業が、軍・治安部隊の砲撃によって再び失敗したと述べた。

同活動家によると、搬出作業が失敗したのはこれで3度目。

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シリア国民評議会は、声明を出し、ダイル・ザウル市および周辺都市が数週間に及ぶ軍・治安部隊の砲撃により「被災都市」となったと発表し、シリア国民ではなく、国際社会に対してアサド政権の暴力停止のための行動を求めた。

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『デイリー・テレグラフ』(6月27日付)は、アレッポ軍事病院の集中治療科長で最近トルコに避難した軍医の証言をもとに、逮捕された反体制活動家の負傷者が拷問、放置されたり、反体制運動に関する情報提供量によって異なった治療を受けている、と報じた。

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『クッルナー・シュラカー』(6月27日付)は、6月18日にダマスカス県カフルスーサ区で逮捕されたイサーム・タキー弁護士ら反体制活動家数十人がダマスカス検察庁に告訴されたと報じた。

諸外国の動き

アナン特使は、6月30日にジュネーブで「シリア作業グループ」会合を開催すると発表した。

会合は外相レベルで行われ、安保理常任理事国代表が参加するほか、トルコ、EU、国連事務総長の代表、そしてカタール、クウェート、イラクの代表がアラブ連盟の代表として招聘された。

イランとサウジアラビアは招聘されなかった。

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6月30日にジュネーブで開催予定の「シリア作業グループ」会合に関して、ロシアのヴィタリー・チュルキン国連代表大使は『ハヤート』(6月28日付)に、イランとサウジアラビアが招聘されなかったことへの遺憾の意を示した。

チュルキン国連代表大使は「シリアの移行プロセスは、政府と反体制勢力の政治プロセスへの参加を通じて、シリア人によって決せられねばならない…。イランがジュネーブでの会合に参加しないのは残念だ…。彼ら(サウジアラビア)も影響力のある当事者であるため、招待されねばならなかった。しかし、アラブ連盟によって(同国は)代表されている…と考える」と述べた。

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フランス外務省報道官は、6月30日にジュネーブで開催予定の「シリア作業グループ」会合に関して、「シリアでの民主的転換の原則やプロセス、そして暴力停止、人道支援…といった優先事項が合意される」と述べ、アサド政権打倒「後」の政治プロセスを議論されるべきとの意思を示した。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は、6月30日にジュネーブで開催予定の「シリア作業グループ」会合に関して、「ポスト・アサド時代にシリアを導くための民主的転換を準備する」努力を支持すると述べ、危機の政治的解決をめざすアナン特使や国際社会の機運を牽制した。

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AFP(6月27日付)によると、国連人権理事会の調査委員会は、ヒムス県ハウラ地方での「虐殺」に関して、「現時点で責任者が誰だったのかを特定することはできないが、親政府の勢力が殺害の多くを行ったと思われる」と報告書で結論づけた。

2012年2月から6月のシリア国内の暴力に関する調査報告のなかで、委員会はまた「タッルドゥー市で24時間以上行われた暴力行為にはおそらく三つの当事者が参加した。シャッビーハ、親政府の民兵、そして暴力激化を望む反体制勢力ないしは外国の勢力、である…。既存の証拠に基づくと、調査委員会はこれらの仮説のいずれをも排除できなかった」とした。

さらに「一部地域では、戦闘は国際的性格を持たない武力紛争となりつつある」と述べ、事態の悪化に懸念を示した。

ヒムス県ハウラ地方での「虐殺」に関する国連人権理事会の調査委員会の報告に対して、シリアのファイサル・ハッバーズ・ハマウィー代表は「目に余るほどの政治化してこの会合に参加はしない」と述べ、会合途中で議場を退席、抗議の意を示した。

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米中東和平基金(The Foundation for Middle East Peace)は、シリア・アラブ共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師および同国のキリスト教司教・司祭からなる使節団の訪米を中止したと発表した。

中止に関して、同基金のフィリップ・ウィルコック代表は、ハッスーン師が欧米諸国で自爆攻撃が行われるだろうと述べたこと(http://www.youtube.com/watch?v=F6sJa8iiOmM)が理由だと述べた。

 

al-Hayat, June 28, 2012
al-Hayat, June 28, 2012

なお「アフバール・シャルク」(6月27日付)は、共和国護衛隊の複数の消息筋の話として、ハッスーン師らの米国派遣は、バアス党シリア地域指導部の民族治安局の提案に基づいた動きだと報じた。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、軍の祝賀会に出席し、シリア軍によるトルコ空軍機撃墜に関して「明白且つ差し迫った脅威」と非難したが、「いかなる国をも攻撃する意思はない」と述べ、軍事的報復を否定した。

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ロイター通信(6月27日付)は、複数の消息筋の話として、イランのタンカー3隻が近くシリアのタルトゥース港に到着し、灯油などを供給する、と報じた。

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イタリアのジュリオ・テルツィ・ディ・サンタガタ外務大臣がレバノンを訪問し、ミシェル・スライマーン大統領、ナジーブ・ミーカーティー首相、ナビーフ・ビッリー国民議会議長と相次いで会談、シリアの混乱のレバノンへの波及に危機感を示した。

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ロシアのインテルファクス通信(6月27日付)は、軍消息筋の話として、ロシア軍が近く戦闘ヘリコプターや防空システムをシリアに追加供与するだろうと報じた。

AFP, June 27, 2012、Akhbar al-Sharq, June 27, 2012、AKI, June 27, 2012、Aljazeera.net, June 27, 2012、The Daily Telegraph, June 27, 2012、al-Hayat, June 28, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 27, 2012、Naharnet.com, June 27,
2012、Reuters, June 27, 2012、SANA, June 27, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アサド政権がヒジャーブ内閣第1回閣議を主催し新内閣の基本方針を説明「シリアは真の戦争状態」、NATOがトルコの要請のもと緊急会合を開きトルコ空軍機撃墜事件に関して審議(2012年6月26日)

国内での主な動き

アサド大統領は6月23日に発足したリヤード・ヒジャーブ内閣の閣僚を認証、第1回閣議を主催し、新内閣の基本方針を述べた。

SANA, June 26, 2012
SANA, June 26, 2012

SANA(6月26日付)によると、アサド大統領は閣議において、「シリアが現在挑むべきは、基本物資、インフラであり…、国民の社会的構成実現のための仕組みを確立し…、行政改革、汚職撲滅、人的資源の拡充…に関わる法律を早急に実施する」よう新内閣に求めた。

また西側による制裁への対応として国営セクターの必要が増していると指摘、生産部門に関しては農業、農業加工部門、そして外国の情勢の影響に左右されない中小規模の産業を育成すべきとの方針を示した。

さらに、知的産業育成の重点化することが重要だと指摘した。

一方、外交に関しては、ロシア、東・東南・南アジア諸国、南米、アフリカ諸国との関係を強化し、そのなかで民間セクターを支援すべきとの方針を示した。

シリアをめぐる情勢に関して、アサド大統領は「人民議会での演説でも述べた通り、我々はあらゆる面で、真の戦争状態にあり…、戦争状態にあるなか、我々の政策や指導のすべて、そしてすべてのセクターはこの戦争での勝利のために向けられねばならない」と述べた。

SANA, June 26, 2012
SANA, June 26, 2012

そのうえで、新内閣がシリアの困難な状況のなかで「重大な責任」を有していると鼓舞した。

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「アフバール・シャルク」(6月26日付)は、世銀の報告書が2012年のシリアのGDP成長率がマイナス6.4%、貿易収支が16.5%の赤字になると試算したと報じた。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、クドスィーヤー市、ハーマ町、ダマスカス県ドゥンマル区にある共和国護衛隊の施設や士官の自宅周辺で、反体制武装集団と軍・治安部隊が激しく交戦した。

ロンドンの反体制組織、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長がAFP(6月26日付)に明らかにした。

クドスィーヤー市、ドゥンマル区には共和国護衛隊の士官や公務員、有識者が多く暮らしている。

またシリア革命総合委員会によると、ミスラーバー市に対して軍・治安部隊が激しい砲撃を加えた。

一方、SANA(6月26日付)によると、反体制武装集団が治安維持部隊と市民を攻撃し、旧ダマスカス・ベイルート街道を封鎖し、バラダー渓谷街道に検問所を設置し、ザバダーニー市、マダーヤー町方面に武器密輸を試みた。

これに対して治安維持部隊が応戦し、テロリスト数十人を殺害・負傷させ、シリア人およびアラブ国籍を持つ複数名を逮捕、大量の武器弾薬を押収し、制圧した。

このほか、ドゥーマー市では、治安維持部隊が武装テロ集団の追跡を継続、テロリスト多数を殺害、逮捕した。

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ダマスカス県では、シリア革命総合委員会が配信した映像によると、カーブーン区で複数回爆発があり、黒煙があがった。

一方、SANA(6月26日付)によると、アダウィー地区で武装テロ集団がファラジュ・シハーダ空軍少将の車を襲撃し、同少将を誘拐した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市、マアッラト・ヌウマーン市に対して軍・治安部隊が砲撃を加えた。

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Akhbar al-Sharq, June 26, 2012
Akhbar al-Sharq, June 26, 2012

ヒムス市では、シリア人権監視団によると、複数の活動家によると、ヒムス市の旧市街、ジャウラト・シヤーフ地区、バーブ・アムル地区、ジャウバル区、スルターニーヤ地区、バーブ・フード地区が軍・治安部隊の激しい砲撃に曝され、バーブ・アムル地区周辺では軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦した。

シリア革命総合委員会によると、ラスタン市に対して、軍・治安部隊が激しい砲撃を加えた。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団の司令官がスーラーン市での軍・治安部隊との戦闘で殺害された。

一方、SANA(6月26日付)によると、マアルダス村とタイバト・イマーム市間にある武装テロ集団のアジトを治安維持部隊が襲撃し、テロリスト多数を殺害、武器弾薬を押収した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区で治安当局が1人を射殺した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市各地区に軍・治安部隊が砲撃を続けた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、1人が射殺された。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、カフルシャムス町での軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘で3人が死亡した。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン前事務局長は、AFP(6月26日付)の電話取材に対して、26日にシリア国内に密入国し、「数時間にわたって革命家らと会談した」と発表した。

ガルユーン前事務局長によると、密入国後、イドリブ県内の複数カ所を訪問、国内での反体制武装集団と会談し、同日晩にトルコ領内に再び避難した、という。

また「政権は何も規制できないほどまでに弱っており…、領内に対する支配を失いつつある…。このことが政権とその支持者たちを絶望させている…。新たなシリアが生まれつつあるのを目の当たりにした…。すべての村に地元の委員会があり、支援活動、行政、組織などを行っている」と述べた。

http://www.youtube.com/watch?v=pFNXoejZ0VU&feature=relmfu

http://www.youtube.com/watch?v=bPshRSd_J24

http://www.youtube.com/v/2WWSvWknnAg&hl=en_US&feature=player_embedded&version=3

https://youtube.com/watch?v=2WWSvWknnAg%26hl%3Den_US%26feature%3Dplayer_embedded%26version%3D3

Youtube, June 26, 2012
Youtube, June 26, 2012
Youtube, June 26, 2012
Youtube, June 26, 2012
Youtube, June 26, 2012
Youtube, June 26, 2012

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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー報道官は『ハヤート』(6月27日付)に対して、シリア軍によるトルコ空軍機撃墜が「シリア政府が国内の危機を地域全体に波及させようとする明確な試み」と非難した。

またシリアの危機への対処をめぐる国際会議へのイランの是非に関して、「イランは危機を仲介する政策を実施する準備などできない。なぜなら一部の当事者、すなわち問題を引き起こしている当事者を支援しているからだ」と述べ消極的な姿勢を示した。

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スカイ・ニュース(6月26日付)は、反体制武装集団が捕捉した軍・治安部隊兵士の話として、軍・治安部隊の高官レベルから村落の攻撃、住民の殺害の指示が出されている、と報じた。

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自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐(トルコ在住)は、『シャルク・アウサト』(6月26日付)に対して、「自由シリア軍の兵士へのシリア国民評議会による給与支給の動きは…いまだに実行に移されておらず、武器支給は依然として不足している」と述べた。

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『シャルク・アウサト』(6月26日付)は、スワイダー県でハーフィズ・ジャーッドル=カリーム・ファラジュ空軍中尉が離反した、と報じた。

自由シリア軍副参謀長を名のるアーリフ・ハンムード大佐なる離反兵は、ファルジュ中尉はこれまで離反したドゥルーズ派のなかでもっとも階級が高い、と述べた。

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シリア国民変革潮流は声明を出し、EUの追加制裁に歓迎の意を示した。

諸外国の動き

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、AKPの議員らを前に「トルコ軍の交戦規則は変わった。トルコ国境で安全保障上の脅威・危険をなすシリアからのいかなる軍事的要素も、(トルコ軍の)軍事的標的とみなされるだろう」と強い調子で述べた。

またトルコ空軍機の撃墜事件に関して、「この事件は、アサド政権がトルコとその国民の安全保障にとって明確且つ差し迫った脅威となったことを示している」としたうえで、「トルコは、国際法が定める権利を断固として行使し、自ら時間、場所、方法を定め、必要な措置を講じるだろう」と述べた。

加えて、トルコが「血塗られた独裁者の体制を打倒するまでシリア国民を支援し続ける」と述べ、シリアへの領空侵犯という過失を放置したまま、シリアへの内政干渉を続け、自国の安全保障を脅威に曝し続けるとの意思を示した。

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NATOはトルコの要請を受け、ブリュッセルで緊急会合を開き、シリア軍のトルコ空軍機撃墜に関して審議した。

アナス・フォー・ラスムセンNATO事務局長は、記者団を前に、シリア軍のトルコ空軍機撃墜が「受け入れられず、我々はもっとも強い表現でそれに抗議する…。NATO加盟国はトルコへの強い支持と連帯の意を表明した」と述べた。

しかし、ラスムセン事務局長は「我々は大いなる懸念を持って、NATOの南東部国境地帯での進展を集中的にフォローアップし続ける」と述べ、軍事的な対応については言及しなかった。

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EUはシリア政府に対する追加制裁(第16弾)を決定、シリア国際イスラーム銀行、シリア石油運輸社との取引を禁止するとともに、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官のEU領内への渡航を禁止、資産を凍結した。

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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は中東歴訪の最後の訪問先であるヨルダンを訪問し、アブドゥッラー国王と会談した。

会談で、アブドゥッラー国王は、「シリアの危機の政治的解決を通じて、シリアの統合と安定を維持し、暴力と流血を制限する」ことを呼びかけた。

プーチン大統領は、「地域および国際的なレベルでのヨルダンの立場を尊重する」と述べた。

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ロシア外務省は声明を出し、シリア軍によるトルコ空軍機撃墜に関して「情勢不安定化をもたらさないようこの事件を導くことが重要であり…、内外の当事者にアナン特使の計画に資するよう振る舞う」よう呼びかけた。

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国連安保理は、シリア情勢に関してヘルヴェ・ラドス国連平和維持活動担当事務次長の意見を聴取した。

ラドス次長は「シリア情勢はきわめて危険で、UNSMISの活動再開を許さない」と証言、また「シリア政府は監視団が衛星電話を用いることを拒否した」と非難した。

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シリアでの人権侵害を調査するための国連人権理事会調査委員会のパウロ・セルジオ・ピネイロ委員長(ブラジル)がダマスカスを訪問した、と国連が発表した。

同委員長がシリアを訪問するのは2011年8月の委員会設置以来初めて。

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ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、バラク・オバマ米大統領の選挙遊説に同行、「バッシャール・アサド体制が次第に国内での支配力を失いつつあることは明らかだ」と述べた。

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ロイター通信(6月26日付)は、米諜報機関高官の話として、(西側の政府高官やメディアの認識やプロパガンダとは対象的に)アサド政権のインナー・サークルの結束はいまだに揺らいでいないと報じた。

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オーストリアの法廷は、2011年10月にウィーンのシリア大使館に不法侵入したクルド人青年11人のうち、10人に無罪判決を言い渡した。また残る1人については禁固2ヵ月(求刑3ヵ月)を宣告した。

AFP, June 26, 2012、Akhbar al-Sharq, June 26, 2012、al-Hayat, June 27, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 26, 2012、Naharnet.com, June 26,
2012、Reuters, June 26, 2012、SANA, June 26, 2012、al-Sharq al-Awsat, June 26, 2012、Sky News, June 26, 2012、UPI, June 26, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

EU諸国がルクセンブルクで外相レベルの会談を開きアサド政権へのさらなる制裁への決意を示すも、トルコ軍機撃墜事件に関しては穏健な対応を求める姿勢が支配的(2012年6月25日)

アサド政権の動き

シリア外務在外居住者省のジハード・マクディスィー報道官は記者会見を開き、トルコ空軍のF4戦闘機撃墜に関して、公海上で撃墜されたとのアフメト・ダウトオール外務大臣の発言(24日)が根拠がなく不正確だとコメントした。

SANA, June 25, 2012
SANA, June 25, 2012

戦闘機が射程距離2.5キロの高射砲によりシリア領海上で撃墜され、その弾痕が残る機体の残骸をトルコ側に引き渡したとしたうえで、公海上で迎撃する場合は地対空ミサイルを使っていたと述べ、トルコ側の主張を否定した。

そのうえで、シリア政府はトルコが政府に公式の書簡を送り、トルコ空軍機が22日午前11時40分にシリア領に向かって飛行しているのがレーダーで捕らえられ、北東方向に向かって降下し、レーダー網から姿を消し、シリア領沖1~2キロの地点で上空100メートルで目視された、高射砲で迎撃・撃墜された、との経緯を伝えた、という。

撃墜時のトルコ空軍機は時速700~800キロで飛行していた、という。

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シリアの外務在外居住者省のジハード・マクディスィー報道官はエジプト大統領選挙でのムハンマド・ムルスィー氏の勝利に関する記者団の質問に対して、「シリアが国民の民主的選択のみを支持するということを皆が確認せねばならない…。我々が言えるのは、エジプト国民が彼(ムルスィー氏)を選ぶことで彼を受け入れているということだけだ」と述べた。

国内の暴力

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市各地区での軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘で8人が死亡した。

一方、SANA(6月25日付)によると、ダイル・ザウル市バアージーン地区で治安維持部隊が武装テロ集団のアジトを襲撃、イスマーイール・アリー・ウザイルを長とするテロリスト多数を殺害した。

またシュハダー地区でも治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト全員を殺害した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、カフルナブル市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、3人が死亡した。

またマアッラ・ニウマーン市でも反体制武装集団戦闘員1人を含む3人が死亡した。

さらに、ハビート市では、治安部隊の発砲で1人が、アリーハー市での砲撃で1人が死亡した。

このほか、サラーキブ市での軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘で、反体制武装集団戦闘員2人を含む8人が負傷した。

一方、SANA(6月25日付)によると、カフルナブル市で武装テロ集団が仕掛けようとしていた爆弾が爆発し、テロリスト4人が死亡した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊が反体制武装集団の籠城するヒムス市ハーリディーヤ地区、ラスタン市などへの砲撃を続け、ヒムス市で5人が死亡した。

また自由シリア軍によると、クサイル市、タルトゥース・ヒムス街道、シンシャール村方面に軍の戦車約100両が向かっており「歴史上最大規模の虐殺」が行われようとしていると警鐘を鳴らした。

一方、SANA(6月25日付)によると、ヒムス市のジャウバル区、スルターニーヤ地区などで治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、ラーディー・ハーリドを長とするテロリスト多数が殺害された。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊の掃討作戦により、マディーラー市で7人、ドゥーマー市で6人が死亡した。

一方、SANA(6月25日付)によると、ドゥーマー市で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト10人を殺害した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、マジュダ市で治安部隊が発砲し2人が死亡した。

またブスラー・シャーム市では、軍・治安部隊の兵士3人が爆弾の爆発で死亡した。

一方、軍・治安部隊はジャムリーン市、マアルバ町、カフルシャムス町などに対して砲撃を加えた。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハルファーヤー市で治安部隊の発砲により1人が死亡した。

また県内での軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦により、離反兵1人が死亡した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、クルド山での軍・治安部隊の掃討作戦で1人が死亡した。

また同監視団によると、軍の戦車や装甲車100輌以上がダマスカス・アレッポ街道をアレッポ市に向かって進軍した。

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『クッルナー・シュラカー』(6月25日付)は、ダマスカス県のティシュリーン軍事病院の軍医筋の話として、反体制武装集団との戦闘で重傷を負った負傷兵を治療せず殺害するよう軍指導部が指示した、と報じた。

この指示は、負傷兵が弾圧で犯した罪を隠蔽することが目的だというが、その真偽は定かでない。

反体制勢力の動き

アナトリア通信(6月25日付)は、シリア軍の少将1人、大佐2人、士官5人、兵士24人が未明にトルコ領内に逃走してきた、と報じた。

離反兵の所属や氏名については明らかにしていないため、トルコ側のプロパガンダの可能性も否定できないが、彼らの家族はすでにハタイ県(シリア領アレキサンドレッタ地方)の避難民キャンプに避難している。

CNN Turk(6月25日付)によると、離反した士官とすでに避難している家族を合わせると総勢199人に上るという。

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シリア国民評議会はエジプト大統領選挙でのムハンマド・ムルスィー氏の勝利を「エジプト革命の大いなる勝利、シリア国民の希望の源泉」と評し、歓迎の意を示した。

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シリア・ムスリム同胞団のムハンマド・リヤード・シャカファ最高監督者は声明を出し、エジプト大統領選挙でのムハンマド・ムルスィー氏の勝利を祝福した。

諸外国の動き

リア・ノボスティ通信(6月25日付)は、ロシアの専門家の話として、シリア軍が撃墜したトルコ空軍のF4が、NATOのためにシリアの防空システムの能力を試すための偵察活動を行っていた可能性が高いと報じた。

同通信は「戦闘機は低空で飛行していた。これは防空システムを破る基本である」との専門家の見解を紹介したうえで、その任務がシリアの防空システム、とりわけ中距離ミサイル(Buk-M2E、Pechora-2M )や防空システム(Pantir S1)の能力を試すことが目的だったと報じた。

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トルコのブレント・アリンジュ副首相兼報道官は、シリア軍によるトルコ空軍機F4の撃墜を「警告なしに航空機を標的することは最大級の敵対行為だ」を非難した。

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UPI(6月25日付)は、ヨルダン当局がヨルダン領内への脱走(21日)のために用いられたMiG21戦闘機を26日にシリア側に返還すると報じた。

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AKI(6月25日付)によると、EU諸国外相がルクセンブルクで会談し、アサド政権へのさらなる制裁への決意を示すとともに、シリアの反体制勢力に対して移行期間の包括的計画を提示するよう呼びかけた。

しかし、シリア軍によるトルコ空軍機撃墜に対しては「穏健」な対応をめざそうとする発言が目立った。

フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、シリア軍によるトルコ空軍機撃墜に関して、「この戦闘機は非武装だった…。警告なく撃墜された。これは決して受け入れられない」と述べた。

ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外務大臣は、シリア軍によるトルコ空軍機撃墜に関して、「すべての当事者が混乱の緩和が必要で、さらなる混乱が誰の利益にもならないとと認識している」と述べた。

オランダのウリ・ローゼンタール外務大臣は、シリア軍によるトルコ空軍機撃墜へのNATOの対応に関して「シリアへの軍事介入は提示されていない…。こうした問題はオランダ政府としては検討していない」と述べた。

キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は、トルコ空軍機撃墜に関して深い懸念を示しつつ、トルコに「穏健」な対応を求めていると述べた。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は、シリア軍によるトルコ空軍機撃墜を「生意気で受け入れられない行為」と非難した。

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オーストラリア政府は、シリアとの石油、石油製品、金融取引、通信、奢侈品などの取引を制限する追加制裁を発動すると発表した。

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AFP(6月25日付)は欧州外交筋の話として、シリアの防空システムが地中海上空を飛行中のトルコ空軍のCASA CN-235海洋哨戒機を捕捉し、迎撃警告を行ったと報じた。

AFP, June 25, 2012、Akhbar al-Sharq, June 25, 2012、AKI, June 25, 2012、al-Hayat, June 26, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 25, 2012、Naharnet.com, June 25,
2012、Reuters, June 25, 2012、SANA, June 26, 2012、UPI, June 25, 2012などをもとに作成。

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シリアによるトルコ軍戦闘機撃墜に関してダウトオール外相は「自制するが、いずれ断固たる立場をとる」と明言し、安保理でのシリア非難支持を求める意思を示す(2012年6月24日)

トルコ軍戦闘機墜落をめぐる動き

AFP(6月24日付)は、トルコ外務省報道官が、トルコ空軍のF4戦闘機の撃墜地点を特定したと発表した。

報道官は「我々の戦闘機がシリア領海のどの地点に落ちたか分かっているが、まだ機体を発見できずにいる」と述べた。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣はTRT(6月24日付)で、トルコ空軍のF4戦闘機がシリア領海上ではなく公海上で撃墜されたと述べた。

ダウトオール外務大臣は「我々の調査結果によると、我々の戦闘機はシリアの沖合13マイルの公海上で撃墜された」と述べた。

また「トルコ軍機であることを特定するのは、シリアのレーダー装置において明らかだった」と述べ、墜落後にトルコ軍機であることが判明したとのシリア側の発表を否定した。

ダウトオール外務大臣はさらに、撃墜されたトルコ空軍のF4戦闘機が「シリア領海上に短時間入った」と認めつつ、「シリアに対する攻撃信号をも発信していなかったが、シリア領への一時的な侵犯から15分が経過した後に墜落した…。損傷を受け、シリア領海内に墜落した」と述べた。

墜落した戦闘機は、レーダー・システムの実験のための練習飛行を行っており、武器は搭載していなかった、という。

今後の対応について、ダウトオール外務大臣は、トルコ政府がNATO加盟諸国に対して、事件を審議するための緊急会合の開催(26日開催予定)を求めたことを明らかにし、NATO条約第4章に基づき、加盟諸国に対して、安保理でのシリア非難支持を求める意思を示した。

そのうえで、「トルコは自制を行うだろう。しかしいずれ断固たる立場をとる…。何人にもトルコの軍事的能力に挑戦することを許すべきではない」と付言しつつ、軍事的選択肢に訴える可能性を否定した。

なお機体は1,300メートルの海底に沈んでおり、いまだ見つかっておらず、また行方不明のパイロット2人の捜索活動も継続中だという。

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イタリアのジュリオ・テルツィ・ディ・サンタガタ外務大臣は、トルコ空軍機撃墜に関して「アサド政権による危険で受け入れられない新たな行為」と強く非難した。

国内の暴力

ダイル・ザウル県では、SANA(6月24日付)によると、ダイル・ザウル市内で武装テロ集団が同市ムフティーのアブドゥルカーディル・ラーウィー師を誘拐した。

また同市ジュバイラ地区では、治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト数十人を殺害した。

さらに、アブー・ハマーム地方近くの発電所を武装テロ集団が爆破した。

一方、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市での軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘で、反体制武装集団の戦闘員3人を含む13人が死亡した。

また在外(アンマン)の複数の反体制活動家によると、ダイル・ザウル市への軍・治安部隊の激しい砲撃で少なくとも20人が死亡した。

赤十字国際委員会とシリア赤新月社は、ダイル・ザウル市でのバッシャール・ユースフ救急医殺害(22日)を厳しく非難する声明を出した。

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ヒムス県では、SANA(6月24日付)によると、タルビーサ市東部で、治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、テロリスト全員を殺害した。

一方、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区で反体制武装組織の戦闘員2人を含む4人が軍・治安部隊との戦闘で死亡した。

また同市のハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区などが軍・治安部隊の砲撃に曝された。

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ラタキア県では、SANA(6月24日付)によると、対トルコ国境に位置するヤマーマ村でトルコ領からの潜入を試みた反体制武装集団と当局が交戦し、テロリスト多数が死傷した。

この戦闘で国境警備隊兵士も1人犠牲となった。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ハーリディーヤ地区でマイクロバスの運転手が何者かに射殺された。

またクルド山一帯では、軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦で1人が死亡した。

「アフバール・シャルク」(6月25日付)は、アレッポ市で軍事情報局が反体制運動での負傷者を治療していた医師2人とアレッポ大学医学部の学生3人を逮捕、拷問のうえ殺害し、遺棄したと報じた。

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イドリブ県では、SANA(6月24日付)によると、アリーハー市で治安維持部隊が反体制武装集団が交戦し、前者の兵士3人とテロリスト9人が死亡した。

Kull-na Shurakāʼ, June 24, 2012
Kull-na Shurakaʼ, June 24, 2012

一方、シリア人権監視団によると、アリーハー市周辺の農場で、農夫7人を含む10人が軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦により殺害された。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、「ヌール大隊」がナバク地方で軍・治安部隊と交戦、同兵士11人を捕虜にした。

反体制勢力の動き

Elaph.com(6月24日付)によると、MiG21戦闘機でヨルダン領に脱走したハサン・マルイー・ハマーダ大佐は、従軍中に住宅地区の砲撃命令を受けたと告白、また自分以外にも離反を計画している空軍パイロットが複数いると明かした。

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PKK系のクルド民族主義政党の民主統一党は、シリア・クルド・アーザーディー党のムスタファー・ジュムア書記長を身柄拘束した。

ジュムア書記長の息子によると、書記長はイラクに出国しようとして拘束された、という。

諸外国の動き

M25ヘリコプター複数機を積んでシリアのタルトゥース港に向かっていた貨物船MV Alaedがロシアのムルマンスク港に到着した。

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イスラーム諸国会議機構のエクメレッディン・イフサン・オグル事務局長(トルコ人)は、シリアでの弾圧継続に対処するため、シリアの加盟資格を停止するべきだと提言した。

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ワシントンDCのシリア大使館にシリア人2人が不法侵入し、シリア国旗を降ろし、反体制勢力が使用する委任統治時代の旗を掲揚した。

Kull-na Shurakāʼ, June 24, 2012
Kull-na Shurakaʼ, June 24, 2012
Kull-na Shurakāʼ, June 24, 2012
Kull-na Shurakaʼ, June 24, 2012

http://www.youtube.com/watch?v=MQ9EjjH3ZuI&sns=tw

AFP, June 24, 2012、Akhbar al-Sharq, June 24, 2012, June 25, 2012、Elaph.com, June 24, 2012、al-Hayat, June 25, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 24, 2012、Naharnet.com, June 24,
2012、Reuters, June 24, 2012、SANA, June 24, 2012、Youtube, June 24, 2012などをもとに作成。

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昨日に発生したシリア領空侵犯問題についてトルコ大統領は「意図しないものだった」と明言、シリア国内では第1次リヤード・ヒジャーブ内閣が発足(2012年6月23日)

トルコ空軍戦闘機撃墜をめぐる動き

アナトリア通信(6月23日付)は、トルコのアブドゥッラ・ギュル大統領が「航空機の速度で海上を飛行すれば、短時間で越境してしまうのも当然だ…。これは航空機の速度が原因で意図せずして起きたことだ」と述べた。

ギュル大統領はまた、シリア政府と事件発生後電話で連絡を取ったことを明らかにしたしたうえで、「我々は平静を保たねばならず、挑発的な声明や姿勢を許してはならない」と付言した。

大統領によると、撃墜されたF4戦闘機は、「偵察訓練任務」についており、武器は搭載していなかった。

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イランの外務省は、アリー・アクバル・サーレヒー外務大臣が23日晩、トルコとシリアに対して自制を求めたと発表した。

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国連の潘基文事務総長は報道官を通じて、トルコとシリアに自制を求めた。

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『ハヤート』(6月24日付)は、トルコ空軍機がシリア領海上で撃墜された可能性が高いため、トルコ側が軍事的な報復に出る可能性は低いと報じた。

国内の主な動き

アサド大統領は政令210号を発し、第1次リヤード・ヒジャーブ内閣を発足させた。

ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣、ムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール内務大臣、ダーウード・ラージハ国防大臣ら主要閣僚は留任し、主要閣僚では内務大臣がウムラーン・ズウビー氏に交替しただけだった。

また進歩国民戦線加盟政党ではない政党・政治組織のメンバーがハーフィズ・アサド前政権発足以来初めて入閣した。

入閣したのは、変化解放人民戦線の代表で人民意思党党首のカドリー・ジャミール議員と、同戦線メンバーでシリア民族社会党インティファーダ派党首のアリー・ハイダル党首の2人で、前者は副首相兼国内通商大臣、後者は国民和解担当大臣。

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アサド大統領は、ヒジャーブ内閣の発足に合わせて政令第44号を発し、灌漑省を水資源省に再編した。

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アサド大統領は、ヒジャーブ内閣の発足に合わせて政令第45号を発し、住宅都市開発省と公共事業省を新設した。

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アサド大統領は、ヒジャーブ内閣の発足に合わせて政令第46号を発し、国内通商消費者保護省と経済対外通商省を新設した。

