日本は国連機関を通じてシリア政府支配地域、ヨルダン、レバノンへの人道支援を約束:シリア支援国会合は目標額の半分以下の支援資金しか集められず(2018年4月25日)

ベルギーのブリュッセルでEUが主催するシリア支援国会合が2日間の日程を終え閉幕した。

「シリアと地域の未来を支援する」(Suporting the Future of Syria and the Region)ためのブリュッセル2会議と題された会合は、欧米諸国、日本、ロシア、イラン、トルコ、アラブ諸国、国連など85カ国・国際機関が参加、60億ユーロの支援表明を目指していた。

また、会議に先立って、国連はシリア国内での人道支援に35億ドル、近隣諸国の難民支援に56億ドルの合計91億ドルが必要と資産していた。

だが、参加国が拠出を表明したのは総額で44億ドルで、目標額の半分にも満たなかった。

44億ドルの内訳は、英国が7億5,000ポンド(2018年に4億5,000ポンド、2019年に3億ポンド)、ドイツが10億ユーロ強、そのほかのEU諸国が5億6,000ユーロなど。

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日本は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を含む6つの国際機関を通じて、保健、衛生、医療、食糧、基礎ニーズ等の分野への支援を実施することを決定、シリア政府の支配下に復帰したダマスカス郊外県東グータ地方(370万ドル)、ヨルダン(400万ドル)、レバノン(630万ドル)に対して1,400万ドルの緊急無償資金協力を行う旨約束した。

この決定に関する日本の外務省の発表(http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_005942.html)は以下の通り:

シリア危機の影響を受ける中東三か国に対する緊急無償資金協力
平成30年4月24日

1 本24日,我が国政府は,シリア危機の影響を受け,劣悪な人道状況下での生活を余儀なくされているシリア,ヨルダン及びレバノンの人々に対する支援として,1,400万ドル(15億6,800万円(今年度支出官レート))の緊急無償資金協力を実施することを決定しました。

2 今回の支援は,国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を含む6つの国際機関を通じ,保健,衛生,医療,食糧,基礎ニーズ等の分野への支援を実施します。

3 この支援の実施により,各国において以下のような貢献が期待されます。

(1)シリア
東グータ地区等戦闘の影響を受けた地域において,教育,食糧・生活必需品などの支援を通じ,約5万人のパレスチナ難民の生活環境が改善される他,同地区での医療支援により,約43万人の国内避難民の健康状態が改善されます。

(2)ヨルダン
シリア難民キャンプの子供や女性等の脆弱な人々に対する予防接種等の実施を通じ,延べ43,000人の健康状態が改善される他,ヨルダン北東部のシリア難民に対する約12,000件の診察,及びパレスチナ難民約115万人に対する医薬品の提供が可能となります。また,ごみ処理の強化を通じて約40万人のパレスチナ難民の衛生環境が改善されます。

(3)レバノン
シリア難民約4万人が必要な食糧を得ることができるとともに,34,000人のパレスチナ難民にも食糧を提供することができます。また,約3,000件のパレスチナ難民の入院治療にも対応できます。

[参考]各国別支援額内訳
シリア(370万ドル),ヨルダン(400万ドル),レバノン(630万ドル)

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米国は資金供与を約束しなかった。

AFP, April 25, 2018、ANHA, April 25, 2018、AP, April 25, 2018、al-Durar al-Shamiya, April 25, 2018、al-Hayat, April 26, 2018、Reuters, April 25, 2018、SANA, April 25, 2018、UPI, April 25, 2018などをもとに作成。

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