反体制武装勢力はサラーフッディーン地区から「戦略的撤退」、アサド大統領が政令を出しハルキー保健大臣を首相に任命(2012年8月9日)

国内の暴力(アレッポ県)

各紙によると、アレッポ市での軍・治安部隊が戦闘機を動員し掃討作戦を継続し、前日まで撤退を否定してきた反体制武装勢力はサラーフッディーン地区からの撤退を認めた。

SANA, August 9, 2012
SANA, August 9, 2012
SANA, August 9, 2012
SANA, August 9, 2012

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アブー・アリーを名のる反体制武装活動家はロイター通信(8月9日付)に対して、「自由シリア軍の戦闘員はサラーフッディーン地区の複数地点から撤退した」と明かした。

ロイター通信(8月8日付)は、別の活動家の話として、サラーフッディーン地区での戦闘で少なくとも68人が死亡した、と報じた。

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自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐はAFP(8月9日付)に対して、「自由シリア軍はサラーフッディーン地区から撤退した」と述べた。

しかしこの撤退は、「無差別の激しい砲撃で同地区が完全に破壊されたための技術的撤退」で、「アレッポ市の他の場所で我々は留まっている」という。

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自由シリア軍シャフバーの楯大隊司令官のフサーム・アブー・ムハンマド大尉はAFP(8月9日付)に対して、サラーフッディーン地区から「技術的完全撤退」をしたと述べる一方、軍が「真空爆弾を使用した」と非難した。

同大尉によると、反体制武装勢力は「サラーフッディーン地区にはおらず、政府軍が同地域に入った」。

撤退の理由として、同大尉は「砲撃激化」を理由にあげるとともに、「第10街道、第15街道も政府軍が制圧した」と明かした。

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ヌール・ハック大隊のワースィル・アイユーブ大尉もAFP(8月9日付)に対して、「技術的撤退」を認め、サイフ・ダウラ地区、マシュハド地区に前線を移動させたと述べた。

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地元調整諸委員会やシリア革命総合委員会によると、軍・治安部隊はスッカリー地区、東アンサーリー地区、マシュハド地区、ジスル・ハッジ地区などアレッポ市東部に激しい砲撃を加えた。

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シリア人権監視団によると、サーフール地区、シャッアール地区、マサーキン・ハナーヌー地区、バーブ街道地区、サラーフッディーン地区が軍・治安部隊の激しい砲撃に曝された。

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これに対して、SANA(8月9日付)によると、軍・治安部隊はアレッポ市内のアスィーラ地区、バーブ・ナスル地区で反体制武装勢力の「浄化」を完了した。

またハナーヌー地区、ブスターン・バーシャー地区、ハーン・ワズィール地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、逮捕したほか、マイサル地区、マサーキン・ハナーヌー地区、ハラブ・ジャディーダ地区などで「残党」の追跡・掃討を行った。

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ダマスカスの治安消息筋はAFP(8月9日付)に対して、スッカリー地区でも軍・治安部隊による大規模な掃討作戦が実施される、と述べた。

また軍は「アレッポに動員された増援部隊の10%しか投入していない」と付言した。

ダマスカスの別の治安消息筋によると、軍はアレッポ市に20,000人の兵力を動員している。これに対して、『ハヤート』(8月10日付)によると、反体制武装勢力の兵力は8,000人だという。

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ロイター通信(8月8日付)によると、アレッポ市郊外のタッル・リフアト市では、軍の戦闘機が低空で旋回、空爆し、市民は避難を余儀なくされた。

ファトフ旅団のアブー・ハサンなる戦闘員によると、軍の戦闘機は「これまでタッル・リフアトとその周辺の我々の基地4カ所を砲撃した」。

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シリア人権監視団によると、バーブ市、フライターン市、カフルハラブ村でそれぞれ1人が殺害された。

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一方、SANA(8月9日付)によると、アレッポ市郊外のフライターン市、タッル・リフアト市、ダーラト・イッザ市でも軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

国内の暴力(その他の県)

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザバダーニー市で2人が砲撃により死亡し、アイン・タルマー村では軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。

また『アフバール・シャルク』(8月9日付)は、ジャルマーナー市内の住居ビルの入り口で爆発が発生し、イブラーヒーム・ダッラ退役准将が暗殺された、と報じた。

さらに複数の活動家の話として、ムウダミーヤ・シャーム市の入り口の検問所で若者5人が、ダーライヤー市入り口の検問所で若者4人が殺害された、と報じた。

このほか、同報道によると、ダーライヤー市郊外で、両腕を切り落とされた遺体8体が発見された。

シリア人権委員会は、軍・治安部隊によって殺害されたと思われる身元不明の民間人の遺体多数が、ダマスカス県およびダマスカス郊外県で発見されている、と発表した。

一方、SANA(8月9日付)によると、タッル市で、軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトに突入し、複数の戦闘員を殺傷した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ナスィーブ村での砲撃で3人が死亡した。

またヌアイマ村、ウンム・マヤーズィン町、ハイト村、ブスル・ハリール市、タイバ町などが軍・治安部隊の砲撃を受けた。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ハサカ市各地区で治安部隊が逮捕・摘発を行った。

一方、SANA(8月9日付)によると、ハサカ市で軍・治安部隊が反体制武装勢力の戦闘員多数を逮捕、武器弾薬を押収した。

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ヒムス県では、シリア革命総合委員会によると、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区が砲撃に曝された。

一方、SANA(8月9日付)によると、タッルカラフ地方でレバノンからの潜入を試みる反体制武装勢力を国境警備隊が撃退し、多数を殺傷、逮捕した。

またタッルカラフ市では軍・治安部隊が反体制勢力と交戦した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、1人が死亡した。

またカフルナブル市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市各地区で治安部隊が逮捕・摘発を行った。

一方、SANA(8月9日付)によると、カルアト・マディーク町郊外で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(8月9日付)によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

殺害した戦闘員のなかには、多数のアラブ人と外国人が含まれていた、という。

アサド政権の動き

アサド大統領は政令第298号を出し、ワーイル・ナーディル・ハルキー保健大臣を首相に任命した。

SANA, August 9, 2012
SANA, August 9, 2012

ハルキー新首相は1964年生まれ。ダルアー県出身。ダルアー県ジャースィム市基幹医療局長(1997~2000年)、バアス党ダルアー支部書記長(2000~2004年)を歴任後、2011年8月のアーディル・サファル改造内閣で保健大臣に就任した。

ハルキー新首相がスンナ派であることに関して、シリア国内の宗派バランスに配慮した人事といった報道が散見されたが、シリアの首相はスンナ派が就くことが独立以来慣例となっている。

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DPA(8月9日付)によると、ロンドン・オリンピックにシリア代表として参加している競泳のアーザード・バラーズィー氏は「殺される人々、砲撃を受けている家々のことを聞くと心が揺さぶられます。オリンピック村でいるので、考えたくないです。なぜならここでのすべては平和の祭典だからです」と述べた。

一方、シリア選手団のマーヒル・ハイヤータ代表は、アレッポの家族のことを心配する一方で、アサド政権を非難することはできなかったと吐露した。

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『クッルナー・シュラカー』(8月9日付)は、大統領府内の反体制消息筋の話として、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官が夫のムサンナ・サーリフ氏とともに7日に米国に向かった、と報じた。

同報道によると、前妻が米国人で米国籍を持つムサンナ・サーリフ氏の配偶者としてシャアバーン大統領府政治情報補佐官も米国籍を取得しようとしている、というが、事実確認はとれていない。

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アラビーヤ(8月9日付)は、大統領府儀典長のムイーッディーン・ムスリマーニー氏が離反したと報じた。事実確認はとれていない。

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『サンナーラ』(8月9日付)は、アサド大統領が叔父のリフアト・アサド前副大統領との和解のため、前副大統領をダマスカスに迎えることに同意したと報じた。

前副大統領の代理であるファールーク・ムサーリウ氏が明らかにした。

反体制勢力の動き

シリアの複数の反体制武装活動家によると、反体制武装勢力の司令官らは、アレッポ市サラーフッディーン地区などからの撤退後初めて、捕虜への暴行、拷問、処刑を行わないとの誓約に署名した。

ロイター通信(8月9日付)が報じた。

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AKI(8月9日付)は、ダマスカス革命評議会広報局のヌール・ビータール報道官なる活動家が、ダマスカス郊外県で拉致されたイラン人が巡礼者だというイラン側の「話は根拠が薄い」と非難した。

レバノンの動き

ミシェル・サマーハ元情報大臣が逃走先のレバノン山地県マトン郡ジュワール・ヒンシャーラ村で、ボディーガード2人、運転手1人とともに内務治安総軍に身柄を拘束された。

ボディーガード2人、運転手1人はその後釈放された。

内務治安総軍によると、身柄拘束の理由は「治安上の理由」。

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しかし妻のサマーハ氏はLBC(8月9日付)に対して、逮捕は「政治的理由」によると述べた。

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MTV(8月9日付)は、身柄拘束後にサマーハ元大臣が「シリアの命令でレバノン国内でテロ攻撃を計画したと自供した」と報じた。

また内務治安総軍が言及した「治安上の理由」に関して、ハーリド・ダーヒル国民議会議員(ムスタクバル潮流)暗殺計画と関係があると報じた。

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LBC(8月9日付)は、「シリアからレバノンへの爆発物の密輸を自供し」、またドライバーも関与を認めたと報じた。しかしボディーガードの1人は密輸への関与を否定した。

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ジャディード・チャンネル(8月9日付)は、北部県での攻撃計画に元大臣が関与していることを示すビデオテープに基づき身柄拘束されたと報じた。

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ムスタクバル・チャンネル(8月9日付)は、元大臣がスンナ派対アラウィー派、スンナ派対キリスト教徒の対立を煽るための爆破を計画していたと報じた。

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シュカイブ・クルトバーウィー法務大臣はNBN(8月9日付)に対して、サマーハ元情報大臣の逮捕を「受け入れられない」と述べ、非難した。

諸外国の動き

イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は『ワシントン・ポスト』(8月9日付)で、アサド政権が崩壊すれば、さらなる混乱が生じるとの見方を示した。

サーレヒー外務大臣は、「シリア社会は人種、宗派、文化のるつぼで、アサド大統領が突然いなくなってしまったら散り散りになってしまう」と警鐘を鳴らした。

またイランが近くシリア問題に関する国際会議を主催し、アジア、アフリカなど12~13カ国が参加するだろう、と述べた。

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イランはシリア問題国際会議をテヘランで開催し、イランを含む29カ国および同国駐在の国連機関代表が出席した。

参加したのは、イラク、パキスタン、ジンバブエの外務大臣、ヨルダン、スーダン、オマーン、チュニジア、ロシア、中国、アフガニスタン、インド、キューバ、ヴェネズエラの代表ら。

開会の辞で、イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、「シリアの危機の解決は政府と反体制勢力の真剣かつ包括的な対話を通じてのみ可能」と述べるとともに、「いかなる外国の介入、軍事介入をも拒否し、危機解決のための国連の努力を支持する」と強調した。

さらにアサド大統領の退任がシリアで平和的な転換をもたらすとの西側の主張を「幻想」と一蹴した。

なお、レバノンとクウェートはそれぞれ代表を派遣しないと発表した。

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シリアの反体制武装勢力に武器供与などの支援をするトルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、アサド政権がPKKに武器供与を行っている、と批判した。

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トルコの非常事態局によると、シリアからのトルコへの避難民の数は50,000人を越えた。

AFP(8月9日付)が伝えた。

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ジョン・ブレナン米大統領補佐官は、ワシントンでの講演で、シリアへの飛行禁止空域の設定はあるかとの質問に対して、「何かがテーブルの上にないと大統領がこれまでに言ったという覚えはない」と応えた。ロイター通信(8月9日付)が報じた。

しかし、スーザン・ライス米国連代表大使は、シリアへの飛行禁止空域設定の可能性に関して、「この提案は議論されたが、シリアが世界有数の防空能力を持っているなか…容易な選択肢ではないだろう」と述べた。

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フランスのニコラ・サルコジ前大統領はシリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長と7日に電話会談し、リビア暫定国民評議会を支援し、リビアへの軍事介入を行った前大統領の姿勢が、シリアでも同様に正当性を持つという点で見解が一致した、とAFP(8月9日付)が報じた。

AFP, August 9, 2012、Akhbar al-Sharq, August 9, 2012、Al Jadeed August 9,
2012、AKI, August 9, 2012、DPA, August 9, 2012、Future TV August 9, 2012、al-Hayat, August 10, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 9, 2012、LBC, August 9, 2012、MTV, August 9, 2012、Naharnet.com, August 9, 2012、NBN August 9, 2012、Reuters, August 9, 2012、SANA, August 9, 2012、al-Sannara, August 9, 2012、The Washington Post, August 9, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

軍・治安部隊がサラーフッディーン地区に戦車を突入させ掃討作戦が最終段階に、イランの国家安全保障最高会議書記がイラクを電撃訪問しシリア情勢について協議(2012年8月8日)

国内の暴力(アレッポ県)

各紙によると、アレッポ市では、軍・治安部隊がサラーフッディーン地区に戦車を突入させ、掃討作戦の最終段階に入った。

SANA, August 8, 2012
SANA, August 8, 2012

SANA(8月8日付)はサラーフッディーン地区が軍・治安部隊によって制圧されたと発表したが、反体制武装勢力側はこれを否定した。

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ダマスカスの治安筋は、AFP(8月8日付)に対して、「二正面から(サラーフッディーン)地区に軍が進軍し…、反体制武装勢力兵士が若干残ろうとも、その回復にさして時間はかからないだろう」と述べた。

同消息筋によると、総攻撃は早朝7時に始められ、激しい戦闘のち、軍はマルアブ街道とシャルイーヤ街道を制圧し、「激しい戦闘ののち、(反体制武装勢力が)完全崩壊したことに(軍も)驚いている…。(反体制武装勢力)に甚大な損害があった」という。

またサラーフッディーン地区のほかにも、サイフ・ダウラ地区が軍・治安部隊によって制圧された、という。

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SANA(8月8日付)は、「勇敢なる我らが武装部隊は今日、アレッポ市サラーフッディーン地区を完全制圧した」と報じた。

同通信社によると、同地区の戦闘で多数の戦闘員が死亡し、そのなかにはアラブ人、外国人などが含まれていた。

またサラーフッディーン地区でも、軍・治安部隊はサイフ・ダウラ地区、スッカリー地区、ナスル地区、マイサル地区、マサーキン・ハナーヌー地区、ナイラブ地区など、アレッポ市郊外のマーイル地方、フライターン市などで反体制武装勢力の残党追跡および掃討を行い、戦闘員多数を殺傷、甚大な被害を与えた、という。

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シリア・アラブ・テレビ(8月8日付)は、アレッポ市に対する軍・治安部隊の掃討作戦でバーブ・ハディード地区やバーブ・ナイラブ地区で反体制武装勢力の戦闘員7人が死亡した、と報じた。

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自由シリア軍のヌール・ハック大隊の司令官だというワースィル・アイユーブ大尉はAFP(8月8日付)に対して、反体制武装勢力が午後にサラーフッディーン地区を奪還し、軍・治安部隊はサラーフッディーン広場周辺しか制圧していないと述べた。

この「奪還」は、約700人の兵士からなる反体制武装勢力の援軍がスッカリー地区、ブスターン・カスル地区、シャッアール地区、マサーキン・ハナーヌー地区からサラーフッディーン地区に派遣されることで実現した、という。

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自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバールアカイディー大佐もAFP(8月8日付)に対して、「攻撃は激しいが、政府は(サラーフッディーン)地区を制圧していない」と述べた。

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自由シリア軍シャフバーの楯大隊の司令官だというフサーム・アブー・ムハンマド大尉もAFP(8月8日付)に対して、7時間にわたる戦闘の末、サラーフッディーン地区を奪還した、と述べた。

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英国を拠点とする反体制組織のシリア人権監視団によると、サラーフッディーン地区での戦闘はこれまで「もっとも激しい」もので、それ以外にもマサーキン・ハナーヌー地区、バーブ街道地区、シャッアール地区、マイサルーン地区、サーフール地区などで激しい交戦があった。

同監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表はAFP(8月8日付)に対して、軍・治安部隊が「サラーフッディーン地区を複数の方向から攻撃した」が、反体制勢力が「展開していなかった第15街道を制圧できただけだった」と語った。

また軍・治安部隊はサラーフッディーン地区を奪還しようとした反体制武装集団の激しい抵抗で甚大な被害を被ったという。

国内の暴力(その他の県)

ヒムス県では、SANA(8月8日付)によると、タッルカラフ地方で、レバノン領内から潜入を試みる反体制武装勢力を国境警備隊が撃退した。

またヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区、クサイル市郊外などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺害した、という。

一方、『クッルナー・シュラカー』(8月8日付)は、虐殺があったとSANA(8月7日付)が報じたヒムス市郊外のジャンダル・リゾートの所有者が、アサド政権に近いヒヤーン・アタースィー氏だと暴露した。

シリア政府の動き

SANA(8月8日付)は、ダマスカス県のラジオ・テレビ機構ビル前で、記者連盟の呼びかけで、メディアに対するテロに反対する集会が行われ、ジャーナリストやメディア機関労働者が参加したと報じた。

SANA, August 8, 2012
SANA, August 8, 2012

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ラタキア県では、SANA(8月8日付)によると、サルマー町で軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトに突入し、戦闘員多数を殺害、逮捕、武器弾薬を押収した。

ヒジャーブ前首相の離反をめぐる動き

ヨルダンのサミーフ・マアーイタ情報問題担当国務大臣はAFP(8月8日付)に対して、「リヤード・ファリード・ヒジャーブ前首相およびその家族が水曜日(8時)午前1時にヨルダン領内に入った」と述べ、前首相らの入国を初めて公式に認めた。

なお、ユーチューブ(8月7日付)やアラビーヤ(8月8日付)では、ヒジャーブ前首相らがヨルダンに密入国する映像が公開された。

http://www.youtube.com/watch?v=wEL3sjTje0Y
http://www.youtube.com/watch?v=h8k0_V3fjh0&feature=plcp

 

クルド民族主義勢力の動き

PKK系のクルド民族主義政党、民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首はロイター通信(8月9日付)に対して、「シリアのクルド人の問題はトルコとは無関係」の述べ、シリア国内における最近のクルド人の台頭をトルコが恐れる必要はない、と強調した。

ムスリム共同党首(カーミシュリー市)は、「我々の地域、都市を護ることは我々の権利だ。誰もこの権利を否定できない」と付言した。

反体制勢力の動き

シリア・トルクメン国民ブロックなる組織のユースフ・ムッラー議長は、アサド政権がトルクメン人に対して「革命」への参加を放棄すれば、トルクメン人に自治を与えるとの取引を持ちかけてきた、と語った。『クッルナー・シュラカー』(8月8日付)が伝えた。

Kull-na Shuraka', August 8, 2012
Kull-na Shuraka’, August 8, 2012

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『ザマーン・ワスル』(8月8日付)は、イランのアーラム・チャンネルがアレッポ市サラーフッディーン地区での戦闘として報じた映像が、イドリブ県カフルナブル市の戦闘の映像だと暴露した。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、サウジアラビアのメッカで開催予定のイスラーム諸国会議機構首脳会議に自身を招待するべき、と『ハヤート』(8月9日付)に語った。

レバノンの動き

北部県アッカール郡にあるアクルーム村(スンナ派)とハウラーニー村(シーア派)の住民が衝突し、前者の村民1人が死亡、複数が負傷した。

衝突は、両村に隣接するシリアのヒムス県クサイル地方からシリア人数名がハウラーニー村に密入国しようとしたことに端を発していた、という。

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アレッポ県で拉致されたレバノン人巡礼者の親戚2人が同県アアザーズ地方で人質と面会し、LBC(8月8日付)がその様子を報じた。

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レバノン軍団のサミール・ジャアジャア代表はアラビーヤ(8月8日付)に対して、アサド政権は「生き残らないだろう。政権は確実に最後の時を迎えている」と述べるとともに、「ヒズブッラーは、シリアの体制が崩壊すれば、対話に対してより開放的になるだろう」との見解を示した。

諸外国の動き

イランのサイード・ジャリーリー国家安全保障最高会議書記はシリア、レバノン訪問後、イラクを電撃訪問し、ホシュヤール・ゼバリ外務大臣と会談した。

会談後にイラク外務省が発表した声明によると、両者は二国間関係、地域情勢、とりわけシリア情勢について協議し、シリア情勢については「暴力の激化と解決に向けた政治的展望の不在ゆえ、地域諸国全体にとって懸念すべき段階に達し…、周辺諸国に波及しようとしている」と認識を共有した。

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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、ダマスカス郊外県で拉致された「イラン人巡礼者のなかに、革命防衛隊、軍などの退職者が多数含まれていた」と述べた。

イラン学生通信(8月8日付)が伝えた。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣と会談し、ダマスカス郊外県でのイラン人巡礼者拉致の責任がトルコにあるとしたファイルーズ・アバーディー・イラン参謀長の発言を非難、イラン側に「率直かつ友好的な姿勢」を求めるとともに、「こうした高官が発言前に何度も熟考することを期待する」と述べた。

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ヨルダンのアブドゥッラー国王はCBC(8月8日付)に対して、シリア国内の混乱激化の結果、アサド大統領が「シリア全土を支配できなくなれば、「アラウィー派ポケット」の建設を次に計画するだろう」と推察し、「国の分裂をもたらし、数十年にわたるエスニック紛争の原因となるだろう」と懸念を表明した。

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キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は、クロアチア、マケドニア、アイスランド、セルビア、アルバニア、リヒテンシュタイン、ノルウェー、モルドバ、グルジアがEUの制裁に同調し、武器やその他禁止されている機器のシリア国内への持ち込みが疑わわれる航空機や船舶の臨検調査を決定したことに歓迎の意を示した。

AFP, August 8, 2012、Akhbar al-Sharq, August 8, 2012、Alarabia.net, August 8, 2012、al-Hayat, August 9, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 8, 2012、LBC, August 8, 2012、Naharnet.com,
August 8, 2012、Reuters, August 8, 2012、SANA, August 8, 2012、UPI, August
8, 2012、Zaman al-Wasl, August 8, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アサド大統領がイランのジャリーリー国家安全保障最高会議書記らと会談し両国の戦略的関係を協議、一方イラン当局は同国人巡礼者48人の誘拐の責任を米国に帰する(2012年8月7日)

アサド政権の動き

アサド大統領は、イランのサイード・ジャリーリー国家安全保障最高会議書記を団長とする使節団と会談した。

SANA, August 7, 2012
SANA, August 7, 2012
SANA, August 7, 2012
SANA, August 7, 2012
SANA, August 7, 2012
SANA, August 7, 2012

会談では、シリアとイランの戦略的関係、一部域内諸国などのシリアへの介入への対応などが協議された。

ジャリーリー書記は、シリア情勢に関して、単なる国内問題ではなく、レジスタンス陣営とその敵との紛争だとの見方を示し、同陣営のいかなる崩壊も許されるべきでないと強調した。

一方、アサド大統領は、シリア国民および政府が国内からのテロリストの浄化とテロとの戦いを徹底するとの意思を示す一方、シリアが国民対話の途上にあり、外国の計略を挫折させる能力があると強調した。

イランの使節団は会談後、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣と会談した。

SANA(8月7日付)が報じた。

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SANA(8月7日付)が配信した写真に関して、『クッルナー・シュラカー』(8月7日付)は、シリアの国家安全保障担当者が出席していないのはおかしい、と報じた。

しかし、シリアの国家安全保障担当者が公の場に姿を現すことはほぼ皆無である。

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ウマル・イブラーヒーム・ガラーワンジー暫定内閣が同首相を議長として定例閣議を開催し、国内の学校、公共施設などに非難している市民への支援対策などを審議した。

ヒジャーブ前首相の動き

『ハヤート』(8月8日付)は複数のヨルダン消息筋の話として、リヤード・ファリード・ヒジャーブ前首相がヨルダンへの政治亡命を申請した、と報じた。

しかし同消息筋によると、ヨルダンは前首相クラスのシリア元高官の残留を望んでいない、という。

国内の暴力

アレッポ県では、SANA(8月7日付)によると、アレッポ市アスィーラ地区で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員約155人を殺傷した。

またサラーフッディーン地区、マサーキン・ハナーヌー地区でも軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、外国人戦闘員を含む多数の戦闘員を殺傷、逮捕した。

このほか、アレッポ市郊外のアフタリーン市一帯でも戦闘があり、反体制武装勢力8人が死亡、複数が負傷した、という。

一方、アレッポ市に配置されていたUNSMIS隊員が同市から撤退した。国連が発表した。

アッシリア人権ネットワークなる組織は、アレッポ市スィルヤーン地区が早朝から砲撃に曝されている、と発表した。

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ダマスカス郊外県では、映画監督バッサーム・ムフイーッディーン氏がジュダイダト・アルトゥーズ町で「何者かに暗殺」された。映画公社が発表した。

『クッルナー・シュラカー』(8月7日付)によると、ジュダイダト・アルトゥーズ町で陸運組合のザカリヤー・ヤーギー総裁の息子が暗殺された。

同報道は、シャッビーハと治安当局の犯行と断じている。

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ダマスカス県では、『クッルナー・シュラカー』(8月7日付)は、ルクンッディーン区で第4師団が反体制活動家の青年の家を焼き討ちにした、と報じた。

一方、SANA(8月7日付)によると、旧市街で治安当局が反体制武装勢力のアジトに突入、戦闘員3人を逮捕、大量の武器弾薬を押収した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、自由シリア軍がドゥワイル地方にある油田を襲撃し、同油田を警備する軍・治安部隊兵士少なくとも6人を殺害し、多数を拉致した。

地元調整諸委員会によると、捕捉した兵士の数は大尉1人を含め9人にのぼる、という。

なお、この戦闘では反体制勢力を支援するの戦闘員4人も死亡した。

一方、SANA(8月7日付)によると、マヤーディーン市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員全員を殺害した。

またダイル・ザウル市では、軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」の追跡を継続し、戦闘員多数を殺傷、逮捕した。

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ヒムス県では、SANA(8月7日付)が、反体制武装勢力が占拠していたヒムス市郊外のジャンダル・リゾートで虐殺された市民の遺体多数が発見されたと報じた。

また同通信社によると、ヒムス市各地区、ザアフラーナ地方、サルターニーヤ地方などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」の追跡を継続、多数の戦闘員を殺傷、逮捕、大量の武器弾薬を押収した。

さらにタッル・カラフ地方では、レバノン領内から潜入しようとした反体制武装勢力を国境警備隊が撃退し、甚大な被害を与えた、という。

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ハサカ県では、SANA(8月7日付)によると、シダーディー市東方の油田近くで、軍・治安部隊が反体制武装勢力を要撃し、乗っていた2台の車を破壊したが、1台は逃走した。

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ハマー県では、SANA(8月7日付)によると、サラミーヤ市で反体制武装勢力が仕掛けようとしていた爆弾が爆発し、戦闘員1人が死亡した。

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イドリブ県では、SANA(8月7日付)によると、サラーキブ・アレッポ街道、ジスル・シュグール市郊外、対トルコ国境地帯(ヒルバト・ジューズ)で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のアフマド・ラマダーン氏はロイター通信(8月7日付)に対して、現在15人のシリア政府高官・外交官が離反を望んでおり、彼らの脱出経路、身の安全を保証する準備を行っている、と語った。

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アレッポ市サラーフッディーン地区で反体制武装闘争を行っているというアブー・フラート・ジャバラーブルスィー大佐なる活動家は、ロイター通信(8月7日付)に対して、妻子を外国に出国させようとすることは、当局にとって、離反を計画していることを意味する、と語った。

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フサーム・ハーフィズ氏(元駐アルメニア・シリア領事)は、離反した外交官らとともに「民主的市民国家のための外交官グループ」を発足した、と発表した。

同グループは6~7人の元外交官からなる、という。

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『クッルナー・シュラカー』(8月7日付)は、シリア・アラブ航空の複数のパイロットの話として、7月30日のフィラース・サーフィー氏暗殺が軍・治安部隊の犯行だったと報じた。

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医師組合アレッポ支部のムハンマド・ワジーフ・ジュムア支部長が離反を宣言する映像をフェイスブック(8月7日付)に公開した。

イラン人巡礼者拉致事件をめぐる動き

ホセイン・エミール・アブドゥッラフヤーン外務副大臣はイラン国営通信(8月7日付)に対して、「米国がシリアのテロ集団に行ってきた武器供与といったあからさまな支援を踏まえると、ダマスカス(郊外)でのイラン人巡礼者48人の誘拐の生命は米国がその責任を負っている」と述べた。

また「我々は(シリアの反体制勢力を支援する)国がシリアで起きたことのある種の責任をとってイラン人巡礼者の安全とイランへの帰国を保証するための措置を講じることを期待していた」と付言し、トルコとカタールに人質釈放のために介入するよう求めてきたことを示唆した。

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イランのアリー・ラリージャーニー国会議長は、イラン学生通信(8月7日付)に対して、「米国および一部の国がイラン人巡礼者殺害の責任を負っている…。適切な時期に適切な報復を行う」と述べた。

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イラン外務省はアーラム・チャンネル(8月7日付)に対して、シリア軍・治安部隊の砲撃によって拉致されたイラン人巡礼者のうち3人が死亡した、とのバッラー大隊の発表を拒否し、「シリアの武装テロ集団の主な支援者である米国が巡礼者の生命に関して責任を負っている」と主張した。

レバノンの動き

LBC(8月7日付)は、アレッポ県で拉致されたレバノン人巡礼者(シーア派)の一人アッバース・シュアイブ氏とのインタビューを行った。

インタビューでシュアイブ氏は、レバノン政府が人質釈放のために充分な対応をしていないと批判、「サウジ、カタール、エルドアンにシリアの革命を支持するようアピールしている…。そうすることで我々は家族のもとに帰れる」と述べた。

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ベイルート国際空港への街道で抗議の座り込みを行っていた拉致レバノン人巡礼者の家族は道路封鎖を解除した。

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NNA(8月7日付)によると、シリア軍の迫撃砲が北部県アッカール軍ワーディー・ハーリド地方に着弾、複数の家屋が被害を受けた。

諸外国の動き

WHOは、シリア国内での暴力により、医薬品の不足が深刻化していると警鐘を鳴らした。

同機構報道官によると、アレッポ、ヒムス、ダマスカスの郊外に集中する医薬品製造工場は、暴力の激化や燃料費高騰(西側の制裁)によりそのほとんどが閉鎖、操業停止を余儀なくされている、という。

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『ハヤート』(8月8日付)は信頼できる複数の消息筋の話として、サウジアラビアが来週メッカで開催を予定しているイスラーム諸国会議機構(OIC)の首脳会議にシリア首脳を招待しなかったと報じた。

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ヨルダン通信(8月7日付)は、シリア人避難民への救援物資を積んだサウジアラビアの輸送団の第1陣(貨物車輌43輌)がヨルダンに到着した、と報じた。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は訪問先の南アフリカで「(シリアの)体制崩壊後に起こることに関して、私たちはこれまで以上に話し、準備し始め得る…。こうしたこと(体制崩壊)が起きるだろうということが私には分かる」と述べた。

AFP, August 7, 2012、Akhbar al-Sharq, August 7, 2012、Facebook, August 7, 2012、al-Hayat, August 8, 2012, August 9, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 7, 2012、LBC,
August 7, 2012、Naharnet.com, August 7, 2012、NNA, August 7, 2012、Reuters,
August 7, 2012、SANA, August 7, 2012などをもとに作成。

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ヒジャーブ首相が離反しヨルダンに逃走、ガラーワンジー副首相が暫定首相に任命される(2012年8月6日)

ヒジャーブ首相離反、逃走

ムハンマド・アトリー首相付報道官はジャズィーラ(8月6日付)に対して、リヤード・ファリード・ヒジャーブ首相が首相職を辞して離反し、親戚・家族ととも逃走したと発表した。

Akhbar al-Sharq, August 6, 2012
Akhbar al-Sharq, August 6, 2012

同報道官によると、ヒジャーブ前首相とその親戚・家族10世帯は「安全な場所」にかくまわれており、各紙によるとヨルダンに避難した、という。

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同報道官が読み上げた声明によると、ヒジャーブ前首相は「今日、殺人テロ体制と革命への参加を宣言する…。この祝福された革命の一兵卒となる」ことを表明した。

また「多くの高官が体制から離反したいと考えている」と言う。

アトリー報道官によると、ヒジャーブ前首相の離反は、自由シリア軍と「数ヶ月」にわたって調整のうえ行われ、「国内の革命家たちが彼にこの脱出を保証した」という。

またヒジャーブ前首相とともに脱出した親戚・家族世帯のうち、8世帯が前首相の兄弟の家族でいずれも国家の要職についていた、という。

さらにアトリー報道官は、ヒジャーブ前首相が(シリア政府が主張するように)解任されたのではなく、「彼の解任は、彼が姿を消してから1日半後、政府が彼を逮捕・殺害の希望を失った後に発表された」と強調した。

そのうえで「ヒジャーブ氏から得た情報として確かなのは、シリアの体制が腐敗し、崩壊しつつあるにも関わらず、殺戮を続けていることだ…。ヒジャーブ氏は近く貴方たちの前に姿を現し、国民への想いを述べるだろう」と付言した。

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アトリー報道官は『ハヤート』(8月7日付)に対して、「ヨルダン・トルコ国境を越えて6日早朝にヨルダンに入った」と述べた。

また「数日中、数時間中にカタールの首都ドーハに向かうだろう」と述べた。

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ダルアー市の自由シリア軍メンバーのアリー・リファーイーなる活動家は『ハヤート』(8月7日付)に対して、「アサド政権の軍は昨日(5日夜)、ヒジャーブ首相がヨルダンに入るためにダルアーに入ったことを知り、ダルアーの村々の捜索を行った…。第7師団と第8師団がヒジャーブ首相が潜伏していたダルアー県西部を包囲し、迫撃砲や重火器で攻撃した。しかし自由シリア軍の部隊は攻撃に抵抗し、ヒジャーブ首相らの脱出を成功させた」と述べた。

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シリア国民評議会のハーリド・ザインアービディーンは、AFP(8月6日付)に「ヒジャーブ首相と家族のほかに、閣僚2人、軍の士官3人が、自由シリア軍の調整のもと、国境を越えて日曜日(5日)に入った」と嘘の情報を流した。

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シリアの匿名反体制活動家はAFP(8月6日付)に対して、ヒジャーブ前首相とその家族がヨルダンに脱走したことを認めた。

SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012

この活動家によると、自由シリア軍と反体制勢力の調整のもと、近く軍士官や高官が大量に離反し、ヨルダンに脱出する、という。

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ヨルダン国内でシリア人の避難民支援活動を行う聖典スンナ協会のザーイド・ハマード代表は、「ヒジャーブ前首相が目撃され、彼の家族らが昨晩国境を越えたことを確認した」と述べた。

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『ハヤート』(8月7日付)は、複数の活動家の話として、ダイル・ザウル市に対する軍・治安部隊の反体制武装勢力掃討作戦がヒジャーブ首相(ダイル・ザウル県出身)に離反を促した、と報じた。

また6月23日に離反したナウワーフ・ファーリス駐イラク・シリア大使とも関係が強いという。

シリア政府の動き

アサド大統領は政令第294号を発し、リヤード・ファリード・ヒジャーブ首相を解任した。

また政令第295号を発し、ウマル・イブラーヒーム・ガラーワンジー福祉問題担当副首相兼地方自治大臣を暫定首相兼務とした。

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SANA(8月6日付)は、ウマル・イブラーヒーム・ガラーワンジー新暫定首相のもと、「全員出席のもと」特別閣議が開催された、と報じた。

同通信社によると、ガラーワンジー暫定首相は閣議で「祖国の指導者」アサド大統領に対して、国民の福祉向上や現下の危機克服のためあらゆる努力を行うと宣誓した、という。

なおSANAが配信した閣議の写真は、議長席に誰が座っているのか判然としない。

SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012

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ヒジャーブ首相とともに離反、脱走したとジャズィーラなどが伝えた2人の閣僚、ムハンマド・ジュライラーティー財務大臣とムハンマド・ムハンマド・アブドゥッサッタール・サイイド宗教関係大臣は報道内容を否定した、とSANA(8月6日付)が伝えた。

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ウムラーン・ズウビー情報大臣は、ダマスカスのラジオ・テレビ機構に対する爆弾テロに関して、シリア・アラブ・テレビ(8月6日付)に、「同公社の信憑性と透明性」が標的となった理由だと指摘したうえで、「我々はこのようなテロ犯罪の背後に誰がいるか、誰が資金援助をしているのか…、誰が真実が明らかになることを妨害しているのか…を知っている」と述べた。

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『クッルナー・シュラカー』(8月6日付)は7月18日に暗殺されたダーウド・ラージハ国防大臣の妻サミーラ・バルキール氏がヒジャーブ首相の離反に関して「(離反声明を読み上げた)アトリー氏は埋葬された(ラージハ)一等中将を体制に従属している犯罪者の一人のように描いているが、それは誤りです。一方で、アトリー氏はほとんどの閣僚が離反を望んでいるが、殺されると脅迫され、監視されていると言っています…。これこそが暗殺されるまでの約1年間、家にもほとんど帰らず姿を消し、家族にもほとんど連絡をとらなかった夫であるラージハ大臣の実態です。あたかも行動を制限され、拉致されているようでした」と述べた。

国内の暴力

ダマスカス県では、市内中心に位置するラジオ・テレビ機構ビルに仕掛けられた爆弾が爆発し、若干名が軽傷を負い、施設が破損した。

SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012z
SANA, August 6, 2012z
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012

SANA(8月6日付)によると、爆弾は4階(アラビア語では3階)のコントロール室脇の廊下に仕掛けられ、各部屋には、イフバーリーヤやヌール・シャームといったテレビ局の設備が置かれていた、という。

またマッザ区旧市街で治安部隊が大規模な逮捕・摘発を行った、と報じた。

一方、SANA(8月6日付)によると、ルクンッディーン区で軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトに踏み込み、多数の戦闘員を殺害、逮捕した。

これに対して、『クッルナー・シュラカー』(8月6日付)は、ルクンッディーン区で激しい銃撃戦が発生し、少なくとも9人が死亡した、と報じた。

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アレッポ県では、SANA(8月6日付)によると、アレッポ市のマールティーニー地区、理学部地区近郊、バーブ・ハディード地区、マサーキン・ハナーヌー地区、ダウワール・アグユール地区で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

またアレッポ市郊外のカブターン・ジャバル地方でも、軍・治安部隊は反体制武装勢力と交戦した。

『ハヤート』(8月7日付)によると、アレッポ市は、反体制武装勢力が占拠する地域への軍・治安部隊の砲撃継続により、反体制勢力の装備などの備蓄状況が悪化している、と報じた。

ロイター通信(8月6日付)によると、アレッポ市サラーフッディーン地区で軍・治安部隊による激しい砲撃が続いた。

また、ある戦闘員によると、軍・治安部隊の狙撃兵の進入により、一部の街区などからの撤退を余儀なくされている、という。

SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012z
SANA, August 6, 2012z
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012
SANA, August 6, 2012

ムハンマド・サーリフィーを名のる元公務員によると、「軍は我々の前線を突破した…。それゆえ我々は(アレッポ市内の一部の街区からの)戦略的撤退を余儀なくされた」。

シリア人権監視団によると、アレッポ市サラーフッディーン地区への軍・治安部隊の砲撃で、反体制武装勢力の司令官を含む9人が死亡した。

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ダマスカス郊外県では、『クッルナー・シュラカー』(8月6日付)によると、ジュダイダト・アルトゥーズ町で70回以上も爆発音が聞こえた。

