シリア各地で新憲法の信任投票が行われアサド大統領夫妻も投票、米国務長官はシリア国内の反体制派に対する武器供与の可能性を否定(2012年2月26日)

新憲法信任国民投票

シリア各地で新憲法の信任投票が行われた。

バッシャール・アサド大統領は、アスマー・アフラス婦人とともにダマスカス県内のラジオ・テレビ機構に設けられた投票所で投票した。

投票後、「シリアが曝されている攻撃はメディアの攻撃だ。しかし、メディアはいかに重要だとはいえ、現実を超えるものではない。彼ら(メディア)は宇宙では強いかもしれない。しかし我々は地上においてより強力であり、地上でも宇宙でも勝利したいと考えている」と述べた。

SANA, February 26, 2012
SANA, February 26, 2012
SANA, February 26, 2012
SANA, February 26, 2012
SANA, February 26, 2012
SANA, February 26, 2012

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SANA(2月26日付)によると、ダマスカス県サブウ・バフラート広場では、多数の市民が集まり、新憲法支持を訴えた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会が声明を出し、宗派主義廃絶を訴えた。

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AFP(2月26日付)は、シリア人反体制活動家の話として、UAE当局がドバイでの反アサド政権デモに参加したシリア人数十人の滞在許可を無効にした、と報じた。

同活動家らによると、滞在許可を剥奪されたシリア人はエジプトに移動したという。

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フェイスブックの「シリア革命2011」では「体制は正統性がなく、憲法は正統性がない」と訴え、国民投票のボイコットを訴えた。

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『ヴェラーティー』(2月26日付)によると、2月24日のチュニスでのシリアの友連絡グループ会合でのシリア国民評議会の声明においてクルド問題などに関する具体的言及がなされなかったことを受け、シリア・クルド国民評議会とシリア国民評議会内のクルド国民大会(クルド・ブロック)の統合に向けた動きが暗唱に乗り上げたと報じた。

国内の暴力

『ハヤート』(2月27日付)によると、新憲法の国民投票が全国で行われるなか、ヒムス市などで軍・治安部隊による掃討作戦が続き、各地で少なくとも28人(地元調整諸委員会発表)が殺害された。

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シリア人権監視団によると、遠隔地の複数の都市・村で新憲法の国民投票がボイコットされるとともに、反体制デモが発生し、ラタキア県北部の村の投票所などが閉鎖に追い込まれた、という。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で民間人9人、兵士4人が死亡した。

シリア国民総合委員会の活動家であるハーディー・アブドゥッラー氏は、AFP(2月26日付)に対して、「ヒムスには死傷者、行方不明者、逮捕者がいるだけなのに、なぜ国民投票に行けるのか?」と述べた。

同氏によると、ヒムス市は前日と比べ「比較的静か」で、人通りはなく、商店は閉められていたという。

一方、SANA(2月26日付)によると、ヒムス市バーブ・アムル地区で武装テロ集団メンバー40人以上が投降した。

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アレッポ県では、シリア革命総合委員会によると、アアザーズ市に軍治安部隊が突入し、掃討作戦を行った。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カダム区、アサーリー地区などでストライキが行われ打たれ、ストを中止させようとする治安部隊が多数展開した、という。

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ダマスカス郊外県では、地元調整諸委員会によると、カタナー市、ムライハ市、カナーキル村などでストライキが行われ、ストを中止させようとする治安部隊と市民が衝突した、という。

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al-Hayat, February 27, 2012
al-Hayat, February 27, 2012

 

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市で、軍・治安部隊と離反兵の交戦で前者の兵士3人が死亡した。

またダーイル町、アルマー町、フラーク市でも戦闘があり、兵士2人と市民1人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アーフィス村、サラーキブ市、ハーン・シャイフーン市に対して、軍・治安部隊が激しい砲撃を加えた、という。

またマアッラト・ヌウマーン市で市民1人が殺害された、という。

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ハマー県では、地元調整諸委員会によると、ハラファーヤー市で軍・治安部隊が掃討作戦を行い、8人が死亡した。

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ダイル・ザウル県では、シリア革命総合委員会によると、軍治安部隊の多数の戦車がジャルズィー村に展開した。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、BBC(2月26日付)に対して、シリアの反体制勢力を米国が指定する国際テロ組織と結びつけて、武器供与の可能性を否定した。

「我々はどの勢力がシリアの反体制勢力に武器を供与しているか知らない…。シリアのアル=カーイダを支援できるだろうか?…ハマースは今やシリアの反体制勢力を支援している。我々はシリアでハマースを支援できるのか?…我々は戦車をトルコ、レバノン、ヨルダン国境に持ち込むことなどできない。そのようなことは起きないだろう」と述べた。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、シリアの友連絡グループ第2回会合に先立ってシリア国民評議会と会談すると述べた。

レバノンの動き

サアド・ハリーリー前首相はレバノン軍団のHPで、「人道、道徳、政治、情報などでシリア国民を支持する」と述べた。

AFP, February 26, 2012Akhbar al-Sharq, February 26, 2012、al-Hayat, February 27, 2012、Kull-na Shuraka’, February 26, 2012、Naharnet.com, February
26, 2012、Reuters, February 26, 2012、SANA, February 26, 2012、Welati, February
26, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

シリアの友連絡グループ会合におけるシリア国民評議会の声明内容をめぐり、同評議会とシリア・クルド国民評議会の間で不信感が高まる(2012年2月25日)

アサド政権の動き

ハサン・ジャラーリー内務次官は、「ハサカ県の外国人」(クルド人)に関して、前年の法律改正に沿って、105,320人が国籍取得申請を行い、68,520人が国籍を取得したと発表した。

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SANA(2月25日付)は、シリア政府高官筋の話として、シリアがチュニジアでのシリアの友連絡グループの声明の一切を拒否すると報じた。

反体制勢力の動き

カタールの『ラアユ』(2月25日付)は、国内で反体制活動を行う「ともに」運動のムンズィル・ハッダーム渉外担当の話として、民主的変革諸勢力国民調整委員会が、シリア政府高官と国内の反体制武装集団の和解の仲介を行ったが、交渉は失敗に終わったと報じた。

同報道によると、シリア政府高官側のファールーク・シャルア副大統領が反体制武装集団の武装解除を和解の条件としたことが、交渉失敗の原因だという。

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シリア民主世俗主義諸勢力連立は声明を出し、2月26日の新憲法信任投票のボイコットを呼びかけた。

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在外(オランダ)のアッシリア人権ネットワーク、26日の新憲法国民投票へのボイコットを呼びかけた。

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ムハンマド・アブー・フダー・ヤアクービー師らイスラーム教宗教関係者222人が声明を出し、2月26日の新憲法信任投票のボイコットを呼びかけた。

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シリア・アッシリア民主機構は声明を出し、2月26日の新憲法信任投票のボイコットを呼びかけた。

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『クッルナー・シュラカー』(2月25日付)は、シリア・クルド民主統一党(イェキーティー)の幹部の話として、1月12日にイラク・クルディスタン自治区でのシリア・クルド国民評議会のアブドゥルハキーム・バッシャール代表とシリア国民評議会のガルユーン事務局長との会合でクルド問題への対応に関して合意されていたにもかかわらず、24日のシリアの友連絡グループで後者が読み上げた声明は、この合意を充分反映しておらず、そのことが両評議会の不信を高めていると報じた。

ガルユーン事務局長が読み上げた声明では、新体制が「分権的となり、地方当局が政務を遂行できるようになる」とのみ述べられた。

同報道によると、この合意では、①憲法におけるクルド人の存在とアイデンティティの承認、②クルド問題を国民全般に関わる問題の基本部分とみなす、③クルド人へのすべての差別的政策の撤廃、④分権制を通じたクルド人の民族的権利の承認などが合意されていたという。

国内の暴力

軍・治安部隊によるヒムス市などへの掃討作戦が続き、シリア人権監視団によると各地で遭わせて57人(うちヒムス市で9人)が死亡した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊兵士5人が殺害された。

またアレッポ市サイフ・ダウラ地区では約4,000人が反体制デモを行い、治安部隊が実弾を発砲し、強制排除した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で9人、タルビーサ市で3人が殺害された。

地元調整諸委員会によると、ヒムス市各地区への軍・治安部隊による砲撃は続いている、という。

SANA(2月25日付)は、ヒムス市バーブ・アムル地区にシリア赤新月社の救急医療隊が入り、「武装テロ集団」の攻撃で負傷した市民に治療を行ったと報じた。

これに対して、バーブ・アムル地区の反体制活動家のナーディル・フサイニー氏なる人物は、シリア赤新月社が「政府のコントロール下にある」と不満を露わにした。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、マアッルザーフ町、マジュダル村、トゥライムサ村で7人が殺害された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マガーラ村に対して軍・治安部隊が砲撃を加えたほか、サラーキブ市でも激しい銃声が聞こえたという。

一方、SANA(2月25日付)によると、治安維持部隊がサラーキブ地方一帯で治安維持活動を行い、武装テロ集団メンバー多数を逮捕した。

逮捕者のなかには、地元の活動家のウマル・フサイン氏、マーヒル・ズライク氏が含まれているという。

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ハサカ県では、シリア・クルド青年調整連合が声明を出し、ハサカ市での反体制デモに対して、治安部隊が発砲し、3人が死亡したことを明らかにした。

またデモ参加者は、負傷者をハサカ県のムフティー邸に搬送したが、治安部隊はムフティー邸から負傷者を連れ去った、という。

レバノンの動き

NNA(2月25日付)によると、レバノン赤十字社は、ヒムス県からシリア人負傷者40人を受け入れ、北部県トリポリ市のトリポリ国立病院に搬送したと発表した。

同報道によると、負傷者はヒムス市バーブ・アムル地区の人々で、違法に越境した、という。

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進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は『ル・モンド』(2月25日付)に対して、アサド大統領を「改革主義者だったら、2000年のダマスカスの春での微々たる変化に耐えられないだろう…。彼は多くの人々を投獄した」と非難、現体制がいかなる変革も実現できないだろうと断じた。

また「私は宗派主義者にはなりたくないが、シリアの政府はマイノリティの同盟を促そうとしている…。シリアのドゥルーズ派は、体制を支持しようとしまいと、シリア国民だ…。過去、ドゥルーズ派はフランスの委任統治に対して戦いを挑んだ。今日、彼らはあらゆる場所でシリア国民を殺す専制体制と戦う時が来た」と述べた。

諸外国の動き

ロシアのウラジーミル・プーチン首相は声明で、「シリア情勢をめぐる安保理でのロシアの姿勢は、我々は誰にも従属するつもりはないということを示している」と述べ、西側への追随を拒否する姿勢を示した。

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中国の新華社通信(2月25日付)は、西側諸国のシリアへの姿勢に関して、「覇権追求への隠された意思」が見て取れると批判した。

AFP, February 25, 2012、Akhbar al-Sharq, February 25, 2012、al-Hayat, February 26, 2012、Kull-na Shuraka’, February 25, 2012, February 26, 2012、Naharnet.com, February 25, 2012、NNA, February 25, 2012、al-Ra’y (Doha), February 25, 2012、Reuters, February 25, 2012、SANA, February 25, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

シリアの友連絡グループ会合が開催されるも民主的変革諸勢力国民調整委員会は参加せず、シリア国民評議会は「国民の正当な代表」と承認されず(2012年2月24日)

シリアの友連絡グループ会合

チュニジアでシリアの友連絡グループ会合が開催され、西側諸国、レバノンを除くアラブ連盟加盟諸国など70カ国が参加したが、シリア国内の暴力停止と体制転換の実現に向けた有効策を事実上打ち出せないまま終わった。

SANA, February 24, 2012
SANA, February 24, 2012

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会合の終了時に発表された閉幕声明の骨子は以下の通り。

1. あらゆる暴力の即時停止、ヒムス、ダルアー、ザバダーニーなどへの人道支援の受け入れをシリア政府に求める。
2. シリア政府が市街地への攻撃を停止し、受け入れを受諾した場合、国際社会は48時間以内に人道支援を行う。
3. 大統領権限への副大統領への権限移譲などを骨子とするアラブ連盟行程表への全面支持。
4. シリア国民評議会による反体制勢力の広範な調整の枠組み構築の努力を賞賛(しかしシリア国民評議会をシリア「国民の正当な代表」とは承認せず)。
5. 政治構造の抜本的改革のため、シリア国民の要求に応じたシリアの危機の政治的解決(軍事的解決ではない)。
6. 平和的な政治的変革(体制転換)実現のため、内外の反体制勢力が意見調整のしくみを合意するための会合開催をアラブ連盟に要請。
7. シリア政府による暴力の即時停止(反体制武装集団には暴力停止を求めず)。
8. シリア政府およびその支援者に対する制裁のための適切な措置を講じる。

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ロシアと中国は、レバノンとともに会合をボイコットした。

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チュニジアのムンスィフ・マルズーキー大統領は、開会の辞で、アラブ連盟行程表への支持を表明した。またアラブ平和維持軍の発足を呼びかけた。

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非公式会合では、サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣が会合に実効力がないと非難し、途中退席した。

サウード・ファイサル外務大臣は「シリア政府は正統性を失った。その支配はほぼ占領支配である」と非難、「シリアへの人道支援を集中させるだけ不充分だ…。食糧、医薬品、衣服をシリア人に提供し、無慈悲な軍事装置のもとに彼らを放置することが人道的か?…我が国は求められている目的を実現するための国際的努力の前衛となるだろう。しかし、シリア国民の保護を早急且つ実質的にもたらさないいかなる行動にも与しない」と述べ、「是が非でも」体制転換を行う必要があると怒りを露わにし、退席した。

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エジプトのムハンマド・カーミル・アムル外務大臣は、シリア国民評議会をシリア国民の正当な代表として承認することの是非に関して、「エジプトはすべての反体制勢力を差別なく承認する。反体制勢力の糾合によって国際社会の前に力が示される」と述べた。

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カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は、アラブ・国連平和維持軍の発足・派遣、人道回廊の設置とシリアへの支援、そして行程表を含むアラブ連盟外相会議の諸決議の実施を呼びかけた。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、アサド政権による弾圧、暴力を即時・包括的に停止させるための安保理決議の早急な採択を呼びかけた。

またアラブ・国際的人権支援団体による人道支援の必要を強調した。

しかし、アラブ連盟が軍事介入を拒否しているとの姿勢を改めて示した。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、アサド政権から弾圧を行う手段を奪う必要があると述べるとともに、3月のイスタンブールでのシリアの友連絡グループ第2回会合の開催を提案した。

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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、シリア国民評議会に関して国際社会にとって「合法的な基軸」とみなしつつも、「国民の正当な代表」として承認はしなかった。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は「ポスト・アサド段階のヴィジョン」に関する声明を読み上げるとともに、自由シリア軍の武装支援を求めた。

同声明で、ガルユーン書記長は、アサド政権打倒とアラブ連盟の行程表に沿ったかたちでの政権交代を実現するまで、「民衆のインティファーダ」を継続するとの意思を示したうえで、アサド政権打倒後は、愛国的指導者から構成される暫定「大統領評議会」と、軍人、政治家、専門家からなる暫定内閣を設置するとのビジョンを披露した。

暫定統治は政権議会選挙が実施されるまで行われる、という。

また体制転換や政治的・宗派的復讐を回避するための評議会の設置を提案した。

一方、クルド民族主義勢力に配慮するかたちで、クルド人のアイデンティティを承認するとともに、分権型の政府の発足を約束した。

さらに、シリアの友連絡グループに対して、自由シリア軍の武装を支援するよう呼びかけた(シリア国民評議会声明(アラビア語および英語訳)全文はhttp://www.levantnews.com/index.php?option=com_content&view=article&id=11170:2012-02-24-20-18-09&catid=66:syria-politics&Itemid=118を参照)。

しかし、シリアの友連絡グループ会合で評議会が「国民の正当な代表」として承認されなかったことを受け、ガルユーン事務局長は「シリア国民の要求を満たすものではなかった」と落胆の意を示した。

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会合に先立ち、ヒラリー・クリントン米国務長官とサウード・ファイサル外務大臣は二者会談を行った。

『ハヤート』(2月25日付)によると、サウード・ファイサル外務大臣は、反体制勢力への武器支援に関して、「すばらしいアイデアだ。なぜなら反体制勢力は自衛しなければならないからだ」と述べた。

一方、クリントン国務長官は、国際社会の声を無視すれば、シリア政府は「高い代償」を支払うだろう、としたうえで、「シリアの反体制勢力は…外交努力が失敗すれば、最終的には武装し、戦争を行うだろう」と述べた。また人道支援のために10,000,000ドルの供出を宣言した。

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SANA, February 24, 2012
SANA, February 24, 2012
SANA, February 24, 2012
SANA, February 24, 2012

チュニジア警察は、シリアの友連絡グループ会合が開催されたパレス・ホテル前のアサド政権を支持するシリア人やチュニジア人のデモを強制排除した。

『ハヤート』(2月25日付)によると、デモ参加者は、「チュニジアがアラブ民族の牙城に対する陰謀の場となること」に抗議し、ホテルに進入したという。

SANA(2月24日付)によると、ホテル周辺には、1,000人以上が参加し、うち数百人が会場に侵入を試みた。

国内の暴力・反体制デモ

シリア人権監視団などによると、軍・治安部隊による反体制勢力の掃討作戦が続き、各地で90人が殺害された。

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SNN, February 24, 2012
SNN, February 24, 2012
SNN, February 24, 2012
SNN, February 24, 2012
SNN, February 24, 2012
SNN, February 24, 2012

ヒムス県では、シリア革命総合委員会のハーディー・アブドゥッラー氏によると、ヒムス市バーブ・アムル地区などへの軍・治安部隊の砲撃が続いた。

同氏は、軍・治安部隊が戦車、装甲車の砲撃に加えて「地対空スカッドミサイル」を用いていると主張するが、真偽は定かでない。

シリア人権監視団によると、バーブ・アムル地区ではこの砲撃で少なくとも4人が死亡した。

赤十字国際委員会とシリア赤新月社の救急隊が砲撃で負傷した西側ジャーナリストの搬出のため、ヒムス市バーブ・アムル地区に入ったと発表した。

またアブドゥッラー氏によると、離反兵が占拠しているとされるラスタン市に対して軍・治安部隊が激しい砲撃を加えたが、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊兵士7人が離反兵に殺害された。

シリア人権監視団によると、このほかにもクサイル市で治安部隊が市民1人を殺害した。

一方、SANA(2月24日付)によると、ヒムス市で武装テロ集団の攻撃で治安維持部隊兵士1人が殺害された。また同市内で、兵士2人の遺体が発見された。

またSANA(2月24日付)は、外務省高官の話として、バーブ・アムル地区の武装テロ集団は外国人記者の負傷者や遺体の引き渡しを拒否していると報じた。

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ハマー県では、複数の活動家によると、ハラファーヤー市で治安部隊が住民18人(うち7人が一つの家族で、子供が5人)を殺害した。

一方、SANA(2月24日付)によると、シリア保健省はハマー市郊外の病院で停電により子供7人が死亡した、とのジャズィーラなどの報道を事実無根と否定した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市内数カ所で散発的なデモが発生し、治安部隊が実弾などで強制排除を試みた。

これによりフィルドゥース地区で3人、スッカリー地区で3人を殺害された。

「友愛調整」を名のる組織の活動家らによると、アレッポ市内でのアラブ人、クルド人、キリスト教徒がマルジャ地区でデモを行った、という。

またシリア人権監視団によると、対トルコ国境のジャラーブルス市、タッル・リフアト市、アルシャーフ村、ハイヤーン町、イビーン・スィムアーン村でも反体制デモが行われた。

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Kull-na Shuraka', February 24, 2012
Kull-na Shuraka’, February 24, 2012

ダルアー県では、複数の活動家によると、アドワーン村で反体制デモが発生したほか、ハーッラ市、インヒル市に対して軍・治安部隊が掃討作戦を続け、1人が殺害された。

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イドリブ県では、複数の活動家によると、マアッラト・ヌウマーン市で大規模なデモが発生した。

一方、SANA(2月24日付)によると、ジスル・シュグール地方南部で治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、前者の兵士1人と後者のメンバー4人が死亡した。またイドリブ師でも治安維持部隊兵士1人が殺害されたほか、ファイルーン村では、武装テロ集団が自らのしかけた爆弾の爆発で多数死亡した。

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ダイル・ザウル県では、複数の活動家によると、ダイル・ザウル市内各所や郊外の村々で反体制デモが発生し、1人が殺害された。

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ラタキア県、タルトゥース県バーニヤース市などでは、シリア人権監視団によると、治安部隊が厳戒態勢にあたっていたため、反体制デモが実施できなかった、という。

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ダマスカス県では、『クッルナー・シュラカー』(2月24日付)によると、マッザ区のカビール・モスク周辺には早朝から多数の軍・治安部隊兵士、シャッビーハが展開し、デモ阻止にあたった。

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ハサカ県では、『クッルナー・シュラカー』(2月24日付)によると、ハサカ県対トルコ国境のアルーク村でPKK系のクルド民族主義政党でアサド政権に協力的とされる民主統一党の支持者5人が当局に逮捕された。

同報道によると、党はこの5人がノウルーズ(3月21日)の祝祭の準備をしていたと主張しているが、同党に近い複数の消息筋によると、トルコからの武器密輸を行っていた、という。

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シリア人権監視団によると、各地で反体制デモが発生し、全国で遭わせて数万人から数十万人が参加したというが、参加人数の真偽は定かでない。

なおフェイスブックなどでは反体制活動家が「バーバー・アムルよ、君のために我々は蜂起する」金曜日と銘打って、反体制デモを呼びかけていた。

アサド政権の動き

シリア・アラブ・テレビ(2月24日付)は、シリアの友連絡グループを「米国とイスラエルの友人」、「シリアの敵」と非難した。

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SANA(2月24日付)は、ムハンマド・サイード・ラマダーン・ブーティー師らシリアの著名な宗教関係者が2月26日の新憲法国民投票に参加するよう呼びかけた、と報じた。

またブーティー師は、シリアの友連絡グループに関して、「イスラエル友好国」と形容して非難した。

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『クッルナー・シュラカー』(2月24日付)は、バアス党シリア地域指導部のムハンマド・サイード・バヒーターニー副書記長が署名した新憲法国民投票に関する指示書を公開した。

同指示書は党員に対して、国民に信任票を投票させるよう指示がなされている。

反体制勢力の動き

国内で最有力の反体制組織である民主的変革諸勢力国民調整委員会は、シリアの友連絡グループ会合開催に先立って声明を出し、会合が「シリア国民を「シリア国民を代表する(一部の)者」に置き換えることを決定し、アラブ連盟が承認した反体制勢力の大会にとって代えようする会合」であると非難、参加をボイコットすると発表した。

声明によると、同委員会はチュニスに使節団を送っていたが、参加を見合わせた、という。

また同委員会は、反体制武装集団への武器供与の是非を未決のままとし、外国の武力干渉の余地を与え続けている会合のスタンスを批判した。

そのうえで、主催国のチュニジア(大統領)に対して、すべての反対勢力に優劣なく対処し、その一部を国際社会が承認しないよう警鐘を鳴らすとともに、外国の軍事介入を「社会の平和と平和的革命の成功にとってのレッド・ライン」と強調した。

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ロイター通信(2月24日付)は、チュニジア訪問中のシリア反体制勢力筋(匿名)の話として、在外の反体制勢力が軽火器、通信機器、暗視ゴーグルなどをシリア国内に密輸入しており、それを西側諸国などが黙認していると報じた。

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現体制下での政治改革をめざす人民意思党は、声明を出し、新憲法国民投票への参加を呼びかけた。

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旧シリア・クルド人民連合党(2005年にシリア・クルド・アーザーディー党に発展解消)のサラーフ・バドルッディーン元党首(在欧、無所属)はフランス24(2月24日付)に出演し、シリア・クルド国民評議会がアサド政権を支持していたと述べた。

バドルッディーン元党首は「体制を指示していたクルド人たちの一部は反体制勢力に転身した。我々はそれを歓迎している…。(転身したのは)シリア・クルド国民評議会を発足した10党だ。これらの党は体制と関係を持っており、その関係は公然たるものだった…。評議会発足時も体制打倒を唱えていなかったし、今も唱えていない。彼らには今もなお体制との対話をしようとする傾向が見られる」と批判した。

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エジプトのMENA(2月24日付)は、アサド大統領の前宗教顧問のイフサーン・バアダル師が、シリア救済のためには外国の介入が必要だと述べた、と報じた。

レバノンの動き

Naharnet, February 24, 2012
Naharnet, February 24, 2012

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は「殉教指導者の日」を記念してテレビ演説を行い、「イラク、シリア、リビアでの争乱を作り出そうとする者は、レバノンにも不安定を拡大させたいと考えている」と述べ、一部の国がシリアの危機の政治的解決を望んでいないと非難した。

諸外国の動き

『ハヤート』(2月25日付)は、ロシア議員がアサド大統領と会談し、大統領が「辞任など準備をしておらず、自身がシリアで広範な支持を得ていると考えている」と述べたと報じた。

またロシア外務省は、ヒムス市などでの暴力への「大きな懸念」を表明し、アサド政権と武装集団の双方に発砲を「即時停止」し、人道支援受け入れのために協力するよう呼びかけた。

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イラクのホシェリ・ゼバリ外務大臣はイラーキーヤ・テレビ(2月24日付)でのインタビューで、3月にバグダードで予定されているアラブ連盟首脳会議に関して、アサド大統領を招待していないと述べるとともに、シリアの反体制勢力を招待することはないと述べた。

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パレスチナ自治政府のイブラーヒーム・ハニーヤ暫定首相(ハマース)は訪問中のエジプト・カイロにあるアズハル・モスクで金曜礼拝後に演説し、「あなたがたと「アラブの春」の、そして「イスラームの冬」の諸国民を讃えるのなら、私は、自由、民主主義、改革を求める英雄であるシリア国民を讃えたい」と述べ、シリア国民の救済の支援を呼びかけた。

礼拝に参加した数千人は、「イランでもなく、ヒズブッラーでもなく、イスラーム的シリア」、「去れ、去れ、バッシャール」などと連呼したという。

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コフィ・アナン前国連事務総長のシリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使任命に関して、ロシア外務省と中国外交部はともに歓迎の意を示した。

一方、アナン特使はすべての「当事者の完全なる協力」を通じて、国連、アラブ連盟による暴力停止と平和的危機解決に務めたいとの内容の声明を出した。

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ジョン・マケイン議員ら米上院議員ら3人は声明を出し、「関係各国」に対して、自衛のための武器供与を通じてシリアの反体制勢力を支援するよう呼びかけた。

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エリク・シュヴァリエ在ダマスカス・フランス大使が24日、ダマスカスに帰任したと、フランス外交筋が明らかにした。

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バラク・オバマ米大統領はホワイトハウスでの記者会見で、シリア情勢に関して、「シリアでの無実の人々に対する殺戮を抑えるため、圧力をかけ続け、利用可能なあらゆる手段を検討する」と述べた。

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ヨルダンのラーカーン・マジャーリー情報通信大臣は、2011年3月以降、シリアから約73,000人の非難民がヨルダン領内に避難している、と発表した。

AFP, February 24, 2012、Akhbar al-Sharq, February 24, 2012、al-Hayat, February 25, 2012, February 26, 2012, March 4, 2012、Kull-na Shuraka’,
February 24, 2012、MENA, February 24, 2012、Naharnet.com, February 24, 2012、Reuters,
February 24, 2012、SANA, February 24, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

ヒムス市を含む各地で軍・治安部隊による掃討作戦が続くなか、米国務長官が「シリアの友連絡グループ会合にシリア国民評議会が参加すること」が参加各国のコンセンサスだと述べる(2012年2月23日)

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国内の暴力

2月22日にヒムス市の反体制勢力の「プレス・センター」に対する軍・治安部隊の攻撃で負傷した記者の一人、エディット・ブヴィエ女史(フランス人)はインターネットを通じてビデオを配信し、自身が「大腿骨を骨折しており…、早急に手術を受ける必要がある」と述べ、即時の停戦と自身のレバノンへの搬出を求めた。

http://www.youtube.com/watch?v=eS9PkoNJSlU&feature=related

ブヴィエール女史は『ル・フィガロ』紙の現地ルポ執筆のため、違法にシリアに密入国していた、という。

22日の攻撃で負傷した記者はブヴィエール女史のほか、英国人カメラマンのポール・コンロイ氏、ウィリアム・ダニエル氏の2名がいる。

フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、シリア軍に発砲停止と人道支援の受け入れ許可を早急に行うよう「命令した」と述べた。

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ヒムス県では、ヒムス市各地区で軍・治安部隊による掃討作戦が続いた。

アブドゥッラー・ハーディーを名のる活動家によると「爆発がヒムス全土を震撼させている」という。

またウマル・シャーキルを名のる活動家によると「住民は爆撃ではなく、飢えと渇きで死ぬかもしれない」と現地の惨状を伝えるとともに、「活動家たちとの連絡が途絶えており、彼らとはスカイプでも衛星電話でも連絡がとれない」と述べた。

国際人権団体Avaazによると、医療活動などを行っていたシリア人ボランティア活動家ら7人が「粛清に遭い」、2人(うち1人は外国人)が依然として行方不明だという。

一方、SANA(2月23日付)によると、武装テロ集団がヒムス市アルメニア地区でムハンマド・リヤード・ダルウィーシュさん一家(6人)を惨殺した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、スカイラビーヤ市・ムハルダ市間で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、前者の兵士8人が殺害された。

