ロシア軍参謀本部機動総局のセルゲイ・ルドスコイ局長はモスクワの国防省で記者会見を行い、14日に米国がフランス、イギリスとともに行ったシリア領内への攻撃に関して、フマイミーム航空基地とタルトゥース基地(ロシア海軍支援拠点)に設置されたロシア軍の防空システムが米英両軍の艦船および航空機の動きを補則していたと発表した。
フランス軍航空機に関しては、防空システムで補則するための設定は行われていなかったため詳細は不明だという。
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ルドスコイ局長によると、作戦では、米空軍のB-1B戦略爆撃機、F-15戦闘機、F-16戦闘機、英空軍のトルネード戦闘機が地中海上を飛行、紅海に展開する米海軍のミサイル駆逐艦ラブーン、ミサイル巡洋艦モンテレーが作戦に参加した。
このうちB-1B戦略爆撃機は、米国が違法に占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域の上空を通じてシリア領内に入った。
爆撃により、シリア軍の飛行場、産業施設、研究施設複数カ所が被害を受けた。
爆撃に関する第一報では、シリアの民間人とシリア軍兵士に死者は出なかった。
利用可能なデータから、トマホーク巡航ミサイル、GBU-38誘導爆弾を含む巡航ミサイル103発が米軍の艦船や航空機から発射されたことが確認された。
また英軍航空機はScalp-EG巡航ミサイル8発を発射した。
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米英仏の攻撃に対して、シリア軍の防空システムは、爆撃やミサイル攻撃の迎撃に成功し、ミサイル71発を破壊した。
迎撃には、旧ソ連製のS-125、S-200、Buk、Kyadrat、Osaといった防空システムが投入された。
発射されたミサイル・爆弾の具体的な標的は以下の通り:
ダマスカス国際空港(ダマスカス郊外県):ミサイル4発(すべて撃破)
ドゥマイル航空基地(ダマスカス郊外県):ミサイル12発(すべて撃破)
ブライ(マルジュ・ルハイイル)航空基地(ダマスカス郊外県):ミサイル18発(すべて撃破)
シャイーラート航空基地(ヒムス県):ミサイル12発(すべて撃破)
マッザ航空基地(ダマスカス県):ミサイル9発(うち5発を撃破)
ヒムス航空基地(ヒムス県):ミサイル16発(うち13発を撃破。大きな被害なし)
バルザ区(ダマスカス県)およびジャルマーナー市(ダマスカス郊外県)の施設:ミサイル30発(うち7発を撃破。いわゆる「ダマスカス軍事化学兵器プログラム」関連施設に一部被害が発生)
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一方、米英仏の攻撃を受け、ロシア軍の防空システムが警戒態勢に入り、航空機複数機が今も戦闘空中哨戒を継続しているという。
なお、米英仏の攻撃は、ロシア軍の防空システムに割り当てられた防空地域に対しては実施されず、ロシア軍は反撃しなかった。
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欧米諸国の強い要請を受けて、ロシアはシリアへのS-300防空システムを見送ったが、今回の事態を踏まえて、シリアを含む複数の国へのシステム供与を再検討する可能性があるとの認識に至ったという。
Ministry of Defence of the Russian Federation, April 14, 2018をもとに作成。
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