同報道によると、爆発音が聞こえた一体には武器庫が多くある、という。

一方、シリア人権監視団によると、ヒッラーン・アワーミード村での軍・治安部隊の砲撃で反体制活動家3人が死亡した。

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ダルアー県では、SANA(8月6日付)によると、ブスラー・シャーム市、ブスル・ハリール市、スマード村で軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ヒムス市では、SANA(8月6日付)によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区から逃走を試みた反体制武装勢力と軍・治安部隊が交戦し、戦闘員7人が死亡した。

またタッルカラフ市、クサイル市でも軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。

一方、シリア人権監視団によると、ヒルブナフサ村で11人が殺害された。

またハマー市のサーブ-ニーヤ地区で1人が射殺された、という。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市での砲撃で3人が、また軍・治安部隊と反体制武装勢力の戦闘で離反した大尉が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ニウマーン市での砲撃で1人が死亡した。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長はAFP(8月6日付)に対して、「我々は(ヒジャーブ)首相の離反を歓迎する。また軍人であれ民間人であれすべての離反を歓迎する…。離反は体制が内部から浸食されていることを示すものだ」と述べた。

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シリア国民評議会の執行委員会は声明を出し、ヒジャーブ首相の離反を「犯罪者体制があらゆる限度を越えて行ったことに…いかなるシリア人も沈黙できないことを示している」と評した。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、ヒジャーブ首相の離反を歓迎し、「崇高な愛国心を表明した勇敢な姿勢」と称賛した。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、同胞団が武装部隊を結成したとの『テレグラフ』(8月4日付)の報道を事実無根だと否定した。

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シリア国民評議会は声明を出し、ハマー県ヒルブナフサ村で「宗派主義的(強制)移住政策」の一環として「虐殺」が行われ、約40人が殺害されたと発表した。

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シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー報道官はEuro 1(8月6日付)に対して、反体制武装勢力がカタール、サウジ、リビアから「伝統的軽火器」を入手していることを認めた。

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自由シリア軍のタウヒード旅団アムル・ブン・アース大隊は、アレッポ市ザバディーヤ地区にある「ファウワーズ・ダッフー人民議会議員」の自宅で大量の麻薬を発見したとする映像をフェイスブック(8月6日付)を通じて配信した。

ダッフー氏は「シャッビーハのボスの一人」だというが、現人民議会にはファウワーズ・ダッフーなる議員はいない。

https://www.youtube.com/watch?v=i3NpjJqPz9U

イラン人巡礼者拉致事件をめぐる動き

バッラー大隊は、フェイスブックでイラン人巡礼者48人を拉致したと発表、またこのうち3人が軍・治安部隊の砲撃で死亡したことを明らかにした。

また同大隊は、拉致したイラン人が巡礼者ではなく、イラン・イスラーム革命防衛隊のメンバーだと主張した。

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イランのホセイン・エミール・アブドゥッラフヤーン外務副大臣は、アーラム・チャンネル(8月6日付)に対して、ダマスカス郊外県で誘拐されたイラン人48人が軍人ではなく一般の巡礼者だと述べた。

レバノンの動き

アレッポ県で拉致されたレバノン人巡礼者(シーア派)11人の家族が、ベイルート国際空港への街道を封鎖し、当局による人質解放への対応に抗議した。

NNA(8月6日付)のよると、抗議の座り込みは当局高官が何らかの対応をするまで続けられる、という。

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ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長はテレビ演説を行い、シリア情勢に関して、「米国、西欧、イスラエルがシリアの反体制勢力が(アサド政権との)対話を許さない」と非難したうえで、「シリアにおける問題解決は戦闘を終わらせ、前提条件なしの対話に訴えることだ」と述べた。

諸外国の動き

ヒジャーブ首相の離反に関して、ジェイ・カーニー米ホワイト・ハウス報道官は「アサドの権力掌握が緩んでいることを示している」と述べた。

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ヒジャーブ首相の離反に関して、フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、「ほとんどの支持者を失うほどまでに、武力弾圧を選択した体制が弱体化している」と評価した。

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ヨルダンのナースィル・ジャウダ外務大臣は、対シリア国境に位置する国営のザアタリー・シリア避難民キャンプを視察した。

視察には、米国、英国、フランスなど10カ国の大使が同行した。

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イランのホセイン・エミール・アブドゥッラフヤーン外務副大臣は、イラン国営通信(8月7日付に対して、シリアでの紛争に対して「現実的な姿勢」をとる国々のみを一同に介した国際会議を開き、「現下の危機を脱却し、安定を回復する方法」を案出すると述べた。

AFP, August 6, 2012、Akhbar al-Sharq, August 6, 2012、Facebook, August 6, 2012、al-Hayat, August 7, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 6, 2012、Naharnet.com, August 6, 2012、NNA, August 6, 2012、Reuters, August 6, 2012、SANA, August 6, 2012、Youtube, August 6, 2012などをもとに作成。

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軍がアレッポ市サラーフッディーン地区に戦闘機やヘリコプターを用いた砲撃を加える、ゴラン高原の停戦ラインに近づいたシリア人1人にイスラエル軍が発砲(2012年8月5日)

国内の暴力(アレッポ県)

AFP(8月5日付)は、ムハンマド・ハサンなる活動家の話として、アレッポ市サラーフッディーン地区が早朝、戦闘機やヘリコプターの砲撃を受けた、と報じた。

Kull-na Shuraka', August 5, 2012
Kull-na Shuraka’, August 5, 2012

同活動家によると、「同地区には住民はほとんどいない」が、建物が破壊され「アレッポ版バーバー・アムルー」にといった様相だという。

またこのほか、裁判所地区も軍・治安部隊の激しい砲撃を受けたという。

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シリア人権監視団によると、アレッポ市サイイド・アリー地区で軍・治安部隊と反体制武装勢力が激しく交戦した。

また空軍情報部の施設があるジャムイーヤ・ザフラー地区で軍・治安部隊と反体制武装勢力が激しく交戦し、戦闘員2人が死亡したという。

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一方、SANA(8月5日付)によると、アレッポ市のバーブ・ハディード地区、サイフ・ダウラ地区、サラーフッディーン地区、ハミーディーヤ地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺害した。

また軍・治安部隊はアレッポ大学理学部地区に集結していた反体制武装勢力と交戦し、アフガニスタン人を含む戦闘員複数を殺害した。

またカワーキビー公園地区、マサーキン・ハナーヌー地区では、軍・治安部隊は湾岸アラブ諸国出身者やトルコ人からなる民兵と交戦し、彼らを殺害、逮捕した。

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『ワタン』(8月5日付)は、アレッポ市「東部の一部の大衆地区の部族出身者など、多数の市民が武装勢力と対決するため人民レジスタンス運動に参加し…、軍の戦闘は好転するだろう」と報じた。

また「シリア軍は現地で戦闘の性質や戦況を精査し、武装勢力が集中する地域への包囲を強化する…にはさらなる増援部隊が必要だと判断していることは明白」と続けた。

国内の暴力(イラン人巡礼者誘拐)

ダマスカス郊外県でのイラン人巡礼者48人の誘拐(8月4日)に関して、自由シリア軍バッラー大隊の司令官だというアブドゥンナースィル・シャミール大尉は、アラビーヤ(8月5日付)にイラン人巡礼者を誘拐したことを認めた。

また「自由シリア軍は、イラン人に関する情報を得た。そして約2ヶ月にわたって、彼らを追跡した…。彼ら(人質)への聴取により、イラン・イスラーム革命防衛隊の現役の士官複数がいることが分かった」と付言した。

イラン人巡礼者を乗せたバスは、巡礼地近くではなく、軍・治安部隊と反体制武装勢力の戦闘が行われている地域の途上にいた、と述べた。

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一方、シリアの反体制勢力のある幹部はAFP(8月5日付)に対して、イラン人巡礼者を誘拐したのが「ジュンドッラー」だとしたうえで、人質がイラン・イスラーム革命防衛隊のメンバーではない、と述べた。

同幹部によると、バラー大隊は実行犯ではなく、イラン人シーア派に対するスンナ派過激派の行為を隠するために行動しているに過ぎない、と語った。

また「人質が革命防衛隊であったら、護衛なしに反体制武装勢力が制圧している地域を移動するはずない」と付言した。

「ジュンドッラー」なる組織は、クナイトラ県出身者などシリア人からなる過激派だという。

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「アフバール・シャルク」(8月5日付)は、イラン国営放送の報道として、アリー・アクバル・サーレヒー外務大臣がシリアで誘拐されたイラン人巡礼者48人の釈放のための仲介を行うようトルコとカタールの外務大臣に要請したと報じた。

国内の暴力(その他)

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カーブーン区で大規模な治安部隊による逮捕・摘発活動が行われたほか、ルクンッディーン区などで厳戒態勢が強化された。

またタダームン区で遺体3体が発見された。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザマルカー町への砲撃により1人が死亡した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区での砲撃により1人が死亡した。

またアービル村の軍検問所で1人が射殺された。

一方、SANA(8月5日付)によると、ヒムス市のジャウラト・シヤーフ地区で反体制武装勢力の武器庫が爆発した。

またクサイル市および郊外、ハウラ地方では軍・治安部隊が反体制武装勢力が交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ハントゥートィーン村、カフルサジュナ村、ラカーヤー村、マダーヤー町、マアッルディブサ村が砲撃を受け、カフルサジュナ村で1人が死亡した。

またアリーハー市も砲撃を受け、2人が死亡した。

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ハマー県では、SANA(8月5日付)によると、ハマー市のサワーイク地区で反体制武装勢力の戦闘員多数を軍・治安部隊が逮捕した。

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ダルアー県では、SANA(8月5日付)によると、ダルアー市郊外のヤードゥーダ地方で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷、逮捕した。

シリア政府の動き

アラビーヤ(8月5日付)は、7月18日に暗殺されたアースィフ・シャウカト副参謀長の写真(独占入手)を公開した。

Zamān al-Waṣl, August 5, 2012
Zaman al-Wasl, August 5, 2012
Zamān al-Waṣl, August 5, 2012
Zaman al-Wasl, August 5, 2012
Zamān al-Waṣl, August 5, 2012
Zaman al-Wasl, August 5, 2012

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『クッルナー・シュラカー』(8月5日付)は、政治治安部ダマスカス支部情報課のヤアラブ・シャルア課長(大佐)が離反し、身内の士官複数とともにヨルダンに逃走した、と報じた。

同行した士官は、ヤースィル・ハーッジ・アリー大佐、タウフィーク・ハーッジ・アリー中佐、キナーン・シャルア中尉。

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『クッルナー・シュラカー』(8月5日付)は、アレッポ警察の警備課のイブラーヒーム・ハリーリー大佐と、工業地区課のヤザン・ハリーリー課長がそろって離反し、トルコ領内に逃走した、と報じた。

Zamān al-Waṣl, August 5, 2012
Zaman al-Wasl, August 5, 2012

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シリア初の宇宙飛行士のムハンマド・ファーリス少将が離反を宣言した。

ザマーン・ワスル(8月5日付)が報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会は、シリア軍・治安部隊がアレッポ市内の歴史的建造物などに砲撃を加えていると非難した。

Zamān al-Waṣl, August 5, 2012
Zaman al-Wasl, August 5, 2012

しかしSANA(8月5日付)は、歴史的建造物や遺跡への砲撃に関する情報が「根拠がない」とただちに否定した。

レバノンの動き

『クッルナー・シュラカー』(8月5日付)は、シリア国内の反体制武装勢力掃討に動員されていたヒズブッラーの戦闘員56人が過去3日間で殺害され、密かにレバノン本国に搬送された、と報じた。真偽は定かでない。

Kull-na Shuraka', August 5, 2012
Kull-na Shuraka’, August 5, 2012

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ナハールネット(8月5日付)は、PFLP在レバノン支部のマルワーン・アブドゥルアール氏の話として、ダマスカス県ヤルムーク区での戦闘激化に伴い、過去3日間でパレスチナ人約600世帯がシリアからレバノンに避難した、と報じた。

イスラエルの動き

『ハヤート』(8月5日付、インターネット版)は、ゴラン高原の停戦ラインにシリア人1人が近づき、イスラエル軍が発砲し、負傷を追わせたと報じた。

イスラエル側の証言によると、このシリア人はシリア国内の戦闘を逃れて停戦ラインに近づき、イスラエル軍の発砲を受けた、という。

al-Hayat, August 6, 2012
al-Hayat, August 6, 2012

諸外国の動き

オーストラリアのシドニーでアサド政権を支持するデモが行われ、数百人が参加した。

AFP, August 5 2012、Akhbar al-Sharq, August 5 2012、Alarabia.net, August 5, 2012、al-Hayat, August 5, 2012、August 6, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 5, 2012、Naharnet.com, August 5, 2012、Reuters, August 5, 2012、SANA, August 5, 2012、al-Watan, August 5, 2012、Zaman al-Wasl, August 5, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アレッポ市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と激しい交戦を繰り広げるなか、ダマスカス郊外県でイラン人巡礼者48人が乗ったバスがハイジャックされる(2012年8月4日のシリア情勢

国内の暴力(アレッポ県)

シリアの治安当局高官はAFP(8月4日付)に対して、「アレッポの戦闘はまだ始まっておらず、現下の砲撃は単なる準備に過ぎない…。「メインディッシュはもうすぐ出てくる」と述べた。

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自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐はアレッポ市の「サラーフッディーン地区への砲撃は戦闘開始以来もっとも激しいが、バッシャールの軍は前進できずにいる」と述べた。

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一方、SANA(8月4日付)によると、アレッポ市のハムダーニーヤ地区、スッカリー地区、サラーフッディーン地区、サーフール地区、バーブ・ナイラブ地区、サイフ・ダウラ地区、フルカーン地区、カッラーサ地区、ハーン・アサル村で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷、逮捕し、武器弾薬を押収した。

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ジャズィーラ(8月4日付)は、自由シリア軍がサアドゥッラー・ジャービリー広場(サアドゥッラー・ジャービリー地区)から2キロの距離にあるラジオ・テレビ機構ビルを攻撃したのを受け、アレッポ市内での地上テレビ放送が一時視聴不能になったと報じた。

これに対して、SANA(8月4日付)は、反体制武装勢力がアレッポ市内のラジオ・テレビ機構を襲撃したが、軍・治安部隊が撃退、多数を殺傷した、と報じた。

またシリア人権監視団によると、反体制武装集団がアレッポのラジオ・テレビ機構ビル周辺への砲撃を避けて撤退する前に、仕掛け爆弾を爆発させた、という。

しかし『シャルク・アウサト』(8月5日付)は、自由シリア軍消息筋の話として、ラジオ・テレビ機構ビル近くにシリア空軍の戦闘機が墜落した、と報じた。

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SANA(8月4日付)によると、アレッポ市郊外のカブターン・ジャバル地方で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員に甚大な被害を与えた。

国内の暴力(その他)

シリアの軍消息筋は、ダマスカス県の「マイダーン地区から、ザーリー、マッザ、カダム、スバイナ、ダッフ・シューク、ヤルダー、バッビーラー、タダームン、ハジャル・アスワドにいたるすべての地区を我々は浄化した」と発表した。

またSANA(8月4日付)によると、軍・治安部隊がタダームン区とズライハ地区の「浄化」を完了した。

一方、SANA(8月4日付)によると、ヤルダー地区で反体制武装勢力が誘拐・殺害した市民の遺体が遺棄された集団墓地が発見された。

これに関して、AFP(8月4日付)は、ヤルダー地区のゴミ処理場で約15体の遺体が発見された、と報じた。

またアッバースィーイーン病院裏に迫撃砲が着弾し、市民1人が犠牲となった。

一方、『クッルナー・シュラカー』(8月4日付)によると、早朝からバーブ・シャルキー地区やジャルマーナー市で軍・治安部隊による激しい砲撃が行われたという。

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SANA, August 4, 2012
SANA, August 4, 2012

ダマスカス郊外県でイラン人巡礼者48人が乗ったバスがハイジャックされた。

アブドゥルマジード・カーンジョー駐シリア・イラン領事によると、巡礼者らは巡礼ツアーを終え、ダマスカス国際空港に向かう途上で「武装集団」に誘拐された。

またシリア・アラブ・テレビ(8月4日付)によると、誘拐された巡礼者がサイイダ・ザイナブ・モスクを巡礼しようとしていた、と報じた。

一方、SANA(8月4日付)によると、アルバイン市で道路を封鎖しようとした反体制武装勢力と軍・治安部隊が交戦した。

このほか、『クッルナー・シュラカー』(8月4日付)は、ダマスカス郊外県での軍・治安部隊と反体制武装勢力の戦闘で、第10師団のウマル・ジャッバーウィー司令官(少将)が戦死した、と報じた。

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ヒムス県では、SANA(8月4日付)によると、タルビーサ地方、ラスタン地方、クサイル地方各所で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(8月4日付)によると、マヤーディーン市やクーリーヤ市で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

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イドリブ県では、SANA(8月4日付)によると、ジスル・シュグール地方で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

シリア政府の動き

アラビーヤ(8月4日付)は、シリアのバッシャール・ジャアファリー国連大使とその家族が殺人の脅迫を受けており、米当局に通報したと報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長はイラク・クルディスタン自治区のエルビルで記者会見を開き、「自由シリア軍はアレッポから撤退していないし、今後も撤退しないだろう」と述べる一方、「イラクのようにバアス党を根絶するつもりはない」と述べた。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、シリアの現下の紛争を「代理戦争」と評した潘基文国連事務総長の発言(8月3日)に関して、「シリア国民への侮辱」と強く非難した。

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シャームの民のヌスラ戦線は声明を出し、7月19日に誘拐されていたムハンマド・サイード氏(シリア・アラブ・テレビのキャスター)を殺害したと発表した。

声明には「第41号」との連番が振られた。

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ロンドンで活動する反体制組織のシリア人権監視団は、7月の死者数が4,239人に上ったことを明らかにした。

ラーミー・アブドゥッラフマーン会長によると、このうち3,001人が民間人、1,133人が軍・治安部隊兵士、105人が離反兵だという。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は『シャルク・アウサト』(8月5日付)に対して、「手を血で染めていない政府高官と交渉する用意がある」と述べた。

レバノンの動き

LBC(8月4日付)は、シリア解放党なる組織のシャイフ・イブラーヒーム・ズウビー党首の話として、レバノン人巡礼者(シーア派)11人をアレッポ県で誘拐した誘拐犯のアジトが砲撃を受け、人質2人が脱走した、と報じた。

マヤーディーン(8月4日付)はこの砲撃により、誘拐犯の一人「アブー・イブラーヒーム」が負傷した、と報じた。

ズウビー党首は、誘拐犯グループは残る人質とともに別の場所に移動した、という。

またズウビー党首は、脱走した人質と、砲撃で負傷した人質の氏名を近く明らかにすると付言した。

諸外国の動き

中国外交部の王克倹西アジア北アフリカ局副局長は記者会見で、シリア情勢に関して「政治的解決の扉を性急に閉さず、ましては軍事介入を開始しない」よう呼びかけた。

また「シリアに対する中国の姿勢をめぐる一部の国の批判は根拠がない…。これらの国は自国の地政学的国益を擁護し、紛争の政治的解決を妨害、ないしは反故にしようとさえしている。しかも他国に事態が困難であることの責任を押しつけようとしている」と非難した。

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ロイター通信は声明を出し、ハッカーが同通信社のウェブサイトに侵入し、自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐との会談に関する偽のニュースを配信した、と発表した。

AFP, August 4, 2012、Akhbar al-Sharq, August 4, 2012、Alarabia.net, August 4, 2012、Aljazeera.net, August 4, 2012、al-Hayat, August 5, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 4, 2012、Naharnet.com, August
4, 2012、Reuters, August 4, 2012、SANA, August 4, 2012、al-Sharq al-Awsat, August 5, 2012などをもとに作成。

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ダマスカス県ヤルムーク区の繁華街に何者かの手による迫撃砲複数発が着弾、シリア・クルド国民評議会がシリア国民評議会との合併を拒否(2012年8月3日)

国内の暴力(アレッポ県)

アレッポ市では、シリア人権監視団、シリア革命総合委員会、総攻撃の準備を着々と整える軍・治安部隊と反体制武装勢力がサラーフッディーン地区、ザバディーヤ地区、マールティーニー地区、スッカリー地区、サイフ・ダウラ地区などで交戦した。

AFP(8月3日付)によると、シャッアール地区では、「国民は自由と平和を望む」とのシュプレヒコールをあげ、反体制デモを行った。

またシリア人権監視団によると、ハラク地区、サイフ・ダウラ地区、シャッアール地区、スッカリー地区、ハラブ・ジャディーダ地区、フィルドゥース地区、フルカーン地区、ブスターン・カスル地区で行われた。またアレッポ市郊外の村々でも反体制デモが行われた。

デモ発生現場のほとんどは反体制武装勢力が掌握しているとされる地域だという。

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一方、SANA(8月3日付)によると、アレッポ・ラッカ街道で軍・治安部隊が反体制武装勢力を攻撃し、戦闘員多数を殺傷した。

また、アレッポ市内のインザーラート地区、アレッポ市郊外のハフサ町、マスカナ市では、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

国内の暴力(ダマスカス県ヤルムーク区)

シリア人権監視団によると、ヤルムーク区(パレスチナ難民キャンプ)でイフタールの準備で混雑していた繁華街に迫撃砲複数発が着弾、子供2人を含む21人が死亡した。

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同監視団によると、誰が迫撃砲を発射したのかは「不明」だが、複数の医療筋によると、軍・政府軍による砲撃だという。

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砲撃に先だって、同地区では2日晩に、アサド政権に反対するデモが発生し、治安部隊やPFLP-GCの支援者がデモ参加者に発砲する事件が発生した。

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またパレスチナ人権センターによると、事件の前日の2日晩、PFLP-GCの支持者がキャンプ内および隣接するタダームン区に至る街道に、「キャンプ保護」のために展開していた。

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PLO執行委員会のヤースィル・アブドゥラッブフ書記長はロイター通信(8月3日付)に対して、「シリア政府が虐殺の責任を負っている」と非難した。

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ハマースも声明を出し、「ヤルムーク・キャンプを狙った凶悪犯罪を強く非難する」との意思を示した。

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一方、パレスチナ自治政府大統領府は、「アフマド・ジブリールら一部の当事者が…我らが人民とキャンプをシリアの血塗られた暴力の連鎖のなかに陥れ、彼らをこのホロコーストの燃料に変えようとしている」と非難した。

またシリアの内政への不干渉と、シリア、レバノンなどのパレスチナ難民キャンプの中立化を改めて確認しつつ、即時の暴力停止を呼びかけた。

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イスラーム聖戦もまた声明で「凶悪犯罪」と非難した。

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SANA(8月3日付)は、ヤルムーク区での砲撃に関して、隣接するタダームン区で軍・治安部隊と反体制武装勢力の砲撃戦が行われ、そのなかで「武装テロ集団が迫撃砲でヤルムーク区を標的とした」と報じた。

国内の暴力(その他)

ダマスカス県では、シリア人権監視団など複数の目撃者や活動家によると、タダームン区に軍・治安部隊の戦車、兵員輸送車数十輌が突入し、夕方までに同県のほぼ全域を完全掌握した。

一方、タダームン区では、SANA(8月3日付)によると、軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」と交戦し、戦闘員多数を殺傷・逮捕、武器弾薬を押収した。

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ヒムス県では、SANA(8月3日付)によると、ヒムス市のダイル・バアルバ地区で軍・治安部隊が反体制武装勢力の拠点(地下壕)を制圧した。

またハミーディーヤ地区では反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

またクサイル市では軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトを襲撃し、戦闘員多数を殺傷した。

SANA(8月3日付)によると、タッルカラフ地方では、国境警備隊がレバノン領内から潜入を試みた反体制武装勢力と交戦、撃退した。

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ダルアー県では、SANA(8月3日付)によると、ブスル・ハリール市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、外国人を含む複数の戦闘員を殺傷した。

また東ガーリヤ村でも軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、甚大な被害を与えた。

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ハマー県では、シリア革命総合委員会や地元調整諸委員会によると、ハマー市アルバイーン地区で軍・治安部隊の砲撃により反体制武装勢力戦闘員と民間人合わせて数十人が死亡した。

詳細は明らかでない。

またシリア国民評議会広報局も、ハマー市で2日早朝から砲撃に曝されていると発表した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(8月3日付)によると、ダイル・ザウル市では、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、戦闘員多数を殺傷した。

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イドリブ県では、SANA(8月3日付)によると、ジスル・シュグール地方各所で、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、戦闘員多数を殺傷した。

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シリア人権監視団によると、ダマスカス県、ハサカ県、イドリブ県、ダルアー県、タルトゥース県、ダイル・ザウル県、ハマー県の各地でも反体制デモが行われたという。

反体制活動家はフェイスブックなどで「ダイル・ザウル:東からの勝利」と銘打ってデモを呼びかけていた。

シリア政府の動き

カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣はモスクワでの記者会見で、「当事者は対話の開始、交渉のテーブルにどうつくかについて合意に達することができないでいる…。政治的に危機を解決するための対話が不可避なのに、アサド大統領が退陣してしまっては、対話の当事者がいなくなってしまう」と述べた。

SANA, August 3, 2012
SANA, August 3, 2012

ジャミール副首相らシリアの使節団は、ロシア側と地政学・科学・技術・通称協力統一センター設置に関する合意文書に署名した。

SANA(8月3日付)によると、この合意により、両国の民間セクターの交流、とりわけロシアの企業のシリア国内産業への参入が活性化されるという。

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東方正教会アンタキア総主教イグナティウス4世ハズィーム師ら東方協会の聖職者は、シリア国民に対して統合を呼びかけるとともに、国連に対してシリアの状況を理解し尊重するよう呼びかけた。

モスクワ総主教渉外局が伝えた。

反体制勢力の動き

『ハヤート』(8月4日付)は信頼できる消息筋の話として、シリア・クルド国民評議会がシリア国民評議会との合併を拒否した、と報じた。

同消息筋によると、シリア・クルド国民評議会の代表らは、エルビルを訪問したシリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長に対して「(合併ではなく)調整や協力を選ぶ」と回答し、シリアにおけるクルド人の権利を明確に承認するよう要求した。

スィーダー事務局長は2日にわたるエルビル訪問は、シリア・クルド国民評議会のシリア国民評議会への合流を説得することだった、という。

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シリア・クルド民主統一党(イェキーティー)のムヒーッディーン・シャイフ・アーリー書記長(シリア・クルド国民評議会)は『ハヤート』(8月3日付)に対して、「会合は、クルド最高委員会を構成するクルド民族主義勢力の全当事者、シリア国民評議会のスィーダー事務局長が出席した。また昨日(2日)の会合にはトルコのアフメト・ダウトオール外務大臣、イラク・クルディスタン地域政府の指導者らも出席した」と述べた。

アーリー書記長によると、シリア・クルド国民評議会はこの会合で、「外国の干渉拒否と社会の軍事化拒否」を求め、暴力継続への懸念と、反体制勢力の協力が不可避だとの立場を伝えた、という。

また「会合ではバッシャール・アサド大統領退陣後についても議論した…。我々はシリアのクルド人の権利をアラブ人と同様に承認する明確な文言を憲法に盛り込む必要があると主張した」という。

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イラク・クルディスタン地域政府は声明を出し、マスウード・バールザーニー大統領がシリア国民評議会のスィーダー事務局長と会談し、「シリア国民が自らの運命を決しなければならない」と伝えたことを明らかにした。

また同事務局長および「ジャズィーラ地方、ハサカの使節団」(クルド最高委員会の使節団)と会談し、同胞関係とそれを乱すような事態が発生しないことを確認した、と付言した。

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『ヒュッリイェト』(8月4日付)は、マナーフ・トゥラース准将が非公式にトルコを訪問し、トルコ外務省高官と会談したと報じた。

匿名消息筋によると、会談でアフメト・ダウトオール外務大臣と会談したかどうかは不明だが、会談は「アサド政権退任後にシリアにおいて何らかの役割を得ようとする動きの一環」だという。

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シリア国民変革潮流は、コフィ・アナン特使の辞意表明に関して、アサド政権が存続する限り特使のミッションが成功しないことは誰もが分かっていた、と述べ、歓迎の意を示すつつ、停戦イニシアチブの失敗が同特使独りの責任によるものではなく、アサド政権とそれを支持する諸勢力によるものだと非難した。

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シリア国家建設潮流は8月3日にダマスカスで予定していた「国民救済大会」を15日に延期する、と発表した。

国連の動き

国連総会は、シリアのアサド政権を非難し、全当事者に暴力の停止を求める決議案を賛成多数で採択した。

SANA, August 3, 2012
SANA, August 3, 2012

サウジアラビアが作成した決議案は、モロッコ、ヨルダン、UAE、バーレーン、チュニジア、オマーン、カタール、クウェート、リビア、エジプト、イエメン、モーリタニア、米国、英国、ドイツ、トルコ、フランス、カナダなどにより共同提出され、133カ国の支持を得た。

これに対して、ロシアや中国など12カ国が反対し、31カ国が棄権した。

審議に際して、ロシア、中国、ブラジル、インド、南アフリカ、アルジェリア、アルゼンチン、ヴェネズエラなどは、決議案にアサド政権の退陣や制裁を明記することに強く反対し、これらの文言は採択された決議案から削除された。

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国連の潘基文事務総長は国連総会で「次のステップは予見できた。地域および国際社会の当事者が互い(の支援者)に武器を供与する代理戦争だ。こうした予想は実際に起きてしまっている」と述べ、国連安保理の分裂と関係当事国の過激化を非難した。

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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は国連総会での対シリア「決議案を支持する国は、資金、武器、そしてヒステリックなまでの情報キャンペーンを通じて公然と武装テロ集団を支援している」と述べ、決議を「ヒステリックかつ妄想的」だと非難、主権尊重と内政不干渉を唱う国際法の原則に反していると主張した。

諸外国の動き

『ハヤート』(8月3日付)は、ロイター通信やAFPの報道をもとに、バラク・オバマ米大統領がシリアの反体制武装勢力への支援を認める「秘密文書」に署名した、と報じた。

同報道によると、署名の時期、支援の具体的な内容は明らかでないが、大統領命令に基づき、反対武装制勢力の教練を行うトルコや湾岸アラブ諸国と協力を行っている、という。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、BBC(8月3日付)に対して、シリアの反体制勢力に対して「非戦闘」機器の供与を通じて支援を増大させると述べた。

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アナトリア通信(8月3日付)は、トルコ軍がキリス県の対シリア国境で軍事演習を行い、重戦車、兵員輸送車、地対空ミサイルを投入した、と報じた。

軍事演習は2日にも行われていた。

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『ハヤート』(8月4日付)は、トルコの匿名消息筋の話として、7月のダマスカス、アレッポでの攻撃激化により、トルコ国内のシリア人避難民は44,000人から45,500人に増加した、と報じた。

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ロシア外務省はアナン特使の辞意表明に関して声明を出し、「早急に後任を探すべき…、現状においてシリアに国連がプレゼンスを維持することはきわめて重要」との意思を示した。

また「残念ながら、シリアの反体制勢力はいつも政治的対話に関する提案を拒否し、西側諸国と一部の地域諸国は反体制勢力に影響力を行使できるにもかかわらず、何もしない」と批判した。

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キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は「シリアでの平和的な政治的転換のための行動を貫徹するため、アナン特使の後任を早急に任命することを呼びかける」と述べた。

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フランスのジェラール・アロー国連大使は、「UNSMISは8月19日に消滅すると思う」と述べた。

なおフランスは8月の安保理議長国である。

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中国外交部報道官はアナン特使の辞意表明に関して「遺憾」の意を示すとともに、「アナン特使の仲介が困難だったことを理解し、彼の決断を尊重する」としつつ、「中国は適切な方法によって国連がシリアの問題解決において役割を果たすことを支援する」との立場を示した。

AFP, August 3, 2012、Akhbar al-Sharq, August 3, 2012、al-Hayat, August 3, 2012、August 4, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 3, 2012、Naharnet.com, August 3, 2012、Reuters, August 3, 2012、SANA, August 3, 2012などをもとに作成。

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ダマスカス県バーブ・トゥーマー地区で軍・治安部隊と反体制武装勢力が「初の交戦」、アレッポ県ではウサーマ・ブン・ザイド・モスクのイマームが武装集団に誘拐される(2012年8月1日)

国内の暴力

ダマスカス県では、内外の反体制勢力がバーブ・トゥーマー地区で軍・治安部隊と反体制武装勢力による「初の交戦」があったと相次いで発表した。

Youtube, July 31, 2012
Youtube, July 31, 2012

シリア人権監視団によると、バーブ・トゥーマー地区での交戦で少なくとも1人が死亡した。

地元調整諸委員会によると、バグダード通り、マリク・ファイサル通り、アマーラ地区、バーブ・トゥーマー地区で「激しい銃撃戦」があった。

シリア革命総合委員会によると、カダム区で、治安部隊が一斉捜索を行った。

また、AFP(8月1日付)は、目撃者の証言として、バーブ・シャルキー地区前の軍の拠点が武装集団に襲撃され、25分にわたって激しい交戦があったと報じた。

一方、SANA(8月1日付)も、アマーラ地区で警察当局が反体制武装勢力のアジトに突入し、戦闘員複数を殺害、逮捕した、と報じた。

また逮捕した容疑者の聴取から、別のアジトがあることをつきとめ、警察当局が突入、戦闘員複数を殺害、逮捕した、という。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団や地元調整諸委員会によると、ジュダイダ・アルドゥーズ市に軍・治安部隊が戦車・装甲車を投入し、反体制武装勢力の掃討作戦を行い、商店などを破壊した。

一方、SANA(8月1日付)によると、ヤルダー地方、バッビーラー地方で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を逮捕、武器を押収した。

またジュダイダ・アルトゥーズ地方では、軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」を追跡した。

このほか、「アフバール・シャルク」(8月1日付)によると、ダーライヤー市で、政府による弾圧で衛生状態が悪化したことに対処するため、反体制運動の一環として、若者、子供らが清掃道具をもって街を清掃しながら、抗議行動を行った。

SANA, August 1, 2012
SANA, August 1, 2012

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アレッポ県では、シャーム・プレス(8月1日付)が、武装集団がアレッポ市アグヤル地区にあるウサーマ・ブン・ザイド・モスクのイマーム、マフムード・ハッスーン師を誘拐したと報じた。

同師は共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師の弟。

一方、SANA(8月1日付)によると、サラーフッディーン地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」を追跡、複数の外国人多数を含む戦闘員多数を殺害、逮捕した。

またアレッポ市郊外のアターリブ地方で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、殲滅した。

さらにカフル・ハラブ村、サフバ・ジュブール村、ジャンダラート地方などでも軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、複数の外国人を含む戦闘員を殺害した。

『ワタン』(8月1日付)も、軍部隊が反体制武装勢力が多数潜伏するアレッポ市東部の複数の地区に対して作戦を行い、甚大な被害を与えたと報じた。

またバーブ・ナイラブ地区の掃討を行い、バアス党アレッポ支部施設を襲撃していた反体制武装勢力に人的被害を与えた、という。

これに対して、自由シリア軍のアブドゥンナースィル・ファルザート准将は、AFP(8月1日付)に、バーブ・ナイラブ地区、サーリヒーヤ地区南部、イブラーヒーム・ハナーヌー地区の警察署3カ所を7月31日に制圧し、「小さな勝利を収めた」と発表した。

またシリア人権監視団などによると、ザフラー地区にある空軍情報部本部の制圧をめざす反体制武装勢力と軍・治安部隊との間で激しい戦闘が行われた。

しかし、シリアの治安筋はAFP(8月1日付)に対して、「破壊分子はこの5日間、空軍情報部本部を制圧しようとしているが、何らの成果も上げられずにいる」と述べた。

反体制武装勢力は、ユーチューブ(8月1日付)に、アレッポ市内でビッリー部族の軍・治安部隊兵士たちを処刑するビデオをアップした。

シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラー所長によると、ビッリー部族(スンナ派)は「親体制の部族」としたうえで、「体制がこうしたスンナ派の諸部族を戦闘に参加させ、軍を支援させることは、国を内戦に陥れたいからだ」と支離滅裂な反体制武装勢力擁護を行った。

なおユーチューブにはこの他にも、ビッリー部族の民間人に対する反体制武装勢力の虐殺の映像が複数アップされている。

Youtube, July 31, 2012
Youtube, July 31, 2012
Youtube, July 31, 2012
Youtube, July 31, 2012
Youtube, July 31, 2012
Youtube, July 31, 2012

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ダイル・ザウル県では、SANA(8月1日付)によると、ダイル・ザウル市の複数カ所で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、複数の戦闘員を殺害した。

またマヤーディーン市では、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追跡した。

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イドリブ県では、SANA(8月1日付)によると、アリーハー市近郊で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺害した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のカラービース地区を軍・治安部隊が完全制圧した。

この完全制圧は、反体制武装集団の撤退を受けたものだという。

また同監視団によると、ヒムス市ダイル・バアルバ地区では、軍・治安部隊と反体制武装勢力が激しく交戦し、バーブ・フード地区、旧市街、スルターニーヤ地区、ジャウバル区などが砲撃に曝された。

一方、SANA(8月1日付)によると、タッルカラフ市郊外、クサイル市郊外、タルビーサ市郊外で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員複数を殺害した。

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ラタキア県では、シリア革命総合委員会によると、ラムル・ジャヌービー地区(パレスチナ難民キャンプなど)で重火器の発砲があり、一時停電した。

シリア政府の動き

アサド大統領(軍武装部隊総司令官)は、軍の機関誌『人民軍』を通じて、シリア・アラブ軍創設67周年の祝辞を発表し、反体制武装勢力掃討にあたる将兵を鼓舞した。

SANA, August 1, 2012
SANA, August 1, 2012
SANA, August 1, 2012
SANA, August 1, 2012

SANA(8月1日付)によると、祝辞の主な内容は以下の通り。

「我々が敵と行っている戦いは、多様な形態ではあるが目的や方針は明らかな戦いである。それは、過去、現在、そして未来にわたる我々国民そして民族の行方がかかった戦いである…」。

「彼ら(敵)は、我々国民が愛国的決定を下すことを阻止し、武装放棄させようとしてきた。しかし、彼らはこの高貴なる国民が一丸となって、こうした計略に対抗・挑戦したことに驚愕し、敗北を喫し、出口を探すことを余儀なくされ、揺るぎない抵抗を続ける我々の国にさまざまな計略をめぐらせようとしている…。しかし我々国民は断固たる意志をもって、これらの計略を鎮めた…」。

「祖国を守る男たちよ。貴方たちは…、これまで我々の国が曝されている戦争を戦い、犯罪テロ集団と対峙することで、強固な意志と活力に満ちた自己を備えていること、そして自らが属す国民の価値観を託された者であり、国民の歴史と文明に忠誠を誓う者であることを証明してきた…。貴方たちは今後もこうした称号にふさわしい者たちであり続けるだろう…」。

「貴方たち(軍)は、自らの名誉と尊厳を護り、自身への大きい信頼と、神聖なる義務を履行しようとする強い意志をもって…、祖国の安定を回復し、市民の安全を回復するだろう…。貴方たちは今日、祖国を守る武装部隊たるべく、さらなる準備…を求められている。貴方たちへの私の信頼は大きい。我々国民は貴方たちが安全を作りだし、誇りの源泉であることを…期待している…」。

 

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シリア・アラブ軍創設67周年の祝典がダマスカス県のカシオン山麓にある戦没者慰霊塔で行われ、ファフド・ジャースィム・フライジュ国防大臣(軍武装部隊副司令官)ら軍幹部が参列した。

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『クッルナー・シュラカー』(8月1日付)は、アレッポ市A部門選出のムハンマド・アナス・ムハンマド・シャーミー人民議会議員(無所属)がアレッポ市での戦闘激化を受け、カイロに避難した、と報じた。