国内の暴力

ヒムス県では、SANA(6月23日付)によると、タッルカラフ郊外のカルアト・ヒスン市の貯水池近くに武装テロ集団が敷設した爆弾が爆発し、テロリスト多数が死亡した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(6月23日付)によると、ダイル・ザウル市旧空港地区、ハミーディーヤ地区、ウルフィー地区で治安維持部隊と反体制武装集団が交戦し、テロリスト多数を死傷させた。

一方、複数の反体制活動家によると、ダイル・ザウル市内各所で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、少なくとも28人が死亡した。

反体制勢力の動き

『ガド』(6月23日付)は、ヨルダン内閣筋の話として、21日にヨルダン領内にMiG21戦闘機で脱走したハサン・マルイー・ハマーダ大佐の家族が、その数日前にヨルダン領内に入国していたと報じた。

Kull-na Shurakāʼ, June 24, 2012
Kull-na Shurakaʼ, June 24, 2012

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、ヒジャーブ内閣の発足に関して、「非常事態令解除宣言に似た欺き」と非難し、「改革の一部を構成し得るはずない」と断じた。

また変革解放人民戦線から2閣僚が輩出されたことに関して「飼い慣らされた野党」と非難した。

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『シャルク』(6月24日付)によると、シリア国民評議会報道官のジョルジュ・サブラー氏(執行委員会メンバー)はドーハで開かれたアラブ地域・国際関係に関するフォーラム(6月22、23日開催)で、シリア・ムスリム同胞団が2008年のガザ紛争時に採用した反体制運動凍結を解除し、アサド政権打倒に参加するまでに2ヵ月半も要したとして、対応の遅れを批判した。

レバノンの動き

自由国民潮流代表のミシェル・アウン元国軍司令官は、「シリアのオルターナティブ(反体制勢力)は民主主義を信じておらず、権力を握ったとしても約束を果たさないだろう」と述べた。

諸外国の動き

インテルファクス通信(6月23日付)によると、M25ヘリコプター複数機を積んでシリアのタルトゥース港に向かっていた貨物船MV Alaedは、ムルマンスク港に到着後、近く再出航し、ロシア国旗を掲揚し、タルトゥース港に向かう、と報じた。

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イラクのホシェル・ゼバリ外務大臣は、スウェーデン外務大臣と共同記者会見で、「我々の最大の懸念はシリアの危機が…周辺諸国に波及することだ。社会的構成や…エスニック・宗派的時限ゆえにこうした波及に耐えられる国はない」と述べた。

またイラクは「シリアでの政治的民主的変革プロセスを支持」しており、国内での暴力に無関心ではないとしたうえで、「政治的変革のプロセスがどのように行われるかに関心がある…。このプロセスは充分検討されたものでなければならず、この問題に関わる国々の国益を保護し、近隣諸国に消極的影響を及ぼさないようにしなければならない」と付言した。

AFP, June 23, 2012、Akhbar al-Sharq, June 23, 2012、al-Ghad, June 23, 2012、al-Hayat, June 24, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 23, 2012, June 24, 2012、Naharnet.com,
June 23, 2012、Reuters, June 23, 2012、SANA, June 23, 2012、al-Sharq, June 24, 2012などをもとに作成。

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シリア軍が領海内でトルコ空軍のF4戦闘機を撃墜、アナン特使は6月30日に開催予定の国際会議にイランの参加を認める意向(2012年6月22日)

トルコ空軍戦闘機撃墜をめぐる動き

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、アンカラでの危機管理会合後に声明を出し、シリア領海内でトルコ空軍のF4戦闘機がシリアの防空システムによって撃墜されたと発表した。

SANA, June 22, 2012
SANA, June 22, 2012

声明によると、「関係機関が集めた証拠と、調査救出活動のなかで得た情報を評価した結果、シリアが我々の戦闘機を撃墜したことが判明した…。パイロット2人の調査救出活動は継続されている…。トルコは最終的な態度を近く発表し、この事件に関する事実が完全に明らかになった場合、必要な措置を断固たる姿勢をもって講じる」という。

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トルコ軍参謀本部の声明によると、トルコ空軍機は午前10時30分にトルコ領内のマラティヤを離陸、午前11時58分にハタイ県西南沖で消息を絶った。

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『ハバル・トゥルク』(6月22日付)は、メキシコでのG20参加を終え、帰国の途についていたエルドアン首相が、「シリアはこの事件に関してきわめて真摯なかたちで謝罪し、大きな悲しみの念を示し、事件は過失だったと認めた」と述べ、トルコ空軍機が撃墜されたことを認めたと報じていた。

また同紙は、戦闘機に乗っていたパイロット2人は無事救出され、発見されていないのは機体だけだと首相が述べたと報じた。

しかし帰国後、エルドアン首相は『ハバル・トゥルク』の報道を否定し、「正確な情報を得るまで、墜落したと断言できない」と述べた。

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シリア軍報道官は、22日午前11時40分、ラタキア西方10キロのシリア領海上を高速低空飛行する未確認飛行物体を対空砲で迎撃・破壊、その後、この飛行物体が領空侵犯したトルコ空軍機だと判明し、その撃墜が国際法に基づく適切な対処だったと発表した。

また、軍報道官は、シリア海軍がトルコ海軍とともに撃墜現場付近でパイロットの救出作業を行っていると付言した。

アサド政権の動き(国内での主な動き)

シリアのワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣はロシアのサンクトペテルスブルグでセルゲイ・ラブロフ外務大臣と会談した。

SANA(6月22日付)によると、両外相は、アナン特使の停戦案の実施の必要を合意するとともに、いかなる当事者の暴力も停止させるべく努力する必要があることを確認した。

会合には、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官も同席した。

ラブロフ外務大臣は、ムアッリム外務大臣との会談後、ロシア24に対して、アサド政権のアナン特使の停戦案実施に関して、「彼らはこれまで多くのことを行ってきたが、さらに多くのことを行わねばならない」と述べた。

また6月30日に予定されているシリア問題をめぐる国際会議に関して、「政府軍、反体制武装集団の都市部、住宅地区からUNSMISの監視のもと同時に撤退」を求める意向を示した。

そのうえで、「シリア政府はこれを実行する準備がある…。我々は今、反体制勢力にもこのことを実行する準備をさせるために行動しなければならない」と付言した。

アサド政権の退任に固執する西側諸国の姿勢に関しては「政治的な面で非現実的だ…。シリア国民のみが自らの国の行方を決定できるという原則に我々は依拠している」と批判した。

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キリスト教カルディア派アレッポ司教区長のアントワーン・アウドゥー司教は東方教会支援会合出席のために訪問したローマで、西側メディアのシリア報道に関して、「アラブの春という動きのなかで報じているが、実際にはより複雑で、より慎重かつ公正に報じるべき」と批判した。

国内の暴力

アレッポ市などで小規模な反体制デモが発生し、治安部隊が強制排除した。

一方、反体制武装組織と軍・治安部隊が引き続き交戦し、死傷者のほとんどはこの交戦によるものだった。

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アレッポ県では、SANA(4月22日付)がダーラト・イッザ市で武装テロ集団が市民多数を誘拐し、虐殺したと報じた。

また反体制武装集団がアレッポ市の検問所を襲撃し、治安維持部隊兵士2人を殺害した。

一方、シリア人権監視団によると、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊と反体制武装集団がダーラト・イッザ市で交戦し、兵士16人が死亡した。

またバーブ市では治安部隊が発砲し、1人を殺害し、クルド山のアイン・アラブ市では、軍・治安部隊と反体制武装組織が交戦し、3人が死亡した。

さらにアレッポ市郊外で反体制武装集団の要撃により「シャッビーハ」26人が殺害されたと発表した。

反体制デモに関して、シリア人権監視団は、アレッポ市サラーフッディーン地区でのデモに治安当局が無差別発砲し、子供を含む9人が死亡した、と発表した。

またアンマン在住の反体制活動家がロイター通信(6月22日付)に語ったところによると、アレッポ市内でサアドッラー・ジャービリー広場に向かってデモ行進を行っていた数千人に向けて、治安部隊の発砲し、多数が負傷した、という。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区周辺で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、後者の戦闘員1人を含む2人が死亡した。

シリア赤新月社と赤十字国際委員会は、すべての当事者に対して、ヒムス市旧市街に取り残された住民、負傷者などの搬出に協力するよう呼びかけた。

一方、シリア人権ネットワークは、ヒムス市内のメンバーの話として、軍・治安部隊の砲撃により、赤十字国際委員会とシリア赤新月社の医療チームが旧市街での負傷者らの搬出作業を阻止されていると発表した。

反体制デモに関して、シリア人権監視団によると、ヒムス市クスール地区でデモが断行されたという。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で治安部隊の発砲により15歳の少年が死亡した。

一方、SANA(6月22日付)によると、シリア赤新月社ダイル・ザウル支部のバッシャール・ユースフ救急医が、ダイル・ザウル市で武装テロ集団に撃たれ、死亡した。

また同市では、治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、テロリスト1人が死亡、多数が負傷した。

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ダルアー県では、軍・治安部隊の砲撃により、カラク村で4人が、ムハッジャ村で女性1人が、ブスル・ハリール市で1人が、ナーフタ町で1人が死亡した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊の砲撃により、ダーライヤー市で1人が、ザバダーニー市で1人が死亡した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、タダームン区で治安部隊の発砲により1人が死亡した。

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シャーム・ニュース・ネットワーク(6月22日付)は、反体制武装集団55人が各地で殉教したと報じた。

諸外国の動き

国連のアナン特使は、ジュネーブでの記者会見で、6月30日に開催予定の国際会議に関して、「イランは解決策の一部でなければならない」と述べ、参加を求める意向であると述べた。

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レオン・パネッタ米国防長官は、ロイター通信(6月22日付)に対して、「現段階でシリアの反体制勢力への武器支援は行わないと決定した…。現在もっとも重要なのはみなが責任を伴った政治的転換に全力を注ぐことで、それが実現しない場合、恐るべき内戦に突入するような…真の危機が生じる」と述べた。

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米国務省のビクトリア・ヌーランド報道官は、MiG21戦闘機でヨルダンに脱走した空軍パイロットの離反を「きわめて勇敢」と賞賛した。

またロバート・フォート米大使も、フェイスブック(6月22日付)で、この空軍パイロットの離反を「勇敢な行為」と讃えた。

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フランス外務省報道官は、MiG21戦闘機でヨルダンに脱走した空軍パイロットの離反に関して「歓迎する」としたうえで「この脱走は、軍・治安部隊に引き続き離反するよう我々が呼びかけることを促している」と述べた。

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国際連合人道問題調整事務所は、150万人がシリア国内で人道支援を必要としていると発表した。

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英国当局は、シリア・オリンピック委員会のムワッファク・ジュムア委員長(少将)へのビザ発給を拒否した。

BBC(6月22日付)が報じた。

ジュムア委員長とアサド政権との関係がビザ発給拒否の理由。

AFP, June 22, 2012、Akhbar al-Sharq, June 22, 2012、AKI, June 22, 2012、al-Hayat, June 23, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 22, 2012、Naharnet.com, June 22, 2012、Reuters, June 22, 2012、SANA, June 22, 2012、SNN, June 22, 2012などをもとに作成。

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シリア空軍の戦闘機パイロットがヨルダン領内に着陸し亡命を認められる、赤十字国際委員会とシリア赤新月社の医療チームがヒムス市に入ろうとするも発砲を受け退却(2012年6月21日)

空軍パイロット脱走

ヨルダンのサミーフ・ムアーイタ広報担当大臣は、シリア空軍のMiG21戦闘機がヨルダン領内に着陸したことを明らかにし、「内閣はシリア人パイロット、ハサン・マルイー・ハマーダ大佐の要請に基づき政治亡命を認めることを決定した」と発表した。

Akhbar al-Sharq, June 21, 2012
Akhbar al-Sharq, June 21, 2012

ヨルダン武装部隊総司令部の高官によると、同戦闘機は21日午前10時45分にヨルダン領空に進入した、という。

またヨルダン内閣筋によると、戦闘機はヨルダン領空を侵犯した後、フサイン国王空軍基地に強制着陸させられた。

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シリアの国防省は空軍パイロットのヨルダンへの脱走に関して、「パイロットのハマーダは任務から逃れた、祖国と軍の栄誉に対する裏切り者だ…軍の規則および法律に沿ってこうした行為に科せられる処罰を受けることになるだろう」と発表した。

国防省によると、同戦闘機が午前10:34に訓練中にヨルダン国境で連絡を絶った。

声明では「ヨルダンの各方面に戦闘機の返還を求めるための連絡を行っている」ことが付言された。

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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー報道官は、ハマーダ大佐によるMiG21での脱走に関して、「ダルアー・スワイダー間の軍の飛行場から戦闘機が離陸し…、離反したパイロットはレーダーによる追跡を避けるため、単独で高速低空を行った」と述べた。

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シリア国民評議会は声明を出し、MiG21戦闘機による空軍パイロットの脱走・亡命を歓迎した。

国内の暴力

ヒムス県では、赤十字国際委員会とシリア赤新月社の医療チームが、ヒムス市旧市街に取り残された病人、負傷者、女性、子供を搬出するため同市に入ろうとしたが、発砲を受け退却した。

赤十字国際委員会のヒシャーム・ハサン報道官が発表した。

ヒムス市では赤十字国際委員会とシリア赤新月社の医療チームによる活動のため、シリア軍、反体制武装集団が戦闘停止することを確認していた。

外務在外居住者省高官は、SANA(6月21日付)に対して、搬出作業は市内に立て籠もる武装テロ集団によって阻止されたと非難した。

一方、シリア人権監視団によると、ヒムス市で13人が死亡した。

犠牲者のうち10人はダイル・バアルバ地区で、3人はハーリディーヤ地区で、軍・治安部隊の砲撃・銃撃により死亡した、という。

またクサイル市では軍・治安部隊の掃討作戦で2人が死亡したという。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、インヒル市で10人が死亡した。

うち9人は砲撃による犠牲者だという。

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ダマスカス郊外県では、ドゥーマー市などで軍・治安部隊による掃討作戦や反体制武装集団との戦闘が続いた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アターリブ市で軍・治安部隊の砲撃により1人が死亡、またダーラト・イッザ市での軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦で1人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アルマナーズ市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、後者の戦闘員複数が死亡した。

レバノンの動き

ナハールネット(6月21日付)によると、シリア領内からベカーア県ヘルメル郡ムシャッラフィーヤ村にRPG弾4発が撃ち込まれた。

イスラエルの動き

イスラエルのダニー・アヤロン国防副大臣は訪問先のパリで記者団に対して、「長く待てば待つほど、混乱と犠牲は増えるだろう…。シリア情勢を鏡のように映し出すレバノンとイランに戦争が波及することは危険である」と述べ、西側とロシアに混乱拡大回避のためのボスニア・モデルに沿った介入を呼びかけた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は「モスクワのこだま」ラジオ(6月21日付)で、「暴力停止と政治プロセスに先立って(シリア)大統領の退任を義務づける案は、当初から機能しない案だ。大統領は退任しないであろうから実行不可能だ」と述べた。

また反体制運動の弾圧に利用可能な攻撃ヘリを輸送していると英国が疑惑を向けている貨物船MV Alaedについて、「船は防空システムを積んでいたが、それは外国からの攻撃に対してのみ用いられるものであり、平和的デモの参加者に対するものでない…。(同船舶は)修理を終えたヘリコプター3機も積んでいた」と述べた。

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ロシア外務省報道官は記者会見で、貨物船MV Alaedに関して、「シリア側に所有権があるM25ヘリコプター複数機を積んで、(シリアを)6月11日に出港した。修理作業後にシリアに引き渡されるだろう」と述べた。

MV Alaedはスコットランド沖合で19日に発見された後、貨物船の護衛を請け負っていた英国企業が契約を破棄したため、タルトゥース港への航行を中断し、ムルマンスク港に帰港中だという。

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『デイリー・テレグラフ』(6月21日付)は、英国のデビッド・キャメロン首相が、武器を輸送しているとされるロシア船籍(英国領海に向けて航行中)を特殊部隊によって攻撃・阻止することを検討していたと報じた。

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『ニューヨーク・タイムズ』(6月21日付)は、CIAのエージェントが、アル=カーイダに武器が流入していないことを確かめるべく、トルコ領内でシリアの反体制勢力への武器供与を監視している、と報じた。

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アラブ連盟のアフマド・ベン・ヒッリー事務次長は、「あらゆる暴力支援は停止されねばならない」と述べ、ロシア政府にアサド政権への武器供与を停止するよう求めるとともに、アナン特使による停戦プロセスの強化を訴えた。

インテルファクス通信(6月21日付)が報じた。

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米国務省のビクトリア・ヌーランド報道官は、ジュネーブでの開催が検討されているシリア情勢に関する国際会議へのアサド大統領の出席の安全を保障しようとしているとの『ガーディアン』(6月21日付)の報道を「正しくない」と否定した。

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スイスのディディエ・ブルカルテール外務大臣はスイス紙に対して、アナン特使と連絡し、シリア情勢をめぐる国際会議の招致を行っている、と述べた。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、シリア国民評議会の使節団16人と会談、7月2、3日にカイロの連盟本部でシリアの反体制勢力の拡大会合を開くと発表した。

AFP, June 21, 2012、Akhbar al-Sharq, June 21, 2012、The Daily Telegraph, June 21, 2012、al-Hayat, June 22, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 21, 2012、Naharnet.com, June 21,
2012、The New York Times, July 21, 2012、Reuters, June 21, 2012、SANA, June 21, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

自由シリア軍国内合同司令部のサアドッディーン大佐がクルド人に対し同軍への参加を呼びかけ、オバマ大統領はG20閉幕後の声明で「アサドは完全に正統性を失っている」と断言(2012年6月19日)

国内の主な動き

シリアのブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官はモスクワを訪問し、ミハイル・ボクダノフ外務副大臣と会談した。

RT(6月19日付)によると、会談では、アナン特使の停戦案実施を保障するためにロシアが提案している国際会議に関して集中的に意見を交換した。

一方、シャアバーン大統領府政治情報補佐官は、シリア、イラン、ロシア、中国が軍事演習を行うとのファルス通信(6月18日付)の報道内容を否定した。

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シリアの外務在外居住者省は声明を出し、ヒムス市での反体制武装集団掃討作戦に関して、住民を安全な場所避難させるべく地元当局が努力を行っているとしたうえで、当局はそのためにUNSMISと連絡調整を行い、協力をめざしたが、「武装テロ集団がこの努力を妨害」しているため、この試みはいまだ成功していないと述べた。

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『クドス・アラビー』(6月19日付)は、シリアのダーウード・ラージハ国防大臣が6月14日にモスクワを秘密裏に訪問し、アナトーリー・セルジュコフ国防大臣と両国の軍事関係について協議したものと思われる、と報じた。

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ロイター通信(6月19日付)は、ヒムス市での弾圧時に略奪された商品が売られる「スンナ派市場」と称される闇市が横行している、と報じた。

同報道によると、「スンナ派市場」では、政権支持者が略奪した雑貨、衣類、家具などが売られている、という。

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SANA(6月19日付)によると、人民議会が、一般的自由、人権、女性・家族・児童の権利、若者の権利、報道・出版・発行に関する新たな常設委員会の設置を可決した。

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区、旧市街、カラービース地区に対する軍・治安部隊の掃討作戦が続き、反体制武装集団の戦闘員1人を含む2人が死亡した。

またバーブ・アムル地区近くで軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦した。

自由シリア軍のナースィル・ナハール氏によると、「戦況は厳しく…、我々はまだバーバー・アムルに入っていない」。

ラスタン市でも、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊の砲撃で1人が死亡した。

一歩、SANA(6月19日付)によると、レバノン領内からクサイル地方に潜入しようとしていた武装テロ集団と当局が交戦し、テロリスト多数を殺害、レバノン領内に追い返した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、「何者」かがクーラ市の石油パイプラインを爆破した。

SANA(6月19日付)はこの爆破に関して、石油大臣高官の話として、武装テロ集団の犯行と断じた。

また、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市ジャウラ地区に軍・治安部隊が突入し、3人が死亡した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市スッカリー地区で夜間デモが発生し、治安当局が強制解除、その際1人が死亡した。

またアアザール地方では、軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦で1人が死亡した。

一方、SANA(6月19日付)によると、アレッポ市アズィーズィーヤ地区で武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、建設作業員2人が死亡した。

「アフバール・シャルク」(6月20日付)によると、アレッポ市の裁判所内で「自由弁護士」の一団が「革命」との団結を訴えて示威活動を行った。

http://www.youtube.com/watch?v=KxSsz4gn738&feature=share

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市での軍・治安部隊の掃討作戦により、子供1人を含む5人が死亡した。

一方、SANA(6月19日付)によると、ドゥーマー市で治安維持部隊が武器を車に積んで逃走中の武装テロ集団を追撃し、全員を殺害した。

またランクース市・ザバダーニー市間で、武器を密輸しようとしていた武装テロ集団と治安維持部隊が交戦し、テロリスト4人を殺害した。

さらにクドスィーヤー市では武装テロ集団が民家を襲撃し2人を殺害した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、対トルコ国境地帯で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

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ハマー県では、SANA(6月19日付)によると、ハマー市クスール地区で軍・治安部隊と武装テロ集団が交戦し、テロリスト多数が死傷、逮捕された。

反体制勢力の動き

自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐は声明を出し、クルド人に対して、「不正」を打倒するための運動に参加するべく、自由シリア軍に参加するよう呼びかけた。

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シリア・クルド進歩民主党のアブドゥルハミード・ダルウィーシュ書記長とシリア・クルド民主党(アル・パールティー)のアブドゥルハキーム・バッシャール書記長(シリア・クルド国民評議会代表)は共同声明を出し、反体制勢力統合のための常設調整合同委員会に関するワーキングペーパーに署名したとの一部発表(6月13日)を否定した。

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シリア人権監視団は、ヒムス市内で2,000世帯以上が避難できずに砲撃にさらされていると指摘し、国連、アラブ連盟、人権団体などに対して、ヒムス市でのシリア国民に対する暴力を体系的に停止するための充分な措置を講じるよう呼びかけた。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン前事務局長は『シャルク・アウサト』(6月19日付)に対して、「我々はムードがそうすること(UNSMISの活動停止)を期待していなかった。なぜなら求められていたのは、負傷者救出のための殺戮停止、シリア政府によるアナン特使停戦案履行だったからだ」と不満を吐露した。

UNSMISをめぐる動き

UNSMISのロバート・ムード司令官は国連安保理にシリアでの活動に関する報告を行った。

報告のなかでムード司令官は、UNSMISが連日、300~400メートルの距離から「間接的に発砲」を受け、車輌9台が損害を受けた、と述べた。

外交筋によると、UNSMISは数百回にわたって標的になった、という。

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ヘルヴェ・ラドス国連平和維持活動担当事務次長は安保理でのムードUNSMIS司令官の報告後に声明を出し、UNSMISをシリアに引き続き駐留させると発表した。

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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は安保理でのムードUNSMIS司令官の報告後に記者会見を開き、安保理の一部の国が当初からアナン特使の停戦案を頓挫させ、国連憲章第7章に基づく強引な介入を狙っていた、と非難した。

諸外国の動き

AFP(6月19日付)は、イラクに避難したシリア人(クルド人)のほとんどが同国内の避難民キャンプで「静かに」暮らしていると報じた。

イラクにはドホーク県ドゥマイズ・キャンプ(1,500人)などに約5,400人のシリア人が避難生活を送っている。

なお周辺諸国に避難したシリア人の総数(推計)は86,000人。

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シリア国民評議会のニザール・ヒラーク氏(ヨルダン在住)はAFP(6月19日付)に対して、ヨルダンへのシリア人の入国が新たに制限されるようになっている、と述べた。

ヨルダンには2011年3月以降、12万人以上のシリア人が入国した、とされている。

G20閉幕

バラク・オバマ米大統領は、メキシコ(ロスカボス)でのG20閉幕時、記者団に対して「現段階で、米国をはじめとする国際社会はロシアと中国の立場を支持していると述べることはできないが、(シリアが)全面内戦の危機にあることを両国が認識すると確信する」と述べた。

オバマ米大統領はまた「アサドは完全に正統性を失っており、彼を権力の座に残したかたちでのいかなる暴力の解決をイメージすることは残念ながらできない」と述べ、反体制武装集団のテロ活動を事実上黙認した。

そのうえで「(露中がシリアでの)虐殺を黙認できるとは思っていない。シリアに暴力停止の仕組みを案出し、正当な政府を発足することがすべての人々の利益になると両国は考えているだろう」と述べた。

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英国のデビッド・キャメロン首相は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がアサド大統領の退陣を望んでいないと述べた。

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しかし、プーチン大統領はキャメロン首相の発言をただちに否定し、「シリア人だけが、アサド大統領が留まるか去るかを決めねばならない」と反論した。

そのうえで、すべての当事国が交渉のテーブルにつき、対話を通じて危機を解決すべきだと主張した。

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フランスのフランソワ・オランド大統領は、「ロシアはシリアの移行期間を円滑に進めるうえで役割を果たしている」と一定の評価をした。

AFP, June 19, 2012、Akhbar al-Sharq, June 19, 2012, June 20, 2012、al-Hayat, June 20, 2012, June 21, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 19, 2012、Naharnet.com, June 19, 2012、al-Quds al-ʻArabi, June 19, 2012、Reuters, June 19, 2012、SANA, June 19, 2012, June 20, 2012、al-Sharq al-Awsat, June 19, 2012、UPI, June 19, 2012、Youtube, June 19, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

プーチン大統領とオバマ大統領が会談し、記者会見のなかで両首脳はシリアにおいて政治的解決をめざすことを事実上確認(2012年6月18日)

国内の主な動き

イランのファルス通信(6月18日付)は、シリア、イラン、ロシア、中国が来月、シリア領内で合同軍事演習を行い、90,000人の兵士、航空機400機、戦車1,000輌が参加するだろうと報じた。

同通信社によると、軍事演習には、陸海空軍など全軍が参加予定で、中国軍はすでにエジプト政府から演習参加のためのスエズ運河通行の許可を得ている、という。

国内の暴力

『ワタン』(6月18日付)は、軍・治安部隊が過去3週間で、「ダマスカス大戦」を試み、潜入しようとした武装テロリスト数百人を交戦の末に殺害したと報じた。

またロンドンで活動する反体制組織、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、ダマスカス県のバサーティーン・マッザ区、カフルスーサ区、ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市には「革命家たちが常駐している」というが、真偽は定かでない。

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ヒムス県では、シリア人権監視団などによると、武装テロ集団が籠城するヒムス市ハーリディーヤ地区に対して、軍・治安部隊が突入を試み、反体制武装集団の激しい抵抗を受けた。

またクサイル地方で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、後者の戦闘員3人が殺害された。

ラスタン市では、軍・治安部隊の攻撃により、3人が死亡した。

一方、SANA(6月18日付)によると、タッルカラフ郊外でレバノン領からの潜入を試みた武装テロ集団と治安部隊が交戦し、テロリスト多数を殺害した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、フライラ村に対して軍・治安部隊が攻撃を加えた。

またドゥーマー市では6人が、ムウダミーヤト・シャーム市で1人が軍・治安部隊の砲撃のなか、死亡した。

一方、ザバダーニー地元調整委員会メンバーのファーリス・ムハンマドを名のる活動家によると、クドスィーヤー市、ハーマ町が軍・治安部隊に包囲され、「クドスィーヤー市での反体制デモ開始直後、砲撃が加えられた」という。

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ハマー県では、カルアト・マディーク町で、軍・治安部隊が砲撃し、3人が死亡、またラトミーン村でも1人死亡した。

一方、SANA(6月18日付)によると、ワーディー・アブー・ハトブ近くの農地で市民3人の遺体が発見された。いずれも拷問の跡が残っていたという。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ムーハサン市で爆弾が爆発し、反体制武装集団司令官1人を含む4人が、ダイル・ザウル市では、反体制武装集団司令官を含む3人が殺害された。

一方、SANA(6月18日付)によると、ムーハサン市近くのブーサッド村で武装テロ集団の爆弾が誤爆し、テロリスト4人が死亡した。

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ダルアー県では、タファス市に、軍・治安部隊が突入、自由シリア軍イバード・ラフマーン大隊のルワイユ・ラシュダーン報道官によると、反体制武装集団が軍の装甲車5台を破壊、市民1人が死亡した。

ラシュウダーン報道官によると、戦闘は続いており、自由シリア軍の別のグループが支援のためにダルアー県に向かっている、という。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市で武装した何者かが女性を殺害した。

またアナダーン市、バヤーヌーン町、アターリブ市に対して、軍・治安部隊が掃討作戦を継続した。

対トルコ国境のクルド山でも軍・治安部隊が激しい攻撃を続けた。

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イドリブ県では、SANA(6月18日付)によると、マアッラト・ニウマーン市の街道を封鎖しようとした武装テロ集団と治安部隊が交戦し、テロリスト多数を殺害、逮捕した。

反体制勢力の動き

EU報道官は、来週ブリュッセルで、EU主催のもと、シリア国民評議会、民主的変革諸勢力国民調整委員会、シリア・クルド国民評議会、シリア民主フォーラムなどが会合を開き、反体制勢力の統一をめざすと発表した。

大会には活動家約50人、アラブ連盟使節団などが参加する、という。

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アブドゥルハリーム・ハッダーム前副大統領は、ロシア製の新紙幣の流通に関して、アサド政権の打倒後もシリア経済の衰退をもたらす、と批判した。

レバノンの動き

UNHCRは、レバノン国内に避難したシリア人の数が28,000人にのぼると発表した。

このうちUNHCRに登録したのは20,702人だという。

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進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は党機関誌『アンバー』で「ヒムスに対する軍事作戦は、宗派主義的な分断への道を開き…、シリアの分断を狙っている。そしてこれこそがアサドの計画の核をなしている」と断じた。

諸外国の動き

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はG20出席のため訪問中のメキシコ(ロスカボス)でバラク・オバマ米大統領と会談し、シリア情勢などについて意見を交わした。

会談後、プーチン大統領は「この問題に関して、多くの点で相互理解に達したと思う」と述べた。

またオバマ大統領は、「内戦を回避するためロシアとともに行動することができる」と述べた。

両首脳は共同声明を出し、「シリアでの流血停止をめざし、我々は暴力の即時停止を呼びかける」としたうえで、「シリア国民が自らの未来を独自にそして民主的に選択できるようにしなければならないという点で(両国は)一致している」と表明し、政治的解決をめざすことを事実上確認した。

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インテルファクス通信(6月18日付)は、ロシア海軍参謀筋の話として、ロシア海軍がタルトゥース港に戦艦2隻の派遣を検討していると報じた。

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イタリアのジャンパオロ・ディパオラ国防大臣は、AKI(6月18日付)に対して、「ローマとパリはシリアへの軍事介入を拒否している」と述べた。

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ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官は、国連人権理事会開会式で、「シリア政府はただちに重火器使用と住宅地への砲撃を停止せねばならない。なぜならこのような行為は人道に対する罪で、戦争犯罪に含まれるからである」と述べた。

AFP, June 18, 2012、Akhbar al-Sharq, June 18, 2012、AKI, June 18, 2012、al-Hayat, June 19, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 18, 2012、Naharnet.com, June 19, 2012、Reuters, June 18, 2012、SANA, June 18, 2012、al-Watan, June 18, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア国民評議会事務局長がシリアの友連絡グループに対し「単独で行動」するよう求める、英外相がUNSMISの活動停止を受け反体制勢力にも暴力を停止するよう呼びかけ(2012年6月17日)

国内の主な動き

アサド大統領はダマスカス県・郊外県工業会議所事務局メンバーと会談した。

SANA(6月17日付)によると、会談では西側による制裁への対応などについて意見交換がなされた。

SANA, June 17, 2012
SANA, June 17, 2012

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SANA(6月17日付)によると、人民議会で一般的自由、人権、女性・家族・児童の権利、若者の権利、報道・出版・発行に関する新たな常設委員会の設置の是非が審議された。

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アラブ作家連盟の執行部メンバー9人が「我々の知らない間に出されたすべての決定や声明とは無縁である」と宣言し、「麻痺し無能で腐敗した連盟において偽証者の役割を演じ続けることはできない」として辞任した。

辞任したのは、カースィム・ミクダード、ガーズィー・フサイン・アリー、イブラーヒーム・ジャッラーディーら9人。

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『クッルナー・シュラカー』(6月18日付)によると、「シリア青年」を名のる若者グループが人民議会議事堂前でアサド大統領を拒否する人を皆殺しにすることを訴えてデモを行った。

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で軍・治安部隊による掃討作戦が続き、同市ハーリディーヤ地区で住民1人が殺害された。

