国連安保理では、ドナルド・トランプ米大統領がシリア領ゴラン高原に対するイスラエルの主権を承認する大統領令に署名したことへの対応を協議するための緊急会合が開催された。
緊急会合はシリアの要請で開催されたもの。
米国はトランプ大統領の姿勢を擁護したが、それ以外の常任・非常任理事国14カ国はこれに反対、非難した。
**
ロシアのヴラジミール・サフロンコフ国連次席大使は「国際法を無視したもの」「国連憲章違反」「この決議は無効だ」としたうえで、トランプ大統領の決定の不安定を助長すると非難した。
中国も、国際社会の総意に反する一方的な決定だとして、トランプ大統領の決定を非難、ベルギー、ドイツ、クウェート、インドネシア、ペルー、南アフリカ、ドミニカ共和国もこれに同調した。
一方、英国は1981年の国連安保理決議第429号への違反だと指摘、フランスも、イスラエルの主権を承認しないとするEUの姿勢を改めて確認するとともに、安保理決議を覆すいかなる試みも「失敗する運命にある」と述べた。
**
ロドニー・ハンター米国連代表大使は、トランプ大統領の決定は「1974年の兵力引き離し合意に何ら影響を与えない。UNDOF(国連兵力引き離し監視軍)の任務を危険に曝すこともない」と反論、ゴラン高原の兵力引き離し地帯(AOS)でシリア軍とヒズブッラーが活動をしていると指摘、ロシアに対してこれらを撤退させるよう求めた。
AFP, March 28, 2019、ANHA, March 28, 2019、AP, March 28, 2019、al-Durar al-Shamiya, March 28, 2019、al-Hayat, March 29, 2019、Reuters, March 28, 2019、SANA, March 28, 2019、UPI, March 28, 2019などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.