シャーミー議員はいまだ離反の有無を発表していないが、最近親戚のアブドゥッラティーフ・シャーミー氏が暗殺された、という。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、AFP(8月1日付)に対して、ハイサム・マーリフ氏の暫定政府首班就任宣言とシリア革命評議会発足を「我々が望んでいない拙速な行為」と批判し、「こうした方法での政府の発足は反体制勢力を弱体化させる」と述べた。

また暫定政府発足に関して「発足するには充分な時間をかけなければならず…、現地情勢や(社会の)多様性を反映しなければならない」と付言した。

Kull-na Shurakāʼ, August 1, 2012
Kull-na Shurakaʼ, August 1, 2012

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自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐は、AFP(8月1日付)に対して、ハイサム・マーリフ氏の暫定政府首班就任宣言とシリア革命評議会発足を「死産」と批判、「本件に関して我々に何の相談もなかった…。一部の人間が特定の人物を首班に指名するというのは無責任な行為だ」と述べた。

暫定政府発足に関して、他の反体制勢力と接触しているかとの問いに対して、サアドゥッディーン大佐は「すべての政治家と話し合っている。我々はすべての反体制勢力と等距離だ」と述べた。

また自由シリア軍国内司令部が30日に発表した暫定政府構想(「最高国防評議会」構想)については、「国内の反体制勢力の分断を回避するため」と答えた。

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トルコで暮らす自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐はアラビーヤ(8月1日付)に対して、「我々の革命に便乗し、犠牲者の血をもてあそんでいる」と批判した。

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自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルカーディル・アカイディー大佐はAFP(7月31日付)に対して、「アレッポ市およびその郊外に自由シリア軍の兵士が数千人いる」と述べるとともに、「アレッポ市を解放するまで政府軍の兵士を追跡するだろう」との意思を示した。

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自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐はAFP(7月31日付)に対して、「アレッポ市のほぼ50%を制圧し、アレッポ市郊外はほぼ完全に制圧した…。もちろんイドリブは100%制圧しており、アレッポ県とイドリブ県に緩衝地帯を設置し、ダマスカスに進軍する」と述べた。

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自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐は『ハヤート』(8月2日付)に対して、アル=カーイダが反体制武装勢力に参加しているとの報道・情報を否定した。

アカイディー大佐は、「外国から来た戦闘員がいるとしたら、それは革命に参加するために祖国に戻ってきたシリア人で、こうした組織(アル=カーイダ)とは関係はない…。政府は戦闘員やシリアの革命のイメージを貶めるためこの手の嫌疑を広めている」と述べた。

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ロイター通信(8月1日付)によると、自由シリア軍のバッサーム・ダーダー政務顧問は、反体制武装勢力が地対空ミサイルを入手したとの報道を否定したが、近く「サプライズ」を起こす準備をしている、と述べた。

レバノンの動き

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長がマナール(8月1日付)を通じてイフタールのテレビ演説を行った。

演説のなかで、ナスルッラー書記長は、2004年の国連安保理決議1559号採択に先だって、湾岸アラブ諸国がアサド大統領に「レバノンに留まりたいのなら、南部に入ってもいい。しかし、ヒズブッラーとパレスチナ人の武装解除がその代償だ」と迫ったと暴露した。

ナスルッラー書記長によると、レバノンとパレスチナのレジスタンスをアラブ民族の安全保障政策の一部とみなすアサド大統領はこの要求を拒否したという。

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内務省総合治安局は、身柄拘束中のシリア人14人をシリア当局に引き渡したと発表した。

諸外国の動き

イラクのヌーリー・マーリキー首相はロシアのミハイル・レオニドヴィッチ中東問題担当大統領特使とバグダードで会談し、シリア情勢などについて協議した。

イラク首相府が発表した声明によると、この会談で、「シリア人の流血を停止するための平和的解決策の案出が必要」だとする点で意見が一致した。

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アムネスティ・インターナショナルは、アレッポ市での戦闘に関して、軍・治安部隊がデモ参加者に実弾を使用する一方、武装テロリストからの発砲だと主張している、と非難、シリア政府が「人道に対する罪」を犯している疑いがあるとして、国際社会にシリア政府に圧力をかけるための具体的な行動をとるよう呼びかける報告書を発表した。

またこの報告書では、反体制勢力による武器供与が、人権侵害や戦争犯罪を伴うような物資が使用されないことを保証するステップを伴うべきだと付言し、反体制武装勢力の武装を暗に認めた。

AFP, August 1, 2012、Akhbar al-Sharq, August 1, 2012、Alarabia.net, August 1, 2012、Cham Press, August 1, 2012、al-Hayat, August 2, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 1, 2012、Naharnet.com, August
1, 2012、Reuters, August 1, 2012、SANA, August 1, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

イラク・クルディスタン民主党がシリアのクルド人に対する教練を開始、「シリア革命評議会」の設置が決定されハイサム・マーリフ氏がが暫定政府首班に任命される(2012年7月31日)

国内の暴力(アレッポ市)

AFP(7月31日付)は、「アレッポ革命」報道官を名のる活動家の話として、「昨日、彼ら(軍・治安部隊)は(サラーフッディーン)地区に毎分2発の迫撃砲を打ち続けた。我々はまったく動けなかった」と述べ、サラーフッディーン地区が軍・治安部隊に制圧されたとの政府側の発表を否定した。

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AFP(7月31日付)によると、アレッポ市の住民は政権支持と反体制運動支持で意見が分かれている、という。

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SANA(7月31日付)によると、サラーフッディーン地区で軍・治安部部隊は反対武装集団の「残党」の追跡を継続し、多数の戦闘員を殺傷、逮捕した。

戦闘員のなかにはイラク人、アフリカ人が含まれており、またシリア人戦闘員の多くはアレッポ市郊外の出身者だという。

またジャミーリーヤ地区、サアドゥッラー・ジャービリー地区で軍・治安部隊は反体制武装集団の戦闘員をそれぞれ11人、6人殺害した。

このほか、ダウワール・ジャズマーティーでは反体制武装集団数十人が爆弾の誤爆で死亡した。

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一方、SANA(7月31日付)によると、アレッポ市郊外では、軍・治安部隊がハンダラート・キャンプで反体制武装集団300~400人を要撃し、戦闘員多数を死傷させた。

またダーラト・イッザ市でも治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺害した。

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UNHCRは数千人の民間人がアレッポ市から脱出できず、市内の大学、モスクなどで避難生活を送っており、約300世帯が緊急支援を必要としている、とシリア赤新月社などのデータをもとに発表した。

国内の暴力(その他)

AFP(7月31日付)は、イスラーム諸国の義勇兵がシリアの反体制武装闘争を支援するためにシリア国内に潜入している、と報じた。

同通信社は、シリア北西部の複数の反体制活動家の話として、過去数ヶ月間に、リビア人、クウェート人、サウジ人、そして英国、ベルギー、米国のイスラーム教徒が反体制武装集団に参加した、と報じた。

彼らの多くは、ハマー県に向かい、そこでアフガニスタンで経験を積んだジハード主義者の教練を受け、ハマー市やダマスカス県での戦闘に参加したという。

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AFP(7月31日付)は、ダマスカス県とアレッポ市での反体制武装集団と軍・治安部隊の戦闘激化に伴い発生した避難民に関して、周辺諸国ではなく、国内の「より安全な場所」に避難している、と報じた。

同通信社は、ヒムス県からレバノンを経て、ダマスカス県ルクンッディーン区に避難していたという避難民の話として、多くのヒムス住民がダマスカス県を去り、ヒムス県に戻っていると伝えた。

またアレッポ市で避難民の多くがアレッポ市内の親戚の家、学校、大学寮、慈善団体のセンターなどに避難しており、同市で救援活動をしているボランティアによると、その数は7万人以上にのぼるという。

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ハマー県では、SANA(7月31日付)によると、サラミーヤ地方で、軍・治安部隊が反体制武装集団「残党」の追跡を継続し、戦闘員複数を殺害、武器弾薬を押収した。

またスカイルビーヤ市郊外で治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員3人を逮捕した。

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ヒムス県では、SANA(7月31日付)によると、タッルカラフ地方でレバノン領からの潜入を試みる反体制武装集団を国境警備隊が撃退し、戦闘員を殺傷した。

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ダマスカス郊外県では、『クッルナー・シュラカー』(7月31日付)によると、ジャルマーナー出身の青年らが乗った車がダマスカス国際空港街道の検問所で発砲を受け、6人が死亡、2人が負傷した。

Syrian Days(7月31日付)は、7月8日にダイル・アティーヤ市で家族とともに「何者か」に誘拐されたビジネスマンでカラムーン大学学長のサリーム・ダアブール氏が釈放されたと報じた。

家族も無事釈放された。

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ダルアー県では、『ハヤート』(8月1日付)によると、ヒルバト・ガザーラ地方の対ヨルダン国境地帯で、負傷者をレバノン領内に搬送しようとした自由シリア軍に対して、軍・治安部隊が砲撃を加えた。

反体制活動家によると、負傷者のほとんどは女性と子供。

自由シリア軍タッル・シハーブ地方のアリー・リファーイーなる活動家によると、負傷者の1人が闘争途中に砲撃を受け死亡したが、それ以外の負傷者はヨルダン領内に避難した。

シリア政府の動き

『クッルナー・シュラカー』(7月31日付)は、フサーム・ハーフィズ駐アルメニア領事ら外交官の離反が、ムハーバラートの人事改編と関係がある、と報じた。

同報道によると、アリー・マムルーク国民安全保障会議議長が、総合情報部長から現職に異動する直前に、「M.H.」、「H.H.」(ハーフィズ領事と思われる)、「D.B.」、「Gh.A.」、「A.M.」の5人の外交官のシリア本国への帰任を外務在外居住省に要請したが、異動後、これらの外交官は帰国を拒否、離反したという。

なお同報道によると、マムルーク国民安全保障会議議長に代わって総合情報部長に就任したディーブ・ザイトゥーン少将も同様の帰任要請を出しており、外交官の離反は続くことを示唆している。

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リヤード・ファリード・ヒジャーブ内閣(ヒジャーブ首相が議長を務める)が閣議を開き、「国民和解」をめぐるアリー・ハイダル国民和解問題担当国務大臣の活動・会合の進捗状況などを審議した。

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シリア・アラブ航空はEU諸国の追加制裁を受け、欧州諸国への就航便を徐々に運行停止とすることを決定した。

AFP(7月31日付)が報じた。

シリア・アラブ航空高官によると、現時点でパリ、ブカレスト、ベルリン、ブリュッセル、ラルナカ、ストックホルムなどへの便が運行停止となっている。

反体制勢力の動き

イラク・クルディスタン民主党のハイマン・フーラーミー渉外局長は、AFP(7月31日付)に対して、イラクのクルディスタン地域のキャンプで、シリアのクルド人に対する教練を開始したことを明らかにした。

この教練は「シリアの体制崩壊後の治安上の真空を埋めること」が目的だという。

またフーラーミー渉外局長は、「イラク・クルディスタン民主党もクルディスタン自治政府もシリア内政には干渉しないし、シリアのクルド人の状況をどうすべきかという政治的フォーマットを提供することもない。しかし、我々はシリアのクルド人の統合をシリアの反体制運動の基礎とし、前向きな変革を支援すべく支援してきた」と述べた。

PKK系のクルド民族主義組織の民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首は、この教練に関して「(クルド人の)保護が目的」と述べる一方、「我々にはそれができるが、西クルディスタン(シリア)の何らかの組織と合流したいと彼ら(イラクのクルド人)が考えるのなら、特別な教練が必要になろう。(シリアへの)帰宅を望む者は歓迎されるが、武器を持って帰ることはない」と述べ、クルド人武装集団のシリアへの潜入・帰国については否定した。

またシリア・クルド民主党パールティーのアブドゥルハキーム・バッシャール書記長(シリア・クルド国民評議会)は、「現時点で、シリア軍を離反したクルド人を帰国させる決定はない…。彼らは教練を終えたが、それは戦闘のためではなく、(シリアの)体制崩壊後の戦略的地域を保護するためだ」と述べた。

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民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首はAFP(7月31日付)に、「アフリーン、ダイリーク、コーバーニーの三地域が、特定の政党ではなく、人民の意思のもとにある。彼らはすべての党派を代表しており、すべての国家機関を掌握し、その高官を追放した」と語った。

また「西クルディスタンはトルコに敵対しておらず、またトルコへのいかなる敵対も計画していない…。PKKにも西クルディスタンにも武装している者は一人もいない」と述べた。

さらに「我々は反体制の民主的諸勢力国民調整委員会のメンバーだ。我々の反体制運動は、ハイサム・マンナーアやアブドゥルアズィーズ・ハイイル(いずれも国民調整委員会メンバー)とともにあるが、我々の方法は、平和的な革命を呼びかけるというものであり、武装革命ではない」と付言し、アサド政権との協力関係を否定した。

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シリア国民行動グループ代表のハイサム・マーリフ弁護士はカイロで記者会見を開き、シリアの反体制勢力の会合で「シリア革命評議会」の設置が決定され、自身が暫定政府首班に任命されたと発表した。

Kull-na Shurakāʼ, July 31, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 31, 2012

記者会見でマーリフ弁護士は「暫定内閣首班に任命された。これをもって、国内外の反体制勢力と組閣の協議を始める」と宣言した。

また「シリア革命評議会」に関して、マーリフ弁護士は「いかなる政治組織にも属さない無所属のシリア人反体制活動家の連立」だと述べた。

マーリフ弁護士によると、会合には、自由シリア軍の代表を含むシリアの反体制活動家らが参加したが、記者会見には出席しなかった。

マーリフ弁護士はシリア国民評議会を3月13日に脱退している。

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シリア国民評議会執行委員会のムハンマド・サルミーニーは、BBC(7月31日付)に対して、シリア国民評議会がカイロの会合に参加しなかったと述べた。

またシリア国民評議会執行委員会のアブドゥルアハド・アスティーフー氏は声明を出し、シリア国内の勢力との調整や協議に基づくようなかたちではいかなる暫定政府の発足も宣言しないだろう、と述べた。

アスティーフー氏によると、シリア国民評議会は、最近メディアなどで報じられている反体制勢力の暫定政府発足をめぐる動きに何ら関与しておらず、「反体制勢力内の対立を爆発させるための実験用バルーン、ないしは時限爆弾」のようなものだという。

同声明は「シリア国民評議会特派員ネットワーク」を通じて発表された。

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自由シリア軍の副参謀長を名のるアーリフ・ハンムード大佐は、BBC(7月31日付)に対して、「ハーリド・ムトラク大佐を団長とする使節団が大会に参加した。我々はシリアの反体制勢力のいかなる活動にも遅れをとらず参加する。たとえそれに反対の立場でも」と述べた。

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パリで活動する反体制組織、シリア民主世俗主義諸勢力連立はハイサム・マーリフ氏の暫定政府首班就任宣言とシリア革命評議会の結成に関して、「革命を続けるシリアの街の声、そしてそれを代表する組織に何ら問うことなく首班を指名した」し、「シリアの革命家の権利を奪う」行為と非難した。

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NBC News(7月31日付)は、シリアの反体制武装集団がトルコ国境経由で地対空ミサイル約24基を入手した、と報じた。

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シリア国民評議会は声明を出し、ダイル・ザウル市での戦闘で数百人が死亡、数千人が負傷したと発表した。

諸外国の動き

7月29日に開設したヨルダンのザアタリー・キャンプは、30日、31日の2日間で900人以上のシリア人避難民を受け入れた。

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イランの日刊紙『シャルク』(7月31日付)は、イラン軍のマスウード・ジャザーイリー副参謀長が「(イランは)シリアへの敵の進軍を許さないだろう」と述べた、と報じた。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相はバラク・オバマ米大統領と電話会談を行い、シリアでの体制転換(アサド政権退陣)について協議した。

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シリアの反体制武装集団を支援するサウジアラビアのアフマド・ビン・アブドゥルアズィーズ内務大臣は、8月2日にシリア周辺諸国のシリア人避難民への支援物資を積んだ40台の貨物車輌をサウジアラビアから派遣すると発表した。

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レオン・パネッタ国防長官はCNN(7月31日付)に対して、アサド大統領に関して「彼が自信と家族を守りたいと考えるなら、去るべきだと言いたい」と述べた。

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UNSMISのスーザン・ゴシェ報道官は、アレッポ市での軍・治安部隊の反体制武装集団掃討作戦に戦闘機が投入されていることを監視団が30日に確認した、と述べた。

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パレスチナ解放人民戦線総司令部派(PFLP-GC)のアフマド・ジブリール書記長は、ダマスカス県ヤルムーク区(パレスチナ難民キャンプ)での反体制運動の激化とシリア軍・治安部隊との衝突発生を受けて、反体制武装集団の進入を阻止するため、キャンプを要塞化する必要がある、と述べた。

反体制武装集団と軍・治安部隊との衝突で犠牲となったパレスチナ人の葬儀で、ジブリール書記長は、「シリアの分割を画策する国際的陰謀」と「武装テロリスト」に対抗する必要を強調した。

AFP, July 31, 2012、Akhbar al-Sharq, July 31, 2012, August 1, 2012, August 2, 2012、BBC, July 31, 2012、al-Hayat, August 1, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 31, 2012、Naharnet.com, July 31,
2012、Reuters, July 31, 2012、SANA, July 31, 2012、Syrian Days, July 31, 2012、al-Thawra, August 1, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア外務省がサウジアラビア、カタール、トルコが反体制武装集団に資金・武器を供与していることに抗議する書簡を国連に送付、クルド最高委員会「自らをシリア国民の一部とみなす」(2012年7月30日)

国内の暴力(アレッポ市)

シリア人権監視団や反体制活動家らによると、サラーフッディーン地区、サーフール地区、ザフラー地区、イザーア地区、アアザミーヤ地区などに対して、軍・治安部隊がヘリコプターや戦車などを投入し、砲撃を続けた。

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自由シリア軍のファルザート・アブドゥンナースィル准将はAFP(7月30日付)に対して、アレッポ市郊外のアンダーン検問所(アレッポ市北部5キロに位置)を10時間にわたる戦闘のちに制圧した、と語った。

この戦闘で、反体制武装集団は軍・治安部隊の戦車・装甲車7輌を捕捉、1輌を破壊した。

また、反体制武装集団は戦闘で6人が犠牲になった、という。

同検問所はアレッポ市とトルコ国境を結ぶ「戦略的要衝」とされる。

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自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐は、AFP(7月30日付)に対して、「我々は昨晩、サラーフッディーン地区での軍・治安部隊による3度の進軍を阻止し、戦車4輌を破壊した」と述べ、同地区の「浄化」を完了したとのシリア政府側の発表を否定した。

またアカイディー大佐は、自由シリア軍がアレッポ市の「35~40%を制圧した」と豪語した。

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一方、SANA(7月30日付)によると、アレッポ市郊外のダール・クッバターン・ジャバル回廊で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、後者の車輌4台を破壊した。

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ジャズィーラのウマル・ハシュラム特派員がアレッポ市で負傷した。

ジャズィーラ(7月30日付)によると、同特派員は、軍・治安部隊が部分的に奪還した街区で負傷、その後トルコに搬送された、という。

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ロイター通信(7月30日付)は、アレッポ市近郊の村出身の反体制活動家の話として、「アレッポ市で戦っている戦闘員の約80%は農村出身者だ。アレッポは商業都市で、住民は中立でいたいと考えている。しかし我々はここに来て、彼らは我々を受け入れているように見える」と報じた。

国内の暴力(その他)

ダマスカス県では、地元調整諸委員会によると、ルクンッディーン区やカフルスーサ区で治安部隊が大規模な逮捕・追跡活動を行った。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、マスラーバー市とハラスター市の間の農村地帯で、治安部隊が大規模な逮捕・追跡活動を行った。

またムウダミーヤト・シャーム市では16歳の少年が殺害された。

『クッルナー・シュラカー』(7月30日付)はイブラーヒーム・サーフィー中将(第1師団司令官)の息子のフィラース・サーフィー氏(シリア・アラブ航空パイロット)と妻でジャーナリストのファーディヤー・ジブリール氏がダマスカス国際空港街道で襲撃され、死亡したと報じた。

一方、SANA(7月30日付)によると、ハラスター市郊外で軍・治安部隊が反体制武装集団の残党を掃討し、多数を逮捕した。

al-Thawra, July 31, 2012
al-Thawra, July 31, 2012

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ラスタン市での砲撃で2人が死亡した。

一方、シリア・アラブ・テレビ(7月30日付)は、ヒムス市のカラービース地区の「浄化」を完了した、と報じた。

またSANA(7月30日付)によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、戦闘員多数を殺害した。

さらにクサイル地方でも軍・治安部隊が反体制武装集団を交戦し、戦闘員多数を殺害した。

このほか、タッル・カラフ地方では国境警備隊がレバノン領内から潜入を試みた反体制武装集団の戦闘員を撃退した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シャイフ・マスキーン市で2人が射殺された。

一方、ANA(7月30日付)によると、ジュッブ・サファー村、カーラ村で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数を逮捕した。

またタッル・シハーブ町の国境警備隊がヨルダン領内から潜入を試みた反体制武装集団の戦闘員を撃退した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ブライディージュ村などで、軍・治安部隊が大規模な逮捕・追跡活動を行った。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ハビート市が砲撃に曝された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ブーカマール市で2人が撃たれて死亡した。

一方、SANA(7月30日付)によると、ダイル・ザウル市内で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数を死傷させた。

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ハサカ県では、SANA(7月30日付)によると、カーミシュリー市郊外で軍・治安部隊が反体制武装集団のアジトを襲撃し、武器弾薬などを押収した。

ダイル・ザウル県沿いのサアダー村で爆発(誤爆)があり、武装テロ集団のメンバー多数が死亡した。子供2人も巻き添えになったという。

シリア政府の動き

シリアの外務在外居住者省は、国連安保理議長と事務総長宛に対して、ダマスカスとアレッポでの反体制武装集団による民間人への攻撃にサウジアラビア、カタール、そしてトルコが資金・武器を供与していることに抗議する書簡を送付した。

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英国外務省は、ハーリド・アイユービー駐英シリア臨時代理大使が辞職した、と発表した。

暴力行為や弾圧行為を犯すアサド政権を代表することが自身の意に反する、というのが離反の理由だという。

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トルコの高官筋が明らかにしたところによると、ラタキア県警察の副所長を含むシリア人士官12人が離反し、トルコ領内に避難した。

しかし同消息筋は、離反した副所長の氏名は明らかにしなかった。

反体制勢力の動き

自由シリア軍国内合同指導部は「革命の全要求を応えるための国民救国計画」と題した声明を出し、体制打倒後の暫定機関を主導する「最高国防評議会」の結成を呼びかけた。

声明によると、「最高国防評議会」は、暫定機関の国家運営を担当する「大統領評議会」の設置を第一の任務とする。

「大統領評議会」は民間人と軍人の計6人から構成され、治安・軍機関の再編を担当するという。

また声明では、「暫定政府」に関して、内務大臣と国防大臣のポストを軍に与えられるべきとするとともに、首相府担当大臣も軍が指名する民間人が就くべきだと提言した。

さらに声明では「シリア革命保護最高国民評議会」の設置も提言している。

同評議会は、「行政機関の活動を監視する議会の役割を果たす」という。

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クルド最高委員会は声明を出し、「自らをシリア国民の一部とみなす」とともに、「多元的民主的シリアに向けた革命への平和的・実質的な参加をめざす」との意思を示した。

また「シリアのクルド人は隣国の平和と治安を脅かす意思がない」と表明、また「シリア社会からの分離や分断をめざさない」と宣言した。

クルド最高委員会は、シリア・クルド国民評議会と西クルディスタン人民議会からなる政治同盟。

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Youtube, July 31, 2012
Youtube, July 31, 2012

Youtube(7月30日付)は、ラタキア県の「トゥルクマーン山」で活動するマムドゥーフ・ジュールハ大隊なる武装集団が、「日本人ジャーナリスト」と思われる青年がイスラーム教徒になったとするビデオを公開した。

諸外国の動き

国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、アレッポ市での戦闘を避け避難した市民の数が20万人以上に及ぶと赤十字国際委員会やシリア赤新月社が推計していると発表した。

また「包囲された同市で戦闘に依然として巻き込まれている人の数は把握できない」としてたうえで、戦闘に参加しているすべての当事者に、民間人を標的にしないよう求めるとともに、人道機関が住民に緊急支援を行うため安全な通行を認めるよう呼びかけた。

避難民の多くは「比較的安全な地域の学校や公共施設に一時避難している」という。

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ババカール・ジャイのUNSMIS団長は、ヒムス県のヒムス市とラスタン市を視察し、「激しい砲撃」が行われていることを確認した、と述べた。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣はRTLラジオ(7月30日付)で、アサド大統領を「死刑執行人」と非難、シリアでの流血を停止させるため、国連安保理で緊急会合の開催を求めると述べた。

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ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ首相は『タイムズ』(7月30日付)に対して、シリア情勢をめぐりロシアと西側の対立にもかかわらず、「起こり得る最悪の事態が全面的な内線突入であるという立場に皆が立っている」点で共通している、と述べた。

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サウジアラビアのアフマド・ビン・アブドゥルアズィーズ内務大臣が、シリアへの義援金が29日までに1億800万ドル集まった、と発表した。

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トルコのアフマト・ダウトオール外務大臣はイラクのクルディスタン地域訪問に先立って、「地域は大きな変革を目の当たりにしている。新たな中東を受け入れるか、混沌を受け入れるか…。過去100年においてもっとも重要でもっとも大きな変化だ」と述べた。

また「シリアのレバノン化は許されない」と述べ、シリアの内政混乱を回避したいとの意思を示した。

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『シュピーゲル』(7月30日付)は、今年2月にドイツ国内で逮捕された30歳代のシリア人男性が、シリアの反体制活動家に対するスパイ容疑で連邦裁判所で近く裁判にかけられると報じた。

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ヨルダン日刊紙『ラアユ』(7月30日付)は、シリアの反体制武装闘争に参加して、軍・治安部隊に殺害されたとSANAが報じたヨルダン人のなかに、16年前にシリアでスパイ容疑を受け死亡したヨルダン人が含まれていた、と報じた。

このヨルダン人はウサーマ・アブドゥルカーディル・アフマド・ザハビー容疑者で、ヨルダン国内の台帳(サルト市台帳)によると、1996年5月30日に死亡したになっている、という。

SANAによると、ザハビー容疑者は最近シリア国内に潜入し、ダルアー県のヒルバト・ガザーラ町で反体制武装活動に参加していた、という。

シリア当局が国内で殺害したとされるヨルダン人戦闘員に関しては、ズライカート家やジャーズィー家が、家族の名前(ムハンマド・ズライカート、ファーリス・ジャーズィー)を「盗用」されたと非難していた。

また、殺害されたとされるヨルダン人戦闘員のなかには、シリアに行ったことのない存命の青年の名前(アブー・バラー・サルティー)も含まれていた、という。

一方、『ガド』(7月30日付)は、シリアの反体制武装闘争に参加して殺害されたとされるファーリス・ムハンマド・ジャーズィーの兄弟の話として、ジャーズィーがダマスカスで逮捕されたのちに治安当局に殺害された、と報じた。

AFP, July 30, 2012、Akhbar al-Sharq, July 30, 2012、Aljazeera.net, July 30, 2012、Der Spiegel, July 30, 2012、al-Ghad, July 30, 2012、al-Hayat, July 31, 2012, August 1, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 30, 2012、Naharnet.com, July 30, 2012、al-Raʼy, July 30, 2012、Reuters, July 30, 2012、SANA, July 30, 2012、al-Thawra, July 31, 2012、The Times, July 30, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アレッポ県で反体制武装集団掃討作戦が継続され「全面的な市街戦」の様相を呈する、ムアッリム外相がイランを訪問し同国大統領と外相と会談(2012年7月29日)

国内の暴力(アレッポ市)

アレッポ県では、複数の活動家や目撃者によると、軍・治安部隊による反体制武装集団掃討作戦が継続され、ヘリコプターや戦車などによる砲撃が続き、事態は「全面的な市街戦」の様相を呈し、反体制武装集団が占拠した地域の住民はそのほとんどが避難を余儀なくされた。

Kull-na Shurakāʼ, July 29, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 29, 2012
Kull-na Shurakāʼ, July 29, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 29, 2012

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シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、軍・治安部隊の増援部隊は、そのすべてがアレッポ市内の戦闘地域に展開しておらず、多くは反体制武装集団が占拠している街区を包囲し、孤立化を狙っているという。

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アブー・アラー・ハラビーを名のる活動家はAFP(7月29日付)に対して、戦闘がバーブ・ナスル、バーブ・ハディード、旧市街にも達しつつあると述べた。

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自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐はAFP(7月29日付)に対して、飛行禁止空域の設定を西側諸国に懇願した。

アカイディー大佐は「我々は西側に緩衝地帯があると言っている。しかし我々は緩衝地帯が必要なのではなく、我々が体制を打倒できるようにするための飛行禁止空域が必要なだけだ」と述べた。

また「(軍・治安部隊の)戦車が入る街区はどこであっても、戦車の墓場になるだろう…。(軍…治安部隊は)航空機か遠距離の迫撃砲、都市に対する砲撃…を通じてしか(アレッポ市内に)入ることができない…。我々はすべての街区を堅固に護っており、おかげさまで対戦車、対空兵器を保持している…。これまで戦車8輌など車輌多数を破壊し、100人以上を殺害した」と豪語した。

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一方、SANA(7月29日付)によると、アレッポ市のサラーフッディーン地区で軍・治安部隊が反体制武装集団残党の「浄化」を完了した。

公式筋によると、同地区で殺害した戦闘員のなかには外国人が含まれていたという。

また軍・治安部隊はバーブ・ハディード、ブスターン・ザフラ地区、バルクーム地区などで武装テロ集団と交戦し、甚大な被害を与えた。

国内の暴力(その他)

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市、ムウダミーヤト・シャーム市、スバイナ町周辺で、軍・治安部隊による逮捕・追跡活動が行われ、ハーマ町で反体制活動家1人が、アルバイン市で市民1人が死亡した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区に軍・治安部隊が砲撃したほか、バーブ・フード地区では治安部隊が技師組合ビルに突入し、反体制勢力の戦闘員2人を殺害した。

Kull-na Shurakāʼ, July 29, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 29, 2012

また市内の警察署近くでも戦闘があり、反体制武装集団の戦闘員1人が死亡した。

一方、SANA(7月29日付)によると、対レバノン国境に位置するタッル・カラフ地方で、国境警備隊が潜入を試みる反体制武装集団と対峙した。

またタルビーサ地方でも反体制武装集団のアジトを襲撃し、甚大な打撃を与えた。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シャイフ・マスキーン市で激しい戦闘があった。

一方、SANA(7月29日付)によると、県内の避難民キャンプなどで軍・治安部隊反体制武装集団の追跡を継続し、「野戦病院」を発見した。

またブスラー・シャーム市、シャイフ・マスキーン市などでも軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、サイイド・ハンムード村で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、前者に死傷者が出た。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、イドリブ市で軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦、またヒーシュ村では市民2人が砲撃で死亡した。

一方、SANA(7月29日付)によると、対トルコ国境に位置するジスル・シュグール地方アイン・バイダーで潜入を試みる反体制武装集団と対峙した。

また県内各地で反体制武装集団の追跡を継続し、甚大な打撃を与えた。

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ハマー県では、シリア革命総合委員会によると、軍・治安部隊が逮捕・追跡活動を継続、ガーブ平原の村々に突入した。

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Kull-na Shurakāʼ, July 29, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 29, 2012

ダイル・ザウル県では、SANA(7月29日付)によると、ダイル・ザウル市で郡・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、甚大な被害を与えた。

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スワイダー県では、『クッルナー・シュラカー』(7月29日付)によると、スワイダー市でレバノンの親アサド政権の政治家ウィヤーム・ワッハーブ氏(ドゥルーズ派)の事務所のタイスィール・ハートゥーム所長が反体制武装集団に襲撃され、負傷した。

襲撃に関して、スワイダー軍事評議会のハルドゥーン・ザインッディーン大尉なる活動家は、「シャッビーハのウィヤーム・ワッハーブへのメッセージだ」と述べ、スワイダー市への訪問を認めないとの意思を示した。

なおワッハーブ氏は、最近暗殺未遂に遭い、スワイダー市への訪問を中止している。

その背景には、レバノンのワリード・ジュンブラート進歩社会主義党党首がいるとされたが、スワイダー軍事評議会が犯行を認めている。

シリア政府の動き

シリアのワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣がイランを訪問し、マフムード・アフマディーネジャード大統領、アリー・アクバル・サーレヒー外務大臣らと会談した。

会談後、ムアッリム外務在外居住者大臣は、アレッポ市での反体制武装集団の武装闘争に関して、「ダマスカスでの戦闘に敗北した戦闘員がアレッポに移動した」ためとの見方を示し、「彼らの計画は失敗するだろう…。シリア国民は軍とともに戦っている」と述べた。

SANA, July 29, 2012
SANA, July 29, 2012

また「トルコからシリアに入った戦闘員は、リビア、チュニジア、エジプトなどの国籍を持っており、イラクから入り逮捕された戦闘員は、アル=カーイダのメンバー」であることを明らかにした。

さらに「現状を踏まえると、シリアに陰謀を企てる者たちは悪質だと思う。現下の対決が終わり、シリア全土に安定と治安が回復したとしても、陰謀は止まないだろう。なぜなら背後で糸を引いている者が明らかだからだ…。イスラエルがことを動かしており、残念なことに一部の湾岸アラブ諸国がイスラエルとともに、陰謀を働いている」と付言した。

一方、レバノンに関しては「レバノンが武装テロ集団の潜入を阻止することを望んでいる。そうすることはレバノンとシリアのためになる」と述べた。

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SANA(7月29日付)によると、イランのアフマディーネジャード大統領は、「真理が不正に勝利するまで、陰謀と対決するシリアを支持する」と述べた。

またサーレヒー外務大臣は、シリアにおいて体制転換が実行できるとする西側の発想を「幻想」だと非難した。

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『クッルナー・シュラカー』(7月29日付)は、ラーミー・マフルーフ氏が代表を務めるブスターン慈善協会がダマスカス県とダマスカス郊外県でアラウィー派に武器と資金を供与し、反体制デモを阻止しようとしている、と報じた。

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SANA, July 29, 2012
SANA, July 29, 2012

『クッルナー・シュラカー』(7月29日付)は、シーア派の複数の消息筋の話として、ダマスカス郊外県のサイイダ・ザイナブ町の廟をイランの革命防衛隊が警備していると報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会は、アレッポ、ダマスカス、ヒムスでのシリア政府による「虐殺」を阻止するための国連安保理緊急会合の招集を求めた。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は訪問先のUAEのアブダビで、「自由シリア軍」に重火器を供与するよう呼びかけた。

スィーダー事務局長は「我々がここで欲している支援とは、革命運動家への質的支援だ。我々は戦車、戦闘機を食い止める武器が欲しい」と述べた。

一方、暫定政府の人事に関して、スィーダー事務局長は、「ほとんどのメンバーは反体制勢力だが、現政府のメンバーも若干含まれる」と述べ、バスマ・カドマーニー報道官の発言や評議会の声明を再び否定、ジョルジュ・サブラー報道官に同調した。

またマナーフ・トゥラース准将との協力の是非に関して、暫定政府発足の第1段階においてトゥラースは参加できないとしたうえで、「現地で活動する自由シリア軍や革命勢力との…対話と調整が行われねばならない」と答えた。

また「暫定政府は愛国的でクリーンでコンセンサスに基づく人物が指導しなければならない」と述べ、トゥラース准将が首班になる可能性を否定した。

一方、スィーダー事務局長は、反体制勢力が「基本的な必需品」を得るために少なくとも月1億4,500万ドルが必要だが、過去数ヶ月で1,500万ドルしか資金を得られていないことを明らかにした。

また7,200万ドルの義援金を5日で集めたサウジアラビアに対して謝辞を述べた。

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AFP(7月29日付)は、シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長がイランのエルビルに向かったと報じた。

シリアのクルド民族主義勢力(シリア・クルド国民評議会)にシリア国民評議会への参加を呼びかけることが目的だという。

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「アフバール・シャルク」(7月29日付)は、ムハンマド・フサーム・ハーフィズ駐アルメニア・シリア領事がアサド政権を離反した、と報じた。

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アンワル・ブンニー弁護士は、AKI(7月29日付)に対して、アサド政権が新設したテロ犯罪特別法廷を「国民に対する違法な武器」と非難した。

レバノンの動き

北部県トリポリ市のジャバル・ムフスィン地区・バーブ・タッバーナ地区で住民どうしの衝突が激化し、2人が死亡、5人が負傷した。

衝突は27日から散発的に続いており、負傷者は3日間で20人以上に達した。

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レバノンのワリード・ジュンブラート進歩社会主義党党首は、『ナハール』(7月29日付)に対して「シリアの体制はこれまで以上にレバノンで強力になっている」と述べ、治安機関などに対してアサド政権が影響力を行使していると非難した。

諸外国の動き

コフィ・アナン特使は声明を出し、アレッポ市での戦闘激化に関して懸念を表明し、「政治的正常化をもたらすための政治的転換が危機を解決し、シリア国民のために平和を実現する唯一の方法」だと強調した。

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ヨルダン政府は、対シリア国境のマフラク市郊外のザアタリー地方にシリア人避難民を受け入れる初の国営のキャンプを開設した。

開設式にはナースィル・ジャウダ外務大臣が出席した。

AFP, July 29, 2012、Akhbar al-Sharq, July 29, 2012、al-Hayat, July 30, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 29, 2012、Naharnet.com, July 29,
2012、al-Nahar, July 29, 2012、Reuters, July 29, 2012、SANA, July 29, 2012、Sky News Arabic,
July 29, 2012、al-Thawra, July 30, 2012などをもとに作成。

 

(C)青山弘之 All rights reserved.