ヒムス市旧市街の活動家のアブー・ビラール氏によると、軍・治安部隊は砲撃を続けており、「もし軍が包囲されている地区に突入すれば、取り残されている人々は皆殺しにされるだろう」と述べた。

軍・治安部隊による砲撃は、ジャウラト・シヤーフ地区などにも行われたが、これらの地区の住民はほとんどが避難しており、市内には反体制武装集団が立て籠もっている。

タルビーサ市、ラスタン市でも、軍・治安部隊が砲撃を続けた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アターリブ市、イッビーン村、カフル・カルミーン村で、軍・治安部隊が砲撃を加え、掃討作戦を行い、アビーンで市民1人が死亡した。

また対トルコ国境沿いのクルド山に対して、軍・治安部隊が激しい砲撃を加えた。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ムライハ市、ミスラーバー市、ドゥーマー市などで、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、2人が殺害された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、タマーニア町で治安部隊が1人を射殺した。

一方、SANA(6月17日付)によると、アンカーリー地点で軍・治安部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト1人を殺害した。

またサイジャル村でも軍・治安部隊と武装テロ集団が交戦し、前者の兵士2人が犠牲となった。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団の司令官1人が殺害された。

またバクラス村で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(6月17日付)によると、対イラク国境で当局が武器密輸を試みた武装テロ集団と交戦し、テロリストを多数死傷させ、大量の武器弾薬を押収した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ガーブ平原で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、前者の兵士3人が犠牲となった。

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ラタキア県では、SANA(6月17日付)によると、ハッファ地方での武装テロ集団残党の追跡が続けられ、当局はフランス製の爆発物、トルコ製の火薬を押収した。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長はイスタンブールで記者会見を開き、シリアの友連絡グループに対して、民間人を救済するため、(国際社会の合意なしに)「単独で行動」するよう呼びかけた。

スィーダー事務局長はこの会見で、また「断固たる決議を強く安保理に求めてきたが、我々が期待していなかったかたちで拒否に遭った」と、今更ながら露中の拒否権発動を引き合いに出し、失望感を表明した。

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シリア国民評議会は声明を出し、UNSMISの活動停止に関して、「犯罪体制に資し、シリア国民はわずかながらの保護を保障するために残されていたもろい援護を奪われた」と非難した。

諸外国の動き

米ホワイトハウスはUNSMISの活動停止に関して、「重大な局面」に達したとの見解を示した。

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英国のウィリアムズ・ヘイグ外務大臣は、UNSMISの活動停止に関して、「UNSMISの活動継続能力を真剣に再検討する」必要があると述べるとともに、「混乱はアサド政権の振る舞いによる」としつつ、「反体制勢力も暴力を停止」するよう呼びかけた。

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トルコ政府は、UNSMISの活動停止に関して、安保理に「人道的な悲劇」を停止するための「新たな措置」を講じるよう求めた。

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イスラエル軍報道官は、イランとヒズブッラーがシリア情勢の実態を把握しているとしたうえで、アサド政権を支援するための努力を続けているが、それは無駄な努力だ、と述べた。

AFP, June 17, 2012、Akhbar al-Sharq, June 17, 2012、al-Hayat, June 18, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 17, 2012, June 18, 2012、Naharnet.com, June 17, 2012、Reuters, June 17, 2012、SANA, June 17, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

UNSMISが「シリア国内での武装暴力の激化」により同監視団の活動を中止すると発表、米ホワイトハウス報道官がシリアの政治的転換に向けた「次なる措置」が考慮されていることを明らかに(2012年6月16日)

UNSMISの動き

UNSMISのロバート・ムード司令官は声明を出し、監視団の活動を中止すると発表した。

声明でムード司令官は「過去10日間でシリア国内の武装暴力が激化し、我々の監視、調査、報告の能力が制限され、国内での対話開始や安定回復のための計画策定への支援ができなくなった」としたうえで、「平和的・移行的解決に向けた両当事者の意志が欠如」していると非難した。

そのうえで「多くの危険が伴うこうした状況下で、UNSMISは活動を停止する。新たな通知があるまでパトロール活動は行わず、本部に留まることなる…。状況が我々に任された任務を実行するに相応しいと判断すれば、活動を再開するだろう」と発表した。

国内の主な動き

シリアの外務在外居住者省はUNSMISの活動停止発表を受け、声明を出し、「監視団の安全を維持する…という(ムード司令官の)決定に理解を示している」としたうえで、これにより「武装テロ集団がアナン特使停戦案署名以降も犯罪行為を続けていることが明らかになった」と主張、シリア政府がアナン特使の停戦案を尊重していると主張した。

またアナン特使の停戦案に基づく危機解消を支持するとの意思を改めて示しつつ、「国連憲章第7章に基づき、実力行使に訴えると脅迫することでその履行をめざす」動きを批判、拒否するとの姿勢を示した。

国内の暴力

ヒムス県では、ヒムス市住民約1,000世帯は、国連、赤十字国際委員会、シリア赤新月社に対して、市内に取り残されている住民、とりわけキリスト教徒の避難を支援するよう呼びかけた。

SANA, June 16, 2012
SANA, June 16, 2012

ヴァチカンのフィディス通信(6月16日付)が伝えた。

『ハヤート』(6月17日付)によると、80万人いたヒムス市住民はすでにそのほとんどが避難し、現在は約400人が取り残されている。

この他、シリア人権監視団によると、ヒムス市に対して軍・治安部隊が攻撃を続け、5人が死亡、ファルハ-ニーヤ村(タルビーサ市近郊)でも砲撃により、5人が死亡した。

一方、SANA(6月16日付)によると、タッルカラフ市郊外のアルムータ村でレバノン領内から潜入を試みた武装テロ集団と当局が交戦し、テロリスト全員を殺害した。

またこれ以外にもクサイル市郊外のジャウラ地方、タッルカラフ市郊外のアズィーズィーヤ、アリーダなど複数カ所で武装テロ集団が潜入を試み、当局がそのうちの6人を殺害した、という。

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ダマスカス郊外県では、SANA(6月16日付)が、軍・治安部隊が住民の協力のもと、シャームの民のヌスラ戦線のリーダーの「右腕」で、ダマスカスでのテロを指揮していたとされるワリード・アフマド・アーイシュを殺害した、と報じた。

シリア人権監視団や地元調整諸委員会によると、軍・治安部隊の攻撃により、ドゥーマー市で7人が殺害された。

また同監視団によると、サクバー市で拷問の跡が残る市民5人の遺体が発見された。

さらにアルバイン市では子供2人を含む4人が砲撃により死亡し、サフナーヤー市郊外では治安部隊の発砲で青年1人が殺害された。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、スィナーイーヤ地区で軍用バスが爆破され、兵士1人が死亡した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ハバブ町近くでの軍・治安部隊との戦闘の直後、反体制武装集団の一つを指揮する離反兵の少尉が殺害された。

一方、SANA(6月16日付)によると、治安維持部隊が武装テロ集団とダルアー市郊外で交戦し、テロリスト2人を殺害した。

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イドリブ県では、SANA(6月16日付)によると、ズーフ地点から潜入を試みた武装テロ集団と当局が交戦し、多数のテロリストを死傷させ、トルコ領内に退却させた。

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アレッポ県では、SANA(6月16日付)によると、ナッカーリーン村にある通信局前で爆弾が仕掛けられた車が爆発した。

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ハマー県では、SANA(6月16日付)によると、カフルズィーター市で自動車爆弾が爆発市、警官1人が死亡した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(6月16日付)によると、ダイル・ザウル市で皮膚科の医師が武装テロ集団に暗殺された。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会など在外の反体制勢力はイスタンブールでの2日にわたる会合を終え、6月末までにアラブ連盟のもと、反体制勢力統一のための会合をカイロで開催することを決定、そのための準備委員会を設置した。

al-Hayat, June 17, 2012
al-Hayat, June 17, 2012

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は『ハヤート』(6月17日付)に対して、「バッシャール・アサドとその一味との対話はない」としたうえで、国連憲章第7章に基づくアナン特使の停戦案の強制を、シリア国民ではなく、国際社会に呼びかけた。

またイランとヒズブッラーに対して「シリア国民の意思を尊重し、シリアの新たな段階に備えるよう」呼びかける一方、「シリア国民の革命を支援」するサウジアラビア、カタールなどの湾岸諸国の姿勢を賞賛した。

アサド政権に関しては、「このような力の行使は…弱さは自己不信を示している」としつつも、「体制打倒の期限を限定することは困難だ」と述べるとともに、「我々はバアス党を根絶するつもりはなく、バアス党を一つの政治勢力とみなしている…。我々は専制の根絶をめざしている」と主張した。

一方、イスタンブールでの会合に関しては、「未来のシリアのための移行期間に関するシリアの反体制勢力のビジョンを体現するような国民文書を通じて各派の立場を統合することが目的であり、それによりシリア国内、近隣諸国、国際社会を安堵させる」と述べた。

自由シリア軍とシリア国民評議会の関係に関しては、「数度にわたり会い、連絡をとりつづけており…、現地での努力を糾合するため大いなる努力をしている」と述べた。

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シリア国民評議会は声明を出し、ヒムス市が「3万人以上」の軍・治安部隊によって包囲され、攻撃を受けており、「大虐殺」の危険があると警鐘を鳴らし、国連に民間人「保護」のための介入を呼びかけた。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会は声明を出し、アサド政権による暴力継続を非難する一方、「外国のアジェンダに従い、非民主的な性格の武装集団が問題を軍事化し、暴力を用いている」と反体制武装集団の活動を批判した。

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アナトリア通信(6月16日付)は、シリア軍の上級士官が離反し、トルコに避難、これによりトルコ国内のシリア軍を離反した上級士官の数は10人に達した、と報じた。

新たに離反した上級士官の氏名などは公表されなかった。

イラクの動き

イラクのターリク・ハーシミー副大統領は滞在先のトルコでフランス24(6月16日付)のインタビューに応え、そのなかでシリアでの住民保護のため力を行使するよう国連に呼びかけた。

また反体制勢力への武器供与に反対するヌーリー・マーリキー首相の姿勢を批判した。

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『クッルナー・シュラカー』(6月16日付)は、PKK系のクルド民族主義政党、民主統一党がイラクに避難したクルド民族主義活動家の「粛清」(暗殺)を行おうとしていると報じた。

レバノンの動き

自由国民潮流代表のミシェル・アウン元国軍司令官は、『サフィール』(6月16日付)に対して、「現下のシリア情勢が我々をそうした戦争(内戦)に陥れることはない…。しかし(シリアの)体制が崩壊すれば、戦争になるだろう」と述べた。

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進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は『シャルク・アウサト』(6月16日付)に対して、「シリアの将来をめぐる対話が大国の手に委ねられている状況下で、域内の政治勢力は何もできないと思う」と述べた。

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国連UNSCOLのロバート・ワトキンス代表は『ナハール』(6月16日付)に対して、シリア情勢が悪化すれば、レバノン政府はシリアと距離を保つ現下の政策を維持できなくなるだろうと述べた。

諸外国の動き

米ホワイトハウス報道官は、シリア政府にアナン特使の停戦案を受諾するよう改めて求めるとともに、「血塗られた長期的な内戦が発生することを回避する」ため、「国際社会のパートナーと、政治的な転換に向かうための次なる措置を協議している」と述べた。

米国防総省高官はCNN(6月16日付)に対して、米国は過去1年半にわたってロシア軍の貨物船によるシリアへの武器、装備の搬入を監視していると述べた。

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EUは、6月17日からタバコ、アルコール飲料、革靴、キャビアなどの奢侈品のシリアへの販売を禁止することを決定した。

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トルコ外務省高官は、トルコ領内のシリア人避難民の数が30,000人に達したと述べた。

AFP, June 16, 2012、Akhbar al-Sharq, June 16, 2012、al-Hayat, June 17, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 16, 2012、al-Nahar, June 16, 2012、Naharnet.com, June 16, 2012、Reuters June 16, 2012、al-Safir, June 16, 2012、SANA, June 16, 2012、al-Sharq al-Awsat, June 16, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

キールー氏を含む在外反体制活動家らがイスタンブールで反体制勢力糾合のための大会を開催、ムードUNSMIS司令官が記者会見のなかで「戦闘により監視団の活動が制限されている」ことを明らかに(2012年6月15日)

国内の暴力

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ブスラー・シャーム市に対する軍・治安部隊の砲撃で8人が死亡した。

一方、SANA(6月15日付)によると、ブスラー・シャーム市のハーリド・ブン・ワリード・モスク前で武装テロ集団がしかけた爆弾2発が爆発し、多数の市民が死傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ハラスター市で、治安部隊が市民1人を射殺した。

またドゥーマー市に対する軍・治安部隊の砲撃が続いた、という。

地元調整諸委員会によると、アルバイン市、ザマルカー町、ザバダーニー市に対しても軍・治安部隊は砲撃を加えた、という。

一方、SANA(6月15日付)によると、ドゥーマー市で治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、テロリスト3人が死亡した。

他方、シリア人権委員会によると、ハムーリーヤ市で刃物で斬殺された遺体9体が発見され、シリア国民評議会は、アサド政権による犯行だと断じた。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、マイダーン地区で爆弾が爆発し、負数名が負傷した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アナダーン市で軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦し、市民1人が死亡した。

またアターリブ市が軍・治安部隊の砲撃を受けたという。

一方、SANA(6月15日付)によると、アレッポ市シャッアール地区で武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、市民2人が死亡した。

また同市内サラーフッディーン地区のサアド・ブン・アビー・ワッカース・モスク近くに武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、複数の市民・治安維持部隊兵士が負傷した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊と反体制武装集団が治安機関施設近くで激しく交戦した。

一方、SANA(6月15日付)によると、武装テロ集団が油田警備員を襲撃し、テロリスト側に多数の死傷者が出た。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がラスタン市を砲撃し、1人が死亡した。

また同市周辺での軍・治安部隊と離反兵の交戦で、前者の士官1人が戦死した。

クサイル市、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区などに対する軍・治安部隊の砲撃も続き、ヒムス市では市民1人が死亡した。

一方、SANA(6月15日付)によると、クサイル市で軍・治安部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト多数を死傷させた。

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ハマー県では、SANA(6月15日付)によると、ハマー市ダウワール・ジャウワーシュ近くで武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、治安維持部隊兵士5人が負傷した。

反体制デモ

ロンドンで活動する反体制組織、シリア人権監視団などによると、金曜礼拝後に各地で反体制デモが行われたが、いずれも散発的・小規模で、参加者も全国で数千人に達したに過ぎなかった。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市サラーフッディーン地区で行われた反体制デモを治安部隊が強制排除、その際市民2人が犠牲になった。

またバーブ市で発生したデモでも、治安部隊による強制排除で複数の市民が負傷した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市内の複数地区で反体制デモが行われ、合計で数千人が街頭に出た。

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ダマスカス県では、ジャウバル区、マッザ区で反体制デモが行われる映像がインターネット上にアップされた。

地元調整委員会は、マッザ区で数十人の若者が反体制デモを行う配信をインターネットで配信した。

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このほか、反体制勢力によると、ダルアー県、ダイル・ザウル県、イドリブ県(マアッラト・ヌウマーン市)などでもデモが発生した。

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フェイスブックなどでは、反体制勢力が「全体召集への万全の準備の金曜日」と銘打って、反体制デモ(武装闘争)を呼びかけていた。

反体制勢力の動き

在外の反体制活動家がトルコのイスタンブールで2日間(15~16日)予定で、反体制勢力糾合のための大会を開催した。

大会には、シリア国民評議会の代表、シリア・クルド国民評議会の代表、ナウワーフ・バシール氏が率いる部族代表、ミシェル・キールー氏(シリア民主フォーラム)らが出席したが、国内で活動する組織は参加しなかった。

またエリク・シュヴァリエ駐シリア・フランス大使ら、西側諸国(米、独、仏、イタリア)、トルコ、サウジアラビア、カタール、UAEの外交官も大会に出席した。

諸外国の動き

UNSMISのロバート・ムード司令官がダマスカスで記者会見し、軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘により、監視団の活動が制限されていると述べた。

ムード司令官は「現下の暴力の激化は我々の監視、調査、報告の任務遂行能力を阻害し、当事者間の対話開始や安定の保障に向けた支援能力を制限している」としたうえで、「過去10日間で暴力は激しさを増した。これは両当事者が互いに損害を与えようとしたためであり、そのことが我々監視団を危険にさらしている…。平和的な転換への意志が欠けている」と非難した。

また当事者間の共存が困難になっていると指摘しつつ、「宗派主義的内戦」が発生しているとの見方を否定した。

そのうえで、「アナン特使の停戦案は、それを受諾したシリアの当事者と国際社会にとっての財産であり…、今のところオルターナティブはない…。重要なのは、すべての当事者に機会が与えられ、国際社会が任務実現のための役割を果たすことだ」と述べた。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は記者会見で、アサド大統領退任後のシリアの政治変動について西側と協議していることを否定した。

ラブロフ外務大臣は「今日、ビクトリア・ヌーランド米国務省報道官が、米国はロシアとバッシャール・アサド退任後の政治的変化について検討していると述べたと(いう記事を)読んだ…。もしこの発言が事実なら、それは正しくない。このような対話は開かれていないし、開くこともできない。こうしたことは我々の姿勢と根本的に矛盾している…。我々は安保理での体制転換や政治的陰謀には与しない」と述べた。

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ロシア外務省は声明を出し、シリア政府に攻撃用ヘリコプターを新たに供与した、とのヒラリー・クリントン米国務長官の指摘を否定しつつ、「数年前」にシリアに供与した航空機の修理を行ったことを明らかにした。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、フランス・インター・ラジオ(6月15日付)で、ロシアとの間でアサド大統領退任をめぐって対話がなされている、と述べた。

ファビウス外務大臣は「ロシアの高官らは現在、アサド個人に固執しておらず、彼が暴君、殺人者で、彼を支持し続けることで立場が弱まることを知っている…。しかし、彼らはアサド退任後に誰が政権を担うかに神経質になっており、この点をめぐって対話がなされている」と述べた。

また「紛争の別の解決策として、反体制勢力の明確な勝利がある」としたうえで、「アナン特使のイニシアチブと並行して、我々は米国と同じように、武器ではなく通信機器を反体制勢力に供与することを検討している」と述べた。

さらにアナン特使の提案に沿って、6月30日にジュネーブでロシアなどを含めたかたちで連絡グループ会合が開かれる見込みだと述べた。

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ヒューマン・ライツ・ウォッチ(6月15日付)は、シリア軍が反体制抗議運動で逮捕した女性らをレイプしているとのレポートを発表した。

http://www.hrw.org/news/2012/06/15/syria-sexual-assault-detention

AFP, June 15, 2012、Akhbar al-Sharq, June 15, 2012、al-Hayat, June 16, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 15, 2012、Naharnet.com, June 15,
2012、Reuters, June 15, 2012、SANA, June 15, 2012などをもとに作成。

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ダマスカス郊外県で自爆テロが発生しシーア派の聖廟が被害を受ける、トルコ紙によると「同国国民の大多数がシリア内政に干渉を続ける与党の政策に反対」(2012年6月14日)

国内の暴力

SANA(6月14日付)は、ダマスカス郊外県サイイダ・ザイナブ町で自爆テロが発生し、14人が負傷したと報じた。

ダマスカス郊外県警察筋によると、このテロは同市内の野外駐車場で発生、自爆犯が爆弾を積んだ車を用いて犯行に及んだ、という。

シリア人権監視団によると、この自爆テロにより、治安機関の施設の一つが標的となり、同施設とサイイダ・ザイナブ廟が被害を受けた、という。

またAFP(6月15日付)によると、爆発現場は、シーア派の聖地の廟・礼拝所、イマーム・サドル病院、治安機関の施設2棟などが近くにあり、爆発により、廟・礼拝所のガラスが割れるなどの被害を受けたほか、隣接する商店なども被害を受けた。

UNSMISがハッファ地方に入り、現地の破壊状況を視察した。

8人の監視団に同行したロイター通信、AFPの記者らによると、市街地には通行人はなく、破壊された車などが散乱し、建物の壁には焦げ跡が見られた。

このほかSANA(6月14日付)によると、治安当局がドゥーマー市で住民の協力のもと、多数のテロリストを拘束した。その際、治安維持部隊兵士3人が犠牲となった。

一方、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市で軍・治安部隊の発砲により、市民1人が殺害された。

SANA, June 14, 2012
SANA, June 14, 2012
SANA, June 14, 2012
SANA, June 14, 2012

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市での軍・治安部隊と離反兵の交戦で、離反兵1人、反体制武装活動家2人を含む10人が死亡した。

またハーリド・ブン・ワリード旅団(自由シリア軍)司令官のアフマド・バフブーフ少佐によると、ラスタン市での軍・治安部隊との交戦で、離反兵2人が殺害された。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ラジャート地方で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

またダルアー市に対する軍・治安部隊の攻撃で市民5人が死亡した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊とアブー・アラマイン大隊(離反兵)が交戦し、前者の兵士3人(うち少佐1人)が死亡した。

またヒヤーリーン町では少女が治安部隊の発砲で死亡した。

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イドリブ県では、SANA(6月14日付)によると、イドリブ市郊外で治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、多数が死傷した。

またザーウィヤ山でも両者が交戦し、テロリスト多数が死傷、逮捕された。

一方、シリア人権監視団によると、イドリブ市の軍・治安部隊の検問所を狙った爆弾攻撃が発生し、兵士1人が死亡した。

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ラタキア県では、SANA(6月14日付)によると、ハッファ地方で武装テロ集団が保有していた大量の武器・弾薬を関係当局が発見・押収した。

押収された武器のなかには、迫撃砲、RPG、ロケット弾、爆弾、爆薬などが含まれていた。

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ダイル・ザウル県では、反体制筋によると、軍・治安部隊がダイル・ザウル市に対して砲撃を加え、少なくとも11人が死亡し、約200人が負傷した。

同消息筋によると、この砲撃に先立って13日、兵士約200人が同市に突入していた。

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SANA(6月14日付)は、シャームの民のヌスラ戦線のメンバー、ムハンマド・フサーム・サダーキー容疑者を逮捕した、と報じた。

SANA, June 14, 2012
SANA, June 14, 2012

サダーキー容疑者は、6月15日(金曜日)、ダマスカス県内のリファーイー・モスクなどで複数のメンバーと同時自爆テロを試みようとしていたと自白している、という。

反体制勢力の動き

シリア人権監視団は、2011年3月以降の死者数が14,476人に達していると発表した。

同監視団によるとこのうち、10,117人が民間人、3,552人が軍・治安部隊兵士、807人が離反兵で、5月13日から6月13日までの過去1ヵ月の死者数は2,302人にのぼる、という。

諸外国の動き

トルコ日刊紙『ヒュッリイェト』(6月14日付)は、最近実施された二つの世論調査の結果、トルコ国民の大多数がシリア内政に干渉を続けるAKPの政策に反対している、と報じた。

第1の世論調査では、67.5%がシリアの危機への平和的な政治・外交活動を支持、21%が軍事介入に反対、88.5%がトルコの直接介入に反対した。

またシリア領内での安全地帯の設置を支持したのは6.5%、トルコの軍事介入を支持したのは1.5%、シリアの反体制勢力への武器供与を支持したのは3.5%に過ぎなかった。

第2の世論調査では、60.2%がシリア情勢への介入に反対し、15.9%が間接的な政治・外交活動で充分だと回答した。

安全保障地対設置を支持したのは15.9%、反体制勢力への武器供与を支持したのは7.9%だった。

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英国外務省は声明を出し、ウィリアム・ヘイグ外務大臣が訪問先のカブールでロシア、イランの外相と会談し、両国に対してシリアでの紛争を終わらせるため影響力を行使するよう求めるとともに、ロシアが提案する国際会議に関しては、原則歓迎するとしつつ、イランの参加を「不可能」と拒否した。

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フランスのフランソワ・オランド大統領とイタリアのマリオ・モンティ首相は、ローマでの合同記者会見で、シリア情勢に関して「現下の暴力は受け入れられず、もっとも激しく非難されるべき」と述べた。

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ヴァチカンのフィディス通信(6月14日付)は、反体制武装集団がキリスト教徒を標的にしているとの一部メディアの報道を駐シリア・ヴァチカン大使が否定したと報じた。

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アムネスティ・インターナショナルは、軍や民兵(シャッビーハ)が「国益を守るとの名のもとに反体制勢力を支援した集団への復習を行う」など「人道に対する罪」を犯していることを示す新たな証拠を報告書にまとめ、発表した。

http://www.amnesty.org/en/library/asset/MDE24/041/2012/en/2a11c167-c2b9-4936-8961-6ceb379d6d46/mde240412012en.html

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クウェートの国会議員12人と前大臣は、サウジアラビアのアブドゥッラー国王に対して、シリア国民をジェノサイドから救済するよう書簡で呼びかけた。

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ロシア議会下院のアレクセイ・プシュコブ外交関係委員会委員長は、西側記者団に対して、「西側にはシリアに関して何ら政策を持っていない。ロシアの姿勢はあなたたちに寄与している。あなたたちはロシアを非難することで、自分たちがこの危機を解決することが妨げられていると言い訳できる」と述べた。

AFP, June 14, 2012、Akhbar al-Sharq, June 14, 2012, June 15, 2012、al-Hayat, June 15, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 14, 2012、Naharnet.com, June 14,
2012、Reuters, June 14, 2012、SANA, June 14, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ハッファ地方から「海岸地方の自由シリア軍」が撤退し軍・治安部隊により「安全と平静が回復」される、アサド政権やシリア革命総合委員会といった当事者が「シリアが内戦状態にある」との見解を否定(2012年6月13日)

SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012

ハッファ地方制圧

ラタキア県では、「海岸地方の自由シリア軍」は声明を出し、戦闘員数百人を展開させてきたハッファ地方から撤退(退却)したと発表した。

アブドゥルアズィーズ・カナアーン大佐が署名した同声明において、自由シリア軍は「我々はハッファ市および同市農村の全軍に対して、組織的撤退と、負傷者、戦死者、女性、子供、戦闘員の非難を命じた…。撤退は(作戦の)成功によるもので、我々はあなた方に次の行軍を約束する」と述べ、多数の軍兵士を殺害したことを戦果として鼓舞した。

SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012

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駐英反体制組織のシリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長は、AFP(6月13日付)に対して、ハッファ地方の活動家から電話で、撤退の連絡を受けたと述べうえで、「撤退は住民の安全を保障し、彼らを保護するための技術的なもので…。戦闘員の撤退後に正規軍が同地域に突入した」と弁明した。

またロイター通信(6月13日付)は、ラタキア市の反体制活動家サリーム・ウマル氏の話として、反体制武装集団が軍の砲撃に曝され、ハッファ地方から撤退したと報じた。

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これに対して、SANA(6月13日付)などは、軍・治安維持部隊はハッファ地方の武装テロ集団の「掃討」を完了し、「安全と平静を回復した」と大々的に報じた。

同通信社によると、この掃討作戦により、同地方は甚大な被害を受け、多くの兵士が死傷した。

現在、関係当局が周辺の村々に逃走したテロリストの残党を追跡している、という。

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『ハヤート』(6月14日付)は、ハッファ地方からトルコのハタイ県(シリア領アレキサンドレッタ地方)に撤退(敗走)した反体制武装集団の複数の戦闘員の証言を報じた。

それによると、軍・治安部隊はヘリコプター、戦車を投入し、ハッファ地方を攻撃し、若者らを拘束、略奪を行ったという。

SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012

また、ハタイ県には少なくとも50人の負傷者がトルコに敗走し、残りの戦闘員は軍に包囲されていた、という。

負傷した戦闘員の多くは、ハタイ県の病院で治療を受けている。

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外務在外居住者省高官によると、ハッファ地方制圧後、UNSMISが同地方に入り、被害現場を視察した。

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その他国内での主な暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、カッバーニーヤ村(クルド山)でラタキア市南ラムル地区出身の市民2人が殺害された。

国内の動き

アサド大統領はPFPL-GCのアフマド・ジブリ-ル書記長とダマスカスで会談した。

SANA(6月13日付)によると、会談でアサド大統領は、「シリアを標的とした残忍な行為が激化しようと、パレスチナ問題はシリア国民と結びつきつづけるだろう」と述べた。

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SANA(6月13日付)によると、シリア外務省は「シリアは内戦ではなく、テロの悲劇を根絶するための闘争を行っている…。内戦について言及することは…現実に合致せず、シリア国民の方針と矛盾する」との声明を出し、「(シリアは内戦だと)言うことができると思う」との国連平和維持活動局(DPKO)のエルベ・ラドゥス局長の発言に反論した。

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SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012

国内で反政府活動を行う平和的変革諸勢力はダマスカスで発足大会を開き、外国の軍事介入を拒否する一方、危機打開のため対話の原則に依拠する、との基本方針を確認した。

また「平和的な政治解決に至るためのあらゆる方法を受け入れる」との意思を表明した。

平和的変革諸勢力は、人民意思党、シリア民族社会党インティファーダ派、シリアのための第三潮流、平和的変革の道潮流、マルクス民主連合、国民行動潮流、そしてダイル・ザウル県およびラタキア県の人民運動諸委員会などからなる。

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SANA(6月13日付)は、アレッポ市のアレッポ大学前で学生が外国の介入拒否、改革支持を訴える集会を行った、と報じた。

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ロイター通信(6月13日付)は、ダマスカスの銀行家4人の話として、最近、ロシアで印刷された新紙幣の流通がダマスカス県とアレッポ市で実験的に始まった、と報じた。

新紙幣は現行のシリア・ポンドとの交換はできず、公務員の給与支払いなどを保証するためのものだという。

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SANA, June 13, 2012
SANA, June 13, 2012

アサド大統領にメディア対策などをアドバイスしていると西側メディアで報じられてきたシャハルザード・ジャアファリー女史(バッシャール・ジャアファリー国連大使の娘)は『デイリー・テレグラフ』(6月15日付)のインタビューに応じ、「大統領の顧問でも助手でもない」と否定、報道が誇張で、自身がスケープゴートにされていると語った。

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/9330209/Syrian-aide-insists-she-only-did-what-any-ambitious-American-girl-would-do.html

反体制勢力の動き

シリア革命総合委員会は声明を出し、シリア情勢を「内戦」と形容することを「平和的な革命…という現状とシリア国民の意思を表現していない」とし、拒否する意思を示した。

Kull-na Shurakāʼ, June 13, 2012
Kull-na Shurakāʼ, June 13, 2012
Kull-na Shurakāʼ, June 13, 2012
Kull-na Shurakāʼ, June 13, 2012

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『クッルナー・シュラカー』(6月13日付)によると、若者「シリア民族社会運動体」が声明を出し、シリア民族社会党イサーム・マハーイリー派の指導を拒否するとともに、「抑圧的な体制を拒否」し、「国民の権利と自由のための…革命」を支持すると発表した。

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シリア民主フォーラム、シリア国民ブロック、シリア・クルド国民評議会が声明を出し、反体制勢力統合のための常設調整合同委員会を設置するとのワーキングペーパーを発表した。

レバノンの動き

AFP(6月13日付)は、シリア軍がベカーア県バアルベック郡カーア地方に越境し、同地に地雷を敷設した、と報じた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は訪問先のイランでの記者会見で、シリアへの防空システムの供与が「国際法に何ら抵触していない」としたうえで、「米国が反体制勢力に行っていることは、シリア政府に対抗するための兵器の増強だ」と述べ、米国の姿勢を非難した、とイラン筋が報じた。

その後、ロシア外務省はこの報道に関して、「ペルシャ語の翻訳の誤り」としたうえで、「我々は米国とは異なり…シリアを含むいかなる国に対しても、平和デモに対峙するために利用できるいかなるものも供与していない」と訂正した。

またロシアの武器輸出公社の報道官は、SANA(6月13日付)などに声明を出し、「安保理の条件やそのほかの国際的合意に反するかたちで国外に武器・装備を提供していない」と発表した。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は、7月20日に任期が終了するUNSMISに関して、「その日までに顕著な動きがなければ、現地での監視活動の危険が増している任務の延長はきわめて困難だろう」と述べた。

米国防総省のジョン・カービー報道官は、ロシア側の主張に対して、「我々はシリアの反体制勢力に武器を供与していないし、今後も供与しない」と反論した。

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フランスのロラン・ファビウス外務大臣は、記者会見で、国連憲章第7章に依拠してアナン特使の停戦案のアサド政権に迫るとの意思を表明した。

またアサド政権を「血と殺戮の体制」と形容し、その高官や支持者への制裁強化の意思を示した。

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中国外交部報道官は、「シリア情勢の進展に激しい懸念を感じる」と述べ、同国情勢が「臨界点」に達しつつあると警鐘をならした。