またカフル・トゥーン町では、14人(うち13人が一家族)の民間人が治安部隊に殺害された、という。

一方、SANA(2月23日付)によると、ムハルダ市で武装テロ集団の発砲により治安維持部隊兵士2人が殺害された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市、ジスル・シュグール市で市民2人が殺害されたほか、反体制武装集団がしかけた爆弾の爆発で、治安部隊兵士3人が殺害された。

一方、SANA(2月23日付)によると、ジスル・シュグール地方の対トルコ国境沿いで、トルコ領内から武器を密輸しようとした武装テロ集団と交戦し、多数を死傷させ、その侵入を阻止した。

またイドリブ市では、武装テロ集団がしかけた爆弾が爆発し、治安部隊兵士3人が殺害され、マアッラト・ニウマーン市では武装テロ集団と治安維持部隊が交戦し、前者のメンバー2人が殺害された、という。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市で軍・治安部隊が民間人7人を殺害した。

また軍・治安部隊と離反兵が交戦し、前者の兵士5人が殺害された、という。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ大学理学部前で学生約2,000人が反体制デモを行ったが、治安部隊が催涙ガス、実弾を用いて強制排除、12人の学生を逮捕した。

またマンナグ村で8歳の子供が殺害された、という。

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ダマスカス郊外県では、SANA(2月23日付)によると、ハラスター市で武装テロ集団と治安維持部隊が交戦し、前者のメンバー多数が死傷した。

また治安維持部隊がカーラ市、サクバー市、ハムーリーヤ市などで、武装テロ集団の拠点を発見し、大量の武器弾薬などを押収した、という。

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ダマスカス県では、『クッルナー・シュラカー』(2月23日付)によると、マッザ・バサーティーン地区に多数の治安部隊が展開し、若者100人以上を逮捕した。

また『クッルナー・シュラカー』(2月24日付)によると、マッザ86地区で、治安部隊がシャッビーハ1人を殺害した。

殺害されたシャッビーハは軍・治安部隊が設置した検問所で車を停車させなかったため、射殺されたという。

一方、『クッルナー・シュラカー』(2月24日付)によると、空軍情報部がハール市場で市民数十人を逮捕した。

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シリア人権監視団によると、各地での死者は、約70人に及んだという。

アサド政権の動き

「アフバール・シャルク」(2月23日付)は、西側外交筋の話として、西側諸国の経済制裁でシリアの外貨準備高が「あと3ヵ月から5ヵ月」で底をつくだろう、と報じた。

反体制勢力の動き

国内で反体制活動を行う、国民的諸勢力祖国連立は声明を出し、新憲法の国民投票を「国民殺戮のための時間稼ぎ」と非難し、投票をボイコットすると発表した。

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シリア国民評議会運営委員会のハイサム・マーリフ弁護士は、『ハヤート』(2月24日付)に対して、同評議会を「シリア革命の政治的傘下組織として承認する」ようシリアの友連絡グループに対して求める、との意思を明示した。

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「アフバール・シャルク」(2月23日付)は、シリア当局が反体制運動弾圧を非難する説教を行ったシャイフ、アブドゥッラフマーン・クーキー師を軟禁したと報じた。

レバノンの動き

進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は、『ナハール』(2月23日付)に対して、「アサド政権がヒムス市を破壊するのを西側諸国は待っているかのようだ」と述べた。

ジュンブラート党首は、国連安保理でのロシア、中国の対シリア決議への拒否権発動に関して「西側が無力であることのアリバイのようなものだ…。我々は少なくとも停戦を実現し、ヒムスとシリア国民を救うことができるのを知っている」と述べた。

諸外国の動き

複数の外交筋によると、シリアへの内政干渉と不安定化を目的とするシリアの友連絡グループ会合は西側諸国、アラブ諸国など約70カ国が参加し、閉幕声明(案)では、アサド政権の「人道に対する罪」非難、「シリア危機の非軍事的な平和的解決」、アラブ連盟外相会議の行程表への支持、連盟監視団の再派遣、「シリア国民の正当な代表としてのシリア国民評議会の承認、「平和的反体制勢力の支持」、反体制勢力への「移行期間における統一的文書および調整のしくみの構築」の呼びかけ、などを宣言する、という。

なお、ロシアと中国は会合をボイコットする。

AFP(2月23日付)は、西側外交筋が、フランスが提案している人道回廊構想に関して、「政権の実質的協力がない場合、軍事力に訴えなければ実行は困難だ」と考えていると報じた。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は訪問先のロンドンで、シリアの友連絡グループ会合に関して、シリア国民評議会の参加が参加各国のコンセンサスだと述べるとともに、アサド政権による弾圧を「卑劣で許せない」と批判した。

ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、シリアの友連絡グループ会合に関して、アサド政権を孤立させ、平和的な体制転換を実現することが目的だと述べた。

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ロシア外務省は声明を出し、ロシアと中国がシリアへの外国の介入を拒否し、アサド政権と反体制勢力の対話を支援するとの姿勢を改めて表明した。

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国連人権理事会の国際独立調査委員会は、シリア首脳の承知のもとに人道に対する罪が行われていることを指摘した報告書を理事会に提出し、同犯罪に関与した容疑者(首脳ら)の氏名を示した「極秘リスト」の作成と人権高等弁務官への提出を準備している、と発表した。

同報告書は2011年11月以降に委員会が関係者ら136人に対して行った面談などをもとに作成されたもので、「信頼に値できる消息筋」から得た情報をもとに、2011年3月以降の死者数を8,079人に達したとしている。

その一方同委員会は、自由シリア軍も、アサド政権と比べると程度は低いもの、人道に対する犯罪を犯していることへの懸念を表明した。

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トルコの野党共和人民党のケマル・クルチュダロール党首は、『ヒュッリイェト・デイリー・ニュース』(2月23日付)に対して、「トルコは、イスタンブールでシリアの反体制勢力、アサド政権の代表、ロシア、イランの会合を主催することで大きな進展を実現できたはずだ」と述べ、西側諸国に追随してアサド政権との関係を絶ったレジェップ・タイイップ・エルドアン首相の政策を批判した。

クルチュダロール党首はまた、「シリアへの干渉がシリアだけでなく、トルコをも震撼させ、中東の危機的混乱を招く」と警鐘をならした。

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ファルス通信(2月23日付)によると、イランの最高指導者アリー・ハーメネイー師は、シリア情勢への西側諸国などの介入に関して、「イスラームの覚醒とシオニストに対抗する体制への復讐だ」と述べた。

アリー・アクバル・ヴェラーヤティー元外務大臣が明らかにした。

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『ナハール』(2月23日付)は、英仏がヒムス市で22日に負傷した記者・カメラマンのレバノンを出国させるため、レバノンの赤十字を通じて水面下の調整を行っている、と報じた。

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国連の潘基文事務総長とアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長はコフィ・アナン前事務総長をシリア危機担当合同特使に任命した。

AFP, February 23, 2012、Akhbar al-Sharq, February 23, 2012、Facebook, February 23, 2012、al-Hayat, February 24, 2012、Kull-na Shuraka’, February 23, 2012, February 24、2012、al-Nahar, February 23, 2012、Naharnet.com, February 23, 2012、SANA, February 23,
2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

ヒムス市で軍・治安部隊が掃討作戦の一環として行った迫撃砲攻撃により米国人記者とフランス人カメラマンが死亡、フランスがただちにこれを非難し在ダマスカス大使を召還(2012年2月22日)

西側記者ら死亡

ヒムス県ヒムス市で反体制勢力側が「報道センター」として提供していた家屋に軍・治安部隊の迫撃砲が着弾し、米国人記者マリー・コルヴィン女史(『サンデー・タイムズ』)、フランス人カメラマンのレミー・オシュリク氏が死亡した。

The Sunday Times, February 22, 2012
The Sunday Times, February 22, 2012

またコルヴィン女史と同行していた英国人カメラマン、『フィガロ』紙の記者も負傷した。

バーブ・アムル地区で反体制活動を行うウマル・シャーキルを名のる人物によると、「2人の記者は、バーブ・アムル地区の我々のプレス・センターへの砲撃で死亡し、このほかにも外国人記者3~4人が負傷した」。

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フランスのニコラ・サルコジ大統領は、コルヴィン記者らの殺害を受け、「この体制は去らねばならない…。もうたくさんだ。シリア人が生存権を享受できず、自らの運命を自由に決められないこと正当化するいかなる理由もない」と非難した。

またアラン・ジュペ外務大臣は、コルヴィン記者らの殺害を受けて、在ダマスカス大使を召還すると発表した。

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ビクトリア・ヌーランド米国務省報道官は、コルヴィン記者らの殺害を受け、「シリア政府の蛮行の新たな証拠」と非難した。

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SANA(2月22日付)によると、コルヴィン記者らの死亡を受け、アドナーン・マフムード情報大臣は声明を出し、死傷した外国人記者がシリアに入国した記録がないと述べ、彼らが不法に入国し取材をしていたことを示唆した。

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シリア革命総合委員会のハーディー・アブドゥッラー氏によると、ヒムス市での弾圧の映像を配信してきた地元の活動家ラーミー・サイイド氏が、軍・治安部隊の砲撃で死亡した。

サイイド氏はバーブ・アムル地区の野戦病院に死傷者を車で搬送する途中、砲撃に遭った、という。

国内の暴力

シリア革命総合委員会によると、ヒムス県ヒムス市、イドリブ県などで、軍・治安部隊による掃討作戦が続き、ヒムス市バーブ・アムル地区では60人以上、イドリブ県で20人以上が殺害されるなど、各地で合わせて約100人が殺害された。

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Youtube, February 21, 2012
Youtube, February 21, 2012

シリア人権ネットワークによると、イドリブ県各地(イーディーター、イブリーン、バルシューン)で殺害された約20人はいずれも若者で、そのほとんどが頭と胸を撃たれていた、という。

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ダマスカス県・ダマスカス郊外県では、同地の地元調整委員会報道官のムハンマド・シャーミー氏によると、ジャウバル区、カフルスーサ区、バルザ区、マイダーン地区、ルクンッディーン区、ヤブルード市、カタナー市、タッル市などで学生が中心となって反体制デモを行い、治安部隊が強制排除、多数を逮捕した。

またバラダー渓谷、ザバダーニー市周辺ではライフラインが遮断された、という。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ大学電気工学部で反体制デモが発生、その後学生寮で治安部隊による逮捕が行われた。

シリア国民評議会のムハンマド・ヤースィーン・ナッジャール氏によると、アレッポ市では数千人の学生が構内で反体制デモを行い、ハーフィズ・アサド前大統領の銅像を破壊したという。

一方、SANA(2月22日付)によると、アレッポ市で武装テロ集団がしかけた爆弾が爆発し、警官1人、民間人1人が死亡した。

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ヒムス県では、複数の反体制活動家、目撃者によると、軍・治安部隊による掃討作戦が続いた。

一方、SANA(2月22日付)によると、ヒムス市で武装テロ集団がしかけた爆弾が爆発し、治安維持部隊兵士1人が死亡した。

またジスル・ザーラ村で武装テロ集団が軍士官の乗った車をRPGで砲撃し、大尉1人、注意1人が死亡した。

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ハマー県では、SANA(2月22日付)によると、ハマー市郊外で武装テロ集団の襲撃により電話局長が殺害された。

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ロイター通信(2月22日付)は、レバノンの高官の話として、アサド政権がヒムス市の掃討を憲法改正の国民投票が行われる2月26日までに完了し、イドリブ県の掃討を重点化しようとしている、と報じた。

アサド政権の動き

SANA(2月22日付)は、シリア政府が、赤十字国際委員会、国連、同人権理事会に対して書簡を送り、「多くの外国勢力が衛生セクターを外交政策の道具として利用し…シリアへの戦争をしかけている…。一部のアラブ、欧米諸国による不正に満ちた制裁が…医療物資・危機の不足をもたらしている」との抗議の意思を示す書簡を送付したと報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー報道官は、シリアの友連絡グループ会合(24日予定)で、民間人保護のため国境地帯に「安全地帯」を設置することを各国に提案すると述べた。

またカドマーニー報道官は以下のように述べ、外国の介入が必要との立場を示した。

「我々はすべての選択肢を探り、アラブ連盟がこれらすべての選択肢を駆使することを期待した。しかしそれらはいずれも成果を生まなかった…。おそらく選択肢は一つである。我々は、軍事介入か内戦かという二つの最悪の選択肢のいずれかを選ばなくてはならない」。

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地元情勢諸委員会は声明を出し、2月26日に予定されている憲法改正の国民投票をボイコットするよう呼びかけた。

レバノンの動き

Naharnet, February 21, 2012
Naharnet, February 21, 2012

進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は、ベイルートでヒムス市民と「シリア革命」との連帯を訴える座り込みに、婦人、党幹部(アクラム・シュハイイブ議員)、ドゥルーズ派宗教関係者らとともに初めて参加した。

諸外国の動き

ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ大統領とサウジアラビアのアブドゥッラー国王は電話会談を行った。

『ハヤート』(2月23日付)によると、この会談で、アブドゥッラー国王は「サウジアラビア王国はシリア情勢に対する宗教的・道徳的立場を決して放棄できない。最大の友好国であるロシアは、安保理で拒否権を発動するのでなく、アラブと協調すべきだった。現時点において、いかなる対話が行われても無駄である」と述べた。

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ロシアのメドヴェージェフ大統領はまた、イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領とも電話会談を行った。

ロシア大統領府は、会談では、シリア危機の早急且つ平和的解決を後押しし、外国の干渉を制限することを両者が確認し、政府と反体制勢力双方に暴力の停止を求めることで一致したと発表した。

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ロシア外務省報道官は、人道支援と負傷者搬送を目的とした政府と武装集団との2時間の一時停戦案(赤十字国際委員会)を「強く支持する」と述べた。

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ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、フランスが提案している人道回廊の設置に関して、「紛争を悪化させる」だけと述べ、拒否する姿勢を示した。

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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は『ハヤート』(2月23日付)に対して、シリアの友連絡グループ会合で、人道回廊設置案を具体化させる必要がある、と述べた。

AFP, February 22, 2012、Akhbar al-Sharq, February 22, 2012、al-Hayat, February 23, 2012、Naharnet.com, February 22, 2012、Reuters, February 22,
2012、SANA, February 22, 2012などをもとに作成。

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軍・治安部隊がヒムス市などで「もっとも激しい」砲撃を行うなか、シリア当局が24日に開催予定の「シリアの友連絡グループ」会合に参加しない意思を表明(2012年2月21日)

国内の暴力・反体制運動

反体制勢力(シリア人権監視団やシリア革命総合委員会)によると、ヒムス市などで軍・治安部隊が、これまでで「もっとも激しい」砲撃を行った。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区、ハーリディーヤ地区、カラム・ザイトゥーン地区に対する軍・治安部隊の砲撃が早朝から行われた。

シリア人権監視団によると、市内地での戦闘で16人が死亡し、空軍の航空機が上空で偵察活動を行っており、ロンドンを拠点とするシリア人権ネットワークによると、早朝から迫撃砲が少なくとも250発着弾したというが、真偽は定かでない。

また同監視団によると、ダマスカス・ヒムス街道(カーラ市)付近で、ヒムス市方面に向かう軍・治安部隊の戦車、兵員輸送車56輌が目撃された。

シリア革命総合委員会(ハーディー・アブドゥッラーをなのる活動家)が、軍に依然としてとどまっている信頼できる士官らからの情報として伝えたところによると、この増援部隊は、ヒムス市突入か同市各地域への砲撃を任務としている、という。

ナーディル・フサイニーを名のる活動家の一人がロイター通信(2月21日付)に対して明らかにしたところによると、「自由シリア軍は、政府軍がバーブ・アムル地区に進入するのを阻止」し続けており、軍・治安部隊は離反兵の力を削ぐため砲撃を激化している、という。

『ハヤート』(2月22日付)によると、バーブ・アムル地区の住民(約10万人)の約60%はすでに避難している。

シリア人権監視団によると、クサイル市では民間人5人が治安部隊に撃たれて死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がアブディーター村、イブリーン村、バルシューン村に進入した。

またタルナバ村で軍・治安部隊がマイクロバスに発砲し、運転手を殺害した。

さらに対トルコ国境のカフルタハーリーム町では離反兵が軍の兵士5人を殺害、2人を捕捉した、という。

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アレッポ県では、反体制活動家などによると、アレッポ大学理学部の学生約2,500人が反体制デモを行ったが、軍・治安部隊が強制排除した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(2月21日付)によると、ドゥーマー市で治安維持部隊が武装テロ集団メンバー4人を殺害した。

アサド政権の動き

Kull-na Shuraka’, February 21, 2012
Kull-na Shuraka’, February 21, 2012
Kull-na Shuraka’, February 21, 2012
Kull-na Shuraka’, February 21, 2012

『ワタン』(2月21日付)は、2月26日に国民投票が予定されている憲法草案に関して、シリア民族社会党ハイダル派が、「大統領の宗教はイスラームである」とした文言に異議を唱え、「新憲法は世俗的市民国家の二大原則である、市民の平等と三権分立への打撃だ」と批判した。

シリア民族社会党ハイダル派は解放変革人民戦線を主導する体制外の親体制組織で、同戦線のカドリー・ジャミール氏がシリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会メンバーを務めた。

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『クッルナー・シュラカー』(2月21日付)は、体制外の親体制組織の変革解放人民戦線の支持者約300人が人民議会議事堂前で、「大統領の宗教はイスラームである」と規定した憲法第3条への反対を訴えるデモを行った。

なお同規定は現行憲法、憲法改正案のいずれにも盛り込まれている。

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『クッルナー・シュラカー』(2月21日付)は、進歩国民戦線加盟政党のシリア共産党ファイサル派が、2012年初めに反体制抗議運動への反対の姿勢を決定したことで、各地の各委員会が機能不全に陥っていると報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会広報局長のアフマド・ラマダーン氏は、自身の兄弟でアレッポ市在住のマフムード・アブドゥルカーディル・ラマダーン氏が20日に「シリア政府によって暗殺された」ことを明らかにした。

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自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐は国際赤十字委員会による人道物資搬入や負傷者搬送のための一時休戦の提案を歓迎した。

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シリア国民評議会はヒムス市包囲解除と人道物資の援助・搬入のため、国際社会に緊急の行動を呼びかけ、国際赤十字委員会による人道物資搬入や負傷者搬送のための一時休戦の提案への支持を表明した。

レバノンの動き

アドナーン・マンスール外務大臣は、OTV(2月21日付)に対して、シリアの友連絡グループ会合に関して、「シリアの現状に関与しないという決定に従い、我々はチュニジアの会議には参加しないだろう」と述べた。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、24日に開催予定のシリアの友連絡グループ会合に関して、「アサド政権がさらに孤立するかたちで立ち現れる。勇敢なシリア国民は、我々の支援、我々との連帯を必要としている」と述べた。

ビクトリア・ヌーランド米国務省報道官は、「シリアにおいて軍事的性格を強めることに寄与することが今のところ論理的だと思っていない。我々が望んでいないのは、暴力のエスカレートだ。しかしもし現下の圧力にアサドを応じさせることができなければ、追加措置を検討しなければならない」と述べた。

ジェームズ・クラパー米国家情報長官は米上院国防委員会で、イラクのアル=カーイダがシリア国内での最近のテロ(ダマスカス、アレッポでの自爆テロ)に関与している可能性が高いと証言し、「不快感を喚起する現象として、我々は過激分子が反体制諸組織に浸透しているのを目の当たりにしている…。多くの場合反体制勢力は、彼らの存在に気づいていない」と述べた。

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ロシア外務省報道官は、シリアの友連絡グループ会合に関して、真の目的が明確でない、と述べ、ロシアが参加しないことを明らかにした。

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中国外交部報道官は、シリアの危機を平和的に解決するすべての努力を歓迎するとしつつ、シリアの友連絡グループ会合に関して、参加を「依然として検討している」と述べた。

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イラン外務省報道官は、定例記者会見で、シリア情勢に関して、「シリアの安定化への道のりは、国民と政府の対話の基礎を構築することにある」と述べた。

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国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、シリアのすべての当事者(アサド政権と反体制武装集団)に対して、「暴力行使に抵抗し、民間人保護の重要性を認め、人道機関が支援を必要とする人のもとに障害なく到達できるようにする」よう呼びかけた。

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国際赤十字委員会のヤコブ・ケレンベルガー総裁は改めて声明を出し、シリア政府と反体制勢力の双方と接触し、人道目的での一時停戦の実施を呼びかけていることを明らかにした。

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ガザ地区ガザ市でパレスチナ人数百人(シリア革命救済パレスチナ連合)がシリアでの反体制デモとの連帯を訴えるデモを行い、アサド政権の打倒を呼びかけた。

AFP, February 21, 2012、Akhbar al-Sharq, February 21, 2012、al-Hayat, February 22, 2012、Kull-na Shuraka’, February 21, 2012、Naharnet.com, February
21, 2012、Reuter February 21, 2012、SANA, February 21, 2012、al-Watan, February 21, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

アサド大統領がロシアの外交関係委員会委員長と会談するなか、シリア革命最高軍事評議会のシャイフ准将がシリア・ムスリム同胞団が指導するシリア国民評議会の重要性を否定(2012年2月20日)

反体制勢力の動き

シリア革命最高軍事評議会のムスタファー・シャイフ准将は『ハヤート』(2月21日付)に対して、シリア・ムスリム同胞団には「一部で言われているのとは異なり、シリア国内に蓄えがなく、国内の反体制運動において重要な役割を果たしていない」と述べ、同胞団が指導するシリア国民評議会の重要性を否定した。

シャイフ准将はまた、「シリア国民評議会は国内の運動と協調することはできない。なぜならほとんどの指導者は長年にわたって在外生活を送り、現地で暮らす人々と真に連絡を取り合っていないからだ」と批判した。

シャイフ准将によると、国内で反体制運動を行っている活動家のほとんどは政治組織に参加していない無所属の活動家だという。

一方、自由シリア軍との関係に関して、意見の相違が「単に視点にかかわるもので、目的は一つ、すなわち祖国の安寧、統制のとれた軍指導部の結成である」と述べた。

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反体制ジャーナリストが、シリア・ジャーナリスト連盟の発足を宣言した。

発足声明によると、同連盟には約100人のジャーナリストが参加している。

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シリア法律研究調査センターのアンワル・ブンニー所長は、ダマスカス県で2月16日に逮捕された活動家の一人マーズィン・ダルウィーシュ氏が釈放されたと発表した。

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『アクス・サイル』(2月21日付)によると、国内で反体制活動を行う民主的変革諸勢力国民調整委員会は声明を出し、外国の軍事介入は「レッドライン」と述べ、拒否する姿勢を改めて示した。

同声明によると、この姿勢は、1月24日のカイロでの同委員会使節団とアラブ連盟ナビール・アラビー事務総長との会談で示された、という。

アサド政権の動き

SANA, February 20, 2012
SANA, February 20, 2012

SANA(2月20日付)によると、アサド大統領はシリアを訪問中のロシア議会下院のアレクセイ・プシュコブ外交関係委員会委員長と会談した。

会談でアサド大統領は、「武装テロ集団」が外国勢力からの資金・武器援助のもとにシリア国家・社会を標的としており、「シリアの安定を揺るがし、問題解決への努力を頓挫させようとしている」と述べたという。

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SANA(2月20日付)は、シリアとイランが自由貿易合意実施プログラムに署名したと報じた。

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SANAは2月20日付で憲法草案の英語訳をウェブ上に公開した。http://www.sana.sy/eng/337/2012/02/20/401178.htm

国内の暴力・反体制デモ

シリア人権監視団によると、ダマスカス県( マッザ区など)、ダマスカス郊外県(ザバダーニー市など)では治安部隊による厳戒態勢が強化された。

シリア人権監視団によると、ハジャル・アスワド市では少なくとも4人が殺害された。

ダマスカス県・ダマスカス郊外県調整委員会報道官を名のるムハンマド・シャーミー氏によると、タフリール広場の空軍情報部南部区指導部前で夜間、反体制デモが発生した。

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シリア人権監視団によると、ヒムス県ヒムス市各地では、掃討作戦を続ける軍・治安部隊がさらに増強され、同市の完全制圧の準備が進められた。

複数の活動家によると、弾圧により少なくとも20人がヒムス市などで殺害されたという。

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ハマー県では、SANA(2月20日付)によると、サラミーヤ地方で武装テロ集団が国境警備隊を襲撃し、大佐、大尉が殺害された。

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アレッポ県では、SANA(2月20日付)によると、アレッポ市でビジネスマンのマフムード・ラマダーン氏が武装テロ集団によって暗殺された。

レバノンの動き

ヒズブッラーのナウワーフ・ムーサウィー議員(抵抗への忠誠ブロック)は、西側諸国が設置を目指しているとされる「人道回廊」に関して、「イスラエルの包囲で苦しむガザのパレスチナ人を支援するための人道回廊はどこにあるのか?」と述べ、西側諸国のダブルスタンダードを非難した。

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進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は党機関誌『アンバー』(2月20日付)のなかで、シリアとレバノンのドゥルーズ派を分断しようとする試みに抵抗するよう呼びかけた。

ジュンブラート党首は「シリアのドゥルーズは占領者に抵抗する長い歴史を持っており、抑圧から国を解放するため、今日も同じように抵抗するだろう…。彼らはレバノン山地やシリア政府の凶悪犯たちが彼らを罠にかけることを許さないだろう…。彼らはあなたがたをイスラエルの国境警備に向けたいと考えている。我々の歴史は周辺アラブ・イスラーム諸国との共存によって特徴づけられており、未来はシリアで自由を求める人々のものである…。あなたがたは彼らに属している」と述べ、アサド政権を支援するレバノン国内の勢力とアサド政権を暗に批判した。

諸外国の動き

マーチン・デンプシー米陸軍参謀長は、CNN(2月20日付)に対して、シリアへの軍事的介入が「きわめて困難」だと述べるとともに、反体制勢力の武装に関して「時期尚早」と述べた。

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チュニジアのラフィーク・アブドゥッサラーム外務大臣は、シリア情勢に関して、「我々はイラク・シナリオがシリアに生じることを望んでいない…。我々はシリアの領土の統一性を維持しなければならない」と述べた。

またシリアの友連絡グループの会合に関して、シリア国民評議会をはじめとする反体制勢力が代表として出席すると述べた。

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シリア海軍の「教練」のためイランが派遣した海軍艦艇2隻がスエズ運河を通過し、タルトゥース港に寄港した。

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国際赤十字委員会は、軍・治安部隊と離反兵との戦闘がもっとも激しい地域への人道支援を行うため、2時間の停戦を行うよう、アサド政権と反体制武装集団と交渉を行おうとしていることを明らかにした。

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国連総会のナースィル・アブドゥルアズィーズ議長は、カイロでアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長と会談した。

会談後の共同記者会見で、アブドゥルアズィーズ議長は安保理に問題があるため、国際社会がシリア情勢をめぐって無力だと述べ、安保理に必要な措置を講じるよう求めた。

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中国の『人民日報』(2月20日付)は、西側諸国によるシリアの反体制勢力支援に関して「内戦」を喚起する動きと非難した。

AFP, February 20, 2012、Akhbar al-Sharq, February 20, 2012、‘Aks al-Sayr, February 21, 2012、CNN, February 20, 2012、al-Hayat, February 21, 2012, February 22, 2012、Kull-na Shuraka’, February 21, 2012、Naharnet.com, February 20, 2012、Reuters, February 20, 2012、SANA, February 20, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

中国の翟隽外務次官が民主的変革諸勢力国民調整委員会代表、シリア国家建設潮流代表と相次いで会談(2012年2月19日)

中国の動き

中国の翟隽外務次官は国内で反体制活動を行う民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表とダマスカスで会談した。

アブドゥルアズィーム代表は、RT(2月19日付)に対して、会談で中国側に対して、暴力停止のためアサド政権に圧力をかけるとともに、シリア国民を支持するよう求めたと述べた。

また反体制運動の糾合に関して、「反体制勢力の統一は戦略的目標だ。なぜならそれは一方で、反体制勢力そのものを、他方で平和的な民衆のインティファーダを強化するからだ」と述べた。

しかし「この問題(反体制勢力の統一)は内外の反体制勢力による政治的な意思(のとりまとめ)を必要とし、共通の政治的ビジョンを必要とする。しかし一部の活動家は国民的な決定を望んでいない…。シリアの危機解決策をめぐって、国内、アラブ、国際社会で綱引きが行われており…、そのことが解決に至ることを妨げている」と述べ、反体制勢力内の対立や外部介入の弊害を改めて認めた。

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翟外務次官はまた、同じく国内で反体制活動を行うシリア国家建設潮流のルワイユ・フサイン代表、ムナー・ガーニム書記長と会談した。

同会談に関して、シリア国家建設潮流は声明を出し、反体制勢力が対話による問題解決を概ね支持しているが、アサド政権が信頼を欠いていることが対話を妨げていると伝えたと発表した。

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中国の新華社通信(2月19日付)は、「シリア危機には対話を通じた平和的な解決への希望が依然としてある」と報じ、外国の介入に改めて警鐘を鳴らした。

国内の暴力・反体制デモ

ダマスカス県では、ダマスカス県・ダマスカス郊外県地元調整委員会報道官だというムハンマド・シャーミーを名のる人物によると、治安部隊が多数展開するなかで、「ゼネストと市民的不服従」の呼びかけに呼応するかたちでカダム区、マイダーン地区、ジャウバル区、バルザ区、カフルスーサ区でゼネストが行われ、学校での授業終了時間後に反体制デモが行われた、という。