軍・治安部隊がアレッポ市サラーフッディーン地区で反体制武装集団に対する総攻撃を開始する一方、露外相が日本の玄葉外相と会談し後者はは前者国の「建設的な姿勢」への支援を誓約(2012年7月28日)

国内の暴力(アレッポ市)

アレッポ県では、アレッポ市のサラーフッディーン地区などを包囲する軍・治安部隊が反体制武装集団に対する総攻撃を開始した。

また戦闘の本格化を受け、約20万人の市民が郊外の学校、公園などに避難した。

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AFP(7月29日付)によると、総攻撃は早朝4時に始まり、ヘリコプター4機が空爆を行う一方、戦車などが砲撃を加えた。

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同報道によると、反体制武装集団にはシリア人戦闘員だけでなく、「ムジャーヒドゥーン・タウヒード旅団」を名のるイスラーム主義者も加わっている。

「ムジャーヒドゥーン・タウヒード旅団」は、チェチェン、アルジェリア、スウェーデン、フランスのイスラーム教徒から構成されている。

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自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐によると、ハムダーニーヤ地区で軍・治安部隊を攻撃し、戦車・装甲車5輌を破壊し、「自由シリア軍は軍に甚大な被害を与え、その攻撃を停止させた」。

しかし、アカイディー大佐によると、「サラーフッディーン地区の外には軍の戦車約100輌が展開している」という。

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シリアの治安消息筋はAFP(7月29日付)に対して、「テロリストの逃走を阻止するため、戦闘地区のすべての出入り口は閉鎖されている」という。

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SANA(7月28日付)によると、フルカーン地区で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員2人を殺害、3人を逮捕、武器弾薬および乗っていた車を押収した。

またスライマーン・ハラビー地区でも軍・治安部隊が反体制武装集団を殲滅、アンサーリー地区でも反体制武装集団に甚大な被害を与えた、という。

このほか、スッカリー地区では、反体制武装集団の戦闘員4人を拘束した。

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AFP(7月29日付)によると、アレッポ市からトルコ国境に向かう街道に、反体制武装集団が「自由シリア軍」と書かれた検問所を設置している。

国内の暴力(その他)

ダマスカス県では、シリア革命総合委員会によると、カフル・スーサ区で治安部隊および「シャッビーハ」による逮捕・追跡活動が行われた。

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ダマスカス郊外県では、SANA(7月29日付)によると、スバイナ町で軍・治安部隊が反体制武装集団残党の「浄化」を完了した。

またサイフーニーヤ市(ドゥーマー市郊外)では、反対武装集団によって誘拐されていた市民2人を軍・治安部隊が解放することに成功した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区で軍・治安部隊による砲撃が行われた。

一方、SANA(7月28日付)によると、ヒムス市で反体制武装集団の追跡が継続された。

またクサイル市では、軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員8人を殺害した。

ラスタン市でも、軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦したほか、対レバノン国境地帯で越境砲撃を行う反体制武装集団と対峙した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カルナーズ町に軍・治安部隊が砲撃を加えた。

一方、SANA(7月28日付)によると、カルナーズ町で軍・治安部隊が反体制武装集団の「浄化」を完了した。

またガーブ地方各所で反体制武装集団に甚大な被害を与えた。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦、砲撃を加えた。

一方、SANA(7月28日付)によると、ダイル・ザウル市内で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、多数の戦闘員を死傷させた。

またムー・ハサン市では軍・治安部隊が反体制武装集団を殲滅した、という。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ラジャート高原で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(7月28日付)によると、ブスラー・シャーム市で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦した。

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ラタキア県では、SANA(7月28日付)によると、軍・治安部隊がサルマー町周辺で武装テロ集団残党の追跡を継続した。

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SANA(7月28日付)は、反体制武装集団がダマスカス郊外県で拉致したとされるイタリア人技術者2人をシリア軍が解放したと報じた。

解放されたのはイタリアの電力会社Ansaldo Energiaの技術者オリアノ・カンターリ(Oriano Cantari)氏(64歳)とドメニコ・テデシ(Domenico Tedeschi)氏(36歳)。

イタリア外務省はこの2人が7月20日に出国のためダマスカス国際空港に向かう途中、警察に逮捕されたと発表していた。

解放された技術者の1人はAGI(7月28日付)に対して、誘拐犯が覆面をしていたので、誰かは分からなかったと答えた。

アサド政権の動き

ムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール内務大臣はシリア・アラブ・テレビ(7月28日付)に出演し、7月18日のダマスカス県での爆弾テロで重傷を負った(ないしは死亡した)との一部メディアの報道を否定した。

また市民に対して、「テロリストの呼びかけ」に応じて国外に避難しないよう呼びかけるとともに、「我々の勇敢な軍がテロリストを殲滅し、治安を回復する」と述べた。

一方、反体制武装集団に対しては「国の安定に打撃を与えようとする計画のなかで燃料として利用されているに過ぎないことを悟り…、信念を取り戻す」よう呼びかけた。

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『クッルナー・シュラカー』(7月27日付)は、バアス党シリア地域指導部民族治安局のアミーン・シャラービー副局長(少将)が7月18日のダマスカス県での爆破テロでダーウド・ラージハ国防大臣らとともに殺害され、アブドゥルファッターフ・クドスィーヤ少将が後任となった、と報じた。

しかし、民族治安局は国民安全保障会議に発展解消しており、現在は存在しない。

またクドスィーヤ少将は、爆弾テロ後に軍事情報局長に異動となっている。

反体制勢力の動き

ロンドンを拠点とする反体制組織のシリア人権監視団は、2011年3月以降の死者数が20,028人に達したと発表した。

Kull-na Shurakāʼ, July 28, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 28, 2012

同監視団によると、うち民間人と反体制武装集団活動家が13,978人、離反兵が968人、軍・治安部隊兵士が5,082人。

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バウワーバ・シャルク(7月28日付)は、シリア国民評議会の匿名消息筋の話として、バスマ・カドマーニー報道官が執行委員会メンバーを解任されると報じた。

同消息筋によると、カドマーニー報道官は「女性局」を代表するとされるが、執行委員会選挙で4票しか得られなかった、という。

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民主主義のためのシリア人キリスト教徒機構が、ヨルダンの避難民に救援物資を提供した。

救援物資は、ヨルダンの避難民キャンプでラマダーンの断食を行うイスラーム教徒がイフタールを行うための食糧などからなる。

『クッルナー・シュラカー』(7月28日付)が報じた。

レバノンの動き

NNA(7月28日付)は、ベカーア県バアルベック郡ブリータール地方でシリアに武器を密輸しようとしたレバノン人とシリア人各1人を軍が逮捕した、と報じた。

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北部県トリポリ市のジャバル・ムフスィン地区・バーブ・タッバーナ地区で27日に再発した住民どうしの衝突が激化し、12人が負傷した。

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NNA(7月28日付)によると、シリア領内から発射されたロケット弾が北部県アッカール郡ナフル・ハーリド地方に着弾し、レバノン人1人が負傷した。

またシリア人避難民3人が国境地帯での地雷に触れ、重傷を負った、という。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は日本の玄葉光一郎外務大臣との会談後の共同記者会見で、西側諸国によるシリアの反体制勢力支援が「さらなる流血」をもたらすと批判した。

ラブロフ外務大臣は「反体制武装集団がアレッポなどの都市を占領し、新たな虐殺が起きかねない…。充分に武装した集団が都市を占拠し、暫定政府のための緩衝地帯のようなものを作ろうとしている。このような状況でシリア政府が「分かりました。私が間違えていました。私を転覆して、体制を変えてください」と言うのをどうして期待できるのか?」と述べた。

また「シリアのすべての当事者が行き過ぎた行為を犯している。我々はこれらすべての当事者に圧力をかけねばならない。西側諸国は、一部周辺諸国とともに、反体制武装破壊分子を実質的に支持、指導している…。この代償はさらなる流血だ」と付言した。

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玄馬外務大臣は、ラブロフ外務大臣の発言を受け「ロシアの姿勢は大きな影響力を持っている。また国際社会の声もある。我々はロシアの建設的な姿勢を支援する」と述べたという。

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ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、アレッポ市での反体制武装集団と軍・治安部隊の戦闘に関して、「アサドの軍が行う民間人に対する野蛮な攻撃」を懸念するとの事実誤認に基づく一方的な批判を行った。

しかし、リビアと同様の介入の可能性に関しては「事態は異なっている」としたうえで、ロシアと中国の拒否権発動により、介入ができない、との責任転嫁を行った。

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UNHCRは、レバノン国内のシリア人避難民の数が34,000人以上に達するとの報告書を発表した。

AFP, July 28, 2012、AGI, July 28, 2012、Akhbar al-Sharq, July 28, 2012、Bawabatalsharq, July 28, 2012、al-Hayat, July 29, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 28, 2012、Naharnet.com, July 28,
2012、NNA, July 28, 2012、Reuters, July 28, 2012、SANA, July 28, 2012、al-Thawra, July 29, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アレッポ市内の複数区で軍・治安部隊のヘリコプターが反体制武装集団を攻撃、トルコ外相がシリアへの軍事介入の可能性を否定するも「いかなる勢力がテロの拠点を築く」ことを許さないと強調(2012年7月27日)

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市のサラーフッディーン地区、アアザミーヤ地区、ブスターン・カスル地区、マシュハド地区、スッカリー地区で軍のヘリコプターが上空から機関銃を発射し、反体制武装集団を攻撃した。

Youtube, July 27, 2012
Youtube, July 27, 2012

またマハッタ・バグダード、ジャミーリーヤ地区、サアドゥッラー・ジャービリー広場(サアドゥッラー・ジャービリー地区)などで軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

さらにファルドゥース広場での砲撃で、3人が死亡した。

シリアの治安筋はAFP(7月27日付)に対して、「アレッポ周辺での軍部隊の展開はほぼ完了した」と述べた。

AFP(7月27日付)は、サラーフッディーン地区では、戦闘員数百人が、軍・治安部隊の攻撃に備えており、「民間人はいない」(反体制活動家)という。

反体制活動家のアブー・ムハンマド・ハラビーは、AFP(7月27日付)に「反体制勢力は今のところ巧みに動いており、犠牲者はほとんどが民間人だ」と述べた。

サイフ・ダウラ地区のアーミナ・モスクの説教師・イマームのアブドゥッラティーフ・シャーミー氏が何者かに誘拐され、暗殺された。

シリア人権監視団によると、「二都蜂起(インティファーダ)の金曜日」と銘打った反体制デモが複数地区で行われた、という。

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反体制活動家は、自由シリア軍がアレッポ市内の複数カ所で捕捉した軍・治安部隊兵士、警官、そして「自称シャッビーハ」ら約100人の映像をYoutube(7月27日付)で公開した。

映像によると、「タウヒード旅団」なる離反兵のグループが兵士らを捕捉した、という。

http://www.youtube.com/watch?v=RLG0vLy89E4&feature=youtu.be

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ヤルダー市が砲撃に曝された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市で反体制武装集団が士官14人を含む軍・治安部隊兵士約50人を捕捉した。

またマアッラト・ヌウマーン市で7時間にわたって軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦、砲撃により女性1人、子供1人が死亡した。

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ダイル・ザウル県では、シリア革命総合委員会によると、ダイル・ザウル市内各所で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

シリア政府の動き

ロイター通信(7月27日付)は、人民議会議員のイフラース・アフマド・バダウィー女史(アレッポ県諸地域選挙区、B部門、バアス党)が離反し、26日にトルコ領に逃走したと報じた。

Akhbar al-Sharq, July 27, 2012
Akhbar al-Sharq, July 27, 2012

アサド政権による「最低限の権利を求める国民の弾圧や残虐な拷問」が離反の理由だとう。

シリア国民評議会のサミール・ナッシャール氏はAFP(7月27日付)に対して、バダウィー議員とは離反後の安全な場所への受入のため、最近接触を始めていたことを明かした。

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ファールーク・ターハー駐ベラルーシ・シリア大使は、ジャズィーラ(7月27日付)でアサド政権を離反すると発表した。

レバノンの動き

『ナハール』(7月27日付)は、ヒズブッラーの戦闘員(ジハード会議第910部隊)が、ベカーア県ヘルメル郡のハウシュ・サイイドからシリア領内に入った、と報じた。

同報道によると、同部隊はヒムス県クサイル地方、ラスタン市、ヒムス市での反体制武装集団との戦闘のために投入されたというが、事実確認はできない。

なお同報道によると、またダマスカス郊外県ザバダーニー市にもヒズブッラーの戦闘員が配置されている、という。

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EUは、シリア人避難民受入のため、レバノンに500万ユーロの資金援助を行うことを発表した。

諸外国の動き

Akhbar al-Sharq, July 27, 2012
Akhbar al-Sharq, July 27, 2012

ヨルダンのサミーフ・マアーイタ情報通信大臣は、シリア領内からヨルダンに避難しようとしたシリア人家族をシリア軍が追撃し、家族を保護しようとしたヨルダン軍と交戦、子供1人が銃弾を受け死亡したと発表した。

ヨルダンのラムサーでシリア人避難民の救援活動を行う聖典スンナ協会のザーイド・ハマード代表によると、この交戦でヨルダン軍のビラール・ライムーニー大尉が負傷したと語った。

しかしマアーイタ情報通信大臣は、ヨルダン側に負傷者が出たとの情報を否定した。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣はアンカラでマナーフ・トゥラース准将と会談した。

AFP(7月27日付)によると、トゥラース准将はサウジアラビア経由でアンカラ入りした。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、「トルコが無思慮で不必要な挑戦を行うだろうなどと誰も考えてはならない」と述べ、シリアへの軍事介入の可能性を否定した。

しかしシリア北東部でのPKK系のクルド民族主義政党、民主統一党の自治に関しては、「自衛権を行使する権利があり、PKKであれアル=カーイダであれ、いかなる勢力がテロの拠点を築くことも許さない」と述べた。

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ロイター通信(7月28日付)は、信頼できる消息筋の話として、トルコ政府がアダナに、シリアの反体制勢力を軍事・兵站・技術教練を行う基地を建設した、と報じた。

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ロバード・ムードUNSMIS前団長は、アサド政権に関して「早晩、体制は崩壊するだろう」と述べた。

その根拠として、「暴力の連鎖や…民間人を保護できないことが、政権の余命を限られたとものとしている」点を挙げたが、「1週間後、ないしは1年後に崩壊するのか、という問いには答えられない」と付言した。

さらに「バッシャール・アサドが退任、ないしは亡命すると…、問題が解決すると多くの人が考えている。しかしこれは安直で、慎重にならねばならない…。体制崩壊後は事態は寄り混乱するだろう」と述べた。

しかし同時に、「現在権力を握っている者がとどまった場合も、未来のシリアを想像できない」とも述べた。

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国連のナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官はアレッポ市で軍・治安部隊と反体制武装集団の双方が大規模な戦闘が準備していることに懸念を表明し、「住民にとって悪い前兆」と非難した。

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フランスのベルナール・ヴァレロ外務省報道官はアサド政権がアレッポ市で「国民に対する新たな虐殺を準備している」と述べた。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、アレッポ市での軍・治安部隊による反体制武装集団掃討に関して「決して受け入れられない」と非難した

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フランスの首都パリのエッフェル塔に、反体制勢力が使用する委任統治時代の旗が掲揚された。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、英国のデヴィッド・キャメロン首相との会談後、「シリアで起きていることはきわめて重大だ」としたうえで、「アレッポでの事態の悪化、大量破壊兵器使用に関する最近の発言を踏まえると、我々は傍観していることはできない」と述べ、国連安保理、イスラーム諸国会議機構、アラブ連盟などによる介入を改めて呼びかけた。

AFP, July 27, 2012、Akhbar al-Sharq, July 27, 2012、Aljazeera.net, July 27, 2012、al-Hayat, July 28, 2012, July 29, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 27, 2012、Naharnet.com,
July 27, 2012、Reuters, July 27, 2012、SANA, July 27, 2012、al-Thawra, July 28, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

仏紙がシリア北部における反体制武装集団への多数のアラブ人・外国人イスラーム主義者の参加を報じるなか、アサド大統領がテロ犯罪特別法廷の設置を決定(2012年7月26日)

国内の暴力

AFP(7月27日付)は、シリア北部での反体制武装集団に多数のアラブ人・外国人イスラーム主義者が参加している、と報じた。

al-Hayat, July 27, 2012
al-Hayat, July 27, 2012

同通信社によると、対トルコ国境のバーブ・ハワー通行所、アレッポ北部の村で、トルコ人、ウクライナ人、チェチェン人、パキスタン人などがシリアの反体制武装集団に参加している、という。

また、イスラーム主義者はインターネットなどを通じて、シリアへの集結を呼び掛けており、「イラクの真理とジハードの旗集団軍事司令部」なる組織は「シリアでジハードのための義勇活動」を呼び掛けている、という。

さらに、「シャームのくにのムジャーヒドゥーン」の「アミール・ムーマニーン」を名のるアブー・バクル・フサイニークルシー・バグダーディーなるイスラーム主義者も「革命」を呼びかけている、という。

このほか、レバノンで活動しているファタハ・イスラームがアレッポ県アアザーズ市で軍の車輌を襲撃したとの情報もある。

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アレッポ県では、アレッポ市のサラーフッディーン地区、マシュハド地区などで軍・治安部隊と反体制武装集団の激しい戦闘が続き、『ワタン』(7月26日付)は、「アレッポはシリア・アラブ軍にとって最後の戦場となるだろう。テロリストを根絶したのち、シリアは危機を脱却するだろう」と報じた。

AFP(7月26日付)は、治安消息筋の話として、25、26日にシリア軍の増援部隊がアレッポ市東部に展開し、27、28日に総攻撃に参加する準備を進めていると報じた。

同消息筋によると、反体制武装集団もまた1,500人から2,000人の戦闘員がサラーフッディーン地区など市南部・東部に展開している、という。

さらに、アレッポ空港に至る5つの街道のうち、4つの街道を反体制武装集団が制圧し、空港は事実上孤立状態にある。

自由シリア軍アレッポ県軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐はAFP(7月26日付)に対して、アレッポ市の南部、東部、西部に軍・治安部隊の増援部隊が展開している、と明かした。

SANA(7月26日付)によると、アレッポ市サラーフッディーン地区、スッカリー地区で、軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数が死傷した。

一方、シリア人権監視団によると、市内のフルカーン地区、アシュラフィーヤ地区などで反体制デモが発生した、という。

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ダマスカス県では、地元調整諸委員会によると、ヤルムーク区で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

またアサーリー地区などで散発的な戦闘が続いた。

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ダマスカス郊外県では、SANA(7月26日付)によると、キスワ市で、軍・治安部隊と反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数を殺害、逮捕、武器弾薬を押収した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で2人、やマーディン市で1人が狙撃され、死亡した。

一方、SANA(7月26日付)によると、ブーカマール市で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員5人を殺害した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市での発砲で2人が死亡した。

一方、SANA(7月26日付)によると、アルヤート市で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数を殺害・逮捕し、武器弾薬を押収した。

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ラッカ県では、SANA(7月26日付)によると、反体制武装集団がアレッポ・ラッカ鉄道の列車を脱線させ、市民3人が死亡した。

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イドリブ県では、SANA(7月26日付)によると、イドリブ市郊外で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数を殺害、武器弾薬を押収した。

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ダルアー県では、SANA(7月26日付)によると、ビイル・サビール市で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数を殺害し、武器弾薬を押収した。

シリア政府の動き

アサド大統領は2012年法律第22号を施行し、テロ犯罪特別法廷の設置を決定した。

法律第22号の骨子は以下の通り:

1. テロ犯罪特別法廷は、ダマスカスに本部を持ち、最高司法評議会の決定に基づき各地に支部を設置できる(第1条)。
2. テロ犯罪特別法廷は、大統領顧問、軍高官の2名を含む3人の判事から構成される。
3. テロ犯罪特別法廷は、テロ犯罪の裁判を専門に行う。
4. テロ犯罪特別法廷の判決は、破棄裁判所に上告することができるが、欠席裁判によって有罪判決を受けた被告は上告できない。

http://www.sana.sy/ara/2/2012/07/26/433446.htm

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Damas Post(7月26日付)は、ファフド・ジャースィム・フライジュ国防大臣とアリー・マムルーク国民安全保障会議議長が、バアス党シリア地域指導部メンバーに就任したと報じた。

両名の地域指導部入りは、アブドゥッラー・ラージハ国防大臣とヒシャーム・ビフティヤール少将暗殺に伴う人事だという。

なお、2011年4月の第1次アーディル・サファル内閣発足(および同年8月の内閣改造)、2012年5月の第10期人民議会選挙、2012年6月のリヤード・ファリード・ヒジャーブ内閣発足を受け、ムハンマド・ジハード・ラッハーム人民議会議長、リヤード・ファリード・ヒジャーブ首相もシリア地域指導部メンバー入りしている、という。

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外務在外居住者省は声明を出し、アブドゥッラティーフ・ダッバーグ駐UAE大使、妻のラミーヤー・ハリーリー駐キプロス大使、そしてムハンマド・タフスィーン・ファキール駐オマーン行政書記官が24日に離反し、赴任地を離れ「祖国からの離反を資金援助・奨励している国」に去ったことを認めた。

しかし、声明によると、ダッバーグ大使は6月4日付で職を解かれており、ハリーリー大使は「そもそも大使ではなく、キプロス大使館で常駐代表・大使職を代行していたに過ぎなかった」という。

またファキール書記官は、定年を控え、5月21日に職を解かれていた、という。

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アリー・アブドゥルカリーム駐レバノン・シリア大使は、アドナーン・マンスール外務大臣に、レバノン人によるシリアへの領土侵犯に抗議する文書を提出した。

LBC(7月26日付)が報じた。

同文書では、レバノン領内からのシリアへの発砲、武器密輸・流入を阻止するようレバノン側に要求しているという。

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『クッルナー・シュラカー』(7月26日付)は、PKK系のクルド民族主義政党、民主統一党へのシリア北東部の自治移管を受け、ダマスカス郊外県(ワルド・ワ・ルッズ山、ワーディー・マシャーリーウ)で暮らしていたクルド人がカーミシュリー市への集団移住を始めた、と報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会はカタールのドーハで拡大会合を開き、反体制勢力の統一やアサド政権打倒後の暫定政府発足について審議した。

アフマド・ラマダーン執行委員会メンバーは『ハヤート』(7月27日付)に対して、反体制勢力の統一に関しては、国内の政治勢力の評議会への参加を可能とするような組織改編が議論された、と述べた。

また暫定政府構想に関しては、それが行政権、現地軍、司法府などを包摂することをめざしているとのビジョンを示した。

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シリア国民評議会の複数の消息筋によると、暫定政府の首班には「クリーンさで知られる」リヤード・サイフ氏が最有力だという。

サイフ氏は、ハーフィズ・アサド前政権末期の第2次インフィターフのもとで台頭したビジネスマンで、シリア・アディダスの元代表。

人民議会議員を務めたこともある。

2000年の「ダマスカスの春」において反体制政治組織の結成を急ぎ、失脚した。

アディダス元代表時代には、従業員の処遇をめぐってたびたびその横暴ぶりが非難されてきた。

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またシリア国民評議会の消息筋によると、評議会はアレッポで戦闘を行っている「大隊」への兵站支援の獲得に成功したと述べ、「シリア国民の友人から特別な武器」の供与を受けていることを明らかにした。

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シリア国民評議会は、アブドゥッラティーフ・ダッバーグ駐UAE大使と妻のラミーヤー・ハリーリー駐キプロス大使の離反を歓迎した。

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シリア国民評議会内の無所属活動家は、ドーハでシリア民主無所属ブロックを結成した。

同ブロックはブルハーン・ガルユーン前事務局長を政治局長とし、アブドゥッラー・トゥルクマーニー(政治局次長)、ナージー・タイヤーラ(書記長)、ジョルジュ・ジャッブーリー、マーヒル・スライマーン・イーサー、マルワーン・ハッジュー・リファーイー、アーリヤ・マンスールなどが参加している。

諸外国の動き

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、アフメト・ダウトオール外務大臣を来週イラクのエルビルに派遣し、クルディスタン自治政府のマスウード・バールザーニー大統領とシリア情勢について協議すると発表した。

エルドアン首相は、イラクのクルド人指導者に向けて「我々は君たちを信頼している…。しかし、間違ったステップを踏み、当事者にならないことを望んでいる」と脅迫した。

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また、エルドアン首相は、トルコのCanal 24(7月26日付)に出演し、アサド政権が「クルド・カード」を利用して、トルコに対峙しようとしていると批判した。

首相は「現在、アサド体制は、ダマスカスとラタキアに集中しており、北部の5県をクルド人、すなわちテロ組織に委ねている…。奴らは分離主義テロ組織のリーダーの写真を掲げることで、自分たちの利害に一致する状況を作り出そうとしている」とアサド政権とPKK系の民主統一党の関係を批判した。

そのうえで、必要な場合、シリア領内でクルド人の掃討を行う権利を行使するかとの問いに「議論の余地はない。確実にそうする。これは任務であり、やれねばならないことだ」と述べた。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、セルビア外相との会談後の記者会見で、UNSMIS任期再延長を望むと述べるとともに、その増員の必要を強調した。

またアラブ連盟シリア問題閣僚委員会が求めた国境地帯の安全保障設置に関しては、「シリアの反体制武装集団が一部の国から支援を受け続ける限り、人道回廊やいわゆる安全地帯について議論することは許されない」と拒否した。

そのうえで、「我々は暴力の即時停止に資することを提案している。しかし「先方」は、政権を以上するか、反体制勢力に…さまざまな支援を続けると言い、テロ行為を正当化している。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、アレッポ市の情勢に関して、「世界各国、とりわけ安保理メンバーはともに行動し、責任を果たすべき」と述べ、ロシアと中国に、シリアでの暴力停止を求めるシリア国民と世界中の声に耳を傾けるべきだと述べた。

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イランのムハンマド・リダー・ラヒーミー副大統領は、「イラン国民にはシリア人に対して代わらぬ姿勢がある」と述べ、アサド政権への支持を継続する意思を改めて示した。

『クッルナー・シュラカー』(7月26日付)は、イラン・イスラーム革命防衛隊副参謀長のマスウード・ジャザーイリー准将が「シリア国民とシリアの友人は体制転換を許さないだろう」と強調するとともに、シリアの反体制勢力を支援するアラブ諸国を「大サタン戦線」と非難し、大敗を喫するだろうと述べた、と報じた。

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ヨルダン外務省は、シリアのパスポート・身分証明書を持つパレスチナ人を避難民として受け入れないとの姿勢を改めて示した。

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ヨルダンの総合統計局は2012年1~5月の対シリア輸出額が前年の同時期より9%減の1億ヨルダン・ディーナール(1億4,000万米ドル)に現象したとの統計結果を発表した。

またシリアからの輸入額は、前年より47%減の6,500万ディーナール(9,000万ドル)に落ち込んだ。

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UNESCOは、シリアのすべての紛争当事者に対して、アレッポの「例外的文化遺産保護」を保証するよう呼び掛けた。

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国防総省のジョージ・リトル報道官は、「シリアに(イスラーム主義)過激派がいる可能性を否定できないが、イラクのアル=カーイダのシリアでのプレゼンスが大きい、強力だとの評価は誰も下せない」と述べた。

AFP, July 26, 2012、Akhbar al-Sharq, July 26, 2012, July 27, 2012、Damas Post, July 26, 2012、al-Hayat, July 27, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 26, 2012、Naharnet.com, July 26,
2012、Reuters, July 26, 2012、SANA, July 26, 2012、al-Watan, July 26, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アレッポ県の各地区で軍・治安部隊が反体制武装集団と激しく交戦するなか、エルドアン首相が「シリア情勢の進捗と、領内および近隣諸国の分離主義テロ組織の活動」に関して協議(2012年7月25日)

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ブスターン・カスル地区、サラーフッディーン地区などで軍・治安部隊が反体制武装集団と激しく交戦した。

また軍・治安部隊は戦闘機を投入し、サーフール地区、タリーク・バーブ地区、シャッアール地区、カーディー・アスカル地区、サラーフッディーン地区を空爆したという。

この戦闘により、軍・治安部隊兵士8人、民間人4人、反体制武装集団戦闘員1人が死亡した、という。

一方、『サウラ』(7月26日付)によると、サーフール地区などで軍・治安部隊が反体制武装集団の掃討、追跡を継続し、多数の戦闘員を殺害、逮捕した。

『ハヤート』(7月26日付)は、アレッポ市内の目撃者の話として、「シリア北部から来た反逆者がアレッポに入り、同市を決戦場にしようとしているかのようだ」と報じた。

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ダマスカス県では、シリア革命総合委員会によると、アサーリー地区で戦闘があった。

反体制活動家は、カーブーン区で軍・治安部隊が処刑したとされる遺体11体の映像をビデオで公開した。

アムネスティ・インターナショナルも、マッザ区で非武装の男性や子供の遺体19体が発見されたと発表した。

一方、『サウラ』(7月26日付)によると、カダム区、アサーリー地区で軍・治安部隊が反体制武装集団の追跡を継続し、多数の戦闘員を殺害、逮捕した。

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イドリブ県では、反体制活動家らによると、マアッラト・ニウマーン市とハーン・シャイフーン市間の街道およびアリーハー均衡で軍・治安部隊の車列を襲撃した。

同活動家らによると、この車列はアレッポ市の掃討作戦に向かう増援部隊だという。

『ハヤート』(7月26日付)によると、軍・治安部隊はザーウィヤ山などに展開している数千の兵をアレッポ市への増援部隊として派遣した。

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ダマスカス郊外県では、『ハヤート』(7月26日付)によると、タッル市を拠点とする第216機械化大隊が同市への砲撃を本格化させた。

タッル市は反体制武装集団が先週から占拠しているという。

また、シリア人権監視団によると、ハジャル・アスワド市に対して、軍・治安部隊が砲撃を加えた。

同地は依然として、反体制武装集団が潜伏しており、制圧されていないという。

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ハマー県では、『サウラ』(7月26日付)によると、ガーブ地方で治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、甚大な被害を与えた。

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ラタキア県では、『サウラ』(7月26日付)によると、北部のサルマー町で軍・治安部隊が反体制武装集団の「浄化」を完了した。

また軍・治安部隊はアイン・イードゥー村で反体制武装集団と交戦した。

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ダルアー県では、『サウラ』(7月26日付)によると、ダーイル町、ワーディー・ヤルムークで軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦、多数の外国人戦闘員を殺害した。

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ヒムス県では、『サウラ』(7月26日付)によると、タッルカラフ市で国境警備隊がレバノン領内からの潜入を試み反体制武装集団の戦闘員を撃退した。

一方、シリア人権監視団によると、空軍情報部兵士を含む軍・治安部隊がヒムス中央刑務所での暴動鎮圧のために同刑務所に突入し、複数が死傷した、という。

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ハサカ県では、『サウラ』(7月26日付)によると、カーミシュリー市郊外のザーヒリーヤ市の反体制武装集団のアジトに治安維持部隊が突入し、戦闘員10人を殺害、12人を逮捕した。

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ダイル・ザウル県では、『サウラ』(7月26日付)によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装集団の「残党狩り」を行った。

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クウェート日刊紙『スィヤーサ』(7月25日付)は、シリア愛国主義者党軍事局なる組織が声明を出し、ラタキア県カルダーハ市にあるハーフィズ・アサド前大統領廟を迫撃砲で攻撃し、大きな損害を与えた、と発表したと報じた。真偽は定かでない。

シリア政府の動き

ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣はダマスカス訪問中の国連平和維持活動局(DPKO)のエルベ・ラドゥス局長と会談した。

SANA, July 25, 2012
SANA, July 25, 2012

『サウラ』(7月26日付)によると、ムアッリム大臣は会談で、国際社会がテロ集団に影響力を行使する国がアナン特使の停戦案に協力することが肝要と立場を伝えた。

一方、ラドゥス局長は国連における最優先課題がシリア国内の暴力を軽減するための政治解決に向けて行動することだとの見解を示した、という。

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人民議会は、テロ犯罪に関する特別法廷設置に関する法案(2012年法律第19号)を承認した。近くアサド大統領が施行する見込み。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会執行員会は声明を出し、アサド政権打倒後の暫定政府の長にはアサド政権の高官ではなく、反体制勢力が就くことを確認したと発表した。

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AFP(7月25日付)は、イドリブ県ビンニシュ市など、反体制武装集団によって「解放」された都市・村で、軍・政治指導者からなる代表者委員会が選出され、自治を行っている、と報じた。

レバノンの動き

アドナーン・マンスール外務大臣は、シリア軍によるレバノン領内での反体制武装集団掃討活動に関して、アリー・アブドゥルカリーム駐レバノン・シリア大使に「覚書」を手渡した。

マンスール外務大臣によると、同「覚書」は、事件の再発を回避したい旨シリア側に要請しているが、侵犯への「抗議」の意は示していない、という。

トルコの動き

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は国家安全保障会議を開き、「シリア情勢の進捗と、領内および近隣諸国の分離主義テロ組織の活動」に関して協議した。

アナトリア通信(7月25日付)によると、会議は2時間にわたって行われ、アフメット・ダウトオール外務大臣ほか、軍参謀長、国防大臣、内務大臣、諜報機関高官が出席した。

会議は、アサド政権とクルド民族主義勢力、とりわけPKK系の民主統一党(西クルディスタン人民議会)やシリア・クルド民主統一党(イェキーティー)の協力関係の緊密化や自由シリア軍・アル=カーイダによる国境通行所制圧を受けたものと思われる。

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トルコのハヤティ・ヤズジュ関税通商大臣は記者会見で、対シリア国境に位置するジルヴェゴズ、オンジュピナル、カルカミスの三つの国境通行所のトルコ人および外国人の往来、シリア、トルコ、および諸外国の商業貨物車輌の往来を停止と発表した。

通行所の「領外の安全が確保されていない」というのがその理由。

ただしシリア人の出国は認められるという。

これらの通行所はそれぞれシリアの反体制武装集団が制圧したジャラーブルス、バーブ・ハワー、サラーマの三つの国境通行所に面している。

なお同大臣によると、アクジャカレ(カサブ)とヤイァダギ(タッル・アブヤド)の国境通行所は利用可能だという。

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トルコ外務省筋は、シリア軍の上級士官(少将)2人が新たに離反し、トルコ領内に避難したことを明らかにした。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、キプロス外相と会談後、「我々は一方的制裁にそもそも反対している…。いかなる問題であれ集団的な討論を行うことを支持している。残念ながら、EU、米国などはシリアに一方的制裁を科したが、そのことに関して我々に何らの意見も求めなかった」と述べた。

またラブロフ外務大臣は、18日のダマスカス県での爆弾テロに関して「シリア政府が行っていることを踏まえると、こうした攻撃は驚きではない」とコメントしたビクトリア・ヌーランド米国務次官補の発言を受けるかたちで、「ひどい姿勢だ…。こうした事態に対する我々の立場を表現する言葉も見つけられない。テロを直接正当化している…。このような姿勢をどう理解すべきか?…このことは、安保理が自分たちの望む通りにならない限り、このようなテロ行為を支持し続けると言っているようなものだ」と非難した。

さらに自由シリア軍が国境通行所を制圧したとの情報に関して、「複数の情報によると、自由シリア軍が通行所を制圧したのではない…。この問題を一部の人がどのように考えているかはともかく…、制圧したのはアル=カーイダと直接関係のある組織だ」と述べた。

EUによる追加制裁(武器やその他禁止されている機器のシリア国内への持ち込みが疑わわれる航空機や船舶の臨検調査)に関しては、「包囲」だと非難した。

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ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、イタルタス通信(7月25日付)に対して、「我々はダマスカスからこれらのミサイルの安全が完全に保障されているとの確実な保証を得た」と述べた。

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イランのアフマド・ワヒーディー国防大臣は「シリア政府とシリア軍はテロリストと対決する能力と力を持っていると考える」と述べ、イランの軍事支援が不要だとの見解を示すとともに、イラン軍部隊がアサド政権を支援するために派遣されているとの一部情報を否定した。

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イスラエルのアアヴィグドール・リーベルマン外務大臣は、「シリアが化学・生物兵器をヒズブッラーに引き渡したことを発見したら直ちに行動する…。我々にとって、それは宣戦布告であり、レッド・ラインだ」と述べた。

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ヨルダンのナースィル・ジャウダ外務大臣は、アサド政権による化学兵器使用の可能性について「仮定の話に過ぎない」としつつ、国内では予防的措置をとる、と述べた。

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ババカール・ジャイ(Babacar Gaye)UNSMIS新団長(セネガル人)がロバート・ムード前団長の後任としてダマスカスに着任した。

『ハヤート』(7月26日付)によると、UNSMISの監視団員150人が24、25日の2日間にかけて帰任すると報じた。

帰任する団員の補充はない。

AFP, July 25, 2012、Akhbar al-Sharq, July 25, 2012、al-Hayat, July 26, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 25, 2012、Naharnet.com, July 25, 2012、Reuters, July 25, 2012、SANA, July 25, 2012、al-Siyasa, July 25, 2012、al-Thawra, July 26, 2012などをもとに作成。

 

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア軍がダマスカス県内の複数地区を「完全に制圧」するなか、アイン・アラブ市、アフリーン市から軍・治安部隊が突如撤退しクルド民族主義2政党の旗が掲揚される(2012年7月24日)

国内の暴力(アレッポ県)

アレッポ県では、シリア人権監視団などによると、アレッポ市のスッカリー地区、サラーフッディーン地区周辺、カッラーサ地区、アルクーブ地区、ザイディーヤ地区、サーリヒーン地区などで軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦し、軍はヘリコプターを動員した。

Youtube, July 24, 2012
Youtube, July 24, 2012

また旧市街の入り口にあたるバーブ・ハディード地区、バーブ・ナスル地区でも戦闘があった。

反体制武装集団はサイフ・ダウラ地区の郵便局に進入し、アサド大統領の写真などを破壊した。

またサーフール地区では軍の戦車を破壊した。

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一方、『サウラ』(7月25日付)によると、サーリヒーン地区の警察部隊が武装集団と対峙し、甚大な被害を与えた。

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シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラー代表は、戦闘のほとんどが「民衆的性格」を帯びていると宣伝した。

しかし「民衆的性格」を有しているはずの反体制武装集団の攻勢で多数の住民が避難を余儀なくされている。

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「アレッポ殉教者部隊」司令官のムスタファー・アブドゥッラーなる反体制戦闘員はロイター通信(7月24日付)に対して、シリアの軍・治安部隊がアレッポ県北部を砲撃し、反体制武装集団の戦闘員の進軍を阻止しようとしている、と述べ、戦闘員がトルコ方面から進軍していることを認めた。

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またトルコに避難中の離反兵は、反体制武装集団がアレッポ市郊外のムスリミーヤ村にあるアレッポ法兵学校を制圧したと述べ、自由シリア軍事評議会のムスタファー・シャイフ准将も避難先のトルコでロイター通信(7月24日付)に対して、「この作戦(アレッポ法兵学校制圧)は戦略的・象徴的な重要性がある」と述べた。

しかし法兵学校制圧の事実は確認されていない。

Youtube, July 24, 2012
Youtube, July 24, 2012
Youtube, July 24, 2012
Youtube, July 24, 2012

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シリア国民評議会は、21日にアレッポ中央刑務所で暴動があり、治安当局が実弾・催涙ガスを使用して強制排除、その際15人の収監者が死亡した、との声明を発表した。

また同評議会は、21日にヒムス中央刑務所で暴動が始まり、政権による「大虐殺」に警鐘を鳴らしたが、シリア公式筋は暴動の発生を否定しており、そもそも暴動が発生しているかどうかも定かでない。

国内の暴力(その他の地域)

ダマスカス県では、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表によると、「シリア軍はマッザ区、バルザ区、マイダーン地区、カフルスーサ区を完全に制圧した」。

しかし、シリア人権監視団によると、ダマスカス県、ダマスカス郊外県では「戦闘員が退避した」カダム区、ハジャル・アスワド市で戦闘が続いた。

またアブ・カイスを名のる活動家によると、バルザ区に第4機甲師団の戦車20輌が進入し、掃討作戦を継続した。

一方、『サウラ』(7月25日付)によると、マイダーン地区で軍・治安部隊が反対武装集団の「残党狩り」を継続した。

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『クッルナー・シュラカー』(7月24日付)は、ダマスカス郊外県ジャルマーナー市で、「シャッビーハ」と目されるドゥルーズ派の青年が「何者か」によって殺害されたことを受け、住民と避難民が衝突したと報じた。

同報道によると、シャッビーハと目されるドゥルーズ派の青年の殺害を受け、ある「シャッビーハ」が報復として青年1人(ジャルマーナー市外出身)を殺害、またジャルマーナー市内の避難民(3,000~4,000人)が避難している学校を襲撃、放逐すると脅迫した、という。

その後、ジャルマーナー市住民が発砲を受け複数が負傷、さらに避難民が実を寄せる学校を「シャッビーハ」が襲撃した。

事態は、同市のドゥルーズ派のシャイフや地元の有力者らとともに現場を訪れることで収拾した、という。

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ヒムス県では、『サウラ』(7月25日付)によると、ヒムス市カラム・シャムシャム地区を軍・治安部隊が制圧した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市内各所で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

一方、『サウラ』(7月25日付)によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員2人を殺害した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダーイル町、ラジャート高原、ヌジャイフ村、フラーク市などが軍・治安部隊の砲撃に曝されたという。

一方、『サウラ』(7月25日付)によると、フラーク市で治安維持部隊が武装テロ集団の襲撃を受けたが、応戦し、またガバーイブ市での戦闘で反体制武装集団の戦闘員1人を殺害した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ワーディー・ダイフ地方、ハーン・シャイフーン市、マアッラト・ニウマーン市などが軍・治安部隊の砲撃に曝され、少なくとも4人が死亡した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カフルズィーター市での軍・治安部隊の砲撃により、4人が死亡した。