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NATOのアナス・フォー・ラスムセン事務局長は訪問先のオーストラリアでシリアへの軍事介入に関して「正しい方法ではないだろう」と述べ、改めて拒否の姿勢を示しつつ、シリア情勢や国連安保理の対応に遺憾の意を示した。

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英国のアリスター・バート中東問題担当大臣は、訪問先のバーレーンで『ハヤート』(6月14日付)に対して、ロシアが提唱している国際会議に関して、アサド政権を支援するイランが参加することは相応しくないとの見解を示した。

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イスラエル副首相はシリア情勢に関して、「現段階において、化学兵器はシリア政府の管理下にあるが、アル=カーイダがおり、我々は事態を注視している」と述べた。

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トルコ外務省は、過去48時間で2,000人のシリア人がトルコ領内に避難したと発表した。

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スイスの平和団体は同国議会に対して、軍離反者全員の亡命を認めるよう求めた。

AFP, June 13, 2012、Akhbar al-Sharq, June 13, 2012, June 14, 2012、AKI, June 13, 2012、The Daily Telegraph, June 13, 2012、al-Hayat, June 14, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 13, 2012, June 19, 2012、Naharnet.com, June 13, 2012、Reuters AFP, June 13, 2012、SANA, June 13, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

軍が「数百人」の反体制戦闘員が活動するラタキア県ハッファ地方に対する砲撃を継続するなか、国連平和維持活動局局長が「シリアが現在内戦状態にある」との見解を示す(2012年6月12日)

ハッファ地方の動き

反体制武装集団が展開するハッファ地方では軍による砲撃が続き、SANA(6月12日付)によると、破壊行為を続ける武装テロ集団に対する関係当局の逮捕・追跡が行われ、多数のテロリストを殺害した。

また関係当局側も2人が犠牲となった。

SANA, June 12, 2012
SANA, June 12, 2012

またロイター通信(6月12日付)は、複数の反体制活動家が、ハッファ地方で包囲されている市民を避難させるために戦っていると語ったと報じた。

同活動家らによると、ハッファ地方では数百人の戦闘員が戦闘に参加している、という。

UNSMISのサウサン・ゴーシェ報道官は、ハッファ市に近づこうとしたUNSMISの監視団に対して、村人が怒りの抗議を行い、車を取り囲み、進路を塞ぎ、投石などを受けたと発表した。

ゴーシェ報道官は、イドリブ県へ立ち去る際にハッファ地方から炎が3本立ち上がっていたが、その原因は分からない、という。

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一方、シリア・アラブ・テレビ(6月11日付)やSANA(6月11日付)は、ラタキア市郊外の住民が村を通過しようとしたUNSMISに武装テロ集団から受けた被害を訴えようとしたが、UNSMISは彼らに耳を傾けず、監視団の車が市民3人をはね、2人が重傷を負った、との証言を報じた。

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シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、「政権を支持するシール村の住民がハッファ市に至る街道に横たわり、UNSMISの車輌と通行を阻止し、「人間の壁」で監視団は進路を妨げられ、迂回路に引き返すことを余儀なくされた」。

SANA, June 12, 2012
SANA, June 12, 2012

アブー・ムハンマドを名のるラタキアの反体制活動家はAFP(6月12日付)に対して、シール村の住民がUNSMISに投石した、と証言した。

またアブー・ムハンマド氏は、軍治安部隊による激しい砲撃のなか、「自由シリア軍はハッファを防衛しているが、人的被害は甚大だ」としたうえで、住民は激しい砲撃により避難さえできないと述べた。

その他の国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区で軍・治安部隊が砲撃を加えた。

アブー・ビラールを名のる反体制活動家はAFP(6月12日付)に対して、ヒムス市の状況を「恐ろしく悲惨」で、「女性、子供を含む400人の市民がジャウラト・シヤーフ地区の学校に閉じ込められている」ことを明らかにしたうえで、旧市街には「戦闘員はいない」にもかかわらず、「砲撃に曝されている」と述べた。

クサイル地方では、シリア人権監視団によると、市民3人が治安部隊によって射殺された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、未明にダイル・ザウル市で軍・治安部隊の砲撃で子供を含む市民10人が死亡した。

またブーカマール市では政治治安部の要員が何者かに暗殺された。

一方、SANA(6月12日付)によると、ダイル・ザウル市内にあるテロリストの自宅で製造中の爆発物が爆発し、4人が死亡した。

**

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、フライターン市で軍・治安部隊が砲撃した。

地元調整諸委員会によると、多数の家屋が破壊されたという。

SANA(6月12日付)によると、フライターン市などアレッポ郊外で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、多数のテロリストを殺害、治安を回復した。

テロリストのなかにはアラブ諸国の国籍を持つ外国人が複数含まれていたという。

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ダマスカス郊外県では、SANA(6月12日付)によると、ドゥーマー市で武装テロ集団が運搬していた爆弾が爆発し、テロリスト2人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市近郊で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

国内の動き

SANA(6月12日付)は、シリア外務省高官筋の話として、11日の米国務省報道官の発言などに代表される最近の一連の過激な発言を通じて、米国はシリアへのあからさまな内政干渉を行うとともに、武装テロ集団を公然と支持している、と批判した。

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DP-News(6月12日付)は、2011年2月と2012年2月のシリアへの出入国者数を比較、シリアからの出国者数が19.9%減少、シリアへの入国者数が29.5%減少、外国人観光客数が79.7%減少したと報じた。

**

ダマスカス郊外県のダイル・マール・ムーサー修道院のパウロ・ダロリオ修道長(イエズス会)は声明を出し、シリアでの現状をテロ撲滅と位置づけようとするカトリック系など一部メディアの報道内容に抗議の意を示すとともに、シリア政府と司教区の圧力によりシリアを去ることになるだろうと発表した。

パウロ修道士は、ヒムス県クサイル地方で武装集団に誘拐されたキリスト教徒の釈放や、キリスト教徒避難民の救援、イスラーム教徒とキリスト教徒の対話などを推奨する一方、弾圧による犠牲者に哀悼の意を示してきた。

反体制勢力の動き

ヒムス県ガントゥー市での空軍ミサイル大隊の小規模離反と、反体制武装集団による同大隊本部に関して、ロイター通信(6月12日付)は、複数の反体制活動家の話として、機関銃や弾薬は確保できたが、軍・治安部隊の砲撃により、本部からの退却を余儀なくされ、地対空ミサイルは確保できなかったと報じた。

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シリア国民評議会は声明を出し、アナン特使に対して停戦案が頓挫したことを宣言するよう求めるとともに、国際社会に対して民間人保護のためUNSMISの権能強化を呼びかけた。

レバノンの動き

『サフィール』(6月12日付)は、パリ在住のシリア人反体制活動家(匿名)の話として、アレッポでレバノン人巡礼者11人を誘拐した集団は、身代金を一人あたり30万ドルから400万ドルに引き上げたと報じた。

身代金はヒズブッラーと人質の家族に対して要求されている。

**

北部県アッカール郡ワーディ・ハーリド地方で拘束され、シリア領内に連行されていたスライマーン・アフマド氏が村に帰還し、多数の住民の出迎えを受けた。

武装集団に拘束されていたアラウィー派4人も釈放された。

諸外国の動き

国連平和維持活動局(DPKO)のエルベ・ラドゥス局長は「シリアは現在内戦状態か」との記者団の問いに「そういうことができると思う…。ダマスカスの政府が領内の広範な地域で支配を失っており…、その回復を試みているというのが現状だということは明らかだ」と述べた。

**

ヒラリー・クリントン米国務長官は、ロシアの攻撃ヘリコプターがシリアに投入され、アサド政権の弾圧に利用されるとの情報を得ていると述べ、懸念を表明した。

**

米国務省のジョン・カービー報道官は、シリアに新たなヘリコプターが供与されたとの情報はないと述べ、ヒラリー・クリントン米国務長官の発言を否定した。

しかし同報道官は、シリア政府が攻撃用ヘリコプターを弾圧に利用しようとしていると述べた。

**

『サフィール』(6月13日付)によると、国連のデレク・ピランビー特使はレバノンを訪問し、シリア情勢に関して、「レバノンの軍および当局はシリアへの武器の流入を止める努力を実行している」と述べ、レバノンからの武器の密輸が好ましくないとの見方を示した。

AFP, June 12, 2012、Akhbar al-Sharq, June 12, 2012, June 13, 2012、AKI, June 12, 2012、DP-News.com, June 12, 2012、al-Hayat, June 12, 2012、June 13, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 12, 2012、Naharnet.com,
June 12, 2012、Reuters, June 12, 2012、SANA, June 12, 2012、al-Safir, June 12, 2012, June 13, 2012、UPI, June 12, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア国民評議会がハッファ地方、ヒムス県各都市などでの軍・治安部隊の砲撃を非難、仏外相が同評議会のスィーダー新事務局長に対し「全面支援」する意向を伝える(2012年6月11日のシリア情勢

国内の暴力

ラタキア県では、シリア人権監視団などによると、反体制武装集団が潜伏するハッファ地方への軍・治安部隊の攻撃が続いた。

SANA, June 11, 2012
SANA, June 11, 2012

同地域の住民約30,000人はそのほとんどが既に避難し、「離反兵と武装した市民が残る」だけだという。

一方、SANA(6月11日付)によると、アフバーリーヤ・チャンネルの特派員とカメラマンが武装テロ集団の発砲を受け負傷し、ラタキアの国立病院に搬送された。

また治安維持部隊がサルマー町で武装テロ集団の攻撃を受けたが、応戦し、テロリスト多数を殺害した。

**

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ガーブ平原で反体制武装集団の戦闘員3人が殺害され、また別の地域でも民間人8人が殺害された。

またイドリブ市では、治安維持部隊を標的とした爆弾攻撃が行われ、民間人8人と兵士7人が犠牲となった。

ジスル・シュグール地方のダルクーシュ町近郊のタッル・ザハブでも、軍・治安部隊兵士6人が爆弾攻撃を受けて死亡した。

一方、SANA(6月11日付)によると、ザーウィヤ山など各地で、村々の市民と治安維持部隊が武装テロ集団の襲撃を受けたが、治安維持部隊は住民の支援のもと応戦し、テロリスト数十人を殺害した。

また同報道によると、ユーヌスィーヤの森林への武装テロ集団の砲火により発生したとされる火災を消防隊が鎮火した。

反体制勢力はこの火災が軍・治安部隊によってトルコからの戦闘員の潜伏経路や避難民の避難経路を絶つための焼き討ちの結果だと主張している。

**

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団が籠城するラスタン市で軍・治安部隊が砲撃を加え、子供1人を含む4人が死亡した。

またヒムス市のジャウラト・シヤーフ地区に対しても軍・治安部隊が砲撃を加え、ハーリディーヤ地区などでは軍・治安部隊が突入し、1人が死亡した。

さらにクサイル市、東ブワイダ村でも2人が死亡した。

一方、SANA(6月11日付)によると、ラスタン市で軍・治安部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト全員を殺害した。

またタッルカラフ地方では、レバノン領内からの潜入を試みた武装テロ集団を国境警備隊が拘束した。

なおUNSMIS報道官によると、ラスタン市、タルビーサ市で軍・治安部隊が迫撃砲、ヘリコプターを投入し、大規模な掃討作戦を行ったという。

**

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、アシャーラ市で離反兵5人が軍・治安部隊の砲撃を受け死亡した。

また同市では軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦し、前者の兵士6人が犠牲となった。

一方、SANA(6月11日付)によると、ザバーリー村・サアルー村間でユーフラテス石油社のガス・パイプラインを武装テロ集団が爆破した。

またダイル・ザウル市では武装テロ集団が運搬していた爆弾が爆発し、テロリスト5人が死亡した。

他方、シリア人権委員会によると、ダイル・ザウル市内で治安当局に押収された政治犯の車が爆発し、車の持ち主で身柄拘束中だった政治犯が死亡、遺体が家族に引き渡された。

**

ハマー県では、シリア人権監視団によると、ガーブ平原のカストゥーン地方、シャーグーリート地方、ラッジュ地方で軍・治安部隊の掃討作戦により、民間人3人と兵士1人が死亡した。

またハマー市でも、軍・治安部隊の発砲により1人が死亡した。

**

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市で民間人1人が射殺された。

またダーライヤー市のバアス党幹部が何者かによって未明に暗殺された。

一方、SANA(6月11日付)によると、ドゥーマー市郊外で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト全員を殺害した。

治安維持部隊の兵士1人も死亡した。

またジャルマーナー市近郊で700キロの爆弾を積載した車が取り押さえられた。

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SANA, June 11, 2012
SANA, June 11, 2012

ダマスカス県では、SANA(6月11日付)などによると、武装テロ集団がバルザ区で車の下に仕掛けた爆弾が2カ所で爆発し、軍兵士1人が死亡、民間人2人が負傷した。

一方、『クッルナー・シュラカー』(6月11日付)によると、治安当局はマッザ区とカフルスーサ区の果樹園を焼き討った。

マッザ区調整の活動家によると、この焼き討ちは、反体制武装集団が果樹園に隠れて軍・治安部隊に対する攻撃を行ったことに対処するためだという。

また『クッルナー・シュラカー』(6月11日付)によると、軍事情報局次長のアリー・ユーヌス少将といとこがマサーキン地区で暗殺未遂に遭ったと報じた。

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スワイダー県では、『クッルナー・シュラカー』(6月12日付)によると、シャフバー市で反体制デモが発生した。

また、ダーマー村で軍・治安部隊と自由シリア軍のウマリー大隊が激しく交戦した。

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シリア人権監視団によると、軍兵士23人、民間人44人、離反兵7人が各地で死亡した、という。

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SANA(6月11日付)によると、イスラエルが占領するシリア領ゴラン高原で大規模な火災が発生した。

クナイトラ県のフサイン・アルヌース知事は、この火災をイスラエルの放火と断じた。

国内の主な動き

バアス党シリア地域指導部の複数の消息筋によると、バアス青年前衛機構が、各支部に向けて、若者を教化するための「サマー・キャンプ」の実施を例年通り呼びかけた。

SANA, June 11, 2012
SANA, June 11, 2012

『クッルナー・シュラカー』(6月11日付)が報じた。

反体制勢力の動き

自由シリア軍国内合同司令部(カースィム・サアドッディーン大佐)は三つの声明を発表し、ヒムス県での戦果を鼓舞した。

第1の声明では、ヒムス県各地で軍の装甲車4輌、戦車6輌(T-62)などを破壊したと発表された。

第2の声明では、10日に離反した第72防空旅団が、ウンム・サフル村のミサイル大隊を制圧したと発表された。

第3の声明では、第72防空旅団がガントゥー市に駐留するミサイル大隊を制圧したと発表された。

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自由シリア軍のアブドゥッラー・バフブーフ大尉は、ユーチューブ(6月11日付)を通じて、制圧したヒムス県クサイル軍ガントゥー市のミサイル大隊本部の映像を発信した。

http://www.youtube.com/watch?v=zJQb6HIi0ds

 

Youtube, June 11, 2012
Youtube, June 11, 2012
Youtube, June 11, 2012
Youtube, June 11, 2012

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トルコで避難生活を送り、自由シリア軍司令官を名のるリヤード・アスアド大佐は、サウジ日刊紙『ワタン』(6月11日付)に対して、自由シリア軍にはアル=カーイダ戦闘員や外国人は含まれていないと断じた。

国内で反体制活動を行う自由シリア軍国内合同司令部は、トルコで活動するアスアド大佐らの指導を拒否している。

**

シリア国民評議会は声明を出し、ハッファ地方、ヒムス県各都市などでの軍・治安部隊の砲撃に関して、「宗派主義に基づいて住民の強制退去政策を断行している」と非難した。

レバノンの動き

NNA(6月11日付)によると、北部県アッカール郡ワーディ・ハーリド地方で拘束され、シリア領内に連行されていたスライマーン・アフマド氏が釈放され、レバノン・シリア最高会議に身柄を引き渡された。

Naharnet.com, June 11, 2012
Naharnet.com, June 11, 2012

これに先だって、ワーディ・ハーリド地方の住民は、身柄拘束していたヒクマト・ユースフ氏(アラウィー派)を釈放した。

**

国民対話会合が開催され、シリア情勢に関して、国境地帯における緩衝地帯設置と、シリアへの武器密輸の経路としてのレバノン領の使用を拒否する閉幕声明を発表した。

国民対話会合はミシェル・スライマーン大統領の呼びかけのもと、3月14日勢力、3月8日勢力の指導者が出席して開催された。

しかしレバノン軍団のサミール・ジャアジャア代表、ムスタクバル潮流のサアド・ハリーリー元首相は会合をボイコットした。

諸外国の動き

米国務省のビクトリア・ヌーランド報道官は、「シリア国内で政府が今度はハッファ市で別の虐殺を行おうとしているとの報告があることを大いに懸念している」と述べた。

**

レオン・パネッタ米国防長官は、シリアの悲惨で複雑な状況を解決するには、「奇跡の治療法」が必要だと述べた。

**

アナン特使付の報道官アフマド・ファウズィー氏はジュネーブで声明を出し、ハッファ市やヒムス市への軍・治安部隊と反体制武装集団との交戦に関して、「両市で多数の民間人が包囲されている兆候がある」と述べ、懸念を表明した。

**

フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー新事務局長と電話会談し、「全面支援」するとの意思を伝えた。

**

国連は、「子供と武力紛争に関する年次報告」を公表し、軍・治安部隊、シャッビーハ、自由シリア軍などが子供を戦闘員として動員し、「人間の盾」として利用していると指摘し、シリア軍とシャッビーハをいわゆる「不名誉のリスト」(List of Shame)に加えた。

同報告書(”Children and Armed Conflict: Report of the Secretary-General” (A/66/782-S/2012/261、2012年4月26日付)のシリアに関する指摘は以下の通り:

1. 子供の犠牲者のほとんどは、政府軍、自由シリア軍、治安部隊、シャッビーハの軍事作戦によるもので、恣意的逮捕、拘束、拷問、強姦、「人間の盾」として利用されている。
2. 政府軍は、自由シリア軍や反体制武装集団が占拠する村で暮らす子供ら市民を標的としている。
3. 政府軍が18歳以下の子供を徴兵している証拠はないが、自由シリア軍やシャッビーハには子供(8歳から10代前半の子供)を動員し、人間の盾として利用されているとの報告がある。

以下報告書抜粋。

Syrian Arab Republic

119. The United Nations has received reports of grave violations against
children in the Syrian Arab Republic since March 2011 and throughout the
reporting period, continuing into 2012. In response to the need for United
Nations verified information, my Special Representative for Children and
Armed Conflict sent a technical mission to the region to conduct interviews
with victims and witnesses in refugee camps, villages and hospitals in
the region in March 2012. In almost all recorded cases, children were among
the victims of military operations by Government forces, including the
Syrian Armed Forces, the intelligence forces and the Shabbiha militia,
in their ongoing conflict with the opposition, including the Free Syrian
Army (FSA). Children as young as 9 years of age were victims of killing
and maiming, arbitrary arrest, detention, torture and ill-treatment, including
sexual violence, and use as human shields. Schools have been regularly
raided and used as military bases and detention centres. Information obtained
by the technical mission is in line with the findings of the independent
international commission of inquiry on the Syrian Arab Republic.

120. Interviews with former members of the Syrian Armed Forces and the
intelligence forces indicated that civilians, including children, were
targeted by Government forces if they were residing in villages where members
of FSA or other armed opposition groups were believed to be present or
where deserters were hiding, or if they were seen fleeing the country seeking
refuge. In one instance, a former member of the Syrian Armed Forces stated
that, during protests in Tall Kalakh in December 2011, he was given an
order by his commander to shoot without distinction, although the soldiers
were aware that there were women and children among the protesters. During
the armed break-up of the demonstrations, the witness saw three girls between
approximately 10 and 13 years of age who had been killed by the Syrian
Armed Forces. In another similar incident in Aleppo in the fourth quarter
of 2011, a former member of the intelligence forces witnessed the killing
of five children in a secondary school during demonstrations.

121. The grave violations continued into 2012 and although this is beyond
the reporting period, the gravity of the incidents requires their inclusion
in the report. Witness accounts described a particularly grave incident
in the village of Ayn l’Arouz in the Jabal Azzawiyah in Idlib province.
On 9 March 2012, Syrian Armed Forces, together with the intelligence forces
and the Shabbiha militia, surrounded the village for an attack that lasted
over a period of four days. Government forces entered the village on the
first day and killed 11 civilians, including three boys aged

between 15 and 17 years. Thirty-four persons, including two boys aged 14
and 16 years, and one 9-year-old girl, were arrested for interrogation
about the suspected presence of deserters. Eventually, the village was
reportedly left burned and 4 out of the 34 detainees were shot and burned,
including the two boys aged 14 and 16 years.

122. There is no evidence of Government forces formally conscripting or
enlisting children under the age of 18 years. However, the Syrian Armed
Forces and its associated Shabbiha militia used children as young as 8
years on at least three separate occasions within the reporting period.
In the incident mentioned above in the village of Ayn l’Arouz in March
2012, a witness stated that several dozen children, boys and girls ranging
between the ages of 8 and 13 years, were forcibly taken from their homes.
These children were subsequently reportedly used by soldiers and militia
members as human shields, placing them in front of the windows of buses
carrying military personnel into the raid on the village.

123. The United Nations collected dozens of accounts of eyewitnesses of
both children as young as 14 years of age who were tortured while in detention,
as well as former members of the Syrian Armed Forces who themselves were
forced to torture or witness torture. The Shabbiha militia was also involved
in the detention and torture of children, especially during military operations
and often in makeshift detention cells in schools. Most child victims of
torture described being beaten, blindfolded, subjected to stress positions,
whipped with heavy electrical cables, scarred by cigarette burns and, in
one recorded case, subjected to electrical shock to the genitals. At least
one witness said that he had seen a young boy of approximately 15 years
of age succumb to his repeated beatings. Children were detained and tortured
because their siblings or parents were assumed to be members of the opposition
or FSA, or they themselves were suspected of being associated with FSA.
On one occasion, in May 2011, a 15-year-old boy was taken into custody
by intelligence forces in the municipal building in Jisr Ash-Shughur and
repeatedly beaten with heavy electrical cables during interrogation. The
boy stated that there were at least 20 other children his age or younger
held in detention.

124. The United Nations has received some credible allegations of the recruitment and use of children by armed opposition, including FSA and other armed groups, although FSA has a stated policy of not recruiting any child under 17 years of age. Various sources reported on young children association with FSA carrying guns and wearing camouflage uniforms. My Special Representative for Children and Armed Conflict reminded all parties of their obligations under human rights and international humanitarian law.

125. The United Nations recorded multiple accounts of the use of schools
by Government forces, including the Syrian Armed Forces, the intelligence
forces and the Shabbiha militia as military staging grounds, temporary
bases, detention centres, sniper posts and centres for torture and the
interrogation of adults and children. Several witnesses stated that the
intelligence forces and the Shabbiha militia had Accounts also indicated
that, on a number of occasions, children were killed or injured by Government
forces during military operations on school grounds, and schools were looted
and burned as retribution by Government forces in response to student protests.

126. Reports also pointed out that, during the reporting period, hospitals
were struck by heavy artillery by Government forces. Aside from the conduct
of military operations that prevent civilians from accessing hospitals,
reports also indicated that injured persons, including children and their
families, were afraid to seek medical treatment out of fear of reprisals
by the Government for suspected association with the opposition. Similarly,
reports were also received of medical workers being intimidated and threatened
by Government forces for having provided or being suspected of providing
medical assistance to members of the opposition.

http://www.un.org/children/conflict/_documents/A66782.pdf

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ラディカ・クマラスワミー子どもと紛争問題に関する国連特使はAFP(6月11日付)に対して、「シリアで起きているような子供に対する蛮行をほとんど目のあたりにしたことはない。少年・少女が逮捕、拷問、処刑され、人間の盾として利用されている」と非難した。

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潘基文国連事務総長は、報告書に関して子供に対する「重大な侵害」の一つと非難した。

AFP, June 11, 2012、Akhbar al-Sharq, June 11, 2012, June 12, 2012、al-Hayat, June 12, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 11, 2012, June 12, 2012、Naharnet.com,
June 11, 2012、NNA, June 11, 2012、Reuters, June 11, 2012、SANA, June 11,
2012、Youtube, June 11, 2012、al-Watan (Riyad), June 11, 2011などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ヒムス県ガントゥー市に駐留する防空隊内で「大規模な離反」が発生、シリア国民評議会がガルユーン事務局長の後任としてクルド人のアブドゥルバースィト・スィーダー氏を選出(2012年6月10日)

ヒムス県の空軍大隊での離反

ヒムス県では、『ハヤート』(6月11日付)などによると、ラスタン市近郊のガントゥー市に駐留する防空大隊内で「大規模な離反」が発生し、反体制武装集団が同大隊本部を占拠、軍・治安部隊が奪還のため、ヘリコプターなどを投入し、激しい攻撃を加えた。

しかし各紙が大々的に報じた離反は、その後の情報からきわめて小規模だったことが明らかとなった。

シリア革命総合委員会は、「アブドゥッラー大尉」からの情報として、離反者が出たのは、ガントゥー市に駐留する第26防空師団第72旅団第743大隊(ミサイル大隊)で、士官10人、兵士130人のうち、自由シリア軍に合流したのは、士官2人と兵士8人だけだったことを明らかにした。

同大佐によると、離反は、ヒムス県の自由シリア軍と同大隊司令部の連携のもと早朝に行われ、離反に先立って、自由シリア軍の兵士がガントゥー市周辺に展開していた。

部隊から離反したのは35人で、離反後、指揮官は兵士に帰宅か反体制運動への参加を選ばせ、士官3人と兵士22人が帰宅し、士官2人と兵士8人が自由シリア軍に合流した、という。

同部隊はSAM-6、SAM-7といった対空ミサイルを装備しており、自由シリア軍はこれらの兵器を入手したものと思われる。

なおこの離反に関して、SANA(6月10日付)は、ガントゥー地方で軍部隊の本部が武装テロ集団の襲撃を受け、武器・装備が盗まれた、と報じた。

その他の国内の暴力

ラタキア県では、シリア人権監視団や地元調整諸委員会によると、反体制武装集団の戦闘員「数百人」が集結するハッファ地方に対して、軍が砲撃を継続した。

シリア・アラブ・テレビ(6月10日付)は、ハッファ地方の武装テロ集団が「人質と捕虜を殺せ」と会話する電話の音声を放映した。

電話はトルコの携帯電話から通話する人物とガイス・ムハンマド・サーディク・クッリーヤ容疑者との間で行われた会話だという。

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ヒムス県では、ラスタン市郊外のほかにも、ヒムス市、クサイル市、タルビーサ市でも軍・治安部隊と反体制武装制勢力が交戦し、シリア人権監視団によると、複数の活動家によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区で13人、クサイル市で3人、タルビーサ市で6人が死亡した。

一方、SANA(6月10日付)によると、ヒムス市にあるヒムス国立病院の変電施設が武装テロ集団によって破壊された。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、タイバ町で早朝、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、前者の兵士2人が死亡した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ハイヤーン町が軍・治安部隊の砲撃に曝された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、カフルルーマー村で市民1人が射殺された。

またマアッラト・ヌウマーン市で犠牲者9人の葬儀が行われ、数千人の市民が参列した。

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クウェートの日刊紙『カバス』(6月10日付)は、クウェート人数十人が自由シリア軍に参加し、「ジハード」を行っている、と報じた。

同紙は、戦闘員の親族の証言をもとに、彼らがトルコ国境を経由しシリアに潜入し、シリア政府に対するジハードを行っており、サウジ人、アルジェリア人、パキスタン人戦闘員なども多数いる、という。

国内の主な動き

『アクス・サイル』(6月10日付)は、クルド民族主義勢力指導部筋の話として、リヤード・ヒジャーブ首相がクルド人を2人入閣させない場合、クルド民族主義勢力が内閣を「挙国一致内閣」と認めないとの姿勢をとり、クルド人閣僚の入閣を迫っている、と報じた。

SANA, June 10, 2012
SANA, June 10, 2012

一方、『クッルナー・シュラカー』(6月10日付)によると、ヒジャーブ首相は、インターネット・サイトを通じて声明を出し、マーヒル・アサド大佐の義理の弟だとの噂を否定した。

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アサド大統領は専門職業協会総連合執行委員会メンバーと会談した。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会がイスタンブールで事務局(33人)会合を開き、アブドゥルバースィト・スィーダー氏をブルハーン・ガルユーン氏の後任の事務局長に全会一致で選出した。

スィーダー氏は、1956年、ハサカ県アームーダー市生まれのクルド人。

「融和的」、「公正」、「無所属」と目されているが、20年以上(1994年~)もスウェーデンで暮らしており、シリア国内との関係は希薄。

また在欧渉外調整局長のムンズィル・マーフース氏によると、「政治的経験がないが…すべての人に受け入れられた」。

なおシリア国民評議会を実質的に指導するシリア・ムスリム同胞団はガルユーン氏の再選を最後まで支持していた、とされる。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は記者会見を開き、シリアの未来像に関して、「多元的、民主的、市民」国家になるだろうとしたうえで、「アラウィー派やキリスト教徒など…すべての人々が安心でき…、宗教、宗派、民族、人種、思想などによる差別はなくなるだろう」と述べた。

al-Hayat, June 11, 2012
al-Hayat, June 11, 2012

また「革命」に関しては、国内の文民、軍人に対して離反を呼びかけるとともに、すべての国々、すべての諸国民、とりわけ、湾岸諸国、トルコ、EU、さらに国連、アラブ連盟、アナン特使に…国連憲章第7章に基づき、民間人保護、強権的殺戮の停止」を呼びかけた。

外国の軍事介入に関しては、「我々は戦争や外国の介入を主唱していない。政府が国をこのような方向に押しやり、祖国と国見を不正に満ちた戦争に駆り立てようとしている…。我々は平和的であると宣言している」と述べた。

イランに対しては、「シリアの現実を承認し、シリア国民の意思を尊重」するよう呼びかけた。

対立を続ける反体制組織に対しては、「最大レベルの協力と調整を通じて、革命と国民に奉仕するよう」呼びかけるとともに、「シリア国民評議会への参加を望む勢力と連絡をとる準備がある」と述べ、対立を続ける組織との連携に消極的な姿勢を示した。

アサド政権に関しては、「我々はデリケートな段階にいる。体制は最終段階に入った」と述べ、崩壊寸前との見方を示した。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン前事務局長はイスタンブールでの事務局長選挙の合間に、記者会見を開き、ロシアが提唱する関係国による国際会議に関して、「我々はすべての国が国際会議に参加することを支持するが、参加国はシリア国民の自由権を承認することが前提となる…。あの政府の犯罪を依然として支持する国に参加する術があるとは思わない」と述べ、イランの参加に異議を唱えた。

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AFP(6月11日付)によると、トルコを拠点とする自由シリア軍は声明を出し、国民に対してゼネストと市民非服従を呼びかけるとともに、軍兵士に対して反体制武装集団に参加するよう呼びかけた。

トルコの自由シリア軍は、国内で反対武装闘争を行う自由シリア軍国内合同司令部から「自由シリア軍」を名のらないよう警告を受けている。

レバノンの動き

北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方住民らは、住民のスライマーン・アフマド氏が誘拐されシリア領内に連れ去れたことに抗議し、シリア人を含む7人を「報復」として拘束するとともに、トリポリ市に至る街道を閉鎖し、解放を求めた。

ワーディー・ハーリド地方住民はヒクマト・ユースフ氏以外の人質をまもなく釈放した。

諸外国の動き

イギリスのウィリアム・ヘイグ外務大臣はスカイ・ニュース(6月10日付)に対して、「1990年代のボスニア情勢により似ている。なぜなら…シリアは宗派主義内戦の縁にあるからだ」と警鐘をならした。

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イスラエルのシモン・ペレス大統領は、シリアでの虐殺に対する国際社会の「無力」を批判し、直ちに軍事介入するよう呼びかけた。

またベンヤミン・ネタニヤフ首相は、シリアでの「虐殺」に関して、イランとヒズブッラーが支援していると断じた。

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フランス警察筋によると、パリにあるシリア大使館に侵入しようとしたデモ参加者18人が逮捕された。

デモ参加者は約40人に及び、「最近の虐殺に抗議するため、大使館の占拠」を試み、3人が侵入に成功した、という。

AFP, June 10, 2012、Akhbar al-Sharq, June 10, 2012、ʻAks al-Sayr, June 10, 2012、al-Hayat, June 10, 2012、June 11, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 10, 2012、Naharnet.com, June 10, 2012、al-Qabas, June 10, 2012、Reuters, June 10, 2012、SANA, June 10, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

軍・治安部隊がヒムス市内の各地区の制圧を試みるなか、露外相は記者会見のなかで「アナン特使の停戦案に代わるオルターナティブはない」としつつイランを含む関係各国による国際会議を提唱(2012年6月9日)

