ダマスカス県は、フェイスブックを通じて、県の旧市街局は、ダマスカス城塞前に設置されているサラーフッディーン・アイユービーの記念像を適切な場所に移設するために必要な手続きに着手したと発表した。
サラーフッディーン・アイユービー(サラディン、1137/1138~1193年)は十字軍を破ってエルサレムを奪還したイスラーム世界の英雄で、クルド人出身。
移設は、旧市街局を通じて実施されているダマスカス城塞周辺の再整備事業の一環として、また、同地域の公共サービス、景観、都市環境の改善を図るため、ハンド(Hand)機構の協力のもと、県の考古局が作成した技術報告書に基づき実施されるもので、関係機関との協議・調整を経て、約30年前にダマスカス城塞前に設置された同像の芸術的価値を保全するため、必要な維持補修・修復作業を実施し、損傷箇所を修繕することを目的としているという。
SANAによると、サラーフッディーンの記念像は、没後800周年を記念して1993年に設計されたもので、馬にまたがるサラーフッディーンと、その傍らに立つ2人の兵士の姿が表現されている。

シリア人権監視団は、移設場所はティシュリーン(10月)戦争(第4次中東戦争)パノラマ広場だとしたうえ、一部のシリア人は、慣れ親しんだ場所から像が移されたことへの不満を表明し、城塞前の像は単なる美的要素ではなく、サラーフッディーン・アイユービーという人物と、イスラーム・アラブの記憶におけるその地位に結びついた歴史的・象徴的意味を持っていたと考えており、その文化的意味や民族的アイデンティティ(クルド性)を理由に歴史的象徴が周縁化される可能性を懸念していると指摘した。
(C)青山弘之 All rights reserved.