シリア政府の動き

ダーウド・ラージハ国防大臣、ハサン・トゥルクマーニー副大統領補、アースィフ・シャウカト副参謀長、ヒシャーム・ビフティヤール・バアス党シリア地域指導部メンバーの暗殺(18日)を受け、アサド大統領は以下の通り、ムハーバラートの人事改編を行った。

アリー・マムルーク少将:総合情報部長から国民安全保障会議議長に異動。
ルストゥム・ガザーラ少将:軍事情報局ダマスカス郊外県課長から政治治安部長に異動。
ディーブ・ザイトゥーン少将:政治治安部長から総合情報部長に異動。
アブドゥルファッターフ・クドスィーヤ少将:軍事情報局長から総合情報部第2次長に異動。
アリー・ユーヌス少将:総合情報部第2次長から軍事情報局長に異動。

なおマムルーク少将の移動により、ビフティヤール少将が国民安全保障会議議長を務めていたことが明らかになった。

シリアのムハーバラートについてはhttp://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/syria/m.htmを参照。

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アラビーヤ(7月24日付)はラミーヤー・ハリーリー駐キプロス・シリア大使が離反したと報じた。

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『クッルナー・シュラカー』(7月24日付)は、信頼できる消息筋の話として、政治治安部がダマスカス県カッサーア地区、バーブ・トゥーマー地区の住民(キリスト教徒)に武器を配付している、と報じた。

反体制勢力の動き

自由シリア軍国内合同司令部は声明を出し、アサド政権が「大量破壊兵器をちらつかせることで、イスラエルの脅威を利用しようとしている」と主張、「地域社会と国際社会に圧力を軽減するため…数ヶ月前から大量殺戮兵器の備蓄の再配置を始めた」とし、その一部が国境地帯の空港に転送されたと述べた。

同声明によると、自由シリア軍はシリア国内の大量破壊兵器の配置を完全に把握しているというが、根拠に乏しい。

しかし、西側諸国やイスラエルがアサド政権の化学兵器の脅威をにわかに強調するなか、シリアの反体制(武装)勢力が化学兵器の使用を政局に劣勢の打開を図ろうとしていることは明らかである。

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離反兵の一人、ファーイズ・アムルー准将は避難先のトルコでロイター通信(7月24日付)に対して、「国境通行所の制圧は戦略的重要性はないが、心理的影響がある。なぜならアサド軍の精神を砕くからだ」と述べた。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、トルコのアフマド・ダウトオール外務大臣と会談した。

会談後、記者団に対して、「子供を殺害し、女性を犯してきた態勢が化学兵器を使用することはいともたやすいことだ」と述べた。

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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー報道官はAFP(7月24日付)に対して、「我々はアサドの退任と、イエメンのように体制内の誰かに移行期間を指導するための(大統領)権限の移譲で同意した」と述べた。

「体制内の誰か」が誰なのかに関して、サブラー報道官は「シリアは愛国的な人材が抱負だ。政権内にいる人物やシリア軍の一部士官も役割を果たすことができる」と答えた。

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しかし、同評議会のバスマ・カドマーニー報道官は、反体制勢力は「現体制内の人物を長とする挙国一致政府を発足すると一度も言及したことはない」と述べ、サブラー報道官の発言を否定した。

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マナーフ・トゥラース准将はアラビーヤ(7月24日付)に出演し、自身の離反を改めて公式に宣言、「一国民…一兵士として…腐敗した体制の犯罪的方法を拒否する」と政権を非難するとともに、「自由で民主的なシリアを一致団結して建設するのが我々シリア人の義務だ」と述べた。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、トルコのアフマド・ダウトオール外務大臣との会談後、記者団に対して、アレッポ県のアイン・アラブ市、アフリーン市から軍・治安部隊が突如撤退し、シリア国旗が降ろされ、二つのクルド民族主義政党の旗が掲揚されたと語った。

なおこの動きと時を一にして、シリア軍を離反したのち、イラクのクルディスタン地域で教練を受けたクルド人民兵(ペシュメルガ)約600人以上がシリア領内に入ったとの情報があるが、事実確認は取れていない。

スィーダー事務局長によると、この二つのクルド民族主義政党とはPKK系の民主統一党と、反体制組織の一つシリア・クルド民主統一党(イェキーティー)で、「アサドがこのうちの一党(民主統一党)に与えた地域で両党がそれぞれの党の旗を掲揚した」という。

スィーダー事務局長はまた「クルド人民は革命を支持しており、これら二党を支持していない」と付言した。

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シリア国民評議会のアブドゥルハキーム・バッシャール渉外局長は、「シリア政府高官はシリア・クルド民主統一党(イェキーティー)の党員を呼び、彼らに(クルド人が多く地域の)行政を託した」と述べた。

アナトリア通信(7月24日付)が伝えた。

バッシャール渉外局長によると、政府側の動機は定かでない。

なおシリアのクルド民族主義政党に関しては以下の資料を参照。

「シリアにおけるクルド問題と「アラブの春」『中東研究』第512号(2011年9月)、pp. 43-52。http://www.meij.or.jp/chutokenkyu/index.html
「シリアにおけるクルド民族主義政党・政治組織(1)」『現代の中東』第39号、2005年7月、pp. 58-84。http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Periodicals/Mid_e/pdf/2005_02_aoyama.pdf
「シリアにおけるクルド民族主義政党・政治組織(2)」『現代の中東』第40号、2006年1月、pp. 20-31。http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Periodicals/Mid_e/pdf/200601_05.pdf
「シリアにおけるクルド民族主義政党・政治組織(補足):ハリーリー元首相暗殺に伴う政情変化のなかで(2005年)」『現代の中東』第41号、2006年7月、pp. 65-94。http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Periodicals/Mid_e/pdf/200607_06.pdf

レバノンの動き

アドナーン・マンスール外務大臣は、シリア軍によるレバノン領への侵犯に関して、「現場で検証すべき事実がある」とし、アリー・アブドゥルカリーム駐レバノン・シリア大使への抗議を保留すると述べた。

シリア大使への抗議はミシェル・スライマーン大統領によって指示されていた。

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マヤーディーン(7月24日付)は、「ムフタール・サカフィー連隊」を名のる組織がレバノン領内でシリア人反体制活動家を誘拐したと報じた。

同報道によると、アレッポ県で誘拐されたレバノン人巡礼者(シーア派)11人との交換が目的だという。

『アフバール』(7月25日付)によると、誘拐された活動家の数は3人から5人だというが、誘拐された活動家の人数は定かでない。

一方、レバノンの軍当局は、レバノン領内で誘拐されていたシリア人3人(ハマー県出身)の身柄を確保したと発表した。

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レバノンのドゥルーズ派のシャイフ・アクル府はシリア国内、とりわけダマスカス郊外県ジャルマーナー地方およびグータ地方のドゥルーズ派宗徒に対して「一時の紛争を超越し…隣人と共に平穏な暮らしを維持する」よう呼びかけた。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、シリア情勢に関して、さらなる反体制活動のためシリアの反体制勢力と緊密に行動すべきと述べるとともに、アサド政権に改めて退陣を求めた。

クリントン国務長官は、「我々は反体制勢力と緊密に行動しなければならない。なぜなら彼らは徐々に領土を制圧しており、これらの領土は最終的にはシリア領内に安全な隠れ場所となり、さらなる活動のための基地となるだろう…。アサド体制が(体制)転換を始めることは手遅れではない」と述べた。

トーマス・ドニロン米国家安全保障問題担当大統領補佐官が北京を訪問し、中国高官らとシリア情勢について協議した。

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ロシア外務省は、タルトゥース港に向かって航行中のロシア艦隊がジブラルタル海峡を通り、地中海に入ったと発表した。

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AFP(7月24日付)は、イラン軍のマスウード・ジャザーイリー副参謀長が革命防衛隊のサイトで「シリア国民とその友好国は体制転換を許さないだろう」と述べた、と報じた。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、シリアの反体制武装集団による国境通行所の占拠による国境地帯の緊張状態が増すなか、「シリア政府が教訓を得ず…敵対的な行動を続けるなら、トルコは報復をためらわないだろう」と述べ、国境地帯へのシリア軍の奪還作戦を牽制した。

また「シリア国民はこれまで以上に勝利に近づいている」と煽動した。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、ドーハでのアラブ連盟シリア問題閣僚委員会会合の後、「政治改革に関して話すことはない」と述べ、シリアでの政権交代が不可避との見方を示しつつ、「(政権交代までの)期間がどのくらいかを限定できないが、体制は長くは続かないだろう」と述べた。

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ヨルダンでシリア人避難民の支援活動を行っている聖典スンナ協会のザーイド・ハマード代表は、過去3日でシリア領内から約5,000人のシリア人が避難してきたと発表した。

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シリアの反体制武装集団への武器・資金供与を行うサウジアラビアのアブドゥッラー国王の呼びかけを受け、3,260万ドルの寄付金が集まった。サウジの公式筋が明らかにした。

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『ワシントン・ポスト』(7月24日付)は、米高官の話として、CIAがエジプトやリビアとは異なり、シリア国内での諜報活動の拠点を築くことができず、国内の反体制勢力などの情報を収拾できていない、と報じた。

AFP, July 24, 2012、al-Akhbar, July 25, 2012、Akhbar al-Sharq, July 24, 2012、Alarabia.net, July 24, 2012、al-Hayat, July 25, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 24, 2012、al-Mayadin, July 24, 2012、Naharnet.com, July 24, 2012、NNA, July 24, 2012、Reuters, July 24, 2012、SANA, July 24, 2012、al-Thawra, July 25, 2012、The Washington Post, July 24, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア外務省報道官が化学兵器の使用の危険を強調する西側諸国政府・メディアの動きを非難する一方、アラブ連盟シリア問題閣僚委員会が開かれアサド大統領に対し平和的な権力移譲を求める(2012年7月23日)

国内の暴力

ダマスカス県では、SANA(7月24日付)によると、軍・治安部隊がナフル・イーシャ地区で反体制武装集団の「残党狩り」を継続した。

人権団体を名のる駐英の反体制組織、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表は、AFP(7月23日付)に対して、ダマスカス県マッザ区、バルザ区で23人(22日に)が「戦場処刑」されたと主張した。

同代表は、処刑された23人はほとんどが30歳以下だと断定したにもかかわらず、「戦闘員か民間人かは不明」と曖昧に答えた。

一方、ウマル・カーブーニーを名のる反体制活動家はAFP(7月23日付)に、「軍はダマスカスの大部分を制圧した。目に見えるかたちではないが軍は市内に依然として駐留している」と述べた。

『クッルナー・シュラカー』(7月24日付)は、7月21日のナビール・ズガイブ少将(ミサイル開発技師)とその家族(妻と息子2人)の暗殺に関して、反体制武装集団ではなく、空軍情報部の犯行だと報じた。

同報道によると、ズガイブ少将はダマスカス県内のバーブ・トゥーマー地区からバルザ区の自宅に帰る途中、空軍情報部が検問所で静止しなかったため発砲を受けた、という。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ハミーディーヤ地区で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

またサラーフッディーン地区、サーフール地区、シャッアール地区などで銃声が聞こえたという。

一方、SANA(7月24日付)によると、スッカリー地区、サラーフッディーン地区で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、甚大な被害を与えた。

その後、自由シリア軍アレッポ県司令官のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐は晩にアレッポ市内の複数地区を「解放」したと発表した。

「解放」が宣言されたとしたのは、サラーフッディーン地区、シャッアール地区、マサーキン・ハナーヌー地区、バーブ街道地区、シャイフ・ナッジャール地区。

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ダマスカス郊外県では、SANA(7月24日付)によると、軍・治安部隊がサイイダ・ザイナブ町、フジャイラ村、ディヤービーヤ市で反体制武装集団の「残党狩り」を継続した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ニウマーン市、サルマダー市で激しい砲撃が行われた。

一方、SANA(7月24日付)によると、軍・治安部隊がルージュ平野で反体制武装集団の「残党狩り」を継続した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス県ハーリディーヤ地区、カラービース地区、ジャウラト・シヤーフ地区などで砲撃が続いた、という。

一方、SANA(7月24日付)によると、軍・治安部隊がレバノンから潜入を試みる反体制武装集団を撃退、またクサイル市郊外の拠点を破壊、多数の戦闘員を殺害した。

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ダルアー県では、SANA(7月24日付)によると、対ヨルダン国境のナスィーブ国境通行所西部からシリア領内への潜入を試みた反体制武装集団の戦闘員と国境警備隊が交戦し、戦闘員多数を殺害、また多数を拘束した。

またヒルバト・ガザーラ町で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、戦闘員に甚大な被害を与えた。

一方、シリア人権監視団によると、ダルアー市などで軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦したという。

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ハサカ県では、SANA(7月24日付)によると、南東部のマルカダー地方のシュワイハーン村で治安維持部隊が反体制武装集団のアジトに突入し、大量の武器弾薬を押収した。

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ラタキア県では、SANA(7月24日付)によると、対トルコ国境のルバイア地方で軍・治安維持部隊と反体制武装集団が交戦した。戦闘により軍・治安部隊の曹長1人を含む2人が死亡したが、反体制武装集団側も甚大な被害を受け、トルコ領内に逃走した。

シリア政府の動き

シリア外務在外居住者省のジハード・マクディスィー報道官は記者会見を開き、反体制運動弾圧を目的とした化学兵器の使用の危険をにわかに強調し始めた西側諸国政府・メディアの動きを非難した。

SANA, July 23, 2012
SANA, July 23, 2012

マクディスィー報道官は、「記者会見の目的は…大量破壊兵器の国内での使用と…第3者への拡散…をめぐる虚言を口実として、国際世論に軍事介入を受け入れさせようとするメディアの計画的キャンペーンに対抗すること」としたうえで、以下のように述べた。

「我々はこうした主張が根も葉もない偽りだと強調する…。イラクの大量破壊兵器疑惑のねつ造と同じ動きである…。これらの武器がもし存在するのなら、軍によって安全に保管され、直接管理されているのは当然のことだ。外国の敵の攻撃に曝されない場合、それらが用いられることはない」。

この発言を見る限り、マクディスィー報道官はシリアの化学兵器保有を「仮定」(ないしは「虚言」)として言及しているに過ぎず、シリアが化学兵器の保有を認めたとの報道は正確ではない。

一方、マクディスィー報道官は、アラブ連盟シリア問題閣僚委員会の決議を「あからさまな主権内政干渉」と非難、「退任は…シリア国民自身が決めるものである。シリア国民が自らの政府や首脳をどうするかを決める」と述べた。

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シリア情報省は声明を出し、「西側の諜報機関が一部アラブ諸国との協力のもと、シリアの衛星チャンネルを電波ジャックし…、政権内での離反、クーデタ発生などに関するウソの情報を流そうとしている」と非難した。

18日に放映されたアサド大統領の肉声とされるニセの「退任宣言」(http://www.youtube.com/watch?v=Wx6tD-3XqYs)も、こうした動きのなかで放映された、という。

また、ダマスカス県に対する反体制武装集団の軍事行動が激化した先週以来、SANAなどのHPがサイバー攻撃に曝されている。

これに対して、反体制勢力のHPもサイバー攻撃を受けており、all4syriaなどが視聴できなくなっていた。

なおSANAは先週、カタールのドーハ近郊のズーバーラで警備会社がダマスカス、アレッポ、ラタキアの市街地のセットを建設し、世論操作の新たな試みを準備している、と報じていた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー報道官は声明を出し、ダマスカス県とアレッポ市での反体制武装集団の攻勢を「体制を避けられない周縁へと向かわせる決定的なステップ」とみなした。

レバノンの動き

ミシェル・スライマーン大統領は、ベカーア県バアルベック郡カーア地方などでのシリア軍の侵犯に関して、アリー・アブドゥルカリーム駐レバノン・シリア大使に文書で抗議するようアドナーン・マンスール外務大臣に指示した。

ヨルダンの動き

AFP(7月23日付)は、ヨルダンの対シリア国境に位置するラムサー市バシャービシャでシリア人避難民とヨルダン人住民が衝突、警察が催涙弾などを使用して両者を引き離し、強制排除したと報じた。

地元ヨルダン人青年らが避難民のシリア人女性を撮影しようとしたのが衝突の発端だという。

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ヨルダン治安筋が『ハヤート』(7月24日付)に明らかにしたところによると、対シリア国境のラムサー市にシリア軍の迫撃砲3発が着弾した。

うち1発は報道関係者らが使用する広場に着弾した。

パレスチナ人の動き

AFP(7月23日付)は、ダマスカス県ヤルムーク区などシリア国内で暮らすパレスチナ人多数が、反体制武装集団に参加している、と報じた。

同報道によると、パレスチナ人、とりわけ若者は、既存のパレスチナ諸派を支持しておらず、シリアの「革命」に同情的で、「中立的であるべきでない」と考えている、という。

これに関して、自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐は、「パレスチナ人が我々の側について戦闘しており、よく訓練されている」と述べた。

EU外相会議

EU外相会議がブリュッセルで開かれ、アサド政権高官・支持者26人を新たに制裁リストに追加するとともに、3企業をEU域内での取引を禁止するリストに追加することを決定した。

またEU加盟国は武器やその他禁止されている機器のシリア国内への持ち込みが疑われる航空機や船舶について、調査することが義務づけられた。

このほか、シリア・アラブ航空の航空機のEU領内での離着陸も禁止された。

制裁対象となるのは、シャフィーク・マッサ、ブルハーン・カッドゥール、サラーフ・ハマド、ムハンマド・ハルーフ、リヤード・アフマド、アブドゥッサラーム・ファジュル・マフムード、ジャウダト・アフマド、クサイ・マイフーブ、スハイル・アブドゥッラー、ハドル・ハドル地区、イブラーヒーム・マアッラー、フィラース・ハムド、フサーム・ルーカー、ターハー・ターハー、ナスル・アリー、バースィル・ビラール、アフマド・カッファーン、バッサーム・ミスリー、アフマド・ジャールージー、ミシェル・サリーム・カースーハ、アフマド・サーリム、ガッサーン・イスマーイール、アーミル・アシーユ、ムハンマド・アリー・ナスル、イサーム・ハッラーク、イッズッディーン・イスマーイール(元空軍情報部長、大統領顧問)、サミール・ジュムア(ムハンマド・ナースィーフ副大統領補)、ドゥライキーシュ・テクノロジー社(ラーミー・マフルーフ)など。

この制裁に関して、キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策担当上級代表は会合前に「制裁は、船舶がどのような貨物を運搬しているか調査が可能となるという点で重要だ。それによって、武器がシリア国内に持ち込まれないことを望んでいる」と述べていた。

またシリア人避難民の流入にともなう負担軽減のため、レバノンへの支援の意思を表明した。

アラブ連盟シリア問題閣僚委員会

カタールのドーハでアラブ連盟シリア問題閣僚委員会(ハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣議長)が開催された。

委員会は、アサド大統領に退任を呼びかけるとともに、連盟が大統領とその家族の安全な出国を支援するとした声明を採択した。

また同決議では、シリア国内外の反体制勢力、自由シリア軍の合意のもと、これらのすべての勢力が参加した暫定政府を早急に発足するよう呼びかけた。

一方、国連に対しては、コフィ・アナン特使の任務を、アサド大統領退任と平和的政権交代に重点を置くかたちで変更するよう求めた。

さらに、カタールのジャースィム首相兼外務大臣とナビール・アラビー連盟事務局長にロシア、中国を訪問し、この決議の内容を検討すること、そして連盟加盟国大使に対して、国連総会で民間人を保護するための「安全地帯設置」を求める緊急会合の開催を呼びかけることを定めた。

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シリア問題閣僚委員会の決議に対して、イラク政府は、「主権への干渉」にあたるとして拒否すると発表した。

イラクのルアイド・アッバーウィー外務次官はAFP(7月23日付)に対して、「この呼びかけ(決議)は現時点では不適切だ。なぜなら他国の主権への干渉とみなし得るからだ」と述べた。

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アルジェリア通信は、アルジェリア政府がアサド大統領退任問題は「シリア国民の主権が決定すべきで、(アラブ連盟シリア問題)閣僚委員会の権限に収まるものではない」と消極的な姿勢を示した、と報じた。

諸外国の動き

バラク・オバマ米大統領はネバダ州リノで演説し、アサド政権が化学兵器を使用すれば、国際社会と米国は責任を追及すると述べた。

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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はイタリアのマリオ・モンティ首相との会談後、アサド政権が打倒されれば、内戦は続くだろうと述べた。

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『クッルナー・シュラカー』(7月23日付)は、総合情報部で働く消息筋の話として、ロバート・ムードUNSMIS団長が団長就任の1週間前にシリアを訪問し、アリー・マムルーク総合情報部長と3度会談、そのうち1度は食事を共にしていた、と報じた。真偽は定かでない。

AFP, July 23, 2012、Akhbar al-Sharq, July 23, 2012, July 24, 2012、al-Hayat, July 24, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 23, 2012, July 26, 2012、Naharnet.com,
July 23, 2012、Reuters, July 23, 2012、SANA, July 23, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ダマスカス県、アレッポ市内の各地区で軍・治安部隊と反体制武装勢力の激しい戦闘、トルコ紙によってアサド大統領がムハーバラートにPKKへの武器・資金支援を行うよう命じたことが報じられる(2012年7月22日)

国内の暴力(ダマスカス県)

『サウラ』(7月23日付)によると、軍・治安部隊はマッザ区のラーズィー農園で反体制武装集団の残党を掃討し、同地を奪還した。

al-Thawra, July 23, 2012
al-Thawra, July 23, 2012

またダマスカス県バルザ区、ダマスカス郊外県のディヤービーヤ市、サイイダ・ザイナブ町でも軍・治安部隊が、反体制武装集団の捜索を継続し、多数のテロリストを殺傷、逮捕した。

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シリア・アラブ・テレビ(7月22日付)は、ダマスカス県での戦闘で軍・治安部隊が殺害した外国人戦闘員(エジプト人、レバノン人)のパスポートを公開した。

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シリア人権監視団によると、軍・治安部隊はダマスカス県、アレッポ市内の各地区で反体制勢力の掃討活動を継続し、両者の間で激しい戦闘があったという。

同監視団は、軍・治安部隊がマイダーン地区やカーブーン区の主要な街区を制圧したが、依然として戦闘が続いていることを明らかにした。

またマッザ区のバサーティーン・ラーズィーに軍・治安部隊の戦車が突入し、3人が死亡したという。

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複数の目撃者や活動家によると、第4機甲師団の戦車少なくとも20輌と兵士数百人がバルザ区に入り、反体制武装集団を掃討・処刑した。

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反体制活動家らは、軍・治安部隊がヘリコプターでルクンッディーン区、カーブーン区を砲撃したと主張した。

シリア・アラブ・テレビ(7月22日付)はダマスカス県内でヘリコプターが砲撃したとの一部情報を否定した。

国内の暴力(アレッポ県および郊外)

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市サイフ・ダウラ地区、ジャミーリーヤ地区、メリディヤーン地区、出入国管理所近くで戦闘があった。

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自由シリア軍アレッポ県軍事評議会司令官を名のるアブドゥルジャッバール・ムハンマド・アカイディー大佐は声明を出し、アサド政権からアレッポ市を奪取するための「灰色のアレッポ作戦」を開始したと発表した。

また「今日まで、自由シリア軍はアレッポ市郊外のほとんどの地点を解放することに成功した。我々の前にはアレッポ解放、そしてシリア全土解放という道が開けた」と付言し、アレッポ県全土に非常警報を発令すると宣言した。

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『サウラ』(7月23日付)によると、アレッポ市北西部のカブターン・ジャバル地方で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、反体制武装集団に甚大な被害を与えた。

またアレッポ市北部のヒヤーン地方でも、軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦、外国人戦闘員2人を含む5人の戦闘員を殺害した。

さらにフライターン市でも軍・治安部隊が反対武装集団を要撃し、20人を殺害した。

al-Thawra, July 23, 2012
al-Thawra, July 23, 2012

国内の暴力(国境地帯)

シリア革命最高指導評議会のアフマド・ザイダーン報道官は、自由シリア軍アムル・ブン・アース大隊が対トルコ国境にあるバーブ・サラーマ国境通行所(アレッポ県)を制圧したと発表した。

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一方、『ハヤート』(7月23日付)によると、シリア軍は対イラク国境のヤアルビーヤ国境通行所(ハサカ県)を反体制武装集団から奪還した。

イラクのニネベ県のアスィール・ヌジャイフィー知事によると、「反体制武装集団が昨日晩(21日)に移動したのち、シリア軍はヤアルビーヤ国境通行所を交戦せずに奪還した」と語った。

ヌジャイフィー県知事はまた「政府軍、自由シリア軍のいずれが制圧していようと、通行所はシリアから帰国するイラク人にのみ開放され、それ以外の業務は停止している」と付言した。

なおイラク内務省のアドナーン・アサディー内務次官もヤアルビーヤ国境通行所をシリア軍が奪還したことを確認したと述べた。

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アナトリア通信(7月22日付)が報じたところによると、トルコ軍がマルディン周辺に地対空ミサイル搭載車輌および兵員輸送車輌を派遣した。

地元の軍消息筋によると、対シリア国境に配備される、という。

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AFP(7月22日付)は、イラクの政治評論家やカーイム市長などの話などをもとに、自由シリア軍によるブーカマール国境通行所(ダイル・ザウル県)制圧により、シリア・イラクの通商関係は滞り、シリア政府に打撃を与える一方、同地域が反体制武装集団の武器密輸経路になるだろう、と報じた。

国内の暴力(その他)

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がダイル・ザウル市をヘリコプターなどで砲撃し、反体制活動家1人が死亡した。

またブーカマール市では市民1人が砲撃で死亡した、という。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のハミーディーヤ地区で反体制武装集団の戦闘員1人が砲撃で死亡した。

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ハマー県では、『サウラ』(7月23日付)によると、ハマー市で治安維持部隊が反体制武装集団のアジトを襲撃し、多数を逮捕した。

シリア政府の動き

アサド大統領はアリー・アブドゥッラー・アイユーブ中将を新参謀長に任命、同中将と会談した。

al-Thawra, July 23, 2012
al-Thawra, July 23, 2012

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トルコの憲兵司令部は、アサド大統領がシリアのムハーバラートにPKKへの武器・資金支援を行うよう命令を出したとの報告書を作成した。『ヒュッリーイェト』(7月22日付)が報じた。

この報告書によると、憲兵高官は、PKKがシリア国内の複数の都市で武器を管理していることを突き止めたとしている。

反体制勢力の動き

反体制武装集団は、ダマスカス県での戦闘でラフィーク・ハリーリー元首相暗殺事件に関してレバノン国内で偽証を強要されたとシリア国内で記者会見(2005年11月)した後、長らく姿をくらましていたフサーム・ターヒル・フサーム氏の身柄を確保した、とユーチューブ(7月22日付)を通じて発表した。

フサーム氏は、ベイルートに移送されることを望むとしたうえで、「誰も予期していないようなサプライズ」を明かすだろうと述べた。

http://www.youtube.com/watch?v=YtSgAsCV1y8&feature=player_embedded

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「ダマスカス県および同郊外県軍事指令部」をなのる組織が「スクール(鷹)特殊任務大隊」の名で、ラージハ国防大臣らを暗殺した直後にダマスカス県ラウダ地区の民族治安局ビル近くで撮影したと思われるビデオを配信した。

同ビデオでは、暗殺がビル内に仕掛けられた爆弾によって行われたと軍事指令部報道官が解説している。

『ハヤート』(7月23日付)は、スクール特殊任務大隊が「元士官からなり、反体制勢力のなかでもっとも専門技術が高く」、6月にはダマスカス郊外県のマルジュ・スルターン空軍基地を襲撃、ヘリコプターを破壊したという。

Youtube, July 22, 2012
Youtube, July 22, 2012

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駐英の反体制組織シリア人権監視団は、2011年3月以来の混乱のなか、民間人13,296人、軍兵士4,861人、離反兵949人が死亡した、と発表した。

レバノンの動き

MTV(7月22日付)は、シリア軍兵士約300人がベカーア県バアルベック郡のカーア地方に進入し、複数の民家を家宅捜索した、と報じた。

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『ラアユ』(7月22日付)は、ヒズブッラーに近い消息筋の話として、アサド政権が崩壊したとしても、ヒズブッラーに化学兵器が引き渡されることはないだろう、と報じた。

諸外国の動き

赤十字国際委員会は声明を出し、ダマスカス県での戦闘激化により、地区同士が寸断され、移動が困難になっていると懸念を表明、さらなる人道支援が必要だと訴えた。

同委員会によると、暴力を避けて避難している市民の数は数千人にのぼり、その一部は国外に逃れる一方、多くの人々が政府の施設、学校などに避難している、という。

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反体制武装集団に武器・兵站支援を行うサウジアラビアのアブドゥッラー国王は、シリアの同胞を救済するための寄付を募るキャンペーンを開始するよう支持した。

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反体制武装集団に武器・兵站支援を行うカタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は、自身が議長を務めるアラブ連盟シリア問題閣僚委員会のドーハでの会合で、「アナン特使の任務は変更され、平和的な政権移行に向けられねばならない」と述べる一方、安保理における意見対立が「シリアでの流血を許可する」ものと非難し、シリア情勢への対処を再検討すべきと主張した。

またアサド大統領に対しては、シリアにその運命を託し、ラマダーンの流血を避けるため、退任という「勇敢な決定」を行うよう呼びかけた。

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BBC(7月22日付)は、EUの制裁決定に従い、英国でアサド家の資産約1億6000万ドルが凍結されたと報じた。

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ヨルダン政府は、「国家安全保障維持のためあらゆる侵犯」を阻止するための必要なすべての措置を講じると発表した。

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駐ヨルダン米大使はシリア人避難民受入のための1億ドルの資金援助を行うと発表した。

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イスラエル外務省報道官は、ゴラン高原の非武装地帯へのシリア軍の進入に関して国連に抗議文を提出した。

AFP(7月23日付)が報じた。

AFP, July 22, 2012、Akhbar al-Sharq, July 22, 2012、DPI, July 23, 2012、al-Hayat July 23, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 22, 2012、Naharnet.com, July 22, 2012、al-Raʼy, July 22, 2012、Reuters, July 22, 2012、SANA, July 22, 2012, July 23, 2012、al-Thawra, July 23, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アレッポ市で前日から続く軍・治安部隊と反体制武装勢力の戦闘が激化、トルコ当局がシリア・トルコ国境のバーブ・ハワー国境通行所を閉鎖(2012年7月21日)

国内の暴力(アレッポ市)

『ハヤート』(7月22日付)など各紙によると、アレッポ市のサーフール地区、ハイダリーヤ地区、バーブ街道地区、サラーフッディーン地区などで、前日に始まった軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘が激化した。

Youtube, July 21, 2012
Youtube, July 21, 2012

軍・治安部隊が戦車、兵員輸送車を多数投入し、掃討にあたっているという。

地元調整諸委員会によると、「政権の砲撃と突入を恐れ、多くの市民が避難した」という。

『ハヤート』(7月22日付)によると、反体制武装集団はアレッポ市東部を20日に制圧した、という。

国内の暴力(ダマスカス県)

『サウラ』(7月22日付)は、マイダーン地区、カーブーン区の戦闘で、軍・治安部隊が多数の外国人戦闘員を殺害した、と報じた。

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一方、シリア人権監視団によると、カフルスーサ区、マッザ区、バルザ区で4人が射殺された。

またマッザ区で銃声が聞こえたという。

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シリア・アラブ・テレビ(7月21日付)やマヤーディーン(7月21日付)などによると、ミサイル開発の専門家であるナビール・ズガイブ少将と家族が乗った車がダマスカス県旧市街バーブ・トゥーマで反体制武装集団に狙撃され、家族全員が死亡した。

Youtube, July 21, 2012
Youtube, July 21, 2012

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アブー・マフナド・マッズィーを名のる反体制活動家はAFP(7月21日付)に対して、マッザ区には軍の検問所ではなく、自由シリア軍の検問所がある、と述べ、以前から反体制武装集団が占拠していると述べた。

国内の暴力(国境地帯)

AFP(7月21日付)は、対トルコ国境のバーブ・ハワー国境通行所(イドリブ県)にアラブ・イスラーム諸国、アフリカ諸国出身の戦闘員約150人が集結している、と報じた。

同報道によると、戦闘員の国籍は、アルジェリア人、サウジ人、UAE人、エジプト人、フランス人、チェチェン人、チュニジア人などで、その多くが「シューラー・ターリバーン」や「イスラーム・マグレブ諸国アル=カーイダ」のメンバーを名のっている、という。

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トルコ当局は、バーブ・ハワー国境通行所を封鎖した。これによりトルコ側からの出国はシリアのパスポート保有者に制限されるという。

一方、イスマーイールを名のる反体制活動家はロイター通信(7月21日付)に対して、制圧した対トルコ国境のバーブ・ハワー国境通行所に隣接する免税店での村人らによる物品の略奪を禁じない、と述べた。

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トルコ治安筋によると、トルコ南東部のマルディン市郊外のミディヤト市で何者かがイラクからの石油パイプラインを破壊し、火災が発生し、21日に消火作業が完了した。

ユーフラテス通信社(7月21日付)によると、この破壊工作にはPKKが関与しているという。

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ニネベ県のアスィール・ヌジャイフィー県知事は、AFP(7月21日付)に対して「ルバイア国境通行所は依然として正規軍が掌握しているが、私が得た複数の情報によると、事態は最近深刻だ。なぜならこの検問所にいたるシリア国内の街道が自由シリア軍の手に落ちたからだ」と述べた。

しかしその後、ヌジャイフー県知事は、AFP(7月21日付)に対して、ヤアルビーヤ国境通行所(ルバイア国境通行所)がシリアの反体制武装集団に早朝制圧されたことを確認したと述べた。

また「明日から、同通行所はイラク人の帰国者の通行を認めるのみとする」と付言した。

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イラクのアドナーン・アサド内務次官は、AFP(7月21日付)に対して「反体制武装集団はまだブーカマール国境通行所を制圧しているが…、シリアの当局は国境地帯の前哨基地に増援部隊を派遣した」と述べた。

一方、自由シリア軍のハーリド・アブー・ズィヤードなる活動家は、反体制武装集団のブーカマール国境通行所(ダイル・ザウル県)制圧直後から、シリア軍・治安部隊がブーカマール市への砲撃を開始したと述べた。

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ヨルダンの治安筋はAFP(7月21日付)に対して、シリアの反体制武装集団が対ヨルダン国境のナスィーブ国境通行所の制圧を試みたが、シリア軍が応戦し、敗走したことを明らかにした。

国内の暴力(その他)

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、シャブアー町、ザバダーニー市、フーシュ・アラブ市に対して軍・治安部隊が砲撃を加え、カタナー市では戦闘があった、という。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区に対して軍・治安部隊が砲撃を加え、クサイル市、ラスタン市では反体制武装集団との間で戦闘が発生した、という。

また対レバノン国境のジュースィーヤ村、ニザーリーヤ村では、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、反体制武装集団の戦闘員4人が殺害された。

一方、シリア革命総合委員会のハーディー・アブドゥッラーなる活動家は、ヒムス中央病院で囚人が離反、離反した多数の守衛とともに同刑務所を掌握したと発表した。

しかしSANA(7月21日付)は、ヒムス中央刑務所筋の話として、同刑務所が囚人らに制圧されたとの反体制勢力の発表を否定した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団の戦闘員2人が殺害された。

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イドリブ県では、『サウラ』(7月22日付)によると、軍・治安部隊が、サルキーン市、ハーリム市などで反体制武装集団の「浄化」を完了した。

シリア政府の動き

ダマスカス県では、18日の爆破テロで重傷を負い、死亡したヒシャーム・ビフティヤール・バアス党シリア地域指導部メンバーの葬儀が行われた。

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アースィフ・シャウカトの葬儀が生地であるタルトゥース県マドハラ村で行われた。

Youtube, July 21, 2012
Youtube, July 21, 2012

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=1-QPi4zlkAIhttp://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=1-QPi4zlkAI

反体制勢力の動き

「アフバール・シャルク」(7月21日付)は、トルコ外交筋の話として、シリア軍の士官3人(うち准将2人)が離反し、トルコ領内に避難したと報じた。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長はドイツのテレビ局に対して、キリスト教徒やアラウィー派ら「住民の恐怖は、アサド政権のプロパガンダを踏まえると理解できる…。ムスリム同胞団はシリアの反体制勢力において重要な地位を占めているが、シリア国民評議会はマイノリティの権利を保護する…。未来のシリアは多元的・民主的で、イデオロギー的、民族主義的、宗教的な過激派がいる余地はない」と述べた。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長はイスタンブールで記者会見を開き、シリア国民を救済するための国際基金の設立を求めた。

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シリア国民評議会渉外局長のアブドゥッラフマーン・ハーッジ氏はAKI(7月21日付)に対して、「評議会は条件が整い次第国内に戻ることを当初から計画していた…。指導部が現地に戻れば、革命運動家の大きな精神的支えになることは疑いない」と述べ、国内に潜入する意思を示した。

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トルコで避難生活を送る自由シリア軍事評議会議長のムスタファー・シャイフ准将は、ロイター通信(7月21日付)に対して、アサド政権が化学兵器を武器庫から各地に移動させ、弾圧のために使用していると述べた。根拠はない。

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カーミシュリー・クルド青年連合、ハサカ統一調整、シリア・クルド青年調整連合などシリア北東部で反体制運動を行うクルド人組織は共同声明を出し、クルド人がシリア北東部の分離を画策しているとの一部報道・情報を否定した。

諸外国の動き

イスラエルのエフド・バラク国防大臣は、イスラエルのテレビ局とのインタビュー(7月21日付)で、アサド政権がレバノンのヒズブッラーに高性能の地対空ミサイル、地対地ミサイル、化学兵器を供与する場合、イスラエルはシリアに軍事介入すると述べた。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、シリア社会を多様に代表するような暫定政府を早急に発足するため一致団結するようシリアの反体制勢力に呼びかけた。

AFP, July 21, 2012、Akhbar al-Sharq, July 21, 2012、al-Hayat, July 22, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 24, 2012、Naharnet.com, July 21, 2012、Reuters, July 21, 2012、SANA, July 21, 2012、SyriaSteps, July 22, 2012、al-Thawra, July 22, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

イラク・シリア国境に達した自由シリア軍が同地通行所でイラク国境警備隊と撃ち合いに、安保理決議第2059号が全会一致で採択されUNSMISの任期が30日延長される(2012年7月20日)

国内の暴力(ダマスカス県)

シリア・アラブ・テレビ(7月20日付)は、軍・治安維持部隊がダマスカス県マイダーン地区での激しい戦闘のち「テロリストの残党を完全に浄化」したと報じた。

SANA(7月20日付)などによると、軍・治安部隊は数百人の戦闘員を逮捕したが、そのなかにはシリア人以外の戦闘員も含まれていたという。また大量の武器弾薬を押収した。

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AFP(7月20日付)も、治安消息筋の話として、ダマスカス県内の複数地区を軍が奪還・制圧した、と報じた。

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シリア情報省が記者約20人にマイダーン地区での取材を許可した。

マイダーン地区内を取材したAFP(7月20日付)によると、反体制武装集団掃討作戦は、7月18日に開始され、20日早朝に完了した、という。

掃討作戦に参加したのは、共和国護衛隊の部隊と特殊任務を目的とする師団で、前者は緑を基調とした迷彩服、後者は灰色を基調とした迷彩服を着ている、という。

また反体制武装集団は約600人おり、ザーヒラ地区、タダームン区、タッル・ムニーン地区からマイダーン地区に潜入してきたという。

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これに対して、反体制武装集団は、マイダーン地区での激しい攻撃を受けた結果の「戦術的撤退」に過ぎないと反論した。

アブー・ウマルを名のる活動家は「戦術的撤退だ。我々は依然としてダマスカスにいる」とAFP(7月20日付)に語った。

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シリア人権監視団によると、マイダーン地区で爆発音が何度も鳴り響き、軍の戦車、兵員輸送車輌が同地区に突入したという。

また同監視団によると、カフルスーサ区でも軍と反体制武装集団が激しく交戦し、1人が死亡した。

このほか、マッザ区なども戦闘が続いた、という。

国内の暴力(国境地帯)

『ハヤート』(7月21日付)は、イラクのニネベ県の対シリア(ハサカ県)国境に位置するワリード通行所の国境警備隊筋の話として、「自由シリア軍が対イラク国境の国境通過点5カ所以上を制圧し、アンバール県の部族長に接触し、イラクの国境警備隊に自由シリア軍と交戦させないよう説得を求めた」と報じた。

同消息筋によると、自由シリア軍はイラク国境警備隊に直接話しかけてきたが、何らかの緊張状態が発生し、撃ち合いになった、という。

その後、イラクの武装部隊総司令官が、各国境通行所の高官に直接連絡し、個人の判断で行動しないよう通達したという。

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自由シリア軍のハーリド・アブー・ズィヤード中尉はAFP(7月20日付)に対して、「19日晩から20日昼まで続いた戦闘で、ブーカマール市の国境通行所を制圧した」ことを明らかにした。

しかし「イラク軍が国境の向こう側に展開した。我々は彼らと話そうとしたが、耳を傾けてもらえず、我々に発砲してきた。なぜなら彼らはアサドに忠実だからだ」と述べた。

国内の暴力(その他)

『ハヤート』(7月21日付)などによると、アレッポ市のサラーフッディーン地区などで軍・治安部隊と反体制武装集団が激しい交戦を行った。

また『サウラ』(7月21日付)によると、アレッポ市郊外のウールム・スグラー市の警察学校が反体制武装集団に襲撃されたが、治安維持部隊が応戦し、反体制武装集団に甚大な被害を与えた。

これに関して、シリア人権監視団は、襲撃の失敗で反体制武装集団の司令官アフマド・ファッジュを含む15人が死亡したことを明らかにした。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルバイン市が軍・治安部隊の砲撃に曝され、1人が死亡した。

またサイイダ・ザイナブ町では軍・治安部隊による反体制武装集団掃討が続いた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区、ハーリディーヤ地区を軍・治安部隊が砲撃、1人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ジスル・シュグール均衡で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、軍・治安部隊側に人的被害が出た。

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ダイル・ザウル県では、『サウラ』(7月21日付)によると、ダイル・ザウル市で治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数を死傷させた。

シリア政府の動き

ダマスカス県カシオン山の殉教者墓地で、ダーウド・ラージハ国防大臣、ハサン・トゥルクマーニー副大統領補、アースィフ・シャウカト副参謀長の国葬が執り行われた。

葬儀には、ファールーク・シャルア副大統領、ファフド・ジャースィム・フライジュ国防大臣、ムハンマド・サイード・バヒーターン・バアス党シリア地域指導部副書記長、ムハンマド・ジハード・ラッハーム人民議会議長、リヤード・ヒジャーブ首相らが出席した。

アサド大統領は参列しなかった。

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バアス党シリア地域指導部は声明を出し、18日のダマスカス県ラウダ地区での自爆テロで重傷を負っていた地域指導部メンバーのヒシャーム・ビフティヤール少将が死亡したと発表した。

反体制勢力の動き

駐英の反体制組織シリア人権監視団は、ダマスカス、ハマー、アレッポで「ラマダーンの金曜日、ダマスカスで勝利が記されよう」と銘打った反体制デモが行われ、治安部隊が実弾を使用し、弾圧した、と発表した。

同監視団などによると、ダマスカス県ではマイダーン地区、カフルスーサ区、ルクンッディーン区ドゥンマル区で、アレッポ市シャッアール地区など、ヒムス県ハウラ地方、ラタキア市などデモが発生した、という。

シリア人権監視団はダマスカス県での戦闘激化に伴い、国内での暴力に関して詳細な発表ができずにいたが、突如として情報を再開示した。

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シリア・ムスリム同胞団政治局長のアリー・サドルッディーン・バヤーヌーニー氏(前最高監督者)はイスタンブールで記者会見を開き、同市で開かれていた大会でイスラーム政党を結成することが決定されたことを明らかにした。

国連の動き

国連安保理は安保理決議第2059号を全会一致で採択し、UNSMISの任期を30日延長した。

決議全文は以下の通り。

Commending the efforts of the United Nations Supervision Mission in Syria (UNSMIS),
1. Decides to renew the mandate of UNSMIS for a final period of 30 days, taking into consideration the Secretary-General’s recommendations to reconfigure the Mission, and taking into consideration the operational implications of the increasingly dangerous security situation in Syria;
2. Calls upon the parties to assure the safety of UNSMIS personnel without prejudice to its freedom of movement and access, and stresses that the primary responsibility in this regard lies with the Syrian authorities;
3. Expresses its willingness to renew the mandate of UNSMIS thereafter only in the event that the Secretary-General reports and the Security Council confirms the cessation of the use of heavy weapons and a reduction in the level of violence sufficient to allow UNSMIS to implement its mandate;
4. Requests the Secretary-General to report to the Council on the implementation of this resolution within 15 days;
5. Decides to remain seized of the matter.