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がヒムス市のハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区、クスール地区の制圧を試み、7人が死亡した。

SANA, June 9, 2012
SANA, June 9, 2012

同地域は、数ヶ月前から反体制勢力の支配下にあるという。

またタルビーヤ市でも、軍・治安部隊が砲撃を行った。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、トルコ国境に近いハッファ地方で軍・治安部隊が奪還作戦を継続し、2人が死亡した。

SANA(6月9日付)によると、武装テロ集団がハッファ地方で破壊、焼き討ち、殺戮を継続、住民が避難を余儀なくされていると報じた。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がダルアー市の住宅地に対して未明から砲撃を加え、女性7人を含む17人が死亡した。

また同監視団によると、ダーイル町近くで、政権支持者の遺体が発見された。

遺体には拷問の跡が見られたという。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ハイヤーン町、バヤーヌーン町に対して、軍・治安部隊が砲撃を加え、市民1人が死亡、またハイヤーン町での反体制武装集団との交戦で兵士3人が死亡した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(6月9日付)によると、ドゥーマー市郊外で治安維持部隊が武装テロ集団の襲撃を受け応戦、テロリスト2人を殺害した。

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シリア・アラブ・テレビ(6月9日付)は、「シャームの民のヌスラ(救済)戦線」のメンバーがアル=カーイダと関係があり、シリア国内での爆破テロを計画・実行したことを示す文書や証言映像を放映した。

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AFP(6月9日付)によると、CPJ (Committee to Protest Journalists)は、5月にシリア人ジャーナリスト5人がシリア軍の砲撃に巻き込まれて死亡した、と発表した。

反体制勢力の動き

AFP(6月9日付)によると、国内で反体制武装活動を行っているシリア革命最高指導評議会のハサン・サイイド議長は、ワシントンで開かれたレシンク・インスティチュート(Rethink Institute)主催の国際会議で電話で参加し、国内の反体制勢力に武器を供与するよう求めた。

レバノンの動き

ジャズィーラ(6月9日付)は、アレッポで誘拐されたレバノン人巡礼者のビデオ映像を公開、そのなかで巡礼者たちは「我々はシリアの革命家らの客人であり、シリア国民を支持する」と表明した。

Naharnet.com, June 9, 2012
Naharnet.com, June 9, 2012

映像は6月5日か6日に録画されたもので、彼らはレバノン国民に向けて、「シリア国民と同様、抑圧に反抗して立ち上がれ」と呼びかけた。

一方、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長への謝罪を求めた声明については、自分たちのものではないと否定した。

誘拐犯らは「客人はシリアの文民国家に引き渡されるだろう」と述べ、アサド政権を打倒するまで釈放しないとの意思を示した。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=Qh5shraUWSI

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北部県トリポリ市のバーブ・タッバーナ地区、ジャバル・ムフスィン地区で、何者かの発砲により、子供が軽傷を負った。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はモスクワで記者会見を開き、アナン特使の停戦案に代わるオルターナティブはないと述べ、イランを含む関係各国による国際会議を提唱し、停戦案の履行をめざすべきだとの立場を示した。

ラブロフ外務大臣は「(アナン特使の)停戦案は危機的なかたちでつまずき始めているが、我々はこの案の実施に代わるオルターナティブはないと思う」と述べた。

また「国際的なテロネットワークがシリア領内に広がっている」と指摘、その原因は「シリア政府だけにあるのでなく」、多くの場合、「違法な武装民兵への資金援助、越境潜入」にあると指摘、シリアに滞在するロシア人専門家がその標的になっていることを明らかにした。

そのうえで「諸外国、とりわけ湾岸諸国は、シリアに武器を輸出し、それが民間人に対して用いられている…。また反体制勢力の莫大な武器が供給されている」と非難した。

国際会議に関して、「シリアをめぐる国際会議を組織し、アナン特使の和平案を実行すべき」と主張するとともに、「イランに参加の余地はない…。なぜなら同国は問題の一部であって解決策でない、という主張は少なくとも外交的評価のもとでは論理的でない」と述べた。

シリアへの軍事介入の是非については、「我々は安保理で力の行使を求めることに同意しないだろう…。中東全体に危機的結果をもたらすだろう」と述べた。

アサド政権退任については、「シリア人が互いに(アサド大統領退陣で)合意すれば、そうした解決策を喜んで支援する…。しかしこの手の対話を外国が条件として押しつけることは受け入れられないと考える」と事実上拒否した。

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『ダマス・ポスト』(6月9日付)は、複数の消息筋の話として、イスラエルの航空機がカタールの資金援助のもと、イラクのクルディスタン自治区に大量の武器と、西側諸国が教練したアル=カーイダの戦闘員400人を派遣、シリアに潜入させようとしている、と報じた。

この報道に関して、『クッルナー・シュラカー』(6月9日付)は、「ハーフィズ・マフルーフの最新のウソ」と報じた。

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AKI(6月9日付)によると、イタリアのジュリオ・テルツィ・ディ・サンタガタ外務大臣は、テレビ番組で、「アラブ連盟諸国がシリアに関する対話にイランが参加することを拒否している…。イランはシリアの戦略的パートナーであり…、シリア政府に大きく肩入れする」と述べた。

AFP, June 9, 2012、Akhbar al-Sharq, June 9, 2012、AKI, June 9, 2012、Aljazeera.net, June 9, 2012、Damas Post, June 9, 2012、al-Hayat, June 10, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 9, 2012、Naharnet.com, June 9, 2012、NNA, June 9, 2012、Reuters, , June 9, 2012、SANA, June 9, 2012、Youtube, June 9, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ハマー県クバイル村で民間人の遺体50体以上が発見される、これを受け各反体制派や西側諸国はアサド政権による犯行を推定、国連事務総長は「アサド大統領が正統性を失った」と断じる(2012年6月7日)

クバイル村で遺体発見

ハマー県のクバイル村で7日晩、女性や子供を含む民間人の遺体50体以上が発見された、と各紙が報じた。

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ロンドンを拠点とする反体制組織のシリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラー所長によると、クバイル村の犠牲者は55人で、うち49人がクバイル家の人々、女性と子供は18人にのぼる、という。

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ハマー県の活動家はAFP(6月7日付)に対して、クバイル村での死者が78人にのぼる、と答えた。

また目撃者は、ロイター通信(6月6日付)に対して「焦げた遺体や人間の死肉の悪臭が漂っていた」と述べた。

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シリア国民評議会のムハンマド・サルミーニー報道官は、クバイル村で子供22人、女性20人が虐殺されたと発表し、自由シリア軍に軍事攻撃を激化させ、民間人に対する軍の包囲を解除し、彼らを保護する」よう呼びかけた。

またシリア国民に対して、虐殺の犠牲者を悼んで喪に服すとともに、6月7日と8日にクバイル村とハウラ地方での虐殺に抗議するための市民運動を行うよう呼びかけた。

そのうえで「自由シリア軍、地元の諸大隊、革命運動体における我らがすべての国民に、あらゆる場所での大衆運動を激化させ…、包囲、砲撃、突入に曝されているハマー郊外、ラタキア、ヒムスの被害軽減のために行動」するよう訴えた。

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一方、SANA(6月7日付)は、武装テロ集団がクバイル農園とマアッルザーフ町で「恐るべき犯罪」を犯し、女性と子供を含む9人を殺害したとしたうえで、「司法解剖の結果、殺戮行為が6日の午前10時頃行われた。この時間帯、同農場には武装テロ集団がいた」と指摘し、「国連での会合に合わせて、シリアへの圧力を利用する動き」と非難した。

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ロバート・ムードUNSMIS司令官は声明を出し、監視団がシリア軍の検問所や地元住民によってクバイル村に入ることを妨げられていると発表した。

しかしSANA(6月7日付)は、UNSMISがクバイル村に入ったとしたうえで、同監視団が現地での移動を保障されていると強調した。

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米ホワイトハウスはクバイル村での遺体発見に関して、「アサドが責任を免れ得るようないかなる信頼性もない」とシリア政府を批判し、各国に対して「残虐で正統性を欠く体制への支援」を停止するよう呼びかけた。

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ロシアの外務省報道官は、クバイル村での「野蛮な暴力行為をもっとも激しく非難する」としたうえで、「シリアの問題解決をめざすすべての外国の当事者は、アナン特使の和平案…と矛盾した言動を行う反体制武装集団に影響力を行使せねばならない」と述べた。

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キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長はクバイル村での遺体発見に関して、「許されない」と述べ、「恐るべき犯罪の完全なる調査」を求めた。

国内の暴力

ラタキア県では、アラビーア(6月7日付)などによると、ハッファ市郊外で軍・治安部隊と反体制武装集団との戦闘が続いた。

またSANA(6月7日付)によると、ハッファ地方で、武装テロ集団の攻撃により子供1人が殺害、4人が負傷した。

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ヒムス県では、『ハヤート』(6月8日付)によると、市民6人が殺害された。

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ハマー県では、『クッルナー・シュラカー』(6月7日付)などは、カフルズィーター市が軍・治安部隊の砲撃にさらされ150人以上の市民が行方不明になっている、と報じた(現在のところ確認はとれていない)。

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アレッポ県では、『ハヤート』(6月8日付)によると、市民2人が殺害された。

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ダルアー県では、SANA(6月8日付)によると、ダルアー市で同市の軍事裁判所判事と軍の曹長が裁判所前で暗殺された。

またサナマイン市では、治安当局が、自爆テロ未遂犯を身柄拘束、大量の爆発物を押収した。

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ダマスカス県、ダマスカス郊外県では、『ハヤート』(6月8日付)によると、市民2人が殺害された。

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『クッルナー・シュラカー』(6月7日付)は、治安当局が「アサド大統領の同意のもと」、人民議会での大統領の演説後、民主的変革諸勢力国民調整委員会の弾圧を強化している、と報じた。

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Syria Steps.com(6月7日付)は、レバノンのANBの記者サファー・ムハンマド女史がフェイスブックで「ハマースの幹部(アブー・バラーなる活動家)がシリア国内で爆弾テロに関与し、逮捕された」と綴ったと報じた。

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ドイツの『フランクファーター・アルゲマイン・ツァイトゥング』(6月7日付)は、住民らの証言をもとにハウラでの虐殺(5月25日付)が、軍・治安部隊やシャッビーハではなく反体制武装集団による犯行の可能性が高いと報じた。

同報道は、シリア政府側の情報にも依拠しつつ、虐殺の犠牲者のほとんどはシーア派に改宗したスンナ派で、また虐殺が行われたシューマリーヤ村の住民の多くはアラウィー派だったとしている。

またこの虐殺を機に、西側のシリア・バッシングが激化し、反体制武装集団の攻撃が激化した点に触れ、この虐殺が「casus belli」(開戦の理由)」となったと指摘している。

http://www.faz.net/aktuell/politik/neue-erkenntnisse-zu-getoeteten-von-hula-abermals-massaker-in-syrien-11776496.html

反体制勢力の動き

カタールを拠点とする反体制組織のシリア・ビジネスマン・フォーラムのムスタファー・ダッバーグ代表は、『ハヤート』(6月8日付)に対して、「自由シリア軍に給与を支払う」と述べた。

一方、シリア国内で呼びかけているとされるゼネストに関して、「この点に関する我々の活動は過去数日間において大成功を収めた」と述べ、ダマスカスで80~90%のビジネスマンがストライキに参加し、商店を閉めたほか、ヒムス県、ダイル・ザウル県、ハマー県でもストライキが実施されたと主張した(真偽は不明)。

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「アフバール・シャルク」(6月7日付)によると、国外で活動する反体制活動家は6月14日から17日にイスタンブールで大会を開き、「祖国」(ワタン)という呼称の新たな反体制同盟を結成すると報じた。

同報道によると、この政治同盟は、様々な宗教・宗派、民族・エスニック集団を包摂するという。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、ハッファ地方での軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦を「虐殺」と位置づけ、アサド政権を非難した。

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シリア人権ネットワークとダマスカス人権研究センターは共同声明を出し、アナン特使の停戦案の履行が宣言された4月12日以降の死者数が2,261人におよぶと発表した。

犠牲者のうち子供は212人、女性は193人、軍人211人、外国人13人(ほとんどがパレスチナ人)、拷問死は116件だとう。

また県別の犠牲者はヒムス県678人、ハマー県343人、ダマスカス郊外県321人、イドリブ県316人、アレッポ県180人、ダルアー県173人、ダイル・ザウル県102人、ダマスカス県74人、ハサカ県19人、ラタキア県14人、ラッカ県11人、タルトゥース県8人、クナイトラ県8人、スワイダー県1人。

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ジャズィーラ(6月7日付)は、ヨルダン在住のシリア人女性活動家「ウンム・ザーヒル」の情報として、シリア人女性1,500人が当局による身柄拘束中に強姦されたと報じた。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会のマフムード・マルイー氏は、メロディーFMラジオのインタビュー(6月7日付)で、反体制勢力の多様な意見を尊重するとしつつ、変革解放人民戦線の人民議会(選挙)への参加を「誤りだ」と批判した。

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『シャルク・アウワト』(6月8日付)は、パリ在住の活動家ファフド・ミスリー氏の話として、シリア国内の反体制武装集団が「市民・軍事政治指導委員会」の設置を検討していると報じた。

国連での動き

潘基文事務総長は、国連総会でクバイル村に入ろうとしたUNSMISが「軽火器による発砲を受けた」と述べ、同村での虐殺を「恐るべき、嫌気感をそそる」行為と非難、またアサド大統領が「正統性を失った」と断じた。

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アナン特使は国連総会で演説し、シリア情勢に関して「6項目停戦案の実施を保障するか、危機対処のための別の選択肢を明示する時が来た」と述べ、国際社会に「できることを明確にするため統一的に行動する」よう呼びかけた。

また特使はクバイル村での虐殺を非難し、責任者の処罰を求める一方、集団殺戮は認められたとの立場を示した。

一方、アサド政権に関しては、「私の努力に協力せねばならないと明言したが…、アサド大統領は国会での演説でいかなる変化(の姿勢)も見せなかった」と批判、「暴力停止における最大の責任を負っているのはシリア政府」と述べ、弾圧停止を求めた。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、国連総会で、「アラブ連盟は安保理に軍事介入ではなく、政治、通商面での圧力手段をとることを求めている」と述べた。

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SANA(6月7日付)によると、シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は国連総会で演説し、アナン特使の停戦案に消極的な姿勢をとる当事者、とりわけ外国による軍事介入や武力行使以外に解決策はないと主張する当事者の釈明を求めたいと批判した。

また、シリアに対するテロ行為の実行を鼓舞する武装テロ集団を一部のアラブ諸国が支援していると非難した。

一方、シリア政府の立場については、包括的国民対話を望むすべての人々に対して門戸を開いていると強調し、対話による事態収拾への意思を示した。

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国連総会では西側諸国、露中の国連代表が発言し、前者はアサド政権打倒を通じたシリア政府の破壊を主唱、後者は軍事介入を通じた危機解決の手法を拒否した。

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国連安保理でシリア情勢を協議するための会合が開かれた。

複数の外交筋によると、会合で潘基文事務総長は、UNSMISが重火器や無人飛行機の攻撃を受けたと述べ、シリア国内でこれらの兵器を唯一保有するシリア軍の関与を示唆した。

また潘事務総長は、村々に接近した軍の兵員輸送車に対してUNSMISが攻撃停止を求めたが、無視されたと証言した。

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アナン特使は記者会見で、「シリアの政府や反体制勢力といった当事者に影響力を持つ国々からなる新たな連絡グループの結成」のための対話を行っていると述べた。

アナン特使はまた「イランは地域において重要である…。(イランがシリアへの危機)解決に参加することを望む」と述べ、グループへの参加をめざしていることを明らかにした。

複数の外交筋によると、この連絡グループには、西側諸国、トルコ、サウジアラビア、ロシア、中国が参加することが見込まれるが、イランの参加に関しては是非が分かれているという。

潘事務総長、ナビール・アラビー・アラブ連盟事務局長はアナン特使によるこの新たなイニシアチブに歓迎の意を示している。

一方、6項目停戦案に関しては、「停戦案は終わっていないが、その実施はつまずいている」と述べるとともに、「シリアはリビアでない。国内で爆発することはなく、国境の外で爆発する」と述べ、シリアでの暴力の継続が地域全体に波及することへの懸念を表明した。

そのうえで、「安保理は統一したかたちでダマスカスに圧力をかけなければならない」と述べ、アサド政権に対して一致団結して停戦案の履行を迫るよう求めた。

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潘事務総長は記者会見で、「内戦の危険は差し迫った現実のものとなりつつある」と改めて警鐘を鳴らした。

レバノンの動き

NNA(6月7日付)によると、北部県アッカール郡のブルジュ・アラブ村にあるシリア人避難民のキャンプで火災が発生し、5人が負傷した。

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SANA(6月7日付)によると、レバノンの北部県から潜入しようとした武装テロ集団に国境警備隊が対峙、撃退した。

諸外国の動き

イスタンブールで開かれていたシリアの友連絡グループ実務委員会会合が閉幕した。

SANA, June 7, 2012
SANA, June 7, 2012

会合では、国連憲章第7条に基づく安保理決議を通じたシリア問題への対応が協議されたが結論は得なかった。

だがシリア反体制勢力支援のための会合をイスタンブールで6月半ばに開催するとし、反体制勢力代表や専門家に参加を呼びかけた。

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国務省高官によると、会合ではクリントン国務長官が、「アサド大統領の権限移譲などを含むポスト・アサド段階に向けた転換の戦略を支援する基本原則」を明らかにした、という。

同高官によると、そのなかには「すべての勢力に門戸を開いた暫定内閣の発足、自由で公正な選挙の実施、すべての当事者による暴力の停止、法の前の平等」などからなるというが、いずれも具体性、斬新さを欠いている。

なおクリントン米国務長官はイスタンブールでの記者会見で「我々は改めて結束し、我々とともに行動していない国々に…、(アサド政権を支持しても)未来はないという明確なメッセージを伝えねばならない…。協調的な転換のための計画を策定することが(今後の)重要なステップとなるだろう」と述べた。そのうえで国際社会を統一するため、「我々はロシアとともに行動したい。我々には共通のビジョンがある」と述べ、ロシアとの協力が不可欠だとの見方を示した。

またクバイル村での虐殺に関して「政府によって支援された暴力」と断じ、「受け入れられない」と非難し、「アサドは権力を移譲し去らねばならない」と述べた。

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英国のデビッド・キャメロン首相はイスタンブールでの記者会見で「我々はシリアとシリア政府を孤立させ、圧力をかけるためさらなる努力を行い、世界全体が正統性を欠くこの体制から国民に関心を示す体制への政治的転換を望んでいることを示さねばならない」と述べた。

一方、英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、「イランが会合に参加すると非効率的になるだろう」と述べ、イランを排除すべきだとの見方を示した。

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フランス外務省は次回のシリアの友連絡グループ会合をパリで7月6、7日に開催すると発表した。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、記者会見で「我々は最後まで外交的な方法をとるだろう。しかし、外交は重要だとしても、原則も重要である。この原則に違反する者を許してはならない…。外交が行き詰まれった思えたら、民間人保護のためのすべてのシナリオ、すべてのオルターナティブを検討しなければならない」と述べた。

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上海協力機構(SCO)加盟国首脳理事会第12回会議が北京で開かれ、シリアに対する「軍事干渉、力による体制転換、一当事者への一方的制裁」に反対し、「政治的対話を通じた問題の平和的解決」を支持するとの共同宣言を発表し、閉幕した。

会議には、加盟6カ国に加えて、準加盟国のインド、パキスタンの代表も参加した。

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インテルファクス通信(6月7日付)によると、ロシアのミハイル・ボグダノフ外務副大臣はアサド大統領の退任の是非に関して、「我々とは関係のないこと」としたうえで、「シリアでの紛争解決のために、いわゆるイエメン・シナリオを実行することは、シリア自身が同意しなければ不可能だ…。シリア人がこのシナリオを話し合い、採用するのであれば、反対はしない」と述べた。

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ロシアのドミトリ・メドベージェフ首相は訪問先のカザフスタンで、「国連でシリアへの軍事介入が認められることはないだろう」と述べた。

また「シリア国民評議会を名のる在外勢力など複数の紛争当事者が政府との対話を望まないばかりか、武装闘争継続を望んでいる」と非難した。

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カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は、フランスのフランソワ・オランド大統領とパリで会談した。

カタール高官によると、会談でハマド首相はシリアでの「権力の平和的移譲のための計画がなければならない…。これこそが我々が実際に選ぶべき解決策だ」と述べた。

しかしカタールは反体制武装集団に武器・資金援助を行っている。

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ロイター通信(6月7日付)は、IAEA理事会で、米国代表が、「シリア政府の民間人に対する殺戮など…シリア国内での出来事は、ダマスカスがIAEAに協力することを妨げている…。シリア政府が不安定化のために行う行為は、シリアがIAEAへの誓約履行を拒否することを正当化しない」と述べた、と報じた。

AFP, June 7, 2012、Akhbar al-Sharq, June 7, 2012, June 8, 2012、Alarabia.net, June 7, 2012、Aljazeera.net, June 7, 2012、Frankfurter Allgemeine Zeitung, June 7, 2012、al-Hayat, June 8, 2012、Kull-na Shuraka’, June 8, 2012、Naharnet.com, June 8, 2012、NNA,
June 7, 2012、Reuters, June 7, 2012、SANA, June 7, 2012、al-Sharq al-Awsat, June 8, 2012、Syria Steps.com, June 7, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

リヤード・ファリード・ヒジャーブ農業相が首相に任命され組閣を命じられる、ロシアと中国の両国家元首が共同声明のなかで軍事介入や政治的圧力を通じた危機解決への反対の意思を改めて示す(2012年6月6日)

国内での主な動き

アサド大統領は2012年政令第194号を発し、リヤード・ファリード・ヒジャーブ農業・農業改革大臣を首相に任命し、組閣を要請した。

SANA, June 6, 2012
SANA, June 6, 2012

ヒジャーブ首相(1966年生まれ)はダイル・ザウル市出身のスンナ派で、バアス党ダイル・ザウル支部書記長(2004~2008年)、クナイトラ県知事(2008~2011年2月)、ラタキア県知事(2011年2月~8月)、農業・農業改革大臣(2011年8月~)を歴任してきた。

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SANA(6月6日付)によると、革命青年連合ダマスカス支部の青年ジャーナリストが、アラブサットとナイルサットでのシリアの衛星テレビ放送の配信停止を求めたアラブ連盟外相会議の決定に抗議するためダマスカス県旧市街のバーブ・トゥーマでデモを行った。

国内の暴力

国連安保理・総会でのアナン特使の報告を7日に控え、在ロンドンの反体制組織、シリア人権監視団などは、シリア国内での戦闘や犠牲者に関する情報の発信を活発化させた。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、前日に引き続き、ハッファ市近郊、バッカース村、シールカーク村、バーブナー村、ジャンキール村、ダフィール村などで、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

この戦闘で、反体制武装勢力はサルマー町の治安当局施設や政府関連施設を制圧したものと思われ、軍・治安部隊は奪還のために「ヘリコプター、戦車、ロケット・ランチャー」などを投入して大規模な反撃を行っており、同監視団によると、砲撃は「避難民の避難を抑えるべく」ハッファ市の入り口に集中している、という。

またこの戦闘によりサルマー町で、離反した士官1人が殺害され、シールカーク村では市民4人が、ハッファ市では3人が死亡した、という。

一方、SANA(6月6日付)は、ハッファ地方で武装テロ集団が治安維持部隊に発砲し、兵士2人が死亡、士官2人が負傷した、と報じた。

シリア国民評議会は5日から戦闘が激化したハッファ地方へのUNSMISの派遣を呼びかけた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、フライターン市での軍・治安部隊による攻撃で、未明にアレッポ大学学生1人が死亡した。

またシャイフ・イーサー村で市民2人が治安部隊に射殺された。

また軍・治安部隊は、フライターン市、バヤーヌーン町、アアザーズ市に対する砲撃を激化させた。

一方、ムザイリーブ町で爆弾が爆発し、治安部隊兵士10人が殺害された。

このほか、アレッポ大学では、学生が反体制デモを行ったが、治安部隊に強制排除され、多数が逮捕された。

他方、SANA(6月6日付)によると、ハイヤーン町で武装テロ集団が輸送していた爆弾が爆発し、テロリスト2人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マルイヤーン村が軍・治安部隊の砲撃に曝された。

またサラーキブ市近くで、爆弾が爆発し、士官2人を含む兵士3人が死亡、またジスル・シュグール市近郊でも爆弾により、軍・治安部隊兵士1人が死亡した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ジスリーン町、カフルバトナー町、サクバー市、ハラスター市、ジュダイダト・アルトゥーズ町、ドゥーマー市郊外、アルバイン市、ザマルカー町などで、軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦した。

一方、SANA(6月6日付)によると、ジュダイダト・アルトゥーズ町の学校近くで武装テロ集団が爆弾を爆発させ、アフマド・アブドゥー・ムルヒジュ准将が暗殺された。

またブワイダ地方でも武装テロ集団が爆弾を爆発させ、少女1人が犠牲となった。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ザーヒラ地区で爆発があったが、死傷者はなかった。

また、カーブーン区、ティシュリーン地区では未明に軍・治安部隊と反体制武装勢力による銃撃戦があった、という。

一方、SANA(6月6日付)によると、ルクンッディーン区では、テロリストのアジトで爆弾が誤って爆発市し、1人が負傷した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市で爆弾が爆発し、市民1人が死亡したほか、治安当局の発砲で1人が射殺された。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ラジャート高原で、軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦し、前者の兵士3人が殺害された。

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ハサカ県では、Welati.net(6月6日付)によると、西クルディスタン人民議会に属するアフリーン市人民保護諸委員会は、身柄拘束していたシリア・クルド国民評議会メンバーら5人を釈放した。

反体制勢力の動き

『ハヤート』(6月7日付)によると、在外シリア人ビジネスマン300人以上がカタールのドーハに集まり、シリア・ビジネスマン・フォーラムを結成し、「シリアの自由尊厳革命の支持」を呼びかけるとともに、約3億米ドルの資金からなる「革命支援基金」を設立した。

シリア・ビジネスマン・フォーラム結成に合わせて、参加者は、ヤフヤー・クルディー氏、ムフタール・イバーラ氏、ムスタファー・サッバーグ氏、ワーイル・ミルザー氏と、国内在住のビジネスマン(匿名)3人を事務局メンバーに選出した。

また代表にはムスタファー・ダッバーグ氏が就任した。

複数の消息筋によると、シリア・ビジネスマン・フォーラムはカタールなどが支援するシリア国民評議会への参加をめざしているという。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー氏はAKI(6月6日付)に対して、「民間人保護…は合法的権利である。とりわけ、民間人殺害が15ヵ月続くなか、あらゆる選択肢が合法的だ」と述べ、シリア国民ではなく、国連に「真剣な措置」を講じるよう呼びかけた。

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反体制活動家のナジャーティー・タイヤーラ氏は、ヒジャーブ首相指名に関して、ジャズィーラ(6月6日付)に、アサド大統領が無所属の人物を首相に指名すると思っていたが「過激なバアス党員」を選んだ、と不快感を示した。

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反体制活動家のサミール・アティーヤ氏は、アサド大統領の人民議会での演説に関して、「最後の瞬間まで国内に政治的危機があることを認めなかったイラクのサッダーム・フサイン前大統領の演説に似ている」と批判した。

レバノンの動き

AFP(6月6日付)によると、ベカーア県バアルベック郡アルサール地方ヒルバト・ダーウードで、シリア軍・治安部隊と地元の若者らが交戦した。

地元高官によると、この戦闘に先立って、レバノン人4人にシリア軍が発砲し、1人が死亡していた。

LBC(6月6日付)によると、この4人はシリアに密輸を行おうとしていたという。

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NNA(6月6日付)によると、北部県トリポリ市のバーブ・タッバーナ地区とジャバル・ムフスィン地区を隔てるシリア街道で何者かが発砲、手榴弾が爆発した。

諸外国の動き

ロシアのプーチン大統領と中国の胡錦濤国家主席は共同声明を発表し、軍事介入や政治的圧力を通じたシリア危機の解決への反対の意思を改めて示した。

SANA, June 6, 2012
SANA, June 6, 2012

共同声明の骨子は以下の通り。

「ロシアと中国は、軍事介入を通じたシリアの危機解決のあらゆる試みに反対する。またシリアの体制転換のためのいかなる政治的制裁にも、国連安保理の枠内で行われるものを含めて反対する」。

「シリア情勢は中東と世界全体の和平と安定に大きな影響を及ぼす」。

「ロシアと中国は、アナン特使の和平案のみへの支援強化が必要だと考えるとともに、すべての紛争当事者に武装闘争の即時停止を説得する」。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、北京で声明を出し、シリアの体制転換が地域に「大災難」をもたらすと警鐘をならした。

同声明で、ラブロフ外務大臣は「シリア国外の反体制組織は国際社会に対して、アサド政権を軍事的に攻撃し、対戦転換をもたらすようこれまで以上に強く要求している…。しかしこれはきわめて危険なことである。こうした方法は地域を大災難に陥れると言い得る」と述べた。

また「我々はシリアの反体制勢力が多様で、非宥和的な反体制組織があることを理解せねばならない」と付言した。

さらに「シリアの反体制勢力に実質的な影響力を行使している各国」、具体的には、トルコ、イラン、アラブ連盟、EU、安保理メンバーに対して、紛争解決のための国際会議を開き、「シリアを除く外国の当事者が何よりも先ずアナン特使の停戦案履行で合意する」ことをめざすべきと主張した。

そのうえで、西側諸国による「シリアの友連絡グループ」に関して、「シリア国民評議会とその過激な要求のみを支援」しているに過ぎないと批判した。

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トルコのイスタンブールでシリアの友連絡グループ実務委員会会合が開かれ、ヒラリー・クリントン米国務長官、ローラン・ファビウス仏外務大臣、トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣、ウィリアム・ヘイグ英外相、アラブ諸国外相らがシリア情勢を協議した。

会合では、シリアでの暴力停止や反体制勢力結集の方途が話し合われたという。

ティモシー・フランツ・ガイトナー米財務長官はイスタンブールで開催されたシリアの友連絡グループ実務委員会会合で、「米国は、必要な場合、国連憲章第7章のもとでシリア政府に対する措置を講じる国に加わる意思がある」との提案を行い、アナン特使の和平案に進展が見せない場合の強硬姿勢に転じる可能性を示唆した。

またガイトナー米財務長官は「制裁は重要な役割を果たしてはいるが、それだけでは我々が望む変化をもたらすことはできない」とも述べた。

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イタリアのジュリオ・テルツィ・ディ・サンタガタ外務大臣は国会で「早急な介入がなければ、ダマスカスの戦略は大量虐殺をもたらすだろう」と述べた。

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ヒジャーブ首相への組閣要請に関して、フランス外務省報道官は「前進を避けた茶番」と一蹴した。

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『ワシントン・ポスト』(6月6日付)は、国連外交筋の話として、アナン特使が、ロシア、イラン、米国、フランス、中国、英国、サウジアラビア、トルコ、カタール、アラブ連盟各国を含んだ連絡グループを結成して、同グループのイニシアチブのもとにシリアでの体制転換をめざす新たな行程表を準備している、と報じた。

新行程表案は、期限付きで大統領選挙、国会選挙、新憲法制定の実施、そして「アサド大統領のロシアへの亡命」を提言しており、今週中に安保理に提出される、という。

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『日本経済新聞』(6月7日付、インターネット版)によると、玄葉光一郎外相は記者会見で、シリア政府が5日に鈴木敏郎駐シリア大使(現在ヨルダンに退避中)を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)に指定し、受け入れを拒否したと明らかにした。

外務省によると日本の大使がペルソナ・ノン・グラータの通告を受けたのは初めて。

シリア政府は5日に、米英仏など十数カ国の大使や外交官を「ペルソナ・ノン・グラータ」として国外退去処分とすると発表していたが、そのなかに日本の外交官は含まれていなかった。

鈴木大使は、2011年9月13日、アメリカ、フランス、デンマーク各国の大使とともに、ダーライヤー市(ダマスカス郊外県)でのデモ弾圧犠牲者(ギヤース・マタル氏)の葬儀に参列するなど(https://www.youtube.com/watch?v=_iQilinL2jU)、シリアに対する西側の強硬姿勢に積極的に参与してきた。

なおこれに先立ち、日本政府は5月30日に、異動が決まっていたムハンマド・ガッサーン・ハバシュ駐日本シリア大使に国外退去を求めていた。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、国連総会出席のための訪米を前に、『ハヤート』(6月7日付)に対して、シリア政府に暴力の停止、逮捕者釈放、真の政治改革の開始を訴えてきたと強調、殺戮が続く現状において、「内戦勃発の可能性がある」と警鐘を鳴らした。