マッザ区調整委員会報道官だというアブー・フザイファ・マッズィー氏によると、治安部隊によって(18日に)殺害されたサーミル・ハティーブ氏の葬儀を早朝(7時)に行うよう家族に強制したが、葬儀は10時半に行われた。

またダマスカス郊外県のハジャル・アスワド市などでも反体制デモが行われた、という。

シリア人権監視団によると、ダマスカス郊外県ランクース市周辺に戦車・兵員輸送車輌数十両が展開した。

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シリア人権監視団によると、ダルアー県フラーク市、ダイル・ザウル県ダイル・ザウル市、イドリブ県ジスル・シュグール市、同カフルナブル市、ハサカ県カーミシュリー市でも反体制デモが発生した、という。

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シリア革命総合委員会によると、ヒムス県ヒムス市バーブ・アムル地区、バーブ・スィバーア地区、ハーリディーヤ地区、バイヤーダ地区などに対する軍・治安部隊の掃討作戦が続いた。

またタドムル市では、シリア人権監視団によると、2月4日から軍・治安部隊の包囲が続き、多くの住民が同市から避難した、という。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ニダール・ガザール同県裁判所の検事長、ムハンマド・ズィヤーダ判事が乗った車が「何ものか」に襲撃され、両氏と運転手の合わせて3人が殺害された。

SANA(12月19日付)は、武装テロ集団の犯行と断じた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アターリブ市とマアッラトミスリーン(イドリブ県)を結ぶ街道で男性1人が殺害された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、スフナ市とアシャーラ市でそれぞれ1人が殺害された。

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ハマー県では、SANA(2月19日付)によると、カフル・トゥーン町とタッル・サキーン村を結ぶバスが武装テロ集団に襲撃され、民間人4人が殺害された。

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複数の活動家によると、治安部隊の弾圧により合わせて約10人が殺害されたという。また、ハマー県上空では戦闘機が旋回したというが、弾圧とは無関係だと思われる。

アサド政権の動き

Kull-na Shuraka’, February 19, 2012
Kull-na Shuraka’, February 19, 2012

SANA(2月19日付)は、シリア、イラク、レバノン、イランは、イランから3国への電力輸出に関する相互理解覚書に署名したと報じた。

これにより、シリアとレバノンに1,200~1,300メガワットの電力が送電される、という。

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マロン派のサミール・ナッサール・ダマスカス司教は、反体制運動をめぐる困難に関して、「対話の強化」を呼びかけた。

反体制勢力の動き

シリア人ビジネスマンのファイサル・クドスィー氏(ナーズィム・クドスィー元首相の長男、ロンドン在住)は、BBC(2月19日付)に対して、シリア経済が西側の制裁によって打撃を被っており、現体制が「街の圧力」でゆっくりと解体している、と述べた。

諸外国の動き

アルジェリアのアブドゥルアズィーズ・ベルハーディム首相は「アラブ連盟はもはや連盟ではない。その名前とは異なりアラブとはほど遠い。創設メンバーの一つへの軍事介入を安保理やNATOに求め、アラブ諸国の力を破壊する組織になりさがった」と痛烈に批判した。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は「我々はリビアで行ったようには(シリアに)介入できない…。しかし別の多くのことができる」と述べた。

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ロシアのガティロフ外務次官はツイッターで「シリアの人権状況への客観的な評価が求められている」と述べ、国連事務総長に専門家の派遣を求めると意思があることを示した。

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エジプト政府は、国内での弾圧継続への「不満のメッセージ」としてシャウキー・イスマーイール在ダマスカス大使の召還を決定した。

シリア政府は対抗措置として、ユースフ・アフマド在カイロ大使の召還を決定した。

AFP, February 19, 2012、Akhbar al-Sharq, February 19, 2012、BBC, February 19, 2012、al-Hayat, February 20, 2012、Kull-na Shuraka’, February 19, 2012、Reuters, February 19, 2012、SANA, February 19, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

アサド大統領が中国の翟隽外務次官と会談しシリアに対する中国指導部および国民の対応を評価、一方キールー氏ら著名な無所属活動家らが「シリア民主フォーラム」と称する反体制組織を新たに結成(2012年2月18日)

アサド政権の動き

アサド大統領はシリアを訪問中の中国の翟隽外務次官と会談した。

SANA, February 18, 2012
SANA, February 18, 2012

SANA(2月18日付)によると、アサド大統領は会談で、シリアに対する中国指導部および国民の対応を評価する一方、シリア情勢に関して「国家の分割、地域における地政学的な地位と歴史的役割に打撃」を与えることが(西側の)ねらいだとの見方を示した。

一方、翟外務次官は、「いかなる外国の干渉をも排除したかたちで、すべての当事者による対話を通じた危機の政治的正常化」の必要を強調するとともに、「安定した状態においてのみ、シリアは包括的な政治改革を行える」との立場を示した。

会談には、ワリード・ムアッリム外務大臣、ブサイナ・シャアバーン大統領府情報顧問も同席した。

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AFP(2月18日付)はシリア当局がスウェーデンのビデオストリーミング・サイト「Bambuser」の閲覧を制限したと報じた。

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SANA(2月18日付)は、内務省のハサン・ジャラーリー民事担当次官が26日に予定されている新憲法草案の国民投票に関して、有権者数が約1,460万人に及び、投票所が全国で13,835カ所設置されると発表した、と報じた。

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『クッルナー・シュラカー』(2月18日付)は、アサド大統領が最近の治安当局高官との会合で、イスラエル国内(とりわけリクード内)米国にアサド政権存続を強く望む声があり、近くアサド政権に資するようなかたちでヒズブッラーやイランに対して直接的な行動に打って出ることを検討していることをロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣から知らされたことを明らかにしたと報じた。

国内の暴力・反体制デモ

ダマスカス県では、『ハヤート』(2月19日付)によると、マッザ区で17日(金曜日)のデモでの犠牲者3人の葬儀が行われた。

ダマスカス県・ダマスカス郊外県地元調整委員会報道官を自称するムハンマド・シャーミーを名のる人物によると、葬儀には約15,000人が参列し、衛星テレビ局での「一つ、一つ、一つ、シリア国民は一つ」と連呼する会葬者の映像が放映された。

シリア人権監視団やシャーミー氏によると、犠牲者埋葬後、治安部隊が人々に発砲し、1人が殺害され、4人が負傷した、という。

al-Hayat, February 19, 201
al-Hayat, February 19, 201

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ヒムス県では、複数の活動家によると、ヒムス市バーブ・アムル地区などに対して、軍・治安部隊が砲撃を継続した。

一方、SANA(2月18日付)によると、ヒムス市の精錬所の燃料庫が武装テロ集団の破壊工作で炎上した。また武装テロ集団はヒムス県各地、ダイル・ザウル県クーリーヤ地方南部でもガス・パイプラインや石油パイプラインに対する破壊工作を行ったという。

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イドリブ県では、SANA(2月18日付)によると、アリーハー市で武装テロ集団が治安部隊を襲撃し、兵士1人が殉死した。

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アレッポ県では、SANA(2月18日付)によると、アレッポ県議会のジャマール・バッシュ議員が武装テロ集団に襲撃され、死亡した。

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このほか、ハマー県、ダルアー県、ダイル・ザウル県でも軍・治安部隊による掃討作戦が行われたほか、イドリブ県では軍・治安部隊と離反兵が衝突し、反体制活動家によると、各地での死者は12人に及んだ。

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『クッルナー・シュラカー』(2月18日付)は、バッシャール・ジャアファリー国連大使の甥のザキー・バーヒル・ジャアファリー氏がマッザ区での反体制デモに参加し、治安部隊の銃弾で負傷したと報じた。

また、同報道はアーディル・サファル首相の妹も16日のデモ(場所は不明)で負傷したと報じている。しかし真偽は定かでない。

反体制勢力の動き

国内で反体制活動を行うミシェル・キールー氏ら著名な無所属活動家が2月16日から18日にかけてエジプトで開催し、「シリア民主フォーラム」と称する反体制組織を結成した。

参加メンバーは、シリア国民評議会、民主的変革諸勢力国民調整委員会のいずれにも参加してこなかった以下の大物活動家ら。

ミシェル・キールー、アーリフ・ダリーラ、ファーイズ・サーラ、ハーズィム・ナハール、ナースィル・ガザーリー、ハラフ・アリー・ハラフ、サミール・イータ、アフマド・マハーミード、アフマド・ミスリー、ラシャー・カッス・ユースフ、マイサー・サーリフ、ムウタスィム・スユーフィー、マフムード・カンヌ。

発足声明によると、同組織は、「国内で活動を行う政治的、市民的、民主的フォーラム」で、「シリア革命にかかわるすべての個人、組織、勢力に開かれて」おり、「民主的市民国家を建設するための抜本変革」をめざしている。

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『ハヤート』(2月19日付)は、シリア国民評議会の信頼できる消息筋の話として、同評議会が、ドーハでの会合で、平和的な反体制運動の継続を追求しつつ、外国の軍事介入、国内の武装集団の組織化・支援などを検討した、と報じた。

イラクの動き

イラクのヌーリー・マーリキー首相は、ラシード・チャンネル(2月18日付)に対して、3月に予定されているアラブ連盟首脳会議へのアサド大統領の出席を望んでいると述べた。

マーリキー首相は「我々は、連盟にシリアの加盟資格凍結…に関する決議が連盟の会議だけに関するものなのか、首脳会議にも及ぶのかを尋ねている…。もし連盟代表レベルに限られるのなら、我々は大統領であれ、その特使であれ、シリアの首脳会議への出席を望む…。しかし決議がすべての出席者に及ぶのなら、我々は連盟の一員(としてそれに従う)…。我々は参加があるべきだと思う。なぜならそれによって干渉や宗派対立とは無縁の対話のページが開かれるからだ。これ以上シリアで混乱が増しても誰も得しない」と述べた。

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イラクのヌーリー・マーリキー首相府は声明を出し、シリア領内への武器密輸、戦闘員流入を阻止するため対シリア国境の警備を強化したと発表した。

レバノンの動き

Naharnet, February 18, 2012
Naharnet, February 18, 2012

ヒズブッラーとアマル運動の南部県の幹部がスール市で会合を開き、アサド政権の改革の努力を全面支持するとの共同声明を発表した。

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進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は、『サフィール』(2月18日付)に対して、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長に「アサド政権とその偽りの改革を支持する以上に、シリア国民を支持することがより重要」と伝え、アサド政権支持の再考を促したと述べた。

諸外国の動き

『ハヤート』(2月19日付)が得た情報によると、チュニジアのラフィーク・アブドゥッサラーム外務大臣は24日にチュニスで開催予定のシリアの友連絡グループ会合に、シリア国民評議会を正式に招待した。

評議会のアフマド・ラマダーン広報局長は、『ハヤート』(2月19日付)に対して、ブルハーン・ガルユーン事務局長ら運営委員会メンバーが出席し、評議会が招待されていないとの一部報道を否定した。

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米NBC(2月18日付)は、多数の米国の無人偵察機がシリア上空でアサド政権による反体制運動弾圧をフォローするために活動を行っている、と報じた。

またトム・ドニロン米国家安全保障担当補佐官が、シリア、イラン問題や地域の安全保障について意見を交換するため、イスラエルに到着した。

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「アフバール・シャルク」(2月18日付)は、ベルリンのシリア大使館内にシリアの諜報機関の本部があることをドイツの首都ベルリンの諜報当局高官が明らかにしたと報じた。

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AFP(2月17日付)は、イスラエルのカフルカーナーで48年パレスチナ人約1,000人がアサド政権に反対するデモを行ったと報じた。

AFP, February 18, 2012、Akhbar al-Sharq, February 18, 2012、al-Hayat, February 19, 2012, February 20, 2012、Kull-na Shuraka’, February 18, 2012,
February 22, 2012、Naharnet.com, February 18, 2012、NBC, February 18, 2012、Reuters,
February 18, 2012、SANA, February 18, 2012、al-Safir, February 18, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

「人民抵抗の金曜日」と銘打たれた反体制デモが散発し合わせて数千人が参加、仏大統領と英首相首相が反体制勢力に対し「国際社会が支援し得るよう自らを統合するよう」呼びかけ(2012年2月17日)

国内の暴力・反体制デモ

シリア革命調整連合によると、「人民抵抗の金曜日」と銘打って、金曜礼拝後に各地で反体制デモが行われ、合わせて数千人が参加、同組織を含むさまざまな反体制勢力がデモに関する情報をインターネットやアサド政権に敵対するジャズィーラなどを通じて発信した。

SNN, February 17, 2012
SNN, February 17, 2012
SNN, February 17, 2012
SNN, February 17, 2012

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地元調整諸委員会によると、治安部隊がデモを強制排除し約45人が殺害された、という。

死者のうち12人は自由シリア軍の兵士で、彼らはダルアー県で処刑された、という。

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ダマスカス県では、ダマスカス県・ダマスカス郊外県調整連合報道官によると、 マッザ区のムスタファー・モスクで、反体制デモが発生し、治安部隊が発砲し、多数を逮捕したという。

またシリア人権監視団によるとこの弾圧で1人が殺害され、12人が負傷した。

同報道官によると、この反体制デモはこれまで最大規模だと述べているが、真偽は定かでない。

またザイン・アービディーン・モスク前では2,000人が反体制デモを行ったほか、バルザ区、アサール・ワルド地区、カフルスーサ区、カーブーン区などでもデモが発生、治安部隊の弾圧により1人(カーブーン区)で死亡したという。

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ダマスカス郊外県では、ダマスカス県・ダマスカス郊外県調整連合報道官によると、ドゥーマー、カフルバトナー、アルトゥーズなどで反体制デモが発生したという。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、少なくともアレッポ市内12カ所と25村で反体制デモが発生した、という。

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ヒムス県では、シリア革命総合委員会のハーディー・アブドゥッラー氏によると、ヒムス市バーブ・アムル地区、ハーリディーヤ地区、バイヤーダ地区などでの軍・治安部隊による掃討作戦が続き、これまでもっとも激しい砲撃が行われた、という。

シリア人権監視団によると、これにより5人が死亡した。

一方、SANA(2月17日付)は、ヒムス市バーブ・アムル地区で武装テロ集団がパイプラインに対する破壊工作を行ったと報じた。

またフサイニー村近くで、逮捕者を乗せたバスが武装テロ集団によって襲撃を受け、治安維持部隊要員8人(うち少佐1人)が殺害された、と報じた。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、体制打倒を求める「1万人以上」がデモを行い、ジャースィム市、ハーッラ市で2人が死亡、またハーッラ市では軍の兵士が多数離反した、という。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によるとダイル・ザウル市でデモが発生し、2人が殺害された。

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『クッルナー・シュラカー』(2月18日付)によると、ハサカ県カーミシュリー市、ラアス・アイン市、アームーダー市などで、数千人が金曜礼拝後に反体制デモを行った。

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『ハヤート』(2月18日付)によると、軍総合風紀取締委員会のムハンマド・アリー・ハティーブ准将が同委員会からの離反を宣言した。

またアレッポ航空士官学校局長のファーイズ・アムル准将も軍からの離反と自由シリア軍への参加を宣言した。

SANA, February 17, 2012
SANA, February 17, 2012
SANA, February 17, 2012
SANA, February 17, 2012

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『シャファーフ』(2月17日付)は、スワイダー県スワイダー市近くの「秘密集団墓地」に、イラン・イスラーム革命防衛隊兵士やイラクのムクタダー・サドル潮流の民兵の遺体が埋葬された、と報じた。

同報道によると、埋葬された遺体は、アサド政権側で反体制運動を弾圧していたというが、真偽は定かでない。

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『ニューヨーク・タイムズ』紙は、自由シリア軍などを取材するため、1週間前にシリアに入国した同紙記者のアントニー・シャディード氏(レバノン系米国人)が死亡したと発表した。

死因は喘息の発作だと思われる。

同氏の父親によると、ジャディード氏は喘息を煩っていた。

アサド政権の動き

SANA(2月17日付)は、アサド大統領がモーリタニアのムーラーイ・ウルド・ムハンマド・ラクダフ首相とダマスカスで会談し、ムハンマド・ウルド・アブドゥルアズィーズ大統領の親書を受け取った、と報じた。

アサド大統領はこの会談で、シリアでの反体制デモに関する「真相」を説明し、治安・安定回復と市民保護のために政治改革を行う必要を強調した、という。

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SANA(2月17日付)は、中国の翟隽外務次官がシリアを訪問し、ダマスカスでファイサル・ミクダード外務次官と会談したと報じた。

会談後の記者会見で、翟外務次官は、会談において、困難な現状にあるシリアへの協力強化のため意見交換を行った、と述べた。

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バアス党シリア地域指導部は、第11回シリア地域大会(党大会)を2月26日の新憲法草案国民投票を延期したと発表した。

反体制勢力の動き

国外で活動する反体制政治同盟の一つ、シリア国民評議会は、「シリアの民主的変革と開発のための19の計画」の準備を完了し、カタールの首都ドーハでの会合を閉幕した。『ハヤート』(2月18日付)が報じた。

広報局メンバーのウバイダ・ナッハース氏(国民行動グループ・メンバー)によると、この計画は近く発表されるという。

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ダマスカス民主変革宣言執行部メンバーのナウワーフ・バシール氏(駐トルコ)は、『ハヤート』(2月18日付)に対して、反体制デモがアサド政権打倒まで続くだろう、と述べた。

レバノンの動き

進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首はトルコを訪問し、アフメト・ダウトオール外務大臣と会談した。

会談後、ジュンブラート党首は、「シリア政府の暴力を終わらせられるのは政治的解決だけだ」と述べた。

諸外国の動き

NATOのアナス・フォー・ラスムセン事務局長は、ロイター通信(2月17日付)に対して、「国連が民間人保護を委任されたとしても…我々はシリアへの介入を決意しないだろう」と述べた。

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チュニジアのラフィーク・アブドゥッサラーム外務大臣は、24日にチュニスで開催予定のシリアの友連絡グループの発足会合に関して、シリア国民評議会が同会合で正式な代表として招聘されない、と述べた。

記者会見で、アブドゥッサラーム外務大臣は、「シリア国民評議会が(大会において)正式な代表となることがないことは確実だ」と述べた。

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フランスのニコラ・サルコジ大統領と英国のデビッド・キャメロン首相がパリで会談後、記者会見を開き、反体制勢力に対して、国際社会が支援し得るよう自らを統合するよう呼びかけた。

AFP, February 17, 2012、al-Hayat, February 18, 2012、Kull-na Shuraka’, February 17, 2012, February 18, 2012、Naharnet.com, February 17, 2012、Reuters, February 17, 2012、SANA, February 17, 2012、al-Shafaf, February 17, 2012などをもとに作成。

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国連総会でアサド政権への非難決議が加盟国137か国の賛成票(ロシア、イランは反対)によって採択される一方、ジュペ仏外相がラブロフ露外相とシリア情勢などに関して意見を交換(2012年2月16日)

国連の動き

国連総会で、アサド政権による人権侵害を非難し、アラブ連盟外相会議決議(行程表)を全面支持する決議が採択された。

非難決議は、加盟国193カ国中137国が支持した。

反対票を投じたのは、ベラルーシ、ボリビア、中国、キューバ、北朝鮮、エクアドル、イラン、ニカラグア、ロシア、シリア、ベネズエラ、ジンバブエの12カ国。

またレバノン、アルジェリア、ベトナム、スリランカ、スリナム、セント・ビンセント・グレナディーン、ツバル、ウガンダ、ミャンマー、ナミビア、ネパール、タンザニア、アンゴラ、アルメニア、フィージー、コモロ、カメルーンは棄権、また3カ国が技術的な理由で投票しなかった。

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国連総会でのシリア非難決議採択を受け、スーザン・ライス米国連大使は、「シリア国民は世界の国々が自由と安全のために彼らを支持していることが知っている」と述べた。

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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連大使は、シリア非難国連総会決議に関して、「西側諸国、一部のアラブ諸国、そして過激なテロ集団のシリアに対する陰謀の一環」と非難した。

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イランの国連大使は「内政不干渉の原則を遵守し、決議に反対した」と述べた。

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国連の潘基文事務総長は、アサド大統領により新憲法国民投票日程発表に関して、民間人殺害を停止することがより重要と述べる一方、アサド政権が人道に対する罪を犯していると非難した。

反体制勢力の動き

Kull-na Shuraka’, February 16, 2012
Kull-na Shuraka’, February 16, 2012

民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表はクウェート紙『ラアユ』(2月16日付)に対して、「暴力、殺戮、狙撃が完全に停止するまで国民投票には参加できない」と述べた。

また「憲法は社会を構成するすべての当事者のコンセンサスの結果として生まれる社会契約であり、そのなかには各県で平和的革命・インティファーダを行う代表者や愛国的反体制勢力が含まれねばならない」と述べ、アサド政権が一方的に作成した草案を拒否する姿勢を示した。

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アサド大統領による新憲法草案国民投票の日程(2月26日)発表を受け、地元調整諸委員会は声明を出し、「犯罪者体制への国民の支持を確認」させる投票をボイコットするよう呼びかけ、アサド政権を「発足以来、憲政上、そして社会的な正統性を欠いている」と断じ、あらためてその徹底的な打倒を呼びかけた。

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シリア国民評議会のアナス・アブダ氏はBBC(2月16日付)に対して、憲法草案国民投票に関して、「ヒムス、イドリブ、ハマーなどでの人道に対する罪から注意をそらすための政府のトリック」と述べ、拒否の姿勢を示した。

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シリア国民評議会はカタールの首都ドーハで会合を開き、ブルハーン・ガルユーン事務局長の任期を3ヵ月延長するとともに、人民民主党の重鎮の一人ジョルジュ・サブラー氏を運営委員会メンバーに任命した。

国内の暴力・反体制勢力掃討

シリア人権監視団は、ダルアー県全体で軍・治安部隊によって「虐殺」が行われたと発表し、包囲された市民の行方の「即時解明」を呼びかけた。

同監視団が住民(ムハンマド氏)の話として伝えたところによると、軍・治安部隊は県内の村を一つずつ掃討、「自由シリア軍兵士は抵抗を試みたが、装備不足と市民への報復を恐れて撤退した」。

また同監視団によると、多数の住民が戦火を逃れて非難したという。

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Kull-na Shuraka’, February 16, 2012
Kull-na Shuraka’, February 16, 2012

ハマー県では、シリア人権監視団によると、カフルヌブーダ町で、士官複数を含む離反兵10人と民間人4人が軍・治安部隊の砲撃で殺害された。

タイバト・イマーム市とスーラーン市を結ぶ街道では、離反兵が軍・治安部隊を襲撃し、兵士4人を殺害した。

一方、SANA(2月16日付)は、ハマー市のハマディーヤ地区で武装テロ集団と治安維持部隊が交戦し、複数の武装テロ集団メンバーが逮捕されたと報じた。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、マッザ区のイラン大使館前で、葬儀の会葬者が体制打倒と自由シリア軍支持を訴えるデモを行った。

ダマスカス県・ダマスカス郊外県調整連合報道官のムハンマド・シャーミー氏によると、治安部隊はデモ参加者に実弾、催涙ガスなどを用いて強制排除、複数を逮捕した。

シャーミー氏によると、ジャウバル区、カダム区、マイダーン地区、ハジャル・アスワド市の複数の学校で反体制デモがあったという。

また、シリア法律研究調査センターのアンワル・ブンニー弁護士は、AFP(2月16日付)に対して、ダマスカスで反体制活動家13人が一斉摘発されたと述べた。

al-Hayat, February 17, 2012
al-Hayat, February 17, 2012

ブンニー弁護士によると、治安当局はダマスカスにあるシリア表現の自由センターの事務所で、マーズィン・ダルウィーシュ所長、ラッザーン・ガザーウィー女史(ブロガー)、ヤーラー・バドル氏、ヒンナーディー・ザフルート氏、アブドゥッラフマーン・ハマーダ氏、リーター・ドゥユーブ氏、ミヤーダ・ハリール氏、ジュワーン・フランスー氏、スナー・ズィーターニー氏、ハーニー・ズィーターニー氏、バッサーム・アフマド氏、マンスール・ハミード氏、マハー・サブラーニー氏を逮捕した。

『クッルナー・シュラカー』(2月16日付)によると、13人は空軍情報部によって逮捕された。

一方、SANA(2月16日付)によると、マイダーン地区のイマーム・アナス・ブン・マーリク・モスクのシャイフ、ムハンマド・アフマド・アウフ・サーディク師が武装テロ集団によって暗殺された。

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アレッポ県では、複数の反体制活動家によると、ブザーア村で治安部隊が大規模な摘発を行い、14人を逮捕した。

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なお地元調整諸委員会によると、各地での軍治安部隊の掃討作戦で少なくとも40人が死亡、数百人が負傷した、という。

レバノンの動き

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長はベイルート郊外(ダーヒヤ)で開催された「殉教指導者への忠誠」祝典参加者に対してテレビ演説を行い、アサド政権打倒をめざすアラブ諸国を厳しく非難した。

ナスルッラー書記長は以下のように述べた。

「バーレーン人民は放置されている。誰もそのことを問わない。アラブ連盟も、国連も、イスラーム諸国会議機構も…。(シリアに関して)一つの目的がすべての者たちの間で合意されている…。アサド政権に要求されていたのは、(ハマースの)ハーリド・ミシュアル政治局長とレバノンのレジスタンスを引き渡すことだ…。シリア政府に改革を求める者たちに我々は言いたい。シリア政府を構成する人々は改革について語り、対話と暴力停止を呼びかけ、改革プロセスを包摂した憲法草案の国民投票に向かっている…。アサド大統領とシリア政府がこれまで実行したのは改革である…。シリア政府の転覆を求めるアラブ諸国のどの政府が改革を実行したのか?」

諸外国の動き

ジェームズ・クラッパー米国家情報長官は、アサド大統領が「クーデタなしに去ることも、路線を変更することもないだろう」と述べた。

またシリア国内(ダマスカス、アレッポ)での自爆テロに関して「アル=カーイダの指紋」が残されていると指摘し、イラクのアル=カーイダ・メンバーがシリア国内に入り、反体制勢力内に浸透している可能性があると述べた。

一方、米上院外交委員会はアサド政権による「野蛮で不当な」暴力を非難する決議を可決した。

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イスラエル紙『ハアレツ』(2月16日付)は、シリア国内での反体制運動に対してイスラエルがどのような公式の立場をとるかをめぐって、ベンヤミン・ネタニヤフ内閣内で意見の不一致が生じていると報じた。

同報道によると、アアヴィグドール・リーベルマン外務大臣および外務省高官が、シリア国内での弾圧を拒否し、アサド大統領の退任を求める姿勢を明示することを求めている一方、ネタニヤフ首相は、アサド政権への対応を明示しないことが得策と考えている、という。

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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、ウィーンでロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣と会談し、シリア情勢などに関して意見を交換した。

会談後ジュペ外務大臣は、シリア情勢をめぐって「パリとモスクワは安保理で決議案を準備するために行動する用意がある…。我々には暴力停止のためのアラブ連盟の試みと人道支援のための決議案のためにニューヨークで行動する用意がある」と述べた。

しかしラブロフ外務大臣は、「何らのオファーも受けていない段階で、フランスのオファーについて意見を述べることはできない…。(ジュペ)外務大臣は、人道支援のための新たな決議を検討していると知らせた…。それが用意でき次第健闘する用意があると表明しただけ」と答えた。

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ロシアのインテルファクス(2月16日付)は、ロシア消息筋の話として、国連総会での決議に関して、「バランスを欠き、我々の立場を考慮していない」と報じた。

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ジャズィーラ(2月16日付)は信頼できる消息筋の話として、ハマースのハーリド・ミシュアル政治局長とアサド大統領との会談がキャンセルされたと報じた。

同報道によると、アリー・マムルーク軍事情報局長が1月にミシュアル書記長と会談し、アサド大統領との会談を調整すると伝え、日時が設定されたが、会談の3日前にマムルーク局長がミシュアル書記長に対して面談のキャンセルが伝えた、という。

AFP, February 16, 2012、Akhbar al-Sharq, February 16, 2012、Aljazeera.net, February 16, 2012、DP News, February 16, 2012、Haaretz, February 16, 2012、al-Hayat, February 17, 2012、Kull-na Shuraka’, February 16, 2012、al-Ra’y, February 16, 2012、Reuters, February 16, 2012、などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

アサド大統領がシリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会が作成した新憲法草案を国民投票にかけることを決定、フランスが自国が推進する「人道回廊」構想をめぐる新安保理決議の採択をめざす(2012年2月15日)

アサド政権の動き

SANA(2月15日付)は、アサド大統領がシリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会が作成した新憲法草案を2月26日に国民投票にかけることを決定したと報じた。

Kull-na Shuraka’, February 15, 2012
Kull-na Shuraka’, February 15, 2012

同草案は、157条からなり、現行憲法(1973年憲法)からの主な変更点は以下の通り。

1. バアス党を「社会と国家を指導する党」とした前衛党規定の削除し、 「国家の政治体制は政治的多元主義を原則とする」との文言を明記(第8条)。
2. 「イスラーム教は大統領の宗教である」、「イスラーム法は立法の主要な法源である」という文言に加えて、「国家はすべての宗教を尊重する」との文言を明記(第3条)。
3. 集会、平和的デモ、ストライキ権の保障(第44条)。
4. 大統領(任期7年)の再任を1度に限定(第155条)。
5. 大統領就任資格年齢を34歳(アサド大統領の就任時の年齢)から40歳への引き上げ(第84条)。
6. バアス党が指名する大統領候補の信任投票に代えて、人民議会議員35人以上が推薦する大統領候補の国民投票による大統領選出。

