ロシアのヴラジミール・プーチン大統領、イランのハサン・ロウハーニー大統領、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、トルコの首都アンカラで、シリア情勢への対応を協議するための首脳会談を行い、国際社会に対して復興と安定化に向けたプロセスを支援するよう呼びかけるとともに、ロシア、イラン、トルコの三カ国を保証国とするアスタナ会議、そして1月末にロシアのイニシアチブのもとにソチで開催されたシリア国民対話大会の成果を鼓舞、シリアの独立、領土の一体性を尊重し、新憲法起草を起点とした政治プロセスを開始する必要を強調した。
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首脳会談後に出された声明で、三カ国首脳は、アスタナ会合を、シリア全土で暴力を軽減し得る唯一の実効的な国際的イニシアチブと位置付け、紛争の長期的な政治解決をめざす国連主催のジュネーブ会議を推進させたとして、その成果を称賛した。
また、紛争当事者間の持続的停戦に向けた活発な協力の継続、国連安保理決議第2554号が定める政治プロセスの推進をめざすことを確認した。
さらに、国土の再統一をめざすシリア人を支援する必要があると強調、新憲法の制定、自由で公正な選挙の実施に向けた広範で、自由且つ公正なプロセスを通じたシリア人による危機の政治的解決を支持するとともに、軍事力による紛争解決は不可能との立場を明示した。
一方、国外難民については、帰国に向けた環境を準備しなければならないと表明した。
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プーチン大統領は会談後の共同記者会見で、「我々はシリア紛争後の段階における復興に向けた取り組みを一つにすることで合意した。会談は何よりもまず、インフラや公的機関の復興について行われた」としたうえで、「ロシアの企業が既にこの事業に傘下している…。シリア経済復興、インフラ復興のため、言葉ではなく行動をもって参与して欲しい」と呼びかけた。
エルドアン大統領も共同記者会見で「トルコはシリアの復興と再生をめざしている」と述べる一方、シリア北部で続行中の「オリーブの枝」作戦に関して、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)を主導する民主統一党(PYD)が制圧する地域で安全がもたらされるまで作戦を継続する、と述べた。
そのうえで、「ダーイシュ(イスラーム国)、PYD、クルディスタン労働者党(PKK)の諸目的に合致する考え方は、シリアに持続的平和をもたらし得ない」と述べ、アレッポ県マンビジュ市一帯のロジャヴァ支配地域に部隊を増強するなどして、支援を強めている欧米諸国を批判した。
ロウハーニー大統領は、シリアの領土の統一性性、主権、独立を尊重し、軍事的解決ではなく、政治的解決をめざすべきたと述べる一方、テロとの戦いの継続を主唱した。
また、シリアでの復興に必要な基盤を確立し、難民・避難民の帰宅にふさわしい環境を整えるべきだと強調した。
AFP, April 4, 2018、ANHA, April 4, 2018、AP, April 4, 2018、al-Durar al-Shamiya, April 4, 2018、al-Hayat, April 5, 2018、Reuters, April 4, 2018、SANA, April 4, 2018、UPI, April 4, 2018などをもとに作成。
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