AFP, June 6, 2012、Aljazeera.net, June 6, 2012、Akhbar al-Sharq, June 6, 2012、AKI, June 6, 2012、DPI, September 14, 2011、al-Hayat, June 7, 2012、Kull-na Shuraka’, September 14, 2011, June 6, 2012、Naharnet.com,
June 6, 2012、NNA, June 6, 2012、Reuters, June 6, 2012、SANA, June 6, 2012、The Washington Post, June 6, 2012、Welati.net, June 6, 2012、『日本経済新聞』2012月6月7日などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア外務省が米英仏、トルコなどの大使ら外交官約20人を国外追放、また政府は国連人道問題調整室に対し各県における人道支援活動を許可(2012年6月5日)

人道支援をめぐる動き

国連人道問題調整室(OCHA)は、ヒムス県、イドリブ県、ダルアー県、ダイル・ザウル県での人道支援活動をシリア政府が許可したと発表した。

同報道官によると、現在、シリアでは推定で100万人が人道支援を必要としており、6月に支援拡大のための先遣調査団を派遣し、国連のチームやINGOがシリア赤新月社と連携して、食糧支援、医療支援、教材提供などを行うことになるという。

会談には、ファイサル・ハッバーズ・ハマウィー在ジュネーブ・シリア大使(国連人権理事会代表大使)も参加した。

シリア政府の動き

シリア外務在外居住者省は、米英仏、トルコなどの大使ら外交官約20人を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)として国外退去処分としたと発表した。

このなかに日本の外交官は含まれていない。

また国外追放の対象となった国はいずれも2012年3月までに大使を本国に召還し、大使館を閉鎖している。

国外退去処分となった外交官は以下の通り。

1. 米国:大使
2. 英国:大使、参事官
3. フランス:大使、二等書記官
4. スイス:大使
5. トルコ:大使、外交官・現地職員全員
6. イタリア:大使
7. スペイン:大使、参事官
8. ベルギー:常駐代表
9. ブルガリア:常駐代表、三等書記官
10. ドイツ:武官、武官補、外交官・現地職員2人
11. カナダ:大使、外交官・現地職員全員

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ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣は、ロバート・ムードUNSMIS司令官との会談後の記者会見で、大使追放が対象国の対シリア政策に起因するとしたうえで、この措置がアナン特使の停戦案を成功させたいとの意思の表れであると強調した。

国内の主な動き

変革解放人民戦線の議員5人が人民議会の審議を再び拒否し、退席した。

前日の審議の議事録に、同戦線の動議が記載されていなかったことに抗議した行動。

国内の暴力

ラタキア県では、シリア人権監視団によると、ハッファ地方で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、前者の兵士15人、後者の戦闘員3人、民間人2人が殺害された。

同監視団によると、戦闘が行われたとされるバッカース村、シーラカーク村、バーブナー村、ジャンキール村、ダフィーム村は「不穏な静けさ」を保っている、という。

また同監視団によると、軍・治安部隊は戦闘でロケット・ランチャーを使用したという。

一方、SANA(6月5日付)は、ハッファ地方で武装テロ集団が市民と治安維持軍を攻撃し、救急車2台などを破壊し、関係当局が応戦し、テロリスト多数を殺害、治安当局側にも2人の死者が出たと報じた。

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ダマスカス県では、SANA(6月5日付)によると、バルザ区で軍医のアンワル・サカー准将が武装テロ集団に爆殺された。

サカー准将はパレスチナ解放軍のメンバーでもあった。

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ダイル・ザウル県では、SANA(6月5日付)によると、ダイル・ザウル市で、アフマド・アブドゥルカーディル大尉、イッズッディーン・アブドゥッラー・スワイダーン大佐が武装テロ集団に暗殺された。

『ハヤート』(6月6日付)によると、5月29日にダイル・ザウル市郊外のスッカル地方で29日に13体の遺体が発見された事件に関して、反体制武装集団の一団が犯行声明を出した。

AFP(6月5日付)によると、「シャームの民のヌスラ(救済)戦線」が声明を出し、ダイル・ザウル市郊外でスッカル地方に5月29日に発見された13人の惨殺遺体に関して、「シリアの治安機関要員とシャッビーハ13人を処刑した」との犯行声明を発表した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カフルズィーター市などに軍・治安部隊が掃討作戦を継続、同市の反体制武装集団は撤退した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルバイン市に軍・治安部隊が展開した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、カフル・ウワイド市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、市民4人が死亡した。

一方、SANA(6月5日付)によると、カフル・ウワイド市で治安維持部隊が武装テロ集団の攻撃を受け応戦、テロリスト多数を死傷させた。

また同監視団によると、ナイラブ村、マアッルディブサ村に対して軍・治安部隊が砲撃を加える一方、イドリブ市では爆弾が爆発し、治安部隊兵士5人が犠牲となった。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市の複数地区に迫撃砲が着弾した。

一方、SANA(6月5日付)によると、クサイル市で治安維持部隊が武装テロ集団の襲撃を受け応戦、テロリスト4人を殺害した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、バヤーヌーン町に軍・治安部隊が砲撃を加えたほか、同市周辺で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

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ダルアー県では、ヌアイマ村、ダーイル町などで、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

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シリア人権監視団によると、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、ハマー県、イドリブ県、アレッポ県、ラッカ県など各地で、国内のテロ掃討を宣言し、反体制武装活動を徹底弾圧する意思を改めて示したアサド大統領の人民議会への演説に抗議するデモが行われた。

反体制勢力の動き

民主的変革諸勢力国民調整委員会在外事務局のハイサム・マンナーア代表はBBC(6月5日付)で、アナン特使に対して、ロシア、中国、トルコ、イランおよび西側諸国などすべての当事者を一堂に会した国際会議を招集し、事態の解決をめざすよう呼びかけた。

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シリア国民評議会のメンバーで、シリアのための国民行動グループを指導するムハンマド・ヤースィーン・ナッジャール氏は『ハヤート』(6月6日付)に対して、9~10日に予定されている事務局会合で、クルド人のアブドゥルバースィト・スィーダー氏が事務局長に選出されるだろう、と述べた。

レバノンの動き

NNA(6月5日付)によると、シリア軍は北部県アッカール郡ナフル・バーリド地方でレバノン人1人を拘束した。

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AFP(6月6日付)によると、シリア軍は北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方ハット・バトルール村のハーリド・スワイダーン村長を逮捕し、自宅を接収した。

諸外国の動き

ヨルダンの治安当局は、シリア領内への潜入を試みたヨルダン人サラフィー主義者2人を逮捕した。

これに関して、ヨルダンのサラフィー主義筋は、6月3日にウマル・バザーイアとハーリド・ハティーブの2人のサラフィー主義者が逮捕されたことを認め、彼らがシリアの軍・治治安部隊、シャッビーハと戦うために潜入を試みたと発表した。

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「アフバール・シャルク」(6月5日付)は、トルコ高官の話として、シリア軍が対トルコ国境の森林に放火したことを受け、6月1日から5日までの間に約2,700人のシリア人がトルコ領内に避難した、と報じた。

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「アフバール・シャルク」(6月5日付)によると、イスラエル国防軍のベニー・ガンツ参謀長はクネセトの外交委員会で、「シリア情勢がゴラン高原に影響を及ぼし、安定を揺るがす現象が増えている…。現在テロ活動はないが、近く発生するだろう」と証言した。

また「シリア政府が崩壊した場合、ヒズブッラーにシリアの武器密輸がさらに増えることを懸念している」とも付言した。

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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が中国を訪問し、胡錦濤国家主席と会談した。

中国外交部報道官によると、首脳会談では、アナン特使のイニシアチブへの支持、暴力の即時停止、シリア危機の政治的プロセスの開始の必要が確認された。

また、ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、ジュネーブでのアナン特使と会談後、「アサド大統領が政治プロセス終了時に権力の座に必ず留まっていなければならないとの条件を課したことも、そのように言ったこともない」と述べた。

一方、ロシアの外務省報道官は、インテルファクス(6月5日付)に対して、自由シリア軍がアナン特使の停戦案の履行の破棄を発表したことを、「シリアでの平和的関係正常化に向けて安保理が支持している和平案の履行をシリアの反対勢力諸派が放棄しているという事態の核心をなしている」と非難した。

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米国務省高官は、シリア問題担当のフレデリック・ホフ氏ら米国務省担当者らが、シリア問題を協議するためモスクワを訪問すると述べた。

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サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は、ジェッダでのGCC閣僚会合後の記者会見で、「安保理におけるロシアの姿勢は正当化できない。シリア政府を支援する姿勢を転換する時が来ている」と述べる一方、アナン特使の停戦案に関しては「希望を失いつつある」と失望感を露わにした。

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ドイツ外務省はUAEの協力のもと、ベルリンにシリア復興事務所を立ち上げた

AFP, June 5, 2012, June 6, 2012、Akhbar al-Sharq, June 5, 2012、al-Hayat, June 5, 2012, June 6, 2012, June 7, 2012、Kull-na Shuraka’, June 5, 2012,
June 6, 2012、Naharnet.com, June 5, 2012、NNA, June 5, 2012、Reuters, June
5, 2012、SANA, June 5, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

自由シリア軍事評議会がアナン特使の停戦案の履行を停止し武装闘争を再開することを表明、一方シリア国内では政党問題委員会が人民意思党の認可申請を許可(2012年6月4日)

国内の主な動き

UPI(6月4日付)によると、変革解放人民戦線に所属する人民議会議員5人が、第10期人民議会の議事が憲法に則っていないと抗議して議場を退席し、審議に参加せずに議事堂内に留まった。

SANA, June 4, 2012
SANA, June 4, 2012

4日の審議は、電力大臣に対する質疑応答のみが議事として準備されていたが、変革解放人民戦線は、憲法が認める多元主義の原則に従って、議事が各派の合意のもとに決せられねばならない、と主張した。

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SANA(6月4日付)によると、政党問題委員会(ムハンマド・シャッアール内務大臣が委員長)は、人民意思党と国民ブロック党の認可申請を検討し、前者を認可した。

後者は書類不備につき再申請となった。

人民意思党は変革解放人民戦線に参加する組織で、カドリー・ジャミール人民議会議員が代表を務めている。

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SANA(6月4日付)によると、シリアのジャーナリストや報道関係者がダマスカス県アブー・ルンマーナ地区の記者連合前に集まり、アラブサットとエジプトのナイルサットに対して、シリアの国営、非国営の衛星テレビチャンネルの放送を停止するよう要請したアラブ連盟外相会議の決定に抗議した。

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シリアの著名な詩人アドニースは、『アフリーク・アズィー』(Afrique-Asie)で「フランスはアラブ世界のあらゆる退行的原理主義運動に支援を行うことでフランス革命の精神を裏切った」と非難した。

国内の暴力

自由シリア軍国内合同司令部による停戦破棄を受けるかたちで、各地で反体制武装集団が「国民を防衛するため」と称して、戦闘を激化させ、ロイター通信(6月4日付)によると、過去48時間で軍・治安部隊兵士約80人を殺害、アサド政権によるさらなる弾圧の口実を与えた。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ザーウィヤ山のラーミー村で軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦した。

またカフルナブル市では未明、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、反体制武装集団メンバー2人が死亡した。

さらにアリーハー市では民間人2人が治安部隊に射殺された。

一方、SANA(6月4日付)によると、ラーミー村で治安当局が「自爆テロ」を試みた「テロリスト」を逮捕し、爆弾が積まれた車を押収した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市で治安部隊の発砲により青年1人が死亡した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市マルアブ地区南で男性1人が射殺された。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市クスール地区で市民1人が撃たれて死亡した。

一方、SANA(6月4日付)によると、クサイル地方ジュースィーヤ村近くのシリア・レバノン国境で、レバノンから武器を密輸しようとした車4台を関係当局が取り押さえた。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、スバイハーン市に対して、軍・治安部隊が砲撃を加えた。

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複数の武装集団が、ダマスカスからイドリブ県にいたる各地で100人以上の兵士を殺害したと発表した。シリア人権監視団によると、うち80人の身元は確認できた、という。

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シリア国民評議会によると、イドリブ県各地(マアッラト・ヌウマーン市、アリーハー市、ラーミヤ村、カフルルーマー村、カフルナブル市、ハーッス市などに軍・治安部隊が砲撃を加えている、という。

反体制勢力の動き

在外の自由シリア軍事評議会の報道官、サーミー・クルディー大佐はロイター通信(6月4日付)に対して、軍事評議会はアナン特使の停戦案の履行を停止することを決定し、「我らが国民を防衛」するため、6月1日付で武装闘争を再開したと述べた。

またクルディー大佐はUNSMISに「平和を課す監視団」になるよう呼びかけた。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会は、中央委員会メンバーのガーズィー・ガンヌーム氏がタルトゥースの国家治安局に逮捕された、と発表した。

レバノンの動き

ムスタクバル潮流のサアド・ハリーリー前首相はツイッターで「トリポリでの最近の事件はシリア政府が依然としてレバノンに火を放とうとして謀っていることを示すものだ…。シリア政府が注意をそらし、レバノンとシリアで宗派紛争を起こそうとしていることは明白だ」とつぶやいた。

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シリア日刊紙『ワタン』(6月4日付)は、「サウード・ファイサル外務大臣はレバノン北部を緩衝地帯にする計画に与し、レバノン軍を放逐し、シリア人への攻撃と殺戮を行おうとしている」と非難した。

諸外国の動き

ヘルマン・ファン・ロンパウ欧州理事会議長がロシアのサンクトペテルスブルグ郊外でウラジーミル・プーチン大統領と会談した。

会談後、ファン・ロンパウ議長は、「我々はアナン特使の停戦案がシリアでの暴力の連鎖を絶ち、内戦勃発を避けるための最善の機会を保障する点で一致している。我々はそのためにともに努力しなければならない」と述べた。

一方、SANA(6月4日付)によると、プーチン大統領は「すべての問題で共通の立場にいたることはできなかったが、首脳会談は有益で成功だった」と述べた。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、アサド大統領が退任しない限り、シリア危機の持続的解決は不可能だとつつ、「自らの罪の重圧を受け崩壊するだろう」と述べ、他力本願であることを吐露した。

また軍事介入については国連枠内でのみ可能との見方を示した。

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国連安保理では、6月の議長国となった中国の李高国連代表が「すべての武装する当事者がアナン特使の停戦案を履行するよう支援すべきか、内戦勃発と地域への宗派的暴力の拡散のいずれかしかない」と述べ、アナン特使のイニシアチブへの支援を呼びかけた。

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『ハヤート』(6月5日付)によると、アナン特使付報道官のアフマド・ファウズィー氏は、「大国が各当事者にシリアでの停戦を実施させることを保障すべき」と述べる一方、アナン特使がUNSMISの増強をいまだ検討していないことを明らかにした。

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国連の潘基文事務総長は、サウジアラビアのアブドゥッラー国王とジェッダで会談、アナン特使の和平案がシリアの紛争解決において依然として基礎をなしている、と強調した。

そのうえで、潘事務総長は、「人道主義の名のもと」、アサド政権のみに対して暴力停止と政治的対話の開始を求めた。

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SANA(6月4日付)によると、トルコのアダナ市で、トルコ人とシリア人約数千人が集まり、「戦争反対、シリアへの西側の戦争拒否」を訴えた。

SANA, June 4, 2012
SANA, June 4, 2012
SANA, June 4, 2012
SANA, June 4, 2012

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ハマースのムーサー・アブー・マルズーク政治局次長は、「ハマースはシリアにおいて客人であり、その指導部はダマスカスにおいて何の障害もなく活動を行っている」と述べ、ダマスカスの事務所を閉鎖していないと改めて述べた。

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ヨルダンのアンムーン通信社(6月4日付)は、6月2、3日にシリア、レバノン、湾岸諸国からアンマン国際空港に到着したシリア人数十人がヨルダン当局に入国を拒否された、と報じた。

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サウジアラビア日刊紙『ワタン』(6月4日付)は、サウジアラビア航空で勤務するシリア人女性キャビン・アテンダント内での親政権派と反体制派の対立が15件以上警察に届け出られていると報じた。

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2011年12月から2012年1月にかけてシリアに派遣されていたアラブ連盟監視団メンバーで、アサド政権への批判的言動を繰り返してきたチュニジア人のアンワル・マーリク氏は、フランスの法廷に対して、アサド政権と在仏シリア大使館を殺人幇助、脅迫などで訴えることを明らかにした。

『ハヤート』(6月5日付)が報じた。

AFP, June 4, 2012、Akhbar al-Sharq, June 4, 2012、AKI, June 4, 2012、Ammonnews.com, June 4, 2012、al-Hayat, June 5, 2012、Kull-na Shuraka’, June 4, 2012, June 6, 2012、Naharnet.com,
June 4, 2012、Reuters, June 4, 2012、SANA, June 4, 2012、Twitter, June 4,
2012、al-Watan (Damascus), June 4, 2012、al-Watan (Riyad), June 4, 2012などをもとに作成。

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アサド大統領が人民議会で演説を行いシリアが「内乱の計画」や「外国からの真の戦争」に直面しているとの見解を示す、サウジ外相が国連事務総長と会談し軍事介入の可能性を改めて否定(2012年6月3日)

アサド政権の演説

アサド大統領は人民議会で70分にわたり演説し、国内の反体制運動や諸外国の干渉に関する自らの姿勢を明らかにした。

SANA, June 3, 2012
SANA, June 3, 2012

演説で、アサド大統領は、現下のシリアが政治問題に苛まれているとの見方を否定、テロに根ざした「内乱の計画」、「外国からの真の戦争」に直面しているとの現状認識を示した。

また国内の政治プロセスの進展にもかかわらず、「テロは留まることなくエスカレートしている」と指摘、テロと政治的解決を峻別し、危機の解決に望むとの意思を示した。

そのうえで「テロとの休戦、テロへの寛容はない…。我々は祖国を癒すべくテロと戦わねばならない」との意思を強調した。

http://www.sana.sy/ara/2/2012/06/04/423121.htm(アラビア語)

http://www.sana.sy/eng/21/2012/06/04/423234.htm(英語)

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アサド大統領の演説の骨子は以下の通り。

SANA, June 3, 2012
SANA, June 3, 2012

<国内の混乱による犠牲者に関して>

「彼らの血は無に帰することはない。それは憎しみゆえでなく、真理ゆえに…。我々全員が示すことのできる唯一の弔意とは、我々の祖国が平和と健全さを取り戻し、祖国で暮らす人々を安全、平和、安心、そして安定によって和ませることである」。

<国内の政治改革に関して>

「我々は危機の当初から、明確な改革政策を行うと宣言し…、これらの措置は、我々の意思を疑う敵の期待に反して、発表された日程通りに実施された。危機に依存する国内外の勢力が政治の分野での成果に反対し、政治プロセスを失敗させようと試み続けてきたにもかかわらず、我々は宣言を実行することを止めず、法律を制定し、地方自治選挙を実施し、憲法を制定した。そして殺戮脅迫、テロに屈せず…人民議会選挙が実施された」。

<国内の混乱に関して>

「1年半が経ち、事態が明らかになってきた…。現状における国際社会の役割は…まったく変わっていない…。植民地主義は依然として植民地主義であり、その方法や様相に変化は見られない。地域(中東諸国)の役割も失敗に次ぐ失敗を経て自らをさらけ出している。国民の代理人だと自称する国内の一部の勢力や個人もまた、国民が保護者や代理人なしで自らを表現できることを目の当たりにしている…」。

「我々が国民から学びとったものとは、古く単純な原則だが、実に深いものである。すなわちそれは、問題の解決を望むなら、その問題から逃げるのではなく、立ち向かうということだ」。

<政治的解決とテロ>

「危機の当初から政治的解決について多くが語られてきた…。しかし今まで政治的解決とテロの関係について何かを提示した者はいない…。政治的対話や政治的解決は、テロリストが今行っていることを抑止するのだろうか?…」

「テロはすべての当事者を例外なく打ちのめすのであって、政治的な対立の一部をなすものではない。ある当事者に与して、別の当事者と対立するものでもない…。政治プロセスは前進を見せているが、テロもまた留まることなくエスカレートしている…」。

SANA, June 3, 2012
SANA, June 3, 2012

「彼らは当初、問題は政党がないからだと言っていたが、政党法は制定された。問題は憲法第8条だと言っていたが、憲法も改正された…」。

「テロリストは、改革、対話に関心がなく、断罪や非難に関心があるだけなのだ…」。

「テロと政治プロセスを分けないことは、一部の人が犯している大きな間違えで、テロに根拠を与えてしまっている…」。

「我々が直面しているのは、祖国に内乱と破壊をもたらそうとする計画であり、この内乱の道具こそがテロなのだ…」。

「そして我々は問題がテロに関わる問題だという時、我々はもはや国内の枠組みにのみ留まってはいない。我々は今、外国からの真の戦争に直面しているのだ」。

<反体制勢力に関して>

「実際、我々は常に、対話の準備がある、我々の扉は対話のために開かれている、と言ってきた…。一部の反体制勢力は、対話への意思やその準備があることを発表したが、別の勢力は何も発表しなかった…。一部の反体制(反政府)勢力は選挙に参加し、対話への意思を表明した。そうした勢力は今、この議事堂にいる…」。

「しかし別の反体制勢力は、いまだに国外のバランスに期待している…。彼らは外国からの指図を待っている…。我々には、外国と関係を持ち、外国に依存し、外国の介入を要求し、テロへの直接支援を行ってきた勢力以外との無条件な対話を行う用意が常にある」。

<治安回復>

「テロは政治プロセスとは関係なく、祖国とその国民、制度、政党を標的としている…。我々は祖国を治癒すべくテロと戦わねばならない…。テロとの休戦はないし、それを支援する者との休戦もない。それを断念した者に対してしか寛容であってはならない」。

「国民の安全はレッドラインであり、その代価は高いものとなるだろう…。しかし代価がいかに高かろうと…、我々は国民統合、シリア社会、そしてシリアの力を維持するためにそれを支払う準備をせねばならない…」。

<政治的解決とは>

「政治的解決とな何か?現下のプロセスは危機を解決することもなく、テロを軽減してもいない…。しかし、政治的解決とは法律や憲法よりも包括的なものである…」。

「政治的解決とは我々が、豊かさを意味する意見の相違と、破壊を意味する祖国をめぐる相違を区別することから始められる。多元主義は闘争や衝突ではなく、統合を意味する…」。

<街頭での抗議運動に関して>

「彼ら(街頭でデモを続ける一部の人々)は、問題が政治的当事者間の意見の相違以上の問題だということを理解していない…。問題は当初訴えられていた改革や民主主義をめぐるものではなく、レジスタンスを行うシリアの役割や、レジスタンス組織への支援をめぐる問題だ…」。

「今日、我々が目にしている結果とは、連呼されていたあの自由が一部の国民によるものだったということであり、彼らが語っていたあの民主主義が我々の血で沈んでしまっているという現実だ」。

<ハウラでの虐殺に関して>

「ハウラで起きたこと、そしてカッザーズ、マイダーン、ダイル・ザウル、アレッポなどで起きたことを、我々は卑劣な虐殺だと言ってきた。実際、獣(けだもの)でも我々が見たもの、とりわけハウラの虐殺を行わないだろう。アラビア語、そしておそらく人類の言語は、我々が見たものを表すことなどできない…」。

「このような状況で、誰が得をするのか、そして国家や国家を支持するものがこうした行為を行うだろうか?…我々はアナン特使の和平案と訪問を失敗させようとする者が誰だったかを知っている…」。

「問題は単純で自明的だ。彼らはこの危機において様々なことを始めてきた。民衆革命を起こそうとしたが、ラマダーン月までには挫折した…。ラマダーン月後は、武装活動を始めた…が、失敗した。そのあとは、暗殺、爆発、テロへと移行したが…、失敗した。彼らには、宗派主義的内乱を起こそうとせざるを得なかった…。私は、この状態、そしてこのカードが彼らにとって最後のカードだと考えている。そしてそのことが彼らの破綻を示すものなのだ…」。

「我々の国民に死や破壊を遣わそうとする者がいれば、我々は国民に文明的なモデルを示し、それによって国民は自由を享受し、祖国建設のパートナーとなる…。そしてそうすることにより、奴隷制の国々が民主主義のアドバイスをするのではなく、自由の国々の兄弟たちから人道的なメッセージが我々のもとに届くであろう」。

アサド政権の動き

シリアのユースフ・アフマド・アラブ連盟代表大使は、2日の外相会議での決定に関して、「アラブ連盟は、アナン特使の停戦案に代表される国際社会の努力に資するような公正な当事者たり得ない」と批判し、シリアの加盟資格を停止して以降の連盟のシリア問題に関するいかなる決定も無効だとの立場を改めて示した。

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イエメンのシリア大使館は、声明を出し、サウード・アッバース常駐代表が離反したとの一部報道を否定した。

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『クッルナー・シュラカー』(6月3日付)は、政権からの離反を宣言したハーズィム・シハービー在カリフォルニア名誉参事官が米高官に対して、アサド政権が外交官の忠誠を確認するため、その家族をダマスカス県マッザ区ヴィーラート・ガルビーヤにある軍の団地に「拘留」していると語ったと報じた。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、ドゥーマー市で反体制活動家のアドナーン・ワフビー医師が治安当局によって暗殺された。

またカラムーン地方で未明、反体制武装集団が軍の検問所を襲撃した。

アルバイン市では2日に殺害された市民の葬儀に数千人が参列し、反体制デモを行った。

一方、SANA(6月3日付)によると、ニダール・バシュンマーニー准将が武装テロ集団によって暗殺された。

Syria-Politic.com(6月4日付)は、民主的改革諸勢力国民調整委員会の結成メンバーの一人アドナーン・ワフバ氏がドゥーマー市でシリア当局に暗殺されたと同在外事務局のハイサム・マンナーア代表が発表したと報じた。

なおワフバ氏の暗殺については、シリア国民評議会と民主的改革諸勢力国民調整委員会広報局も3日に当局による暗殺だと発表した。

ワフバ氏はアラブ社会主義連合民主党メンバーでもあった。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アナダーン市、ハイヤーン町で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

またアターリブ市郊外では、民間人1人が砲撃に巻き込まれ死亡した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カフルズィーター市で、軍・治安部隊が奪還をめざして砲撃を加えた。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、タブカ市での爆発で死亡した市民の葬儀に数百人が参列し、アサド政権の打倒を求めた。

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『クッルナー・シュラカー』(6月3日付)は、イドリブ県出身で在カタールのビジネスマン、ハーリド・ガザール氏が、「イドリブ国家安全保障大隊」を名のる民兵を結成し、弾圧にあたっている、と報じた。

同報道によると、この大隊はバアス党が結成した人民委員会に属する青年約1,500人からなり、金曜礼拝後のデモの強制排除などを行っている、という。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会の渉外局メンバーのムハンマド・ヤースィーン・ナッジャール氏はUNSMISを現在の300人弱から3,000人に増員する必要がある、と述べ、安保理に増員を求める方針であることを明らかにした。

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シリア・ムスリム同胞団は、レバノンのトリポリでの住民の衝突に関して声明を出し、アサド政権が現状を打開するため「レバノンに殺戮計画を輸出しようとしている」と非難した。

レバノンの動き

レバノンの北部県トリポリ市のジャバル・ムフスィン地区とバーブ・タッバーナ地区での住民どうしの衝突を受け、レバノン国軍と内務治安総軍が展開、事態の収拾にあたった。

衝突では15人が死亡、50人以上が負傷している。

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シリア当局は、6月30日にレバノン領内で拘束したレバノン人2人を釈放した。

諸外国の動き

サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は、ジェッダを訪問中の潘基文国連事務総長と会談した。

会談後の記者会見で、サウード・ファイサル外務大臣は、「シリア政府はすべてのイニシアチブを受諾したが、実行しなかった」と述べ、こうした姿勢が何なる「時間稼ぎに過ぎない」と非難した。

そのうえで、アナン特使に関して、「明確で透明性のある」報告書を国連安保理に提出するよう求めた。

しかし、アラブ連盟外相会議での国連憲章第7章に基づく介入に関しては、「アラブ世界の状況が安定するまで、いかなる軍事行動もないだろう」と述べ、軍事介入を否定した。

またシリア国内に安保理が管理する「緩衝地帯」を設置することの是非に関しては、「虐げられた人々の避難所となるのであれば、支持する」としつつ、「真の問題解決は個々人の保護」であると強調した。

一方、レバノンのトリポリでの衝突に関しては、シリア情勢の一環をなすと位置づけたうえで、アサド政権が現下の紛争を「宗派紛争」に転じようとしていると非難、「こうした動きはレバノンだけでなく、シリアにも脅威となる」と警鐘を鳴らした。

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これに対して、潘事務総長は、国際社会がアサド政権の殺戮停止を説得するため努力を行っているとしたうえで、そのなかにロシアの姿勢も含め、その努力を評価した。

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潘事務総長はまたイスラーム諸国会議機構のエクメレッディン・イフサン・オグル事務局長とも会談した。

会談でオグル事務局長は、「政府軍と国内で戦闘を行うそれ以外の武装集団が(停戦)合意に至らなければ…、シリア国内の戦闘が国外に波及する」と警鐘をならし、アナン特使の和平案への実施に関して期限を求めるべきだとの立場を示した。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は、滞在先のストックホルムで記者会見を開き、「ロシアは(シリアでの体制転換プロセスを)支援するためにいなければならない…。すべてのシリア人は民主的転換を通じてよりよい未来を得られると確信せねばならない」と述べた。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、アサド政権が依然として「専制的論理で問題に対処しようとしている」と批判した。

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英『デイリースター』(6月3日付)は、英国のSASおよびMI6が、「シリアで内戦が発生した場合」に備え、反体制勢力を支援する準備を行っている、と報じた。

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スイス経済省経済管轄局報道官は、アサド政権に近いシリア人高官20人の資産20,000,000スイス・フランを追加制裁として凍結した、と発表した。

AFP, June 3, 2012、Akhbar al-Sharq, June 3, 2012、The Daily Star, June 3, 2012、al-Hayat, June 3, 2012、June 4, 2012、Kull-na Shuraka’, June 3, 2012, June 4, 2012、Naharnet.com, June 3, 2012、Reuters, June 3, 2012、SANA, June 3, 2012、Syria-Politics.com, June 4, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アラブ連盟のシリア問題閣僚委員会および緊急外相会議「国連憲章第7章に基づき」アナン特使和平案の実施を推し進めることを安保理に求める(2012年6月2日)

レバノンの動き

北部県トリポリ市のジャバル・ムフスィン地区、バーブ・タッバーナ地区で住民どうしが衝突、ロケット弾、RPG弾などによる交戦で12人が死亡、40人以上が負傷した。

Naharnet.com, June 2, 2012
Naharnet.com, June 2, 2012

ジャバル・ムフスィン地区(アラウィー派)はシリアのアサド政権を支持する住民が多く、バーブ・タッバーナ地区(スンナ派)はムスタクバル潮流の地盤地域の一つである。

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NNA(6月2日付)によると、ヒムス県クサイル地方で負傷したシリア人キリスト教神父がレバノン領内(ベカーア県ザフレ郡)の病院に搬送された。

アラブ連盟の動き

アラブ連盟のシリア問題閣僚委員会および緊急外相会議(議長国クウェート)が、アナン特使出席のもとドーハで開かれ、国連憲章第7章に基づきアナン特使和平案の実施を推し進めることを安保理に求めた。

しかし、イラク、レバノン、アルジェリアは、「国連憲章第7章に基づく」との文言に態度を保留した。

外相会合閉幕時に発表された声明では、期限付きでアナン特使の和平案を即時・完全履行するための必要な措置を講じる責任を果たすよう安保理に呼びかけ、国連憲章第7章に基づく6項目停戦案の実施、経済関係、国境の通行、通信手段などの断絶などを求めた。

また、シリア政府に「治安対策の停止と暴力・殺戮の即時停止」を求める一方、ハウラでの虐殺などを受けるかたちで、正規軍および非政府軍による犯罪への非難を表明、国連人権理事会の採択に従い、国際独立調査委員会の派遣と国際刑事裁判所への提訴の必要があることを強調した。

さらにアラビア語の衛星テレビ放送を配信するアラブサットとエジプトのナイルサットに対して、シリアの国営、非国営の衛星テレビチャンネルの放送を停止するよう要請した。

al-Hayat, June 3, 2012
al-Hayat, June 3, 2012

ナビール・アラビー事務総長は、国連憲章第7章に基づく行動を安保理に求めた点に関して、「我々は安保理にこの案(停戦案)が今日から適用され、その受諾をめぐる交渉の余地がないことを示す明確な決議を求めた」と述べた。