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『クッルナー・シュラカー』(2月15日付)は、ハサカ県アフリーン市近郊にPKK系でアサド政権と協力関係にあるクルド民族主義政党、民主統一党が展開し、自治を行っていることを示す写真を公開した。

反体制勢力の動き

AKI(2月15日付)は、反体制活動家のアンワル・ブンニー氏が、2月26日に信任投票が発表された新憲法草案に関して、「国民の信頼を欠く政府の産物」と非難、また「現状においていかなる信任投票ができるのか、人々が死んでいる。殉教者や犠牲者の票はどこにあるのか」と述べ、拒否の姿勢を示した、と報じた。

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シリア・クルド国民評議会と西クルディスタン人民評議会が共同声明を出し、クルド民族主義勢力の共闘を訴えた。

国内の暴力

反体制活動家によると、ヒムス県、ハマー県などで軍・治安部隊による掃討作戦が続き、31人が殺害された。

うち21人は軍・治安部隊兵士で、アレッポ県アタ-リブ市での離反兵との交戦で死亡した、という。

ヒムス県ではヒムス市の石油精製所につながるパイプラインが爆破された。

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反体制活動家らによると、ダマスカス県ではバルザ区で治安部隊が反体制活動家の大規模摘発を実施した。

Kull-na Shuraka’, February 15, 2012
Kull-na Shuraka’, February 15, 2012

レバノンの動き

進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は、カマール・ジュンブラート財団のセミナーで講演し、新憲法草案の信任投票発表を「軌跡」と評した。

ジュンブラート党首は「我々は今日、(シリアでの)新憲法の公布と憲法第8条(バアス党を「社会と国家の指導党」と規定する条文)の廃止という「軌跡」を耳にした…。バアス党は自らをすげ替えようとしているが、最善の方法は政権の座を去ることだ」と述べた。

さらに「ターイフ合意は死んだ。我々はスンナ派とシーア派の間の「新たなターイフ合意」、そして新たな和解を必要としている」と付言した。

諸外国の動き

『ハヤート』(2月16日付)が複数の外交筋の話として伝えたところによると、フランスが提案した「人道回廊」構想が、16日に予定されているアラン・ジュペ外務大臣とロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣とのウィーンでの会合で議論され、安保理での新決議採択がめざされる、という。

同構想は、シリアの人口密集地域とトルコ国境、レバノン国境、ヨルダン国境、地中海岸ないしはシリア国内の空港を結び、人道支援を行い、その警備には「武装した監視団」があたる、というもの。

この動きは、国連総会の対シリア決議案において、①暴力行使が続く現状への責任をアサド政権だけでなく反政府勢力に対しても追求することと、②アラブ連盟決議における行程表が示した日程を削除することを求めたロシアの修正提案が却下されたことを受けたもの。

同決議案は、西側諸国、親米アラブ・イスラーム諸国約70カ国が支持しているが、ロシア、中国、イラク、レバノン、アルジェリア、スーダンは反対するものと思われる。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、「我々のパートナーの一部は対話ではなくシリア政府を最初から排除し、シリア政府を孤立させようとしている…。これは間違いだ」と西側諸国を批判、政治的対話に基づく解決の必要を改めて強調した。

またアサド大統領による新憲法草案国民投票の日程発表に関して「一党のヘゲモニーを限定する新憲法は前進だ」と高く評価した。

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フランスのアラン・ジュペ外務大臣はフランス・インフォ(2月15日付)に対して、NGOが残忍な虐殺の行われている地域に到達できるような人道回廊が再び安保理に提起されねばならない」と述べた。

またジュペ外務大臣は、フランス、シリアなどの人権団体使節団との会談で、「シリア国民の支援を望む」組織・団体を資金援助するための基金設立することを決定したことを明らかにした。

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米ホワイトハウスのジェイ・カーニー報道官はシリアでの新憲法国民投票の日程発表に関して、「シリア革命への皮肉」と一蹴し、「改革の約束は常に蛮行の後になされている。アサド体制に残された日は限られている」と批判した。

また米国務省高官は、シリアが保有する化学兵器や地対空ミサイルが「テロ集団」の手にわたらないよう米国が「重点的」に監視していると述べた。

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エジプトのムハンマド・アムル外務大臣は、ヒムス市などでの弾圧を「受け入れられない」と非難し、アサド政権に暴力の停止を求めた。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、シリア情勢をめぐる米国高官らとの会談に関して、「政治的レベルだけでなく、人道レベルでも」対応する必要があると述べた。

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3月にバグダードで予定されているアラブ連盟首脳会議に関して、イラクの地元消息筋は、イラン、トルコがオブザーバーとして参加する可能性があると報じた。

これに対してイラク政府は、これを否定、また加盟資格凍結中のシリアのアサド大統領以外のアラブ諸国首脳が招待されているのみだと発表した。

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スイス外務省は、ダマスカスのスイス大使館を閉鎖すると発表した。

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アズハル機構のアフマド・タイイブ師は、アラブ諸国に対して、シリア政府の「地獄のような殺人装置」を停止させるよう求めるとともに、シリア軍兵士に対して、民間人への発砲命令を拒否するよう呼びかけた。

AFP, February 15, 2012、Akhbar al-Sharq, February 15, 2012、AKI, February 15, 2012、al-Hayat, February 16, 2012, February 17, 2012、Kull-na Shuraka’, February 15, 2012,
February 17, 2012、Naharnet.com, February 15, 2012、Reuters, February 15,
2012、SANA, February 15, 2012、などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

ラタキア市でアサド政権の改革支持、外国の介入拒否、「武装テロ集団」のテロ反対を訴える大規模な集会が組織されるなか、ハリーリー元首相の追悼集会で3月14日勢力指導者らが集結(2012年2月14日)

アサド政権の動き

SANA(2月14日付)によると、ラタキア県ラタキア市でアサド政権の改革支持、外国の介入拒否、「武装テロ集団」のテロ反対を訴える大規模な集会が開催された。

SANA, February 14, 2012
SANA, February 14, 2012

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SANA(2月14日付)は、シリア外務省が国連総会でのナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官の演説に関して、「声明における…新たな言いがかりを断固としてシリアは拒否する」との意思を明示するとともに、「人権高等弁務官はシリアを標的とし、武装集団が行うテロ犯罪行為を無視する一部の国の手先に成り下がった」と非難した、と報じた。

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Kull-na Shuraka’, January 11, 2012
Kull-na Shuraka’, January 11, 2012

『クッルナー・シュラカー』(2月14日付)は、アサド家に近い消息筋の話として、アサド大統領の長男のハーフィズくんは数ヶ月前に既にシリア国外で生活していると報じた。

同報道によると、ハーフィズくんは、1月にアサド大統領がダマスカス県内のウマウィーイーン広場での政権支持集会に参加した際に公開されたアスマー・アフラス婦人らの「ねつ造写真」(1月11日付)にも写っていなかったという。

なおこの写真には、アスマー婦人、長女のザインちゃん、次男のカリームくんの3人が写っている。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー報道官は、外交官らが政権を離反しない理由に関して、「人々が家族、親戚、財産への復讐を恐れている。厳格な検閲が行われており、体制の恐怖に怯えている」と解釈し、「国内で離反しない人々は外国からの明確なサインを待っている」と述べ、民衆とのつながりを欠き、動員力を欠く反体制勢力の政治目標を実現するため、民衆ではなく外国の支持が必要だとの見方を示した。

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シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー報道官は2月15日に運営委員会がカタールの首都ドーハで会合を開き、ブルハーン・ガルユーン事務局長の後任の選出、ないしは再任を行うと発表した。

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シリア・クルド国民評議会のアブドゥルハキーム・バッシャール代表(シリア・クルド民主党(パールティー)書記長)は声明を出し、シリア内外のクルド人に対して「蜂起」を呼びかけ、アサド政権の「クルド人に対する行為、影響力、そして権威を制限」するよう訴えた。

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シリア国内で「シリア国民民主諸勢力祖国連立」という新たな反体制政治同盟が結成され、発足声明を発表した。

同連立は、アサド政権の打倒、民主的市民国家の建設、国内の安定・平和などをめざす組織で、以下の政党・政治組織が参加している。

自由で民主的なシリアのための「ともに」運動
国民会合
シリア国民ブロック
市民権潮流
シリア左派連立
ジャルマーナー国民民主行動委員会
変革ビジョン
シリア革命左派
シリア革命支援委員会

いずれも無名の組織である。

国内の暴力

シリア人権監視団は、ヒムス県ヒムス市、ハマー県などで軍・治安部隊による反体制武装集団への掃討作戦が続き、少なくとも25人が死亡したと発表した。

同監視団によると、被害の多くはヒムス市で発生したほか、ハマー県での軍・治安部隊と離反兵との戦闘で前者の兵士5人が死亡した、という。

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一方、シリア革命総合委員会は、各地で35人(うちヒムス市で11人)が殺害されたと主張した。

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複数の活動家らによると、ヒムス県ヒムス市バーブ・アムル地区のほか、ラスタン市、ダマスカス郊外県ランクース市、ダルアー県タイバ町で大規模な弾圧が行われているという。

自由シリア軍を名のる反体制武装集団は、ダルアー県ラジャート高原で拘束した士官と兵士を尋問するビデオを公開した。

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SANA(2月14日付)は、ハマー県ハマー市で武装テロ集団の武器庫を発見、大量の武器弾薬を応酬したと報じた。

またヒムス県ヒムス市内各地区で、武装テロ集団が、治安維持部隊の追跡を逃れようとして、住宅地を爆弾で爆破し、治安を混乱させようとしていると報じた。

レバノンの動き

Naharnet.com, February 14, 2012
Naharnet.com, February 14, 2012

ラフィーク・ハリーリー元首相(2005年2月14日暗殺)の命日にあたる14日、ベイルート中心にあるBIELで3月14日勢力が追悼集会を行い、各党指導者が演説を行った。

シリアの反体制勢力への支持の姿勢には若干の温度差が見られた。

追悼集会には、レバノン軍団のサミール・ジャアジャア代表、レバノン・カターイブ党最高党首のアミーン・ジュマイイル元大統領、ファーリス・スアイド3月14日勢力事務局長、ムスタクバル潮流のフアード・スィニューラ元首相、バヒーヤ・ハリーリー議員(S・ハリーリー前首相のおば)らが参列した。

パリに滞在中の次男サアド・ハリーリー前首相は集会には参列せず、巨大スクリーンを通じて演説を行った。

進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首と息子で後継者と目されているタイムール・ジュンブラート氏および党の追悼団とともに、R・ハリーリー元首相廟を墓参したが、祝典には参列しなかった。

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レバノン軍団のジャアジャア氏は、「未来は…主権を有し、自由で独立したレバノンに帰属しており、ヴェラーヤテ・ファギーフ(イラン・シリア)枢軸に属していない」と述べ、ヒズブッラーを批判した。

またヒズブッラーが参画しているナジーブ・ミーカーティー内閣を「国内の卑劣な紛争を放置する卑劣な政府」と非難するとともに、「去りつつある者(アサド政権)どもとともに去るだろう」と述べた。

そのうえで、シリアでの反体制運動に関して、「政府および政府機関における一部の者たちが、体制の意思や命令を見たそうと躍起になり…、無実の人々、避難民らを迫害している」と非難、「民主的で自由なシリアの新体制がレバノンの独立をもっとも支援し、二国間の歴史において前政権が綴った暗黒のメージをめくる真の機会を与えるだろう」と述べた。

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レバノン・カターイブ党最高党首のジュマイイル元大統領は演説で、「アラブ諸国での反体制蜂起を支援し、レバノン人が違法な武器によって囚われの身になることを受け入れることが論理的と言えようか?」と述べ、レバノン特別法廷を通じたハリーリー元首相暗殺の真相究明やヒズブッラーなどの武装の必要を「アラブの春」に伴う政治変動と順接的に結びつけようとしたが、シリアでの反体制運動への明言は避け、その介入への慎重な姿勢を暗示した。

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3月14日勢力のスアイド事務局長は、シリア国民評議会のメッセージを代読した。

同メッセージにおいて、シリア国民評議会は「シリアの一部ではない、独立したレバノン」を支持するとしたうえで、レバノン内政干渉を行わないと誓約した。

またレバノンとのより適切な外交関係を構築し、「シャブアー農場から」国境画定を行うとの立場を示した。

これは北部からの国境画定を主張するアサド政権に対抗したスタンスである。

そのうえで「シリアの民主主義はレバノンの民主主義を支持する」として、3月14日勢力の「杉の木革命」への支持を表明した。

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S・ハリーリー前首相は巨大スクリーンを通じて、「私はシリア国民との団結することにおいて責任を負う」と述べ、シリアの反体制運動との連帯を宣言した。

「レバノンは、アラブの春による新たな政治的段階、そしてシリアの政府の終わりの始まりに向かって進んでいる…。シリアでの民主制の確立はレバノンの民主制を強化する」と述べ、シリア国民評議会への協力の意思を示した。

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アドナーン・マンスール外務大臣が自由国民潮流代表のミシェル・アウン元国軍司令官と会談し、アラブ連盟外相会合の決議で提起されたアラブ・国連共同平和維持軍の是非について意見を交換した。

会談後、マンスール外務大臣は「レバノンの立場と一致しない危険な文言を含んでいる」と述べ、アラブ連盟外相会合の決議を批判した。

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Naharnet.com(2月14日付)は、進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首が、アル=カーイダのアイマン・ザワーヒリー氏によるシリアの反体制運動支持声明に関して、「シリアの諜報機関によって調整された」と断じた。

ジュンブラート党首は、アサド政権がアル=カーイダと国内の反体制運動をリンクさせることで、「テロリスト一味」が国を不安定化させているとの主張を正当化しようとしていると説明した。

諸外国の動き

RT(2月14日付)は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣が記者団に対して、「国際社会は反体制勢力が政府との対話に応じないよう煽動するのに少なからぬ努力をしている」と述べ、西側諸国が結成をめざすシリアの友連絡グループに関して、「一方の当事者」の立場を支持しているに過ぎないと批判した、と報じた。

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中国の温家宝首相は中国・EU首脳会談での記者会見で、「中国は、いかなる(紛争)当事者も保護しない。シリア政府も含めて」と述べ、「シリアにおける戦争、混乱の回避が急務」との立場を示した。

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ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長との会談に先立って、アサド政権による反体制勢力の弾圧に対して「厳しい態度」で臨む必要があると非難の意を示した。

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フランス外務省報道官は、2月24日にチュニジアで予定されているシリアの友連絡グループの会合に関して、「可能な限り広範」にグループが結成されることを望むと述べるとともに、関係各国と同グループに関して具体的な調整を行っていることを明らかにした。

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ロイター通信(2月14日付)は、カイロのアラブ外交筋の話として、アラブ連盟外相会議の決議で反体制勢力への政治的・物質的な支援の拡充が確認されたことを受け、「我々はまずは財政、外交面で反体制勢力を支援するが、政府が殺戮を続ければ、民間人の自衛を支援せねばならない」として、武器支援の可能性を示唆した。

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バーレーン通信(2月14日付)は、ダマスカスのバーレーン大使館常駐代表公邸が武装集団が侵入し、個人財産多数を盗んだとバーレーン当局が発表、在マナーマのシリア大使館常駐代表(ファーイザ・イスカンダル女史)に抗議の意を伝えたと報じた。

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『ドゥストゥール』(2月14日付)は、ヨルダンのアブドゥルイラーフ・ハティーブ元外務大臣は、在ダマスカス連盟常駐代表への就任を辞退したと報じた。

AFP, February 14, 2012、Akhbar al-Sharq, February 14, 2012、AKI, February 14, 2012、al-Dustur, February 14, 2012、al-Hayat, February 15, 2012、Kull-na Shuraka’, February 14, 2012、Naharnet.com, February
14, 2012、Reuters, February 14, 2012、SANA, February 14, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

「国連アラブ加盟国」がアラブ連盟行程表への支持、「シリア政府の国民への人道に対する罪」を停止させるための緊急行動、同問題の国際刑事裁判所への提訴を求める決議案を国連総会に提出(2012年2月13日)

国連総会の動き

エジプト、サウジアラビア、リビア、チュニジアなどからなる「国連アラブ加盟国」は、アラブ連盟行程表への支持、「シリア政府の国民への人道に対する罪」を停止させるための緊急の行動、本問題の国際刑事裁判所への提訴を求める決議案を国連総会に提出した。

SANA, February 13, 2012
SANA, February 13, 2012

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国連総会はこれを受けるかたちで、人権理事会の事実調査委員会報告の内容検討に入った。

シリア、イラン、北朝鮮代表が異議を申し立てたが却下された。

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ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官は総会で、アサド政権が「民間人保護の誓約を履行することに失敗した」と非難、「シリア軍による犯罪とその規模は、2011年3月以来人道に対する罪が犯されていることを示す」と指摘した上で、国際社会に対して民間人保護のための緊急の行動を呼びかけるとともに、本件を国際刑事裁判所に提訴するよう訴えた。

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サウジアラビアのアブドゥッラー・ムアッリミー国連代表は、シリア国民の叫びに耳を傾け、流血停止と民間人保護のための行動を行うべきだと主張、アラブ・国連共同平和維持軍の発足を呼びかけた。

なおこれと合わせて、ムアッリミー国連代表は、イスラエルの占領を「より深刻なかたちで人権侵害を体現している」といった曖昧な表現で批判し、国際社会への対処を呼びかけることで、自国のダブルスタンダードを包み隠そうとした。

ムアッリミー国連代表は、安保理での対イスラエル非難決議に対して米国が38回にわたって拒否権を発動している事実については、当然のことながら言及しなかった。

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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は、国連総会の開催に関して、総会議長が「政治的な理由」で招集したと非難し、「総会で実施されている措置に違反がある」として、招集を取り消すよう求めたが、却下された。

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ロシアのヴィタリー・チュルキン国連大使は、国連総会で開かれたシリア情勢に関する会合で、アラブ・国連共同平和維持軍の発足・派遣構想に関して、政府と反体制勢力の停戦が先決と述べ、消極的な姿勢を示した。

またチュルキン国連大使は反体制武装集団を統制できない反体制勢力を批判するとともに、平和維持軍の派遣にはアサド政権の承認が必要になるとの見方を示した。

国内の暴力

ヒムス県など各地で軍・治安部隊による反体制武装組織の掃討作戦が継続されたが、反体制勢力、アサド政権双方の被害状況に関するプロパガンダ合戦は若干低調となった。

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ロンドンで活動する反体制組織のシリア人権監視団は、複数の活動家、目撃者らからの情報として、ヒムス県ヒムス市、ラスタン市など各地、ハマー県ハマー市などで軍・治安部隊による掃討作戦が続き、武装反対勢力(離反兵)と激しく交戦、約25人が死亡した。

うち兵士3人がラスタン市で、民間人2人がヒムス市、1人がイドリブ県で、1人がハマー市、1人がダマスカス郊外県マダーヤー町で死亡した、という。

シリア人権監視団によると、ヒムス市での掃討作戦はバーブ・アムル地区、ワアル地区を中心に行われている、という。

またこれらの消息筋によると、ダルアー県ラジャート高原では離反兵に圧力をかけるため、彼らの母4人が逮捕された、という。

一方、シリア人権監視団によるとダルアー県ダーイル町では、アレッポ市での同時自爆テロの犠牲者の葬儀に約10,000人が参列した。

アサド政権の動き

SANA(2月13日付)は、シリア政府高官の話として、シリアがアラブ連盟外相会合の決議を「あからさまな内政干渉と主権への抵触」とみなし、拒否すると報じた。

同報道によると、この高官はまた決議が一部のアラブ諸国のシリアに対する「陰謀計画」の一環をなし、シリアをめぐる問題を「国際問題化し、外国の介入を呼び込むためにアラブ連盟の役割を失わせようとしている」との見方を示した。

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工業省は、「武装テロ集団」による破壊工作によって同省管轄下の各機関が被った被害総額が1,061,000,000,000シリア・リラに達するとの評価を発表した。

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ジダール・ネット(2月13日付)は、治安当局が進歩国民戦線加盟政党のシリア民族社会党党員のマフムード・バッカール氏をダマスカス郊外県シャブアーの自宅で逮捕したと報じた。

同報道によると、バッカール氏は戦線の会合でアサド政権による弾圧を度々非難していた、という。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は、シリアの反体制勢力を後援するジャズィーラ(2月13日付)のインタビューに応え、アラブ連盟外相会合の決議に関して、「シリア政府を絞首刑に処する死刑台への第1歩」と高い評価を下した。

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シリア革命総合委員会は声明を出し、アル=カーイダのアイマン・ザワーヒリー氏の声明に関して、「この声明、そしてアル=カーイダが我々の革命に干渉しようとするあらゆる試みを断固として拒否する」との意思を示した。

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DPA(2月13日付)は、シリア(解放)革命最高軍事評議会のムスタファー・シャイフ准将に電話取材を行い、同准将が「反体制勢力の軍事的指導部統一を妨げるものは何もない。なぜなら我々は政治勢力ではなく、軍事勢力であり、権力や政権を求めて争い合っているわけではないからだ」と述べたと報じた。

また「我々とリヤード・アスアド大佐が率いる自由シリア軍との間には何らの問題もない。単に、組織に関するビジョンや行動のありようをめぐる意見の相違があるだけだ」と付言した。

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自由シリア軍のアブドゥッサラーム・アフマド・アブドゥッラッザーク大尉はアラビーヤ(2月13日付)に対して、アサド政権がイランとロシアの専門家の監督のもと、反体制運動弾圧のために国際的に禁止された有毒ガスを使用していると語った。

だがその真偽は定かでない。

レバノンの動き

進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は党機関誌『アンバー』でアラブ連盟外相会合でのレバノン政府の対応に関して、「シリア国民に対する抑圧を停止させるための政治的、人道的、道徳的責任を敬遠した」と非難した。

イラクの動き

イラク内務省のアフマド・ハッファージー支援軍担当次官は『ハヤート』(2月14日付)に対して、「イラク治安軍は対シリア国境に重点的に展開しており、武装テロ集団のいかなる通過や潜入もない」と述べ、イラクからのテロリスト潜入に関する情報を「イラクの敵が発信した単なる嘘」と断じ、アドナーン・アサディー筆頭次官(ダアワ党)の前言を暗に批判した。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はUAEのアブドゥッラー・ブン・サーイド外務大臣とモスクワで会談した。

会談後の記者会見で、ラブロフ外務大臣はアラブ連盟外相会合の決議案に関して、「このイニシアチブを検討し、アラブ友諸国からいくつかの点に関して説明を待つ」と述べた。

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中国外交部報道官は、定例記者会見で「アラブ連盟に政治的仲介の努力継続を呼びかける…。国連の行動は、シリアの緊張を緩和し、紛争解決のための政治的対話を支持するためになされねばならない」と述べた。

またアラブ連盟の決議に関して、「中国の立場に一致する国際社会のイニシアチブについては北京はそれを支持するだろう」と答えた。

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訪米中のアフメト・ダウトオール外務大臣はヒラリー・クリントン米国務長官と会談し、24日にチュニジアで開催予定の「シリアの友連絡グループ」会合などに関して意見を交わした。

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キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表の報道官は、アラブ・国連合同平和維持軍の派遣を求めたアラブ連盟外相会合の決議に関して、弾圧を即時停止させるための「あらゆるイニシアチブも支持する…。そのなかには国連との協力のもとに現地へのアラブのさらなる展開も含む」と述べた。

またイギリス、フランス、ドイツもアラブ連盟外相会合の決議に関して支持を表明した。

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国連の潘基文事務総長は、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長に対して、アラブ・国連共同平和維持軍の発足とシリアの派遣には、安保理の許可が必要だと告知した。

事務総長報道官が声明を通じて明らかにした。

AFP, February 13, 2012、Akhbar al-Sharq, February 13, 2012、Alarabia.net, February 13, 2012、DPA, February 13, 2012、al-Hayat, February 14, 2012、Jidār.net, February 13, 2012、Naharnet.com, February
13, 2012、Reuters, February 13, 2012、SANA, February 13, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

アル=カーイダのザワーヒリー指導者がシリアの反体制運動への支持を表明、アラブ連盟緊急外相会合が開催され「アラブ・国連合同平和維持軍」発足に関する決議の採択を安保理に求める閉幕声明を採択(2012年2月12日)

アル=カーイダ

アル=カーイダの指導者アイマン・ザワーヒリー氏がビデオ映像を声明を配信し、シリアの反体制運動への支持を表明した。

声明でザワーヒリー氏は、「ジハードを行う我らが勇敢なる英雄たちは日々、その力と忍耐…を増し、世俗的・宗派的体制に対する栄光と尊厳のための戦いを行っている」と反体制運動を絶賛し、シリア国民に対して「西側、米国、アラブ諸国政府、トルコ…に依存しない(よう)…。シリア国民よ、「ない袖をふれない」状態にあるアラブ連盟とそれに従属する腐敗した政府に依存するな」と語った。

Naharnet, February 12, 2012
Naharnet, February 12, 2012

また「これらの者ども(アラブ諸国)は、イスラエルに対して聖戦を行う自由で、独立した強力なシリアを望んでもいなければ、イスラエルを承認し、世界システムに迎合するような弱体化した従属的なシリアも望んでいない…。腐敗した(シリアの)政府は動揺を始めた…。蜂起と怒りを継続せよ。イスラームによって政治がなされる独立した名誉ある政府以外を受け入れるな」と述べた。

またトルコ、イラク、ヨルダン、レバノンのイスラーム教徒たちに対して「持ち得るすべのものをもってシリアの同胞を救済する」よう呼びかけた。

ザワーヒリー氏の声明は、反体制運動を支持しているという点で反体制勢力に同調するものと解釈できる一方、「ない袖は振れない」といったワリード・ムアッリム外務大臣の発言を模した点や国際社会の介入を拒否するという点でアサド政権寄りと解釈できる。

しかし、こうした両義的な姿勢は、シリアの将来に関して中長期的なビジョンを有さない西側諸国のスタンスにもっとも質的に近いと評価できよう。

アラブ連盟の動き

al-Hayat, February 13, 2012
al-Hayat, February 13, 2012

アラブ連盟緊急外相会合がカイロで開催され、「アラブ・国連合同平和維持軍」発足を求める決議の採択を安保理に求める閉幕声明(決議)を採択した。

同決議では、このほか、ムハンマド・アフマド・ダービー氏を団長とする連盟監視団の活動を終了を宣言するとともに、現シリア政府代表とのすべての外交協力関係の停止、反体制勢力との連絡経路の確保、政治的物質的支援の拡充、運動統一に向けた支援を決定した。

また1月24日にチュニジアで開催予定の「シリアの友」会議への支持も表明されるとともに、国連総会において、「国連のアラブ諸国加盟国」がアラブ連盟の行程表への支持を求める決議案を提出したことも明記された。

同決議に関して、レバノンはすべての文言への態度を保留し、反対の意思を表明した。

またアルジェリアは、国連総会に関する文言への態度を保留し、シリア問題を国連で議論することへの異議を示した。

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決議の内容は、サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣の会合での発言に沿ったもので、同外相をはじめとするGCC諸国外相は外相外交に先立って会合を開き、対応を審議していた。

シリア情勢に関して、サウード・ファイサル外務大臣は「エスニック・宗派戦争でもゲリラ戦争でもなく、シリア国民に対する集団的粛清であり、人道的、道徳的、宗教的な考慮を欠いた国家による国民の制圧」とアサド政権の暴力のみを一方的に非難した。

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外相会合閉幕後、ユースフ・アフマド連盟大使は、決議内容「全体、そして詳細を拒否する」とのシリアの姿勢を明示し、「シリアが欠席するなかで連盟から出されるあらゆる決議はシリアとは無関係だ」と非難した。

また決議内容が「カタールとサウジアラビアが主導するアラブ諸国政府が、真にスキャンダラスなかたちで、アラブの共同行動、連盟の決定を人質にとり、アラブ集団行動を改ざんしている」と酷評し、国連での外国の介入を求める決議案を廃案に追い込まれた国々の政府の「ヒステリーと混乱」が表れていると述べた。

SANA(2月12日付)が伝えた。

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連盟監視団の停止宣言に関して、ムハンマド・アフマド・ダービー団長は『ハヤート』(2月13日付)に対して「私を解任する権利は彼らにある」としながらも、「誰も私に辞表提出を要請していない」と述べ、GCC諸国の独断主義への不満の意を暗に示した。

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サウジアラビア通信(SPA)(2月12日付)は、シリア外務省高官が「サウジアラビア王国の名で国連総会に対していかなる決議案も提出していない」と述べた。

同報道によると、国連のアラブ加盟諸国が、サウジアラビアの決議案を「国連のアラブ加盟諸国」の名で共同提出するか否かを検討しているに過ぎない、という。

国内の暴力

シリア革命総合委員会によると、ヒムス県ヒムス市、ラスタン市、ダルアー県、イドリブ県、ハサカ県、ダマスカス郊外県で少なくとも24人(うち子供3人、女性3人)が殺害された。

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シリア人権監視団によると、ヒムス県ヒムス市バーブ・アムル地区への軍・治安部隊の砲撃で少なくとも33人が死亡した。また同県ラスタン市では女性1人が、ダルアー県ダルアー市では子供1人が殺害された、という。