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スーザン・ライス米国連大使は、安保理の枠外での反体制勢力への政治支援、制裁強化の努力を集中させるとの意思を示した。

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ロシア大統領付報道官は、「ロシア大統領は、安保理の枠外での行動は現実的ではなく、国際機関の権威を損ねるだけだろう」と述べ、西側諸国のシリアへの介入継続を牽制した。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、BBC(7月20日付)に対して、「安保理は責任を果たさなかった…。我々は安保理の枠外で活動し、反体制勢力への支援を重点的に行うだろう」と述べた。

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なお、西側の決議案が否決されたのち、パキスタンがUNSMISの任期の45日の延長のみを求める決議案を準備、ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、「我々はパキスタンとともに作成した決議案を支持するだろう」と述べた。

だが、ロシア、中国などは、修正された上記英国案を支持した。

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国連人権高等弁務官報道官はジュネーブで記者会見を開き、ダマスカス県での戦闘激化により、過去48時間で約8,500人から3万人がレバノンに避難した、と発表した。

レバノンの動き

レバノンの大ムフティー・ムハンマド・ラシード・カッバーニー師は、シリア・レバノン国境にレバノン人の狙撃手が展開し、シリア人避難民の入国を阻止しようとしていると断じ、非難した。

イラクの動き

イラク航空は、『ハヤート』(7月21日付)に対して、1,200人以上のイラク人がシリアからバクダード空港に空路で非難したと発表した。

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イラク赤新月社は、シリア国内で避難生活をしていたイラク人避難民2,285人を受け入れるためのキャンプをワリード国境通行所の近くに設営した、と発表した。

諸外国の動き

シリア・アラブ・テレビ(7月20日付)は、アレクサンドル・オルロフ駐仏ロシア大使がラジオ・フランス(7月20日付)に「アサド大統領はジュネーブ合意、すなわち文明的に退任することに同意した」と述べたことに対して、「事実無根」と否定した。

その後、オルロフ大使は、BFMTV(7月20日付)で「アサド大統領が政権交代(に言及したジュネーブ合意)に同意したとしても、それは彼が自分で去るかどうかを決めるということで、それは対話の結果としてなされるものだ。だから「文明的退任」と述べたのだ」とトーンダウンした。

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インテルファクス通信(7月20日付)は、ロシアの軍・外交筋の話として、シリアの国内情勢が正常化するまで、メンテナンスのため回収中のヘリコプター3機の返却を延期することが決定されたと報じた。

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ロシアのアレクサンドル・ルカシェヴィッツ報道官は、「シリア政府に制裁を科すと脅迫する決議への支持を拒否したという理由で、一部の西側諸国がロシアにシリアでの暴力エスカレートの責任を押しつけようとすることは決して受け入れられない」と述べる一方、「西側の国々が少なくとも反体制武装集団に政治的解決への同意を求めていたら」事態は改善していはずだと西側諸国の介入を非難した。

他方、アサド大統領夫妻がロシアに亡命したとの一部メディアの報道に関して、ルカシェヴィッツ報道官は「今日は噂についてコメントしたくない」と否定した。

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『ハヤート』(7月21日付)は、ダマスカス県での暴力激化を受け、約16,000人のシリア人避難民がこの2日間で越境し、ヨルダン領内のラムサー市に流入した、と報じた。

AFP, July 20, 2012、Akhbar al-Sharq, July 20, 2012、BBC, July 20, 2012、al-Hayat, July 21, 2012、Naharnet.com, July 20, 2012、Reuters, July 20, 2012、SANA,
July 20, 2012、al-Thawra, July 20, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

「イスラーム国」を名乗る組織がシリア・トルコ国境の通行所を制圧したと発表、国連安保理でシリア政府への制裁に関する決議案が採決されるも廃案に(2012年7月19日)

国内の暴力

「イスラーム国」を名のる組織が、シリア・トルコ国境のバーブ・ハワー国境通行所を「完全制圧した」と発表した。

Youtube, July 19, 2012
Youtube, July 19, 2012

同組織シューラー会議のメンバーを名のる「アブー・ムハンマド・シャーミー博士」は、トルコへの通行、そしてシリアからトルコへの通行は完全に開放されたことを明らかにした。

http://www.youtube.com/watch?v=9olv3ukQifs

一方、シリア革命指導部最高評議会なる組織の報道官は、アラビーヤ(7月19日付)に対して、自由シリア軍の戦闘員がイドリブ県の対トルコ国境に位置するバーブ・ハワー国境通行所を制圧したが、撤退を余儀なくされた、と述べた。

Youtube, July 19, 2012
Youtube, July 19, 2012

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ロイター通信(7月19日付)は、反体制武装集団がアレッポ県の対トルコ国境に位置するジャラーブルス市の国境通行所を制圧した、と報じた。

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『ハヤート』(7月20日付)は、ダイル・ザウル県の対イラク国境に位置するブーカマール国境通行所も反体制武装集団の手に落ちた、と伝えた。

シリア国境警備隊の大尉は「シリア国旗が自由シリア軍の旗に換えられ、民間人の服を着た武装集団が通行所を歩き回っているのが見えた」と証言した。

一方、イラク内務省のアドナーン・アサディー内務次官はAFP(7月18日付)に対して、「イラク・シリアの国境通行所は、カーイム、タンフなどすべて自由シリア軍の手に落ちた。スィンジャールでは依然として戦闘が続いている」と述べた。

また「これ(制圧)は当然だ。なぜならこの地域の住民はシリア政府や首都に集中している軍に反対している。この地域は首都からは遠い…。だから陥落して当然だ」と続けた。

しかし「国境通過点に近いフジャイジーン村で、自由シリア軍は地元住民2人を殺害し、大尉の両手を…イラク兵の目の前で…切り落とした…。ハザーイー村、サラーマ村近くでも警官22人を惨殺した」と付言した。

こうした事態を受け、「自由シリア軍はいまだ承認されておらず、事態は深刻になっているため」、イラク側が、ブーカマール・カーイムの国境通行所を完全に閉鎖するとともに、それ以外のすべての通行所も閉鎖するだろうと明言した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラー代表によると、カーブーン区で、反体制武装集団との戦闘で、軍・治安部隊の兵士が少なくとも15人死亡し、軍・治安部隊が初めて戦車を投入した。AFP(7月19日付)が伝えた。

またマッザ区で、早朝から反体制武装集団と軍・治安部隊が激しく交戦、後者の兵士が少なくとも5人死亡した。軍・治安部隊はヘリコプターや迫撃砲を投入している、という。

マイダーン地区やタダームン区でも迫撃砲などによる攻撃は続き、それ以外にもドゥンマル区、ダマスカス郊外県のクドスィーヤー市、ムウダミーヤト・シャーム市で早朝から激しい爆発音や銃声が聞こえたという。

ダマスカス県南部および北東部での反体制武装集団と軍・治安部隊の戦闘激化に伴い、マッザ区、マイダーン地区、カフルスーサ区など数百世帯が砲撃を避けるため、パレスチナ人難民が多く暮らすヤルムーク・キャンプ地区などに避難したという。

AFP(7月19日付)は、シリアの匿名治安筋の話として、ダマスカス県マイダーン地区とタダームン区での戦闘は「非常に激しい」としたうえで、「48時間以内、ラマダーン月開始まで、ダマスカスからテロリストの掃討は続くだろう…。軍は現在のところ作戦を自制しているが、(民族治安局ビルでの)爆発後、ダマスカスの武装集団殲滅のためあらゆる武器を使用することを計画している」と報じた。

同消息筋によると、軍は「住民に戦闘地域から退避するよう求めているが、テロリストは住民を人間の盾にしようとしている」という。

一方、シリア・アラブ・テレビ(7月19日付)やドゥンヤー・チャンネル(7月19日付)は、ダマスカス県のタダームン区、マイダーン地区、カーア地区、ナフル・イーシャ地区で、軍服をまとい、共和国護衛隊の紋章を付けた武装集団が、軍に対する国民の信頼につけ込むかたちで犯罪行為を犯そうとしているとの速報を流した。

また『ティシュリーン』(7月20日付)は、マイダーン地区およびその周辺で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦を続け、少なくともテロリスト20人を殺害し、また多数のテロリストが投降したと報じた。

また同地区内のアジトを制圧したほか、武装した四輪駆動車、RPG弾、手榴弾などの武器弾薬、外国貨幣を押収したという。

同報道によると、カーブーン区でも交戦が続き、多数のテロリストが死亡、投降した。

しかしその際、一部のテロリストが仲間の遺体を焼却し、彼らが外国人であることを隠そうとした、と報じた。

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ダマスカス郊外県では、反体制活動家によると、軍・治安部隊はヘリコプターを使用し、サイイダ・ザイナブ町を攻撃し、少なくとも60人が死亡したと主張、ユーチューブ(7月18日付)に映像をアップした。

シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラー代表によると、サイイダ・ザイナブ町の住民が多数、ナジュハー市方面に避難したという。

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ヒムス県では、シリア革命総合委員会によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区、ガントゥー地区、クサイル市、タルビーサ市に対する砲撃が続いた。

一方、『ティシュリーン』(7月20日付)によると、タッルカラフ地方、クサイル地方で軍・治安部隊による反体制武装集団の掃討作戦が続いた。

またレバノンからの潜入を試みる反体制武装集団の戦闘員と対峙、撃退した、という。

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ダイル・ザウル県では、シリア革命総合委員会によると、ダイル・ザウル市、ブーカマール市、ハリータ村、シュハイル市で発砲があった。

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ハマー県では、シリア革命総合委員会によると、ハマー市で朝の礼拝を済ませて街に出た市民に治安部隊が発砲した。

一方、『ティシュリーン』(7月20日付)によると、ハマー市のマシャーウ・アルバイーン地区、旧アレッポ街道地区、ワーディー・ジャウズ地区で軍・治安部隊による反体制武装集団の掃討作戦が続き、大量の武器弾薬を押収、容疑者を逮捕した。

またラブダ村では軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、テロリスト多数を殺害、逮捕した。

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ダルアー県では、『ティシュリーン』(7月20日付)によると、ブスラー・シャーム市で治安維持部隊と反体制武装集団が交戦し、内務省筋によると、テロリストのガッサーン・ズウビーが死亡した。

シリア政府の動き

シリア国営テレビ(7月19日付)は、アサド大統領がファフド・ジャースィム・フライジュ新国防大臣の宣誓式を主催する映像を放映した。

al-Hayat, July 20, 2012
al-Hayat, July 20, 2012

ラージハ国防大臣らの暗殺以来、公の場に姿を現していなかったアサド大統領に関しては、「暗殺現場で負傷した」や「ラタキアに避難している」といった憶測が飛び交っていたが、映像公開により、シリア政府は大統領が通常通りの執務を行っていることをアピールした。

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AFP(7月19日付)は、ダマスカスの治安筋の話として、暗殺されたダーウド・ラージハ国防大臣、ハサン・トゥルクマーニー副大統領補、アースィフ・シャウカト副参謀長の国葬が20日(金曜日)にダマスカスで行われると報じた。

暗殺された3人のうち、ラージハ国防大臣はギリシャ正教徒、トゥルクマーニー副大統領補はイスラーム教スンナ派、シャウカト副参謀長は、家族がアラウィー派が多く住むタルトゥース県マドハラ村に移住したのちアラウィー派に改宗した、ないしは母親がアラウィー派の家系とされる。

なおシャウカト副参謀長の経歴については、拙稿「アースィフ・シャウカト少将は失脚したのか?:シリアをめぐる地域情勢の変化のなかで」(『国際情勢』No. 79、2009年、333-351ページ)を参照。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー報道官はAFP(7月19日付)に対して、ラージハ国防大臣らの暗殺が「この体制の終わりの始まり」と述べ、「体制とその抑圧的治安機関に大打撃を与えた」との見方を示した。

レバノンの動き

CNA(7月19日付)は、ダマスカスでのラージハ国防大臣らの暗殺事件発生後、シリア人約400人が新たにレバノン領内に避難、南部県スール郡、ザフラーニー郡、ナバティーヤ県ナバティーヤ郡、ビント・ジュベイル郡に向かったと報じた。

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ナビーフ・ビッリー国民議会議長は、ダマスカスでのラージハ国防大臣らの暗殺に関して、「このテロ行為が、国の統一を保障するために活動してきたシリア軍を寸断するために…行われたことは疑う余地がない」と非難した。

また「軍の寸断はシリアの分割と、アラブ地域におけるその役割の根絶をもたらすだろう」と警鐘をならし、「我々はシリアが危機を乗り越え、国内平和を達成すると信じている」と述べた。

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『ティシュリーン』(7月20日付)は、ミシェル・スライマーン大統領がアサド大統領と電話会談し、18日に暗殺されたラージハ国防大臣らに哀悼の意を示すとともに、爆破テロに対する強い反対の意を示した、と報じた。

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アドナーン・マンスール外務大臣はワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣に対して、ラージハ国防大臣ら爆弾テロの犠牲者への哀悼の意を伝えた。

イラクの動き

イラクのジャラール・ターラバーニー大統領は、アースィフ・シャウカト副参謀長の暗殺を受け、同副参謀長の妻でアサド大統領の実姉のブシュラー・アサド氏に弔電を送った。

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イラクのターリク・ハーシミー副大統領(テロ活動支援容疑で欠席裁判中)は現在滞在中のカタールで、離反したナウワーフ・シャイフ・ファーリス駐イラク・シリア大使と情報収集のため会談する用意があるとの意思を示した。

クルディスタン自治区にある副大統領暫定事務局が発表した。

国連の動き

国連の潘基文事務総長は声明を出し、ラージハ国防大臣らの暗殺を「厳しく非難」する一方、シリアの治安当局による(報復の)重火器使用への懸念を表明、安保理に対して、「自らの責任を果たし、集団的・実効的な行動」を呼びかけた。

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コフィ・アナン特使は、シリア政府への制裁とUNSMISの任期延長に関する決議案に関して、安保理諸国による一致団結と、流血停止と政治的転換の準備に向けた協力且つ協調的な行動を呼びかけた。

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国連安保理で、シリア政府への制裁に関する決議案が採決され、米英仏、インド、コロンビア、ドイツ、ポルトガル、トーゴ、モロッコ、グアテマラ、アゼルバイジャンは賛成したもの、ロシアと中国が拒否権を発動し反対、また南アフリカとパキスタンが棄権し、廃案となった。

米英仏独ポルトガルが共同提出した決議案は、UNSMISの任期を45日間延長することに加えて、シリア政府が10日以内にアナン特使のイニシアチブに従い停戦しなければ、国連憲章第7章に基づき(経済)制裁を科すことを求めていた。

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スーザン・ライス米国連大使は、「安保理の外で友好国とアサド体制への圧力を検討し続ける」と述べた。

またUNSMISに関しては「安全かつ組織的な撤退のための任期延長の用意がある」と述べる一方、露中の拒否権発動に関しては「シリア情勢の混乱を増す」と非難し、シリア政府に対して化学兵器の使用・移転を行わないよう警告した。

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ロシアのヴィタリ・チュルキン国連大使は、UNSMISの任期延長のみを目的に英国が準備した新たな決議案に関して「英国はこっけいな決議案を提出した。我々には検討の時間が必要だ」と述べ、20日に採決に応じるか否かを決する意思を示した。

また拒否権の発動に関しては「シリアへの制裁と軍事介入の脅迫を拒否する…。アナン特使の停戦案やジュネーブでのシリア協力グループの決定を実行するための行動に換えて、シリア危機の軍事化や紛争激化の試みを反故にした」と述べた。

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なお英国が提出した新決議案はUNSMISの任期を「一度だけ30日間延長する」ことを定めるとともに、アサド政権と反体制勢力の勢力の停戦を任期再延長の条件としている。

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UNSMISのロバート・ムード団長はダマスカスで記者会見を開き、ラージハ国防大臣らの暗殺に関して、犠牲者遺族や負傷者家族に哀悼の意を示すとともに、シリア情勢に関して「平和への途上にはない…。過去数日間でダマスカスで起きていることがそのことを示している」と述べた。

任期最終日を受けてダーマー・ルーズ・ホテルで記者会見を開いたムード団長はまた「私は去る。私は私と約400人の勇敢な男女が重大な課題に直面する状況下で最大限の努力をしたことに満足している」と述べた。

その他諸外国の動き

ロシアのユーリ・ウシャコフ大統領顧問は記者団に対して、ウラジーミル・プーチン大統領がトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相との会談やバラク・オバマ米大統領との電話会談で、アサド大統領退任後の亡命先について協議していないと述べた。

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フランス外務省のベルナール・ヴァレロ報道官は、「暴力がとりわけダマスカスでここ数日エスカレートし、離反も増大している。このことは、ダマスカスの体制が日々、状況を制御できなくなりつつあることを示している」と述べた。

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英国のデビッド・キャメロン首相は、アサド大統領が「去る時が来た。彼の体制は変革を必要としている…。転換が起きなければ、内戦が起きることは明白だ」と述べた。

その根拠として同首相は、「体制は国民に対して恐るべき行為を犯した。そしていまだに犯している」からだと続けた。

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ヨルダンのアブドゥッラー国王は、CNN(7月18日付)に対して、「我々は政治的解決を切望しているのだが、最悪のシナリオの一つは、化学兵器の武器庫が敵(テロリスト)の手に落ちることだ」と述べた。

またラージハ国防大臣らの暗殺に関して、シリア政府にとって「大きな打撃」となったとしつつも、「近い将来に体制が終わるという結論に飛躍すべきだとは考えない」と述べた。

そのうえで「我々が政治的解決を後押ししたいと願っても、現地情勢は我々を追い越して推移するかもしれない…。内戦を回避する最後のチャンスだ」と付言した。

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イスラエルのエフド・バラク国防大臣は占領下のゴラン高原を視察、ラージハ国防大臣らの暗殺に関して、「アサド家の体制の崩壊を加速するだろう。この事件はシリアの体制と、イラン人とヒズブッラーからなる過激な枢軸に大きな打撃となっている」と述べた。

AFP, July 19, 2012、Akhbar al-Sharq, July 19, 2012、al-Hayat, July 20, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 19, 2012、Naharnet.com, July 19,
2012、Reuters, July 19, 2012、SANA, July 19, 2012、Tishrīn, July 20, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ダマスカス県ラウダ地区の民族治安局で爆弾テロが発生しラージハ国防大臣を含む政府高官らが暗殺される、各国は今後予想される情勢の悪化を懸念(2012年7月18日)

国防大臣、副大統領補佐官、副参謀長爆殺(ダマスカス県)

SANA(7月18日付)は、ダマスカス県中心に位置するラウダ地区の民族治安局(バアス党地域指導部国家安全保障局)で「爆弾テロ」があり、ダーウド・ラージハ国防大臣、ハサン・トゥルクマーニー副大統領補、アースィフ・シャウカト副参謀長が暗殺されたと報じた。

SANA, July 18, 2012
SANA, July 18, 2012

また各紙によると、ムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール内務大臣、ヒシャーム・ビフティヤール・バアス党シリア地域指導部メンバー(国民安全保障会議メンバー)が負傷した。

爆発は、国内治安対策を話合う会合を狙ったものと見られ、AKI(7月18日付)によると、爆発は建物の外ではなく内部で起きた。

『ハヤート』(7月19日付)は、シリアの治安筋の話として、閣僚や治安関係者が集まっていた民族治安局ビル内のホールで「自爆犯が爆弾の仕掛けられたベルトを爆発させた」と報じた。

またマナール(7月18日付)は、治安機関高官と関係のある人物がビルに入ったあとに爆発があった、と報じた。

ロイター通信(7月18日付)は、治安消息筋の話として、実行犯がアサド大統領に近いサークルに属する守衛だったと伝えた。

爆発が起きたビルは米大使公邸やトルコ大使館から数百メートルの場所にある、という。

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またこの暗殺事件と時を一にして、各地で軍・治安機関の施設襲撃、高官暗殺の情報が錯綜した。

そのほとんどは事実関係が明らかとなっていないが、主な報道は以下の通り。

『クッルナー・シュラカー』(7月18日付)は、自由シリア軍の複数の消息筋の話として、爆発現場にマーヒル・アサド大佐もおり、重傷を負ったと報じたが、事実関係は明らかでない。

アラビーヤ(7月18日付)などは、マーヒル・アサド大佐が事実上の司令官を務める第4(機構)師団で爆発があったと報じたが、その後否定した。

『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)は、総合情報部内務課ダマスカス班長を務めるハーフィズ・マフルーフ准将の執務室長のユースフ・イブラーヒーム大佐が任務遂行中にドゥーマーで殺害されたと報じた。

ジャズィーラ(7月18日付)は、シリア空軍のアブドゥルムンイム・ハリーリー大佐とズィヤード・トゥラース准将が離反し、ヨルダンに逃走したとの速報を流した。

シリア・ステップス(7月18日付)は、爆発で負傷したヒシャーム・ビフティヤール少将が両脚に重傷を負い、切断したものと思われると報じた。

アラビーヤ(7月18日付)は、総合情報部内務課のハーフィズ・マフルーフ准将も爆発に巻き込まれて死亡したと報じた。

しかしマヤーディーン(7月18日付)は、総合情報部内務課のハーフィズ・マフルーフ准将が会議に出席していなかったと報じ、死亡報道を否定した。

【解説】

「爆弾テロ」の標的となった民族治安局ビルは、バアス党シリア地域指導部内の民族治安局の施設である。同局は1960年代末にシリアにおいて活発な治安維持機関、諜報機関として活動したが、ハーフィズ・アサド前政権以降は影響力を低下させ、2009年7月の国民安全保障会議(ないしは国民治安会議)の発足をもって解体された。

国民安全保障会議の構成員・活動については不明な点が多いが、発足時のメンバーはファールーク・シャルア副大統領、ムハンマド・サイード・バヒーターン・バアス党シリア地域指導部副書記長、ヒシャーム・ビフティヤール同指導部メンバーで、ムハーバラートの活動を調整・統括することが主な任務だと考えられる。

「爆弾テロ」の標的になったのは、国民安全保障会議の会合だと考えられる。

al-Hayat, July 19, 2012
al-Hayat, July 19, 2012

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ラージハ国防大臣、トゥルクマーニー副大統領補、シャウカト副参謀長の死亡により、アサド政権の軍・治安体制は大きな打撃を被ったものと考えられるが、そのいずれもが「閑職」ないしは「上がり」として職務に就いており、政権におけるその役割は誇張されるべきではないだろう。

例えば、シャウカト副参謀長は、アサド大統領の姉のブシュラー・アサド女史の夫で軍事情報局長を務めたこともある「大統領の右腕」を目された人物であるが、2007年7月のイスラエル空軍機によるキバルの核疑惑施設空爆や、2008年2月のヒズブッラーのイマード・ムグニーヤ氏のダマスカスでの暗殺の責任を追及されるかたちで失脚し、副参謀長職に甘んじていた。

またトゥルクマーニー副大統領補は、軍の定年に伴い国防大臣職を解かれたのち、「副大統領補佐官」という新設ポストを与えられ、政権に協力し続けてきた。

さらにラージハ国防大臣は、トゥルクマーニー副大統領補の退役に伴い、「エスカレーター」式に参謀長から国防大臣に就いた経緯があり、アサド政権が重視する「制度的思考」に基づき機会的に登用されていたに過ぎない。

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残された軍・治安機関の高官が、今後どのようなかたちで政権運営に参与するかは依然として不透明であるが、その多くが治安対策に関しては強硬な主張の持ち主、ないしは強硬な政策の実施者であることを踏まえると、シリアにおける暴力はこれまで以上に大規模化・激化する可能性が高い。

残された主な軍・治安機関の高官は以下の通り以下の通り。

ルストゥム・ガザーラ准将:軍事情報局ダマスカス郊外県課長。
アブドゥルファッターフ・クドスィーヤ少将:軍事情報局長。
ヒシャーム・ビフティヤール少将:バアス党シリア地域指導部メンバー。
アリー・マムルーク少将:総合情報部長。
ムハンマド・ナースィーフ:副大統領補。
ジャミール・ハサン少将:空軍情報部長。
ディーブ・ザイトゥーン少将:政治治安部長。
ムハンマド・サイード・バヒーターン:バアス党シリア地域指導部副書記長。
マーヒル・アサド大佐:共和国護衛隊。アサド大統領の実弟。

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シリアのムハーバラートについてはhttp://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/syria/m/02.htmを参照。

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なおSANA(7月18日付)などシリア公式筋は、シャウカト副参謀長を「国防副大臣」としているが、彼が「副大臣」に任命された事実は確認できない。

その他の国内での暴力

ダマスカス県では、SANA(7月18日付)によると、マイダーン地区での反体制武装集団の「残党」に対する掃討作戦が継続され、多数のテロリストを殺害、逮捕した。

SANA, July 18, 2012
SANA, July 18, 2012

またカーブーン区、ティシュリーン地区でも逃走する反体制武装集団戦闘員の追跡が行われ、ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市、スバイナ町では治安部隊が反体制武装集団と交戦した。

『ハヤート』(7月19日付)も、アサーリー地区、タダームン区、ハジャル・アスワド市などで治安維持部隊と反体制武装集団の交戦が続いたと報じた。

一方、ロイター通信(7月18日付)によると、マイダーン地区の旧市街、ザーヒラ地区は反体制武装集団に占拠され、軍の戦車・装甲車が入れない状態だという。

またバルザ地区には戦車が展開、対空砲が設置され、カーブーン区に砲撃を加えたという。

このほか、複数の活動家や住民によると、早朝、ドゥンマル区西部の人民宮殿(迎賓館)の兵舎が反体制武装集団の攻撃に曝され、銃声が聞こえたという。

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イドリブ県では、SANA(7月18日付)によると、治安維持部隊がサルキーン地方、カフルタハーリーム地方で反体制武装集団の掃討作戦を継続、甚大な被害を与えた。

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ヒムス県では、SANA(7月18日付)によると、クサイル市近郊のジャウラ村、ニザーリーヤ村、ラブラ町、ズィラーア村で、治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、甚大な被害を与えた。

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『ザマーン・ワスル』(7月18日付)は、ダルアー県に展開していた戦車35輌が、ダマスカス国際空港(ダマスカス郊外県)に続く街道に再展開した、と報じた。

同報道によると、反体制武装集団が空港への街道を制圧することを回避するための再展開だという。

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『クッルナー・シュラカー』(7月18日付)は、シャリーフ・シハーダ人民議会議員の妹ラナー・シハーダ氏が自由シリア軍に誘拐された、と報じた。

シリア政府の動き

アサド大統領は2012年政令第275号を発し、ファフド・ジャースィム・フライジュ中将を軍・武装部隊副司令官に任命した。

SANA, July 18, 2012
SANA, July 18, 2012

また同第276号で、フライジュ中将を国防大臣に任命した。

フライジュ中将は1950年1月生まれ。出身地はハマー県。

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フライジュ新国防大臣は就任に合わせて声明を発表、「武装部隊の兵士たちは、こうした臆病なテロ行為によって、犯罪テロ集団残党の追跡という自らの神聖なる任務の継続を放棄することはない」との強い意思を示した。

またシリア・アラブ・テレビ(7月18日付)の取材に対して、ジャズィーラやアラビーヤの報道が「ウルーバ(アラブ性)に敵対して、事実無根」と非難した。

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軍・武装部隊総司令部は声明を出し、ダマスカスでの爆弾テロに関して、「殺人犯罪集団の根絶と追跡を継続する」と強調するとともに、「一部の司令官を標的とすることでシリアの力をくじくことができると想像している者がいるとしたら、そうした者は幻想家だ。なぜなら、シリアの国民、軍、指導部は今日、テロの挑戦に対してあらゆる手段でこれまで以上に強く抵抗しているからだ」と述べた。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=vPSbqqldQNg

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情報省は声明を出し、西側メディアや湾岸アラブ諸国のメディアが発信するシリア情勢に関する映像は「事実無根」だと発表した。

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ウムラーン・ズウビー情報大臣はシリア・アラブ・テレビ(7月18日付)に出演し、国防大臣らの暗殺を「シリア・アラブ国軍、その将兵、さらには民間人、国家機関への攻撃」と非難するとともに、「米国、西側、そしてイスラエルのシリアに対する陰謀の最終章」と述べ、断固たる姿勢で臨む意思を示した。

また、カタール、サウジアラビア、トルコ、イスラエルの諜報機関、さらには西側および湾岸アラブ諸国政府に、シリアの現下の危機の法的、政治的、道義的責任がある、と断罪し、これらの国が反体制勢力に武器、資金援助をしていることを非難した。

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バアス党シリア地域指導部が声明を出し、国防大臣らの暗殺を非難したうえで、「イスラエルを筆頭とする悪の勢力に支援されたテロによってもシリア国民の力をくじくことはできないだろう」と述べ、徹底抗戦の構えを示した。

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ダマスカス・ニュース・ネットワーク(7月18日付)が報じたところによると、シリア・インターネット軍司令官のアンマール・イスマーイール氏はフェイスブックを通じて活動停止を発表した。

Kull-na Shurakāʼ, July 18, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 18, 2012

活動停止の理由は、反体制運動への恐怖ではなく、犠牲者への哀悼の意を示すためだという。

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SANA(7月18日付)によると、ダマスカス県のユースフ・アズム広場で、若者が数十人が集まり、テロ反対を訴えた。

反体制勢力の動き

自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐(報道官)は、ダマスカス県での国防大臣らの暗殺に関して、「この特別作戦はダマスカス火山、シリア地震作戦の一環」と述べ、自由シリア軍の関与を認めるとともに、「アサド政権打倒に向けた一連の特別作戦の始まりに過ぎない」と付言した。

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ユーチューブ(7月18日付)では、サハーバ大隊の司令官の一人だというアフマド・ムハンマド・タクタク中尉なる軍服姿の男性が、声明を読み上げ、国防大臣らに対する暗殺を実行したと発表した。

自由シリア軍の士官だと自称するこの男性は、「私、アフマド・ムハンマド・タクタク中尉、「ダマスカスおよび同郊外のサハーバ大隊」の現場の司令官の一人は、サハーバ大隊の名において、同大隊に所属する特殊任務連隊が作戦を実行したことを発表する」と述べた。

またこの男性によると、この特殊任務連隊は「いわゆるシリアの危機管理細胞の面々を2ヵ月にわたって監視する作戦を実行した。そして我ら英雄の一人が現場に入り、作戦を実行し、彼らを殺害した」という。

この連隊は5月19日にも、ラージハ国防大臣、シャウカト副参謀長らを毒殺したと発表している(http://www.ac.auone-net.jp/~alsham/2012_05/19.html)。

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イスラーム旅団を名のるグループがフェイスブックを通じて声明を出し、国防大臣らを暗殺したと発表した。

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『アクス・サイル』(7月18日付)は、シリア政府に近い消息筋の話として、ダマスカス県での国防大臣ら暗殺の背後にマナーフ・トゥラース准将がいる可能性が高いと報じた。

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自由シリア軍の「調整軍需局」を名のる組織が声明を出し、「ダマスカス解放作戦」を開始したと発表した。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、国防大臣らの暗殺に関して、「シリアの歴史の転換点」と述べ、アサド政権への圧力がまし、数週間から週ヵ月のうちにその崩壊が生じるだろう、との見方を示した。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、ダマスカス県内での国防大臣らの暗殺に関して、「バッシャール・アサドと抑圧を続ける彼の悪党たちが選んだことの直接の結果」と述べ、「治安体制への大いなる浸透は…、体制が手負いのトラ(オオカミ)になったことを示している」と評した。

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トルコで避難生活を送る自由シリア軍司令官のリヤード・アスアド大佐は、UAE日刊紙『バヤーン』(7月18日付)で、アサド政権が民間人や反体制勢力に化学兵器を使用することを懸念していると述べた。

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『ハヤート』(7月19日付)は、イスタンブール在住のファウワーズ・タッルー氏の話として、反体制武装集団は兵站線が延びているため、これまでと同じく戦術的撤退をするだろう、と報じた。

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国内で反体制活動を続けるシリア国家建設潮流は声明を出し、ダマスカス県での戦闘激化とラージハ国防大臣らの暗殺に関して、すべてのシリア人のためにならない混乱が発生すると警鐘をならすとともに、煽動的な国営メディア、外国メディア、SNSの情報に依拠せず、知性と友愛をもって対処するよう国民に呼びかけた。

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パリで活動するシリア民主世俗主義諸勢力連立はラージハ国防大臣らの暗殺を受けて、声明を出し、シリア国民に街頭デモ、政府機関などの襲撃を通じて、革命を実現するよう唱導した。

レバノンの動き

北部県トリポリ市で、国防大臣らを狙ったダマスカスでの爆弾テロを祝うデモが発生し、ジャバル・ムフスィン地区(親アサド)とバーブ・タッバーナ(反アサド)地区の間で銃撃戦となり、1人が流れ弾に当たって死亡、1人が負傷した。

Naharnet.com, July 18, 2012
Naharnet.com, July 18, 2012

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ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長がレバノン紛争(2006年)での戦勝記念のテレビ演説を行い、シリアを「レジスタンスの真の軍事的支援者」と絶賛するとともに、ダマスカスで暗殺された国防大臣らを「殉教指導者」、「同志」と呼び、「シリアを保全し、唯一の解決策は対話を受け入れることだ」と強調した。

そのうえで「米国はシリア国民の正当な要求を利用し、対話を妨害し、シリアを戦争地域にしようとしている。なぜなら、その目的はシリアをイラクのように破壊・分断することにあるからだ」と警鐘を鳴らした。

Naharnet.com, July 18, 2012
Naharnet.com, July 18, 2012

諸外国の動き

ロシア外務省は、国防大臣らの暗殺に関して声明を出し、「ダマスカスでのこのようなテロをした組織を特定し、相応しい罰を科せられることを期待する」との立場を示した。

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ローラン・ファビウス外務大臣は、国防大臣らの暗殺に関して、仏上院で、「フランス政府は…テロを非難する。暴力の激しさを踏まえると、シリア国民が自身の深淵な要求を表現する政府を持てるような政治的転換が起きることが不可欠であり急務だと思われる」と述べた。

また「爆発に関する正確な状況は把握していないが、きわめて重大な動きであり、ダマスカスに達した暴力のレベルがいかなるものかを示している」と付言した。

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ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、国防大臣らの暗殺に関して、「チャンスは失われつつある。我々はシリア国民にとって相応しい移行プロセス実現において一致団結して支援のために行動する必要がある…。アサド体制がコントロールを失いつつあることは明白である…。宗派主義戦争、内戦を回避するため政治的移行を進める必要がある」と述べた。