しかし、軍事介入を求めたわけでないと付言した。

アナン特使は会合で、「シリア軍が残虐な行為を行い、恣意的逮捕などの違反を犯している」と非難し、シリア政府に対して言葉でなく行動で応えるよう求めた。

アサド政権の動き

SANA(6月2日付)によると、シリア情報省は声明を出し、アラブサットとナイルサットでのシリアの衛星テレビ放送の配信停止を求めたアラブ連盟外相会議の決定に関して、「報道の自由と表現の自由に対する全体未聞の敵対行為への敵対行為」、「国民の声を封じ込めようとする試み」だと酷評した。

国内の暴力

シリア人権監視団によると、ヒムス県で9人、ダマスカス郊外県で2人、イドリブ県で3人、ダマスカス県で1人、ダルアー県で1人の民間人が殺害された。

またイドリブ県、ハサカ県、ダルアー県、ダマスカス郊外県などで軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘により前者の兵士22人が殺害された。

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AKI(6月3日付)は、複数の活動家の話として、アレッポ県の商店などがハウラでの虐殺に抗議して、ストライキを行ったと報じた。

反体制勢力の動き

自由シリア軍国内合同司令部報道官のカースィム・サアドッディーン大佐はAFP(6月2日付)に対して、「アナン特使の停戦案は失敗した…。我々は自衛のための作戦を再開するだろう」と述べ、暴力の再開を示唆した。

Kull-na Shurakā’, June 2, 2012
Kull-na Shuraka’, June 2, 2012

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シリア国民評議会は声明を出し、アラブ連盟外相会議の決定を高く評価した。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官はロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣と電話会談し、米高官によると、「政治的転換のためシリア人を支援するため、共に行動しなければならない点で意見が一致した」。

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『ハヤート』(6月3日付)によると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との会談(1日)でフランスのフランソワ・オランド大統領は、アサド政権に対する安保理での制裁決議への支持をとりつけるため、政権崩壊後のプロセスへのロシアの参加をもちかけ、シリア人不在の取引を求めたという。

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イランの最高指導者アリー・ハーメネイー師の軍事顧問でイラン・イスラーム革命防衛隊前司令官のヤフヤー・ラヒーム・サファヴィー師は、「米国、イスラエル、欧州諸国、カタールやサウジアラビアといったペルシャ湾岸諸国は、トルコに自らの目的を実行させようとしている。その目的とはアサド政権を打倒し、シオニスト体制を維持することだ」と批判した。

AFP, June 2, 2012、Akhbar al-Sharq, June 2, 2012、AKI, June 3, 2012、al-Hayat, June 3, 2012、Kull-na Shuraka’, June 2, 2012、Naharnet.com, June 2, 2012、NNA,
June 2, 2012、Reuters, June 2, 2012、SANA, June 2, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

公認野党6党を含む政治同盟「国民民主ブロック政党勢力連立」が結成、国連人権理事会ではハウラでの虐殺を調査するための独立国際調査委員会の設置を支持する声明が採択(2012年6月1日)

国内の暴力

『ハヤート』(6月2日付)は、各地で金曜礼拝後に反体制デモが断行され、「数千人が参加した」と報じた。

Kull-na Shurakā’, June 1, 2012
Kull-na Shurakā’, June 1, 2012

「数万人が参加した」とされる前週以前の金曜日のデモに比べ、参加者数は少なかったと見られる。

また、シリア人権監視団は、治安当局が一部のデモに対して発砲するなどして強制排除したとしつつ、死者がでたとは発表しなかった。

フェイスブックなどではハウラでの虐殺に抗議するため、「ハウラの子供たち、勝利の炎」と銘打った反政府デモが呼びかけられていた。

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ヒムス県では、AFP(6月1日付)がサリーム・カッバーニーを名のる活動家の話として報じたところによると、クサイル市郊外の検問所で労働者12人が乗ったバスが治安当局に静止させられ、その場で「戦場処刑」された。

カッバーニー氏によると、殺害された労働者は後ろ手に縛られ、銃で撃ち殺された、という。

このほか、シリア人権監視団によると、ヒムス市のスィバーア地区、バーブ・タドムル地区で軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦し、多数が死傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市に軍・治安部隊が突入し、市民5人が死亡した。

また同監視団によると、ドゥーマー市で銃声・爆発音が聞こえた。

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ダマスカス県では、SANA(6月1日付)によると、バサーティーン地区にテロリストの家で爆弾の準備中に誤爆し、テロリスト2人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マストゥーマ地方で大きな爆発音が聞こえた。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、サイダー町、西ガーリヤ村で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

またシャイフ・マスキーン市では、男性1人がモスクから出たところを射殺された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ブーカマール市で市民1人が治安当局によって射殺された。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シャッアール地区で反体制デモが発生し、治安部隊が強制排除した。

アサド政権の動き

シリアの外務在外居住者省は国連人権理事会の関係各局に対して書簡を送り、米国の複数の企業が傭兵の教練などを通じて、シリアでの人権侵害を行っていると指摘した。

その他の国内での動き

SANA(6月1日付)などによると、各地のモスクでハウラでの虐殺の犠牲者を追悼するための礼拝が行われた。

SANA, June 1, 2012
SANA, June 1, 2012

追悼礼拝は、ダマスカス県のウマイヤ・モスク、アレッポ市、ラタキア市などのモスクで行われたという。

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Syria News(6月1日付)によると、国内で認可された野党6党と、公認申請中の1党、および無所属活動家らがダマスカスで記者会見を開き、「国民民主ブロック政党勢力連立」の名で政治同盟を結成したと発表した。

参加したのは以下の党。

シリア・アラブ団結党
国民青年公正成長党
アンサール党
シリア民主党
シリア国民青年党
アラブ民主団結党
国民ブロック党(公認申請中)

反体制勢力の動き

Elaf.com(6月1日付)は、紛争地域での世論調査を専門とする「プチュテル」研究所が、シリア国内で反体制活動家を対象に秘密の世論調査を行ったと報じた。

調査は暴力が激しい5地域で行い、回答者186人を無作為抽出した(ただし回答者の3分の1はダマスカスに居住)。

質問の内容については紹介されていないが、回答結果から以下の点が明らかになったという。

1. 回答者の約半数がシリア・ムスリム同胞団に批判的で、約3分の1が好意的。
2. ほとんどの回答者がシャリーアの適用や、ウラマーの政治参加に反対。
3. 73%がキリスト教の権利保護を重視。
4. サウジアラビアを好意的に捉えていた回答者は5%のみ。
5. 82%がトルコを政治・経済的モデルとして高く評価。また67%が米国を政治的モデルとして高く評価。
6. チュニジア、エジプトを政治的モデルとして高く評価していたのはそれぞれ37%、22%と低い。
7. イランを政治的モデルとして高く評価していたのは2%のみ。
8. 90%がヒズブッラーを低く評価。

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シリア国民評議会は声明を出し、クサイル市郊外での「戦場処刑」を強く非難し、国連安保理とアラブ連盟に対して、政府による犯罪を停止させ、民間人を保護するための措置をとるよう改めて求めた。

また別の声明では、イランがアサド政権に武器・資金援助を行っていると非難、アラブ連盟に対してイランに援助停止を求めるよう呼びかけた。

レバノンの動き

アレッポ市・郊外革命評議会のアブー・アブドゥッラー・ハラビー報道官は、アレッポでのレバノン人巡礼者誘拐への関与を否定した。

また「アレッポ農村シリア革命家」の犯行声明に関しても、「自分たちではなく別ルートで(ジャズィーラ)に届けられた」と述べた。

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ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長がイマーム・ホメイニーの命日に合わせて、テレビ演説を行い、シリア情勢に関して、平静、対話、そして国民統合維持を呼びかけた。

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アナン特使がレバノンを訪問し、ナジーブ・ミーカーティー首相と会談し、シリア情勢、とりわけレバノンからシリアへの武器密輸問題について意見を交換した。

諸外国の動き

国連人権理事会で、ハウラでの虐殺を調査するための独立国際調査委員会の設置を支持する声明が41カ国の支持により採択された。

ロシア、中国、キューバは反対票を投じ、3カ国(ウガンダ、エクアドル、フィリピン)が棄権・欠席した。

理事会では、ハウラ地域での虐殺を「人道に対する犯罪」とみなし得るとのナバネセム・ピレイ人権高等弁務官の言葉が代読された。

ピレイ人権高等弁務官は、シリア情勢に関して「全面紛争に陥る」危険があると懸念を表明し、虐殺問題を国際刑事裁判所への提訴を呼びかけた。

シリアのファイサル・ハマウィー代表は、ハウラでの虐殺が「テロ集団」の犯行で、使用された武器のほとんどがイスラエル製だと反論、「シリアで内戦を煽ることでイスラエルが行う殺戮を隠蔽しようとしている」と非難した。

一方、国連の拷問防止委員会は声明を出し、シリア国内でのデモ弾圧などを改めて非難した。

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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はドイツのアンゲラ・メルケル首相と会談した。

会談後の記者会見で、プーチン大統領は、シリア国内で内戦の兆候が現れ始めていると警鐘を鳴らす一方、ロシアによるシリアへの武器供与を続けているとのクリントン米国務長官の発言を否定した。

またロシアが、シリアのいかなる当事者をも支持していないと述べた。

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続いて、プーチン大統領は、フランスのフランソワ・オランド大統領と会談した。

会談後の共同記者会見で、オランド大統領は、「アサドの退任以外に現状からの出口はない…。UNSMISが任務を実施できれば…、政治プロセスは、治安と安全を回復するための第2段階に入る…。こうした結果に到達したいのなら、さらなる制裁と圧力が必要である」と述べ、シリアの混乱を助長する必要を強調した。

これに対して、プーチン大統領は、「我々が懸念しているのは事態の過激化であり、事態が制御不能となり、民間人が犠牲になることだ…。我々の目的は敵対し合う当事者どうしの和解である…。我々はすべての当事者を支援し、政治的解決を望んでいる」と反論した。

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一方、ロシア外務省は声明を出し、ハウラでの虐殺に関して、「資金援助や武器密輸がいかにして破壊分子に届いているかを明らかにした」と発表し、外国の支援を受けたテロリストの犯行と断じるアサド政権の立場を支持した。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は、ロシアがシリアに武器供与を継続していることへの「重大な懸念」を表明した。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、『シャルク・アウサト』(6月1日付)に対して、「シリアでの軍事的行動の意思は今のところない」と述べるとともに、「反体制勢力は武装したとしても、政府に太刀打ちできない」と述べた。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、イスタンブールでシリアの反体制勢力や潘基文国連事務総長らと会談し、シリア情勢に関して「全面内戦の縁にある」と述べ、アナン特使の停戦案の履行の必要を強調した。

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自国政府に対する抗議運動が認められていないカタールの首都ドーハで、シリア国民との連帯を訴えるデモが開かれ、シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長らが参加した。

AFP, June 1, 2012、Akhbar al-Sharq, June 1, 2012, June 2, 2012、Elaf.com, June 1, 2012、al-Hayat, June 2, 2012, June 3, 2012、Kull-na Shuraka’, June 1, 2012、Naharnet.com,
June 1, 2012、Reuters, June 1, 2012、SANA, June 1, 2012、al-Sharq al-Awsat, June 1, 2012、Syria News, June 1, 2012、UPI, June 1, 2012、などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア司法軍事調査委員会がハウラ虐殺の調査結果を発表し「武装テロ集団」の責任を主張、自由シリア軍国内合同司令部が在外組織が「自由シリア軍」を名乗ることを禁じる(2012年5月31日)

アサド政権の動き

シリア司法軍事調査委員会のカースィム・ジャマール・スライマーン委員長は、ハウラでの虐殺の初期結果を発表、「武装テロ集団が行った」と結論づけた。

SANA, May 31, 2012
SANA, May 31, 2012
SANA, May 31, 2012
SANA, May 31, 2012

ハウラでの虐殺に関する初期結果報告の要旨は以下の通り:

1. 報告書は目撃者の証言などをもとに作成した。
2. 虐殺は治安維持部隊の攻撃の最中に、同部隊が進入できなかった地区で発生した。
3. ハウラ地域には治安維持部隊の拠点が5カ所あり、武装集団による同地域への軍事作戦は、同地域を国家の統制外に置くことを目的としていた。
4. 武装集団約600~800人が金曜礼拝後にタッルドゥー市内で集結し、破壊活動を行った。
5. これらの武装集団はハウラ地域外から同地域に入り、ラスタン、サアン、ブルジュカーアー、サムアリーンなどの武装集団と連携していた。
6. 武装集団は、迫撃砲、ロケット弾、対戦車砲などの重火器を使用し、タッルドゥー市入口にある治安維持部隊の二つの拠点(カウスおよびダウワール・サーア)に対して集中的な攻撃を行った。
7. 治安維持部隊の拠点への攻撃と同時に、住民の虐殺が行われた。
8. 武装集団との交戦において、治安維持部隊は自らの拠点において自衛のための反撃を行い、交戦時に虐殺現場にはいなかった。
9. 衛星放送で放映された映像などによると、遺体の死因は至近距離からの発砲、ないしは鋭利な刃物によるもので、砲撃による傷跡は見られなかった。
10. 犠牲となったのは穏健な家族は、国家に反抗するものを拒否しており、一度もデモに参加したこともなかった。また武装テロ集団とは意見を異にしていた。
11. 虐殺の第1の目的は、アブドゥルムウティー・マシュラブ人民議会議員の親戚の殺害であったと考えられる。
12. 同地域には、反体制武装集団に知られずに何者も入ることはできなかった。

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シリア外務在外居住者省のジハード・マクディスィー報道官は、イスタンブールでの潘事務総長の発言(後述)に関して、「国連事務総長からこのような発言があるとは残念だ。残念なことに、事務総長は平和維持活動を内戦を唱導する者に委ねてしまっている」と非難した。

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在カリフォルニア・シリア名誉領事のハーズィム・シハービー氏がハウラでの虐殺に抗議し、辞意を表明した。

ハーズィム・シハービー氏の父はヒクマト・シハービー元参謀長で、名誉領事職を18年にわたって務めてきた。

国内の暴力

シリア革命調整連合など反体制勢力はフェイスブックなどで、「ハウラの子供たち、勝利の炎」と銘打った反政府デモを6月1日に行うよう呼びかけた。

一方、シリア・アラブ・テレビ(5月31日付)は6月1日に、「シリア全土のモスクで、ハウラでの殉教者と祖国のすべての殉教者を追悼するための礼拝」を呼びかけた。

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『ハヤート』(6月1日付)によると、ダマスカス(県・郊外県)とアレッポの一部地区の商店が、ハウラの虐殺に抗議するストライキを続けた。AKI(5月31日付)によると、ゼネストは28日から続けられている、という。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市で、軍・治安部隊が砲撃し、離反兵1人、女性1人を含む9人が死亡した。

また軍・治安部隊はハウラ地方を砲撃、同地方のタッルドゥーでは青年1人が治安当局に射殺された。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で人民議会議員の兄弟の家族が発砲を受け、1人が死亡、複数が負傷した。

またアレッポ大学電気工学部で爆発があり、治安要員1人が死亡した。

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ダマスカス県・ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市、ムウダミーヤト・シャーム市、アラバイン市、カラムーン地方でハウラでの虐殺に抗議するストライキを停止させるため、治安部隊が展開した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サルキーン市で軍・治安部隊と離反兵が交戦した。

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ダルアー県では、『クッルナー・シュラカー』(5月31日付)は、29日に誘拐された13人が、人質交換により釈放された。

同報道によると、スワイダー県の誘拐犯が誘拐していた複数名を30日に釈放したのを受け、ダルアー県の誘拐犯がこの13人を釈放した、という。

誘拐犯の政治的背景は不明で、また仲介は現地の宗教権威や愛国者が行い、当局は介入しなかった、という。

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シリア・アラブ・テレビ(5月31日付)は、反体制デモでの逮捕者のうち殺人を犯していない500人を当局が釈放したと報じた。

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シリア人権ネットワークは、2011年3月以降の死者数が15,423人にのぼったと発表した。

犠牲者のうち子供は1,142人(男性868人、女性274人)で、ヒムス県の犠牲者数は6,208人(うち子供は556人)、イドリブ県の犠牲者数は2,761人、ハマー県の犠牲者数は1,758人にのぼっているという。

反体制勢力の動き

トルコ避難中の自由シリア軍司令官リヤード・アスアド大佐は、ジャズィーラ(5月31日付)で、和平案の失敗を宣言し、反体制勢力に停戦合意の履行を免除するようアナン特使に呼びかけた。

アスアド大佐はまた「(アサド政権による暴力停止の48時間の)猶予などない」と述べ、自由シリア軍国内合同司令部の最後通告を否定した。

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自由シリア軍国内合同司令部は声明第9号を出し、在外の軍事組織、文民組織が「自由シリア軍」を名乗ることを禁じると宣言、トルコで避難中の自由シリア軍司令官のリヤード・アスアド大佐や軍事評議会議長のムスタファー・シャイフ准将の「外部介入」を拒否するとの意思を示した。

同声明はカースィム・サアドッディーン大佐(報道官)が発表した。

http://all4syria.info/web/Archive/43403

بيان رقم(9) الصادر عن القيادة المشتركة للجيش السوري الحر قي الداخل بتاريخ31/05/2012

نعلن انه لايحق لإحد ان يتكلم أو يصدر أي بيانات للجيش السوري الحر في الداخل واعتبارا?? من تاريخه لن تأخذ القرارات إلا من قيادات المجالس العسكرية في الداخل التي تعبر عن حال الشعب السوري الثائر ولا يحق لأي جهة عسكرية أو مدنية في الخارج ان تتكلم عن خطط الجيش السوري الحر في الداخل لإنه لا يعبر إلا عن رأيه فقط ونستثني الذين خولتهم المجالس العسكرية في الداخل ونطالب بإنه من أراد ان يمثل الشعب السوري والجيش الحر أو ناطقا بإسمه فليتوجه إلى أرض الميدان وليتوجه من الداخل حتى يستطيع ان يمنحه الشعب السوري المنتفض هذه الشرعية نحن نؤكد لهذا الشعب السوري البطل اننا معكم في هذه المعركة ونعيش أوضاعكم و معاناتكم حالنا حالكم وحال عوائلنا حال عوائلكم ونقول من اراد القيادة فليكون في ميدان المعركة وليس إعلاميا في الخارج نحن نريد أن نسال أين ما يسمى بقائد الجيش السوري الحر من الدماء التي سفكت وما تزال تسفك من خلال مجازر التي إرتكبتها عصابات النظام.

عاشت سورية وليسقط نظام الظلم والإستبداد

العقيد الطيار الركن قاسم سعد الدين

الناطق الرسمي بإسم القيادة المشتركة للجيش السوري الحر في الداخل

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シリア・ムスリム同胞団のズハイル・サーリム報道官はAKI(5月31日付)に対して、シリアにあるのは「解決困難な…危機」ではなく、「イデオロギー、宗派、党はと無縁の…民衆の革命がある」と述べた。

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『クッルナー・シュラカー』(6月1日付)は、反体制のシリア・クルド国民評議会と親政権の民主統一党が合同委員会設置で合意したと報じた。

同報道によると、5月31日、ハサカ市でシリア・クルド国民評議会と、PKK系のクルド民族主義組織である民主統一党が指導する西クルディスタン人民議会が、地元での各委員会設置のための合同委員会を結成することに合意し、ムスタファー・ウースー(シリア・クルド国民評議会事務局メンバ-)、フクム・フルウ(西クルディスタン人民議会事務局メンバー)が統括役となった。

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シリア暫定議会は声明を出し、国内の武装反体制活動家に議会への代表者の選出・参加を呼びかけた。

レバノンの動き

NNA(5月31日付)は、前日に続き、シリア軍がベカーア県バアルベック郡アルサール地方市郊外の対シリア国境で、レバノン人1人を捕捉した、と報じた。

Naharnet, May 31, 2012
Naharnet, May 31, 2012

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「アレッポ農村シリア革命家」をなのる集団がジャズィーラ(5月31日付)に声明を送り、アレッポでのレバノン人11人の誘拐を認め、「(彼らの一部が)シリア政府による犯罪や虐殺に関与していることを知り、現在調査中」としたうえで、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長の「謝罪」が釈放の条件だと述べた。

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アナン特使がレバノンを訪問し、ミシェル・スライマーン大統領と会談した。

NBN(5月31日付)によると、会談では、シリア情勢、アレッポで誘拐されたレバノン人巡礼者、武器密輸などの問題が協議された。

しかしマナール(5月31日付)は、武器密輸問題は議論されなかったと報じた。

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ミシェル・スライマーン大統領は、30日に北部県で拉致されたレバノン人2人に関して、シリア当局にただちに釈放するよう呼びかけた。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、訪問先のデンマークで、「我々が政治的転換プロセスの実現に向けて活動しているなかで、ロシアは体制を支援している…。彼らは私に内戦は望まないと言っているが、私は彼らにいつも、彼らの政策が内戦勃発に寄与するものだ」と本末転倒な発言をした。

またクリントン国防大臣は、シリアへの軍事干渉を排除している理由に関して、リビアとは違う点を強調、シリアの宗教・宗派、エスニック集団がより多様・分節的で、単一の反体制勢力が存在せず、シリア軍の防空システムがリビアの数段強力だ、と述べた。

一方、NATO米代表部のイボ・ダールダー大使は、NATO内でシリアへの軍事介入についての議論は行われていない、と語った。

またレオン・パネッタ米国防長官は、シリアへの軍事介入に関して、「国連の支持が必要だ」と述べ、消極的な姿勢を示した。

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ロシア大統領報道官は、シリアへのロシアの姿勢に関して、「ロシア大統領へのいかなる圧力もシリア危機へのその姿勢を変化させるものではない」と述べ、「ロシアの姿勢は周知の通り、調和的、論理的だ」と強調した。

またロシアのEU大使は、非公式のテレビ回線を通じてEUに対して、「軍事介入や事態のエスカレートを回避するため」自制するよう呼びかけた。

一方、SANA(5月31日付)は、ロシア共産党がハウラでの虐殺に関して、「西側諸国の諜報機関が関与している」との声明を発表したと報じた。

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ドイツのアンゲラ・メルケル首相はロシアの姿勢を「建設的」だと高く評価した。

メルケル首相は、「ロシアがシリアの危機をめぐって建設的に行動してきたと指摘した。さらなる行動をとりたいと思うときもあるが、人権擁護など共通項を多く共有している」と述べた。

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国連の潘基文事務総長はイスタンブールでのフォーラムでシリア情勢に関して、「先週末に起きたあのような虐殺は、シリアを悲惨な内戦へと陥れ、そこから脱することはできないだろう」と述べ、アサド政権に「国民に対する責任をとる」べく、暴力を停止するよう呼びかけた。

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ドイツのZDFテレビは、西側消息筋の話として、イラン政府がイラン航空やヤス・エアーの航空機でシリアに武器を密輸している、と報じた。

AFP, May 31, 2012、Akhbar al-Sharq, May 31, 2012、AKI, May 31, 2012、Aljazeera.net, May 31, 2012、al-Hayat, June 1, 2012, June 2, 2012、Kull-na Shuraka’, May 31, 2012, June 1, 2012、al-Manar,
May 31, 2012、Naharnet.com, May 31, 2012、NBN, May 31, 2012、Reuters, May
31, 2012、SANA, May 31, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

自由シリア軍国内合同司令部はアサド政権に対し国連決議遵守までに48時間の猶予を与えると発表、国連安保理会合では米国連大使が安保理各国に対し同政権への圧力を強めるよう主張(2012年5月30日)

国内の暴力

シリア国民評議会など反体制組織がハウラでの虐殺に抗議するためのゼネストを呼びかけなかったが、国内で大規模なデモが発生したとの発表、情報は(今のところ)ない。

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ダイル・ザウル県では、ロバート・ムードUNSMIS司令官が発表したところによると、ダイル・ザウル市郊外のスッカル地方で29日に13体の遺体を発見した、と発表した。

発表によると、遺体は後ろ手で縛られ、一部の遺体は頭を近距離から銃で撃たれた跡があった。

ムード司令官は「大いなる憤りを感じる」と述べ、「すべての当事者にシリアとシリア国民のために自制し、暴力継続を停止するよう」呼びかけ、アナン特使がアサド政権に暴力停止のための「大胆な措置」をとることを求めるよう訴えるとともに、「影響力のある国々に、政府とそのほかのすべての当事者にあらゆる暴力を停止する必要があることを説得するよう」求めた。

一方、SANA(5月30日付)によると、武装テロ集団がアブー・フマーム地方・ガラーニージュ地方間でユーフラテス石油社のパイプラインへの破壊工作を行った。

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ダマスカス県・ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、サイイダ・ザイナブ町、クタイファ市で軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦した。

またドゥーマー市では激しい爆発音が聞こえ、5人が死亡したという。このほか、カダム区、ハジャル・アスワド市でも激しい爆発音・銃声が聞こえたという。

一方、ダーライヤー市でも、治安部隊の発砲で1人が死亡したという。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カフルズィーター市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、前者の兵士多数、後者の戦闘員2人が死亡した。

またカルナーズ町ではカフルズィーター市での戦闘での犠牲者を悼むゼネストが行われたという。

一方、『アフバール』(5月30日付)は、ハマー県の治安当局がレバノンのアイン・フルワ・パレスチナ難民キャンプから脱走し、シリアに潜入したパレスチナ人イスラーム主義者2人を拘束した、と報じた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で反体制武装集団の兵士1人が殺害された。

またハーリディーヤ地区で大きな爆発音や銃声が聞こえた。

クサイル市郊外の対レバノン国境近くにあるサカルジャ村とブルハーニーヤ村では、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

また同監視団は、ハウラ地方のタッルドゥー市に対して迫撃砲が撃ち込まれ、複数の黒煙が上がったと発表した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マガーラ村周辺で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、双方に多数の死者がでた。また軍・治安部隊はファルキヤー村、ダイル・サンバル村などを砲撃した。

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レバノンの『ビナー』(5月30日付)は、ハウラでの虐殺に対する初動調査で判明したとされる容疑者複数名の名前をリークした。

同報道によると、容疑者(テロリスト)は以下の通り:ラドワーン・ファルハーン・サイード、マシュフール・マスウード、アブドゥルカリーム・ラヒール、アクラム・ラッシャーシュ・アーミル、ムフイーッディーン・マフムード・シハーブ、およびアクシュ家のテロリスト。

アサド政権の動き

シリア外務省はオランダの常駐代表に対して72時間以内に国外に退去するよう伝えた。

ただしオランダは2月7日に駐シリア大使を本国に召還し、大使館も3月20日に閉鎖している。

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『バアス』(5月30日付)は、社説で、西側諸国によるシリア大使、外交官の国外退去処分に関して、アナン特使のイニシアチブを挫折させようとする動きと非難した。

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ヨルダンの週刊誌『マジド』(5月30日付)は、アースィフ・シャウカト副参謀長(中将)暗殺に関する反体制勢力の主張や一部メディアの報道が事実無根だと報じた。

反体制勢力の動き

自由シリア軍国内合同司令部報道官のカースィム・サアドッディーン大佐はユーチューブ(3月30日付)を通じて声明を出し、アサド政権に対して国連決議遵守までに48時間の猶予(シリア人間6月1日12:00)を与える、との最後通告を行い、この呼びかけに応じなければ、「アナン特使の停戦案を自らに課すことなく、民間人…防衛のための道徳的義務を行使する」と発表した。

またサアドッディーン大佐はAFP(5月30日付)に対して、アサド政権にはもはや「力以外に利用できるものがない」としたうえで、「政府が行う虐殺と過剰な暴力の行使は、政権が終わりに近づいていることを示している」と述べた。

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シリア国民評議会は声明を出し、シリア軍・治安部隊によるレバノン領内への越境攻撃を非難するとともに、国連に対してシリア人避難民の保護を求めた。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、西側諸国によるシリア大使、外交官の国外退去処分に関して、「正しい方向への重要なステップ」と支持を表明した。

レバノンの動き

「レバノンの声」ラジオ(5月30日付)によると、シリア軍は北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方でレバノン人2人を捕捉した。

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在レバノン・トルコ大使はナビーフ・ビッリー国民議会議長、ナジーブ・ミーカーティー首相、ヒズブッラーのムハンマド・ラアド議員と相次いで会談し、アレッポで誘拐されたレバノン人巡礼者釈放にトルコが全力を尽くしているとのアフメト・ダウトオール外務大臣のメッセージを伝えた。

国連の動き

国連安保理ではシリア情勢に関する会合が行われた。

スーザン・ライス米国連大使は会合後、「我々には三つの選択肢しかない。ダマスカスがただちに停戦案を遵守し、同停戦案、国連安保理決議第2042、2043号を実施するか。安保理が責任を負い、シリア政府に追加の圧力や制裁を科すか。安保理やアナン特使の和平案の枠組みの外で行動するか、である」と述べた。

ただし、ライス米国連大使は、第3の選択肢に関して、地域全体で暴力が拡散・エスカレートし、他の国々を巻き込み、シリアを含む地域全体で宗派的暴力が激化することを受けて行われるべきものだ、との慎重な姿勢も示した。

しかし、「反体制勢力は政府が暴力を止めない限り、そしてそのことに関してウソをつくことをやめない限り、(交渉の)テーブルにつくことができない」と述べ、シリア政府によるアナン特使の停戦案の遵守を「政治プロセスに向かって路線を戻す最短の方法だ。しかしそれは今のところ存在しないかのようである」と述べた。

そのうえで、安保理各国に対して、シリア政府への圧力を強めるよう主張、ロシア、中国の同調を暗に求めた。

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SANA(5月30日付)によると、シリアのバッシャール・ジャアファリー国連大使は国連安保理の会合で、アナン特使の停戦案の実施には「暴力を助長し、武装テロ集団に武器を密輸し、資金とシリア国外での拠点を提供するすべての当事者の政治的意思が必要」だと述べた。

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ジャン・マリー・ゲエノ(Jean-Marie Guehenno)シリア危機担当国連・アラブ連盟合同副特使は、安保理会合にジュネーブから参加し、アナン特使のメッセージを伝えた。

同メッセージは「シリアの危機は政治的解決と政治プロセスへの参加なしには終わらない」としたうえで、「安保理はアナン特使の停戦案を、支援宣言だけでなく、それを実行可能とするような完全な戦略を通じて支持することができる」と強調、「平和的な未来を実現する方法をめぐるイニシアチブ発揮、行動、政治的ビジョンの提示」を求めた。

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アナン特使はヨルダンのナースィル・ジャウダ外務大臣と会談した。

ヨルダン外務省が発表した声明によると、アナン特使は会談で、暴力を停止させる方法を案出するため、関係する国や当事者とのさらなる協力や努力を行うとの意思を示した。

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国連人権理事会報道官は声明を出し、カタール、トルコ、サウジアラビア、クウェート、デンマーク、米国、EUがシリア情勢に関する会合の開催の提案(21カ国が支持)を受け、31日に会合を開催すると発表した。

ロシアと中国はこの提案に参加していない。

諸外国の動き

日本の外務省は、ムハンマド・ガッサーン・ハバシュ在東京シリア大使に対して「できるだけ早い時期に」国外に退去するよう伝えた。

しかし、玄葉光一郎外務大臣は、シリアとの外交関係を継続すると述べた。

またムハンマド・ガッサーン・ハバシュ在東京シリア大使は5月23日に2012年政令第156号(5月23日)にて大使職を解かれ、出向元である経済通商省に異動となっていた。

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トルコ外務省は、常駐代表を含む外交官に72時間以内に国外退去するよう伝えた。

ただし追放される外交官のなかにはイスタンブールのシリア領事館のスタッフは含まれていない。

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ロシアの大統領報道官は、6月1日のウラジーミル・プーチン大統領の訪仏・独によって、ロシアの対シリア政策が変化することはないだろう、と述べた。

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中国外交部報道官は、シリア情勢に関して、中国が軍事介入に反対する意思を改めて表明した。

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イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領はフランス24(5月30日付)に対して、ハウラでの虐殺への非難の意を示し、責任者の処罰を求める一方、アサド政権が関与しているとは思えないと述べた。

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スペイン外務省報道官は、シリアへの軍事介入を示唆した仏大統領の発言に関して、「安保理でのコンセンサスを必要とする」との慎重な見方を示した。

また「反体制勢力への武器供与が実質的に困難で…、そのことが、アサド政権に反体制勢力への新た虐殺の青信号となってしまう」との懸念を示した。

さらに反体制勢力への武器供与や飛行禁止空域の設定に関しては、アサド政権がリビア軍より「数段協力」な軍と防衛システムを持っているため、困難だとの見方を示した。

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ドイツ外務省報道官は、「ドイツ政府にとって、シリア情勢に関する軍事的選択肢に言及する理由はない…。国連とアラブ連盟の仲介が最善の選択肢だ」と述べ、軍事介入を否定した。