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ダマスカス郊外県では、ザバダーニー地元評議会報道官を名のる活動家が、軍・治安部隊が同市を制圧したとの一部情報を否定した。

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SANA(2月12日付)によると、ダマスカス郊外県タッル・クルディー地方で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト1人を殺害、6人を逮捕した。

このほか、各地で武装テロ集団を追い詰めて逮捕、大量の武器を押収したという。

一方、同通信社は、ヒムス市カラービース地区で、軍の大佐が武装テロ集団に誘拐された、と報じた。

アサド政権の動き

SANA, February 12, 2012
SANA, February 12, 2012
SANA, February 12, 2012
SANA, February 12, 2012

SANA(2月12日付)は、アサド大統領がシリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会メンバーと会談し、同委員会が作成を完了した修正憲法草案を受け取ったと報じた。

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SANA(2月12日付)は、ファイサル・ミクダード外務次官は、内外の記者団を前に。、「来るべき段階で…武装テロ集団への潜伏場所を提供し、財政支援、情報提供を近隣諸国に対して、武装テロ集団メンバーの指導者の引き渡しを求めることになる」と述べた。

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SANA(2月12日付)は、政党問題委員会が、アラブ民主団結党(本部ラッカ県)を新たに認可したと報じた。

レバノンの動き

レバノン在住のシリア人らがベイルートの中国大使館前で、安保理での拒否権発動に抗議するデモを行った。

イラクの動き

エジプトのMENA(2月12日付)は、イラクのアリー・ダッバーグ内閣報道官の話として、3月にバグダードで予定されているアラブ連盟首脳会議にイラクはアサド大統領を招待しないとの方針を決め、そのことがアサド大統領を憤慨させたと報じた。

諸外国の動き

ローマ法皇ベネディクト16世はシリア情勢に関して、「暴力と流血の停止」を呼びかけるとともに、「すべての政府に対して、対話と和平の方途を選択する」よう呼びかけた。

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アナトリア通信(2月12日付)は、ハタイ県のキャンプに避難していた自由将校運動(自由将校旅団)リーダーのフサイン・ハルムーシュ大佐とムスタファー・カースィム氏がシリア当局に引き渡された件に関して、トルコの司法当局が、事件に関与したとされる容疑者5人をスパイ容疑で逮捕したと報じた。

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イスラエル国防軍は、アサド政権が事態を掌握してないとし、シリア情勢に伴ういかなる困難にも対処する容易ができていると発表し、対シリア国境の警戒を強化していることを明らかにした。

AFP, February 12, 2012、al-Hayat, February 13, 2012、Kull-na Shuraka’, February 12, 2012、MENA, February
12, 2012、Naharnet.com, February 12, 2012、Reuters, February 12, 2012、SANA,
February 12, 2012、SPA, February 12, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

シリア国民評議会の使節団がアラブ連盟の事務総長および次長と会談、また同事務総長は国連に対し連盟・国連合同監視団のシリア派遣を要請(2012年2月11日)

SANA, February 12, 2012
SANA, February 12, 2012

国内の暴力

『ハヤート』(2月12日付)によると、ヒムス県ヒムス市バーブ・アムル地区、ダマスカス郊外県ザバダーニー市に対する軍・治安部隊の掃討作戦が続き、25人(うち19人が民間人)が死亡した。

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SANA(2月11日付)によると、武装テロ集団3人が、ダマスカスハーミーシュ軍事病院に勤務する軍医のイーサー・フーリー准将を自宅から連れ出し、暗殺した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区での軍・治安部隊の攻撃で民間人9人が殺害された。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザバダーニー市マハッタ地区に軍・治安部隊が侵入したが、自由シリア軍の応戦を受け、撤退した、という。

また市民3人が軍・治安部隊の砲撃により死亡した。

一方、ドゥーマー市のカビール・モスクに軍・治安部隊が突入し、礼拝中の市民を逮捕した、という。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ムサイフラ町で軍・治安部隊が市民5人を殺害した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団などによると、アレッポ市での前日の自爆テロを受け、市内各所に治安部隊が多数展開し、厳戒態勢をとった。

アサド政権の動き

SANA, February 12, 2012
SANA, February 12, 2012

ダマスカス県ウマイヤ・モスク、聖マリア教会で、10日のアレッポ市での同時自爆テロの犠牲者を追悼する集団礼拝・ミサが行われた。

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『クッルナー・シュラカー』(2月11日付)は、ハサカ県の治安当局と関係があることで知られるH・A氏が、ラアス・アイン市で慈善団体を発足するためクルド人をリクルートしていると報じた。

同報道によると、リクルートされたクルド人の多くは、PKK系の民主統一党の支持者で、月収3,000シリア・リラを約束されているという。

また彼らは自身のIDや戸籍(の写し)をH・A氏に提出しており、これらの情報は、政党結成を計画しているとされるラーミー・マフルーフ氏によって利用される、という。

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シリア政府はチュニジア、リビア両国に対して、72時間以内にダマスカスの両国大使館を閉鎖するよう通告した。両国でのシリア大使館閉鎖に対する対抗措置。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会運営委員会の使節団がアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長および次長と会談し、『ハヤート』(2月12日付)によると、アラブ連盟のイニシアチブ、アラブ・イスラーム諸国による監視団の派遣などについて意見を交換した。

使節団はバスマ・カドマーニー報道官、アフマド・ラマダーン氏、アブドゥルバースィト・スィーダー氏、アディーブ・シーシャクリー氏、ジブル・シャウキー氏からなる。

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2月6日にシリア(解放)革命最高軍事評議会の発足を宣言していたムスタファー・シャイフ准将がシリア国民と国際社会に向けて声明を出し、「シリア解放革命最高軍事評議会は国土解放と殺人・虐殺体制の転覆…のために結成された」とその存在を改めて固持した。

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シリア・ムスリム同胞団のファールーク・タイフール副監督者は、「我らが人民を支援するための国際的介入と措置を必要とするような深刻な人道的虐殺が行われている」と述べ、国際社会に人道的な介入を呼びかけた。

レバノンの動き

アドナーン・マンスール外務大臣はクウェート紙『ラアユ』(2月12日付)に対して、アラブ連盟においてシリアの安定を脅かす決定がなされた場合、沈黙せずにレバノンの立場を明示すると述べた。

マンスール外務大臣は「我々は沈黙しないだろう。率直に意見を述べる権利を持っているがゆえ、偽証者にならない…。レバノンとシリアの治安は絡み合っている。シリアが火に包まれれば、その炎はレバノンに達する」と述べた。

またGCC諸国などが大使を召還した動きに関して、「GCC諸国の問題だ。我々がしたいのは、シリアを助け解決策を見つけ出し、危機を終わらすことであって、ことを複雑にすることではない」と述べ、暗に批判した。

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ナハールネット(2月11日付)などによると、北部県トリポリ市バーブ・タッバーナ地区、ジャバル・ムフスィン地区で10日から続いていたアサド政権反対派住民と支持者住民の衝突は、国会議員らの仲介によって停戦に合意し、国軍が展開、事態は収束した。

仲介を行ったのは、アフマド・カラーミー国務大臣(団結ブロック)、サミール・ジスル議員(ムスタクバル潮流)、マイーン・マルアビー議員(ムスタクバル潮流)。

住民の武器引き渡し、国軍などへの全面協力などで合意した。

衝突では3人が死亡、23人が負傷した。

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ムスタクバル潮流の政治的見解を代弁する『ムスタクバル』(2月11日付)は、シリアからレバノンにヒズブッラーのメンバー2人の遺体が搬送された、と報じた。

同報道によると、遺体は南部県スール市の病院に搬送された、という。

同報道は、ヒズブッラーがアサド政権による反体制運動の掃討作戦に参加しているという宣伝のために流されたと思われる。

イラクの動き

イラクのアドナーン・アサディー内務次官は「イラク人ジハード戦闘員」がイラクからシリアに潜入し武装破壊活動を行っていると述べるとともに、イラク領内からシリアへ武器密輸がなされていることを認めた。

アサディー内務次官は、モスルでは、カラシニコフ銃が一丁100~200ドルだったのが、1,000~1,500ドルになるなど、武器価格が高騰しており、またモスルからルバイア国境を経由して、シリアに武器が密輸されていると指摘した。

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ラマーディー市では、宗教関係者、部族の指導者らが反アサド政権のデモを行い、約500人が集まった。

諸外国の動き

ロバート・フォード在ダマスカス・シリア大使は大使館のフェイスブックのページで、ヒムス市などの「広範な」弾圧の跡が映し出されたとされる衛星写真を公開した。http://www.facebook.com/syria.usembassy#!/photo.php?fbid=10150600575457649&set=pu.48261722648&type=1&theater

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ロバート・ケリー米上院議員(民主党)とマルコ・アントニオ・ルビオ上院議員(民主党)はバラク・オバマ大統領にシリアの民主主義への実質的転換を「物質的・技術的」に支援する決議案を議会に提出した。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は国連の潘基文事務総長に、シリア情勢を監視するための連盟・国連合同監視団の派遣を要請した。

『ハヤート』(2月12日付)によると、合同監視団の派遣は、スーダンのダルフール問題などの判例を踏まえると、国連安保理による決議、シリア政府による受け入れ承認、そして派遣団員の安全確保をクリアする必要がある。

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『ハヤート』(2月12日付)など各国メディアは、サウジアラビアが1月22日にアラブ連盟外相会合で採択されたシリア問題に関する行程表への支持を求めるための国連総会決議案を各国に回付した、と報じた。

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アナトリア通信(2月11日付)は、訪米中のトルコのアフメト・ダウトオール外務大臣が、国連に対してシリアでの弾圧の犠牲者への人道支援要請を行うだろうと報じた。

しかし、ダウトオール外務大臣は『ワシントン・ポスト』(2月11日付)に対して、人道支援が「人道回廊」の設置を意味しないと述べ、本格介入には含みを持たせている。

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マリオ・ゼナリ在ダマスカス・ヴァチカン大使は「キリスト教徒は今日までのところ、キリスト教徒だという理由で(弾圧や暴力の)標的となっていない」と述べた。

AFP, February 11, 2012、Akhbar al-Sharq, February 11, 2012、Facebook、al-Hayat, February 12, 2012、Kull-na Shuraka’, February 11, 2012、al-Mustaqbal, February 11, 2012、Naharnet.com, February 11, 2012, February 12, 2012、al-Ra’y, February 12, 2012、Reuters, February 11, 2012、SANA, February 12, 2012、The Washington Post, February 11, 2012、UPI, February 11, 2012などをもとに作成。

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アレッポ市で軍事情報局施設と治安維持部隊施設を標的とした自爆テロが発生するなか、シリア国民評議会はドーハで大会を開催し「シリアの友連絡グループ」への対応などを審議(2012年2月10日)

国内の暴力

SANA(2月10日付)など内外のメディアによると、アレッポ県アレッポ市で軍事情報局施設と治安維持部隊施設を標的とした自爆テロ(車爆弾)が発生し、民間人と軍人少なくとも28人が死亡し、235人が負傷した。

SANA, February 10, 2012
SANA, February 10, 2012
SANA, February 10, 2012
SANA, February 10, 2012
SANA, February 10, 2012
SANA, February 10, 2012

負傷者のうち15人は子供だという。

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自爆テロを受け、シリア外務省は国連事務総長、同安保理議長、イスラーム諸国会議機構事務局長、アラブ連盟事務局長、国連人権理事会宛てに書簡を送付、そのなかで同テロを「アラブ、西側諸国が支援する」テロリストによって行われたと非難した。

また安保理に対して、「テロ撲滅の責任を果たすべく、これまでの決議を実行するよう」求めるとともに、「テロ集団に資金や武器を供与する者に、これらの犯罪者、テロリストを国際法に従って引き渡す」よう求めた。

バアス党民族指導部も声明を出し、自爆テロが国内で「殺戮、憎悪、犯罪を唱導する者たちが破綻したことの証」だと非難した。

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事件発生を受け、自由シリア軍の軍事評議会メンバーを名のるアーリフ・ハンムード大佐がBBC(2月10日付)に対して、両施設が車爆弾で爆破されたのではなく、自由シリア軍の攻撃によって破壊されたと宣言、またこの攻撃に施設内の兵士らの協力があったと述べた。

しかし自由シリア軍報道官のマーヒル・ヌアイミー少佐はAFP(2月10日付)に対して、「殺人政府はヒムスで我々の子供たちを殺している。アレッポでの爆発は、自らが犯す罪から視線をそらすことが目的だ」と犯行を否定した。

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一方、シリア国民評議会のナージー・タイヤーラ氏も「事件発生からたった5分で爆発が車爆弾によるとシリア政府がどのように知ることができたのか」と疑問を投げかけ、「遺体はすでに用意されていた」とアサド政権の自作自演を断じた。

またシリア革命調整連合、シリア革命総合委員会などの反体制勢力もこぞってアサド政権による自作自演だと断じた。

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『ハヤート』(2月11日付)によると、各地で金曜礼拝後に反体制デモが散発的に発生し、治安部隊の発砲によって、13人が死亡した。

ダマスカス県・ダマスカス郊外県地元調整委員会報道官を自称するムハンマド・シャーミーを名のる人物によると、反体制デモはダマスカス県マイダーン地区、カーブーン区、マッザ区、バルザ区、カダム区で発生したというが、真偽、規模などは定かでない。

SNN, February 10, 2012
SNN, February 10, 2012
SNN, February 10, 2012
SNN, February 10, 2012

またシリア人権監視団によると、ヒムス市ワアル地区、ダルアー県ダーイル町、ラタキア県ラタキア市サンクトゥーリー地区などでもデモが発生し、治安部隊が強制排除を試みたという。

これに先だって、反体制活動家はインターネットなどを通じて「ロシアは我々の子供たちを殺している金曜日」と銘打って、反体制デモを呼びかけていた。

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ヒムス県ヒムス市、ダマスカス郊外県ザバダーニー市、イドリブ県各地では、軍・治安部隊による反体制勢力の掃討作戦が続き、シリア人権監視団によると、ヒムス市で39人が、また全国で合わせて61人が殺害されたという。

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しかし、SANA(2月10日付)は、国内の暴力が武装テロ集団の犯行と報じた。

同通信社によると、ヒムス県では、武装テロ集団がヒムス市のバーブ・アムル地区の家屋多数を爆破した。またワアル地区で武装テロ集団が爆弾を投げ、1人が死亡した。

ダルアー県では、ダーイル町で武装テロ集団の襲撃を受けた治安維持部隊がテロ集団メンバー2人を殺害した。またブスル・ハリール市では武装テロ集団の襲撃で子供1人が殺害された。

ダイル・ザウル県では、ブーカマール市で武装テロ集団がしかけた爆弾が爆発し、警官1人が死亡、複数が負傷した。またダイル・ザウル市でも数カ所で爆弾が爆発した。

ハマー県では、ハマー市サーブニーヤ地区で武装テロ集団がしかけた爆弾が爆発した。

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『クッルナー・シュラカー』(2月12日付)は、複数の目撃者の話として、ダマスカス郊外県ドゥーマー市で、共和国護衛隊と第4師団の間で交戦があったと報じた。真偽は定かでない。

アサド政権の動き

ファイサル・ミクダード外務次官は、シリア・アラブ・テレビ(2月10日付)で、「一部の国はいわゆる「シリアの友グループ」を設立しようとしているが、それはシリア敵対国機構を設立し、シリアへの攻撃や陰謀を準備するためのものである」と述べた。

そのうえでシリア国民に対して「このような構想を恐れることはない。なぜならシリアはこの手の(帝国主義的)陰謀に対して、国民の犠牲、強力な軍、確固たる制度、祖国防衛のための市民の結束をもって常に対処してきたからだ」と付言した。

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『クッルナー・シュラカー』(2月10日付)は、ラーミー・マフルーフ氏が政党発足を検討していると報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会はカタールの首都ドーハで大会を開催した。

大会は12日までの予定で、反体制運動の活動方針、アラブ連盟監視団の派遣問題、西側諸国や一部アラブ諸国が発足を目指している「シリアの友連絡グループ」への対応などについて審議するとともに、任期切れとなるブルハーン・ガルユーン事務局長の後任を選出する予定。

評議会幹部らによると、中国が大会の招致を申し出ていたが、評議会はこれを辞退し、カタールでの開催を決定したという。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は訪問中のカタールで世界イスラーム教ウラマー連盟(ユースフ・カラダーウィー代表)が主催する「シリア救済フェスティバル」に出席し、「我々は安保理で拒否権が行使されて以来、シリア政府とロシアが対話を強いるために準備した真の陰謀に直面している」と述べ、アサド政権との対話をあくまでも拒否する姿勢を示した。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、アラブ連盟が審議を予定している監視団の再派遣が「少なくとも現状において真摯とは言えない呼びかけ」と指摘、監視団ではなく、人道・医療機関の派遣が必要であるとの姿勢を示すとともに、国際社会に対して、アサド政権との断交を呼びかけた。

レバノンの動き

ナハールネット(2月10日付)によると、レバノン国軍の戦車、兵員輸送車輌多数が北部県アッカール郡フナイダル村、クナイサ村に展開し、武器密輸の監視にあたった。

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ムスタクバル潮流を指導するサアド・ハリーリー前首相は事務所を通じて声明を出し、アラブ諸国に対して、シリア国民評議会をシリア国民の「正当な代表」として承認するよう呼びかけた。

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AFP(2月10日付)によると、北部県トリポリ市郊外のアビー・サムラにある武器庫近くでシリア人3人が暖を取るために熾していた焚き火の火が引火し爆発、3人が犠牲となった。

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AFP(2月10日付)によると、北部県トリポリ市バーブ・タッバーナ地区、ジャバル・ムフスィン地区でアサド政権反対派住民と支持者住民が衝突し、5人が負傷した。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、「リビア・シナリオのシリアへの適用は…国際社会の安定を損ね、国連憲章が定める諸原則を揺るがす」と述べた。

またセルゲイ・リャプコフ外務次官は、反体制勢力も流血が続く状態の責任を負っていると述べるとともに、「シリアの反体制勢力を煽動する西側諸国…、武器を供与する国々も、反体制勢力とともに事態悪化に寄与している」と批判した。

SANA(2月10日付)によると、ロシア外務省は自爆テロへの非難を表明し、暴力の即時停止のための政府と反体制勢力による無条件の対話を呼びかけた。

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SANA(2月10日付)は、イランのアリー・サーレヒー外務大臣が共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師と会談し、「シリアへの圧力はレジスタンスを支持するその姿勢に起因する」と述べ、多方面で現下の危機解消に向けて、シリアを支持するとの意思を表明したと報じた。

イラン国営通信(2月10日付)は、イラン資源省の信頼できる消息筋から得た情報として、誘拐されていたイラン人技術者7人(ヒムス市ジャンダル発電所に勤務)がヒムス市近郊で釈放された、と報じた。7人は、「シリア・シーア派拡大反対運動」を名のる組織に誘拐されていた。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は訪問先の米国で記者会見を開き、「国際社会が動かないなかで、連日殺されているシリア人を傍観することはできない」と述べ、「もし国連が動かないのであれば、我々は国際的なフォーラムを作りたい」と述べ、シリアの友連絡グループ構想に対して前向きな姿勢を示した。

アナトリア通信(2月10日付)は、トルコ司法当局が、ハタイ県のキャンプに避難していた自由将校運動(自由将校旅団)リーダーのフサイン・ハルムーシュ大佐とムスタファー・カースィム氏がシリア当局に引き渡された経緯に関する調査を開始したと報じた。

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サウジアラビアのアブドゥッラー国王は、第27回ジャンダリーヤ祭の来賓に対する祝辞で、「事態は吉報ではなかった。なぜなら国連に対する世界全体の信用が揺らいだことは疑いないからだ」と述べ、国連安保理への対シリア安保理決議の否決を批判した。

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イタリア外相は、米国とイタリアが、シリアへの新たな使節団派遣をめざすアラブ連盟の努力を支持することで合意したと述べた。

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パレスチナ人作家・詩人約100人が共同声明を出し、シリア国民との連帯を表明するとともに、アサド政権がパレスチナ問題を政局として利用することを拒否する姿勢を示した。

AFP, February 10, 2012、Akhbar al-Sharq, February 10, 2012、al-Hayat, February 11, 2012、Kull-na Shuraka’, February 10, 2012, February 12, 2012、Naharnet.com, February 10, 2012、NNA, February 10, 2012、Reuters, February 10, 2012、SANA, February 10, 2012、SNN, February 10, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

自由シリア軍メンバーを名のる人物がダマスカス郊外県からメッセージを発信し「さらなる武器支援」を要請、国連の潘事務総長が国連・アラブ連盟による合同監視団を派遣する構想を提起(2012年2月9日)

国内の暴力

ヒムス県では、複数の活動家・目撃者によると、ヒムス市で軍・治安部隊による掃討作戦が続き、地元調整諸委員会によると110人余りが殺害されたという。

al-Hayat, February 10, 2012
al-Hayat, February 10, 2012

掃討作戦はバーブ・アムル地区、ハーリディーヤ地区、インシャーアート地区、バイヤーダ地区、ジャウラト・シヤーフ地区で激しく行われ、住民らによると、市内は間断のない砲撃が続く「実戦」の様相を呈し、ライフラインが遮断され、「焼け焦げた遺体」が散乱、家々が破壊されている、という。

一方、シリアの日刊紙『ワタン』(2月9日付)は、ヒムス市バーブ・アムル地区でアル=カーイダと関係がある様々な国籍の武装集団多数を当局が逮捕し、米イスラエル製ロケット弾などを大量に応酬したと報じた。

逮捕された戦闘員の国籍は同報道によると、レバノン人、リビア人、アフガニスタン人など。

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ダマスカス郊外県では、複数の活動家・目撃者によると、マダーヤー町、ザバダーニー市を軍・治安部隊の戦車・装甲車など約350輌が包囲し、掃討作戦を続けているという。

シリア人権監視団によると、ザバダーニー市では市民2人が殺害された。

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SANA, February 9, 2012
SANA, February 9, 2012
SANA, February 9, 2012
SANA, February 9, 2012

イドリブ県では、複数の活動家・目撃者によると、マアッラト・ヌウマーン市で軍・治安部隊による掃討作戦による死者が出た。

シリア人権監視団によると、同市では女の子1人が殺害された。

一方、SANA(2月9日付)によると、武装テロ集団がイドリブ県内の鉄橋を破壊した。死傷者はなかった。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、離反兵が軍・治安部隊を要撃し、7人の兵士を殺害した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、クーリーヤ市で激しい発砲があり、女子供を含む数十人が負傷した。

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地元調整諸委員会によると、全国の死者数は150人近くにのぼったという。

アサド政権の動き

『ダマス・ポスト』(2月9日付)によると、アサド大統領は、政府使節団をモスクワに派遣し、反体制勢力との対話を行う用意があるとの意思を表明した。

同報道によるとこの意思表明は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣との会談時になされ、ファールーク・シャルア副大統領を反体制勢力との対話の責任者に任じた。

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SANA(2月9日付)によると、タルトゥース県シャイフ・バドル市で、外国の干渉拒否、ロシア・中国の姿勢支持、アサド政権支持を訴えるデモが行われた。

反体制勢力の動き

『ハヤート』(2月10日付)が伝えたところによると、自由シリア軍のムハンマド・イマームを名のる人物がダマスカス郊外県から米国に向けてインターネットを通じてメッセージを発し、外国軍の派遣ではなく、「さらなる武器支援」を要請した。

同メッセージは、ワシントンで開催された中東専門家や特派員の会合に宛てて発信されたもの。

イマーム氏はそのなかで「我々は世界でもっとも残忍な殺人装置の一つと戦っている」としたうえで、離反兵が「軽火器で戦車に応戦している」と述べ武器の不足を認めた。

また「ヒズブッラーとイランの戦闘員がシリア人の弾圧を教練している…。ダマスカス近郊にはヒズブッラーが運営する訓練キャンプがある」と述べ、ヒズブッラーとイランの弾圧を断定した。

イマーム氏によると、離反兵(脱走兵)の数は40,000人を越え、グータ地方(ダマスカス郊外県)、ダルアー県には約20,000人の人々が武装したいと考えているが、武装している離反兵の数は数百人に過ぎないという。

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『フィナンシャル・タイムズ』(2月9日付)は、自由シリア軍のアフマド・アスアド大佐とシリア革命最高軍事評議会のムスタファー・シャイフ准将の不和を解消するため、シリア国民評議会が仲裁に乗り出した、と報じた。

自由シリア軍、シリア革命最高軍事評議会はいずれもトルコに避難している士官らが指導し、国内での反体制活動を指導していると主張している在外組織。

一方、シリア国民評議会も在外有識者やイスラーム主義者の寄り合い所帯。

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シリアのドゥルーズ派の首領の一人ムンタハー・アトラシュ女史は記者会見を開き、アサド政権に対する反乱をアラブ山地方の住民に呼びかけた。

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自由シリア軍(リヤード・アスアド大佐)とシリア革命最高軍事評議会(ムスタファー・シャイフ准将)の共同声明が『クッルナー・シュラカー』(2月10日付)で発表され、後者が前者の国内活動を情報面、兵站面などで支援することに合意し、近く正式な声明を出すことを明らかにした。

アラブ連盟の動き

『ハヤート』(2月10日付)が、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長に近い消息筋として伝えたところによると、2月12日に開催予定のアラブ連盟緊急外相会合では、在外の反体制政治同盟の一つであるシリア国民評議会を「シリア国民の正当な代表」とみなすか否かが審議される予定。

国連の動き

国連の潘基文事務総長は記者会見で、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長から、国連の支援のもとに連盟監視団をシリアに戻したい旨7日に通達されたと発表し、国連とアラブ連盟による合同監視団を派遣する構想を提起した。

潘事務総長はまた、ヒムス市でのシリア軍による攻撃を「恐るべき蛮行」と非難する一方、ロシアと中国の安保理決議に対して「悲惨な失敗」と形容、「シリア国民に対する戦争をエスカレートさせる」との西側寄りの中立性を欠いた見解を示した。

そのうえで「内戦、宗派対立に向かう危険」があるとしたうえで、「受け入れられない段階に達した現状に対して大胆且つ断固たる措置」を講じる必要を訴え、外部介入を唱導した。

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フランス外務省はアラブ連盟監視団の活動再開に関して、「自由な移動と必要な連絡が行われねばならない」と述べ条件をつけつつも、支持する意思を示した。

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スーザン・ライス米国連大使は、潘事務総長の提案に対して、「検討する」と述べた。

一方、米国防相報道官は、シリア情勢に関して、軍事介入を念頭に置かず、「外交的方法を優先している」と改めて述べた。

レバノンの動き

MTV(2月9日付)は、北部県トリポリ市バーブ・タッバーナ地区で爆弾3発が爆発したと報じた。

バーブ・タッバーナ地区はスンナ派(反アサド政権、親3月14日勢力)が多く居住しており、アラウィー派(親アサド政権、親3月8日勢力)が多く住む隣接するジャバル・ムフスィン地区との対立が絶えない。

諸外国の動き

『ハヤート』(2月10日付)によると、西側諸国が現在検討中のシリアの友連絡グループは、国連を通じた「外交的オプション、平和的解決」が息詰まるなかで、「民間人保護」のための「別の選択肢」を検討しているという。

この「別の選択肢」のなかには、フランスが昨年末に提示した人道回廊の設置、ないしは緩衝地帯を対トルコ国境地帯(のシリア領内)に設置するといった案が含まれているが、反体制勢力への軍事支援は含まれていないという。

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西側によるシリアの友連絡グループ構想に関して、ロシア外務省報道官は「国際法の観点から違法」との立場を示した。

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英国のデビッド・キャメロン首相は記者団に対して、アサド政権が「いかなる代償を払ってでも」国民を殺戮しようと計画していると非難した。

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ABC(2月9日付)が伝えたところによると、スイスの最高裁判所は、スイスの銀行が資産凍結していたハーフィズ・マフルーフ准将(総合情報部内務課ダマスカス班長、アサド大統領のいとこ)の資産3,000,000ユーロ(約4,000,000米ドル)の凍結を解除する決定を下した。

マフルーフ准将の代理人によると、この資産は、マフルーフ准将がスイスの制裁対象になる前に売買契約した不動産の代金を支払うための資金の一部だという。

同報道によると、スイスの銀行が資産凍結したシリア政府高官らの資金の総額は50,000,000スイス・フラン(約60,000,000米ドル)。

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イラン大統領府のウェブサイトによると、マフムード・アフマディーネジャード大統領はイラン訪問中の共和国ムフティーのバドルッディーン・ハッスーン師と会談し、「イスラーム抵抗運動を破壊し、シオニスト体制を救済するため米国とその同盟者たちは地域で新たな戦争を起こそうとしている…。しかし我々は彼らに結束と知恵をもって対抗できると確信する」と述べ、アサド政権への支持を伝えた。

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ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外務大臣はスパイ容疑によるシリア人ら2人の逮捕を受けるかたちで、シリア大使館の外交官4人を追放したと発表した。

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SANA(2月9日付)によると、ムハンマド・アリー・サアディー弁護士を団長とするイラク部族使節団がシリア訪問を訪問し、ムハンマド・シャッアール内務大臣、アドナーン・マフムード情報大臣と相次いで会談し、両国関係の強化を確認した。

また使節団は、シリアに対する外国の介入を拒否する姿勢を示した、という。

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リビア外務省は、在トリポリ・シリア常駐代表に対して72時間以内にリビアを出国するよう要請した。