また「かつて体制を支持していたシリア人の多くは今やアサドが問題そのものであって解決策ではないと考えるようになっている…。我々は国際社会のパートナーとともに、シリアでの政治的移行を実現するために行動する」と付言した。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、国防大臣らの暗殺に関して、「シリア情勢が急速に悪化していることは明白だ…。シリアは過去数ヶ月よりもさらに悪い混沌と崩壊に脅かされている…。それゆえ、国連安保理決議の採択だけでなく、政治プロセスの進展と暫定政府の樹立をもって問題解決をめざすことが急務である」と述べた。

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イラン外務省は声明を出し、国防大臣らの暗殺を「テロ行為」と非難し、「現下の危機の唯一の解決策は対話だと確信する」と述べた。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相がロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン大統領、セルゲイ・ラブロフ外務大臣らロシア首脳と会談した。

両首脳の会談では、ジュネーブでのシリア作業グループ会合での合意を「シリアの危機を正常化するための建設的な行程表」だとみなす点で意見が一致した。

プーチン大統領は「将来の立場を調整する優れた基礎」とみなす一方、エルドアン首相は「重要な行程表」としたうえで、「我々はポスト・アサドのシリアの行方は外国諸国ではなく、シリア国民自身が決めることを望んでいる」と述べた。

会談後の記者会見でラブロフ外務大臣は、ダマスカス県での暴力に関して、「決戦」が行われていると指摘、安保理が対シリア制裁を科せば、反体制武装集団を直接支援し、シリアを内戦に陥れるようなものだと警鐘を鳴らした。

また「反体制勢力を支援する政策は行き詰まっている。アサド大統領は自分から退任することはない。西側諸国はそうすることで(アサド大統領を退任させることで)、何をしようとしているのか分かっていない」と批判した。

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ロシア大統領府は声明を出し、ウラジーミル・プーチン大統領とバラク・オバマ米大統領が電話会談を行い、シリア情勢について協議したと発表した。

声明では、シリア情勢への分析的視点や、解決をめざす点でコンセンサスに達したが、解決策に至るプロセスをめぐって意見対立は続いたことが明らかにされた。

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中国を訪問中の潘基文国連事務総長は記者団に対して、「このような方向に向かうことはできない…。この間、非常に多くの人々が命を落とした」と述べ、安保理にシリアでの暴力停止に向けた行動をとるよう求めた。

潘事務総長は、中国首脳との会談で「情勢が現在、いかに危険かを説明した」としたうえで、「安保理が一致団結した行動をとるかたちで…対話を行えることを希望する」と述べた。

事務総長付報道官によると、潘事務総長は暴力の停止の必要とともに、シリア人自身によって政権移行がもたらされるような政治的対話をシリア人に開始させるべきとの姿勢を示した、という。

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『ハヤート』(7月19日付)は、複数の外交筋の話として、アナン特使がシリア問題に関する安保理決議案(UNSMISの任期延長などに関する決議案)の採決の延期を求めたと報じた。

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米財務省はシリア政府高官および支援者29人と武器開発・製造に関わっているとされる企業・法人5団体への追加制裁(渡航禁止、資産凍結)を決定した。

制裁対象となった高官は、サフワーン・アッサーフ住宅都市開発大臣、スブヒー・アフマド・アブドゥッラー農業・農業改革大臣、アディーブ・マイヤーラ・シリア中央銀行総裁、ワーイル・ナーディル・ハッキー保健大臣、ムハンマド・ジュライラーティー財務大臣、ハーラ・ムハンマド・ナースィル敢行大臣、ムハンマド・ムハンマド・アブドゥッサッタール・サイイド宗教関係大臣、ヤースィル・スィバーイー公共事業大臣、ハズワーン・ワッズ教育大臣、ウムラーン・アフマド・ズウビー情報大臣、マンスール・ファドルッラー・アッザーム大統領担当国務大臣、フサイン・マフムード・ファルザート国務大臣、ウマル・イブラーヒーム・ガラーワンジー福祉問題担当副首相兼地方自治大臣、ラドワーン・ハビーブ法務大臣、アリー・ハイダル大統領担当国務大臣、バッサーム・ハンナー水資源大臣、リヤード・ヒジャーブ首相、サイード・ムウズィー・フナイディー石油鉱物資源大臣、カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣、イマード・ムハンマド・ディーブ・ハミース電力大臣、フアード・シュクリー・クルディー工業大臣、ムハンマド・ザーフィル・ミフバク経済対外通商大臣、ムハンマド・ヤフヤー・マアッラー高等教育大臣、ルバーナ・ムシャウウィフ文化大臣、アブドゥルガニー・サーブーニー通信技術大臣、マフムード・イブラーヒーム・サイード運輸大臣、ナズィーラ・ファラフ・サルキース環境担当大臣、ジョゼフ・スワイド国務大臣、ジャースィム・ムハンマド・ザカリヤー社会問題労働大臣。

また制裁対象となった企業・法人は科学研究センターなど。

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『ニューヨーク・タイムズ』(7月18日付)は、米国防総省高官の話として、米国およびイスラエルの軍高官が、イスラエルによるシリア軍の武器庫攻撃について協議したと報じた。

同高官によると、米国防省は、こうした攻撃がシリア政府によって利用されることを懸念し、攻撃には反対した、という。

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フランソワ・オランド仏大統領は、「マナーフ・トゥラース准将がどこにいるかに関して、私は今日、現状を知った」と述べ、同准将がフランスに逃れたことを認めた。

チュニジアのムンスィフ・マルズーキー大統領との共同記者会見で、記者からの質問に対して答えた。

AFP, July 18, 2012、Akhbar al-Sharq, July 18, 2012、AKI, July 18, 2012、ʻAks al-Sayr, July 18, 2012、Alarabia.net, July 18, 2012、Aljazeera.net, July 18, 2012、al-Bayan, July 18, 2012、Elnashra.com, July 18, 2012、al-Hayat, July 19, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 17, 2012、July 18, 2012、Naharnet.com,
July 18, 2012、Reuters, July 18, 2012、SANA, July 18, 2012、Syria Steps, July
18, 2012、Zaman al-Wasl, July 18, 2012、The New York Times, July 18, 2012などをもとに作成。

写真はal-Hayat, July 19, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 18, 2012、Naharnet.com, July 18, 2012、SANA, July 18, 2012。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ダマスカス県マイダーン地区で激しい交戦が継続し政府軍はヘリコプターを投入、英外相がヨルダンを訪問し「国連憲章第7章に基づく安保理決議」の必要性を強調(2012年7月17日)

ダマスカス県内での暴力(シリア政府側の発表)

SANA(7月17日付)は公式筋の話として、ダマスカス県内での治安維持部隊と反体制武装集団(武装テロ集団)の交戦に関して、以下の通り報じた。

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治安維持部隊がナフル・イーシャ地区内の道路を封鎖し発砲を続けてきた反体制武装集団と交戦、排除した。

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マイダーン地区では、反体制武装集団がマイダーン・コルニーシュ近くの交差点で車爆弾を爆発させ、2人が負傷、周辺の商店、車が損害を被った。

同地区では、反体制武装集団が市民を人間の盾として犯罪行為を行ったが、軍が掃討に成功し、砲撃・銃撃から避難していた住民は帰宅した。

同地区の住民によると、反体制武装集団が市民に無差別に発砲する一方、軍は市民の避難に尽力し、住民の支援のもと反体制武装集団の排除を行った、という。

マイダーン地区では治安維持部隊が反体制武装集団の残党の追跡を続けている、という。

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マイサート地区で救急車両に発砲した反体制武装集団3人を治安維持部隊が追跡、2人を逮捕した。救急車両への発砲により、運転手と助手が負傷した。

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バーブ・サリージャ地区では、市民や商店に無差別発砲を行った反体制武装集団全員を治安維持部隊が射殺した。

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バルザ区では、反体制武装集団が出版公社ビルをRPG弾などで攻撃し、出版・印刷関連の機器などが破壊された。

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カーブーン区では、反体制武装集団が第3カーブーン発電所をRPG弾などで攻撃、これにより、変電機3台が破壊された。

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シリアの治安筋によると、軍・治安部隊がカーブーン区、マイダーン地区での掃討作戦を開始し、テロリスト33人を殺害、15人を負傷させ、145人を逮捕した。

ダマスカス県内での暴力(反体制側の発表・報道)

ダマスカス県内マイダーン地区などで、反体制武装集団による「ダマスカス火山、シリア地震」作戦が継続され、軍・治安部隊との交戦が続けられたものと思われるが、明確な戦果があがったとの発表はなかった。

また戦闘が行われたとされる地区はそのいずれもが、過去数ヶ月にわたって反体制武装集団が拠点とし、治安維持部隊と散発的に戦闘を繰り返してきた地域であり、反体制武装集団の作戦は実質的な戦闘というよりは、プロパガンダ的色彩が強かったと言える。

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『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)は、ダマスカス県内の車・人通りをまばらで、省庁の職員もそのほとんどが欠勤するか、早退したと報じた。

また『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)は、ダマスカス県内の消息筋の話として、治安部隊がタクシーで逃走する反体制武装集団を追跡、逮捕したと伝えた。

同消息筋によると、タクシーは、ヒジャーズ地区からジスル・ヴィクトリアを経て、サブウ・バフラート広場に逃走し、その間、治安部隊と銃撃戦を繰り広げ、最後は反体制武装集団の弾薬がつき、通行人らの前で取り押さえられたという。

同報道は、この逮捕劇が政権側の自作自演で、同日にサブウ・バフラート広場で予定されていたアサド政権支持のデモを中止とするための口実だった、と断じているが、真偽は定かでない。

なおAFP(7月17日付)などによると、サブウ・バフラート広場、ハミーディーヤ地区、ナスル通り、アッバースィーイーン広場などでも銃声が聞こえたという。

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『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)は、大統領府内の軍関連筋の話として、アサド大統領がダマスカス県内の治安維持任務の全権を共和国護衛隊に委ねたと報じた。

この措置は、ダマスカス県内での軍・治安部隊の離反を回避するためだという。

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『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)ともに、マイダーン地区での戦闘で、ダマスカス警察のイーサー・ドゥーバー副所長が重傷を負い、死亡した。

また同行していた警察幹部1人も死亡した。

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シリア人権監視団によると、軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘が続くマイダーン地区に軍・治安部隊の増援部隊が入る一方、軍のヘリコプターがバルザ区に対して攻撃を加えた。

カーブーン区での戦闘では12人が死亡、カダム区での戦闘では軍・治安部隊の兵士2人が死亡した。またナフル・イーシャでの戦闘では1人、サイイディー・ミクダード地区でも1人が死亡した。

軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘はこのほか、カフルスーサ区、ジャウバル区、タダームン区、アサーリー地区、ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市でも続いた、という。

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自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・タキーッディーン大佐は、AFP(7月17日付)に、カーブーン区で軍のヘリコプターを撃墜したと語った。

これを受け、反体制活動家が撃墜されたヘリコプターの写真を公開したが、タルトゥース・ニュース・ネットワーク(7月17日付)によると、使用された写真は2012年5月24日にアフガニスタン西部で墜落したNATOのヘリコプターの写真だった。

その他の国内での暴力(シリア政府側発表)

ダマスカス郊外県では、SANA(7月17日付)によると、ヤブルード市で反体制武装集団の爆弾製造所が爆発し、テロリスト8人が死亡した。

SANA, July 17, 2012
SANA, July 17, 2012

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ダルアー県では、SANA(7月17日付)によると、ヒバブ市の交通警察が反体制武装集団と交戦し、テロリスト2人を負傷させた。

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アレッポ県では、SANA(7月17日付)によると、ビスラートゥーン市、バヤーヌーン町、アアザーズ市で治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、テロリストに甚大な被害を与えた。

またアレッポ市のバーブ・ナスル地区の喫茶店で爆発があった。

治安維持部隊は爆発の直後容疑者を逮捕した。

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ハマー県では、SANA(7月17日付)によると、ハマー市のハミーディーヤ地区、ハーディル地区にある反体制武装集団のアジトに治安維持部隊が突入し、甚大な被害を与え、多数のテロリストを逮捕、大量の武器弾薬を押収した。

SANA, July 17, 2012
SANA, July 17, 2012

その他の国内での暴力(反体制側の発表)

自由シリア軍広報局によると、ダマスカス郊外県のスバイナ、ズィヤービーヤの両検問所を「使徒末裔大隊」を名のる新たな反体制武装組織が攻撃し、軍・治安部隊兵士8人を捕虜にした。

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AFP(7月17日付)は、トゥライムサ村での虐殺疑惑に関して、地元の指導者だというアブー・ウマルなる人物の言葉を引用し、「アサドの軍はアラウィー派居住地区の縁に位置する町々を15日前から砲撃している…。トゥリームサはアラウィー派に囲まれている。これが(虐殺の)理由だ」と報じた。

シリア政府の動き

リヤード・ファリード・ヒジャーブ内閣が定例閣議を開き、新内閣の施政方針について審議した。

タイスィール・ズウビー内閣事務局長によると、施政方針では、祖国と国民の安全の確保、内外の脅威への抵抗を通じた安定の確保、危機の解消をめざすことが改めて確認される、という。

またすべての国民に武器の放棄と国民和解のための政治的プロセスへの参加を呼びかけるという。

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『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)は、バアス党消息筋の話として、ドゥーマー市とハラスター市の避難民のためにアドラー市内の労働総同盟の集団住居(800戸)が提供されたと報じた。

またアレッポ市でも住宅公社の住居(独身向、1,800戸)が避難民のために提供されたという。

反体制勢力の動き

離反したナウワーフ・シャイフ・ファーリス駐イラク・シリア大使はBBC(7月17日付)のインタビューで、「シリア国民がさらにバッシャール・アサド体制に圧力をかければ、政権はこのような兵器を使用するだろう」と述べ、弾圧に化学兵器が用いられる可能性を示唆するとともに、「未確認だが、ヒムスで科学兵器が使用されたとの情報がある」と述べた。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、ダマスカス県での反体制武装集団による活動を支援するため、全国民に対してゼネストや市民的不服従に訴えるよう呼びかけた。

同胞団は16日からイスタンブールで大会を開催していた。

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マナーフ・トゥラース准将が離反後初の声明を出し、自身がパリに避難したことを明らかにするとともに、「建設的な移行期間を経て危機が解消する」ことを望むとの意思を示した。

また「私は、いかなる野望も持たない普通のシリア人として、国民としての義務を果たし、でき得る限りのことを行う準備がある」と述べた。

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「民主的文民国家のためのシリア人外交官連合」なる組織が声明を出し、国内での暴力・殺戮の継続に反対の意思を示すとともに、平和的手段による体制転換を通じた民主的文民国家の建設を呼びかけた。

同組織はまた、外国の軍事介入、ロシア・イランによるアサド政権支持の姿勢にも異議を唱えた。

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自由シリア軍構内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐は、AFP(7月17日付)に対して「ダマスカス解放の戦いが始まった…。ダマスカス全土を制圧する明確な計画がある…。勝利は近い」と語るとともに、「多くのサプライズ」を約束した。

レバノンの動き

ジャズィーラ(7月17日付)は、5月にアレッポ県で誘拐されたレバノン人巡礼者11人の最新の映像を放映した。

Naharnet, July 17, 2012
Naharnet, July 17, 2012

同映像において、誘拐犯は、レバノン・イスラーム教ウラマー委員会とカタールの監督のもと、11人のうちの2人を近く釈放することを明らかにした。

また、誘拐犯は、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長への謝罪を求めた声明が自分たちの声明ではないと否定した。

諸外国の動き

イスラエル国防軍のアヴィヴ・コチャヴィ少将はクネセトで、アサド政権がゴラン高原に展開している軍部隊を紛争地域に移動させた、と証言した。

コチャヴィ少将はまた「アサドがイスラエルとの戦争を最後の手段とする可能性は少ない」述べる一方、アサド政権が弱体化した場合、「シリアでジハード運動が台頭することで…、ゴラン高原がイスラエルに敵対する活動の拠点となる可能性がある」と指摘し、「シリアへのアル=カーイダやジハード主義者が断続的に流入している」への危機感を表明した。

さらに「ヒズブッラーとイランがアサド政権後に備えている」としたうえで、「テロ集団の手に近代的・非伝統的な兵器がわたる」ことを監視する必要があると主張した。

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コフィ・アナン特使はモスクワでウラジーミル・プーチン大統領と会談した。

プーチン大統領は、「シリアの危機を正常化するためのアナン特使の努力を政治的手段を通じて支援するため、でき得るすべてのことをするだろう」と述べた。

一方、アナン特使は、シリア情勢を「悲劇的」と評し、「重要なターニング・ポイント」に達しているとの見方を示した。

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潘基文国連事務総長は中国を訪問し、胡锦涛国家主席ら中国首脳と会談した。

会談ではシリア情勢が主に議論されたと思われる。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣がヨルダンを訪問した。

ナースィル・ジャウダト外務大臣との共同記者会見でヘイグ外務大臣は、「求められているのは国連憲章第7章に基づく安保理決議」と強調した。

またヘイグ外務大臣はジャウダト外務大臣とともに、対シリア国境にあるラムサー市のシリア人避難民キャンプを慰問した。

キャンプを訪問したヘイグ外務大臣に対して、シリア人避難民たちは「あなた方から水も食糧も欲しくない。我々に施しをしてくれる人など要らない。我々がして欲しいのはバッシャールを終わらせることだ」と述べた、という。

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米国務省のパトリック・ベントレル副報道官は記者団に対して、「我々は最悪のシナリオを恐れている。それ(シリアの紛争)が同国国境の外に及び、宗派間の戦闘に至ることを。我々は多いに懸念している」と述べた。

一方、米国防総省のリトル報道官は、「シリアはもちろん、米国の安全保障にとって最優先事項だ」と述べ、レオン・パネッタ攻防長官が米空母ジョン・ステニスを予定より4ヵ月早く地中海に展開させることに合意したことを明らかにした。

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国連事務局人道問題調整事務所のジョン・キング所長は、シリア政府がシリア国内で人道支援を必要としている85万人への支援到達を「妨害する政策」をとっている、と批判した。

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イラクのアリー・ダッバーグ内閣報道官は、シリアに居住するイラク人(そのほとんどが避難民)に対して、退避勧告を出し、イラクへの帰国を呼びかけた。

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ロイター通信(7月18日付)は、トルコ消息筋の話として、シリア1,280人がトルコのハタイ県(シリア領アレキサンドレッタ地方)に避難したと報じた。

避難民のなかにはシリア軍の准将1人、士官多数、そしてその家族も含まれている、という。

なおこの新たな流入により、トルコ領内のシリア人避難民の総数は42,680人に達した、という。

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AFP(7月17日付)は、カザフスタンのアルマトイにあるシリア領事館が、「シリアの紛争を作り出し、それと関係のある分子」によって襲撃され、火災が発生し、2、3階部分が焼失した、と報じた。

AFP, July 17, 2012、Akhbar al-Sharq, July 17, 2012、Aljazeera.net, July 17, 2012、Facebook, July 17, 2012、al-Hayat, July 18, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 17, 2012、Naharnet.com, July 17, 2012、Reuters, July 17, 2012、SANA, July 17, 2012などをもとに作成。

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自由シリア軍国内合同司令部が声明を出し「ダマスカス火山、シリア地震:ヒムスとマイダーン救済」作戦を始動させたことを発表、ダマスカス県内では激しい戦闘が(2012年7月16日)

シリア政府の動き

国内通商消費者保護省は灯油価格を15%を引き上げる決定を官報を通じて発表した。

これにより灯油は1リットルあたり20シリア・ポンドから23シリア・ポンドに引き上げられる。

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SANA(7月16日付)は、軍事情報局ダマスカス郊外県課長のルストゥム・ガザーラ少将が政権を離反したとの報道を否定したと報じた。

国内の暴力(シリア政府側の発表)

SANA(7月16日付)によると、ダマスカス県のナフル・イーシャで治安維持部隊が反体制武装集団と15日に交戦し、反体制武装集団はタダームン区に逃走した。

その後、タダームン区で捜索活動が同地区で行われ、爆弾が爆発し反体制武装集団に甚大な被害が出た、という。

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『ワタン』(7月16日付)によると、治安維持部隊は、ダマスカス県内のタダームン区、ダッフ・シューク地区、ナフル・イーシャ地区、カダム区、カフルスーサ区、ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市などでの反体制武装集団によるいわゆる「ダマスカス大戦」に備えて、軍と合同で厳戒態勢にあたっており、複数の武装集団と交戦し、アジトを破壊するなど甚大な被害を与えている、という。

国内の暴力(反体制勢力の発表)

シリア人権監視団など反体制勢力は、ダマスカス県マイダーン地区に「初めて軍の装甲車や兵員輸送車輌が入った」と主張し、「小・中火器を使用して」反体制武装集団との交戦を続けたと発表した。

Youtube, July 16, 2012
Youtube, July 16, 2012

しかしダマスカス県内で激しい戦闘が行われた地区はそのいずれもが、過去数ヶ月にわたって反体制武装集団が拠点とし、治安維持部隊と散発的に戦闘を繰り返してきた地域であり、ダマスカス県内に「新たに戦闘が拡大した」との見方は必ずしも的を射たものではない。

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自由シリア軍国内合同司令部(カースィム・タキーッディーン大佐)は声明を出し、「ダマスカス火山、シリア地震:ヒムスとマイダーン救済」作戦と銘打って、政府の「虐殺と野蛮な犯罪への報復」として、各地の軍・治安部隊を本部、支部、拠点に対する大規模攻撃を現地時間午前8時に開始したと宣言した。

同声明では、軍・治安部隊、シャッビーハのすべての検問所の包囲・殲滅、全国の主要幹線道路の閉鎖、軍・治安部隊の士官・兵士の離反を呼びかけた。

またアサド政権を支持するヒズブッラー、イラン・イスラーム革命防衛隊、イラクの民兵、パレスチナ組織も標的とすると宣言した。

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シリア人権監視団によると、ダマスカス県マイダーン地区での交戦は「戦闘に質的な変化」をもたらし、「革命運動家が首都に入ったことを意味しており…、政権への明確な脅威となっている」と主張した。

また「軍は制圧不可能と分かり、装甲車を派遣した。このことは政権の弱さを示しており、ダマスカスに革命勢力が存在することを意味する…。彼らは地元の住民であり、外部からやって来た者ではない。そして地元住民に保護されている」と豪語した。

しかし複数の活動家によると、「軍と反体制武装集団が激しい戦闘を行い、数百人が逃げまどった」。

彼らによると、交戦は15日晩から激化し、マイダーン地区のほか、ザーヒラ地区、タダームン区、ジャウバル区でも行われているという。

http://www.youtube.com/watch?v=9Pdj_aH0FAI&feature=player_embedded

http://www.youtube.com/watch?v=MdnBpiiW2Io&feature=player_embedded

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によるとカタナー市で軍・治安部隊が砲撃を加えた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市各地に対する砲撃が続く一方、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ジャラーブルス市で、反体制武装集団の戦闘員4人が殺害された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で青年1人が射殺された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ワスターニー山で、軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦が続いた。

反体制勢力の動き

シリア・ムスリム同胞団はイスタンブール郊外で2日間の予定で大会を開催した。

Youtube, July 16, 2012
Youtube, July 16, 2012

大会では組織の強化、反体制運動支援方法などが審議される予定。

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シリア国民評議会はイスタンブールで声明を出し、アサド政権が首都ダマスカスを「反抗する地区に対する戦場」にし「悲劇的結果」をもたそうとしていると非難した。

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イスタンブール在住の離反兵アドナーン・スィルウ少将は、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長とコフィ・アナン特使を、アサド政権によるシリア国民の虐殺を幇助した罪で裁判にかけると主張した。

『ラアユ』(7月16日付)が報じた。

またシリア革命合同軍事指導部を名のる組織の結成を宣言した。

同少将は、離反前は化学兵器の使用に関する軍指導部の司令官を務めていたと豪語している。

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シリア・クルド国民評議会と西クルディスタン人民議会の代表が一同に会し、「クルド経済評議会」会合が開かれ、シリアのクルド人の経済活動の活性化についての審議がなされ、強力な経済インフラの整備、クルド人に対する差別・偏見の撤廃、貧困撲滅の必要などが確認された。

レバノンの動き

シリア軍はベカーア県バアルベック郡カーア地方からロケット弾による砲撃を受け、同地に進入し、反撃した。

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「リダー軍」を名のる集団が声明を出し、レバノン国内で避難生活を送るシリア人に帰国するよう呼びかけた。レバノンの声(7月16日付)などが報じた。

諸外国の動き

UNSMISのスーザン・ゴシェ報道官は声明を出し、監視団がトゥライムサ村で2度目の調査を行い、軍・治安部隊が人口密集地区で重火器を使用したとの証言を得たと発表した。

声明では、27人の住民に聴取し、「砲撃が7月12日午前5時から始まった…。軍は家を一件一件捜索し、身元を確認し、殺害された者もいたし、村の外に連れ去られた者もいた」との証言を得たことが明らかにされた。

シリア政府に人口密集地区で重火器使用停止と民間人の保護に必要なあらゆる措置を講じるよう求めた。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はアナン特使との会談に先立って記者会見を開き、シリア情勢をめぐる安保理での審議に「挑発を行おうとする勢力がいることを遺憾に思う」と述べ、西側の姿勢を「建設的でなく、危険で、受け入れられない」と非難する一方、「UNSMISを圧力をかけるためのカードとして利用することは受け入れられない…。我々のパートナー(西側諸国)が我々の決議案を反故にすることを決定すれば、国連の任務は承認されないことになってしまい、(UNSMIS)はシリアを去ることを余儀なくされる」と警鐘を鳴らした。

またアサド大統領の退任に関して「我々が支持しているからではなく、大多数のシリア国民が支持しているがゆえに、退任しないだろう」と述べた。

そのうえで「我々は、アナン特使の停戦案、国連安保理決議、ジュネーブでの声明といった我々全員が合意したことを支持しているのだ」と付言した。

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ロシアのヴィタリー・チュルキン国連代表大使は記者団に対して、「我々はこのような決議案には反対票を投じると明言した」と述べ、国連憲章第7章に基づくアサド政権への制裁を科そうとする西側(英国提出)の決議案に拒否権を発動する意思を示した。

またチュルキン大使は、「自分たちの政治的アジェンダを伸長しようとする者がいれば、彼らがこのミッション(UNSMIS)を継続したくないと考えているということだ」と述べた。

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スーザン・ライス米国連代表大使は、ロシアの決議案が採決に必要な9カ国の支持さえ得られないだろうと述べた。

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モロッコ外務協力省は、ナビーフ・イスマーイール駐モロッコ・シリア大使を「ペルソナ・ノン・グラータ」とみなし、出国を要請した。

これを受け、シリアの外務在外居住者省はムハンマド・イフサースィー駐シリア・モロッコ大使を互恵関係に基づき「ペルソナ・ノン・グラータ」とみなした、と発表した。

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イラクのアリー・ムーサウィー首相付顧問はAFP(7月16日付)で、離反したナウワーフ・シャイフ・ファーリス駐イラク・シリア大使を「あらゆる手段で追及するだろう。なぜならテロリスト潜入の幇助は犯罪だからだ」と述べた。

ファーリス大使は『サンデイ・テレグラフ』紙(7月15日付)で、ダイル・ザウル県知事在任中にイラクへのジハード主義者の潜入を支援したと証言していた。

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ヨルダンのファーイズ・タラーウィナ首相は、シリア情勢に関して、対話では危機は解消しない、と述べ、安保理に介入を求めた。

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アラン・ジュペ前フランス外務大臣は、フランス・インタル(7月17日付)で、コフィ・アナン特使の任務を終わらせるべきだと述べた。

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赤十字国際委員会のアレクセス・ヒーブ報道官は、シリア情勢が「内戦」とみなしえるとしたうえで、すべての当事者に対して「国際人道法を遵守」するよう求めた。

AFP, July 16, 2012、Akhbar al-Sharq, July 16, 2012、al-Hayat, July 17, 2012, July 18, 2012、Naharnet.com, July 16, 2012、al-Ra’y, July 16, 2012、Reuters, July 16, 2012、SANA, July 16, 2012、Sooryoon.net, July 17, 2012、al-Watan, July 16, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

UNSMIS報道官が虐殺が起きたとされるトゥライムサ村の調査ののち「軍がトゥライムサ村で特定の集団、施設、主に離反兵と反体制活動家を標的にしていた」と発表(2012年7月15日)

シリア政府の動き

ジハード・マクディスィー外務在外居住者省報道官がダマスカスで記者会見を開き、トゥライムサ村での虐殺疑惑に関して「虐殺ではなく軍事作戦であり、対話や政治的解決を信じず、誘拐、殺戮、テロを行うテロ集団と軍の交戦だった」と述べた。

SANA, July 15, 2012
SANA, July 15, 2012

マクディスィー報道官は、この軍事作戦が「住民の要請を受けたもので、軍は村内で重火器は使用しなかった」と強調した。

報道官によると、戦闘は数時間続き、(軍の)攻撃に曝された建物は5棟で、軍は戦闘機、ヘリコプター、戦車、迫撃砲を一切使用しなかった、という。

またこの作戦では、反体制武装集団の戦闘員37人、市民2人が死亡し、湾岸アラブ諸国のメディアや西側メディアの報道が事実無根だとした。

またコフィン・アナン特使が13日に安保理に宛てた書簡に関して、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣が、「書簡で述べられていることは拙速であり、村で起きた真実に依拠していない」とアナン特使に回答したうえで、その旨、安保議長と潘基文事務総長に伝えるよう求めたことを明らかにした。

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政党問題委員会が会合を開き、ワアド党の公認申請を審査し、1週間以内に日刊紙に審査結果を発表することを決定した。

国内の暴力(シリア政府側の発表)

イドリブ県では、SANA(7月15日付)によると、治安維持部隊がズィヤーラ地方で反体制武装集団と交戦し、乗っていた車2台を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(7月15日付)によると、治安維持部隊がダイル・ザウル市内で反体制武装集団と交戦し、甚大な被害を与えた。

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アレッポ県では、SANA(7月15日付)によると、治安維持部隊がスファイラ地方で武装テロ集団と交戦し、甚大な被害を与えた。

国内の暴力(反体制勢力の発表)

駐英の反体制組織、シリア人権監視団はダマスカス県のタダームン区が砲撃に曝される一方、ズフール地区近くの環状道路で爆弾が爆発し、軍・治安部隊兵士多数が負傷したこと発表した。

複数の目撃者によると、爆発は兵員輸送車を狙って起きた、という。

また監視団によると、マイダーン地区でも大きな爆発音が聞こえたという。

一方、反体制活動家のサミール・シャーミー氏は、ロイター通信(7月15日付)に対して、タダームン区、ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市で反体制武装集団と軍・治安部隊が激しく交戦したと述べた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ラスタン市での砲撃で6人が死亡した。

またヒムス市のスルターニーヤ地区、カフルアーヤー地区が砲撃に曝され、シリア革命総合委員会のハーディー・アブドゥッラー氏(ヒムスの報道官)によると、クサイル市も砲撃に曝された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で反体制武装集団の戦闘員2人と民間人3人が死亡した。

またブーカマール市でも反体制武装集団の戦闘員3人が死亡した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カルアト・マディーク町が軍・治安部隊の砲撃に曝され、2人が死亡した。

またジュライジス村、マアッル・ザーフ村に軍・治安部隊が突入した、という。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アアザーズ市が砲撃に曝され、反体制武装集団の戦闘員1人が死亡した。

またクルド山一帯の村々が軍・治安部隊の砲撃に曝された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊と反体制武装集団がアイン・バーリダ村、アイン・スーダ村、サルキーン市などで交戦、民間人2人、軍・治安部隊兵士3人が死亡した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がカラク村で反体制武装集団と交戦し、民間人1人、反体制武装集団戦闘員2人が死亡した。

諸外国の動き

UNSMISのスーザン・ゴシェ報道官は、トゥライムサ村を視察・調査した監視団からの情報として、「軍がトゥライムサ村で特定の集団、施設、主に離反兵と反体制活動家を標的にしていた」と発表した。

ゴシェ報道官はまた「複数の家屋のなかで血の海や弾痕を確認した…。また焼失した学校、損害を受けた建物を発見し、そのうちの5件は内側から炎上していた…。さまざまな武器が攻撃で用いられており、そのなかには迫撃砲、軽火器などが含まれている…。犠牲者数はいまだ不明瞭だ」と述べた。

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ロシアの大統領府はコフィ・アナン特使を前に声明を出し、「アナン特使の停戦案がシリア国内の問題を解決するための唯一の方法だと理解している」と発表した。

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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣はアーラム・チャンネル(7月15日付)で、「シリアの反体制勢力をイランに招き、話合う準備がある…。反体制勢力とシリア政府が対話するために必要な状況を作り出す準備がある」と述べた。

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『ハヤート』(7月15日付)は、米国防総省がシリア国内での化学兵器の動きへの監視を強化している、と報じた。

AFP, July 15, 2012、Akhbar al-Sharq, July 15, 2012、al-Hayat, July 15, 2012、July 16, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 15, 2012、Naharnet.com,
July 15, 2012、Reuters, July 15, 2012、SANA, July 15, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ハマー県で自爆テロが発生し民間人や治安維持部隊の多数が死亡、米紙によるとシリアで活動する反体制武装集団は複数の隣国から武器を調達(2012年7月14日)

国内の暴力(シリア政府側の発表)

ハマー県では、SANA(7月14日付)によると、ムハルダ市で自爆テロが発生し、民間人や治安維持部隊兵士多数が犠牲となった。

SANA, July 14, 2012
SANA, July 14, 2012

またハマー市でも反体制武装集団が仕掛けた爆弾が爆発し、子供2人が死亡した。

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ヒムス県では、SANA(7月14日付)によると、クサイル市郊外のハミーディーヤ村で軍・治安部隊が反体制武装集団が交戦し、甚大な被害を与えた。

またタッルカラフ地方ではレバノンからの密入国を試みた反体制武装集団を撃退した。

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イドリブ県では、SANA(7月14日付)によると、ザーウィヤ山で治安維持部隊が反体制武装集団を追跡・攻撃し、甚大な被害を与えた。

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ダルアー県では、SANA(7月14日付)によると、ブスラー・シャーム市で治安維持部隊と反体制武装集団が交戦し、後者の戦闘員3人を殺害、甚大な被害を与えた。

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SANAがサイバー攻撃を受けて、一時閉鎖となった。

国内の暴力(反体制勢力の発表)

ダルアー県では、シリア人権監視団や地元調整諸委員会によると、ヒルバト・ガザーラ町に軍・治安部隊の兵士数百人と複数の戦車・兵員輸送車が進入し、逮捕・捜索活動を行った。

地元調整諸委員会によると、軍・治安部隊は「何らの抵抗を受けずヒルバト・ガザーラ町内に入った。なぜなら自由シリア軍は完全に撤退していたからだ」。

シリア人権監視団によると、ハーッラ市にも軍・治安部隊が入り、逮捕・捜索活動を行った。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、女性・子供5人を含む7人が殺害された。

またムライハ市、ナブク市で大きな爆発があり、カフルバトナー町では銃音が聞こえた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、トルコ国境に近いタッル・サルール村、ディーワーン村で軍・治安部隊の検問所を攻撃した反体制武装集団の戦闘員5人が殺害された。

またマーリア市での軍・治安部隊との戦闘で反体制武装集団の戦闘員1人が殺害された。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ムハルダ市の軍事情報局施設を狙った車爆弾による攻撃があり、女性2人、子供1人、治安要員1人が死亡した。

またハマー市では、軍・治安部隊による逮捕・捜索が続いた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市への砲撃で5人が、ヒムス市でも反体制武装集団の戦闘員2人を含む4人が死亡した。

トゥライムサ村での虐殺疑惑

UNSMISのスーザン・ゴーシェ報道官は、UNSMIS団員11人が、虐殺が起きたというハマー県トゥライムサ村に調査のために向かったと発表した。

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反体制組織のシリア人権監視団によると、トゥライムサ村での犠牲者数は118人で、うち49人が民間人、37人が軍兵士、32人が反体制武装集団戦闘員だという。

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国連安保理は議長国のコロンビアが、トゥライムサ村で「迫撃砲、戦車、ヘリコプターを使用したシリア政府の人権侵害」を非難する報道機関向けの声明案を提出したが、ロシア側は「さらなる現地情報を検討」するため、採択を延期するよう求め、廃案とした。

潘基文国連事務総長は安保理に書簡を送り、そのなかでトゥライムサ村での虐殺疑惑に関して、「UNSMISが確認した迫撃砲、戦車、ヘリコプターの使用は、シリア政府の停戦案履行違反」と非難、国際社会に「一致団結して継続的、実質的な圧力をかけねばならない」と呼びかけた。

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ナースィル・アブドゥルアズィーズ・ナスル国連総会議長は、トゥライムサ村で虐殺疑惑を「集団虐殺」と非難した。

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イラクのヌーリー・マーリキー首相は、トゥライムサ村での虐殺疑惑に関して、「この犯罪をはじめとする蛮行は、我々全員が平和的解決策を案出するためのステップを早急に踏み出すことを促すものでなければならない」と述べた。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、トゥライムサ村での虐殺疑惑を「非人道的な虐殺」を非難した。

反体制勢力の動き

ロイター通信(7月14日付)は、自由シリア軍の士官の話として、シリア国内の反体制武装集団がシリア国内ではなく、レバノン、トルコ、イラクから武器を調達していると報じた。

同士官によると、トルコ当局は自国の領土、港湾を通じた武器供与を認めていないが、900キロに達するトルコ・シリア国境の監視を困難で、武器密輸は容易だという。

このほか、イラク、レバノンから対戦車砲、カチューシャ砲などを入手している、という。

しかし自由シリア軍士官によると、「我々が所持する武器は、アサドと戦うには不充分で、我々にはもっと多くの武器が必要だ」と述べ、依然として武装闘争が劣勢を強いられていることを吐露した。

一方、英国の諜報機関高官によると、武器はその多くが地中海地域から密輸され、トルコを経由してシリア国内に持ち込まれている、という。

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アラビーヤ(7月14日付)は政治治安部ダマスカス支部長のアブドゥッラフマーン・タフトゥーフ准将が離反し、自由シリア軍に加入したと報じ、シリアのムハーバラートが崩壊を始めたと断じた。

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「シリアおよびビラード・シャームのヌアイム部族評議会」なる組織が声明を出し、部族の上級士官4人(少将1人、准将1人、大佐2人)が政権を離反したと発表した。

レバノンの動き

『ナハール』(7月14日付)は、ナジーブ・ミーカーティー首相がシリア避難民に対するUNHCRの医療支援を受け取った、とワーイル・アブー・ファーウール社会問題大臣が述べたと報じた。

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北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方でシリア軍とシリアの反体制武装集団が交戦し、住民の家屋が被害を受けた。

諸外国の動き

イラン外務省報道官は『イーラーン』(7月14日付)で、イランがシリアの安定と治安回復において役割を果たす用意があると述べた。

同報道官は、シリアの危機を解決できる地域の一部の国が過激派への武器供与を行っていると批判、シリアでの内乱や内戦を煽る代わりに、政府と反体制勢力の対話のために影響力を行使すべき、と述べた。

またアナン特使のイニシアチブに関しては、現時点での失敗にもかかわらず、「シリアの危機を収束させる最善の解決策」と評価した。

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ヨルダン・ムスリム同胞団のシャリーア学者評議会は、声明を出し、「ウンマの民にシリアの同胞を救済し、不正と専制に対するその革命を支援するため非常警報を発することを呼びかける」との意思を示した。

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トルコ首相府災害緊急事態対策庁は、トルコ領内に避難したシリア人避難民の数が38,914人に及ぶと発表した。

AFP, July 14, 2012、Akhbar al-Sharq, July 14, 2012、Alarabia.net, July 14, 2012、al-Hayat, July 15, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 14, 2012、al-Nahār, July 14, 2012、Naharnet.com,  July 14, 2012、Reuters, July 14, 2012、SANA, July 14, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