しかしギド・ウェスターウェレ外務大臣は、「アサドがいてはシリアに未来はない。平和的変革をもたらすために彼は去らねばならない」と述べた。

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ルクセンブルグの外務大臣は、『シュピーゲル』(5月30日付)で、シリアへの軍事干渉に関して、「数万人がさらに死亡するだろう」と述べ、消極的な姿勢を示した。

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オーストリアの外務大臣は、シリア情勢をめぐる「軍事的選択肢への参加には反対する」と述べた。

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米財務省は声明を出し、米国がカタールとともにシリア・イスラーム国際銀行の資産を凍結すると発表した。

同銀行は、ラーミー・マフルーフ氏やカタールの投資家が株を保有している。

一方、デニス・マクドノー米国家安全保障会議(NSC)首席補佐官は訪問先のカタールで、アサド政権の崩壊は「イランの戦略に大きな障害をもたらすだろう…。アサド政権は信頼を失った…。ロシアにとって同政権と関係を保つことは国益にならない」と述べた。

AFP, May 30, 2012、al-Akhbar, May 30, 2012、Akhbar al-Sharq, May 30, 2012、al-Binaʼ, May 30, 2012、al-Ba’th, May 30, 2012、al-Hayat, May 30, 2012、May 31, 2012、Kull-na Shuraka’, May 30, 2012, May 31, 2012、al-Majid, May 30, 2012、Naharnet.com, May 30, 2012、Reuters, May 30, 2012、SANA, May
30, 2012などをもとに作成。

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アサド大統領と会談したアナン特使が「シリア政府のUNSMISへの積極的な強調の意思」を高く評価するも、米国、英国、フランス、ドイツを含む8か国はハウラでの虐殺に抗議しシリア大使らの国外追放を決定(2012年5月29日)

アナン特使および国連の動き

アサド大統領はダマスカス訪問中のアナン特使と会談し、SANA(5月29日付)によると、アナン特使の6項目停戦案の実施状況などに関して意見を交わした。

SANA, May 29, 2012
SANA, May 29, 2012

アサド大統領は会談で、「武装テロ集団が最近各地でテロ活動をエスカレートさせ、殺戮、誘拐、さらには略奪、破壊行為を行っている」と指摘した。

また「武装テロ集団に資金、武器、潜伏の支援を行う国々はこの停戦案を遵守し、テロ停止に寄与するというこれらの国々の政治的意思があることを示すべき」だと指摘し、「停戦案の成功はテロリスト、テロ支援者の活動と武器密輸を停止させることにかかっている」と強調した。

一方、SANA(5月29日付)によると、アナン特使は、シリア政府の自身およびUNSMISへの積極的な強調の意思を高く評価した、という。

会談には、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣、ジハード・マクディスィー外務在外居住者省報道官が同席した。

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アナン特使はアサド大統領との会談後に記者会見を開き、シリア情勢が「引き返せない地点」に来たと述べ、シリア政府に暴力の「即時停止」を求めた。

また「シリア政府と政府を支持するすべての民兵はすべての軍事作戦を停止し、最大限の自制を示すことができるということだ」と述べるとともに、反体制勢力に対しても暴力停止を呼びかけた。

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会談に関して、アナン特使の報道官アフマド・ファウズィー氏は声明を出し、「ハウラでの最近の事件を含むシリアでの暴力への国際社会の懸念を伝えた」と発表した。

SANA, May 29, 2012
SANA, May 29, 2012

またアナン特使が「率直な表現で、自身の見解を伝え、暴力停止と逮捕者釈放といった大胆な措置なくして6項目停戦案は成功し得ないと伝えた」と付言した。

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アナン特使はダマスカスで各地の部族代表者8人と会談した。

部族代表者はハサカ県のアドワーン部族のシャイフ、ジャウハル・フルウ氏らで、アナン特使に対して、反体制勢力の暴力を停止させるよう求めた。

アサド政権の動き

アーディル・サファル内閣が閣議を開き、ハウラでの虐殺を非難した。

ハウラでの虐殺に関して

米国、英国、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、スペイン、イタリアの8カ国は、ハウラでの虐殺に抗議するため、シリア大使らを国外追放処分とした。

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フランスのフランソワ・オランド大統領は記者会見で、ラーミヤー・バャックール駐仏シリア大使(兼UNESCOシリア代表)に対して72時間以内にフランスから退去するよう伝えた、と発表した。

また7月初めに「シリアの友連絡グループ」会合をパリで開催すると発表した。

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ビクトリア・ヌーランド米国務省報道官は、ズハイル・ジャッブール駐米シリア常駐代表に対して72時間以内に米国から退去するよう伝えた、と発表した。

また同報道官は、すべての国に対して、アサド政権の行為を非難するために同様の措置をとるよう呼びかけるとともに、ハウラの「住民は政府軍によって処刑された」と断じ、シリア政府に虐殺の責任があると非難した。

なお、シリア側は2011年末、イマード・ムスタファー大使を「中国に大使として異動」させて以降、米国に大使を置いていなかった。

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英国外務省もガッサーン・ディッラ常駐代表を含む3人の外交官に対して英国を退去するよう伝えた。

サーミー・ハイミー駐英シリア大使は2012年3月、英国が駐シリア大使を帰国させるのに対抗するかたちでシリアに帰国していた。

これにより、英国にシリアの外交官は不在となる。

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スペイン外務省は、フサームッディーン・アラー駐西大使ら外交官4人を追放すると発表した。

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ドイツ外務省は、ラドワーン・ルトフィー駐独大使に対して国外に退去するよう伝えた。

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イタリア外務省は、ハサン・ハドゥール駐伊大使に対して国外に退去するよう伝えた。

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オーストラリア外務省は、ジャウダト・アリー駐豪シリア常駐代表を含む外交官2人を追放すると発表した。

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カナダ外務省は、常駐代表を含むシリア人外交官全員(常駐代表および外交官1人)とその家族に対して、5日以内に退去するよう伝えた。

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ベルギー外務省はシリア大使およびシリアの外交官2人に対して「ベルギーにおいて望ましくない人物」だと伝えた。だが国外退去は求めなかった。

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国連人権高等弁務官報道官はジュネーブで記者会見を開き、ハウラでの虐殺に関して、「108人の死者のうち少なくとも20人は迫撃砲、戦車の発砲で死亡したと考える」と述べた。

また「それ以外のほとんどが…別の二つの事件で処刑された」と付言、目撃者らや活動家らが「シャッビーハ」による犯行だと疑っていることを指摘した。

人権高等弁務官事務所のこの調査が誰によって行われたかとの記者団の問いに関しては、安全上の理由で明かせないと応えた。

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BBC(5月29日付)は、ハウラでの虐殺に関して、シャッビーハが家々に進入し、住民を殺害していったとの活動家や住民の証言を放映しつつ、「現段階でこうした話が事実かどうかは調査できない」と付言した。

国内の暴力

ロンドンを拠点とする反体制組織のシリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長はAFP(5月29日付)に対して、「最近数日間の大敗でシリア軍は疲弊している…。シリア政府は軍の不満を回避するため正確な(被害に関する)数字を示していない」と述べた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル地方東ブワイダ村で、軍の迫撃により市民3人が死亡した。

またヒムス市サフサーファ地区で市民4人が射殺された、という。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、市民1人が射殺された。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市で市民2人が射殺された。

またトゥワイニー村では、軍の発砲により青年1人が殺害されたという。

一方、サラミーヤ市ではハウラでの虐殺に抗議する反体制デモが発生した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アイン・タルマー村で軍の発砲により市民1人が死亡した。

またカタナー市で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、死人1人が死亡、数十人が逮捕、複数の民家が破壊された。

一方、バイト・サフム市ではハウラでの虐殺に抗議する反体制デモが発生した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アターリブ市が軍・治安部隊の砲撃にさらされ、市内では軍・治安部隊と離反兵が交戦した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ラッカ市の刑事保安局ビル近くで、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、前者の中尉と軍曹が殺害された。

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ダマスカス県では、SANA(5月29日付)によると、ルクンッディーン区にあるテロリストの自宅で爆弾が爆発し、テロリストとその兄弟の2人が死亡した。

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ダルアー県では、『クッルナー・シュラカー』(5月31日付)によると、ダルアー・スワイダー街道で乗り合いバスがハイジャック、13人が誘拐された。

誘拐された13人のうちほとんどがスワイダー県出身のドゥルーズ派の警官だった。

これに関して、反体制活動家のヌールッディーン・ヒラーキー弁護士が、親アサド政権のレバノン人政治家の「ウィアーム・ワッハーブ氏(ドゥルーズ)の悪党がスワイダーで住民や通行人を誘拐した」と発表した。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会は声明を出し、西側諸国によるシリア外交官追放への歓迎の意を示すとともに、ダマスカスの住民に対してハウラでの虐殺に抗議するためのゼネストを行うよう呼びかけた。

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国内で反体制活動を行うシリア民主フォーラムは声明を出し、ハウラでの虐殺を非難、ダマスカス県民、とりわけビジネスマンや事業家に対して29日に、犠牲者追悼と虐殺反対の意思を示すためのゼネストを行うよう呼びかけた。

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アラウィー派の反体制活動家100人以上がハウラでの虐殺に反対する声明を「シリア国民およびアラウィー派宗徒」の名で発表した。

レバノンの動き

AFP(5月29日付)はレバノン治安筋の話として、未明にシリア軍がベカーア県バアルベック郡アルサール市郊外の対シリア国境でシリア軍の発砲を受け、レバノン人1人が死亡したと報じた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はアナン特使と電話会談した。

ロシア外務省によると、ラブロフ外務大臣は、シリアのすべての当事者が暴力を停止すべきだとの立場を伝えた。

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フランスのオランド大統領はフランスのチャンネル2(5月29日付)に対して、「安保理での審議」が前提条件になるとしつつもシリアへの軍事介入の可能性を排除しないと述べた。

一方、ローラン・ファビウス外務大臣は『ルモンド』(5月29日付)に対して、「アサド大統領は国民を殺害した。権力の座から去らねばならない」と述べた。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、AKPの定例会合で、「忍耐にも限度がある。アッラーの意思のもと、安保理にも忍耐の限度があるべきだと思う」と述べた。

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イスラエルのシモン・ペレス大統領はハウラでの虐殺に関して、アサド大統領は「殺人犯」になったと述べた。

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ローマ法皇ベネディクト16世の報道官は声明を出し、ハウラでの虐殺への遺憾の意と犠牲者への哀悼の意を示した。

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ヒューマン・ライツ・ウォッチはハウラでの虐殺に関して、シリア政府に圧力をかけ、国際調査団の受入を認めさせるようアナン特使に呼びかけた。

AFP, May 29, 2012、Akhbar al-Sharq, May 29, 2012、al-Hayat, May 29, 2012, May 30, 2012、Kull-na Shuraka’, May 29, 2012, May 31, 2012、Naharnet.com, May 29, 2012、Reuters, May 29, 2012、SANA, May 29, 2012、Yuqal.net, May 29, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ムアッリム外相がアナン特使と会談し「シリアで起きている事の実情」について議論、一方ラブロフ露外相とヘイグ英外相が会談するも和平に向けた両国のアプローチは依然として一致せず(2012年5月28日)

コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使のシリア訪問

コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使がダマスカスを訪問し、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣と会談した。

SANA, May 28, 2012
SANA, May 28, 2012

SANA(5月28日付)によると、ムアッリム外務在外居住者大臣は会談で、「シリアで起きている事の実情と、国内の混乱を助長するためにさまざまな手段を通じて同国が標的となっている実態」を伝えるとともに、「さまざまな分野で政府が推進する改革諸政策」を説明した。

そのうえで、武装テロ集団への資金、武器などの供与を通じて、アナン特使の停戦案を失敗させようとする他の当事者とその支援国と対峙する努力を継続するよう呼びかけた。

一方、アナン特使は、シリア政府と引き続き協調する意思を示すとともに、6項目停戦案、具体的にはジャーナリストの自由な移動、赤十字国際委員会やシリア・アラブ赤新月社による人道支援などを円滑に履行するためのさらなる協力を求めた、という。

なお『ハヤート』(5月29日付)は、アラブ連盟のナースィル・カドワ副特使のアナン特使への随行がシリア政府によって拒否されたことに関して、複数の消息筋の話をもとに、「シリア政府は徐々に、国連の意向に沿うかたちで、アナン特使のミッションにおけるアラブ連盟の役割を弱めている」と伝えた。

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コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使は、ハウラでの虐殺に関して、「悲惨で恐るべき」虐殺と述べ、自身が受けた衝撃を露わにし、6項目停戦案が「実施されていない」と非難した。

またアサド政権に対して、「危機を平和的に解決する意思を示すための協力な措置の実施」を求める一方、「すべての当事者に信頼ある政治プロセスに至るに相応しい状況を作り出すための支援」を呼びかけた。

アサド政権の動き

SANA(5月28日付)は、シリアの外務在外居住者省が国連安保理、総会、人権理事会に宛て、ハウラでの虐殺など一連の虐殺が武装テロ集団によるもので、「いかなる戦車も(ハウラ地方に)入っておらず…シリア軍は最大限の自制と最適な対応を通じて自衛を行っていた」とする書簡を提出したと報じた。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ヤブルード市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、前者の兵士8人と後者の戦闘員2人が死亡した。

またサイイダ・ザイナブ町では爆弾が爆発し、治安維持部隊兵士4人が負傷した。

一方、SANA(5月28日付)によると、ムライハ地方で治安維持部隊を標的とした爆弾攻撃が発生し、兵士4人が死亡した。

またムニーン町で治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、前者の兵士7人が死亡した。

しかし『クッルナー・シュラカー』(5月28日付)はムニーン町での戦闘に関して、軍・治安部隊兵士39人、自由シリア軍兵士1人が死亡したと報じた。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、カフル・ナースィジュ村、タファス市、インヒル市、アトマーン村、ダーイル町などで軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、タファス市で1人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市で新政権の武装集団が離反兵1人を射殺した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市のファーリヤ地区で治安部隊が14歳の青年を射殺した。

一方、SANA(5月28日付)によると、ハマー市のマルアブ地区南部で武装テロ集団が発砲、市民3人が死亡した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区で治安部隊が市民1人を射殺した。

また『ザマーン・ワスル』(5月28日付)によると、反体制ストリーミング・テレビのシャーム・ニュース・ネットワークのスタッフ3人がヒムス市で治安部隊の要撃を受け、殺害された。

殺害されたのは、ヒムス支局長のアンマール・ムハンマド・スハイル・ザーダ氏、同支局配信局長のルーラーンス・ファフミー・ヌアイミー氏、同支局特派員のアフマド・アシュラク氏。

一方、SANA(5月28日付)によると、ヒムス市の複数地区で武装テロ集団が発砲、市民3人が死亡した。

地元調整諸委員会などは、反体制活動家で映画監督のバースィル・シハーダ氏がヒムス市で殺害されたと発表した。

SANA, May 28, 2012
SANA, May 28, 2012

 

SANA, May 28, 2012
SANA, May 28, 2012

シハーダ氏は米国から3ヵ月前に帰国していたという。

 

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市の空港に向かう街道に仕掛けられた爆弾が爆発し、軍の士官3人が死亡、兵士19人が負傷した。

国内でのその他の動き

反体制活動家によると、ダマスカス県旧市街の商店の約8割がハウラでの虐殺に抗議するためにストライキを行ったとし、ユーチューブなどに映像をアップした。

ストライキが行われたとされるのは、ダマスカス県旧市街(ハミーディーヤ、ハリーカなど)、ハルブーニー地区、カーブーン区、カダム区、バルザ区、マイダーン地区、タダームン区など、ダマスカス郊外県のハジャル・アスワド市、サイイダ・ザイナブ町、タッル市など、アレッポ県バーブ市、ダルアー県ダルアー市、ハマー県ハマー市、ラッカ県タブカ市など。

一方、SANA(5月28日付)は、ダマスカス旧市街の通常通りの賑わいだったと報じ、写真を公開した。

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Syria News(5月28日付)は、国民青年公正成長党のバロウィーン・イブラーヒーム書記長はダマスカスで記者会見を開き、第10期人民議会選挙のハサカ県選挙区での投票に関して、不正があったことを示す約50,000部の文書を最高憲法裁判所に提出し、選挙の無効を訴えると発表した。

イブラーヒーム書記長によると、ハサカ県選挙区で投票された投票用紙には、アブドゥルハリーム・ハッダーム前副大統領、シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長、同評議会のジョルジュ・サブラー広報局長、作家のジュブラーン・ハリール・ジュブラーンなど、立候補者以外の氏名が書かれたものが多数あったという。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会は声明を出し、国連安保理での報道機関向け声明を「主要且つ緊急の義務を実行しようとしない恥ずべき怠慢と弱さ」と非難し、「シリア国民のすべての友そして兄弟」に対して、シリア国民の「自衛に必要な諸手段を直ちに増援」するよう呼びかけた

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、国連安保理での報道機関向けの声明に関して、「国連憲章第7章に依拠した安保理声明や、シリアの民間人保護に対して安保理が責任を負うような立場をとらず…意味のない声明を採択することで満足している…国際法は地に墜ちた」と非難した。

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クルド青年調整連合、シリア・クルド国民評議会調整、シリア・クルド・ムスタクバル潮流などクルド民族主義組織10団体が共同声明を出し、29日にカーミシュリー市でアサド政権の虐殺に抗議するデモを行うと発表、住民に参加を呼びかけた。

レバノンをめぐる動き

シリア自由人党のイブラーヒーム・ズウビー書記長は声明を出し、アレッポで誘拐されたレバノン人11人を釈放するための仲介を断念したと発表した。

ズウビー書記長は仲介を断念した理由として、レバノン内閣のプロ意識を欠いた事件への対応をあげている。

また声明では、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長の演説により、レバノンの大統領、首相、国民議会議長が釈放に向けた努力を本格化させたと指摘する一方、女性・老人が釈放されたことに関して、アサド大統領に謝意を示した。

Naharnet.com, May 28, 2012
Naharnet.com, May 28, 2012

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『アフバール』(5月28日付)は、ムスタクバル潮流のサアド・ハリーリー前首相が、アレッポで誘拐されたレバノン人11人(シーア派)解放のため、身代金を支払うとの提案をトルコ当局に対して行ったと報じた。

また同紙は、ハリーリー前首相がシリアでの「革命」への支援を停止すると述べた、と伝えた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はモスクワで英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣と会談した。

会談後の記者会見で、ヘイグ外務大臣は、シリアにとっての選択肢は「アナン特使の停戦案の実行か、混乱増大、大規模な内戦、そして爆発しかない」と脅迫した。

そのうえでラブロフ外務大臣に、アサド政権に圧力をかけ、停戦案を実行させるよう呼びかけた。

これに対して、ラブロフ外務大臣は、シリア政府と反体制勢力の「両当事者が虐殺に手を下していることが明らかな状況にある」と述べたうえで、「我々はシリア政府を支援しているのではなく、アナン停戦案を支援している」と強調した。

そのうえで、「外国のプレーヤーは体制打倒ではなく、アナン特使の和平案を実現させるような方法をとるべきだ」と述べ、西側諸国にシリアの政権打倒に力点を置くことを止めるよう求めた。

また「我々はシリア政府にほぼ毎日圧力をかけている。また同時に、多くの反体制勢力とも接触している…。しかし一部の外国のプレーヤーは我々が言っていることとは違うことを反体制勢力に言っている…。我々は、武装反体制勢力、とりわけ一部の過激派が、停戦しないようにとの指図を受けていることを知っている」と述べ、停戦に向けて努力していることを強調した。

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フランス大統領府によると、フランスのフランソワ・オランド大統領が英国のデヴィッド・キャメロン首相と電話会談を行い、国際社会がアサド政権に体してさらなる圧力をかける必要があることで一致した。

会談後、大統領府は声明を出し、ハウラでの虐殺に関して、「ダマスカス政府の殺人的狂気が地域の安全を脅かしており、彼らの行為に対する責任ある処罰は不可欠だ」と強く非難した。

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中国外交部報道官は、ハウラでの虐殺を「激しく非難する」と非難し、真相究明のための「即時調査」を呼びかけた。

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イラン外務省報道官は、ハウラでの虐殺を「忌まわしい行為」と非難し、「外国の干渉とテロ行為の運命は挫折だ」と付言した。

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イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハウラでの虐殺に「嫌悪感」を感じると述べ、イランとヒズブッラーが関与している可能性があると断じた。

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英国のニック・クレッグ副首相はBBC(5月27日付)に対して、ロンドン・オリンピックへのシリアの代表選手の参加を認めないことを決定したと語った。

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米国のマーチン・デンプシー陸軍参謀長はCBS(5月28日付)で、ハウラでの虐殺に関連して、非軍事的な手段を通じてアサド政権に圧力をかけるよう呼びかけた。

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サウジアラビア内閣は、ハウラでの虐殺を強くに何紙、国際社会がシリアでの流血停止のための責任を負うべきだとの立場を表明した。

AFP, May 28, 2012、al-Akhbar, May 28, 2012、Akhbar al-Sharq, May 28, 2012, May 29, 2012、al-Hayat, May 29, 2012, May 30, 2012、Kull-na Shuraka’, May 28, 2012, May 29, 2012、Naharnet.com,
May 28, 2012、Reuters, May 28, 2012、SANA, May 28, 2012、Syria News, May 28,
2012、UPI, May 28, 2012、Zaman al-Wasl, May 28, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア政府がハウラでの「虐殺」への関与を否定する一方、国連安保理では米仏の主導により同政府による「国連安保理決議第2042号、第2043号への違反」を非難する議長声明案の採択が目指される(2012年5月27日)

ハウラでの「虐殺」をめぐる動き

シリアのジハード・マクディスィー外務在外居住者省報道官は記者会見を開き、ハウラでの「虐殺」へのシリア政府の関与を否定するとともに、司法軍事調査委員会を設置し、3日以内の調査結果を報告すると発表した。

SANA, May 26, 2012
SANA, May 26, 2012

ハウラでの「虐殺」の詳細について、マクディスィー報道官は、「ハウラに(軍の)いかなる迫撃砲、戦車も入っていなかった…。武装集団数百人が金曜日に(同地方に)集結し、重火器で武装した車輌を用いた」としたうえで、「武装集団は、軍が5カ所しか警備しておらず、軍には虐殺など到底できないこの地方に進入した」と述べた。

そのうえ「治安維持部隊が持ち場を離れず自衛を続けた」と付言、シリア政府が「虐殺」に際して民間人を保護していたと強調した。

また「虐殺」がアナン特使のシリア訪問に合わせて実行されたとし、それが国内での政治プロセスを反故することが狙いだとの見方を示すとともに、「野蛮な殺害方法はシリア軍によるものでない。殺戮を行ったのは正規軍ではなく、武装テロ集団だ」と主張し、「アナン特使の停戦案に武装テロ集団が3,500回以上違反している」と非難した。

さらに、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣がアナン特使にこの事件の詳細や現在行われている調査について伝えたと付言した。

一方、国連の潘基文事務総長が25日に提出した国連安保理決議第2043号の実施状況に関する報告書に関しては、「反体制武装組織という名前が見あたらない」と非難した。

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その後、国連安保理緊急会合が開かれ、ハウラでの虐殺を非難する報道機関向けの声明を採択した。

声明では、ハウラでの大量殺害に関して、政府による一連の迫撃砲や戦車での住宅地への攻撃によって女性、子供を含む多数が死傷したことへの非難の意を示す一方、市民が近距離からの発砲や暴行によって殺害されたと指摘、合わせて非難した。

また民間人への武力の行使を国際法および国連安保理決議2043号、2043号への違反と糾弾し、シリア政府に対して人口密集地区からの撤退と重火器の使用停止を求めた。

緊急会合には、ロバート・ムードUNSMIS司令官も現地からテレビ回線を通じて参加し、虐殺についての報告を行い、「殺害が砲撃ではなく近距離からの発砲によるものだ」と述べた。

これを受け、ロシアのアレクサンドル・パンキン常駐国連第一副代表は「殺戮はシリア政府が制圧していない地域で発生した」としたうえで、「シリアには、武装集団、ないしは外国の介入を望む第三者が存在している」と指摘し、UNSMISは軍が殺戮行為を行ったとの証拠を持っていないと述べた。

これに対して、英国のマーク・ライアル・グラント国連大使は、虐殺の責任のすべてはシリア政府にあると主張し、「ハウラで戦車がなかったと言う者は嘘つきだ」と反論、UNSMISが「現場で迫撃砲や戦車の砲撃の跡を発見した。政府が民間人に砲撃したことは疑う余地がない」と述べた。

一方、国連の潘基文事務総長は、26日にUNSMISがタッルドゥー市を訪問した際に、「住宅地区で迫撃砲と戦車による死者を目撃した」としたうえで、「同市はシリア政府の支配を受けていなかったが、重火器によって包囲されていた」と述べた。

また監視団が一方で「銃弾や迫撃砲弾による死傷者、戦車の攻撃の痕跡、重火器で破壊された多数の建物」を目撃し、他方で「至近距離から銃殺されていた」ことを同時に確認した、と述べた。

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反体制派系の『クッルナー・シュラカー』(5月27日付)はハウラでの「虐殺」の被害者全員の氏名と死因を発表した。

犠牲者のほとんどの死因は「銃剣での刺殺、ナイフでの斬殺、ないしは銃殺」とされており、「砲撃」での死者は4人だった。

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国連安保理では、ハウラでの「虐殺」を受け、英仏が「シリア軍の住宅地に対する激しい砲撃」とシリア政府による「国連安保理決議第2042号、第2043号への違反」を非難する議長声明案が示され、採択が目指された。

しかし、ロシアは「虐殺への態度を決する前に、ロバート・ムードUNSMIS司令官による報告を受けるための緊急安保理会合の開催を呼びかけ、議長声明採択を猶予すべきだとの立場をとり、この動きを封じた。

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ロシア外務省のゲンナージー・ガティロフ外務次官はツイッターで、ハウラでの「虐殺」の「犠牲者の多くの傷跡はそれが砲撃によるものでないことを示しており、UNSMISの客観的な評価を待つ必要がある」とつぶやいた。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は、ハウラでの「虐殺」を「残虐行為」と非難し、同盟国とともにアサド大統領とその支援者への圧力を強化すると述べた。

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キャサリン・アシュトン外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は声明を出し、ハウラでの「虐殺」をシリア「政府が行った恥ずべき行為」と非難し、アサド政権に対して、アナン特使の停戦案の遵守を求めた。

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アラブ連盟の高官筋によると、シャイフ・アブドゥッラー・ビン・ザーイド外務大臣が、ハウラでの「虐殺」への対応を協議するため緊急会合を5月26日にカタールの首都ドーハで開催するよう求めた。

これを受け、ナビール・アラビー事務総長は、連盟の今期議長国のクウェートなどと、外相級会合の調整に入った。

国内の暴力

イドリブ県では、SANA(5月27日付)によると、ハーン・シャイフーン市で武装テロ集団との交戦で治安維持部隊兵士2人が死亡した。

またジスル・シュグール市では軍の大尉が武装テロ集団が仕掛けた爆弾の爆発により死亡した。

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スワイダー県では、『クッルナー・シュラカー』(5月27日付)によると、ダルアー・スワイダー街道で警察官12人が乗ったバスが誘拐された。

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ダマスカス県では、『クッルナー・シュラカー』(5月27日付)によると、ジスル・アブヤド地区にある総合情報部内務課施設の近くで活動家数十人がデモ弾圧に抗議する座り込みを行ったが、逮捕された。

シリア・クルド青年調整連合によると、カダム区でデモに参加していたファドワー・ハーリド・ジュムア女史が射殺された。

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シリア人権監視団によると、シリア各地で軍・治安部隊と離反兵の衝突や、治安部隊による弾圧で23人(うち民間人14人)が死亡した。

アサド政権の動き

アラブ連盟消息筋によると、シリア政府は28日にダマスカス訪問予定のアナン特使に、アラブ連盟のナースィル・カドゥワ副特使が同行することを拒否した。

国内でのその他の動き

SANA(5月27日付)によると、ダマスカス県のヒジャーズ駅前で、「我々はテロに抵抗し、立ち向かう」と題した集会が開催され、多数の市民が参加した。

集会にはレバノン人も多数参加したという。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は、トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣らトルコ高官との会談後にイスタンブールで記者会見を開き、国連憲章第7章に依拠した国際社会の措置が実現しない場合、自力で「解放戦争を行う」ようシリア国民に呼びかけた。

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シリア国家建設潮流は声明を出し、現下の混乱のすべての責任はアサド政権にあると非難し、退陣を求めた。

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サウジアラビアのジェッダを訪問中のハイサム・マーリフ弁護士(シリア国民行動戦線代表)は、アースィフ・シャウカト副参謀長(中将)、妻でアサド大統領の姉のブシュラー・アサド氏、バアス党シリア地域指導部のヒシャーム・ビフティヤール民族治安局長が自由シリア軍によって先週暗殺されたと発表した。

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ロンドンで活動する反体制組織のシリア人権監視団は声明を出し、2011年3月以来のシリアでの死者数が13,000人以上に達したと発表した。

同声明によると、死者の内訳は民間人9,183人、軍・治安部隊兵士3,072人、離反兵794人。

また4月12日にアナン特使の停戦案が発効して以降の死者数は1,881人で、うち1,260人が民間人だという。

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『クッルナー・シュラカー』(5月28日付)は、自由シリア軍国内合同司令部が、アナン特使が派遣した使節団と会談したと報じた。

Kull-na Shurakā’, May 28, 2012
Kull-na Shuraka’, May 28, 2012

会談は1時間半にわたって行われ、自由シリア軍の立場やシリアの現状に関して意見交換したという。

レバノンの動き

アレッポで誘拐され、釈放のための交渉が行われているレバノン人11人に関して、人質解放を仲介した離反兵のフサームッディーン・アウワーク准将は、LBC(5月27日付)に対して、人質のうち5人はヒズブッラーのメンバーだったと述べた。

アウワーク准将によると、バスは、乗客が「疑わしい双眼鏡を所持していたため」、自由シリア軍の基地の近くで捕捉された。

同准将によると、自由シリア軍司令官のリヤード・アスアド大佐は、事件とは無関係で、人質は尋問が終わったことを受け釈放される、としたうえで、レバノンの複数の当事者にいくつかの要求を行っており、交渉は依然として継続中だという。

また、誘拐されたヒズブッラーのメンバー5人のなかには、「爆発物機関次長」でハサン・ナスルッラー書記長のいとことされるフサイン・ハンムードなる人物がいたというが、ハンムード氏の兄弟はジャディード(5月27日付)に対して、同氏とヒズブッラーの関係を否定している。

ヒズブッラーも人質のなかにナスルッラー書記長の親族がいるとの一部報道を否定している。

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ナハールネット(5月27日付)によると、IHROのアリー・アクル・ハリール大使は、解放党を名のる反体制組織のイブラーヒーム・ズウビー書記長と接触し、人質の無事を確認したことを明らかにした。

ズウビー書記長は26日に人質解放の仲介を中断すると発表していたが、ハリール大使は同書記長が誘拐犯と接触を再会し、人質はシリア・トルコ国境にいる、ことを明らかにした。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長はLBC(5月27日付)に対して、アレッポで誘拐されたレバノン人11人の行方に関する情報を持っていないと語った。

しかしLBCの特派員は、トルコ高官筋がガルユーン事務局長に人質解放の交渉が行われていることを伝えたと報じた。

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NNA(5月27日付)は、ベカーア県ラーシャイヤー郡のカフルクーク市郊外で、シリア軍がレバノン人3人に向けて発砲、1人を殺害、1人を逮捕した、と報じた。

3人はシリアにタバコを密輸しようとしていた、という。

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ナジーブ・ミーカーティー首相は、ハウラでの「虐殺」を非難し、国際社会およびアラブ諸国に対して、シリアでの紛争と流血停止のために努力するよう呼びかけた。

諸外国の動き

『ニューヨーク・タイムズ』(5月27日付)は、バラク・オバマ米大統領が近くロシアのウラジーミル・プーチン大統領に、「イエメン・シナリオ」に沿ったシリアの危機打開を求める、と報じた。

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「アフバール・シャルク」(5月27日付)は、イラン・イスラーム革命防衛隊クドゥス軍団の副司令官イスマーイール・カーアーニー少将が、シリアの反体制抗議運動弾圧のために同軍団が参加したとの発言を、ISNA(5月27日付)が掲載したと報じた。

しかし同報道によると、この記事はISNAのホームページからすぐさま削除された、という。

AFP, May 27, 2012、Akhbar al-Sharq, May 27, 2012、al-Hayat, May 28, 2012, May 29, 2012、Kull-na Shuraka’, May 27, 2012、LBC, May 27,
2012、Naharnet.com, May 27, 2012、The New York Times, May 27, 2012、NNA, May 27, 2012、Reuters, May 27, 2012、SANA, May 27, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.