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中国外交部報道官は、民主的変革諸勢力国民調整諸委員会の使節団が北京を訪問し、外務次官と会談、シリア情勢について意見を交わしたと発表した。

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ロシアのアナトーリー・アントノフ国防次官はロシアのテレビでのインタビューで、「我々の専門家は同地域(シリア)の様々な軍事拠点や工場におり、我々の見解では、それは国際的軍事協力という文脈において非常に大きな将来的意味を持っている」と述べ、シリアとの軍事的な協力関係の維持・強化の意思を示した。

ABC, February 9, 2012、AFP, February 9, 2012、Akhbar al-Sharq, February 9, 2012, February 10, 2012、Damas Post, February 9, 2012、The Financial Times, February 9, 2012、al-Hayat, February 10, 2012, February 12, 2012、Kull-na Shuraka’, February 9, 2012,
February 10, 2012、Naharnet.com, February 9, 2012、Reuters, February 9, 2012、SANA,
February 9, 2012、al-Waṭan, February 9, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

プーチン首相がアサド政権打倒に固執する西側諸国や一部アラブ諸国を「無謀」と非難する一方、英外相は自国が「シリアの友」グループにおいて主導的役割を果たす意向を示す(2012年2月8日)

国内の暴力

ヒムス県では、複数の活動家・住民が伝えたところによると、ヒムス市内の反体制勢力が占拠しているとされる複数地区を奪還するための、軍・治安部隊による大規模な掃討作戦が行われ、ロケット弾や迫撃砲による間断のない攻撃が続き、シリア人権監視団によると、少なくとも70人が死亡した。

al-Hayat, February 9, 2012
al-Hayat, February 9, 2012

掃討作戦にはヘリコプター、戦闘機も投入されたというが、その真偽は定かでない。

掃討作戦が行われたのは、インシャーアート地区、バーブ・アムル地区など。

一方、ロイター通信(2月8日付)によると、軍・治安部隊はガンターウィー家、トゥルカーウィー家、ザーミル家の家族少なくとも20人を殺害した。

同報道によると殺害されたのはほとんどが子供だという。

これに対して、SANA(2月8日付)やシリア・アラブ・テレビ(2月8日付)は、バーブ・アムル地区、ナーズィヒーン地区、ハーリディーヤ地区、バイヤーダ地区などに対する迫撃は「武装テロ集団」によるものだと報じた。

同報道によると、「武装テロ集団」は市内のバアス大学を標的として攻撃を行ったという。

またバイヤーダ地区では「武装テロ集団」が車爆弾を爆発させ、市民、治安知事部隊兵士多数を死傷させたと報じたほか、市内の石油精製所が迫撃砲の攻撃を受け、火災が発生したと伝えた。

さらに、バーブ・アムル地区で米国製およびイスラエル製の武器・弾薬を大量に押収したと報じた。

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ダマスカス郊外県では、複数の活動家・住民によると、ザバダーニー市に戦車・装甲車約150輌が侵入し、掃討作戦を展開した。

シリア人権監視団によると、カフィール・ヤーブース村で治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、前者の士官1人、兵士3人が死亡し、士官1人が捕捉された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市で治安部隊の発砲により青年1人が殺害された。

SANA(2月8日付)によると、マアッラト・ヌウマーン市で治安維持部隊と武装テロ集団が交戦した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、タスィール町で中尉1人を含む兵士18人が離反し、軍・治安部隊と交戦、市民1人が死亡した。

アサド政権の動き

『クッルナー・シュラカー』(2月8日付)は、アサド大統領の子供が脅迫を受け、通学できないでいる、と報じた。

反体制勢力の動き

『ガーディアン』(2月8日付)は、英米の専門家の分析として、最近のアサド政権による対トルコ、レバノン、イラク、ヨルダン国境の警備強化により、離反兵が重火器などの武器のシリアへの密輸が困難になっていると報じた。

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ダマスカス県の著名なシャイフ5人(カリーム・ラージフ、サーリヤ・アブドゥルカリーム・リファーイー、ウサーマ・アブドゥルカリーム・リファーイー、ムハンマド・ラーティブ・ナーブルスィー、ムハンマド・ヒシャーム・ブルハーニー)は国軍の将兵に向けて共同声明を出し、市内での攻撃を停止するよう呼びかけた。

その他のシリアでの動き

Kull-na Shuraka', February 8, 2012
Kull-na Shuraka’, February 8, 2012

シリア人映画監督のファーイズ・カザク(ラタキア出身)はチュニジアの『ウラービヤー』(2月8日付)に対して、シリア情勢に関して、「アラブ諸国の革命は混沌だ…。私はいかなる判断も下さない…。話題に上っているいかなる革命も革命だとは考えていない…。革命は生活に関する新たな哲学をもたらすからだ」と述べ、批判的な姿勢を示した。

レバノンの動き

3月14日勢力事務局は、レバノン国軍による北部県対シリア国境地帯への展開に関して「異常な展開」と述べ、ナジーブ・ミーカーティー内閣を「失敗内閣」と非難した。

諸外国の動き

ロシアの複数の通信社によると、ロシアのウラジーミル・プーチン首相は、シリア国民が「自身で自らの運命…アサド大統領の運命を決めるべきだ」と述べ、体制打倒に固執する西側諸国や一部アラブ諸国を「無謀」だと非難した。

一方、セルゲイ・ラブロフ外務大臣は、シリア訪問後の記者会見もまた「シリア人が自らの運命を決する」と述べ、アサド大統領の退任について議論したことを否定した。

またラブロフ外務大臣は、「国民対話がシリア人自身の合意の結果となり、すべてその内容はすべての国民に受け入れられるべきもの」としたうえで、「国際社会が国民対話の結果を予め限定してはならない」と西側の動きを非難した。

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シリアのシャームFM(2月8日付)は、シリア国内で身柄拘束されたトルコ人士官49人の引き渡しをめぐる交渉がシリア・トルコ間で開始されたと報じた。

同報道によると、トルコ人士官は「違法にシリア国内で活動を行って」おり、シリア政府は釈放の条件として、自由シリア軍メンバーの引き渡し、シリア領内への武装集団潜入の規制、および軍事教練の停止を求めるとともに、イランを引き渡し合意の承認として立てることを要求している、という。

トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、シリアの危機を収束させるため、イスラーム諸国、アラブ諸国、西側諸国による拡大国際会議の開催をめざすとの方針を宣言した。

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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣との会談でアサド大統領が改革と弾圧停止を改めて確認したことに関して、「我々をバカにした策略」に過ぎないと非難した。

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英国のデヴィッド・キャメロン首相は、ラブロフ外務大臣のシリア訪問に関して「(よい結果がもたらされるとは)ほとんど信用してない」と述べた。

またウィリアム・ヘイグ外務大臣は、「シリア国内外の反体制勢力への支援を増加させる」と述べ、英国が「シリアの友」からなる「調整グループ」において主導的役割を果たす意向を示した。

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AFP(2月8日付)によると、イラン外務省報道官は、シリアで誘拐されていたイラン人観光客22人のうち11人がトルコ国境で釈放された、と発表した。

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シリア危機を煽る急先鋒のカタールの首都ドーハでシリア人など約3,000人が集まり、アサド政権の打倒と自由シリア軍の支持を訴えるデモを行った。

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UNICEFは、2011年3月の反体制運動発生以降、シリア国内で400人の子供が殺害されたと発表した。

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国境なき医師団は声明を出し、シリアのアサド政権による「慈悲なき弾圧」を非難した。

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ジャズィーラなどに頻繁に出演しているユースフ・カラダーウィー師らアラブ諸国のイスラーム教宗教関係者107人が連名でファトワーを出し、自由シリア軍への支援を呼びかけた。

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ヨルダン・ムスリム同胞団はヨルダン政府に対してシリア大使を追放するよう呼びかけた。

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『ハヤート』(2月9日付)は、信頼できる消息筋の話として、中国がシリア国民評議会の指導部に連絡し、中国への訪問を求めるかたちで会談を申し出たと報じた。

これに対して、シリア国民評議会側は、この申し出を(政権との)仲介とは無関係だとみなすとの姿勢を示すとともに、安保理での拒否権発動に関する説明を求めたという。

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ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官は、安保理に対してシリアでの弾圧を「人道に対する罪」として国際刑事裁判所に提訴するよう呼びかけた。

AFP, February 8, 2012、Akhbar al-Sharq, February 8, 2012, February 11, 2012、The Guardian, February 8, 2012、al-Hayat, February 9, 2012、Kull-na Shuraka’, February 8, 2012、Naharnet.com, February 8, 2012、Reuters, February 8, 2012、SANA, February 8, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

ロシアのラブロフ外相がシリアを訪問しアサド大統領を含む政府高官と面会、英仏を含む欧州5か国は相次いで駐ダマスカス大使の召還を発表(2012年2月7日)

アサド政権の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣がシリアを訪問し、アサド大統領、ファールーク・シャルア副大統領、ワリード・ムアッリム外務大臣、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官と会談した。

シリアを訪問したのはラブロフ外務大臣、ミハイル・フラトコフ対外情報庁長官、ミハイル・ボグダノフ外務次官。

SANA, February 7, 2012
SANA, February 7, 2012

ロシアの複数の通信社が伝えたところによると、会談で、アサド大統領は、アラブ連盟のシリア国内での任務拡大を受け入れるとともに、新憲法の信任投票の日程を確定する用意があるとの意思を示した。

また国内でのすべての当事者による暴力停止に向け、すべての政治勢力との対話を行う意思があることを確認した、という。

SANA(2月7日付)によると、アサド大統領は、「政府、反体制勢力、無所属活動家の代表が参加するかたちでの国民対話の実施を計画している」ことを改めて確認した。

一方、ラブロフ外務大臣は、安保理でのロシアの姿勢に関して、「シリア情勢への現実的でバランスのとれた評価、国際法と自決権の尊重に根ざしている」とし、外国の介入に反対し、国内での対話を支持すると改めて述べたという。

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SANA, February 7, 2012
SANA, February 7, 2012

SANA(2月7日付)は、安保理でのロシアおよび中国の姿勢を支持する市民が沿道でラブロフ外務大臣の訪問を歓迎したと報じた。

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アスマー・アフラス大統領夫人の事務所は『タイムズ』(2月7日付)に対してメッセージを送り、アサド政権の施政を支持していること初めて明らかにした。

同メッセージには、「大統領はシリアの大統領であり、一部のシリア人のための大統領ではありません。ファーストレディーはこの役割を支持します…。最近、彼女はまた対話を奨励することに関心を示しています。彼女は常に、耳を傾け、暴力の犠牲者の家族のために悼んでいます」と記された。

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SANA(2月7日付)は、シリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会が憲法草案の準備を完了したと報じた。

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Elaph.com(2月7日付)は、アノニマス(ハッカー集団)がブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官のメールなど大統領執務室のメール約100通を入手したと報じた。

反体制勢力の動き

在外の反体制政治同盟のシリア国民評議会と自由シリア軍は共同声明を出し、シリア人ビジネスマンに対して、「自衛活動」と「都市部保護」のための資金提供を呼びかけた。

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変革解放人民戦線のカドリー・ジャミール代表は声明をだし、安保理でのロシアと中国の拒否権発動に関して、外国の介入の試みを阻止する動きとして高く評価した。

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区などで軍・治安部隊による大規模な掃討作戦が続き、少なくとも19人が死亡した。

同監視団およびシリア国民評議会によると、軍・治安部隊は同市のハーリディーヤ地区、バイヤーダ地区に対する掃討作戦も計画中だという。

一方、SANA(2月7日付)によると、ヒムス市バイヤーダ地区で武装テロ集団が市民や治安部隊を襲撃し、多数を殺害した。

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ダマスカス郊外県では、地元調整諸委員会によると、ザバダーニー市に対して軍・治安部隊による大規模な掃討作戦が行われた。

一方、SANA(2月7日付)によると、ザバダーニー市郊外で武装テロ集団と治安維持部隊が交戦し、テロリスト多数が殺害された。

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ダルアー県では、SANA(2月7日付)によると、武装テロ集団が市民を襲撃、3人を殺害した。

諸外国の動き

英国、フランス、スペイン、イタリア、ベルギーは相次いで駐ダマスカス大使の召還を発表した。

またGCC議長府は声明を出し、GCC諸国がシリアに駐在する大使の撤収を決定するとともに、各国のシリア大使に即刻出国するよう要請したと発表した。

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キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表付報道官は、『ハヤート』(2月8日付)に対して、フランスのニコラ・サルコジ大統領が提案した「シリアの友連絡グループ発足構想はまだ具体化していない」としながらも、国際社会がアラブ連盟のイニシアチブを支援することが重要だとの立場を示した。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長はロイター通信(2月7日付)の取材に応え、国連安保理でのロシアと中国の拒否権発動に関して、「ロシアであれそれ以外の国であれ、拒否権発動は受け入れられない」と述べた。

しかし「私は彼ら(ロシア、中国)を責めないが、シリアの反体制勢力は、アラブ連盟が彼らか「リビア・シナリオ」のいずれかを支持すると幻想していた。しかし、リビア・シナリオが現状において不適切だ」と述べ、シリアの反体制勢力の過剰な期待にもクギをさした。

さらに、シリアへの監視団の派遣の是非については、「もし別の派遣団を送るのであれば、人数、装備をさらに拡充しなければならない。別途承認がいる」と述べた。

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SANA(2月7日付)によると、シリア・イラク合同運輸委員会は、イラクによるシリアの港湾施設への支援に関して合意し、両国間の海路での輸出入を活性化させることを決定した。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、トルコが近く西側諸国らとともに、アサド政権に対抗し、「シリア国民を支持するための」新たなイニシアチブを立ち上げると発表した。

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サウジアラビア紙『ワタン』(2月7日付)は、GCC諸国が近くシリア国民評議会をシリア国民の正当な代表として承認するだろうと報じた。

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イラン外務省報道官は、定例記者会見を開き、シリア情勢に関して、「我々はシリアの内政に決して介入しない。テヘランは他国の介入がシリアの安定と治安にとって危機をなすと考えている」と述べた。

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ドイツ外務省筋によると、ギド・ウェスターウェレ外務大臣はラドワーン・ルトフィー大使を呼び出し、ドイツ国内のシリア人反体制活動家に対するシリア政府のスパイ活動に対して改めて抗議した。

またドイツ当局は、ベルリン市内で「マフムード」を名のる47歳のシリア人男性と、「アクラム」を名のるレバノン出身のドイツ人をスパイ容疑で逮捕、送検したと発表した。

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米ホワイトハウス報道官は、アサド政権への弾圧に対抗するため「人道支援」を行うことを検討していると発表した。

同報道官は、一部議員の提案している反体制勢力の武器支援については「今のところ選択肢として検討していない」と述べたが、「人道支援」という曖昧な表現は武器・兵站支援を暗示しているものと思われる。

レバノンの動き

al-Manar, February 7, 2012
al-Manar, February 7, 2012

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は預言者聖誕祭に合わせてテレビ演説を行い、イランの核開発をめぐる西側の制裁やイスラエルによる空爆の可能性やシリア情勢などについて語った。

シリア情勢に関して、ナスルッラー書記長は、ヒズブッラーの戦闘員がシリア国内での反体制運動弾圧にあたっているとの一部報道を否定した。

また「いくつかの武装衝突はあるが、シリアの大部分は安定を享受している…。外国の勢力に関して言うなら、世界のすべての大国がシリアにおける政権転覆をめざしているなどと言えようか?…彼ら(西側)は改革が遅れすぎたと言うが、シリアで戦争が起きようとしているのになぜ遅れすぎたと言えるのか?宗派主義戦争が起きているというのは事実ではない。なぜなら武装集団によって殺害されているほとんどの人がスンナ派だからだ…。シリアを救うものは真の対話であり、米国に期待して賭けることは、さらなる殺戮と内乱を招くだけだ」と述べた。

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ナハールネット(2月7日付)などによると、シリア軍は数日前から、北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方フナイディル村とヒムス県ブワイト村間にさらなる地雷を敷設している、と報じた。

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NNA(2月7日付)は、レバノン当局がシリア領内に武器を密輸しようとしたレバノン人2人を拘束したと報じた。

AFP, February 7, 2012、Akhbar al-Sharq, February 7, 2012, February 8, 2012、Elaph.com, February 7, 2012、al-Hayat, February 8, 2012、Kull-na Shuraka’, February 7, 2012, February 8, 2012、al-Manar, February 7, 2012、Naharnet.com, February 7, 2012、NNA, February 7, 2012、Reuters, February 7, 2012、SANA, February 7, 2012、The Times, February 7, 2012、al-Watan (Riyad), February 7, 2012、などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

ヒムス市で軍・治安部隊による大規模な掃討作戦が継続するなか、オバマ米大統領は「軍事的介入なしに(シリアの危機を)解決することが非常に大切だ」と語る(2012年2月6日)

国内での暴力

複数の反体制活動家・目撃者などによると、ヒムス県ヒムス市のバーブ・アムル地区など複数の地区で、軍・治安部隊による大規模な掃討作戦が継続された。

SANA, February 6, 2012
SANA, February 6, 2012

現地で取材をしていたBBC記者によると、300発以上の迫撃砲が早朝からバーブ・アムル地区に降り注いだ。

シリア人権監視団によると、この攻撃により、29人がバーブ・アムル地区、カラム・ザイトゥーン地区、カラム・シャーミー地区、ハーリディーヤ地区、インシャーアート地区、バーブ・スィバーア地区で死亡した。

また掃討作戦はラスタン市に対しても続けられ、シリア人権監視団によると、5人の市民が死亡した。

しかしシリア・アラブ・テレビ(2月6日付)など、シリアの主要メディアは、武装テロ集団がハーリディーヤ地区にしかけた爆弾が爆発し多数の死者が出たと報じた。

またバーブ・アムル地区では同じく武装テロ集団が、石油・パイプラインを爆破し、火災が発生したと報じた。

またSANA(2月6日付)によると、ヒムス市では武装テロ集団が労働者の乗ったバスを襲撃し、1人を殺害した。

また同市内各地で建物を爆破するなど破壊行為を続けたという。

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ダマスカス郊外県では、政府との間に「停戦」が成立していたザバダーニー市でも、軍・治安部隊が戦車などで包囲し、激しい砲撃を加えたという。

またマダーヤー町周辺でも大規模な掃討作戦が行われた。さらにスィルガーヤー町では子供1人を含む2人が殺害された。

シリア人権監視団によると、戦車・装甲車約200輌がザバダーニー市、マダーヤー町を包囲しているという。

一方、SANA(2月6日付)によると、武装テロ集団がザバダーニー市内の建物を攻撃し、市民生活を妨害、関係当局が摘発のための追跡を行った。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、マーリア市で市民1人が殺害された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、タフタナーズ市近くの農場に迫撃砲が着弾し、女性2人、子供1人を含む4人が死亡した。

またバーラ村では、シリア人権監視団によると、離反兵が軍・治安部隊を襲撃し准将1人、大尉1人、中尉1人を殺害し、19人の兵士を捕捉した。

一方、SANA(2月6日付)によると、バーラ村で武装テロ集団が治安維持部隊を襲撃し、3人を殺害した。

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複数の活動家によると、ヒムス市などでの軍・治安部隊による掃討作戦で73人が死亡した。

アサド政権の動き

Kull-na Shuraka’, February 6, 2012
Kull-na Shuraka’, February 6, 2012

『クッルナー・シュラカー』(2月6日付)は、ヒムス県、ダマスカス郊外県、イドリブ県で掃討作戦を行っている軍・治安部隊の部隊と指揮官に関する詳細情報を発表した。

同報道によると、弾圧を行っている主な部隊と指揮官は以下の通り。

1. 第4師団:アリー・アンマール少将が指揮官。実質的な指揮権はマーヒル・アサド大佐が握り、ザバダーニー市、ヒムス市、イドリブ県の掃討作戦を行う。

2. 第549部隊(闘争連隊):ガッサーン・アサド少将が指揮官。ダマスカス県の防衛を担当し、空軍情報部(ジャミール・ハサン少将)のムウダミーヤト・シャーム市、ダーライヤー市の掃討作戦を行う。

3. 第90(歩兵・機構)旅団:ズハイル・アサド准将が指揮官。10,000人の兵士からなり、対イスラエル戦線の防衛を担当する一方、ダーライヤー市、カフルバトナー町、ハラスター市、ドゥーマー市で掃討作戦を行う。

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『クッルナー・シュラカー』(2月6日付)は、1月31日に死亡したと報じたマナーフ・トゥラース准将に関して、ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市の検問所の静止を無視して車で通過しようとして射殺されたと伝えた。

反体制勢力の動き

トルコで避難生活を送るムスタファー・シャイフ准将がシリア革命最高軍事評議会なる新たな離反兵の組織の発足を宣言した。

同声明によると、評議会は、シリア解放を目的としている。

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自由シリア軍は声明を出し、シリア革命最高軍事評議会の発足宣言に関して、「自由シリア軍に属していない…。誰も代表していない」との声明を発表し、離反兵の間でも権力闘争が生じていることが明らかになった。

自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐はこの声明のなかで、「こうした評議会の発足、そしてそのタイミングは政府に奉仕するものだ」と批判した。

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シリア・ムスリム同胞団のズハイル・サーリム報道官は声明を出し、「ロシアと中国とイランが野蛮な虐殺の直接のパートナー」と非難した。

レバノンの動き

進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシアと中国の拒否権発動を「シリア国民への平手打ち」と非難するとともに、レバノンの政府に国境地域での偵察活動ではなく、シリア人避難民を支援するよう求めた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、ロシアと中国による安保理での拒否権発動に対する西側諸国の批判に関して、「西側の一部の国の発言は恥ずべきもので、半ばヒステリーだ…。ヒステリックな発言はシリアでの暴力が複数の当事者によって行われていることを隠そうとするものだ」と反論し、「過激な武装集団」による暴力の存在を改めて指摘した。

在サウジアラビア・ロシア大使は、記者会見を行い、シリア国内での暴力が、アサド政権以前に反体制勢力によって行使されていると述べた。

またロシアと中国の安保理での拒否権発動を批判する国々に関して、「我々にはシリアの危機を解決するための提案がある。しかし残念なことに、安保理における我々の友人たちは、それに耳を傾けようとはしない」と批判した。

さらにGCC諸国の強硬な姿勢に関して、シリアでの内戦を望んでいるのかと問い、批判した。

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米政府はダマスカスの米大使館の一時閉鎖を決定した。

バラク・オバマ米大統領はNBC(2月6日付)に対して、「軍事的介入なしに(シリアの危機を)解決することが非常に大切だ」と述べ、「制裁とさらなる圧力を継続」する必要があるとし、「転換を見るまで」バッシングを続ける意思を示した。

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フランスのニコラ・サルコジ大統領とドイツのアンゲラ・メルケル首相は共同記者会見を開き、国連安保理での対シリア決議案に対するロシアと中国の拒否権発動に関して、「ドイツとフランスはシリア国民を失望させない。今起きていることが「スキャンダル」だとしても、我々は…国際社会の活動に対する妨害を受け入れる準備はしていない」と述べた。

フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長と会談した。

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スイスの財務大臣は、シリア政府関係者など34人を新たに制裁リストに加えたと発表した。

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国連総会のアブドゥルアズィーズ・ナスル議長は、シリア問題をめぐる国連の無力に対して大いなる懸念を表明するとともに、アサド大統領に対して「国民に耳を傾ける」よう呼びかけた。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は11日に予定されていた緊急閣僚級会合を12日に延期すると発表した。

延期はGCC諸国の要請を受けたもの。

AFP, February 6, 2012、Akhbar al-Sharq, February 6, 2012, February 7, 2012、al-Hayat, February 7, 2012, February 8, 2012、Kull-na Shuraka’, February 6, 2012、Naharnet.com, February 6, 2012、Reuters, February 6, 2012、SANA, February 6, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

軍・治安部隊がシリア各地で離反兵への掃討作戦を強化するなか、西側諸国や一部アラブ諸国の首脳がロシア・中国による拒否権発動を激しく批判(2012年2月5日)

国内の暴力

国連安保理を通じた西側諸国および一部アラブ諸国のアサド政権へのバッシングが露中の拒否権発動で阻止されたことを受けるかたちで、シリア各地で軍・治安部隊が市民を巻き込んだ離反兵への掃討作戦が激化させた。

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イドリブ県ではAFP(2月6日付)、トルコのNTV(2月6日付)などは、対トルコ国境沿いのアイン・バイダ村とヒルバト・ジャウズ村に対して軍・治安部隊が大規模な掃討作戦を行い、迫撃砲などで攻撃を加え、村は「パニック」に陥っていると報じた。

NTV(2月6日付)によると、迫撃砲がトルコ領内ギュヴェッチ村に着弾したという。

シリア人権監視団によると、ザーウィヤ山地方のイフスィム村で軍・治安部隊と離反兵が激しく交戦し、兵士6人が死亡、21人が負傷した。

またフィルユーン村でも同様の戦闘で兵士5人が、サラーキブ市近郊でも兵士2人が死亡した。

アブディーター村では、離反兵が軍の車輌を襲撃し、兵士1人を殺害した。

一方、マストゥーマ村では軍・治安部隊と離反兵の戦闘に市民が巻き込まれ、女の子1人が死亡した。

さらにマアッルシューリーン村では市民1人が殺害された。

他方、SANA(2月5日付)によると、武装テロ集団が治安維持部隊を襲撃し、兵士1人を殺害した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のカラム・ザイトゥーン地区、バーブ・アムル地区、クスール地区などで軍・治安部隊による大規模掃討作戦が続けられた。

ラスタン市では、軍・治安部隊が大規模な掃討作戦を継続、市民3人を殺害した。

市内では離反兵の応戦も行われており、シリア人権監視団によると、離反兵が市内の軍・治安部隊の検問所を襲撃、そのほとんどを破壊し、多くの兵士を死傷させた。

一方、SANA(2月5日付)によると、武装テロ集団がヒムス県タルビーサ市のガス・パイプラインを破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市の発砲で子供1人が殺害された。

またシリア革命総合委員会によると、軍・治安部隊がマダーヤー町に対して掃討作戦を開始した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ハーッラ市で軍・治安部隊と離反兵が激しく交戦した。

一方、SANA(2月5日付)によると、武装テロ集団が治安維持部隊を襲撃し、兵士1人を殺害した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(2月5日付)によると、ブーカマール市で武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、子供2人が死亡した。

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地元調整諸委員会は3月の反体制運動開始からの死者数が7,339人に達したと発表した。

アサド政権の動き

SANA(2月5日付)によると、バッシャール・アサド大統領は宗教関係省が主催した預言者聖誕祭の祝典に出席した。

祝典には、共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師、ムハンマド・ムハンマド・アブドゥッサッタール・サイイド宗教関係大臣などイスラーム教スンナ派の宗教関係者が多数参列した。

SANA, February 5, 2012
SANA, February 5, 2012

 

SANA, February 5, 2012
SANA, February 5, 2012

 

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SANA(2月5日付)によると、各地でロシアと中国の拒否権発動支持、アサド政権の改革支持を訴える大規模な集会が実施された。

集会が開かれたのはダマスカス県サブウ・バフラート広場、スワイダー県スワイダー市、タルトゥース県タルトゥース市など。

反体制勢力の動き

地元調整諸委員会は「尊厳の不服従」と銘打って反体制ゼネストを呼びかけた。

SANA, February 5, 2012
SANA, February 5, 2012
SANA, February 5, 2012
SANA, February 5, 2012

ゼネストは、①2日間のゼネストを通じた市民的不服従、②経済的不服従の開始と配給協会の設置、③ダマスカスとアレッポでの不服従の準備、という3段階からなるという。

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シリア国民評議会は声明を出し、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、「制裁なしの殺人許可」と厳しく非難し、そのうえで国連総会の場で、国際社会の支持を獲得し、シリア国民を支援するための国際的連絡グループの結成をめざすとの新方針を示した。

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シリア・ムスリム同胞団は、ロシアと中国がアサド政権の殺戮に関与していると非難し、両国製品のボイコットを呼びかけた。

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シリア国家建設潮流は声明を出し、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、いかなる正当性もない、と厳しく非難した。

レバノンの動き

『ラアユ』(2月5日付)はヒズブッラーに近い消息筋の話として、「ヒズブッラーはたとえそれがイスラエルとの戦争を意味しようと、アサド政権の崩壊を許さないだろう」と報じた。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、「昨日安保理で起きたことは、吐き気がする」と述べた。

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フランスのニコラ・サルコジ大統領は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、安保理メンバー13カ国の支持にもかかわらず否決されたと激しい遺憾の意を示し、「フランスは降参しない…。欧州・アラブのパートナーと対話を続け、アラブ連盟イニシアチブの実施を国際社会が支持するための「シリア国民の友達」グループを発足する」と述べた。

一方、アラン・ジュペ外務大臣も「国際社会を麻痺させる」と非難した。

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シリア国内の反体制運動を煽動するカタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、「殺人の権利を与える」と批判した。

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在外反体制活動家に活動拠点を提供し、反体制運動を煽っているトルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して「冷戦の思考に依然としてとらわれている」と非難し、「ロシアと中国は現実を考慮せず、西側に対抗するために決議案を支持しなかった」と述べた。

またブレント・アリンジュ副首相は、レバノン政府がアサド政権を「一言」も批判していない、と不快感を示した。

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チュニジアのハマーディー・ジバーリー首相は、チュニスのシリア大使館を一時閉鎖すると発表、国際社会に対して、シリア大使を追放するよう呼びかけた。