軍・治安部隊がハマー県トゥライムサ村で「多数の市民を虐殺」、アナン特使やシリア国民評議会を含む各当事者はアサド政権を非難(2012年7月13日)

トゥライムサ村虐殺疑惑

国連安保理でのシリア情勢をめぐる審議と時を一にするかたちで、反体制勢力がプロパガンダを活発化させ、ハマー県トゥライムサ村で12日に軍・治安部隊(そしてシャッビーハ)が多数の市民を虐殺した主張、西側メディアが大々的に報じた。

Kull-na Shurakāʼ, July 13, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 13, 2012

この手の虐殺報道は、西側諸国が国連などでアサド政権への圧力強化を試みるのと並行して、5月末のハウラでの虐殺騒動以来繰り返されている。

反体制活動家は虐殺の犠牲者とされる映像を事件発生直後にYoutubeにアップする一方、フェイスブックに専用のページを作成する用意周到ぶりを見せた。

https://www.facebook.com/media/set/?set=a.202538969875633.42146.168224839973713&type=1

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シリア国民評議会によると、トゥライムサ村に軍・治安部隊が突入し、少なくとも22人を殺害、55件の家屋を破壊したという。

またシリア人権監視団によると、軍・治安部隊はトゥライムサ村制圧のため戦車やヘリコプターで砲撃を加え、その後市内に突入した、という。

一方、シリア情報センターによると死者数は227人にのぼる、という。

ハマー県内で反体制活動をしているというシリア革命総合委員会メンバーのバースィル・ダルウィーシュはアラビーヤ(7月13日付)に対して、犠牲者のほとんどはナイフで首を切られており、焼け焦げた遺体数十体がアースィー川に遺棄されていた、という。

ハマー革命指導評議会なる組織によると、トゥライムサ村は軍・治安部隊による大規模な砲撃に曝された後、親政府の民兵(シャッビーハ)が進入し、220人以上の民間人を集団虐殺した、という。

トゥライムサ村出身だという反体制活動家のファーディー・サーミフ氏はロイター通信(7月13日付)に対して、「近隣の村のアラウィー派の民兵がトゥライムサ村に進入した」と証言した。

Youtube, July 12, 2012
Youtube, July 12, 2012
Youtube, July 12, 2012
Youtube, July 12, 2012

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しかしシリア人権監視団はその後、犠牲者のなかに反体制武装集団の戦闘員数十人が含まれていたと発表し、軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘が行われていたことを事実上認めた。

殺害された反体制武装集団戦闘員のなかにはイブラーヒーム・ズアイト・タルカーウィー少尉など離反した士官も含まれているという。

また反体制活動家だというジャアファル氏はSNN(7月13日付)に対して、「民間人の犠牲者の数は7人だけで…、それ以外の犠牲者は自由シリア軍だ」と述べた。

ジャアファル氏によると、「自由シリア軍がハマー郊外を進軍中の軍を襲撃した…。これを受け、軍は報復としてトゥライムサ村に結集していた自由シリア軍を近隣のアラウィー派の村の支援のもとに攻撃した。自由シリア軍は1時間程度抵抗したが、軍がトゥライムサ村を制圧し、自由シリア軍の兵士を殺害した」。

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アブー・ガーズィーを名のる反体制活動家はAFP(7月13日付)に対して、トゥライムサ村の住民は殺されるか避難して、市内には残っていない、と述べたが、別の活動家は「軍は約30輌の車輌で街を包囲し、誰も逃げられない」と述べた。

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一方、SANA(7月13日付)は「血塗られたメディアが武装テロ集団とともに…シリアおよびシリア国民に敵対する世論を醸成し、安保理会合に合わせて外部介入を助長しようとしている」との非難記事を掲載した。

その後、軍消息筋の話として、軍・治安部隊が12日早朝、トゥライムサ村の市民の要請を受け、反体制武装集団掃討のための作戦を実行、その司令部やアジトを制圧、テロリスト多数を殺害、逮捕、武器弾薬を押収した、と報じた。

またシリア・アラブ・テレビ(7月13日付)によると、トゥライムサ村での戦闘で、反体制武装集団は市民に無差別発砲した、という。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長はジャズィーラ(7月12日付)に対して、「トゥライムサ村での虐殺は安保理やアラブ連盟に対する辱めるものだ…。この虐殺は国連憲章第7章に基づく明確な決議を求めるものである」と述べた。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、トゥライムサ村での虐殺疑惑を強く非難し、コフィ・アナン特使、ロシア、イラン、そして国内での弾圧に沈黙を続けるすべての者もその責任の一端を担って然るべきだと主張した。

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シリア人権委員会は声明を出し、トゥライムサ村での虐殺疑惑を強く非難し、国際社会に対してアサド政権による弾圧継続の時間的猶予を与えないよう求めた。

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コフィ・アナン特使はトゥライムサ村での虐殺疑惑に関する報道に関して「衝撃と恐怖」を感じたとしたうえで、「暴力行為やこうした残虐行為を停止させねばならない」と述べた。

また国連安全保障理事会に宛てた書簡で、同氏の調停案を支持した安保理決議に、アサド政権側が「違反している」と明言、「(違反行為には)深刻な結果が伴うとのメッセージを送るべきだ」と述べた。

一方、UNSMISは、トゥライムサ村での虐殺疑惑に関して、「ハマー県は依然として混乱しており、事態を予測することは困難だ」としたうえで、トゥライムサ村まで約6キロの地点まで接近した団員の情報に基づき、「ハマー県北部の人口密集地域を空軍が攻撃目標としており、トゥライムサ村での作戦もその一環だったものと見られる」との報告を行った。

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米ホワイトハウス報道官は、トゥライムサ村での虐殺疑惑を新たな「残虐行為」と非難した。

またスーザン・ライス米国連代表大使は、トゥライムサ村での「虐殺に関する報告は悪夢のようだ」と述べた上で、「安保理がシリア問題に対して必要な措置を報じる必要が生じている」と述べた。

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フランス外務省のベルナール・ヴァレロ報道官は記者会見で、トゥライムサ村での虐殺疑惑に関して、「安保理の制裁による脅迫を通じて、強い意思を示さねばならない」としたうえで、シリアへの強硬な姿勢をとることに「安保理が責任を負うときが来た。フランスは責任を負うだろう」と述べた。

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GCCのアブドゥッラティーフ・ズィヤーニー事務局長は声明を出し、トゥライムサ村での虐殺疑惑を非難、国連憲章第7章に基づく迅速且つ断固たる決議が必要だと主張した。

国内の暴力

SANA(7月13日付)によると、ダマスカス県マッザ区(オートストラード・マッザ、イラン大使館近く)で駐車中の車が爆発した。死傷者はいなかった。

SANA, July 13, 2012
SANA, July 13, 2012

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ダイル・ザウル県では、SANA(7月13日付)によると、治安維持部隊がダイル・ザウル市で反体制武装集団と交戦し、テロリストに甚大の被害を与えた。

この際、治安維持部隊兵士1人が殺害された。

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ヒムス県では、SANA(7月13日付)によると、クサイル市郊外で治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、テロリストに甚大な被害を与えた。

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アレッポ県では、SANA(7月13日付)によると、ICARDA近くで爆発物を運んでいた反体制武装集団の車が爆発し、テロリスト2人が死亡した。

またダール・イッザ市では治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、テロリストに甚大な被害を与えた。

反体制勢力の動き

シリアを脱走したマナーフ・トゥラース准将の兄でビジネスマンのフィラース・トゥラース氏(ドバイ在住)は『シャルク・アウサト』(7月13日付)に対して、「自由シリア軍ファールーク大隊に人道支援を行っている。この支援は武器供与とは無関係だ」と述べた。

また1ヵ月半前からファールーク大隊の司令官で甥のアブドゥッラッザーク・トゥラース氏と連絡を取り合っており、トゥラース家の士官45人が離反したことを明らかにした。

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自由シリア軍国内合同司令部は声明を出し、脱走したマナーフ・トゥラース准将と父でパリ在住のムスタファー・トゥラース元国防大臣に対して、「シリア国民に対して、自分たちがどこにいたのか、(政権において)どのような役割を果たしてきたのか、革命当初から出国まで何をしていたのかを説明するべき」と述べ、両氏が政治的に沈黙していることを非難した。

またナウワーフ・シャイフ・ファーリス駐イラク・シリア大使のカタールへの亡命については、「正しい方向へのステップとみなす」と評価した。

SANA, July 13, 2012
SANA, July 13, 2012

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地元調整諸委員会は、ダマスカス県(バーブ・サリージャ、カダム、マッザ、カーブーン、マイダーン、カフルスーサ、アサーリー)、アレッポ市、ダルアー県、イドリブ県、ダイル・ザウル県各地で「シリアとイランの召使い、アナン打倒の金曜日」と銘打って反体制デモが行われたと主張した。

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ダマスカス県では、『クッルナー・シュラカー』(7月13日付)によると、パレスチナ人が多く住むヤルムーク区の5カ所で金曜礼拝後に反体制デモが発生した。

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自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐は声明を出し、体制内の文民やシリア軍兵士に対して、「離反のための猶予期間を1ヵ月」与えると発表し、離反しない場合「直接の攻撃目標になるだろう」と脅迫した。

レバノンの動き

NNA(7月13日付)によると、レバノン軍がアッカール郡ワーディー・ハーリド地方の対シリア国境など北部県に兵力を増強し、監視活動を強化した。

またレバノンの軍事裁判所筋によると、シリア領内に武器弾薬を密輸しようとしてたシリア人1人とレバノン人7人(ベカーア県バアルベック郡アルサール地方出身者)が逮捕された。

諸外国の動き

UNSMISのロバート・ムード司令官はダマスカスで記者会見を開き、ダイル・ザウル県で当事者間の対話促進のための仲介措置を行い、暴力のレベルの軽減や信頼醸成を支援している、と述べた。

SANA, July 13, 2012
SANA, July 13, 2012

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イエズス会の修道士のパウロ・ダッローリオ(Paolo Dall’Oglio)氏はAKI(7月13日付)に対して、「多くのシリア国民は、シリアでのアラブの春の最初の数ヵ月間は、バッシャール・アサドが国を民主主義に導き、影の指導者たちの闇基金によって運営された治安機関の手にある権力から脱却するのに主導的役割を果すと思っていた」と述べた。

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『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月13日付)は、シリア政府が武器庫に保管していた化学兵器の一部を移動させたと報じた。

AFP, July 13, 2012、Akhbar al-Sharq, July 13, 2012、Alarabia.net, July 12, 2012、Aljazeera.net, July 12, 2012、al-Hayat, July 14, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 13, 2012, July 14, 2012、Naharnet.com,
July 13, 2012、NNA, July 13, 2012、Reuters, July 13, 2012、SANA, July 13,
2012、al-Sharq al-Awsat, July 13, 2012、The Wall Street Journal, July 13, 2012、Zaman al-Wasl, July 13, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア国家建設潮流のフサイン代表が「シリア祖国救済」と銘打った大会を7月28日に開催すると宣言するなか、シリア・クルド国民評議会と西クルディスタン人民議会の統合が決定したと報じられる(2012年7月12日)

ファーリス駐イラク大使離反

離反したナウワーフ・シャイフ・ファーリス駐イラク・シリア大使がアラビーヤ(7月12日付)に出演し、自身が「当初からシリア革命を支持していた」と述べた。

Youtube, July 12, 2012
Youtube, July 12, 2012

ファーリス大使の発言の概要は以下の通り:

「我々は変革しなければならなかった。しかし体制の方法は何ら変化しなかった。すべては大統領の手に握られており、(バアス)党は完全に独裁者の指導を隠蔽する組織に過ぎなかった。憲法第8条の廃止は何の前進も後退ももたらさないだろう…。新憲法は何の役にも立たない…。複数政党制は幻想で形式的だ。なぜなら政党を認可するか拒否するかは内務省の手に握られているからだ」。

「イランで離反宣言することでイラク当局を当惑させたくなかった。なぜならイラク政府はシリア政府と関係がよいからだ…。だから、イラクから出て、離反を宣言することにした。もちろん反体制勢力との調整はあった」。

「私はシリア国民の革命への参加を宣言する。第一に、自由シリア軍、調整組織、そして革命かといった国内の反体制勢力への参加を…」。

「国外の反体制勢力は努力しているが、国内との間に亀裂があり、彼らへの憤りは大きい。私は、シリア国民が国外の反体制勢力についてどのような話をしているのかを知っている」。

「軍・治安機関がシリア政府の持つ権力基盤である。しかしいずれの宗派においても大衆基盤を持っていない…。軍はいつまで結束を保つことができるだろうか?軍と治安部隊において離反が起きている」。

http://www.youtube.com/watch?v=c_pMVkikPmU

http://www.youtube.com/watch?v=SRyktaK4XHk&feature=relmfu

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シリアの外務在外居住者省は声明を出し、ナウワーフ・シャイフ・ファーリス駐イラク・シリア大使が職務に反する声明を発表し、その行為は法的責任を追及されるものだと非難した。

同声明によると、ファーリス大使はバグダートのシリア大使館での執務を無断で放棄、これを受け外務在外居住者省は懲戒免職とした、という。

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ナウワーフ・シャイフ・ファーリス駐イラク・シリア大使の出身地であるダイル・ザウル県では、ブーカマール市のアカイダート部族のカマール・ナージー・ファーリス・ジャッラーフ師がシリア・アラブ・テレビ(7月12日付)に対して、同大使の離反を確認したとしたうえで、アカイダート部族が開き、その離反を私的な見解を表明するための個人的行動に過ぎないとみなしたと述べた。

国内の暴力

ヒムス県では、SANA(7月12日付)によると、クサイル市郊外のクタイナ湖で治安維持部隊と2隻のボートに乗っていた武装テロ集団が交戦、ボートを破壊した。

またヒムス市のクスール地区でも治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、アンマール・ハマーディー、ウマル・ガムターウィー、ムハンナド・ハティーブらテロリスト多数を殺害した。

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ダルアー県では、SANA(7月12日付)によると、ハバブ氏で公共道路センターの要員が武装テロ集団と交戦し、ムハンマド・フアード・トゥルクマーニーらテロリスト3人を殺害した。

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イドリブ県では、SANA(7月12日付)によると、アリーハー市で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリストに損害を与えた。

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SANA(7月12日付)によると、パレスチナ解放軍のムハンマド・ターリク・ハドラー少将が声明を出し、武装テロ集団がアレッポ県で同軍兵士17人を誘拐・殺害したと発表した。

遺体には拷問の跡が残っていた、という。

国内の暴力(反体制勢力発表)

ダマスカス県では、複数の反体制活動家によると、治安部隊がカフル・スーサー区に対して迫撃砲で「初めて」攻撃を加えた。ロイター通信(7月12日付)が伝えた。

迫撃砲による攻撃が「初めて」だとすると、これまで砲撃を受けてきたとの反体制活動家の発言がウソであったことになる。

またシリア革命総合委員会によると、バサーティーン地区、カダム区も軍・治安部隊の砲撃に曝された。

一方、シリア人権監視団によると、ルワーン地区に治安部隊が突入し、逮捕・捜索活動を行った。

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『クッルナー・シュラカー』(7月12日付)によると、ダマスカス郊外県南西部での軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘がクナイトラ県に飛び火した。

またシリア人権監視団によると、ダーライヤー市で治安部隊の発砲により1人が死亡し、ザバダーニー市での砲撃でも1人が死亡した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、親政府の武装集団がハーン・ジャウズ村近郊の街道で複数の車に発砲し、23人を殺害した、という。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、トゥライムサ村が軍・治安部隊の砲撃に曝された。その後、軍・治安部隊は同市に突入し、反体制武装集団との戦闘で7人が死亡した。

またカルナーズ町、ラターミナ町も軍・治安部隊の砲撃に曝された。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区周辺に対して、軍・治安部隊が砲撃を加えた。

また同地区周辺での戦闘で、反体制武装集団の戦闘員2人、民間人3人が殺害された。

クサイル市でも砲撃により2人、ガルナータ村でも2人(女性)が死亡した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、フラーク市、ブスラー・シャーム市に軍・治安部隊が突入した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、タッル・リフアト市、マーイル町が軍・治安部隊の砲撃に曝された。

またアレッポ市マイダーン地区で反体制武装集団戦闘員2人が殺害された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市での砲撃で1人が死亡した。

国内の主な動き

『クッルナー・シュラカー』(7月12日付)は、信頼できる複数の消息筋の話として、ファールーク・シャルア副大統領が7月2日以来、執務室を訪れておらず公務に就いていないと報じた。

反体制勢力の動き

シリア国家建設潮流のルワイユ・フサイン代表はダマスカスで記者会見を開き、「シリア祖国救済」と銘打った大会をダマスカスで7月28日に開催すると宣言、「政府が主唱する改革に満足せず、また暴力的手段に依らない平和的方法での体制転換」のため、すべての反体制勢力に参加するよう呼びかけた。

Kull-na Shurakāʼ, July 12, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 12, 2012

フサイン代表は大会の目的に関して、「国の危機を回避し、暴力を停止し、専制を終わらせ、平和的政権交替を行うこと」と述べたうえで、「(大会は)対話ではなく、国内に愛国的運動を創出し、任務を遂行し、危機を回避することだ」と強調した。

アサド政権の改革プログラムに関しては、「政権に改革や国家運営の能力があるとは考えていない」と非難した。

在外の反体制勢力、とりわけシリア国民評議会に関しては、「我々は国外ではなく、国内で活動しており、彼らもここに来ればいい…。我々はこの土地にしがみつき、体制との戦いを国内で、シリア国民の間で行っている」と述べ、暗に批判した。

なお大会の呼びかけは、シリア国家建設潮流と国民潮流(バースィル・タキーッディーン代表)の相互理解覚書締結を受けて行われ、国民潮流も大会に参加する。

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法律研究調査センターのアンワル・ブンニー弁護士は、ダマスカス商業会議所のバッサーム・マリク氏(ビジネスマン)が、ダマスカス県内で5月と6月にゼネストを支援したために10日に逮捕され、アドラー刑務所に送還された、と発表した。

マリク氏は国内で反体制活動を行う民主的諸勢力国民調整委員会の執行委員会メンバー。

Kull-na Shurakāʼ, July 12, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 12, 2012

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Elaph.com(7月12日付)は、シリア国民評議会執行委員会のサミール・ナッシャール財務局長が、在外反体制勢力の活動資金横領疑惑に関して、「同評議会は発足以来、アラブ諸国から2500万ドルしか受け取っていない…。うち95%は国内で暮らす市民のために支出され、それ以外は近隣諸国の避難民のために支出された」と述べた。

またリビアの資金援助に関して、申し出があったもの資金は受け取っていないと述べる一方、3月に発足したシリア・ビジネスマン評議会から3億ドルを受け取っているとの情報に関してはこれを否定した。

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シリア国民変革潮流は声明を出し、改めて外交官に離反を呼びかけた。

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「包囲下の女性」を名のる人権団体は2011年3月以来、ヒムス市などでの軍・治安部隊による婦女暴行81件の証言を得たと発表した。

http://womengaza.maktoobblog.com/

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AFP(7月12日付)は、反体制政治同盟のシリア・クルド国民評議会と親体制でPKK系の民主統一党が主導する西クルディスタン人民議会がクルド最高委員会の名のもとに統合することを決定した、と報じた。

この決定は、イラクのクルディスタン自治区のマスウード・バールザーニー大統領がエルビルで主催した仲介を受けたもの。

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シリア国民評議会は声明を出し、パレスチナ解放軍兵士の誘拐・殺害を強く非難し、アサド政権がシリア国民とパレスチナ人の対立を助長しようとしていると断じた。

レバノンの動き

『サフィール』(7月12日付)は、ナジーブ・ミーカーティー首相に近い消息筋の話として、レバノン政府がシリア人避難民への医療支援を中心したと報じた。

同紙によると、政府の負担軽減への国際機関の支援がなかったのがその理由だという。

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ナハールネット(7月12日付)によると、シリア軍が北部県アッカール郡、ベカーア県バアルベック郡の国境地帯で、反体制勢力掃討のため越境砲撃を行い、子供3人を含む4人が負傷した。

諸外国の動き

フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、「反体制勢力が(マナーフ・トゥラース)准将が接近していることを認知している…。この方向で連絡がなされている」と述べた。

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ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ハマー県北部のシャフシャブー山でソ連製のクラスター爆弾の残骸が発見され、軍・治安部隊が反体制武装集団掃討のために使用した可能性があると指摘した。

AFP, July 12, 2012、Akhbar al-Sharq, July 12, 2012、AKI, July 12, 2012、Aljazeera.net, July 12, 2012、Elaph.com, July 12, 2012、al-Hayat, July 13, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 12, 2012、Naharnet.com, July 12,
2012、Reuters, July 12, 2012、al-Safir, July 12, 2012、SANA, July 12, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア国民評議会使節団がロシアで同国外相と会談するも両者の見解の相違は解消されず、国連安保理ではロシアがUNSMISの人気延長を求める安保理決議案を提出(2012年7月11日)

国内の主な動き

アサド大統領は、第1次リヤード・ファリード・ヒジャーブ内閣発足(2012年6月23日)を受けるかたちで政令を出し、以下の人事改編を行った。

SANA, July 11, 2012
SANA, July 11, 2012

スライマーン・ムハンマド・ナースィル:ラタキア県知事
アーティフ・ナッダーフ:スワイダー県知事(タルトゥース県知事より異動)
マーリク・ムハンマド・アリー:クナイトラ県知事(スワイダー県知事より異動)
ニザール・イスマーイール・ムーサー:タルトゥース県知事
アブドゥルワッハーブ・アリー・フサイン:ハサカ県知事
ガッサーン・アフマド・ルトフィー・カナーティリー:ダイル・ザウル県知事
アフマド・ムニール・ムハンマド:ヒムス県知事
ムハンマド・ガッサーン・ハバシュ:計画国際協力委員会委員長(前駐日本シリア大使)

ムハンマド・ラスール・アムーリー:財務監査中央局長官

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7月7日から続けられていたシリアの陸海空軍は合同演習が終了した。

SANA, July 11, 2012
SANA, July 11, 2012

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AFP(7月11日付)は、匿名外交筋の話として、ナウワーフ・シャイフ・ファーリス駐イラク・シリア大使が、イラク外務省に自身が離反したことを伝えた、と報じた。事実確認はとれていない。

同消息筋によると、イラク高官は12日に同大使の第三国への出国を協議するための会合を開く、という。

ファーリス氏は2008年に駐イラク大使に就任、それ以前は1994年から1998年までバアス党ダイル・ザウル支部指導部書記長、1998年から2000年までラタキア県知事、2000年から2002年までイドリブ県知事、2002年から2008年までクナイトラ県知事を歴任していた。

イラク外務省高官は『ハヤート』(6月12日付)に対して、ファーリス大使の離反に関して「今のところファーリス大使は通常の執務を行っている。彼ないしは大使館がそうした決断を下したとの報告はまだ受けていない」と否定した。

国内の暴力

SANA(7月11日付)によると、ハマー県カルアト・マディーク町で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、トルコ人4人を含むテロリスト多数を殺害した。

このほかヒムス県ヒムス市(ジャウラト・シヤーフ地区など)、ダイル・ザウル県などで武装テロ集団の「残党狩り」を行い、テロリスト多数を逮捕、大量の武器弾薬、資金(米ドルなど)を押収した。

国内の暴力(反体制勢力の発表)

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カダム区で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

Kull-na Shurakāʼ, July 11, 2012
Kull-na Shurakaʼ, July 11, 2012

またマッザ区では夜間デモが行われ、若者数百人が体制打倒を叫んだ。

シリア革命総合委員会によると、カフルスーサ区で治安部隊が反体制活動家の逮捕・捜索を行った。

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ヒムス県では、SNN(7月11日付)によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区、ジャウバル区、クサイル市に対して軍・治安部隊が砲撃を続けた。

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アレッポ県では、SNN(7月11日付)によると、アアザーズ市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

またシリア人権監視団によると、数日前にナイラブ・パレスチナ難民キャンプに向かう途中に誘拐されていたパレスチナ解放軍兵士13人の遺体が発見された。

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ハマー県では、SNN(7月11日付)によると、スーラーン市で治安部隊が反体制活動家の逮捕・捜索を行った。

al-Hayat, July 12, 2012
al-Hayat, July 12, 2012

反体制勢力の動き

シリア国民評議会の使節団がロシアでセルゲイ・ラブロフ外務大臣と会談した。

使節団は、アブドゥルバースィト・スィーダー事務局長、ブルハーン・ガルユーン前事務局長、ムンズィル・マーフース氏、バスマト・カドマーニー報道官、ナジーブ・ガドバーン氏、リヤード・サイフ氏など。

会談後、スィーダー事務局長は、アサド政権退陣の是非をめぐってロシアとの対立が解消されなかったと記者団に語った。

スィーダー事務局長は「私は、シリアのすべての国民的反体制勢力の名のもと、アサドが退陣しない限り対話は不可能だと強調した。しかしロシアは別の見解を持っていた」としたうえで、「我々はロシアの政策を拒否する…。なぜなら体制を支持するその政策は暴力継続を許すだけだからだ」と述べた。

またスィーダー事務局長はロシアの安保理での拒否権発動によってシリア国民が暴力や弾圧に曝されていると訴えた。

ガルユーン前事務局長は、「ロシアの姿勢に変化は観られなかった。1年前にもロシアを訪問したが、それから何らロシアの姿勢は変わっていない」と非難した。

一方、ラブロフ露外務大臣は、シリア国民評議会使節団との会談で、反体制勢力の「疑念を完全に払拭すべく」、すべての紛争当事者による対話が必要だとのロシアを改めて明示したと述べた。

また「シリアの反体制勢力が、アナン特使の停戦案に基づき、政府との対話という点で結束する真の可能性があるかを判断したい」と述べた。

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シリア・クルド国民評議会のアブドゥルハミード・ダルウィーシュ氏(シリア・クルド進歩民主党書記長)は、同評議会がイラクのエルビルで会合を開き、加盟組織がクルド民族主義勢力に対する武装闘争には関与しないことで合意したと発表した。

ダルウィーシュ氏によると、会合はイラク・クルディスタン自治区のマスウード・バールザーニー大統領の主催のもとに開かれ、政治指導部や在外組織委員会の設置を決定した、という。

またクルド民族主義勢力との武装闘争への関与を拒否することで、アサド政権に協力的なPKK系の民主統一党との対立の回避をめざしている。

『ハヤート』(6月12日付)によると、マスウード・バールザーニー大統領は最近、シリア・クルド国民評議会と民主統一党の対立解消の仲介を行っているが、両者はシリアの反体制運動とクルド問題の位置づけ方、とりわけトルコの介入の是非をめぐって対立したままだという。

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シリア国民変革潮流は声明を出し、漸進的に暴力停止をめざすとするアサド大統領の提案を拒否する、と発表した。

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シリア・トルクメン民族運動なる組織のズィヤード・ハサン報道官はトルコのイスタンブールで、アサド政権打倒後のシリアでトルクメン人にマイノリティとしての権利を与えるよう求めた。

レバノンの動き

レバノンのシリア人避難民を支援する救援最高委員会は声明を出し、シリア人避難民に対する医療費支援を一時凍結したと発表した。

この措置は「政治的ではなく、技術的な」もので、義援金目当てで避難民を名のるシリア人への支援という「行き過ぎ」に対処するためだという。

救援最高委員会によると、レバノンには現在、3万2000人にシリア人避難民がいる、とされる。

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AFP(7月11日付)はベイルート国際空港でシリアの反体制活動家、ザカリヤー・ムトラク氏(26歳)がレバノン治安当局に逮捕されたと報じた。

レバノン総合情報総局の消息筋によると、ムトラク氏は関係当局から「指名手配」されており、身柄はレバノン軍に引き渡された、という。

ムトラク氏はヒムス県ヒムス市バーブ・アムル地区の出身で、同地区が制圧された今年2月にシリアを脱出していた。

指名手配の理由は不明。

諸外国の動き

国連安保理では、ロシアがUNSMISの任期(7月20日)の3ヵ月の延長を求める安保理決議案を提出した。

同決議案は、UNSMISの活動を強化するうえで軍事的能力を高める必要がある点を強調、シリア政府などに対してその活動の安全と自由を保障するよう求めている。

またアナン特使の停戦案の即時履行への支持を表明、シリア人による政治的解決を求める内容となっている。

しかし同決議案は、停戦が実現しなかった場合の措置については言及していない。

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米英仏の国連代表大使は、ロシアの決議案に異議を唱え、「国連憲章第7章」に基づき、アナン特使の停戦イニシアチブの履行を求め、停戦が実現しなかった場合、制裁を科すべきだと主張し、代案を提出すると述べた。

その後、英国が西側諸国を代表して、ロシア案に対抗するための決議案を提出した。

この決議案は、国連安保理憲章第7章に基づき、6月末のジュネーブでのシリア作業グループ会合声明を履行するかたちでの暫定挙国一致内閣の発足、憲法改正、選挙実施を求めている。

またシリア政府に対して、国連安保理決議2042、2043号に従ってアナン特使の停戦案の完全履行を求めるとともに、すべての当事者に暴力停止と政治的転換に相応しい雰囲気の醸成を呼びかけている。

一方、UNSMISについては、任期を45日延長し、非武装の監視団員を削減し、これに代えて民間人の監視団を増員、政治対話の促進、弾圧に関する調査任務の重点的実施をめざしている。

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インテルファクス通信(7月11日付)は、連邦軍事技術協力庁高官が、ロシアがシリアとの契約に基づき、シリアへの防空システムなどの供与を継続すると述べたと報じた。

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NATOのアナス・フォー・ラスムセンNATO事務局長はシリア情勢に関して、政治的解決の支援が必要と述べ、軍事介入の可能性を改めて否定した。

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イランのホセイン・エミール・アブドゥッラフヤーン外務副大臣は、イランを訪問したアナン特使とアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣の会談で、イラン側がシリア国境で武器密輸監視を行うよう求めたと述べた。イラン国営通信(7月11日付)が伝えた。

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コフィ・アナン特使はジュネーブで記者団に対して、イラン政府がシリアの主導のもとでの政治的転換をめざす自身の停戦案を支持している、と語った。

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米ホワイトハウスのジェイ・カーニー報道官は、アナン特使のイラン訪問に関して、「イランの役割は積極的ではないし、有益でもない。我々の関心はシリアでの安定を望む国と協力すること」と述べた。

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中国外交部報道官は、「中国はシリア問題に相応しい解決策において地域諸国は切り離せず、シリアの当事者に影響力を持つ地域の国々の支援や参加が必要だと考える」と述べ、シリア危機の解決へのイランの参加をめざすアナン特使の姿勢への支持を表明した。

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AKI(7月11日付)は、イタリア当局がイオニア海でシリア人避難民25人(うち女性12人、子供4人)が乗ったボートを発見した、と報じた。

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パレスチナ解放軍参謀本部は声明を出し、ヒムス・ハマー街道で同軍のレジスタンス戦闘員2人(休暇中)が武装テロ集団に誘拐されたと発表した。

一方、パレスチナ自治政府はシリアのパレスチナ人に対する救援活動を行うと発表した。PECDARのムハンマド・シュタイヤ議長がラーマッラーで明らかにした。

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ウィキリークス(7月11日付)は、アサド政権が米国の広告代理店ブラウン・ロイド・ジェームズ社に反体制運動への対応についてのアドバイスを求めたことを示すメールを公開した。

また、2011年6月に営利活動からの撤退を宣言していたラーミー・マフルーフ氏(アサド大統領のいとこ)が依然として営利活動を行っていることを示すメールも公開した。

AFP, July 11, 2012、Akhbar al-Sharq, July 11, 2012、AKI, July 11, 2012、al-Hayat, July 12, 2012, July 13, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 11, 2012、Naharnet.com,
July 11, 2012、Reuters, July 11, 2012、SANA, July 11, 2012などをもとに作成。

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コフィ・アナン特使はイランを訪問し「漸進的な事態収拾をめざす」とするアサド政権の方針を事実上支持、シリア国民評議会は変わらず国際社会の介入を要求し続ける姿勢を明確に(2012年7月10日)

アナン特使の動き

コフィ・アナン特使はイランを訪問し、シリア情勢などに関してアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣と会談し、漸進的な事態収拾をめざすとするアサド政権の提案に事実上沿ったかたちでの政治的解決に理解を示した。

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会談後の記者会見で、アナン特使は、アサド大統領が暴力停止に向けて「漸進的な方法をとり、暴力行為がもっとも激しいホットスポットから収拾のための試みを始め、一歩一歩進むことで全土での暴力の停止をめざす」と提案したことを明らかにした。

また6月末のジュネーブでのシリア作業グループ会合での合意に関して「これは我々が紛争における人々の武装化ではなく、政治的解決をめざしていることを実質的に意味する」と述べた。

そのうえで「私は事態がそのように推移するだろうと思う。過った者の手にある武器を回収するための真摯な計画が策定されねばならず、今後発足するであろう政府、ないしは現政府が武器使用と武器を管理することが保障されねばならない。つまり一つの権力、一つの武器(管理)だ」と述べた。

さらに「シリアの危機がコントロール不能となり、地域に波及する危険がある」としたうえで、「イランは積極的な役割を果たすことができる」と述べた。

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これに対して、サーレヒー外務大臣は、「我々はシリアと地域における安定と平穏が回復されるまで、アナン氏が行動を続けることを期待する」と述べるとともに、「イランは(シリア危機の)解決策の一部をなす」と強調した。

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アナン特使はその後、イラクに移動し、ヌーリー・マーリキー首相と会談した。

アリー・ダッバーグ報道官によると、会談では、シリア情勢への対応が協議された。

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マナール(7月10日付)は複数のシリア消息筋の話として、アナン特使がダマスカスでアサド大統領と合意した提案のなかに、「反体制武装集団の国家への武器引き渡しと政治的解決受諾を条件として、すべてのシリア人による対話を開始する」との項目があったと報じた。

国内の主な動き

シリアのダーウド・ラージハ国防大臣は、「国内のテロと外国の敵対行為」を許さないと述べた。SANA(7月10日付)が報じた。

国内の暴力

シリア赤新月社は声明を出し、ダイル・ザウル市で救急車両が銃撃を受け、乗っていたボランティア活動家ハーリド・ハッファージー氏が負傷、死亡したと発表した。

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ヒムス県では、SANA(7月10日付)によると、クサイル市および郊外で治安維持部隊が武装テロ集団の攻撃に応戦し、テロリストに打撃を与えた。

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アレッポ県では、SANA(7月10日付)によると、アレッポ市で武装テロ集団がアブドゥルバースィト・アルジャ医師を暗殺した。

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イドリブ県では、SANA(7月10日付)によると、ジスル・シュグール市で治安維持部隊が武装テロ集団を追跡、複数名を逮捕した。

またトルコ領内からヒルバト・ジューズ村に潜入しようとした武装テロ集団を拘束した。

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ラタキア県では、SANA(7月10日付)によると、バラータ村とハラータ村で武装テロ集団が農民を襲撃、1人を殺害した。

国内の暴力(反体制勢力発表)

ダルアー県では、SNN(7月10日付)やシリア革命総合委員会が、軍・治安部隊がラジャート高原北部の井戸数十カ所を埋め、自由シリア軍による水の確保を阻止しようとしていると報道・発表した。

シリア人権監視団によると、ダルアー市内各所および同市郊外の避難民キャンプが軍・治安部隊の砲撃にさらされ、複数が負傷した。

地元調整諸委員会によると、1人が殺害された。

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ダマスカス県およびダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、カダム区、カフルスーサ区、ダーライヤー市などで治安部隊が活動家の逮捕・捜索活動を行い、爆発音や銃声が聞こえた。

またバルザ区では1ヵ月以上前に逮捕された民間人1人が拷問の末死亡した、という。

地元調整諸委員会によると、2人が殺害された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市内での軍・治安部隊と反体制武装集団との戦闘で、前者の兵士4人と後者の戦闘員2人が死亡した。

なお反体制武装集団は市内西部をRPG弾で砲撃する一方、軍・治安部隊の市内複数地区の制圧のため砲撃で応戦した。

地元調整諸委員会によると、12人が殺害された。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、タッル・リフアト市、マンナグ村などが軍・治安部隊の砲撃に曝された。

またアアザーズ市での軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦で、後者の戦闘員2人が死亡した。

地元調整諸委員会によると、7人が殺害された。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のジャウラ・シヤーフ地区、カラービース地区、ハーリディーヤ地区で軍・治安部隊による砲撃が続いた。

地元調整諸委員会によると、4人が殺害された。

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イドリブ県では、地元調整諸委員会によると、2人が殺害された。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会はロシア外務省によるアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長招聘(7月10日訪問予定)を受けて声明を出し、従来通り「革命とシリア国民の要求」に沿って、アサド政権の打倒、自由シリア軍の支援、国連憲章第7章に基づく暴力停止のための国際社会の介入を要求し続けることを確認した。

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シリア人権監視団は声明を出し、2011年3月以降の死者数が17,129人に達したと発表した。

うち11,897人が民間人、884人が離反兵、軍・治安部隊兵士が4,348人だという。

同監視団は6月14日に死者総数を14,476人(10,117人が民間人、807人が離反兵、3,552人が軍・治安部隊兵士)と発表していた。

レバノンの動き

レバノン赤十字社など複数の消息筋によると、北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方の違法国境通過ポイントで未明に銃撃戦があり、シリア人2人とレバノン人1人が死亡、レバノン人1人が負傷した。

レバノン国軍は声明を出し、シリア軍と武装集団の間で戦闘があり、迫撃砲複数発がレバノン領内に着弾、レバノン人が負傷したことを認めたうえで、「軍部隊は、銃撃戦が発生し、レバノン軍も応戦した地点での厳戒パトロールを行い、チェックポイントを設営した」と付言、銃撃戦に参加したことを明らかにした。

『サフィール』(6月11日付)によると、銃撃戦はシリア領内のシリア国境警備隊のチェックポイントを砲撃武装集団とシリア軍の間で行われた。

その際、シリア軍はレバノン領内から攻撃する武装集団に応戦、ワーディー・ハーリド地方のムカイブラ、ヒーシャに迫撃砲が着弾した。

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一方、SANA(7月10日付)によると、ヒムス県タッルカラフ地方の対レバノン国境地帯複数カ所で国境警備隊が武装テロ集団の潜入を阻止した。

同通信社によると、武装テロ集団は、ジスル・カマール、ジスル・アブー・スワイド、ハルムーシュ、アルムータ、アリーダ、ヌーラー、ダーリヤにある国境警備隊の拠点を襲撃したが、国境警備隊が応戦、撃退したという。

この戦闘でテロリスト多数が死傷、また国境警備隊兵士1人が負傷した。

諸外国の動き

ロシアのミハイル・ボグダノフ外務副大臣は、シリア作業グループの第2回会合(シリア情勢をめぐる国際会議)のモスクワでの開催を呼びかけた。インテルファクス通信(7月10日付)が報じた。

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ヨルダン内閣は声明を出し、領内にシリア人避難民を受け入れるための緊急キャンプを設営することを決定したと発表した。

また国際移民機関(IOM)に、シリア在住の外国人を本国への帰国、ないしは第三国への移住を調整するためのオフィスの設置も認めた。

ヨルダンには現在、14万人のシリア人避難民が非難しているとされる。

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ロシア北方艦隊の大型対潜艦アドミラル・チャバネンコを旗艦とするロシア海軍の船団がセヴェロモルスク港を発ち、タルトゥース港に向かった。

AFP, July 10, 2012、Akhbar al-Sharq, July 10, 2012、al-Hayat, July 11, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 10, 2012、al-Manar, July 10, 2012、Naharnet.com,
July 10, 2012、Reuters, July 10, 2012、al-Safir, July 10, 2012、SANA, July 10, 2012などをもとに作成。

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