これに対して、SANA(2月5日付)によると、チュニスのシリア大使館前でチュニジア人数百人がデモを行い、ジバーリー首相による大使館の一時閉鎖の決定に抗議した。

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国連の潘基文事務総長は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、「国連の役割を損なう」として大いなる懸念を表明した。

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ヨルダン・ムスリム同胞団のハマーム・サイード・アラブ最高監督者はロシア・中国製品のボイコットを呼びかけた。

AFP, Fabruary 5, 2012、Akhbar al-Sharq, February 5, 2012、al-Hayat, Fabruary 6, 2012、Kull-na Shuraka’, February 5, 2012、Naharnet.com, February 5, 2012、al-Ra’y, February 5, 2012、Reuters, Fabruary 5, 2012、SANA, February 5, 2012などをもとに作成。

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国連安保理対シリア決議案がロシアと中国の拒否権発動によって否決される一方、ヒムス市で実施された軍・治安部隊による大規模な掃討作戦により200人以上の市民が死亡(2012年2月4日)

国内の暴力:ヒムス市掃討など

シリアの複数の反体制勢力筋は、住民からの情報として、ヒムス県ヒムス市で3日晩から4日にかけて、軍・治安部隊による大規模な掃討作戦が行われ、200人以上の市民が殺害されたと発表した。

al-Hayat, February 5, 2012
al-Hayat, February 5, 2012
al-Hayat, February 5, 2012
al-Hayat, February 5, 2012

情報を発信しているのは、シリア人権監視団、シリア革命総合委員会、シリア国民評議会など西側諸国に滞在する反体制活動家が主導する人権団体や政治同盟で、発表する死者数は237人から260人と若干のズレがある。

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一方、シリアのアドナーン・マフムード情報大臣は、この事件が安保理での議論に影響を及ぼすことを狙ったものだと指摘した。

マフムード情報大臣は、「武装テロ集団がヒムス市の複数の街区に無差別に砲撃を行った…。一部煽動メディアが映像として流した遺体は、武装テロ集団が誘拐・殺害した一般市民で、その遺体が彼らが言うところの(軍・治安部隊による)砲撃の犠牲者だと見せかけるために撮影されたものだ。これは安保理での交渉にあたる一部の国の姿勢に影響を与え、武装テロ集団の犯罪や攻撃を隠蔽しようとするものだ」と述べた。

SANA(2月4日付)は、情報省筋が、ヒムス県ヒムス市への軍の砲撃に関する一部衛星放送の報道内容が偽りであり、報道が武装テロ集団とイスタンブール評議会(シリア国民評議会)の反体制キャンペーンの一環をなしていると述べたと報じた。

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シリア人権監視団によると、ヒムス県以外でも、ダマスカス郊外県ダーラーヤーで、会葬者に治安部隊が発砲し、12人が殺害された。

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一方、SANA(2月4日付)によると、ヒムス県カルアト・ヒスン市では、武装テロ集団の襲撃により治安維持部隊兵士3人が殺害された。

また同報道によると、イドリブ県では武装テロ集団の襲撃により治安維持部隊士官(大尉)1人が殺害された。

国連の動き

国連安保理での対シリア決議案は、ロシアと中国の拒否権発動によって否決された。

両国による拒否権発動は、ミュンヘンでの会談で、ヒラリー・クリントン米国務長官に対してロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣が求めた修正提案が満たされなかったため。

修正提案の内容の骨子は以下の通り。

1. シリア国内での暴力に関して、反体制勢力とアサド政権の双方の責任を等しく追求する。
2. 「シリア軍の都市部からの撤退」と合わせて、「武装集団」の都市部からの撤退を明記する。
3. アラブ連盟外相会合での決議(アサド大統領の権限の副大統領への移譲、挙国一致内閣の発足など)の「行程表に従った」実施を求めるとする文言を、「行程表に配慮する」と修正する。

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AFP(2月4日付)などは、安保理での対シリア決議をめぐる米露の外相会談で、クリントン校務長官は2月5日の安保理での採決への意思を伝えたが、これに対してラブロフ外務大臣は決議案の採決が安保理に「スキャンダル」をもたらすと応え、拒否の姿勢を示したと報じた。

またヴィタリー・チュルキン露国連代表大使は、決議案を提出・支持した国に関して、シリアの危機の平和的解決への「機会を奪う」と批判し、自国と中国の拒否権発動を正当化した。

SANA, February 4, 2012
SANA, February 4, 2012

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シリアのバッシャール・ジャアファリー代表大使はロシアと中国の拒否権発動を歓迎する一方、ヒムス市での市民殺害が政府による虐殺ではないと断じ、事件と合わせて行われた安保理の採決を「合理的でない」と非難した。

また安保理決議の共同作成・提出に参画した一部のアラブ諸国が、シリアの問題を国際問題化しようとしている、と批判した。

反体制勢力の動き

在外の反体制政治同盟、シリア国民評議会のアフマド・ラマダーン広報局長は『ハヤート』(2月5日付)に対して、共和国護衛隊、第4師団、第5師団などが、ヒムス県ヒムス市、同ラスタン市、ダマスカス郊外県ザバダーニー市、イドリブ県郊外、アレッポ県郊外に対する大規模な掃討作戦を計画している、と発表した。

ラマダーン氏はまた、「ロシアとイランがこの計画の詳細を熟知しており、我々は…ロシアが今やこの作戦に関与・参加しているとみなしている」と非難した。

また湾岸諸国が近く、シリア国民評議会をシリア国民の正当な代表として承認するだろうとの見方を示した。

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シリア国民評議会は声明を出し、国際社会に対して、「沈黙を破り、これ以上耐えることができないシリアでの流血停止のために行動する」よう呼びかけた。

Youtube
Youtube

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、ヒムスでの事件を「恐るべき虐殺」と強く非難し、国連とアラブ連盟に関して法的・人道的責任者を調査し、国際刑事裁判所に提訴するよう呼びかけた。

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アラビーヤ(2月4日付)は、カースィム・サアドッディーン空軍大佐が離反し、シリア自由解放軍への参加を宣言したと報じた。

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ヒムス市で反体制運動をビデオに収め、AFP、ジャズィーラ、CNNなどに配信していた「ウマル・スーリー」氏(本名マズハル・タイヤーラ氏、24歳)が2月4日にヒムス市内で殺害された。

反体制勢力による在外シリア大使館襲撃

クウェートのシリア大使館前では、在留シリア人ら数十人が反体制デモを行ったが、当局によって強制排除され、多数が逮捕された。

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サウジアラビアのジェッダ市でも、在留シリア人数十人が「ヒムス虐殺」に抗議するデモを行ったが、警官の到着とともに解散した。

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カイロでは、シリア大使館職員によると、反体制活動家数十人が大使館内に侵入し、設備のを破壊・放火した。

SANA, February 4, 2012
SANA, February 4, 2012
SANA, February 4, 2012
SANA, February 4, 2012

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ロンドンでは活動家約150人が金曜日の夜からシリア大使館前に集まり、抗議行動を行い、警察当局に5人が逮捕された。

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アテネでは活動家約50人がシリア大使館を襲撃し、壁に落書きをし、当局はシリア人12人とイラク人1人を逮捕した。

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ベルリンでは活動家約20人がシリア大使館を襲撃し、設備の一部を破損した。

アサド政権の動き

SANA(2月4日付)は、ダマスカス県サブウ・バフラート広場で、安保理でのロシア・中国による拒否権発動を支持する大規模集会が行われたと報じた。

レバノンの動き

LBC(2月4日付)などによると、レバノン国軍は、北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方ラーミー村で、シリア領内から潜入し、同地方を拠点としているとされる自由シリア軍兵士の大規模捜索活動を行った。

これに関して、ムスタクバル潮流のムフスィン・マルアビー議員は、「ミシェル・スライマーン大統領、ナジーブ・ミーカーティー首相、そしてジャーン・カフワジー国軍司令官に対するシリアの命令」によるものと断じた。

しかし『ハヤート』(2月5日付)によると、この捜索活動で自由シリア軍兵士は見つからなかった。

諸外国の動き

サウジアラビアのアブドゥッラー国王は声明を出し、シリア、エジプト、イエメン、リビアでの反体制運動による犠牲者を追悼し、2012年のジャンダリーヤ音楽祭を中止すると発表した。

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バラク・オバマ米大統領は、「(アサド大統領が)即時に去るべきだ…。国民に対する殺戮と犯罪を今止めるべきだ」と述べた。

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チュニジア大統領府は声明を出し、ヒムス市での事件に抗議するかたちで、在チュニス・シリア大使の追放、シリア現政府の承認撤回などを準備していることを明らかにした。

AFP, February 4, 2012、Akhbar al-Sharq, February 4, 2012、Alarabia.net, February 4, 2012、al-Hayat, February 5, 2012, February 9, 2012、Kull-na Shuraka’, February 4, 2012、LBC,
February 4, 2012、Naharnet.com, February 4, 2012、Reuters, February 4, 2012、SANA,
February 4, 2012。

(C)青山弘之All rights reserved.

各地で反体制・親体制デモが散発するなか、ガティロフ外務次官が修正された対シリア安保理決議案に関し「現状において支持できない」と表明(2012年2月3日)

国内の暴力と反体制・親体制デモ

シリア革命総合調整委員会、地元調整諸委員会などによると、各地で反体制デモが発生し、軍・治安部隊によって少なくとも33人が殺害された。

SNN, February 3, 2012
SNN, February 3, 2012

これらの反体制勢力によると、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、アレッポ県、ハサカ県(カーミシュリー市)、ヒムス県、イドリブ県、ハマー県、ダイル・ザウル県、ラタキア県でデモが発生したという。

これは、ハマー虐殺(1982年2月3日に掃討作戦開始)30周年に合わせて、シリア国民評議会、シリア革命総合委員会、地元調整諸委員会は共同声明を出し、「ハマーよ、済まない、我々を許してくれ」と銘打った反体制デモを呼びかけたことを受けた動きだと思われるが、デモの規模、継続時間などの事実確認はできず、ジャスィーラなどが煽動放送を通じて情報発信を続けたことなどから、反体制派のプロパガンダとみなすこともできる。

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シリア人権監視団によると、ダルアー県カフルシャムス町とナワー市で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、前者の士官1人を含む8人が殺害された。

またジャースィム市でも、軍・治安部隊と離反兵が交戦し、前者の兵士1人が殺害された。

なお、シリア革命総合委員会によると、ダルアー県での死者数は4人。

一方、SANA(2月3日付)によると、ジャースィム市で武装テロ集団が敷設した地雷が爆発し、ジャースィム小学校の壁が破壊された。

またナワー市では、武装テロ集団が治安維持部隊を襲撃し、後者の兵士5人が負傷した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、バサーミス村で軍・治安部隊によって青年1人が射殺された。

またバルユーン村では2月1日に逮捕されていた青年の遺体が発見された。

なお、シリア革命総合委員会によると、イドリブ県での死者数は2人。

一方、SANA(2月3日付)によると、カフルタハーリーム町では武装テロ集団がしかけた爆弾が爆発し、子供2人が死亡した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団にようと、ダーライヤー市で軍・治安部隊によって、市民2人が殺害された。

またランクース市でも、未明に市民2人が殺害された。

なお、シリア革命総合委員会によると、ダマスカス郊外県での死者数は5人。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市南部で発生した反体制デモに、治安部隊が発砲し、1人が死亡した。

一方、SANA(2月3日付)によると、ダール・カビーラ村で治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、後者のメンバー3人を殺害した。

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ダマスカス県では、ダマスカス県および郊外県調整(委員会)報道官のウサーマ・シャーミー氏によると、複数カ所で金曜礼拝後に反体制デモが発生し、カフルスーサ区では1,500人が参加したという。

またマイダーン地区、マッザ区、アサーリー地区、カダム区でも比較的大規模なデモが発生し、インターネット上にビデオ映像が配信されたが、『ハヤート』(2月4日付)はデモの発生の事実確認ができない、と付言した。

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アレッポ県では、軍を離反したマアムーン・クルズィー大尉を名のる人物が「アレッポ自由人大隊」の発足を宣言し、自由シリア軍の傘下でアレッポ市および郊外での活動を行うことを明らかにした。

シリア革命総合委員会によると、同県で市民3人が殺害された。

一方、「アフバール・シャルク」(2月3日付)は、アフリーン市で反体制デモを行った反体制活動家たちが、PKK系のクルド民族主義政党、民主統一党のメンバーによって攻撃を受け、40人が負傷したと報じた。

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ラッカ県では、シリア革命総合委員会によると市民1人が殺害された。

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ハマー県では、シリア革命総合委員会によると、市民2人が殺害された。

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SANA, February 3, 2012
SANA, February 3, 2012

SANA(2月3日付)によると、スワイダー県クライヤー町で、アサド政権の改革支持、外国の干渉拒否を訴える大規模集会が開かれた。

アサド政権の動き

AKI(2月3日付)は、バアス党が指導する連立与党の進歩国民戦線加盟政党のなかに、政党法に基づき結成が相次ぐ新党との連携を強めようとするバアス党との政治同盟の維持を疑問視し、バアス党との関係を再検討しようとする動きがある、と報じた。

同報道によると、バアス党と新党との連携関係においてもっとも顕著なのが、シリア共産主義者統一国民会議代表のカドリー・ジャミール氏やアリー・ハイダル氏が率いるシリア民族社会党(ハイダル派)の台頭で、カドリー氏はシリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会のメンバーを務める一方、次期首相候補の筆頭と噂されている。

なお進歩国民戦線には、シリア共産党バクダーシュ派、同ファイサル派、シリア民族社会党マハーイリー派など、こうした新党を「反主流派」とみなす政党が参加している。

反体制勢力の動き

AKI(2月3日付)は、民主的変革諸勢力国民調整委員会が、ロシアのシリア情勢への対応に抗議し、予定していたロシア訪問を延期すると在ダマスカス・ロシア大使に通達した、と報じた。

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自由のためのシリア芸術家創作家連合は声明を出し、ロシア国民に対して、「殺人許可の拒否権」に抗し、対シリア国連安保理決議を採択させるよう呼びかけた。

ロシアの動き

ロシアのインテルファクス(2月3日付)は、修正された対シリア安保理決議案に関して、ゲンナジイ・ガティロフ外務次官が、モスクワが表明した懸念を考慮したかたちでの修正にもかかわらず、ロシアは安保理決議案を支持できないと述べた、と報じた。

同通信社によると、ガティロフ外務次官は「(決議案を)受け取った。我々の懸念が…考慮されている。しかし我々にとってこれでは不充分で、現状において支持できない」と述べたという。

AFP, February 3, 2012、AKI, February 3, 2012、Akhbar al-Sharq, February 3, 2012、Alarabia.net, February 3, 2012、al-Hayat, February 4, 2012、Kull-na Shuraka’, February 3, 2012、Reuters, February 3, 2012、SANA, February 3, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

ロシアを除く安保理メンバー14か国のコンセンサスに基づく対シリア修正決議案が完成、その内容は西側諸国や一部アラブ諸国による圧力が事実上無力化されたもの(2012年2月2日)

国連の動き

対シリア決議案に関する国連安保理の非公式会合が続き、ロシアの要求に応じるかたちで、アサド政権への制裁や政権交代、外国の軍事干渉の根拠となる可能性のある文言が修正され、『ハヤート』(2月3日付)によると、安保理メンバー14カ国(ロシアを除く)のコンセンサスに基づく決議案が完成した。

修正決議案は、アラブ連盟の行程表への安保理の支持に関して、「歓迎する」とするか「全面支持する」とするかなど、若干の文言の最終調整が行われるとのこと。

ロシアに近い安保理メンバーの大使によると、中国もこの修正決議案に賛成している、という。

『ハヤート』(2月3日付)によると、修正決議案における主な修正カ所は以下の通り。

1. 「アラブ連盟のイニシアチブ」という文言を「民主的多元的政治体制をもたらすため…、シリア政府とすべての反体制勢力との間の真剣な政治的対話開始など、政治的転換を促すためアラブ連盟が行った決定」に変更。
2. 「挙国一致内閣発足、大統領権限の副大統領への完全なる移譲、自由で透明性のある選挙の実施」といった具体的なプロセスに関する文言を削除。
3. 11月のアラブ連盟による対シリア制裁への同調を求める文言を削除。
4. 「アラブ連盟との協議のためのモスクワでの会合をロシアが提案した」との文言を付記。
5. 「現下のシリアの政治的危機を外国の軍事的介入なしに平和的に解決することへの意思を確認する」との文言を付記。
6. 「シリア政府が改革を宣言したが、その実施に進展が見られていないことへの遺憾の意を示す」との文言の付記。

修正内容は、西側諸国や一部アラブ諸国による圧力を事実上無力化したものとなっている。

国内の暴力

シリア人権監視団によると、ダルアー県、イドリブ県、ダマスカス郊外県で軍・治安部隊による掃討作戦が続いたが、国連を通じた西側のアサド政権バッシングの不調を受け、反体制勢力や一部衛星放送による宣伝・煽動も低調だった。

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ダルアー県では、シリア人権監視団、地元調整諸委員会によると、ジーザ町に軍・治安部隊が侵入し、多数の市民が負傷した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市で10人の兵士が離反し、軍・治安部隊と交戦した。

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シリア人権監視団は、ダマスカス郊外県ムウダミーヤト・シャーム市で軍・治安部隊が反体制活動家のナースィル・ムハンマド・サイード・サギール氏を身柄拘束したのち処刑し、自宅前に遺体を曝した、と発表した。

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一方、ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハーフィズ・アサド前政権によるハマー市でのシリア・ムスリム同胞団掃討作戦(ハマー虐殺)開始(1982年2月3日)30周年を翌日に控え、ハマー市でゼネストが行われた。

アサド政権の動き

『クッルナー・シュラカー』(2月2日付)は、ダマスカス県内で灯油を購入するため長蛇の列を作る市民の写真を公開した。

Kull-na Shurakā’, February 2, 2012
Kull-na Shuraka’, February 2, 2012
Kull-na Shurakā’, February 2, 2012
Kull-na Shuraka’, February 2, 2012

アラブ連盟の動き

アラブ連盟監視団のムハンマド・アフマド・ムスタファー・ダービー団長がカイロで記者会見を開き、監視団の活動に「満足」しているとの所見を述べる一方、「一部のメディアが真実をゆがめた」と指摘、ジャズィーラやアラビーヤによる煽動放送を暗に批判した。

レバノンの動き

NNA(2月2日付)は、ダマスカス・ベイルート街道に位置する対シリア国境のマスナア市で、4人の銃をもった男たちが、シリア人ビジネスマンのムハンマド・ジャービー氏を誘拐したと報じた。

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NNA(2月2日付)は、シリアのダマスカス郊外県とレバノンのベカーア県が治安・軍事分科会を開催し、両県の国境監視、武器密輸などについて意見を交わしたと報じた。

諸外国の動き

SANA, February 2, 2012
SANA, February 2, 2012

ロシアの複数の通信社が伝えたところによると、ロシアのアナトリー・アントノフ国防次官は、「今日まで、武器売却に関していかなる制限もない」と述べ、シリアへの武器供与を継続するとのロシアの意思を改めて示した。

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トルコのアブドゥッラー・ギュル大統領は、アサド大統領が退任した場合、同大統領とその家族を受け入れる用意がある、と述べた。

AFP, February 2, 2012、Akhbar al-Sharq, February 2, 2012、al-Hayat, February 3, 2012、Kull-na Shuraka’, February 2, 2012、Naharnet.com, February 2, 2012、NNA, February 2, 2012、Reuters, February 2, 2012、SANA, February 2, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

カタールのブン・ジャースィム首相が安保理諸国代表らと相次いで会談し、西側諸国と一部アラブ諸国による対シリア安保理決議案への支持を改めて求める(2012年2月1日)

国連の動き

アサド政権バッシングの急先鋒であるカタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は、ニューヨークで安保理諸国代表らと相次いで会談し、西側諸国と一部アラブ諸国による対シリア安保理決議案への支持を求めた。

また同首相は、シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長と会談し、政権との対話を求めるロシアの提案の受理の可能性を探った。

アラブ外交筋は、ロシアだけでなく中国の棄権を避けるため、中国とロシアの孤立化を避けるべく配慮を続けている、という。

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安保理は大使級の非公式会合を行い、対シリア安保理決議案に関する審議を続けた。

『ハヤート』(2月2日付)によると、焦点は、アラブ連盟外相会合決議支持にロシアが同意する「見返り」として、アサド政権との対話をシリア国民評議会に同意させられるか否かに集中したという。

これに関して、ガルユーン事務局長は『ハヤート』(2月3日付掲載予定のインタビュー)に対して、「ロシアが決議案を通過させ、拒否権を行使しない用意があるのなら、政府との交渉の関を持ってもよい」と述べた。

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ロシアのヴィタリー・チュルキン国連代表大使は、安保理決議案に関して、「安保理の権限は政権交代を呼びかけるものではない。特定の国家にレシピを提示することが安保理の任務ではない」と消極的な評価を行った。

複数の消息筋によると、ロシアは決議案が「別の措置」という文言が武力行使の可能性を完全に排除していないことに異議を唱えているという。

ロシアのインテルファクス(2月1日付)は、ロシアのゲンナジイ・ガティロフ外務次官が、安保理決議案に関して、「シリアへの制裁や、力の行使を許すような文言を依然として含んでいる」ため、受け入れることができないと述べた、と伝えた。

国内の暴力

ロンドンを拠点とするシリア人権監視団によると、ダマスカス郊外県、ヒムス県、ダルアー県なで軍・治安部隊と離反兵の戦闘で、兵士15人、離反兵6人、民間人38人など約60人が死亡した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊が「奪還」したダマスカス郊外県のザマルカー町、アルバイン市、ランクース市などでは離反兵などの掃討作戦が続いている。

またバラダー渓谷で、兵士約30人が離反、軍・治安部隊との戦闘で女性1人を含む民間人21人が死亡した。

一方、SANA(2月1日付)は、バスィーマ地方での武装テロ集団との交戦で、ラージフ・マフムード准将、マーリン・アフマド曹長ら4人が戦死、6人が負傷したと報じた。

またアルバイン市などで武装テロ集団メンバーを逮捕、大量の武器弾薬を押収したという。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、離反兵との衝突で軍・治安部隊兵士15人が殺害された。また少なくとも民間人8人が死亡した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ガーリヤ村東部で軍・治安部隊の掃討作戦で、市民5人が殺害された。

またナワー市、ムサイフラ町、ダーイル町、ヒルバト・ガザーラ町などでも軍・治安部隊の掃討作戦が行われた。

一方、SANA(2月1日付)は、ダルアー市郊外で武装テロ集団の襲撃を受けた軍・治安部隊が11人のテロリストを殺害したと報じた。しかしこの戦闘で大尉1人が戦死、軍・治安部隊2人が負傷したという。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、イドリブ市で市民1人が狙撃兵に射殺された。

またラーミー村で兵士20人が離反したという。

このほかイブリーン村で離反兵が軍・治安部隊の車輌を爆破した。死者数は不明だという。

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SANA(2月1日付)によると、ハマー県ガーブ地方で治安維持部隊が武装テロ集団の襲撃を受け、兵士1人が戦死した。

アサド政権の動き

レバノンのタウヒード潮流のウィアーム・ワッハーブ代表(ドゥルーズ派)がダマスカスを訪問し、アサド大統領と会談した。

Kull-na Shurakā’, February 1, 2012
Kull-na Shuraka’, February 1, 2012

『ナハールネット』(2月1日付)によると、3時間にわたる会談で、アサド大統領はレバノンの国内の安定に強い関心をよせ、そのことがシリア領内に良いインパクトを与えることを強調した。

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Elaph.com(2月1日付)は、ダマスカスの複数の消息筋から得た情報とした、大統領の弟マーヒル・アサド大佐と義兄アースィフ・シャウカト副参謀長(中将)の家族が脅迫を受け、両氏の子供たちが通うバシャーイル学校(マッザ区)の警備が強化されたと報じた。

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SANA(2月1日付)によると、アレッポ県アレッポ市マルジャ広場でアサド政権の改革支持、内政干渉拒否を訴える集会が開催された。

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「アフバール・シャルク」(2月1日付)は、政府がシャッビーハに弾圧の報酬を偽札で支払っていることが発覚したと報じた。

またSANA(2月1日付)は、シリア中央銀行のアディーブ・マイヤーラ総裁が「大量の偽札が違法なルートで国内市場に入っており、国民経済に打撃を与えようとしている」と警鐘を鳴らした。

反体制勢力の動き

Akhbar al-Sharq, February 1, 2012
Akhbar al-Sharq, February 1, 2012

『クッルナー・シュラカー』(2月1日付)は、ロシアによるアサド政権と反体制勢力の対話提案への反体制勢力各勢力の反応を報じた。

それによると、シリア国民評議会、民主変革諸勢力国民調整委員会、シリア国家建設潮流はアサド大統領退任前の政府との対話を原則拒否しているという。

またシリア・クルド国民評議会は、対話によって一部の反体制勢力がシリアの将来を独断的に決定することへの懸念を示し、クルド問題への対処の必要を強調した。

レバノンの動き

3月14日勢力はシリア国民評議会の公開書簡に対する回答を書簡で発表し、「シリアにおける民主的変革は同国発展の歴史的な機会となり、レバノンの独立を保障する」と述べ、支持を表明した。

諸外国の動き

イランの最高指導者アリー・ハーメネイー師がシリア情勢に関して初の声明を出し、米国による「干渉」に警鐘を鳴らすとともに、アサド政権の改革を支持するよう呼びかけた。

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「アフバール・シャルク」(2月1日付)は、国連人権高等弁務官事務所の高官がヨルダン政府からのシリア人避難民を受け入れるためのキャンプ設営などに関する同意を待っていると述べたと報じた。

AFP, February 1, 2012、Akhbar al-Sharq, February 1, 2012、Elaph.com, February 1, 2012、al-Hayat, February 2, 2012、Kull-na Shuraka’, February 1, 2012、Naharnet, February
1, 2012、Reuters, February 1, 2012、SANA, February 1, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

安保理で西側および一部アラブ諸国が共同で提出した対シリア制裁決議案が審議されるなか、シリア当局は「(シリアの)主権を侵害したあからさまな内政干渉」を非難(2012年1月31日)

SANA, January 31, 2012
SANA, January 31, 2012

国連の動き

西側および一部アラブ諸国が共同で提出した対シリア制裁決議案が安保理で審議された。

『ハヤート』(2月1日付)が入手した対シリア安保理決議案の骨子は以下の通り。

1. アラブ連盟イニシアチブ(行程表)への完全なる支持の表明。
2. 挙国一致内閣の発足。
3. 大統領権限の副大統領への移譲と、同副大統領による移行期間における挙国一致内閣への強力。
4. アラブ連盟の監視下での自由で透明性のある選挙の実施。
5. 国連加盟国への安保理によるアラブ連盟の対シリア経済決議と同様の措置の奨励。
6. シリア政府が15日以内に決議に従わない場合、アラブ連盟と協議のもと追加措置を検討。
7. シリア政府による人権侵害への非難。
8. シリア政府への暴力停止の呼びかけ。
9. 武装集団を含むすべての当事者による暴力停止の要求。
10. 人権侵害の責任者への制裁。
11. シリア政府への政治犯釈放、軍の都市部からの撤退、アラブ連盟監視団など地域・国際機関の自由な活動保障の要求。

審議には、カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣(アラブ連盟シリア問題閣僚委員会委員長)、ヒラリー・クリントン米国務長官、ウィリアム・ヘイグ英外務大臣、アラン・ジュペ外務大臣らが出席した。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は『ハヤート』(2月1日付)に対して、安保理会合で各国代表らに回付した自身の書簡が、「アラブ連盟の決議を支持する安保理声明を採択することで、アサド政権と反体制勢力の双方に圧力をかけようとしている連盟を支援すること」、「暴力の停止と治安措置に基づく問題解決の拒否の必要の強調」を骨子としていると語った。

またアラビー事務総長はカタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣(シリア問題閣僚委員会議長)とともにロシアのヴィタリー・チュルキン国連大使、中国の李保东国連大使と会談した。

アラビー事務総長によると、いずれの大使との会談も、決議案に関して「開放的」に対話が行われたという。

また事務局長によると、ロシアが決議案を支持するか否かは「アラブ連盟の行程表をどのように受け入れるか」、すななわち1月22日の連盟外相会合の決議の「政治的解決の達成と治安措置に基づく解決の拒否」という考え方をど捉えるかにかかっているという。

一方、シリアの反対勢力に関しては、「安保理に問題が付託されれば、魔法の杖になる」という「幻想」に陥らないよう警鐘をならした。

そのうえで、「アラブ連盟がめざしているのが、政治プロセスを通じた政治的・国民的和解への到達であり、それによってシリア国民の意思を実現することにある」と述べた。

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『ハヤート』(2月1日付)によると、中国、インド、パキスタンは、アラブ連盟との対立を望ましいとは考えておらず、安保理決議案に関して比較的柔軟だという。

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『ハヤート』(2月1日付Iによると、ロシアのチェルキン代表は、安保理での審議に先立って、「(目標を)明確に設定しないかたちでの政治的移行プロセス」をじっくり支持していく必要があると語り、対リビア安保理決議で「西側に欺かれた」ことを教訓に慎重な姿勢をとっている。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は、「弾圧にもかかわらず、恐怖に基づくアサド現政権はいずれ終わり、シリア国民が自らの運命を描きだすだろう…。国際社会は意見対立を払拭し、シリア国民を支持するという明確なメッセージを送る時が来た」と述べ、アラブ連盟のイニシアチブへの支持を表明した。

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SANA(1月31日付)によると、国連安保理会合で、シリアのバッシャール・ジャアファリー常駐代表は、シリアがアラブ連盟の行動計画(11月1日にシリア政府と連盟閣僚委員会が合意)および連盟監視団派遣に関する議定書を逸脱したいかなる決議をも拒否すると述べたうえで、1月22日の連盟外相会合の決議(副大統領への権限移譲、挙国一致内閣発足などが骨子)をシリアの「主権を侵害したあからさまな内政干渉」だと非難、連盟憲章に違反しており無効だと訴えた。

またシリアが監視団の活動延長に合意したにもかかわらず、アラビー事務総長とカタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣が問題を国連に付託しようとしたことを「驚くべき矛盾」と非難した。

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国連の潘基文事務総長は、訪問先のアンマンでの記者会見で、安保理での対シリア決議案に関して、「安保理会合が国際社会の要請に応じたかたちで早急に成果を得ることを望む」と述べ、バランスを欠く西側諸国依りの姿勢を改めて明示した。

国内の暴力

複数の目撃者・活動家によると、軍・治安部隊は、離反兵(自由シリア軍)が撤退したダマスカス郊外県グータ地方東部(ランクース市など)や、ヒムス県(ヒムス市、ラスタン市など)、イドリブ県(サラーキブ市)など各地で大規模な治安回復作戦を継続し、住宅地に向かって激しい「砲撃」を加え、数十人が死傷したという。

またダルアー県では、複数の活動家によると、デモ参加者の葬儀に参列した数千人が反体制デモを行ったという。

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ヒムス県では、SANA(1月31日付)によると、ヒムス市バーブ・アムル地区で精油所に原油を送るための石油パイプラインを武装テロ集団が爆破した。

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『クッルナー・シュラカー』(1月31日付)は、ムスタファー・トゥラース元国防大臣の次男でアサド大統領の友人の一人であるマナーフ・トゥラース准将が殺害されたと報じた。

事実関係に関しての詳細は報じられていない。

SANA, January 31, 2012
SANA, January 31, 2012

アサド政権の動き

SANA(1月31日付)は、アサド大統領がダマスカス県にある殉教者ユースフ・アズマ病院を訪問し、軍・治安部隊の負傷者を見舞ったと報じた。

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『シリア・ステップス』(1月31日付)は、バアス党高官の話として、2月に予定されていたバアス党第11回シリア地域大会が治安状況を理由に延期される見込みだと報じた。

反体制勢力の動き

トルコで避難生活を送る自由シリア軍の司令官リヤード・アスアド大佐は、AFP(1月31日付)の電話取材に対して、軍・治安部隊の大規模掃討作戦に関して「悪党の戦争」と非難する一方、「国土の50%はもはや体制の支配下にない」と誇張した。

しかし「このことは自由シリア軍がいずれかの地域を完全に制圧したことを意味してない」と付言し、その勢力が自らのプロパガンダほど強力でないことを暗に認めた。

一方、自由シリア軍が、イドリブ県のジスル・シュグール市やマアッラト・ヌウマーン市などにある軍・治安部隊の検問所や車輌を標的としていると述べた。

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国連安保理会合に合わせてニューヨークを訪れたシリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は、ロシアのチェルキン代表と会談した。

このほか、ジェフリー・フェルトマン米国務次官補とも会談した。

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民主的変革諸勢力国民調整員会在外事務局のハイサム・マンナーア代表は、『ハヤート』(2月1日付)に対して、「ロシア的な解決策は5月であれば受け入れられたが、今は遅すぎるし、実質的でなく、受け入れられない」と述べた。

また、「安保理で採決されることはないだろう。なぜなら今日(31日)に採決してしまえば、彼ら(西側)の計略は破綻するから」と述べるとともに、「ロシアはシリア政府にアラブ連盟のイニシアチブを強いることができる唯一の当事者」と位置づけたうえで、「アラブとロシアの対話を求める」と述べ、国連主導ではなく、アラブ連盟主導による問題解決への支持を表明した。

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シリア・ムスリム同胞団のリヤード・シャカファ最高監督者は、トルコのアナトリア通信(1月31日付)に対して、ロシアが提案しているアサド政権との対話を拒否するとの意思を明示した。

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パリで亡命生活をしているアブドゥルハリーム・ハッダーム前副大統領は書簡を発表し、米英仏独、および国連事務総長に対して、「シリア救済のための国際的・軍事的連合の結成」を呼びかけるとともに、アサド大統領が「犯罪行為を通じて国を宗派主義的内戦へと追いやり、アラウィー派の国家を作ろうとしている」と警鐘を鳴らした。

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シリア革命調整連合は、「住宅地区保護地元青年諸委員会」の発足を呼びかけた。

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シリア国民評議会は、地元調整諸委員会など反体制勢力とともに、「アサドの専制体制による野蛮な虐殺への犠牲に対する怒りと追悼の日」と宣言し、モスクや教会に服喪を呼びかけた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、オーストラリアのABCチャンネル(1月31日付)に対して、「アサド大統領が政権にとどまることを危機解決の条件としたことなど一度も行ったことはない。我々は解決策がシリア的なものでなければならず、シリアのすべての当事者・集団が対話のテーブルに着いて、誰が去り、誰が来るのかを決めるために合意せねばならないと言ってきた」と述べ、対話に応じようとしない反体制勢力の姿勢を「正しくなく挑発的でよい結果をもたらさない」と批判した。

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ジェームズ・クラッパー米国家情報長官は、アサド政権の崩壊は必然的だと述べた。

しかし同長官は、アサド政権による「シリアの支配が続くとは思わない…。個人的には、時間の問題だと思う。しかし問題なのは長い時間がかかるかもしれないということだ」と付言し、同政権を打倒することが容易でないことを暗に認めた。

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サウジアラビア紙『マディーナ』(1月31日付)は、サルマーン・アンズィーを名のるサウジ人ハッカーがアサド大統領や主要各省のE-mailアカウントをハッキングし、大統領および関係者のスキャンダルを入手したと脅迫している、と報じた。

一国の長であるアサド大統領自身がE-mailで高官と連絡をとり合っているとは到底考えられない。

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アラブ連盟監視団を脱退したアルジェリア人のアンワル・マーリク氏はパリで記者会見を行い、「アースィフ・シャウカトが「監視カメラがなかったら、15分ですべてを終わらせる用意がある」と言った」と述べた。

むろん、シャウカト中将がこのような発言したという証拠はない。

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シリア・パレスチナ国民委員会は、パレスチナ解放軍(ターリク・ハドラー司令官)がシリアの反体制運動弾圧に参加している、と発表した。

AFP, January 31, 2012、Akhbar al-Sharq, January 31, 2012, February 5, 2012、AKI, January 31, 2012、al-Hayat, February 1, 2012、al-Madina, January 31, 2012、Kull-na Shuraka’, January 31, 2012、Reuters, January
31, 2012、SANA, January 31, 2012、Syria Steps, January 31, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

軍・治安部隊が自由シリア軍が制圧していたとされるダマスカス郊外県の各都市を奪還、一方アラブ連盟事務総長はロシアと中国に対し同連盟の行程表を支持するよう求める(2012年1月30日)

国内の暴力

『ハヤート』(1月31日付)は、数日前から自由シリア軍を名のる離反兵が制圧(占拠)していたとされるダマスカス郊外グータ地方東部の県各都市を、軍・治安部隊が奪還したと報じた。

SANA, January 30, 2012
SANA, January 30, 2012
SANA, January 30, 2012
SANA, January 30, 2012

軍・治安部隊が奪還した(ないしは現在も包囲中である)のは、サクバー市、ランクース市、ムウダミーヤト・シャーム市、ハムーリーヤ市、カフルバトナー町、アルバイン市、ドゥーマー市、ハラスター市など。

シリア革命総合委員会によると、ダマスカス郊外県は、戦車、装甲車などを動員した軍・治安部隊の侵入により「被災地区」と化している、という。

シリア人権監視団によると、軍部隊は6日間にわたる包囲のち、ランクース市に侵入し…、離反兵は同市から撤退した」。

ダマスカス県およびダマスカス郊外県革命調整連合の報道官によると、「自由シリア軍は所持している武器で戦車に応戦することはできない。しかし戦車はメインストリートに侵入しただけだ。しかも、自由シリア軍の攻撃でそこから出られなくなっている」と述べた。

AFP(1月30日付)がシリア軍兵士の話として伝えたところによると、ハラスター市、ドゥーマー市、サクバー市につながる道はすべて閉鎖されている。

一方、SANA(1月30日付)によると、内務省は声明を出し、過去3日にわたってドゥーマー市、ハラスター市、サクバー市、ハムーリーヤ氏、カフルバトナー町で武装テロ集団に対する掃討作戦を実行したと発表した。

同声明によると、関係機関は米国・イスラエル製の武器で攻撃を行う武装テロ集団を整髪し、多数のテロリストを逮捕したほか、同集団が使用していた隠れ家を発見、大量の武器、弾薬、爆発物を押収した。

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ヒムス県では、シリア革命総合委員会によると、ヒムス市バーブ・アムル地区などでも軍・治安部隊と離反兵の激しい戦闘があり、各地での犠牲者数は50人にのぼった。

またシリア人権監視団によると、ヒムス市で医師が暗殺されるなど17人が死亡した。

一方、SANA(1月30日付)によると、タッルカラフ地方でヒムス県とタルトゥース県バーニヤース市を結ぶガス・パイプラインが武装テロ集団によって爆破され、460,000立方メートルのガスが焼失した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、フラーク市で治安部隊のバスが離反兵に襲撃され、6人が殺害された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アウラム・ジャウズ村・カフルナブル市付近で軍・治安部隊と離反兵が激しい戦闘を行った。

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『クッルナー・シュラカー』(1月30日付)によると、ハサカ県ダルバースィーヤ市でロシアのアサド政権支持に反対するデモが発生した。

アサド政権の動き

SANA(1月30日付)は、ラッカ県および近隣アラブ諸国の部族代表が大会を開き、シリアに対する陰謀、テロ行為、経済制裁に抗議したと報じた。

反体制勢力の動き

Akhbar al-Sharq, January 30, 2012
Akhbar al-Sharq, January 30, 2012

シリア人権擁護連盟は、自由シリア軍の初代司令官フサイン・ハルムーシュ大佐が先週処刑されたと発表した。

同連盟の声明および『クッルナー・シュラカー』(1月28日付)がインターネットサイトから得た情報によると、ハルムーシュ大佐はダマスカス県マッザ航空基地の空軍情報部調査課での裁判で有罪判決を受け、処刑された、という。

しかし自由シリア将校運動(フサイン・ハルムーシュ大佐ら離反兵が当初名のっていた組織名)は、この発表に関して「大佐の処刑に関する事実確認がとれていない」との声明を出した。

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ダマスカス郊外県での軍・治安部隊の攻勢が強まるなか、トルコで避難生活を送る自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐はジャズィーラ(1月30日付)の電話取材に応じ、「バッシャール・アサド大隊」の士気は衰退を始め、政府から悪党たちは去り始めた」と述べ、そのことがダマスカス郊外県に対する軍・治安部隊の「無差別攻撃」をもたらした、とのコメントをした。

またシリア革命広報局メンバーを名のるアラーッディーン・ユースフ氏もジャズィーラ(1月30日付)に対して、同様の発言を行った。

一方、自由シリア軍のリヤード・ヌアイミー大佐(トルコ在住)はAFP(1月30日付)に対して、「自由シリア軍からの情報・報告によると、ダマスカス県8キロの地点でも大規模な離反と戦闘が行い、そのことはダマスカスに戦闘が近づいたことを示している」と述べた。

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フェイスブックによると、リヤード・トゥルク弁護士と並ぶシリア人民民主党の重鎮アフマド・ファーイズ・ファウワーズ氏が、民主的変革諸勢力国民調整委員会からの脱会を宣言した。

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『クッルナー・シュラカー』(1月30日付)は、ダルアー県ムフティーでウマリー・モスクのイマームでもあるアフマド・スィヤースィナ氏がヨルダンに避難し、反体制運動に加わったと報じた。

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シリア人権擁護連盟は声明を出し、2011年3月からの反体制運動発生から1月23日までの犠牲者数が6,729人に上ったと発表した。

同声明によると、このうち456人が子供、316人が女性、724人が離反兵だという。

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シリア・クルド民主変革運動、民主改革党、団結党、および無所属の活動家が新たな政治同盟、シリア選択潮流を発足した。

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国内で反体制活動を行う人民意思党のカドリー・ジャミール党首は声明を出し、アサド政権と反体制勢力の対話を提案したロシアの動きを歓迎した。

レバノンの動き

3月14日勢力の指導者の一人でレバノン・カターイブ党最高党首のアミーン・ジュマイイル前大統領は記者会見を開き、シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長を含む複数のシリア人高官と接触し、レバノン内戦中などにシリア国内で失踪したレバノン人に関する情報を収集していることを明らかにした。

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3月14日勢力に属するレバノン軍団は、ナジーブ・ミーカーティー内閣に対して、最近シリアで失踪したレバノン人の行方を調査するよう求めた。

アラブ連盟の動き

アラブ連盟のアフマド・ベンフッリー事務副長は、2月5日にシリア問題に関する閣僚委員会(ハマド・ブン・ジャースィム・カタール首相兼外務大臣が議長)が開催され、国連安保理の審議に出席予定のハマド首相兼外務大臣とナビール・アラビー事務総長の任務内容と、連盟監視団の今後の活動について審議すると発表した。

アラビー事務総長はカイロで、ロシアと中国に対して、西側および一部アラブ諸国が共同作成した決議案とアラブ連盟の行程表を支持するよう求めた。

アラブ連盟監視団のムハンマド・アフマド・ムスタファー・ダービー団長は『ハヤート』(1月30日付)の電話取材に応じ、「シリアの反体制勢力には満足できない。彼らは我々に活動して欲しいと思っていない。なぜならこの問題を安保理に付託し、体制を崩壊させようしているからだ」と批判した。

その一方で、シリア政府が最近の治安状況の悪化を、「あらゆる暴力の停止」を求める連盟議定書の文言を乱用した結果だと非難した。

一方、監視団の活動に関しては、「我々は誠実さと透明性をもって活動した」と述べた。

諸外国の動き

ロシア外務省は、アサド政権と反体制勢力の双方に対して、事態収拾のための「非公式対話」を呼びかけ、アサド政権が前向きな姿勢を示していると発表した。

しかし、シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は、ロシアがアサド政権と反体制勢力の「非公式対話」の実施を呼びかけてていることに関して、アサド大統領が退任するまではいかなる対話をも拒否するとの姿勢を示した。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は、アサド政権による攻撃を改めて厳しく批判するとともに、安保理に対して「国際社会がこのような行為を平和と安全を脅かすものとみなしていることをシリア政府に明確に理解させるべく行動しなければならない」と述べた。

またスーザン・ライス米国連大使は、米国が「アラブ連盟の行程表を完全に支持し、承認する」と述べた。

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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、アフリカ連合サミットに出席するために訪問中のアジスアベバで、シリアの危機は、政治的対話を通じて解決されるべきと述べるとともに、政治改革には時間が必要だと述べ、憲法改正などアサド政権が一連の改革プログラムを約束していると強調、それをそれを支持するとの姿勢を示した。

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フランス外務省報道官は、アラン・ジュペ外務大臣がシリア問題に関する決議案の審議のための安保理会合に出席するために米国に発ったと発表するとともに、「シリアの政府は去らねばならない」と改めて表明した。

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イスラーム諸国会議機構のエクメレッディン・イフサンオール事務局長は、AFP(1月30日付)に対して、国連安保理がシリアの民間人保護のための責任を果たし、流血停止のための措置を講じるべきだと述べた。

AFP, January 30, 2012、Akhbar al-Sharq, January 30, 2012、AKI, January 30, 2012、BBC, January 30, 2012、al-Hayat, January 31, 2012、Kull-na Shuraka’, January 28, 2012、January 30, 2012, February 1, 2012、Naharnet.com, January 30, 2012、Reuters, January 30, 2012、SANA, January 30, 2012、などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

シリア・クルド国民大会がエルビル市で開催、「自由シリア青年」を名のる集団が声明を出しシーア派宗徒に反体制運動に参加するよう呼びかけ(2012年1月29日)

国内の暴力

シリア人権監視団およびシリア革命総合委員会によると、ダマスカス郊外県、ダルアー県、ヒムス県、ハマー県などの各地で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、民間人および双方に60人以上の死者が出た。

Ugarit News Network, January 29, 2012
Ugarit News Network, January 29, 2012

シリア人権監視団によると、イドリブ県、ダルアー県、ヒムス県、ダマスカス郊外県、ハマー県、ダマスカス県ジャウバル区で民間人26人が死亡、ダマスカス郊外県、イドリブ県、ハマー県、ヒムス県で離反兵9人が死亡、イドリブ県、ダマスカス郊外県で軍兵士26人が死亡、ダマスカス郊外県ザバダーニー市、イドリブ県で治安部隊兵士5人が死亡したという。

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ダマスカス郊外県グータ東部では、複数の活動家によると、約2,000人の兵士、戦車・装甲車約50輌が、自由シリア軍を名のる離反兵が占拠するサクバー市、ハムーリーヤ市、カフルバトナー町、ランクーサ市の解放のために動員され、各市を包囲し、一部都市ではライフラインが遮断され、モスクが野戦病院化するなど、「市街戦」の様相を呈している、という。

自由シリア軍のマーヒル・ヌアイミー少佐によると、「体制の激しい攻撃は前例がないほど」と述べる一方、ジスリーン町、アイン・タルマー村、ハムーリーヤ市、サクバー市、ハラスター市、ドゥーマー市、フタイタト・トゥルクマーン市で軍兵士の離反が相次いでいると述べた。

また『クッルナー・シュラカー』(1月29日付)は、アドラー中央刑務所で27日から連日連夜、反体制運動に参加して逮捕された政治犯の釈放を求めるデモが発生していると報じた。

一方、SANA(1月29日付)によると、サフナーヤー市近郊で武装テロ集団が軍部隊に対して爆弾攻撃を行い、中尉2人を含む兵士6人が死亡した。

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ヒムス県では、『ハヤート』(1月30日付)などによると、ラスタン市では前日に引き続き、軍・治安部隊と離反兵との間で激しい戦闘が続いた。

またNNA(1月29日付)は、地元住民などの話として、タッルカラフ地方の対レバノン国境に架かるジャアファリーヤ橋で、レバノン人2人、シリア人1人が殺害され、シリア人2人が負傷したと報じた。

一方、OTV(1月29日付)は、「イラク人に率いられたレバノン人9人からなる武装集団がシリアに潜入し…、待ち伏せしていたシリア軍の攻撃により、メンバー4人が殺害され、複数が負傷した」と報じた。

他方、SANA(1月29日付)は、武装テロ集団がヒムス市農業局に勤務する技師アマル・イーサー女史の車を襲撃し、暗殺したと報じた。

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イドリブ県では、SANA(1月29日付)によると、バルユーン・カムサフラ街道で、武装テロ集団が治安維持部隊に爆弾攻撃を行い、准将1人と兵士1人が負傷した。

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アレッポ県では、複数の反体制活動家によると、アレッポ市東部、とりわけマルジャ地区で厳戒態勢が強化され、地区ごとに検問所が設置された。

アサド政権の動き

シリア暴力テロ犠牲者遺族監視団は、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長による監視団活動停止の発表に関して、「イスタンブール評議会(シリア国民評議会)と武装集団にシリアに対する犯罪行為激化の青信号を出した」に等しいと厳しく非難した。

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SANA(1月29日付)によると、政党問題員会は会合を開き、自由シリア党、祖国シリア党の2党の公認申請を受理することを決定した。

反体制運動の動き

シリア・クルド国民大会がイラクのクルディスタン自治政府の支援のもと、エルビル市で2日にわたって開催された。

同大会には西側諸国など25カ国で暮らすシリア・クルド人活動家約210人が出席し、国内外のシリア・クルド人の運動の統合と反体制デモ支持について議論した。

しかし、現下のシリア国内の危機的状況への対処の仕方、シリア国内のクルド人の将来の処遇に関して、改めて意見の相違が露呈した。

AFP(1月30日付)によると、同大会書記長のジャワード・ムッラー氏は、国際社会の内政干渉に関して、「サッダーム・フセインの体制は外国の介入なしに倒れなかったという経験があるなか、外国の介入は唯一の解決策」と述べ、西側諸国と一部アラブ諸国が進める介入の試みへの支持を表明した。

また「シリアにクルド政府が発足するのは必然だ」と述べつつも、クルド民族主義勢力がこの点に関してコンセンサスに達していないことを認め、アサド政権打倒後に国民投票を行う必要があるとの立場を示した。

シリア国内で活動するクルド民族主義反体制組織の一つ、シリア・クルド民主党(パールティー)のアブドゥルハキーム・バッシャール書記長は、「外国の介入は時期尚早だ。国際社会が政治、経済、情報、外交において圧力をかけることでコンセンサスに達したとしても、国民的な解決の方がよい」と述べ、慎重な慎重な姿勢を示した。

またハキーム書記長は、「シリアのクルド人民は国民投票を通じて何をめざすのか、そして自決権利をどう行使するかを決し、自治と分権主義のいずれを採用するかを決めるだろう」と述べた。

一方、シリア国内で活動するシリア・クルド進歩民主党のアブドゥルハミード・ダルウィーシュ書記長は、アサド政権打倒後のシリアでの「クルディスタン地域」設置の是非に関して、「状況が異なっているので、イラクのクルド人と同じようなもの(自治政府)が作られることはないだろう」と述べた。

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シリア変革大会(アンタリア)は声明を出し、アラブ連盟監視団の活動停止に関して、停止ではなく撤収すべきだとの意思を示した。

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『クッルナー・シュラカー』(1月29日付)は、シリア軍の匿名消息筋の話として、アサド政権による弾圧命令を拒否した上級士官の一団が近く「シリア国民軍」の創設を発表する、と報じた。

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『ミスリー・ヤウム』(1月29日付)は、自由シリア軍がダマスカス国際空港(ダマスカス郊外県)からシリア国外に避難しようとしていたアスマー・アフラス大統領夫人、大統領の3人の子供、アニーサ・マフルーフ氏(大統領の母)らを阻止したと報じた。

しかし、自由シリア軍はこうした作戦を行ったとの声明は出していない。

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「自由シリア青年」を名のるシーア派の活動家(と思われる集団)が声明を出し、シーア派宗徒に反体制運動に参加するよう呼びかけた。

レバノンの動き

ベイルートのロシア大使館前で、アサド政権を支持するシリア人、レバノン人多数が集会を開き、西側および一部アラブ諸国のアサド・バッシングに異議を唱えるロシアに謝意を示した。

諸外国の動き

イタルタス通信(1月29日付)は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣が、「彼らがこのような方法で有益な任務に対処したのか理由が知りたい…。私が彼らの立場だったら、監視団の増員を支持していた」と述べ、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長による監視団活動停止の発表に疑義を呈した。

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フランスの国連代表は国際社会にシリア人の保護に責任を果たすべく「安保理から」国際社会が動くべきだとの声明を発表、各国代表に配布した。

AFP, January 29, 2012, January 30, 2012、Akhbar al-Sharq, January 29, 2012、al-Hayat, January 30, 2012,January 31, 2012、Kull-na Shuraka’,January 29, 2012, February
1, 2012、al-Misriya al-Yawm, January 29, 2012、Naharnet.com, January 29, 2012、Reuters, January 29, 2012、SANA, January 29, 2012などをもとに作成。

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西側諸国および一部アラブ諸国が共同で作成した安保理決議案が提出、クルド民族主義政党および民主統一党がアサド政権との合意のもとハサカ県の暫定自治開始を宣言する見込み(2012年1月28日)

アラブ連盟の動き

アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、一部アラブ諸国外相との協議の結果、連盟監視団の活動を停止し、今後の活動に関して2月5日(日曜日)の閣僚委員会会合で審議することを明らかにした。

この決定に関して、アラビー事務総長は、シリアにおける情勢悪化に伴う決定だと述べた。

国内の暴力

複数の反体制勢力筋によると、ダマスカス郊外県各地で軍・治安部隊と離反兵が激しく交戦した。

同筋によると、サクバー市、ジスリーン町、カフルバトナー町は離反兵が制圧(占拠)し、武装した戦闘員が警備にあたっている、という。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、グータ地方東部で軍・治安部隊と離反兵が激しく交戦し、民間人6人、軍・治安部隊兵士16人、離反兵3人が死亡した。

また軍・治安部隊は、離反兵が制圧(占拠)しているとされるカフルバトナー町、サクバー市、ハムーリーヤ市、ジスリーン町、アルバイン市に戦車・装甲車などで突入し、掃討作戦を行ったという。

一方、ハラスター市でも、治安部隊が設置した検問所で青年1人が銃殺された。

これに対して、SANA(1月28日付)は、アドラー市・ドゥーマー市館で武装テロ集団が治安維持部隊を襲撃し、曹長1人を含む7人を殺害されたと報じた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、フーラ地方で軍・治安部隊と離反兵が激しく交戦し、軍・治安部隊兵士が少なくとも5人死亡した。

またラスタン市でも同様の戦闘があり、離反兵3人が死亡したという。

さらに複数の活動家によると、ハマー市内で頭を撃たれた遺体17体が発見された。

しかし、SANA(1月28日付)によると、ヒムス市郊外で武装テロ集団が治安維持部隊を襲撃し、兵士1人を殺害した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市郊外で治安部隊の発砲により市民1人が殺害されたという。

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イドリブ県では、SANA(1月28日付)によると、イドリブ・アリーハー街道で武装テロ集団が治安維持部隊を襲撃し、兵士1人を殺害した。

SANA, January 28, 2012
SANA, January 28, 2012

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、クーリーヤ市で治安部隊の「迫撃」により子供1人が死亡した。

一方、SANA(1月28日付)によると、クーリーヤ市南部の石油パイプラインに対して、武装テロ集団が破壊工作を行い、火災が発生し、約2,000バレルの石油が焼失した。

アサド政権の動き

ムハンマド・シャッアール内務大臣は、国内での掃討作戦に関して、「ならず者と法律違反者の粛清」を行っていると述べた。

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SANA(1月28日付)は、シリア政府が活動期間延長に合意したにもかかわらず、アラブ連盟が監視団の活動中止を決定したことは遺憾であり奇妙だ、とのシリア政府高官の談話を伝えるとともに、この決定が、GCC諸国の監視団撤収決定に同調した動きで、シリア国内の暴力の継続が理由ではなく、シリア内政への外国の干渉を促すための布石だと非難した。

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『クッルナー・シュラカー』(1月28日付)は、PKK系のクルド民族主義政党、民主統一党が12月の統一地方選挙で選出された県議会および地方議会の開会後に、アサド政権との合意のもと、ハサカ県の暫定自治開始を宣言する見込みである、と報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会は声明を出し、ブルハーン・ガルユーン事務局長ら使節団がニューヨークに向かい、安保理で民間人保護を保障するよう求めることを明らかにした。

また同声明で評議会は、「自由を求めるシリア国民の殺戮に参与するイラン政府」を批判する一方、世界中のロシア大使館でシリアの体制指示停止を求めるデモを行うよう呼びかけた。

さらに、サウジアラビア、カタールなどのGCC諸国がシリア国民を支援し、流血を止めようとしていると評価し、謝意を示した。

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シリア国民評議会執行委員会のアフマド・ラマダーン氏は『ハヤート』(1月29日付)に対して、「増加し、減少することのない殺戮行為を隠蔽するより、撤収する方がよい」と述べ、アラブ連盟監視団の活動停止への歓迎の意を示した。

国連の動き

西側諸国および一部アラブ諸国が共同で作成した安保理決議案をモロッコ(2011年にレバノンに代わって非常任理事国に選出)が安保理に提出した。

『ハヤート』(1月29日付)によると、同決議案は、シリア政府にあらゆる攻撃と人権侵害への禁止を求めるとともに、武装集団を含むすべての当事者に暴力停止を求めている。

アラブ連盟が11月に決定した経済制裁に関しては、すべての加盟国に同様の措置を講じるよう奨励している。

また、大統領権限の副大統領への権限移譲と挙国一致内閣発足を求めた連盟の行程表についてもこれを「強く支持」し、その実施をシリアに求めているが、強制力は伴っていない。

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ロシアの国連代表は、決議案に関して対話する用意があるとしつつ、その内容に関して「越えてはならない我々のレッドラインを越えている」と非難し、アサド政権への制裁、武器禁輸、体制転換をも拒否するとの意思を示した。

諸外国の動き

イスタンブールで、GCC外相とアフメト・ダウトオール外相が会談し、シリア政府に対して連盟の行程表を受諾し、殺戮を停止するよう求めた。

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SANA(1月28日付)は、ヒムス県のジャンダル発電所で働くイラン人技術者7人が武装テロ集団に誘拐されたことをイラン高官が確認したと報じた。7人はレバノン北部に連れ去られた、という。

また同報道によると、アレッポ・ハマー街道でイラン人巡礼者11人が武装テロ集団に誘拐されたと報じた。

AFP, January 28, 2012、Akhbar al-Sharq, January 28, 2012、al-Hayat, January 29, 2012、Kull-na Shuraka’, January 28, 2012、Reuters, January
28, 2012、SANA, January 28, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.